(目的)
第一条 この法律は、地方公共団体の財政の健全性に関する比率の公表の制度を設け、当該比率に応じて、地方公共団体が財政の早期健全化及び財政の再生並びに公営企業の経営の健全化を図るための計画を策定する制度を定めるとともに、当該計画の実施の促進を図るための行財政上の措置を講ずることにより、地方公共団体の財政の健全化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 実質赤字比率 地方公共団体(都道府県、市町村及び特別区に限る。以下この章から第三章までにおいて同じ。)の当該年度の前年度の歳入(一般会計及び特別会計のうち次に掲げるもの以外のもの(以下「一般会計等」という。)に係る歳入で、一般会計等の相互間の重複額を控除した純計によるものをいう。以下この号において同じ。)が歳出(一般会計等に係る歳出で、一般会計等の相互間の重複額を控除した純計によるものをいう。以下この号において同じ。)に不足するため当該年度の歳入を繰り上げてこれに充てた額並びに実質上当該年度の前年度の歳入が歳出に不足するため、当該年度の前年度に支払うべき債務でその支払を当該年度に繰り延べた額及び当該年度の前年度に執行すべき事業に係る歳出に係る予算の額で当該年度に繰り越した額の合算額(以下「実質赤字額」という。)を当該年度の前年度の地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条の四第一項第二号に規定する標準的な規模の収入の額として政令で定めるところにより算定した額(以下「標準財政規模の額」という。)で除して得た数値
イ 地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第二条の規定により同法の規定の全部又は一部を適用する企業(以下「法適用企業」という。)に係る特別会計
ロ 地方財政法第六条に規定する政令で定める公営企業のうち法適用企業以外のもの(次号において「法非適用企業」という。)に係る特別会計
ハ イ及びロに掲げるもののほか、政令で定める特別会計
二 連結実質赤字比率 地方公共団体の連結実質赤字額(イ及びロに掲げる額の合算額がハ及びニに掲げる額の合算額を超える場合における当該超える額をいう。第四号において同じ。)を当該年度の前年度の標準財政規模の額で除して得た数値
イ 一般会計又は公営企業(法適用企業及び法非適用企業をいう。以下同じ。)に係る特別会計以外の特別会計ごとの当該年度の前年度の決算において、当該年度の前年度の歳入が歳出に不足するため当該年度の歳入を繰り上げてこれに充てた額並びに実質上当該年度の前年度の歳入が歳出に不足するため、当該年度の前年度に支払うべき債務でその支払を当該年度に繰り延べた額及び当該年度の前年度に執行すべき事業に係る歳出に係る予算の額で当該年度に繰り越した額の合算額がある場合にあっては、当該合算額を合計した額
ロ 公営企業に係る特別会計ごとの当該年度の前年度の決算において、政令で定めるところにより算定した資金の不足額がある場合にあっては、当該資金の不足額を合計した額
ハ 一般会計又は公営企業に係る特別会計以外の特別会計ごとの当該年度の前年度の決算において、歳入額(当該年度に繰り越して使用する経費に係る歳出の財源に充てるために繰り越すべき金額を除く。)が歳出額を超える場合にあっては、当該超える額を合計した額
ニ 公営企業に係る特別会計ごとの当該年度の前年度の決算において、政令で定めるところにより算定した資金の剰余額がある場合にあっては、当該資金の剰余額を合計した額
三 実質公債費比率 地方公共団体の地方財政法第五条の四第一項第二号に規定する地方債の元利償還金(以下この号において「地方債の元利償還金」という。)の額と同項第二号に規定する準元利償還金(以下この号において「準元利償還金」という。)の額との合算額から地方債の元利償還金又は準元利償還金の財源に充当することのできる特定の歳入に相当する金額と地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の定めるところにより地方債の元利償還金及び準元利償還金に係る経費として普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入される額として総務省令で定めるところにより算定した額(特別区にあっては、これに相当する額として総務大臣が定める額とする。以下この号及び次号において「算入公債費等の額」という。)との合算額を控除した額を標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値
四 将来負担比率 地方公共団体のイからチまでに掲げる額の合算額がリからルまでに掲げる額の合算額を超える場合における当該超える額を当該年度の前年度の標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値
イ 当該年度の前年度末における一般会計等に係る地方債の現在高
ロ 当該年度の前年度末における地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百十四条に規定する債務負担行為(ヘに規定する設立法人以外の者のために債務を負担する行為を除く。)に基づく支出予定額(地方財政法第五条各号に規定する経費その他の政令で定める経費の支出に係るものとして総務省令で定めるところにより算定した額に限る。)
ハ 当該年度の前年度末までに起こした一般会計等以外の特別会計に係る地方債の元金の償還に充てるため、一般会計等からの繰入れが必要と見込まれる金額の合計額として総務省令で定めるところにより算定した額
ニ 当該年度の前年度末までに当該地方公共団体が加入する地方公共団体の組合又は当該地方公共団体が設置団体である地方開発事業団が起こした地方債の元金の償還に充てるため、当該地方公共団体による負担又は補助が必要と見込まれる金額の合計額として総務省令で定めるところにより算定した額
ホ 当該年度の前年度の末日における当該地方公共団体の職員(地方自治法第二百四条第一項の職員をいい、都道府県にあっては市町村立学校職員給与負担法(昭和二十三年法律第百三十五号)第一条及び第二条に規定する職員を含み、市町村及び特別区にあっては当該職員を除く。)の全員が同日において自己の都合により退職するものと仮定した場合に支給すべき退職手当の額のうち、当該地方公共団体の一般会計等において実質的に負担することが見込まれるものとして総務省令で定めるところにより算定した額
ヘ 当該年度の前年度末における当該地方公共団体が単独で又は他の地方公共団体と共同して設立した法人で政令で定めるもの(以下この号において「設立法人」という。)の負債の額及び当該地方公共団体が設立法人以外の者のために債務を負担している場合における当該債務の額のうち、これらの者の財務内容その他の経営の状況を勘案して当該地方公共団体の一般会計等において実質的に負担することが見込まれるものとして総務省令で定めるところにより算定した額
チ 当該年度の前年度末における当該地方公共団体が加入する地方公共団体の組合又は当該地方公共団体が設置団体である地方開発事業団の連結実質赤字額に相当する額のうち、当該地方公共団体の一般会計等において実質的に負担することが見込まれるものとして総務省令で定めるところにより算定した額
リ イに規定する地方債の償還額又はロからヘまでに掲げる額に充てることができる地方自治法第二百四十一条の基金として総務省令で定めるものの当該年度の前年度末における残高の合計額
ヌ イに規定する地方債の償還額又はロからニまでに掲げる額に充てることができる特定の歳入の見込額に相当する額として総務省令で定めるところにより算定した額
ル 地方交付税法の定めるところにより、イに規定する地方債の償還、ロに規定する債務負担行為に基づく支出、ハに規定する一般会計等からの繰入れ又はニに規定する地方公共団体による負担若しくは補助に要する経費として普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入されることが見込まれる額として総務省令で定めるところにより算定した額(特別区にあっては、これに相当する額として総務大臣が定める額とする。)
五 早期健全化基準 財政の早期健全化(地方公共団体が、財政収支が不均衡な状況その他の財政状況が悪化した状況において、自主的かつ計画的にその財政の健全化を図ることをいう。以下同じ。)を図るべき基準として、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率のそれぞれについて、政令で定める数値をいう。
六 財政再生基準 財政の再生(地方公共団体が、財政収支の著しい不均衡その他の財政状況の著しい悪化により自主的な財政の健全化を図ることが困難な状況において、計画的にその財政の健全化を図ることをいう。以下同じ。)を図るべき基準として、実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債費比率のそれぞれについて、早期健全化基準の数値を超えるものとして政令で定める数値をいう。
(健全化判断比率の公表等)
第三条 地方公共団体の長は、毎年度、前年度の決算の提出を受けた後、速やかに、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率(以下「健全化判断比率」という。)並びにその算定の基礎となる事項を記載した書類を監査委員の審査に付し、その意見を付けて当該健全化判断比率を議会に報告し、かつ、当該健全化判断比率を公表しなければならない。
2 前項の規定による意見の決定は、監査委員の合議によるものとする。
3 地方公共団体の長は、第一項の規定により公表した健全化判断比率を、速やかに、都道府県及び地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)の長にあっては総務大臣に、指定都市を除く市町村(第二十九条を除き、以下「市町村」という。)及び特別区の長にあっては都道府県知事に報告しなければならない。この場合において、当該報告を受けた都道府県知事は、速やかに、当該健全化判断比率を総務大臣に報告しなければならない。
4 都道府県知事は、毎年度、前項前段の規定による報告を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
5 総務大臣は、毎年度、第三項の規定による報告を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
6 地方公共団体は、健全化判断比率の算定の基礎となる事項を記載した書類をその事務所に備えて置かなければならない。
7 包括外部監査対象団体(地方自治法第二百五十二条の三十六第一項に規定する包括外部監査対象団体をいう。以下同じ。)においては、包括外部監査人(同法第二百五十二条の二十九に規定する包括外部監査人をいう。以下同じ。)は、同法第二百五十二条の三十七第一項の規定による監査のため必要があると認めるときは、第一項の規定により公表された健全化判断比率及びその算定の基礎となる事項を記載した書類について調査することができる。