(目的)
第一条 この法律は、汚物を衛生的に処理し、生活環境を清潔にすることにより、公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第二条 市町村(特別区の存する区域にあつては、都)は、つねに清掃思想の普及を図るとともに、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善を図る等清掃事業の能率的な運営につとめなければならない。
2 都道府県は、市町村に対し、前項の責務が充分に果されるように必要な技術的援助を与えることにつとめなければならない。
3 国は、汚物の処理に関する科学技術の向上を図るとともに、市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が充分に果されるように必要な技術的及び財政的援助を与えることにつとめなければならない。
(定義)
第三条 この法律で「汚物」とは、ごみ、燃えがら、汚でい、ふん尿及び犬、ねこ、ねずみ等の死体をいう。
(特別清掃地域)
第四条 特別区及び市の区域を特別清掃地域とする。但し、政令で定める基準に従い都道府県知事が指定する区域を除く。
2 都道府県知事は、政令で定める基準に従い、町村の区域の全部又は一部を指定して、特別清掃地域とすることができる。
(清潔の保持)
第五条 特別清掃地域内の土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。以下同じ。)は、その土地又は建物内の汚物を掃除して清潔を保つとともに、便所及び汚物容器を衛生的に維持管理しなければならない。
(汚物の処分)
第六条 市町村(特別区の存する区域にあつては、都。以下同じ。)は、特別清掃地域内の土地又は建物の占有者によつて集められた汚物を、一定の計画に従つて収集し、これを処分しなければならない。その収集及び処分は、政令で定める基準に従い、衛生的に行われなければならない。
2 市町村は、前項の計画を定めるにあたつては、特別清掃地域の全部にわたつて、土地又は建物の占有者によつて集められた汚物により環境衛生上の支障が生じないうちに、これを収集することができるようにしなければならない。
3 特別清掃地域内の土地又は建物の占有者は、その土地又は建物内の汚物のうち、焼却、埋没等の方法により容易に衛生的な処分をすることができる汚物は、なるべく自ら処分するようにつとめるとともに、自ら処分しない汚物についても、食物の残廃物とその他のごみを各別の容器に集める等、市町村の行う汚物の収集及び処分に協力するようにつとめなければならない。
(多量の汚物の処理)
第七条 市町村長(特別区の存する区域にあつては、都知事。以下同じ。)は、厚生省令の定めるところにより、特別清掃地域において業務上その他の事由により多量の汚物を生ずる土地又は建物の占有者に対し、衛生的な方法で当該汚物を市町村長の指定する場所に運搬し、又は処分すべきことを命ずることができる。
2 前項の命令に不服のある者は、当該命令を受けた後十日以内に、市町村長に対し、異議の申立をすることができる。
3 前項の異議の申立があつたときは、市町村長は、関係者の意見をきいて、当該異議に対する決定をし、これを異議の申立をした者へ通知しなければならない。
(特殊の汚物の処理)
第八条 市町村長は、特別清掃地域内の工場、事業場等で、清掃作業を困難にし、又は清掃施設を損うおそれがある汚物を生ずるものの経営者に対し、当該汚物について必要な処理を施し、又は衛生的な方法で当該汚物を市町村長の指定する場所に運搬し、若しくは処分すべきことを命ずることができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の場合に準用する。
(公共の清掃施設の設置)
第九条 市町村は、特別清掃地域内の必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。
(季節的清掃地域)
第十条 市町村長は、季節的観光地、キヤンプ場、スキー場、海水浴場その他季節的に多数人が集まる特別清掃地域以外の場所について、環境衛生上必要があると認めるときは、期間及び区域を指定して、季節的清掃地域を定めることができる。
2 季節的清掃地域については、第五条、第七条及び前条の規定を準用する。
(汚物の投棄禁止)
第十一条 何人も、みだりに左に掲げる行為をしてはならない。
一 特別清掃地域若しくは季節的清掃地域又はこれらの地域の地先海面(海岸から二百メートル以内に限る。)において汚物を捨てること。
二 下水道又は河川、運河、湖沼その他の公共の水域にごみ又はふん尿を捨てること。但し、終末処理場のある下水道にふん尿を捨てることはこの限りでない。
(ふん尿の使用方法の制限)
第十二条 特別清掃地域又は季節的清掃地域においては、ふん尿は、厚生省令で定める基準に適合した方法によるのでなければ、肥料として使用してはならない。
2 特別清掃地域又は季節的清掃地域において農業を営む者がふん尿を肥料として使用する場合においては、市町村長は、その者が前項の基準に適合した方法によりふん尿を肥料として使用することができるように、必要な施設を設けその他適当な措置を講ずるようにつとめなければならない。
(し尿浄化そう及びし尿消化そう)
第十三条 し尿浄化そうを設けようとする者は、その工事に着手する前に、厚生省令の定めるところにより、その旨を都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長)に届け出なければならない。但し、当該し尿浄化そうに関し、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項の規定による建築主事の確認を申請すべき場合は、この限りでない。
2 し尿浄化そう及びし尿消化そうは、厚生省令で定める基準に従つて維持管理しなければならない。
3 都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長)は、前項の施設によるし尿の処理が不完全であると認めるときは、その管理者に対し、当該施設を修理改造するまでこれを使用することを禁止し、又は当該施設によるし尿の処理方法の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(立入検査)
第十四条 都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長)は、必要があると認めるときは、当該吏員をして、し尿浄化そう又はし尿消化そうのある土地又は建物に立ち入り、その施設の維持管理に関し必要な検査をさせることができる。
2 前項の規定により立入検査を行う吏員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人から求められたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(汚物取扱業)
第十五条 特別清掃地域内においては、その地域の市町村長の許可を受けなければ、汚物の収集、運搬又は処分を業として行つてはならない。
2 前項の許可には、期限を附し、汚物の収集を行うことができる区域を定め、又は環境衛生上必要な条件を附することができる。
3 汚物の収集につき第一項の許可を受けた者は、汚物の収集につき、当該市町村が第二十条の規定により条例で定める収集に関する手数料の額に相当する額をこえる料金を受けてはならない。
4 第一項の許可を受けた者は、特別清掃地域内においては、政令で定める基準に従い、衛生的に汚物の収集、運搬又は処分を行わなければならない。
5 市町村長は、第一項の許可を受けた者が、その業務に関して第十一条の規定に違反し、又は第二項の規定による区域の制限若しくは条件若しくは前二項の規定に違反した場合において、警告を発したにもかかわらず、なお継続してこれらの違反行為を行つたときは、その許可を取り消し、又は期間を定めて、その業務を行うことを禁止することができる。
6 市町村長は、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、当該処分を受けるべき者にその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
(大掃除の実施)
第十六条 建物の占有者は、建物内を全般にわたつて清潔にするため、毎年一回以上、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。
2 市町村長は、前項の計画において大掃除の日時、区域、方法等を定めるにあたつては、大掃除が当該市町村の区域の全部にわたつて円滑に実施されるようにしなければならない。
3 市町村の当該吏員は、大掃除の実施につき、実施に環境衛生上必要な指導をすることができる。
(環境衛生指導員)
第十七条 第十四条第一項に規定する当該吏員の職権及び清掃に関する指導の職務を行わせるため、都道府県及び保健所を設置する市に、環境衛生指導員を置く。
2 環境衛生指導員は、都道府県又は保健所を設置する市の吏員であつて、政令で定める資格を有するもののうちから、都道府県知事又は市長が任命する。
(国庫補助)
第十八条 国は、政令の定めるところにより、市町村に対し、左に掲げる費用の一部を補助することができる。
一 ごみ又はふん尿を処理するために必要な施設の設置に要する費用
二 災害その他の事由により特に必要となつた清掃を行うために要する費用
(特別な助成)
第十九条 国は、市町村に対し、し尿消化そう、ごみ焼却場その他の清掃施設の設置に必要な資金の融通又はそのあつ旋につとめなければならない。
(手数料の徴収)
第二十条 市町村は、市町村が行う汚物の収集及び処分に関し、条例の定めるところにより、手数料を徴収することができる。
(罰則)
第二十一条 第十五条第一項の規定に違反し、又は同条第五項の規定による禁止処分に違反した者は、六箇月以下の懲役若しくは三万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十二条 第十三条第三項の規定による処分に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。
第二十三条 第七条第二項(第八条第二項及び第十条第二項の規定により準用される場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する期間を経過した後(第七条第二項の規定による異議の申立があつた場合においては、その異議に対する決定があつた後)において、第七条(第十条第二項の規定により準用される場合を含む。)又は第八条の規定による命令に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。
第二十四条 公共の利益に反してみだりに第十一条各号に掲げる行為をした者は、三万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第二十五条 正当の理由がなくて、第十四条第一項の規定による当該吏員の立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。
第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑又は科料刑を科する。