(この法律の目的)
第一條 この法律は、地方公共團体の財政(以下地方財政という。)の運營、國の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定め、もつて地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資することを目的とする。
(地方財政運營の基本)
第二條 地方公共團体は、その財政の健全な運營に努め、いやしくも國の政策に反し、又は國の財政若しくは他の地方公共團体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。
2 國は、地方財政の自主的な且つ健全な運營を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共團体に負担を轉嫁するような施策を行つてはならない。
(予算の編成)
第三條 地方公共團体は、法令の定めるところに從い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。
2 地方公共團体は、あらゆる資料に基いて正確にその財源を補そくし、且つ、経済の現実に即應してその收入を算定し、これを予算に計上しなければならない。
(予算の執行)
第四條 地方公共團体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。
2 地方公共團体の收入は、適実且つ嚴正に、これを確保しなければならない。
(地方債の制限)
第五條 地方公共團体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。但し、左に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共團体の行う企業(以下公營企業という。)に要する経費の財源とする場合
二 出資金及び貸付金の財源とする場合(出資又は貸付を目的として土地又は物件を買收するために要する経費の財源とする場合を含む。)
三 地方債の借換のために要する経費の財源とする場合
四 災害應急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合
五 地租、家屋税、事業税及び都道府縣民税(東京都にあつては、地方税法(昭和二十三年法律第百十号)第百三十條の規定により特別区の課する地租、家屋税、事業税及び特別区民税を含む。)又は地租附加税、家屋税附加税、事業税附加税及び市町村民税の賦課率又は賦課総額がいずれも標準賦課率又は標準賦課総額の一・二倍以上である地方公共團体において、戰災復旧事業費及び学校、河川、道路、港湾等の公共施設の建設事業費の財源とする場合
2 特別区が地方債をもつて前項第五号に掲げる事業費の財源とすることができる場合は、東京都が地方債をもつてその財源とすることができる場合でなければならない。
(公營企業の経營)
第六條 政令で定める公營企業については、その経理は、特別会計を設けてこれを行い、その歳出は、当該企業の経營に伴う收入(前條の規定による地方債による收入を含む。)をもつてこれに充てなければならない。但し、災害その他特別の事由がある場合において議会の議決を経たときは、一般会計又は他の特別会計からの繰入による收入をもつてこれに充てることができる。
2 前項の企業については、定期に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。
3 第一項の企業について、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十四條第二項の規定による議会の指定があつたときは、同項の規定に基いて作成する財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、これを前項の規定により作成したものとみなす。
(剩余金)
第七條 地方公共團体は、各会計年度において歳入歳出の決算上剩余金を生じた場合においては、当該剩余金のうち二分の一を下らない金額は、これを剩余金を生じた翌翌年度までに、地方債の償還財源に充てなければならない。
2 前條の公營企業について、歳入歳出の決算上剩余金を生じた場合においては、前項の規定にかかわらず、議会の議決を経て、その全部又は一部を一般会計又は他の特別会計に繰り入れることができる。
3 前二項の剩余金の計算については、政令でこれを定める。
(財産の管理及び処分)
第八條 地方公共團体の財産は、條例又は議会の議決による場合を除く外、これを交換しその他支拂手段として使用し、又は適正な対價なくしてこれを讓渡し、若しくは貸し付けてはならない。
2 地方公共團体の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に應じて最も効率的に、これを運用しなければならない。
(地方公共團体がその全額を負担する経費)
第九條 主として地方公共團体の利害に関係のある事務を行うために要する経費は、当該地方公共團体が、全額これを負担する。
2 前項の経費は、左に掲げるようなものとする。
一 地方公共團体の議会及び議会の議員の選挙に要する経費
四 地方公共團体の地域内の公共的團体の総合調整に要する経費
十一 農業、商業、工業その他の産業の振興に要する経費
十二 交通、ガス、水道その他の公營企業に要する経費
3 第一項の経費のうちには、第十條及び第十一條に掲げる経費は、含まれないものとする。
(國と地方公共團体とが負担する経費)
第十條 國と地方公共團体相互の利害に関係のある事務を行うために要する経費は、國と地方公共團体とが、これを負担する。
2 前項の経費は、左に掲げるようなものとする。
三 法律又は政令で定める重要な都市計画及び都市計画事業に要する経費
四 法律又は政令で定める河川、道路、砂防、港湾等の重要な土木事業に要する経費
五 戰災復旧のために行う学校、道路、港湾、病院、診療所、上下水道その他の公共施設、住宅及び土地区画整理に要する事業費
六 災害應急事業、災害事業及び災害救助事業に要する経費
十一 労働組合の育成及び労働関係の調整に要する経費
十三 職業補導施設の設置、維持及び管理に要する経費
3 第一項の経費についてその種目、算定基準及び國と地方公共團体とが負担すべき割合は、法律又は政令でこれを定めなければならない。
(國がその全額を負担する経費)
第十一條 主として國の利害に関係のある事務を行うために要する経費については、地方公共團体は、その経費を負担する義務を負わない。
2 前項の経費は、左に掲げるようなものとする。
二 國が專らその用に供することを目的として行う統計及び調査に要する経費
(地方公共團体が処理する権限を有しない事務に要する経費)
第十二條 地方公共團体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、法律又は政令で定めるものを除く外、國は、地方公共團体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない。
(あらたな事務に伴う財源措置)
第十三條 地方公共團体、地方公共團体の機関又はその経費を地方公共團体が負担する國の機関が法律又は政令に基いてあらたな事務を行う義務を負う場合においては、國は、そのために要する財源について必要な措置を講じなければならない。
2 前項の財源措置について不服のある地方公共團体は、内閣を経由して國会に意見書を提出することができる。
3 内閣は、前項の意見書を受け取つたときは、その意見を添えて、遅滯なく、これを國会に提出しなければならない。
(地方職員費の國庫負担)
第十四條 第十條第一項及び第十一條第一項に規定する事務に從事する職員に要する経費については、第九條第二項第二号の規定にかかわらず、政令で定める職員に限り、國がその全部又は一部を負担する。
2 前項の規定により國がその経費の全部又は一部を負担する職員の定員、経費の種目、算定基準及びその経費について國が負担すべき割合は、職員の從事する事務の種類の別に從い、政令でこれを定める。
(國庫負担地方職員の各地方公共團体別の定員)
第十五條 前條第一項の規定により國がその経費の全部又は一部を負担する職員の各地方公共團体別の定員は、内閣総理大臣が、内閣総理大臣、法務総裁及び各省大臣(以下各大臣という。)の請求に基いて、これを定める。
2 前項の職員に要する経費のうち國の負担すべき部分は、内閣総理大臣の所掌に属する歳出予算に計上し、関係地方公共團体にこれを交付する。
(補助金の交付)
第十六條 國は、その施策を行うため特別の必要があると認めるとき又は地方公共團体の財政上特別の必要があると認めるときに限り、当該地方公共團体に対して、補助金を交付することができる。
(負担金の支出)
第十七條 國は、第十條第一項又は第十一條第一項に規定する事務で地方公共團体、地方公共團体の機関又はその経費を地方公共團体が負担する國の機関が行うものについて第十條第三項又は第十一條第一項の規定により國が負担する金額及び第十四條第一項の規定により國が負担する金額(以下國の負担金という。)を、当該地方公共團体に対して支出するものとする。
2 地方公共團体は、第十條第一項の事務で國(その経費を地方公共團体が負担する國の機関を除く。)が行うものについて同條第三項の規定により地方公共團体が負担する金額(以下地方公共團体の負担金という。)を、國に対して支出するものとする。
(國の支出金の算定の基礎)
第十八條 國の負担金、補助金等の地方公共團体に対する支出金(以下國の支出金という。)の額は、地方公共團体が当該國の支出金に係る事務を行うために必要で且つ充分な金額を基礎として、これを算定しなければならない。
(國の支出金の支出時期)
第十九條 國の支出金は、その支出金を財源とする経費の支出時期に遅れないように、これを支出しなければならない。
2 前項の規定は、地方公共團体の負担金等の國に対する支出金にこれを準用する。
(委託工事の場合における準用規定)
第二十條 前二條の規定は、國の工事をその委託を受けて地方公共團体が行う場合及び地方公共團体の工事をその委託を受けて國が行う場合において、國又は地方公共團体の負担に属する支出金に、これを準用する。
(地方公共團体の負担を伴う法令案)
第二十一條 各大臣は、その管理する事務で地方公共團体の負担を伴うものに関する法令案について、法律案及び政令案にあつては閣議を求める前、命令案にあつては公布の前、あらかじめ内閣総理大臣を通じ地方財政委員会の意見を求めなければならない。
(地方公共團体の負担を伴う経費の見積書)
第二十二條 各大臣は、その所掌に属する歳入歳出及び國庫債務負担行爲の見積のうち地方公共團体の負担を伴う事務に関する部分については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十七條第二項に規定する書類を大藏大臣に送付する際、内閣総理大臣を通じ地方財政委員会の意見を求めなければならない。
(國の營造物に関する使用料)
第二十三條 地方公共團体又はその長が管理する國の營造物で当該地方公共團体がその管理に要する経費を負担するものについては、当該地方公共團体又はその長は、條例又は規則の定めるところにより、当該營造物の使用について使用料を徴收することができる。
2 前項の使用料は、当該地方公共團体の收入とする。
(國が使用する地方公共團体の財産等に関する使用料)
第二十四條 國が地方公共團体の財産又は營造物を使用するときは、当該地方公共團体の定めるところにより、國においてその使用料を負担しなければならない。但し、当該地方公共團体の議会の同意があつたときは、この限りでない。
(負担金等の使用)
第二十五條 國の負担金及び補助金並びに地方公共團体の負担金は、法令の定めるところに從い、これを使用しなければならない。
2 地方公共團体が前項の規定に從わなかつたときは、その部分については、國は、当該地方公共團体に対し、その負担金又は補助金の全部又は一部を交付せず又はその返還を命ずることができる。
3 地方公共團体の負担金について、國が第一項の規定に從わなかつたときは、その部分については、当該地方公共團体は、國に対し当該負担金の全部又は一部を支出せず又はその返還を請求することができる。
(地方配付税の減額)
第二十六條 地方公共團体が法令の規定に違背して著しく多額の経費を支出し、又は確保すべき收入の徴收等を怠つた場合においては、國は、当該地方公共團体に対して交付すべき地方配付税の額を減額し、又は既に交付した配付税の一部の返還を命ずることができる。
2 前項の規定により減額し、又は返還を命ずる地方配付税の額は、当該法令の規定に違背して支出し、又は徴收等を怠つた場合をこえることができない。
(都道府縣の行う事業に対する市町村の負担)
第二十七條 都道府縣の行う事業でその区域内の市町村を利するものについては、都道府縣は、当該事業による受益の限度において、当該市町村に対し、その事業に要する経費の一部を負担させることができる。
2 前項の経費について市町村が負担すべき金額は、当該市町村の意見を聞き、当該都道府縣の議会の議決を経て、これを定めなければならない。
3 前項の規定による市町村が負担すべき金額について異議がある市町村は、内閣総理大臣に対し、異議の申立をなすことができる。
4 内閣総理大臣は、前項の異議の申立を受けた場合において特別の必要があると認めるときは、当該市町村の負担すべき金額を更正することができる。
5 地方自治法第二百五十六條及び第二百五十七條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
(都道府縣等の事務の委任に伴う経費)
第二十八條 都道府縣又は都道府縣知事が、市町村又は市町村長若しくは市町村の職員をしてその事務を行わせる場合においては、都道府縣は、当該市町村に対し、その事務を執行するに要する経費の財源について必要な措置を講じなければならない。
2 前項の財源措置について不服のある市町村は、関係都道府縣知事を経由して、地方財政委員会に意見書を提出することができる。
3 都道府縣知事は、前項の意見書を受け取つたときは、その意見を添えて、遅滯なく、これを地方財政委員会に提出しなければならない。
4 前項の意見は、当該都道府縣の議会の議決を経て、これを定めなければならない。
(都道府縣及び市町村の負担金の支出)
第二十九條 都道府縣は、法律又は政令の定めるところによりその区域内の市町村の行う事務に要する経費について都道府縣が負担する金額(以下都道府縣の負担金という。)を、当該市町村に対して支出するものとする。
2 市町村は、第二十七條第一項の規定により都道府縣に対して、負担する金額(以下市町村の負担金という。)を、当該都道府縣に対して支出するものとする。
(都道府縣及び市町村の負担金等における準用規定)
第三十條 第十八條、第十九條及び第二十五條の規定は、都道府縣及び市町村の負担金並びに都道府縣が市町村に対して交付する補助金等の支出金に、これを準用する。