(援護の実施機関)
第九条 この法律に定める精神薄弱者に対する援護は、居住地を有する精神薄弱者については、その居住地を管轄する福祉事務所(社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)を管理する都道府県知事又は市町村長が、居住地を有しないか、又は明らかでない精神薄弱者については、その現在地の都道府県知事が行なうものとする。
(精神薄弱者福祉司)
第十条 都道府県は、精神薄弱者福祉司を置かなければならない。
2 市及び福祉事務所を設置する町村は、精神薄弱者福祉司を置くことができる。
3 精神薄弱者福祉司は、福祉事務所の長(以下「福祉事務所長」という。)の命を受けて、精神薄弱者の福祉に関し、主として、次の業務を行なうものとする。
一 福祉事務所の所員に対し、技術的指導を行なうこと。
二 第十三条第一項第二号に規定する業務のうち、専門的技術を必要とするものを行なうこと。
4 精神薄弱者福祉司が置かれていない福祉事務所の長は、十八歳以上の精神薄弱者に係る前項第二号の業務については、他に置かれている精神薄弱者福祉司の技術的援助及び助言を求めなければならない。
5 精神薄弱者福祉司は、前項の規定により福祉事務所長から技術的援助及び助言を求められたときは、これに協力しなければならない。
第十一条 精神薄弱者福祉司は、事務吏員又は技術吏員とし、次の各号の一に該当する者のうちから、任用しなければならない。
一 社会福祉事業法に定める社会福祉主事たる資格を有する者であつて、精神薄弱者の福祉に関する事業に二年以上従事した経験を有するもの
二 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基づく大学において、厚生大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者
四 精神薄弱者の福祉に関する事業に従事する職員を養成する学校その他の施設で厚生大臣の指定するものを卒業した者
五 前各号に準ずる者であつて、精神薄弱者福祉司として必要な学識経験を有するもの
(精神薄弱者更生相談所)
第十二条 都道府県は、精神薄弱者厚生相談所を設けなければならない。
2 精神薄弱者更生相談所は、精神薄弱者の福祉に関し、主として、次の業務を行なうものとする。
一 精神薄弱者に関する問題につき、家庭その他からの相談に応ずること。
二 十八歳以上の精神薄弱者の医学的、心理学的及び職能的判定を行ない、並びにこれに付随して必要な指導を行なうこと。
3 精神薄弱者更生相談所は、必要に応じ、巡回して、前項の業務を行なうことができる。
(福祉事務所)
第十三条 福祉事務所は、この法律の施行に関し、主として、次の業務を行なうものとする。
一 精神薄弱者の福祉に関し、必要な実情の把握につとめること。
二 精神薄弱者の福祉に関する相談に応じ、必要な調査及び指導を行なうこと並びにこれらに付随する業務を行なうこと。
2 福祉事務所長は、十八歳以上の精神薄弱者につき前項第二号の業務を行なうに当たつて、特に医学的、心理学的及び職能的判定を必要とする場合には、精神薄弱者更生相談所の判定を求めなければならない。
(協力機関)
第十四条 福祉事務所を設置しない町村(特別区を含む。)の長は、当該町村の区域内に居住地を有する精神薄弱者の援護について、都道府県知事又は福祉事務所長の行なう事務に協力しなければならない。
(民生委員の協力)
第十五条 民生委員法(昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員は、この法律の施行について、市町村長、福祉事務所長、精神薄弱者福祉司又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとする。
(福祉の措置)
第十六条 援護の実施機関は、十八歳以上の精神薄弱者につき、その福祉を図るため、必要に応じて次の措置をとらなければならない。
一 精神薄弱者又はその保護者(配偶者、親権を行なう者、後見人その他の者で、精神薄弱者を現に監護するものをいう。)を精神薄弱者福祉司又は社会福祉主事に指導させること。
二 精神薄弱者を当該地方公共団体の設置する精神薄弱者援護施設に入所させ、又は他の地方公共団体の設置する精神薄弱者援護施設に紹介すること。
三 精神薄弱者の援護を職親(精神薄弱者を自己のもとに預かり、その更生に必要な指導訓練を行なうことを希望する者であつて、援護の実施機関が適当と認めるものをいう。)に委託すること。
2 援護の実施機関は、次の各号の一に該当する場合においては、前項第二号の措置に代えて、社会福祉法人の設置する精神薄弱者援護施設に精神薄弱者の援護を委託することができる。
一 前項第二号の措置をとることができないか、又は相当でないとき。
二 当該施設に援護を委託することが、前項第二号の措置をとるよりも、当該精神薄弱者の福祉のために効果的であると認められるとき。
3 援護の実施機関は、第一項第二号若しくは第三号又は前項の措置をとるに当たつて、医学的、心理学的及び職能的判定を必要とする場合には、あらかじめ、精神薄弱者更生相談所の判定を求めなければならない。
4 第一項第二号又は第二項の措置については、援護の実施機関は、厚生大臣が審議会の意見を聞いて定める基準に適合する精神薄弱者援護施設に精神薄弱者を入所させ、若しくは紹介し、又はその援護を委託しなければならない。
(福祉事務所長への委任)
第十七条 援護の実施機関は、前条第一項及び第二項の措置をとる権限の全部又は一部をその管理する福祉事務所長に委任することができる。