(目的)
第一条 この法律は、配偶者のない女子であつて現に児童を扶養している者に対し、資金の貸付を行うこと等により、その経済的自立の助成と生活意欲の助長を図り、あわせてその扶養している児童の福祉を増進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「配偶者のない女子」とは、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)と死別した女子であつて、現に婚姻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。以下同じ。)をしていない者及びこれに準ずる左の各号の一に掲げる女子をいう。
四 配偶者が海外にあるためその扶養を受けることができない女子
五 配偶者が精神又は身体の障害により長期にわたつて労働能力を失つている女子
六 前各号に掲げる者に準ずる女子であつて政令で定める者
2 この法律において「児童」とは、二十歳に満たない者をいう。
(借主及び貸付の種類)
第三条 都道府県は、配偶者のない女子であつて、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条の規定により現に児童を扶養している者(以下「配偶者のない女子であつて現に児童を扶養している者」という。)に対し、左の各号に掲げる資金を貸し付けることができる。
一 事業を開始するのに必要な資金(以下「生業資金」という。)
二 就職に際し必要な資金(以下「支度資金」という。)
三 事業を開始し、又は就職するために必要な知識、技能を習得するのに必要な資金(以下「技能習得資金」という。)
四 技能習得資金の貸付を受けて前号に規定する知識、技能を習得している期間中の生活を維持するのに必要な資金(以下「生活資金」という。)
五 事業を継続するのに必要な資金(以下「事業継続資金」という。)
六 その扶養している児童に学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する高等学校若しくは大学に就学させ、又は医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十一条に規定する実地修練(以下「実地修練」という。)を受けさせるのに必要な資金(以下「修学資金」という。)
七 その扶養している児童が事業を開始し、又は就職するために必要な知識、技能を当該児童に習得させるのに必要な資金(以下「修業資金」という。)
2 前項の場合において、修学資金又は修業資金の貸付については、その貸付により就学し、若しくは実地修練を受け、又は知識、技能を習得する者が、連帯債務を負担する借主として加わらなければならない。
3 前二項の規定による修学資金の貸付は、その貸付により高等学校又は大学に就学している児童が二十歳に達した後でも、その者が当該学校を卒業するまで継続して行うことができる。その者が引き続き大学に就学した場合又はその者若しくは当該引き続き大学に就学した者が卒業後直ちに実地修練を受ける場合においても、当該大学を卒業し、又は当該実地修練を終了するまで、また同様とする。
4 前三項の規定による修学資金又は修業資金の貸付期間中にその貸付を受けている第一項に規定する者が死亡した場合においては、修学資金の貸付により就学している者が当該学校を卒業し、若しくは当該実地修練(大学に就学し医学を履修している者が、当該大学を卒業後直ちに実地修練を受ける場合においては、当該実地修練を含む。)を終了するまで又は修業資金の貸付により知識、技能を修得している児童が当該習得を終了するまで、その者に対して修学資金又は修業資金の貸付を継続して行うことができる。但し、修業資金については、その者が二十歳に達した後は、この限りでない。
(貸付金額の限度)
第四条 前条の規定により貸し付ける資金(以下「貸付金」という。)の額は、左の各号に掲げる通りとする。
三 技能習得資金の貸付は、知識、技能を習得する期間中二年をこえない範囲内において月額千五百円以内
四 生活資金の貸付は、技能習得資金の貸付を受けて知識、技能を習得している期間中本人につき月額千円以内及びその扶養している児童一人につき月額五百円以内
六 修学資金の貸付は、高等学校に就学する者に係るときは、就学期間中月額五百円以内、大学に就学し、又は実地修練を受けている者に係るときは、就学期間中又は実地修練の期間中月額二千円以内
七 修業資金の貸付は、児童が知識、技能を習得する期間中二年をこえない範囲内において月額千五百円以内
(貸付方法及び利率)
第五条 貸付金の償還期限は、生業資金については据置期間経過後四年以内、支度資金及び修業資金については据置期間経過後五年以内、技能習得資金及び生活資金については据置期間経過後十年以内、事業継続資金については二年以内、修学資金については据置期間経過後二十年以内とし、償還は、年賦償還、半年賦償還又は月賦償還の方法によるものとする。但し、貸付金の貸付を受けた者は、いつでも繰上償還をすることができる。
2 貸付金の利率は、年三分とする。但し、据置期間中は、無利子とする。
3 第一項の据置期間は、生業資金及び支度資金については貸付の日から一年間、技能習得資金、生活資金及び修業資金については知識、技能を習得する期間が満了して後六箇月を経過するまで、修学資金については当該修学資金の貸付により就学した者が当該学校を卒業して後(その者が引き続き修学資金の貸付により大学に就学した場合又はその者若しくは当該引き続き大学に就学した者が卒業後直ちに修学資金の貸付により実地修練を受ける場合においては、最終の大学を卒業し、又は実地修練を終了した後)六箇月を経過するまでとする。
(保証人)
第六条 貸付金の貸付を受けようとする者は、保証人を立てなければならない。
2 前項の保証人は、貸付金の貸付を受けた者と連帯して債務を負担するものとし、その保証債務は、第九条の規定による違約金を包含するものとする。
(貸付の決定)
第七条 都道府県は、貸付金の貸付の申請があつたときは、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第八条に規定する都道府県児童福祉審議会(以下「都道府県児童福祉審議会」という。)の意見を聞いて、貸し付けるかどうかを決定しなければならない。
(一時償還)
第八条 都道府県は、貸付金の貸付を受けた者が左の各号の一に該当する場合には、第五条の規定にかかわらず、当該貸付を受けた者に対し、いつでも貸付金の全部又は一部につき、一時償還を請求することができる。
二 虚偽の申請その他不正な手段により貸付を受けたとき。
(違約金)
第九条 都道府県は、貸付金の貸付を受けた者が支払期日に償還金又は前条の規定により一時償還すべき金額を支払わなかつたときは、延滞元利金額百円につき一日四銭の割合をもつて、支払期日の翌日から支払当日までの日数により計算した違約金を徴収する。但し、当該支払期日に支払わないことにつき、災害その他やむを得ない事由があると認められるときは、この限りでない。
(貸付の停止)
第十条 都道府県は、左に掲げる場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聞いて、将来に向つて貸付金の貸付をやめることができる。
一 貸付金の貸付を受けた者が第八条第一号又は第二号に該当する場合
二 貸付の目的を達成する見込がないと認められる場合
(委任事項)
第十一条 第三条から前条までに定めるものの外、貸付金の貸付の手続、貸付金の償還その他貸付金に関し必要な事項は、政令で定める。
(特別会計)
第十二条 都道府県は、この法律による貸付金の貸付を行うについては、特別会計を設けなければならない。
2 前項の特別会計においては、一般会計からの繰入金及び第十三条第一項の規定による国からの借入金並びに貸付金の償還金(利子及び第九条の規定による違約金を含む。以下同じ。)及び附属雑収入をもつてその歳入とし、貸付金をもつてその歳出とする。
(国の貸付)
第十三条 国は、貸付金の財源として、都道府県が特別会計に繰り入れる金額と同額の金額を、無利子で、都道府県に貸し付けるものとする。
2 都道府県は、この法律による貸付金の貸付業務を廃止したときは、その際における未貸付額及びその後において支払を受けた貸付金の償還金の額の二分の一に相当する金額を、政令の定めるところにより国に償還しなければならない。
3 第一項の規定による貸付の手続に関し必要な事項は、厚生省令で定める。
(貸付業務の報告)
第十四条 都道府県知事は、この法律による貸付金の貸付業務の状況に関し、厚生省令の定めるところにより、厚生大臣に報告しなければならない。
(母子相談員)
2 母子相談員は、配偶者のない女子であつて現に児童を扶養している者に対し、身上相談に応じ、その自立に必要な指導を行う等これらの者の福祉の増進に努める。
3 母子相談員は、社会的信望があり、且つ、前項に規定する母子相談員の職務を行うのに必要な熱意を持つている者の中から、都道府県知事が任命する。
4 母子相談員は、非常勤とし、その職務を行うのに必要な費用の弁償を受ける。
5 この法律により母子相談員に要する費用は、都道府県が支弁し、国は、政令の定めるところにより、その二分の一を負担する。
(売店等の設置の許可)
第十六条 国又は地方公共団体の設置した事務所その他の公共的施設の管理者は、配偶者のない女子であつて現に児童を扶養している者からの申請があつたときは、その公共的施設内において、新聞、雑誌、たばこ、事務用品、食料品その他の物品を販売し、又は理容業、美容業等の業務を行うために、売店又は理容所、美容所等の施設を設置することを許すように努めなければならない。
2 前項の規定により売店その他の施設を設置することを許された者は、病気その他正当な理由がある場合の外は、みずからその業務に従事しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項に規定する売店その他の施設の設置及びその運営を円滑にするため、当該都道府県の区域内の公共的施設の管理者と協議を行い、且つ、公共的施設内における売店等の設置の可能な場所、販売物品の種類等を調査し、その結果を配偶者のない女子であつて現に児童を扶養している者に知らせる措置を講じなければならない。
(専売品販売の許可)
第十七条 日本専売公社は、配偶者のない女子であつて現に児童を扶養している者がたばこ専売法(昭和二十四年法律第百十一号)の規定による製造たばこの小売人の指定を申請したときは、同法第三十一条第一項各号の一に該当する場合を除き、その者を製造たばこの小売人に指定するように努めなければならない。
2 前条第二項の規定は、前項の規定により小売人に指定された者について準用する。