(受給要件)
第九条 被保険者(被保険者であつた者を含む。この章において以下同じ。)が療養の給付又は家族療養費の支給を受けるには、当該疾病又は負傷につきはじめてこれを受けようとする日の属する月の前二箇月間に、通算して二十八日分以上の保険料が、その被保険者について、納付されていなければならない。
2 保険者は、被保険者が前項の受給要件をそなえることを被保険者手帳によつて証明して申請したときは、受給資格証明書を交付するものとする。
(療養の給付)
第十条 被保険者の疾病又は負傷に関しては、左に掲げる療養の給付を行う。
三 処置、手術その他の治療(歯科診療における補てつを除く。)
2 前項第四号から第六号までに定める給付は、健康保険法第四十三条第二項の規定に基く命令で定める場合及び保険者が必要と認める場合に限り、行うものとする。
(受給方法)
第十一条 被保険者が前条第一項第一号から第四号までの給付を受けようとするときは、受給資格証明書を健康保険法の規定により指定された保険医(以下「保険医」という。)及び同法の規定によつて指定された保険薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)並びに保険者の指定する者のうち自己の選定した者に提出して、その者から受けるものとする。
2 前項の規定によつて給付を受ける者は、その給付を受ける際、健康保険法の規定により厚生大臣の定める初診料の額に相当する額を、一部負担金として、支払わなければならない。
(療養担当者の義務)
第十二条 保険医又は保険薬剤師は、健康保険法第四十三条ノ四第一項の規定に基き厚生大臣の定めるところに従つて、被保険者及び被扶養者の療養を担当しなければならない。
(費用の算定)
第十三条 保険医若しくは保険薬剤師又はこれらを使用する者が、療養の給付に関して保険者に請求すべき額は、療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2 前項の療養に要する費用は、健康保険法第四十三条ノ六第二項の規定に基き厚生大臣の定めるところによつて算定する。
(給付の期間)
第十四条 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病に関しては、その開始の日から起算して三箇月を経過したときは、行わない。
(療養費)
第十五条 保険者は、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が緊急その他やむを得ない事由のため、保険医及び保険者の指定する者以外の医師、歯科医師その他の者の診療又は手当を受けた場合において、その必要があると認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給することができる。
2 保険者は、被保険者が、第九条第二項に規定する受給資格証明書の交付を受けないで保険医又は保険者の指定する者の診療を受けた場合において、受給資格証明書の交付を受けなかつたことが、緊急その他やむを得ない事由によるものと認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給するものとする。
第十六条 療養費の額は、療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額を標準として、保険者が、定める。
2 前項の療養に要する費用の算定については、第十三条第二項の規定を準用する。但し、その額は、現に療養に要した費用の額をこえることができない。
(家族療養費)
第十七条 被扶養者が受給資格証明書を保険医、保険薬剤師及び保険者の指定する者のうち自己の選定した者に提出して、その者から第十条第一項各号に掲げる療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。
2 家族療養費の額は、療養に要する費用の百分の五十に相当する額とする。但し、現に療養に要した費用の百分の五十に相当する額をこえることができない。
3 第一項の場合においては、保険者は、療養に要した費用のうち、同項の規定により家族療養費として被保険者に支給すべき額に相当する額を、被保険者に代り、当該保険医、保険薬剤師若しくは保険者の指定する者又はこれらを使用する者に支払うことができる。
4 前項の規定による支払があつたときは、被保険者に対し家族療養費の支給があつたものとみなす。
5 第十条第二項、第十三条第二項及び第十四条から前条までの規定は、家族療養費の支給に準用する。この場合において、前条第一項中「療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額」とあるのは「療養に要する費用の百分の五十に相当する額」と、同条第二項但書中「現に療養に要した費用の額」とあるのは「現に療養に要した費用の百分の五十に相当する額」と読み替えるものとする。
(他の社会保険による給付等との調整)
第十八条 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、健康保険法、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)又は国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定によつてこれに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。
2 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、健康保険法、船員保険法又は国家公務員共済組合法の規定によつて、この法律の規定による家族療養費の支給に相当する給付があつたときは、その限度において、行わない。
3 家族療養費の支給は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、健康保険法、船員保険法又は国家公務員共済組合法の規定によつて、これに相当する給付又はこの法律の規定による療養の給付に相当する給付を受けることができる場合には、行わない。
4 療養の給付及び家族療養費の支給は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病につき、国民健康保険法(昭和十三年法律第六十号)の規定によつて、これに相当する給付があつたときは、その限度において、行わない。
5 前項の規定は、他の法律の規定によつて、国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給があつた場合に、準用する。
(給付制限)
第十九条 被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生ぜしめたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。
第二十条 被保険者が、闘争、でい酔又は著しい不行跡によつて給付事由を生ぜしめたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部又は一部を行わないことができる。
第二十一条 被保険者が、左の各号の一に該当する場合には、その期間に係る保険給付は、行わない。
二 少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。
三 監獄、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。
2 保険者は、被保険者が、前項各号の一に該当する場合においても、被扶養者に係る保険給付を行うことを妨げない。
第二十二条 保険者は、被保険者が、正当な理由がないにもかかわらず、療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる。
第二十三条 保険者は、被保険者が、正当な理由がないにもかかわらず、第四十六条の規定による診断を拒んだときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
第二十四条 第十九条、第二十条、第二十一条第一項及び前二条の規定は、被扶養者に準用する。この場合において、これらの規定中「保険給付」とあるのは、「当該被扶養者に係る保険給付」と読み替えるものとする。
(損害賠償請求権)
第二十五条 保険者は、給付事由が第三者の行為によつて生じた場合においては、当該給付事由について行うべき保険給付の価額の限度で、被保険者又は被扶養者がその第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
(受給権の保護)
第二十六条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(租税その他の公課の禁止)
第二十七条 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。