学校図書館法
法令番号: 法律第185号
公布年月日: 昭和28年8月8日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

戦後の教育制度改革において、学校教育の内容充実と発達促進のために学校図書館の設置が必要である。学校図書館は学習指導の効率向上、自発的学習態度の養成、個性の伸展と教養の向上に資する。また読書指導の徹底や、図書館利用を通じた社会的・民主的な生活態度の育成という指導機関としての機能も持つ。しかし現状では法的措置がなく、設置率は低調で、財政基盤も不安定なため父兄の負担に依存し、専門的教職員の確保も困難である。そこで、学校図書館の設置・運営・財政制度を確立し、必要な教職員を養成配置することで、学校教育の充実と発達を図るため、本法案を提案する。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 本会議 第25号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年7月21日)
参議院
(昭和28年7月23日)
(昭和28年7月24日)
(昭和28年7月28日)
(昭和28年7月29日)
(昭和28年8月10日)
学校図書館法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十五号
学校図書館法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
学校図書館審議会(第八条―第十二条)
第三章
国の負担(第十三条―第十五条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、学校図書館が、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であることにかんがみ、その健全な発達を図り、もつて学校教育を充実することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校図書館」とは、小学校(盲学校、ろう学校及び養護学校の小学部を含む。)、中学校(盲学校、ろう学校及び養護学校の中学部を含む。)及び高等学校(盲学校、ろう学校及び養護学校の高等部を含む。)(以下「学校」という。)において、図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、整理し、及び保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによつて、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備をいう。
(設置義務)
第三条 学校には、学校図書館を設けなければならない。
(学校図書館の運営)
第四条 学校は、おおむね左の各号に掲げるような方法によつて、学校図書館を児童又は生徒及び教員の利用に供するものとする。
一 図書館資料を収集し、児童又は生徒及び教員の利用に供すること。
二 図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
三 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を行うこと。
四 図書館資料の利用その他学校図書館の利用に関し、児童又は生徒に対し指導を行うこと。
五 他の学校の学校図書館、図書館、博物館、公民館等と緊密に連絡し、及び協力すること。
2 学校図書館は、その目的を達成するのに支障のない限度において、一般公衆に利用させることができる。
(司書教諭)
第五条 学校には、学校図書館の専門的職務を掌らせるため、司書教諭を置かなければならない。
2 前項の司書教諭は、教諭をもつて充てる。この場合において、当該教諭は、司書教諭の講習を修了した者でなければならない。
3 前項に規定する司書教諭の講習は、大学が文部大臣の委嘱を受けて行う。
4 前項に規定するものを除く外、司書教諭の講習に関し、履修すべき科目及び単位その他必要な事項は、文部省令で定める。
(設置者の任務)
第六条 学校の設置者は、この法律の目的が十分に達成されるようその設置する学校の学校図書館を整備し、及び充実を図ることに努めなければならない。
(国の任務)
第七条 国は、学校図書館を整備し、及びその充実を図るため、左の各号に掲げる事項の実施に努めなければならない。
一 学校図書館の整備及び充実並びに司書教諭の養成に関する総合的計画を樹立すること。
二 学校図書館(国立学校の学校図書館を除く。)の設置及び運営に関し、専門的、技術的な指導及び勧告を与えること。
三 前各号に掲げるものの外、学校図書館の整備及び充実のため必要と認められる措置を講ずること。
第二章 学校図書館審議会
(設置)
第八条 文部省に学校図書館審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(組織)
第九条 審議会は、二十人の委員で組織する。
2 委員は、学校図書館に関し学識経験のある者の中から、文部大臣が任命する。
3 委員の任期は、二年とする。但し、欠員が生じた場合の補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。
(権限)
第十条 審議会は、第七条各号に掲げる事項、第十三条に規定する学校図書館の設備又は図書の基準その他学校図書館に関する重要事項について、文部大臣の諮問に応じて調査審議し、及びこれらの事項に関して文部大臣に建議する。
(委員の費用弁償等)
第十一条 委員は、非常勤とする。
2 委員は、その職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。
3 費用弁償の額及びその支給方法は、文部大臣が大蔵大臣と協議して定める。
(政令への委任)
第十二条 この法律に規定するものを除く外、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 国の負担
(国の負担)
第十三条 国は、地方公共団体が、その設置する学校の学校図書館の設備又は図書が審議会の議を経て政令で定める基準に達していない場合において、これを当該基準にまで高めようとするときは、これに要する経費の二分の一を負担する。但し、義務教育費国庫負担法(昭和二十七年法律第三百三号)の適用を妨げない。
(負担金の返還等)
第十四条 文部大臣は、前条の規定により負担金の交付を受けた者が左の各号の一に該当するときは、当該年度におけるその後の負担金の交付をやめるとともに、すでに交付した当該年度の負担金を返還させるものとする。
一 この法律又はこの法律に基く政令の規定に違反したとき。
二 負担金の交付の条件に違反したとき。
三 虚偽の方法によつて負担金の交付を受けたとき。
(政令への委任)
第十五条 前二条に規定するものを除く外、第十三条の規定による国の負担金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。
(司書教諭の設置の特例)
2 学校には、当分の間、第五条第一項の規定にかかわらず、司書教論を置かないことができる。
(地方財政法の一部改正)
3 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
第十条第二十四号の次に次の一号を加える。
二十五 学校図書館の設備及び図書の充実に要する経費
(文部省設置法の一部改正)
4 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
第二十七条第一項の表中中央産業教育審議会の項の次に次の一項を加える。
学校図書館審議会
学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)に基き文部大臣の諮問に応じ、学校図書館に関する重要事項を調査審議し、及び学校図書館に関する重要事項に関して文部大臣に建議すること。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 小笠原三九郎
文部大臣 大達茂雄