恩給法
法令番号: 法律第四十八號
公布年月日: 大正12年4月14日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル恩給法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十二年四月十三日
內閣總理大臣兼海軍大臣 男爵 加藤友三郞
外務大臣 伯爵 內田康哉
鐵道大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
司法大臣 岡野敬次郞
內務大臣 水野鍊太郞
農商務大臣 荒井賢太郞
大藏大臣 市來乙彥
文部大臣 鎌田榮吉
遞信大臣 子爵 前田利定
法律第四十八號
恩給法
第一章 總則
第一條 公務員及之ニ準スヘキ者竝其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第二條 本法ニ於テ恩給トハ普通恩給、增加恩給、一時恩給、傷病賜金、扶助料及一時扶助料ヲ謂フ
普通恩給、增加恩給及扶助料ハ年金トシ一時恩給、傷病賜金及一時扶助料ハ一時金トス
第三條 年金タル恩給ノ給與ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル月ノ翌月ヨリ之ヲ始メ權利消滅ノ月ヲ以テ終ル
第四條 恩給年額竝一時恩給及一時扶助料ノ額ノ圓位未滿ハ之ヲ圓位ニ滿タシム
第五條 恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル日ヨリ七年間請求セサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第六條 普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者退職後一年內ニ再就職スルトキハ前條ノ期間ハ再就職ニ係ル官職ノ退職ノ日ヨリ進行ス
前項ノ規定ハ普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者退職後一年內ニ第四十二條第一項第一號ニ規定スル宮內職員トシテ就職シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第七條 時效期間滿了前二十日內ニ於テ天災其ノ他避クヘカラサル事變ノ爲請求ヲ爲スコト能ハサルトキハ其ノ妨碍ノ止ミタル日ヨリ二十日內ハ時效完成セス
時效期間滿了前六月內ニ於テ前權利者生死若ハ所在不明ノ爲又ハ未成年者若ハ禁治產者法定代理人ヲ有セサル爲請求ヲ爲スコト能ハサルトキハ請求ヲ爲スコトヲ得ルニ至リタル日ヨリ六月內ハ時效完成セス
時效期間滿了前ニ適法ニ請求書ヲ發シタルコトノ通信官署ノ公證アルトキハ時效期間內ニ權限アル官公署ニ到達セサルモ之ヲ時效期間內ニ到達シタルモノト看做ス
第八條 公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セラレ得ヘキ在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ二以上ノ恩給ヲ併給セラルヘキ場合ニ於テハ其ノ者ノ選擇ニ依リ其ノ一ヲ給ス但シ特ニ併給スヘキコトヲ定メタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セラレ得ヘキ在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ本法ニ依ル恩給ト宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩給トヲ給セラルヘキ場合ニ於テ宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ給セラレタルトキハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
第九條 年金タル恩給ヲ受クルノ權利ヲ有スル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ權利消滅ス
一 死亡シタルトキ
二 死刑又ハ無期若ハ六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキ
三 國籍ヲ失ヒタルトキ
第十條 恩給權者死亡シタルトキハ其ノ生存中ノ恩給ニシテ給與ヲ受ケサリシモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ當該公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ遺族ニ給シ遺族ナキトキハ死亡者ノ相續人ニ給ス
第十一條 恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ擔保ニ供スルコトヲ得ス
恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ國稅徵收法又ハ國稅徵收ノ例ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十二條 恩給ヲ受クルノ權利ハ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外內閣恩給局長之ヲ裁定ス
第十三條 行政上ノ處分ニ因リ恩給ニ關スル權利ヲ侵害セラレタリトスル者ハ處分後一年內ニ內閣恩給局長ニ具申シ其ノ裁決ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ六月內ニ內閣總理大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項ノ具申ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 內閣總理大臣及內閣恩給局長ノ裁決ハ關係官廳ヲ覊束ス
第十五條 內閣總理大臣第十三條第二項ノ訴願ノ裁決ヲ爲ス場合ニ於テハ恩給審查會ニ諮問スヘシ
恩給審查會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 恩給ノ負擔ハ左ノ區分ニ依ル
一 文官及準文官竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス但シ文官ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受ケサル者ノ一時恩給ハ最終ニ之ニ俸給ヲ給シタル者之ヲ負擔ス
二 軍人及準軍人竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス
三 朝鮮、臺灣及樺太ニ於ケルモノヲ除クノ外公立ノ小學校、實業補習學校、幼稚園及盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ敎育職員及準敎育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ其ノ學校又ハ幼稚園ノ所在地ヲ管轄スル府縣又ハ之ニ準スヘキ地方經濟之ヲ負擔ス
四 前號ニ規定スル者以外ノ敎育職員及準敎育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス但シ在外指定學校職員ノ一時恩給ヲ除クノ外一時恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス
五 警察監獄職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス
六 待遇職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負擔ス但シ官國幣社ノ神職及其ノ遺族ノ恩給ハ國庫之ヲ負擔ス
第十七條 前條第一號、第二號又ハ第四號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年中ニ第三號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年又ハ第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受ケサルモノノ在職年ヲ通算シテ國庫ヨリ恩給ヲ給スル場合ニ於テハ國庫ハ通算セラルヘキ在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ第三號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ニ恩給ヲ給スル者又ハ第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニ俸給ヲ給スル者ニ對シ請求スルコトヲ得
前條第三號、第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ニ恩給ヲ給スヘキ國庫以外ノ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ第一號、第二號若ハ第四號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年又ハ第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ受クルモノノ在職年ヲ通算シテ恩給ヲ給スル場合ニ於テハ國庫ニ對シ其ノ通算セラルヘキ在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ請求スルコトヲ得
前條第三號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ニ恩給ヲ給スヘキ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ他府縣又ハ之ニ準スヘキ經濟ノ管轄內ニ於テ在職シタル第三號ニ揭クル公務員又ハ之ニ準スヘキ者トシテノ在職年ヲ含ム場合ニ於テハ當該他府縣又ハ之ニ準スヘキ經濟ニ對シ其ノ合算セラルル在職年ニ應シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分擔ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ハ前條第四號若ハ第五號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給ノ分擔及同條第三號、第五號若ハ第六號ニ揭クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給相互ノ分擔ニ付之ヲ準用ス
第十八條 國庫ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公務員ニ俸給ヲ給スル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ但シ府縣費ヨリ俸給ヲ給スル文官、在外指定學校及國庫ノ支辨ニ屬スル地方費ヲ以テ維持スル公立學校ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
國庫以外ノ經濟ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公務員ニ俸給ヲ給スル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ其ノ經濟ニ納付スヘシ
前項ノ經濟ニ對シテハ國庫ハ前項ニ規定スル納金額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ交付ス
第二章 公務員
第一節 通則
第十九條 本法ニ於テ公務員トハ文官、軍人、敎育職員及警察監獄職員竝第二十四條ニ揭クル待遇職員ヲ謂フ
本法ニ於テ公務員ニ準スヘキ者トハ準文官、準軍人及準敎育職員ヲ謂フ
第二十條 文官トハ武官又ハ宮內官以外ノ官ニ在ル者ヲ謂フ但シ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外國庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ハ此ノ限ニ在ラス
準文官トハ高等文官ノ試補、判任官見習及國庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ニシテ前項但書ノ規定ニ基ク勅令ヲ以テ指定セラレサルモノヲ謂フ
第二十一條 軍人トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
一 陸軍又ハ海軍ノ現役、豫備役、後豫備役又ハ補充兵役ニ在ル者
二 國民兵役ニ在ル者ニシテ召集セラレタルモノ及志願ニ依リ國民軍ニ編入セラレタル者
準軍人トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
一 陸軍ノ見習士官及海軍ノ候補生
二 勅令ヲ以テ指定スル陸軍又ハ海軍ノ學生生徒
第二十二條 敎育職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
一 公立ノ學校若ハ圖書館又ハ在外指定學校ノ職員ニシテ國庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ルモノ及判任官以上ノ待遇ヲ受クルモノ
二 府縣立師範學校校長
前項ノ在外指定學校トハ在外國本邦人ノ爲ニ設置シタル學校ニシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ指定シタルモノヲ謂フ
準敎育職員トハ官立又ハ公立ノ學校ノ職員ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノヲ謂フ
第二十三條 警察監獄職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
一 警部補、巡查、陸軍警查、海軍警查、貴族院守衞及衆議院守衞
二 看守、女監取締、陸軍監獄看守及海軍監獄看守
三 判任官ノ待遇ヲ受クル消防手
第二十四條 待遇職員トハ左ニ揭クル者ヲ謂フ
一 判任官以上ノ待遇ヲ受クル神宮司廳職員、神宮神部署職員及官國幣社ノ神職
二 判任官以上ノ待遇ヲ受クル監獄ノ保健技師、保健技手、敎誨師、敎師、作業技手、感化院職員及矯正院職員
三 地方待遇職員令ニ依リ判任官以上ノ待遇ヲ受クル者ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
四 前三號ニ揭クル者ヲ除クノ外國庫ヨリ俸給又ハ給料ヲ給スル待遇職員ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
第二十五條 本法ニ於テ就職トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルコトヲ謂フ
一 文官ニ在リテハ任官但シ終身官タル文官ニ在リテハ任官ノ外復職
二 現役軍人ニ在リテハ任官又ハ入營若ハ入團、非現役軍人ニ在リテハ召集ニ依ル部隊編入又ハ志願ニ依リ軍人タル勤務ニ就クコト
三 敎育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其ノ他ノモノニ在リテハ任命
四 警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其ノ他ノモノニ在リテハ任命但シ巡查若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手警部補ニ任シ又ハ警部補巡查若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ニ就職スルトキハ之ヲ轉任ト看做ス
五 待遇職員ニ在リテハ任命
第二十六條 本法ニ於テ退職トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルコトヲ謂フ
一 文官ニ在リテハ免官、退官又ハ失官但シ終身官タル文官ニ在リテハ免官、退官、失官ノ外退職
二 現役軍人ニ在リテハ現役ヲ離ルルコト、非現役軍人ニ在リテハ召集セラレタル者ニ付テハ召集解除志願ニ依リ軍人タル勤務ニ服スル者ニ付テハ解職
三 敎育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退官又ハ失官、其ノ他ノモノニ在リテハ免職、退職、解職又ハ失職
四 警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退官又ハ失官、其ノ他ノモノニ在リテハ免職、退職又ハ失職但シ警部補他ノ官職ニ轉シ又ハ他ノ官ヨリ警部補ニ轉シタルトキハ之ヲ退職ト看做ス
五 待遇職員ニ在リテハ免職、退職又ハ失職
第二十七條 第二十五條第一號及前條第一號ノ規定ハ準文官ノ就職及退職ニ付之ヲ準用ス
第二十五條第三號及前條第三號ノ規定ハ準敎育職員ノ就職及退職ニ付之ヲ準用ス
準軍人ノ就職トハ戰務、戒嚴地境內ノ勤務又ハ外國ノ鎭戍ニ服スルコトヲ謂ヒ退職トハ其ノ勤務ヲ終ルコトヲ謂フ
第二十八條 公務員ノ在職年ハ就職ノ月ヨリ之ヲ起算シ退職又ハ死亡ノ月ヲ以テ終ル
退職シタル後再就職シタルトキハ前後ノ在職年月數ハ之ヲ合算ス但シ一時恩給ノ基礎ト爲ルヘキ在職年ニ付テハ前ニ一時恩給ノ基礎ト爲リタル在職年ノ年月數ハ之ヲ合算セス
退職シタル月ニ於テ再就職シタルトキハ再在職ノ在職年ハ再就職ノ月ノ翌月ヨリ之ヲ起算ス
第二十九條 公務員二以上ノ官職ヲ併有スル場合ニ於テ其ノ重複スル在職年ニ付テハ年數計算ニ關シ利益ナル一官職ノ在職年ニ依ル
第三十條 軍人ノ恩給權ニ付其ノ在職年ヲ計算スル場合ニ於テハ十一年ニ達スル迄ハ軍人又ハ警察監獄職員以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ四分ノ三ニ當ル年月數ヲ以テ之ヲ計算ス
第三十一條 警察監獄職員ノ恩給權ニ付其ノ在職年ヲ計算スル場合ニ於テハ十年ニ達スル迄ハ警察監獄職員又ハ軍人以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ三分ノ二ニ當ル年月數ヲ以テ之ヲ計算ス
第三十二條 公務員其ノ職務ヲ以テ從軍シタルトキハ左記各號ノ規定ニ依リ加算ス
一 戰地ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ從軍期間ノ一月ニ付三月
二 戰地外ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月半
前項ノ規定ハ公務員其ノ職務ヲ以テ戰爭ニ準スヘキ事變ニ際シ戰務ニ服シタル場合ニ付之ヲ準用ス
戰爭ノ期間及地域、戰務ノ範圍竝戰爭ニ準スヘキ事變ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三條 公務員外國ノ交戰又ハ擾亂ノ地域內ニ於テ危險ヲ顧ミス其ノ職務ヲ以テ勤務シタルトキハ在勤期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
前項ノ外國ノ交戰又ハ擾亂ノ地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條 公務員戒嚴地境內ニ於テ危險ヲ顧ミス其ノ職務ヲ以テ勤務シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
前項ノ場合ニ於テ其ノ勤務ノ場所カ內國ナルトキハ加算年ハ其ノ二分ノ一トス
第三十五條 公務員外國鎭戍ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
第三十六條 航空機乘員タル公務員其ノ職務ヲ以テ航空勤務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付二月以內ヲ加算ス
第三十七條 潛水艦乘員タル公務員其ノ職務ヲ以テ在役潛水艦ノ勤務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月ヲ加算ス
第三十八條 公務員其ノ職務ヲ以テ邊陬又ハ不健康ノ地域ニ引續キ一年以上在勤シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月以內ヲ加算ス不健康ナル業務ニ引續キ一年以上服務シタルトキ亦同シ
前項ノ地域相互間ノ轉勤ハ之ヲ引續キタル在勤ト看做ス
第一項ノ地域及業務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九條 海上勤務ニ服スル公務員其ノ職務ヲ以テ遠洋航海ヲ爲シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付半月ヲ加算ス
前項ノ遠洋航海ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條 第三十二條乃至前條ノ規定ニ依リ附スヘキ加算年ハ在職年ノ計算ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ實在職年ニ從トシテ之ヲ算入ス
加算年ヲ附スヘキ基礎在職年ハ加算事由ノ生シタル月ヨリ之ヲ起算シ其ノ事由ノ止ミタル月ヲ以テ終ル
二種以上ノ加算年ヲ附セラルヘキ期間ニ對シテハ最モ利益ナルモノニ依リ其ノ一ヲ附ス
第四十一條 左ニ揭クル年月數ハ在職年ヨリ之ヲ除算ス
一 普通恩給又ハ增加恩給ヲ受クルノ權利消滅シタル場合ニ於テ其ノ恩給權ノ基礎ト爲リタル在職年
二 第五十一條ノ規定ニ依リ公務員カ恩給ヲ受クルノ資格ヲ失ヒタル在職年
三 在職中六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル場合ニ於テハ其ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年月數但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年月數
四 公務員ノ不法ニ其ノ職務ヲ離レタル月ヨリ職務ニ復シタル月迄ノ在職年月數
五 宮內職員トシテノ在職年月數ニシテ宮內官ノ恩給規程ニ依リ除算セラルヘキモノ
第四十二條 左ニ揭クル年月數ハ之ヲ在職年ニ通算ス
一 宮內官ノ恩給規程ニ依リ宮內官恩給權ノ基礎ト爲ルヘキ宮內職員トシテノ在職年月數
二 準軍人ノ在職年月數
三 高等文官ノ試補又ハ判任官見習引續キ公務員ト爲リタルトキハ公務員トシテノ就職ニ接續スル其ノ勤續年月數ノ二分ノ一ニ相當スル年月數
四 準敎育職員引續キ敎育職員ト爲リタルトキハ敎育職員トシテノ就職ニ接續スル其ノ勤續年月數ノ二分ノ一ニ相當スル年月數
第二十八條、第二十九條及第三十一條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月數ノ計算ニ、第三十條ノ規定ハ前項第一號第三號又ハ第四號ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月數ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第四十三條 第三十二條乃至第四十條ノ規定ハ準軍人ノ在職年ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第四十一條ノ規定ハ前條第一項第二號乃至第四號ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月ニ付之ヲ準用ス
第四十四條 本法ニ於テ俸給トハ本俸及之ニ準スヘキモノヲ謂フ
本俸ニ準スヘキモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公務員二以上ノ官職ヲ併有シ各官廳ニ付俸給ヲ給セラルル場合ニ於テハ俸給額ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ者ノ俸給額トス
第四十五條 公務員所定ノ年數在職シ退職シタルトキハ之ニ普通恩給又ハ一時恩給ヲ給ス
第四十六條 公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ト爲リ失格原因ナクシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給及增加恩給ヲ給ス
公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ失格原因ナクシテ退職シタル後五年內ニ之カ爲不具癈疾ト爲リ又ハ其ノ程度增進シタル場合ニ於テ其ノ期間內ニ請求シタルトキハ新ニ普通恩給及增加恩給ヲ給シ又ハ現ニ受クル增加恩給ヲ不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給ニ改定ス
前項ノ期間ヲ經過シタルトキト雖恩給審查會ニ於テ不具癈疾カ公務ニ起因シタルコト顯著ナリト議決シタルトキハ決議後之ニ相當ノ恩給ヲ給シ又ハ改定ス
公務員公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ト爲ルモ公務員ニ重大ナル過失アリタルトキハ前三項ニ規定スル恩給ヲ給セス
第四十七條 前條ノ規定ハ準文官、陸軍ノ見習士官海軍ノ候補生以外ノ準軍人又ハ準敎育職員ニシテ在職中公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノ及陸軍ノ見習士官又ハ海軍ノ候補生ニシテ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノニ付之ヲ準用ス
第四十八條 公務員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノト看做ス
一 勅令ヲ以テ指定スル地域ニ在勤中其ノ地ニ於テ流行病ニ罹リタルトキ
二 戰地ニ於テ又ハ公務旅行中流行病ニ罹リタルトキ
三 公務員タル特別ノ事情ニ關聯シテ生シタル不慮ノ災厄ニ因リ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ恩給審查會ニ於テ公務ニ起因シタルト同視スヘキモノト議決セラレタルトキ
前項ノ流行病ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
前二項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
第四十九條 公務傷病ノ原因ヲ分ツテ戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ト普通公務トス
戰鬪ニ準スヘキ公務ノ範圍及公務傷病ニ因ル不具癈疾ノ程度竝敎育職員、警察監獄職員、待遇職員、準文官、準軍人及準敎育職員ノ公務傷病ニ關スル規定ノ適用ニ付テノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十條 裁定官廳ハ增加恩給ノ裁定ヲ爲スニ當リ將來不具癈疾ノ囘復シ又ハ其ノ程度低下スルコトアルヘキコトヲ認メタルトキハ五年間之ニ普通恩給及增加恩給ヲ給ス
前項ノ期間滿了ノ六月前迄傷痍疾病囘復セサル者ハ再審查ヲ請求スルコトヲ得再審查ノ結果恩給ヲ給スヘキモノナルトキハ之ニ相當ノ恩給ヲ給ス
第五十一條 公務員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ引續キタル在職ニ付恩給ヲ受クルノ資格ヲ失フ
一 懲戒、懲罰又ハ敎員免許狀褫奪ノ處分ニ因リ退職シタルトキ
二 在職中陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ死刑、懲役刑若ハ一年以上ノ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ其ノ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
第二十六條第四號但書ノ規定ハ前項ノ規定ノ適用ニ關シテハ之ヲ適用セス
第五十二條 公務員ニシテ其ノ退職ノ當時仍他ノ公務員トシテ在職スルモノニ付テハ總テノ公務員ヲ退職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
公務員ニシテ退職ノ當日又ハ翌日他ノ公務員ニ就職シ之ヲ勤續ト看做サルルモノニ付テハ後ノ公務員ヲ退職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
公務員ニシテ恩給ヲ給セサル官職ニ轉シ退職シタルモノニ付テハ其ノ轉任ヲ退職ト看做シ之ニ恩給ヲ給ス
第五十三條 公務員ニシテ其ノ退職ノ當時仍第四十二條第一項第一號ニ規定スル宮內職員トシテ在職スルモノニ付テハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
第五十四條 普通恩給ヲ受クル者再就職シ失格原因ナクシテ退職シ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ恩給ヲ改定ス
一 再就職後在職一年以上ニシテ退職シタルトキ
二 再就職後公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ト爲リ退職シタルトキ
三 再就職後公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ退職シタル後五年內ニ之カ爲不具癈疾ト爲リ又ハ其ノ程度增進シタル場合ニ於テ其ノ期間內ニ請求シタルトキ
前項第三號ノ場合ニ於テハ第四十六條第三項ノ規定ヲ準用ス
第五十五條 前條ノ規定ニ依リ普通恩給ヲ改定スルニハ前後ノ在職年ヲ合算シ其ノ年額ヲ定メ增加恩給ヲ改定スルニハ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノヲ以テ不具癈疾ノ程度トシ其ノ恩給年額ヲ定ム
前項ノ場合ニ於テ前後ノ傷痍又ハ疾病カ原因ヲ異ニスルトキハ左ノ區別ニ依リ其ノ年額ヲ定ム
一 後ノ傷痍又ハ疾病カ戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ基因スルトキハ別表第二號表甲號中前項ノ規定ニ依リ定メタル不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額ヨリ前ノ增加恩給年額ト別表第二號表甲號中其ノ不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額トノ差額ヲ控除シタルモノヲ以テ增加恩給ノ年額トス但シ後ノ傷痍又ハ疾病ノミニ因ル增加恩給年額カ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノニ依ル增加恩給年額ト同額ナルトキハ此ノ控除ヲ爲サス
二 後ノ傷痍又ハ疾病カ普通公務ニ基因スルトキハ別表第二號表乙號中前項ノ規定ニ依リ定メタル不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額ニ前ノ增加恩給年額ト別表第二號表乙號中其ノ不具癈疾ノ程度ニ相應スル增加恩給年額トノ差額ヲ加ヘタルモノヲ以テ增加恩給ノ年額トス
第五十六條 前二條ノ規定ニ依リ恩給ヲ改定スル場合ニ於テ其ノ年額從前ノ恩給年額ヨリ少キトキハ從前ノ恩給年額ヲ以テ改定恩給ノ年額トス
第五十七條 前三條ノ規定ハ宮內官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ受クル者公務員ト爲リ退職シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第五十八條 普通恩給ハ之ヲ受クル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ間之ヲ停止ス
一 公務員又ハ第四十二條第一項第一號ニ規定スル宮內職員トシテ就職スルトキハ就職ノ月ノ翌月ヨリ退職ノ月迄但シ實在職期間一月未滿ナルトキ、軍人以外ノ公務員トシテ恩給ヲ受クル者陸軍若ハ海軍ノ兵卒トシテ就職スルトキ又ハ准士官以下ノ軍人若ハ準軍人トシテ恩給ヲ受クル者軍人以外ノ公務員トシテ就職スルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタルトキハ恩給ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄之ヲ停止ス
前項第二號ノ規定ハ增加恩給ニ付之ヲ準用ス
第五十九條 文官ハ每月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ
敎育職員ハ每月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ國庫ニ納付スヘシ但シ朝鮮、臺灣又ハ樺太以外ノ地ニ於ケル公立ノ小學校、實業補習學校、幼稚園及盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ敎育職員ハ此ノ限ニ在ラス
待遇職員ハ之ニ俸給ヲ給スル國庫、府縣其ノ他ノ經濟ニ對シ其ノ俸給又ハ給料ノ百分ノ一ニ相當スル金額ヲ納付スヘシ
第二節 恩給金額
第六十條 文官在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職十五年以上十六年未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相當スル金額トシ十五年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相當スル金額ヲ加ヘタル金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外國實勤續在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當時ノ俸給年額三百分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
在職年四十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ在職年四十年トシテ計算ス
第一項ノ在職年ハ國務大臣トシテ退官スル者ニ付テハ國務大臣トシテノ在職年五年以上ナルヲ以テ足ル
第四十六條、第五十四條第一項第二號若ハ第三號又ハ前項ノ規定ニ依リ在職年十五年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
第四十七條ノ規定ニ依リ準文官ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相當スル金額トス
第六十一條 軍人在職年十一年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ規定ハ準軍人在職年十一年以上ニシテ退職シ且其ノ身分ヲ免セラレタル場合ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ普通恩給ノ年額ハ退職當時ノ階等及其ノ在職年數ニ依リ定メタル別表第一號表ノ金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外國實勤續在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當時ノ軍人ノ階等ニ應シ別表第一號表ノ十一年ノ額ト十二年ノ額トノ差額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ之ニ加給ス
在職年五十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ在職年五十年トシテ計算ス
陸海軍准士官ニシテ其ノ官ニ對スル最高ノ俸給ヲ受ケタル者ニハ高等官八等ノ額ヲ給ス
第四十六條、第四十七條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三號ノ規定ニ依リ在職年十一年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十一年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
準軍人ノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二條 敎育職員在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額百五十分ノ五十ニ相當スル金額トシ十五年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相當スル金額ヲ加ヘタル金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ小學校、實業補習學校、幼稚園又ハ盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ敎育職員トシテノ勤續在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
第一項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ中學校又ハ之ト同等以下ノ程度ノ學校ノ敎育職員トシテノ勤續在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十五年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當時ノ俸給年額ノ三百分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
前項ノ中學校ト同等以下ノ程度ノ學校ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三號ノ規定ニ依リ在職年十五年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
第六十條第三項及第四項ノ規定ハ敎育職員ニ付之ヲ準用ス
第四十七條ノ規定ニ依リ準敎育職員ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相當スル金額トス
第六十三條 警察監獄職員在職年十年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十年以上十一年未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相當スル金額トシ十年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相當スル金額ヲ加ヘタル金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ警察監獄職員トシテノ勤續在職年十年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤續在職年中十年ヲ控除シタル殘ノ勤續在職年一年ニ付退職當時ノ俸給年額ノ三百分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
第四十六條又ハ第五十四條第一項第二號若ハ第三號ノ規定ニ依リ在職年十年未滿ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
第六十條第三項及第四項ノ規定ハ警察監獄職員ニ付之ヲ準用ス
第六十四條 待遇職員在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未滿ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相當スル金額トシ十五年以上一年ヲ增ス每ニ其ノ一年ニ對シ退職當時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相當スル金額ヲ加ヘタル金額トス
第六十條第三項及第四項竝第六十二條第六項ノ規定ハ待遇職員ニ付之ヲ準用ス
第六十五條 公務員ノ增加恩給ノ年額ハ退職當時ノ階等、傷病ノ原因及不具癈疾ノ程度ニ依リ定メタル別表第二號表ノ金額トス
前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ給スヘキ增加恩給ノ年額ニ付之ヲ準用ス
第六十六條 下士以下ノ軍人公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具癈疾ノ程度ニ至ラサルモ之カ爲退職シ又ハ退職後一年內ニ之カ爲一種以上ノ兵役ヲ免セラレタルトキハ之ニ傷病賜金ヲ給ス
傷病賜金ハ之ヲ普通恩給又ハ一時恩給ト併給スルヲ妨ケス
傷病賜金ノ額ハ退職當時ノ階等竝傷病ノ原因及程度ニ依リ定メタル別表第三號表ノ金額トス
前項ノ傷病ノ程度ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十七條 文官在職年一年以上十五年未滿ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
第六十八條 下士以上ノ軍人在職年十一年未滿ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス但シ下士以上トシテノ在職年一年未滿ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ階等及在職年ノ年數ニ依リ定メタル別表第四號表ノ金額トス
第六十九條 敎育職員在職年一年以上十五年未滿ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
第七十條 警察監獄職員在職年一年以上十年未滿ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
第七十一條 待遇職員在職年一年以上十五年未滿ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職當時ノ俸給月額ニ相當スル金額ニ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
第三章 遺族
第七十二條 本法ニ於テ遺族トハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ祖父、祖母、父、母、夫、妻、子及兄弟姊妹ニシテ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時之ト同一戶籍內ニ在ルモノヲ謂フ
公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時胎兒タル子出生シタルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ當時其ノ戶籍內ニ在リタルモノト看做ス
第七十三條 公務員又ハ之ニ準スヘキ者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ遺族ニハ妻、未成年ノ子、夫、父、母、成年ノ子、祖父、祖母ノ順位ニ依リ之ニ扶助料ヲ給ス
一 在職中死亡シ其ノ死亡ヲ退職ト看做ストキハ之ニ普通恩給ヲ給スヘキトキ
二 普通恩給ヲ給セラルル者死亡シタルトキ
前項ノ規定ニ依ル同順位ノ子數人アルトキハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ヲ被相續人トシタル家督相續ノ順位ニ準シ之ヲ定ム
父母ニ付テハ養父母ヲ先ニシ實父母ヲ後ニス祖父母ニ付テハ養父母ノ父母ヲ先ニシ實父母ノ父母ヲ後ニシ父母ノ養父母ヲ先ニシ實父母ヲ後ニス
先順位者タルヘキ者後順位者タル者ヨリ後ニ生スルニ至リタルトキハ前三項ノ規定ハ當該後順位者失權シタル後ニ限リ之ヲ適用ス
第七十四條 未成年ノ子ハ未タ婚姻セサルトキニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
夫又ハ成年ノ子ハ不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキトキニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
養子ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ家督相續人タルトキ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者カ家督相續人ニシテ之ヲ戶主ト看做ストキハ其ノ死亡ノ時ニ於テ其ノ家督相續人タルヘキ者ニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
前項ノ家督相續人ニハ之ニ準スヘキ者ヲ包含ス
第七十五條 扶助料ノ年額ハ左ノ各號ニ依ル
一 公務員又ハ之ニ準スヘキ者戰鬪又ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタルトキハ其ノ普通恩給年額ノ全額
二 公務員又ハ之ニ準スヘキ者普通公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタルトキハ其ノ普通恩給年額ノ十分ノ八ニ相當スル金額
三 其ノ他ノ場合ニ於テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ニ給セラルル普通恩給年額ノ十分ノ五ニ相當スル金額
第七十六條 公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡後遺族左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ扶助料ヲ受クルノ資格ヲ失フ
一 子婚姻シ又ハ其ノ家ヲ去リタルトキ但シ父ノ屬シタル家ヨリ分家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 公務員又ハ之ニ準スヘキ者女子ナル場合ニ於テ夫婚姻シ又ハ家ヲ去リタルトキ
三 父、母、祖父又ハ祖母其ノ家ヲ去リタルトキ
第七十七條 扶助料ヲ受クル者六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄扶助料ヲ停止ス但シ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタルトキハ扶助料ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄之ヲ停止ス
前項ノ規定ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ刑ノ執行中又ハ其ノ執行前ニ在ル者ニ扶助料ヲ給スヘキ事由發生シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第七十八條 扶助料ヲ給セラルヘキ者一年以上所在不明ナルトキハ次順位者ノ申請ニ依リ裁定官廳ハ所在不明中扶助料ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第七十九條 前二條ノ扶助料停止ノ事由アル場合ニ次順位者アルトキハ停止期間中扶助料ハ之ヲ當該次順位者ニ轉給ス
第八十條 遺族左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ失フ
一 其ノ家ヲ去リタルトキ但シ妻夫ノ屬シタル家ヨリ分家シ又ハ遺族タル子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキ及子父ノ屬シタル家ヨリ分家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 妻、子又ハ夫婚姻シタルトキ
三 不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキ夫又ハ成年ノ子ニ付其ノ事情止ミタルトキ
第八十一條 公務員又ハ之ニ準スヘキ者第七十三條第一項各號ノ一ニ該當シ兄弟姊妹以外ニ扶助料ヲ受クル者ナキトキハ其ノ兄弟姊妹未成年又ハ不具癈疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキ場合ニ限リ之ニ一時扶助料ヲ給ス
前項ノ一時扶助料ノ金額ハ兄弟姊妹ノ人員ニ拘ラス扶助料年額ノ一年分乃至五年分ニ相當スル金額トス
第八十二條 文官、敎育職員若ハ待遇職員在職年一年以上十五年未滿ニシテ在職中死亡シ又ハ警察監獄職員在職年一年以上十年未滿ニシテ在職中死亡シタル場合ニハ其ノ遺族ニ一時扶助料ヲ給ス
前項ノ一時扶助料ノ金額ハ公務員ノ死亡ノ當時ノ俸給月額ニ相當スル金額ニ其ノ公務員ノ在職年ノ年數ヲ乘シタル金額トス
下士以上ノ軍人在職年一年以上十一年未滿ニシテ在職中死亡シタル場合ニハ其ノ遺族ニ一時扶助料ヲ給ス
前項ノ一時扶助料ノ金額ハ死亡者ノ階等及在職年ノ年數ニ依リ定メタル別表第四號表ノ金額トス
附 則
第八十三條 本法ハ大正十二年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第八十四條 左ノ法令ハ之ヲ廢止ス
一 官吏恩給法
一 官吏遺族扶助法
一 軍人恩給法
一 市町村立小學校敎員退隱料及遺族扶助料法
一 府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法
一 明治二十四年法律第四號
一 明治二十九年法律第十三號
一 官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則
一 明治二十九年法律第七十八號
一 明治三十三年法律第七十五號
一 明治三十三年法律第七十六號
一 明治三十三年法律第七十七號
一 巡查看守退隱料及遺族扶助料法
一 明治三十五年法律第二十九號
一 在外指定學校職員退隱料及遺族扶助料法
一 明治四十年法律第四十八號
一 明治四十年法律第四十九號
一 明治四十一年法律第三十五號
一 明治四十三年法律第三十號
一 明治四十四年法律第六十一號
一 明治四十四年法律第六十七號
一 明治四十五年法律第十一號
一 明治四十五年法律第十二號
一 大正七年法律第三十號
一 大正十年法律第三十五號
一 大正十年法律第九十四號
一 大正十一年法律第十八號
一 大正十一年法律第十九號
一 明治二十二年勅令第百三十三號
一 明治二十三年勅令第九十八號
一 明治二十五年勅令第十八號
一 明治二十五年勅令第三十二號
一 明治三十二年勅令第百九十六號
一 明治三十八年勅令第二百二十九號
一 明治四十年勅令第百八十八號
一 明治四十年勅令第百八十九號
一 明治四十一年勅令第七十一號
一 明治四十五年勅令第七十號
一 大正七年勅令第六十二號
一 大正十年勅令第二百六十八號
一 大正十一年勅令第八十七號
一 大正十一年勅令第二百八十四號
一 明治九年第九十九號達陸軍恩給令
一 明治十五年第四十一號達巡查看守給助例
一 明治十六年第三十八號達海軍恩給令
一 明治十七年第一號達官吏恩給令
第八十五條 本法施行前給與事由ノ生シタル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノニ付テハ從前ノ規定ニ依ル
從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノハ之ヲ本法ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ恩給ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノカ本法ニ依リ給與スル恩給ノ何レノ種類ニ屬スヘキカハ公務員及其ノ遺族ノ種類竝給與ノ事由ニ依リ之ヲ定ム
從前ノ規定ニ依ル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノニシテ本法ニ依ル恩給ニ該當セサルモノアルトキハ本法ニ依ル恩給中最近キ性質ヲ有スルモノニ依ル
第八十六條 第五條乃至第七條ノ規定ハ從前ノ規定ニ依リ生シタル恩給、退隱料、遺族扶助料、退官賜金、退職給與金、退職一時金、給助金、賑恤金、一時扶助金其ノ他之ニ準スヘキモノヲ受クヘキ權利ニシテ本法施行ノ日迄ニ從前ノ規定ニ依ル請求期間ヲ經過セサルモノニ付之ヲ適用ス
第八十七條 第十條ノ規定ハ本法施行前給與ノ事由ヲ生シタル恩給、退隱料、遺族扶助料、退官賜金、退職給與金、退職一時金、給助金、賑恤金、一時扶助金其ノ他之ニ準スヘキモノニ付本法施行後其ノ給與ヲ爲ス場合ニ付之ヲ適用ス
第八十八條 從前ノ規定ニ依リ內閣總理大臣ノ爲シタル裁定ハ具申、訴願又ハ行政訴訟ニ付テハ之ヲ本法ニ依ル內閣恩給局長ノ裁定ト看做シ從前ノ規定ニ依ル具申ノ裁決ハ之ヲ本法ニ依ル具申ノ裁決ト看做ス
本法施行ノ際現ニ具申中又ハ訴願中ノ事件ニ付テハ從前ノ手續規定ニ依リ之ヲ完結ス
第八十九條 府縣ニシテ本法施行ノ際市町村立小學校敎員退隱料及遺族扶助料法第十四條ノ規定ニ依リ小學校敎員恩給基金ヲ備フルモノハ本法施行後引續キ其ノ恩給基金ヲ備フルコトヲ得
前項ノ恩給基金ヲ備フル府縣ニ於テハ第十八條第二項ノ規定ニ依ル納金ハ之ヲ其ノ恩給基金ト爲スヘシ
恩給基金ハ其ノ利子ヲ以テ府縣カ給與スヘキ敎育職員若ハ準敎育職員又ハ其ノ遺族ノ恩給ニ充ツルノ外之ヲ支消スルコトヲ得ス
府縣ニ於テ給與スヘキ敎育職員若ハ準敎育職員竝其ノ遺族ノ恩給ハ恩給基金ノ利子及第十八條第三項ノ規定ニ依リ國庫ヨリ交付スル給與金其ノ他ノ收入ヲ以テ之ヲ支辨シ不足アルトキハ府縣費ヲ以テ之ヲ補充スヘシ
恩給基金ノ管理ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十條 本法施行前ノ在職ニ付在職年ヲ計算スル場合ハ從前ノ規定ニ依ル但シ本法施行ノ際現ニ在職スル者ニ付テハ其ノ在職ニ繼續スル在職ニ限リ本法施行前ノ在職ト雖加算年ニ關スル規定ヲ除クノ外本法ニ依リ其ノ在職年ヲ計算ス
前項但書ノ場合ニ於テ從前ノ規定ニ依リ特ニ通算シ得ヘキコトヲ定メラレタル年月數アルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラス之ヲ在職年ニ通算ス
第九十一條 內地人タル公務員其ノ職務ヲ以テ臺灣、朝鮮、關東州(關東廳及其ノ所屬官署職員ニ付テハ南滿洲鐵道附屬地ヲ含ム)、樺太又ハ南洋群島ニ一定ノ期間引續キ在勤シタルトキハ當分ノ內在勤期間ノ一月ニ付半月ヲ加算ス
前項ノ引續キ在勤スヘキ期間ハ軍人ニ在リテハ六月、警察監獄職員ニ在リテハ二年、其ノ他ノ公務員ニ在リテハ三年トス
第四十條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第九十二條 公務員其ノ職務ヲ以テ國境警備又ハ理蕃ノ爲危險地域內ニ勤務シタルトキハ當分ノ內在勤期間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
前項ノ危險地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第九十三條 海軍警吏補ヨリ海軍巡查ト爲リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引續キ現ニ南洋廳巡查ノ職ニ在ルモノニ付テハ其ノ海軍警吏補トシテノ在職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡查トシテ在職シタルモノト看做ス
第九十四條 朝鮮總督府巡查補ヨリ朝鮮總督府巡查ト爲リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引續キ在職スルモノニ付テハ其ノ統監府巡查補及朝鮮總督府巡查補トシテノ在職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡查トシテ在職シタルモノト看做ス
第九十五條 臺灣總督府巡查補ヨリ臺灣總督府巡查ト爲リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引續キ在職スルモノニ付テハ其ノ臺灣總督府巡查補トシテノ在職年月數ハ本法ノ適用ニ關シテハ之ヲ巡查トシテ在職シタルモノト看做ス
第九十六條 大正九年七月三十一日以前ニ休職若ハ待命ト爲リタル者ニシテ本法施行ノ際迄引續キ休職若ハ待命中ノモノ又ハ其ノ遺族同日以前ノ俸給ニ基キ年金タル恩給ヲ受クヘキ場合ニ於テハ其ノ金額算出ノ基礎タル俸給年額ハ其ノ額ニ勅令ノ定ムル金額ヲ加ヘタル額トス
第九十七條 第四十六條第二項第三項及第五十四條第一項第三號第二項ノ規定ハ本法施行前退職シタル公務員ニ付之ヲ適用ス
前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依リ給スル恩給ノ金額ハ本法施行前ノ分ニ付テハ從前ノ規定ニ依ル
第九十八條 第四十八條ノ規定ハ本法施行前傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ本法施行後退職シ本法施行後不具癈疾ト爲リタル者ニハ之ヲ適用セス仍從前ノ例ニ依ル
第九十九條 第五十八條ノ規定ハ敎育職員及敎官其ノ他敎育事務ニ從事スル文官ニ付テハ當分ノ內之ヲ適用セス其ノ退隱料又ハ恩給ノ停止ハ仍從前ノ例ニ依ル但シ敎育職員及敎官其ノ他敎育事務ニ從事スル文官學習院ノ職員ト爲リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ノ施行セラルル期間內ニ屬スル敎育職員ノ在職年ト敎官其ノ他敎育事務ニ從事スル文官以外ノ公務員ノ在職年トハ互ニ之ヲ通算セス仍從前ノ例ニ依ル敎育職員ノ在職年ト第四十二條第一項各號ニ揭クル在職年トノ間ニ付亦同シ但シ學習院ノ職員トシテノ在職年ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第一項ノ規定ノ施行セラルル期間內ニ文官ヨリ敎育職員又ハ敎官其ノ他敎育事務ニ從事スル文官ニ轉任シタル者失格原因ナクシテ退職シ年金タル恩給ヲ受ケサル場合ニ於テハ文官ノ在職年數ニ應シ之ニ一時恩給ヲ給ス
敎育職員ヨリ文官ニ轉シタル者敎官其ノ他敎育事務ニ從事スル文官以外ノ文官トシテ失格原因ナクシテ退職シタルトキハ敎官其ノ他敎育事務ニ從事スル文官トシテノ在職最終ノ俸給額ニ基キ之ニ恩給ヲ給ス
第百條 本法施行前死亡シタル者ノ遺族ノ扶助料ニシテ本法施行後轉給セラルヘキモノニ付テハ從前ノ規定ニ依ル恩給額ヲ標準トスルノ外本法ニ依リ之ヲ給ス
前項ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リ扶助料ヲ受クル事ヲ得ル者ノ權利ヲ妨クルコトナシ
本法施行前ニ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有シ且其ノ權利ヲ有セサルニ至リタル者ハ之ヲ受クルノ權利ヲ本法ニ依リ取得スルコトナシ
第一項ノ場合ニ於テ本法ニ依リ扶助料ヲ受クルニ付先順位ニ在ルヘキ者ト雖本法ニ依リ後順位ニ在ル者先ニ扶助料ヲ受ケタル場合ニハ本法ニ依リ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有スルコトナシ
大正六年法律第六號附則ノ規定ニ依リ恩給ノ增額ヲ受ケサリシ軍人ノ遺族本法施行後扶助料ヲ轉給セラルヘキ場合ニ於テ第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ軍人ノ恩給ハ之ヲ請求ヲ竢タスシテ同法附則ノ規定ニ依リ增額セラレタルモノト看做ス
第百一條 本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リ年金タル恩給、退隱料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニシテ本法所定ノ恩給又ハ扶助料ノ金額ヲ受ケサルモノニハ當該金額ニ其ノ金額ト本法所定ノ各相當恩給又ハ扶助料ノ金額トノ差額ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ增給ス
第百二條 明治二十四年八月十六日以降明治四十三年三月三十一日迄ニ退官退職シ又ハ死亡シタル文官、看守、陸軍監獄看守、海軍監獄看守、陸軍警查、海軍警查、貴族院守衞若ハ衆議院守衞又ハ其ノ遺族ニシテ明治四十三年四月改正前ノ俸給令ニ依ル俸給ヲ基礎トシ恩給又ハ扶助料ヲ受ケ本法施行ノ際迄其ノ權利ヲ有スル者ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ恩給又ハ扶助料ヲ本法施行ノ日ヨリ增額給與ス
前項ノ規定ハ明治四十四年三月三十一日以前ニ退職シタル小學校、實業補習學校、幼稚園及盲啞學校其ノ他ノ小學校ニ類スル各種學校ノ敎育職員若ハ巡查又ハ其ノ遺族ニシテ本法施行ノ際迄其ノ權利ヲ有スルモノニ付之ヲ準用ス
第百三條 北海道屯田兵ノ現役ニ服シタル年月日數ハ之ヲ公務員ノ在職年ニ通算シ本法施行ノ日ヨリ其ノ者ノ受クル年金タル恩給ヲ改定シ又ハ新ニ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ規定ハ前項ニ規定スル者ノ遺族ノ年金タル扶助料ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テハ第五條ニ規定スル請求期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第百四條 第八十五條乃至前條ニ規定スルモノヲ除クノ外本法ノ施行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
(別表)
第一號表
【表】
第二號表
【表】
備考 特別項ハ各號第一項ノ金額ニ其ノ十分ノ五以內ヲ加ヘタルモノトス
第三號表
【表】
第四號表
【表】
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル恩給法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十二年四月十三日
内閣総理大臣兼海軍大臣 男爵 加藤友三郎
外務大臣 伯爵 内田康哉
鉄道大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
司法大臣 岡野敬次郎
内務大臣 水野錬太郎
農商務大臣 荒井賢太郎
大蔵大臣 市来乙彦
文部大臣 鎌田栄吉
逓信大臣 子爵 前田利定
法律第四十八号
恩給法
第一章 総則
第一条 公務員及之ニ準スヘキ者並其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受クルノ権利ヲ有ス
第二条 本法ニ於テ恩給トハ普通恩給、増加恩給、一時恩給、傷病賜金、扶助料及一時扶助料ヲ謂フ
普通恩給、増加恩給及扶助料ハ年金トシ一時恩給、傷病賜金及一時扶助料ハ一時金トス
第三条 年金タル恩給ノ給与ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル月ノ翌月ヨリ之ヲ始メ権利消滅ノ月ヲ以テ終ル
第四条 恩給年額並一時恩給及一時扶助料ノ額ノ円位未満ハ之ヲ円位ニ満タシム
第五条 恩給ヲ受クルノ権利ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル日ヨリ七年間請求セサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
第六条 普通恩給又ハ増加恩給ヲ受クルノ権利ヲ有スル者退職後一年内ニ再就職スルトキハ前条ノ期間ハ再就職ニ係ル官職ノ退職ノ日ヨリ進行ス
前項ノ規定ハ普通恩給又ハ増加恩給ヲ受クルノ権利ヲ有スル者退職後一年内ニ第四十二条第一項第一号ニ規定スル宮内職員トシテ就職シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第七条 時効期間満了前二十日内ニ於テ天災其ノ他避クヘカラサル事変ノ為請求ヲ為スコト能ハサルトキハ其ノ妨碍ノ止ミタル日ヨリ二十日内ハ時効完成セス
時効期間満了前六月内ニ於テ前権利者生死若ハ所在不明ノ為又ハ未成年者若ハ禁治産者法定代理人ヲ有セサル為請求ヲ為スコト能ハサルトキハ請求ヲ為スコトヲ得ルニ至リタル日ヨリ六月内ハ時効完成セス
時効期間満了前ニ適法ニ請求書ヲ発シタルコトノ通信官署ノ公証アルトキハ時効期間内ニ権限アル官公署ニ到達セサルモ之ヲ時効期間内ニ到達シタルモノト看做ス
第八条 公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セラレ得ヘキ在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ二以上ノ恩給ヲ併給セラルヘキ場合ニ於テハ其ノ者ノ選択ニ依リ其ノ一ヲ給ス但シ特ニ併給スヘキコトヲ定メタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族互ニ通算セラレ得ヘキ在職年又ハ同一ノ傷病ヲ理由トシテ本法ニ依ル恩給ト宮内官ノ恩給規程ニ依ル恩給トヲ給セラルヘキ場合ニ於テ宮内官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ給セラレタルトキハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
第九条 年金タル恩給ヲ受クルノ権利ヲ有スル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ権利消滅ス
一 死亡シタルトキ
二 死刑又ハ無期若ハ六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキ
三 国籍ヲ失ヒタルトキ
第十条 恩給権者死亡シタルトキハ其ノ生存中ノ恩給ニシテ給与ヲ受ケサリシモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ当該公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ遺族ニ給シ遺族ナキトキハ死亡者ノ相続人ニ給ス
第十一条 恩給ヲ受クルノ権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ担保ニ供スルコトヲ得ス
恩給ヲ受クルノ権利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ国税徴収法又ハ国税徴収ノ例ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十二条 恩給ヲ受クルノ権利ハ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外内閣恩給局長之ヲ裁定ス
第十三条 行政上ノ処分ニ因リ恩給ニ関スル権利ヲ侵害セラレタリトスル者ハ処分後一年内ニ内閣恩給局長ニ具申シ其ノ裁決ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ六月内ニ内閣総理大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項ノ具申ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 内閣総理大臣及内閣恩給局長ノ裁決ハ関係官庁ヲ羈束ス
第十五条 内閣総理大臣第十三条第二項ノ訴願ノ裁決ヲ為ス場合ニ於テハ恩給審査会ニ諮問スヘシ
恩給審査会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 恩給ノ負担ハ左ノ区分ニ依ル
一 文官及準文官並其ノ遺族ノ恩給ハ国庫之ヲ負担ス但シ文官ニシテ国庫ヨリ俸給ヲ受ケサル者ノ一時恩給ハ最終ニ之ニ俸給ヲ給シタル者之ヲ負担ス
二 軍人及準軍人並其ノ遺族ノ恩給ハ国庫之ヲ負担ス
三 朝鮮、台湾及樺太ニ於ケルモノヲ除クノ外公立ノ小学校、実業補習学校、幼稚園及盲唖学校其ノ他ノ小学校ニ類スル各種学校ノ教育職員及準教育職員並其ノ遺族ノ恩給ハ其ノ学校又ハ幼稚園ノ所在地ヲ管轄スル府県又ハ之ニ準スヘキ地方経済之ヲ負担ス
四 前号ニ規定スル者以外ノ教育職員及準教育職員並其ノ遺族ノ恩給ハ国庫之ヲ負担ス但シ在外指定学校職員ノ一時恩給ヲ除クノ外一時恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負担ス
五 警察監獄職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負担ス
六 待遇職員及其ノ遺族ノ恩給ハ最終ニ之ニ俸給又ハ給料ヲ給シタル者之ヲ負担ス但シ官国幣社ノ神職及其ノ遺族ノ恩給ハ国庫之ヲ負担ス
第十七条 前条第一号、第二号又ハ第四号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年中ニ第三号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年又ハ第五号若ハ第六号ニ掲クル公務員ニシテ国庫ヨリ俸給ヲ受ケサルモノノ在職年ヲ通算シテ国庫ヨリ恩給ヲ給スル場合ニ於テハ国庫ハ通算セラルヘキ在職年ニ応シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分担ヲ第三号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ニ恩給ヲ給スル者又ハ第五号若ハ第六号ニ掲クル公務員ニ俸給ヲ給スル者ニ対シ請求スルコトヲ得
前条第三号、第五号若ハ第六号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ニ恩給ヲ給スヘキ国庫以外ノ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ第一号、第二号若ハ第四号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ在職年又ハ第五号若ハ第六号ニ掲クル公務員ニシテ国庫ヨリ俸給ヲ受クルモノノ在職年ヲ通算シテ恩給ヲ給スル場合ニ於テハ国庫ニ対シ其ノ通算セラルヘキ在職年ニ応シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分担ヲ請求スルコトヲ得
前条第三号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ニ恩給ヲ給スヘキ者ハ其ノ恩給ノ基礎在職年中ニ他府県又ハ之ニ準スヘキ経済ノ管轄内ニ於テ在職シタル第三号ニ掲クル公務員又ハ之ニ準スヘキ者トシテノ在職年ヲ含ム場合ニ於テハ当該他府県又ハ之ニ準スヘキ経済ニ対シ其ノ合算セラルル在職年ニ応シ勅令ノ定ムル所ニ依リ恩給金額ノ分担ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ハ前条第四号若ハ第五号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給ノ分担及同条第三号、第五号若ハ第六号ニ掲クル公務員若ハ之ニ準スヘキ者又ハ其ノ遺族ノ恩給相互ノ分担ニ付之ヲ準用ス
第十八条 国庫ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公務員ニ俸給ヲ給スル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相当スル金額ヲ国庫ニ納付スヘシ但シ府県費ヨリ俸給ヲ給スル文官、在外指定学校及国庫ノ支弁ニ属スル地方費ヲ以テ維持スル公立学校ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
国庫以外ノ経済ヨリ恩給ヲ給スルモ俸給ヲ給セサル公務員ニ俸給ヲ給スル者ハ其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相当スル金額ヲ其ノ経済ニ納付スヘシ
前項ノ経済ニ対シテハ国庫ハ前項ニ規定スル納金額ノ二分ノ一ニ相当スル金額ヲ交付ス
第二章 公務員
第一節 通則
第十九条 本法ニ於テ公務員トハ文官、軍人、教育職員及警察監獄職員並第二十四条ニ掲クル待遇職員ヲ謂フ
本法ニ於テ公務員ニ準スヘキ者トハ準文官、準軍人及準教育職員ヲ謂フ
第二十条 文官トハ武官又ハ宮内官以外ノ官ニ在ル者ヲ謂フ但シ勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外国庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ハ此ノ限ニ在ラス
準文官トハ高等文官ノ試補、判任官見習及国庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ル者ニシテ前項但書ノ規定ニ基ク勅令ヲ以テ指定セラレサルモノヲ謂フ
第二十一条 軍人トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
一 陸軍又ハ海軍ノ現役、予備役、後予備役又ハ補充兵役ニ在ル者
二 国民兵役ニ在ル者ニシテ召集セラレタルモノ及志願ニ依リ国民軍ニ編入セラレタル者
準軍人トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
一 陸軍ノ見習士官及海軍ノ候補生
二 勅令ヲ以テ指定スル陸軍又ハ海軍ノ学生生徒
第二十二条 教育職員トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
一 公立ノ学校若ハ図書館又ハ在外指定学校ノ職員ニシテ国庫ヨリ俸給ヲ給セサル官ニ在ルモノ及判任官以上ノ待遇ヲ受クルモノ
二 府県立師範学校校長
前項ノ在外指定学校トハ在外国本邦人ノ為ニ設置シタル学校ニシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ指定シタルモノヲ謂フ
準教育職員トハ官立又ハ公立ノ学校ノ職員ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノヲ謂フ
第二十三条 警察監獄職員トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
一 警部補、巡査、陸軍警査、海軍警査、貴族院守衛及衆議院守衛
二 看守、女監取締、陸軍監獄看守及海軍監獄看守
三 判任官ノ待遇ヲ受クル消防手
第二十四条 待遇職員トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
一 判任官以上ノ待遇ヲ受クル神宮司庁職員、神宮神部署職員及官国幣社ノ神職
二 判任官以上ノ待遇ヲ受クル監獄ノ保健技師、保健技手、教誨師、教師、作業技手、感化院職員及矯正院職員
三 地方待遇職員令ニ依リ判任官以上ノ待遇ヲ受クル者ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
四 前三号ニ掲クル者ヲ除クノ外国庫ヨリ俸給又ハ給料ヲ給スル待遇職員ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
第二十五条 本法ニ於テ就職トハ左ノ各号ノ一ニ該当スルコトヲ謂フ
一 文官ニ在リテハ任官但シ終身官タル文官ニ在リテハ任官ノ外復職
二 現役軍人ニ在リテハ任官又ハ入営若ハ入団、非現役軍人ニ在リテハ召集ニ依ル部隊編入又ハ志願ニ依リ軍人タル勤務ニ就クコト
三 教育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其ノ他ノモノニ在リテハ任命
四 警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ任官、其ノ他ノモノニ在リテハ任命但シ巡査若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手警部補ニ任シ又ハ警部補巡査若ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ニ就職スルトキハ之ヲ転任ト看做ス
五 待遇職員ニ在リテハ任命
第二十六条 本法ニ於テ退職トハ左ノ各号ノ一ニ該当スルコトヲ謂フ
一 文官ニ在リテハ免官、退官又ハ失官但シ終身官タル文官ニ在リテハ免官、退官、失官ノ外退職
二 現役軍人ニ在リテハ現役ヲ離ルルコト、非現役軍人ニ在リテハ召集セラレタル者ニ付テハ召集解除志願ニ依リ軍人タル勤務ニ服スル者ニ付テハ解職
三 教育職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退官又ハ失官、其ノ他ノモノニ在リテハ免職、退職、解職又ハ失職
四 警察監獄職員ニシテ官吏タルモノニ在リテハ免官、退官又ハ失官、其ノ他ノモノニ在リテハ免職、退職又ハ失職但シ警部補他ノ官職ニ転シ又ハ他ノ官ヨリ警部補ニ転シタルトキハ之ヲ退職ト看做ス
五 待遇職員ニ在リテハ免職、退職又ハ失職
第二十七条 第二十五条第一号及前条第一号ノ規定ハ準文官ノ就職及退職ニ付之ヲ準用ス
第二十五条第三号及前条第三号ノ規定ハ準教育職員ノ就職及退職ニ付之ヲ準用ス
準軍人ノ就職トハ戦務、戒厳地境内ノ勤務又ハ外国ノ鎮戍ニ服スルコトヲ謂ヒ退職トハ其ノ勤務ヲ終ルコトヲ謂フ
第二十八条 公務員ノ在職年ハ就職ノ月ヨリ之ヲ起算シ退職又ハ死亡ノ月ヲ以テ終ル
退職シタル後再就職シタルトキハ前後ノ在職年月数ハ之ヲ合算ス但シ一時恩給ノ基礎ト為ルヘキ在職年ニ付テハ前ニ一時恩給ノ基礎ト為リタル在職年ノ年月数ハ之ヲ合算セス
退職シタル月ニ於テ再就職シタルトキハ再在職ノ在職年ハ再就職ノ月ノ翌月ヨリ之ヲ起算ス
第二十九条 公務員二以上ノ官職ヲ併有スル場合ニ於テ其ノ重複スル在職年ニ付テハ年数計算ニ関シ利益ナル一官職ノ在職年ニ依ル
第三十条 軍人ノ恩給権ニ付其ノ在職年ヲ計算スル場合ニ於テハ十一年ニ達スル迄ハ軍人又ハ警察監獄職員以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ四分ノ三ニ当ル年月数ヲ以テ之ヲ計算ス
第三十一条 警察監獄職員ノ恩給権ニ付其ノ在職年ヲ計算スル場合ニ於テハ十年ニ達スル迄ハ警察監獄職員又ハ軍人以外ノ公務員トシテノ在職年ハ其ノ三分ノ二ニ当ル年月数ヲ以テ之ヲ計算ス
第三十二条 公務員其ノ職務ヲ以テ従軍シタルトキハ左記各号ノ規定ニ依リ加算ス
一 戦地ニ在リテ戦務ニ服シタルトキハ従軍期間ノ一月ニ付三月
二 戦地外ニ在リテ戦務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月半
前項ノ規定ハ公務員其ノ職務ヲ以テ戦争ニ準スヘキ事変ニ際シ戦務ニ服シタル場合ニ付之ヲ準用ス
戦争ノ期間及地域、戦務ノ範囲並戦争ニ準スヘキ事変ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三条 公務員外国ノ交戦又ハ擾乱ノ地域内ニ於テ危険ヲ顧ミス其ノ職務ヲ以テ勤務シタルトキハ在勤期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
前項ノ外国ノ交戦又ハ擾乱ノ地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四条 公務員戒厳地境内ニ於テ危険ヲ顧ミス其ノ職務ヲ以テ勤務シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付二月ヲ加算ス
前項ノ場合ニ於テ其ノ勤務ノ場所カ内国ナルトキハ加算年ハ其ノ二分ノ一トス
第三十五条 公務員外国鎮戍ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
第三十六条 航空機乗員タル公務員其ノ職務ヲ以テ航空勤務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付二月以内ヲ加算ス
第三十七条 潜水艦乗員タル公務員其ノ職務ヲ以テ在役潜水艦ノ勤務ニ服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月ヲ加算ス
第三十八条 公務員其ノ職務ヲ以テ辺陬又ハ不健康ノ地域ニ引続キ一年以上在勤シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月以内ヲ加算ス不健康ナル業務ニ引続キ一年以上服務シタルトキ亦同シ
前項ノ地域相互間ノ転勤ハ之ヲ引続キタル在勤ト看做ス
第一項ノ地域及業務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九条 海上勤務ニ服スル公務員其ノ職務ヲ以テ遠洋航海ヲ為シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付半月ヲ加算ス
前項ノ遠洋航海ノ範囲ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十条 第三十二条乃至前条ノ規定ニ依リ附スヘキ加算年ハ在職年ノ計算ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ実在職年ニ従トシテ之ヲ算入ス
加算年ヲ附スヘキ基礎在職年ハ加算事由ノ生シタル月ヨリ之ヲ起算シ其ノ事由ノ止ミタル月ヲ以テ終ル
二種以上ノ加算年ヲ附セラルヘキ期間ニ対シテハ最モ利益ナルモノニ依リ其ノ一ヲ附ス
第四十一条 左ニ掲クル年月数ハ在職年ヨリ之ヲ除算ス
一 普通恩給又ハ増加恩給ヲ受クルノ権利消滅シタル場合ニ於テ其ノ恩給権ノ基礎ト為リタル在職年
二 第五十一条ノ規定ニ依リ公務員カ恩給ヲ受クルノ資格ヲ失ヒタル在職年
三 在職中六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル場合ニ於テハ其ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年月数但シ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄ノ在職年月数
四 公務員ノ不法ニ其ノ職務ヲ離レタル月ヨリ職務ニ復シタル月迄ノ在職年月数
五 宮内職員トシテノ在職年月数ニシテ宮内官ノ恩給規程ニ依リ除算セラルヘキモノ
第四十二条 左ニ掲クル年月数ハ之ヲ在職年ニ通算ス
一 宮内官ノ恩給規程ニ依リ宮内官恩給権ノ基礎ト為ルヘキ宮内職員トシテノ在職年月数
二 準軍人ノ在職年月数
三 高等文官ノ試補又ハ判任官見習引続キ公務員ト為リタルトキハ公務員トシテノ就職ニ接続スル其ノ勤続年月数ノ二分ノ一ニ相当スル年月数
四 準教育職員引続キ教育職員ト為リタルトキハ教育職員トシテノ就職ニ接続スル其ノ勤続年月数ノ二分ノ一ニ相当スル年月数
第二十八条、第二十九条及第三十一条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月数ノ計算ニ、第三十条ノ規定ハ前項第一号第三号又ハ第四号ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月数ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第四十三条 第三十二条乃至第四十条ノ規定ハ準軍人ノ在職年ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第四十一条ノ規定ハ前条第一項第二号乃至第四号ノ規定ニ依リ在職年ニ通算セラルヘキ年月ニ付之ヲ準用ス
第四十四条 本法ニ於テ俸給トハ本俸及之ニ準スヘキモノヲ謂フ
本俸ニ準スヘキモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公務員二以上ノ官職ヲ併有シ各官庁ニ付俸給ヲ給セラルル場合ニ於テハ俸給額ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ者ノ俸給額トス
第四十五条 公務員所定ノ年数在職シ退職シタルトキハ之ニ普通恩給又ハ一時恩給ヲ給ス
第四十六条 公務員公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具廃疾ト為リ失格原因ナクシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給及増加恩給ヲ給ス
公務員公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ失格原因ナクシテ退職シタル後五年内ニ之カ為不具廃疾ト為リ又ハ其ノ程度増進シタル場合ニ於テ其ノ期間内ニ請求シタルトキハ新ニ普通恩給及増加恩給ヲ給シ又ハ現ニ受クル増加恩給ヲ不具廃疾ノ程度ニ相応スル増加恩給ニ改定ス
前項ノ期間ヲ経過シタルトキト雖恩給審査会ニ於テ不具廃疾カ公務ニ起因シタルコト顕著ナリト議決シタルトキハ決議後之ニ相当ノ恩給ヲ給シ又ハ改定ス
公務員公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具廃疾ト為ルモ公務員ニ重大ナル過失アリタルトキハ前三項ニ規定スル恩給ヲ給セス
第四十七条 前条ノ規定ハ準文官、陸軍ノ見習士官海軍ノ候補生以外ノ準軍人又ハ準教育職員ニシテ在職中公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノ及陸軍ノ見習士官又ハ海軍ノ候補生ニシテ公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノニ付之ヲ準用ス
第四十八条 公務員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノト看做ス
一 勅令ヲ以テ指定スル地域ニ在勤中其ノ地ニ於テ流行病ニ罹リタルトキ
二 戦地ニ於テ又ハ公務旅行中流行病ニ罹リタルトキ
三 公務員タル特別ノ事情ニ関連シテ生シタル不慮ノ災厄ニ因リ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ恩給審査会ニ於テ公務ニ起因シタルト同視スヘキモノト議決セラレタルトキ
前項ノ流行病ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
前二項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
第四十九条 公務傷病ノ原因ヲ分ツテ戦闘又ハ戦闘ニ準スヘキ公務ト普通公務トス
戦闘ニ準スヘキ公務ノ範囲及公務傷病ニ因ル不具廃疾ノ程度並教育職員、警察監獄職員、待遇職員、準文官、準軍人及準教育職員ノ公務傷病ニ関スル規定ノ適用ニ付テノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十条 裁定官庁ハ増加恩給ノ裁定ヲ為スニ当リ将来不具廃疾ノ回復シ又ハ其ノ程度低下スルコトアルヘキコトヲ認メタルトキハ五年間之ニ普通恩給及増加恩給ヲ給ス
前項ノ期間満了ノ六月前迄傷痍疾病回復セサル者ハ再審査ヲ請求スルコトヲ得再審査ノ結果恩給ヲ給スヘキモノナルトキハ之ニ相当ノ恩給ヲ給ス
第五十一条 公務員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ引続キタル在職ニ付恩給ヲ受クルノ資格ヲ失フ
一 懲戒、懲罰又ハ教員免許状褫奪ノ処分ニ因リ退職シタルトキ
二 在職中陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ死刑、懲役刑若ハ一年以上ノ禁錮ノ刑ニ処セラレ又ハ其ノ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
第二十六条第四号但書ノ規定ハ前項ノ規定ノ適用ニ関シテハ之ヲ適用セス
第五十二条 公務員ニシテ其ノ退職ノ当時仍他ノ公務員トシテ在職スルモノニ付テハ総テノ公務員ヲ退職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
公務員ニシテ退職ノ当日又ハ翌日他ノ公務員ニ就職シ之ヲ勤続ト看做サルルモノニ付テハ後ノ公務員ヲ退職スルニ非サレハ之ニ恩給ヲ給セス
公務員ニシテ恩給ヲ給セサル官職ニ転シ退職シタルモノニ付テハ其ノ転任ヲ退職ト看做シ之ニ恩給ヲ給ス
第五十三条 公務員ニシテ其ノ退職ノ当時仍第四十二条第一項第一号ニ規定スル宮内職員トシテ在職スルモノニ付テハ本法ニ依ル恩給ハ之ヲ給セス
第五十四条 普通恩給ヲ受クル者再就職シ失格原因ナクシテ退職シ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ恩給ヲ改定ス
一 再就職後在職一年以上ニシテ退職シタルトキ
二 再就職後公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具廃疾ト為リ退職シタルトキ
三 再就職後公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ退職シタル後五年内ニ之カ為不具廃疾ト為リ又ハ其ノ程度増進シタル場合ニ於テ其ノ期間内ニ請求シタルトキ
前項第三号ノ場合ニ於テハ第四十六条第三項ノ規定ヲ準用ス
第五十五条 前条ノ規定ニ依リ普通恩給ヲ改定スルニハ前後ノ在職年ヲ合算シ其ノ年額ヲ定メ増加恩給ヲ改定スルニハ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノヲ以テ不具廃疾ノ程度トシ其ノ恩給年額ヲ定ム
前項ノ場合ニ於テ前後ノ傷痍又ハ疾病カ原因ヲ異ニスルトキハ左ノ区別ニ依リ其ノ年額ヲ定ム
一 後ノ傷痍又ハ疾病カ戦闘又ハ戦闘ニ準スヘキ公務ニ基因スルトキハ別表第二号表甲号中前項ノ規定ニ依リ定メタル不具廃疾ノ程度ニ相応スル増加恩給年額ヨリ前ノ増加恩給年額ト別表第二号表甲号中其ノ不具廃疾ノ程度ニ相応スル増加恩給年額トノ差額ヲ控除シタルモノヲ以テ増加恩給ノ年額トス但シ後ノ傷痍又ハ疾病ノミニ因ル増加恩給年額カ前後ノ傷痍又ハ疾病ヲ合シタルモノニ依ル増加恩給年額ト同額ナルトキハ此ノ控除ヲ為サス
二 後ノ傷痍又ハ疾病カ普通公務ニ基因スルトキハ別表第二号表乙号中前項ノ規定ニ依リ定メタル不具廃疾ノ程度ニ相応スル増加恩給年額ニ前ノ増加恩給年額ト別表第二号表乙号中其ノ不具廃疾ノ程度ニ相応スル増加恩給年額トノ差額ヲ加ヘタルモノヲ以テ増加恩給ノ年額トス
第五十六条 前二条ノ規定ニ依リ恩給ヲ改定スル場合ニ於テ其ノ年額従前ノ恩給年額ヨリ少キトキハ従前ノ恩給年額ヲ以テ改定恩給ノ年額トス
第五十七条 前三条ノ規定ハ宮内官ノ恩給規程ニ依ル恩給ヲ受クル者公務員ト為リ退職シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第五十八条 普通恩給ハ之ヲ受クル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ間之ヲ停止ス
一 公務員又ハ第四十二条第一項第一号ニ規定スル宮内職員トシテ就職スルトキハ就職ノ月ノ翌月ヨリ退職ノ月迄但シ実在職期間一月未満ナルトキ、軍人以外ノ公務員トシテ恩給ヲ受クル者陸軍若ハ海軍ノ兵卒トシテ就職スルトキ又ハ准士官以下ノ軍人若ハ準軍人トシテ恩給ヲ受クル者軍人以外ノ公務員トシテ就職スルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄但シ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタルトキハ恩給ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄之ヲ停止ス
前項第二号ノ規定ハ増加恩給ニ付之ヲ準用ス
第五十九条 文官ハ毎月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相当スル金額ヲ国庫ニ納付スヘシ
教育職員ハ毎月其ノ俸給ノ百分ノ一ニ相当スル金額ヲ国庫ニ納付スヘシ但シ朝鮮、台湾又ハ樺太以外ノ地ニ於ケル公立ノ小学校、実業補習学校、幼稚園及盲唖学校其ノ他ノ小学校ニ類スル各種学校ノ教育職員ハ此ノ限ニ在ラス
待遇職員ハ之ニ俸給ヲ給スル国庫、府県其ノ他ノ経済ニ対シ其ノ俸給又ハ給料ノ百分ノ一ニ相当スル金額ヲ納付スヘシ
第二節 恩給金額
第六十条 文官在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職十五年以上十六年未満ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相当スル金額トシ十五年以上一年ヲ増ス毎ニ其ノ一年ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相当スル金額ヲ加ヘタル金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外国実勤続在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤続在職年中十五年ヲ控除シタル残ノ勤続在職年一年ニ付退職当時ノ俸給年額三百分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
在職年四十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ在職年四十年トシテ計算ス
第一項ノ在職年ハ国務大臣トシテ退官スル者ニ付テハ国務大臣トシテノ在職年五年以上ナルヲ以テ足ル
第四十六条、第五十四条第一項第二号若ハ第三号又ハ前項ノ規定ニ依リ在職年十五年未満ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
第四十七条ノ規定ニ依リ準文官ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相当スル金額トス
第六十一条 軍人在職年十一年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ規定ハ準軍人在職年十一年以上ニシテ退職シ且其ノ身分ヲ免セラレタル場合ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ普通恩給ノ年額ハ退職当時ノ階等及其ノ在職年数ニ依リ定メタル別表第一号表ノ金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ外国実勤続在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤続在職年中十五年ヲ控除シタル残ノ勤続在職年一年ニ付退職当時ノ軍人ノ階等ニ応シ別表第一号表ノ十一年ノ額ト十二年ノ額トノ差額ノ二分ノ一ニ相当スル金額ヲ之ニ加給ス
在職年五十年ヲ超ユル者ニ給スヘキ恩給年額ハ之ヲ在職年五十年トシテ計算ス
陸海軍准士官ニシテ其ノ官ニ対スル最高ノ俸給ヲ受ケタル者ニハ高等官八等ノ額ヲ給ス
第四十六条、第四十七条又ハ第五十四条第一項第二号若ハ第三号ノ規定ニ依リ在職年十一年未満ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十一年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
準軍人ノ階等ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二条 教育職員在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未満ニ対シ退職当時ノ俸給年額百五十分ノ五十ニ相当スル金額トシ十五年以上一年ヲ増ス毎ニ其ノ一年ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相当スル金額ヲ加ヘタル金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ小学校、実業補習学校、幼稚園又ハ盲唖学校其ノ他ノ小学校ニ類スル各種学校ノ教育職員トシテノ勤続在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤続在職年中十五年ヲ控除シタル残ノ勤続在職年一年ニ付退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
第一項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ中学校又ハ之ト同等以下ノ程度ノ学校ノ教育職員トシテノ勤続在職年十五年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤続在職年中十五年ヲ控除シタル残ノ勤続在職年一年ニ付退職当時ノ俸給年額ノ三百分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
前項ノ中学校ト同等以下ノ程度ノ学校ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十六条又ハ第五十四条第一項第二号若ハ第三号ノ規定ニ依リ在職年十五年未満ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
第六十条第三項及第四項ノ規定ハ教育職員ニ付之ヲ準用ス
第四十七条ノ規定ニ依リ準教育職員ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相当スル金額トス
第六十三条 警察監獄職員在職年十年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十年以上十一年未満ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相当スル金額トシ十年以上一年ヲ増ス毎ニ其ノ一年ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相当スル金額ヲ加ヘタル金額トス
前項ノ場合ニ於テ其ノ在職年中ニ警察監獄職員トシテノ勤続在職年十年以上ノモノヲ含ムトキハ其ノ勤続在職年中十年ヲ控除シタル残ノ勤続在職年一年ニ付退職当時ノ俸給年額ノ三百分ノ一ノ割合ヲ以テ之ニ加給ス
第四十六条又ハ第五十四条第一項第二号若ハ第三号ノ規定ニ依リ在職年十年未満ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ年額ハ在職年十年ノ者ニ給スヘキ普通恩給ノ額トス
第六十条第三項及第四項ノ規定ハ警察監獄職員ニ付之ヲ準用ス
第六十四条 待遇職員在職年十五年以上ニシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ普通恩給ノ年額ハ在職年十五年以上十六年未満ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ五十ニ相当スル金額トシ十五年以上一年ヲ増ス毎ニ其ノ一年ニ対シ退職当時ノ俸給年額ノ百五十分ノ一ニ相当スル金額ヲ加ヘタル金額トス
第六十条第三項及第四項並第六十二条第六項ノ規定ハ待遇職員ニ付之ヲ準用ス
第六十五条 公務員ノ増加恩給ノ年額ハ退職当時ノ階等、傷病ノ原因及不具廃疾ノ程度ニ依リ定メタル別表第二号表ノ金額トス
前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ給スヘキ増加恩給ノ年額ニ付之ヲ準用ス
第六十六条 下士以下ノ軍人公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具廃疾ノ程度ニ至ラサルモ之カ為退職シ又ハ退職後一年内ニ之カ為一種以上ノ兵役ヲ免セラレタルトキハ之ニ傷病賜金ヲ給ス
傷病賜金ハ之ヲ普通恩給又ハ一時恩給ト併給スルヲ妨ケス
傷病賜金ノ額ハ退職当時ノ階等並傷病ノ原因及程度ニ依リ定メタル別表第三号表ノ金額トス
前項ノ傷病ノ程度ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十七条 文官在職年一年以上十五年未満ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職当時ノ俸給月額ニ相当スル金額ニ在職年ノ年数ヲ乗シタル金額トス
第六十八条 下士以上ノ軍人在職年十一年未満ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス但シ下士以上トシテノ在職年一年未満ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職当時ノ階等及在職年ノ年数ニ依リ定メタル別表第四号表ノ金額トス
第六十九条 教育職員在職年一年以上十五年未満ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職当時ノ俸給月額ニ相当スル金額ニ在職年ノ年数ヲ乗シタル金額トス
第七十条 警察監獄職員在職年一年以上十年未満ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職当時ノ俸給月額ニ相当スル金額ニ在職年ノ年数ヲ乗シタル金額トス
第七十一条 待遇職員在職年一年以上十五年未満ニシテ退職シタルトキハ之ニ一時恩給ヲ給ス
前項ノ一時恩給ノ金額ハ退職当時ノ俸給月額ニ相当スル金額ニ在職年ノ年数ヲ乗シタル金額トス
第三章 遺族
第七十二条 本法ニ於テ遺族トハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ祖父、祖母、父、母、夫、妻、子及兄弟姉妹ニシテ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ当時之ト同一戸籍内ニ在ルモノヲ謂フ
公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ当時胎児タル子出生シタルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ当時其ノ戸籍内ニ在リタルモノト看做ス
第七十三条 公務員又ハ之ニ準スヘキ者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ遺族ニハ妻、未成年ノ子、夫、父、母、成年ノ子、祖父、祖母ノ順位ニ依リ之ニ扶助料ヲ給ス
一 在職中死亡シ其ノ死亡ヲ退職ト看做ストキハ之ニ普通恩給ヲ給スヘキトキ
二 普通恩給ヲ給セラルル者死亡シタルトキ
前項ノ規定ニ依ル同順位ノ子数人アルトキハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ヲ被相続人トシタル家督相続ノ順位ニ準シ之ヲ定ム
父母ニ付テハ養父母ヲ先ニシ実父母ヲ後ニス祖父母ニ付テハ養父母ノ父母ヲ先ニシ実父母ノ父母ヲ後ニシ父母ノ養父母ヲ先ニシ実父母ヲ後ニス
先順位者タルヘキ者後順位者タル者ヨリ後ニ生スルニ至リタルトキハ前三項ノ規定ハ当該後順位者失権シタル後ニ限リ之ヲ適用ス
第七十四条 未成年ノ子ハ未タ婚姻セサルトキニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
夫又ハ成年ノ子ハ不具廃疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキトキニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
養子ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ家督相続人タルトキ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者カ家督相続人ニシテ之ヲ戸主ト看做ストキハ其ノ死亡ノ時ニ於テ其ノ家督相続人タルヘキ者ニ限リ之ニ扶助料ヲ給ス
前項ノ家督相続人ニハ之ニ準スヘキ者ヲ包含ス
第七十五条 扶助料ノ年額ハ左ノ各号ニ依ル
一 公務員又ハ之ニ準スヘキ者戦闘又ハ戦闘ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキハ其ノ普通恩給年額ノ全額
二 公務員又ハ之ニ準スヘキ者普通公務ニ因ル傷痍疾病ノ為死亡シタルトキハ其ノ普通恩給年額ノ十分ノ八ニ相当スル金額
三 其ノ他ノ場合ニ於テハ公務員又ハ之ニ準スヘキ者ニ給セラルル普通恩給年額ノ十分ノ五ニ相当スル金額
第七十六条 公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡後遺族左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ扶助料ヲ受クルノ資格ヲ失フ
一 子婚姻シ又ハ其ノ家ヲ去リタルトキ但シ父ノ属シタル家ヨリ分家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 公務員又ハ之ニ準スヘキ者女子ナル場合ニ於テ夫婚姻シ又ハ家ヲ去リタルトキ
三 父、母、祖父又ハ祖母其ノ家ヲ去リタルトキ
第七十七条 扶助料ヲ受クル者六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキハ其ノ月ノ翌月ヨリ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄扶助料ヲ停止ス但シ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタルトキハ扶助料ハ之ヲ停止セス其ノ言渡ヲ取消サレタルトキハ取消ノ月ノ翌月ヨリ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル月迄之ヲ停止ス
前項ノ規定ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ刑ノ執行中又ハ其ノ執行前ニ在ル者ニ扶助料ヲ給スヘキ事由発生シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第七十八条 扶助料ヲ給セラルヘキ者一年以上所在不明ナルトキハ次順位者ノ申請ニ依リ裁定官庁ハ所在不明中扶助料ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第七十九条 前二条ノ扶助料停止ノ事由アル場合ニ次順位者アルトキハ停止期間中扶助料ハ之ヲ当該次順位者ニ転給ス
第八十条 遺族左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ扶助料ヲ受クルノ権利ヲ失フ
一 其ノ家ヲ去リタルトキ但シ妻夫ノ属シタル家ヨリ分家シ又ハ遺族タル子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキ及子父ノ属シタル家ヨリ分家シ又ハ公務員若ハ之ニ準スヘキ者ノ妻若ハ子ニシテ分家スルモノニ伴ヒ其ノ家ニ入リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 妻、子又ハ夫婚姻シタルトキ
三 不具廃疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキ夫又ハ成年ノ子ニ付其ノ事情止ミタルトキ
第八十一条 公務員又ハ之ニ準スヘキ者第七十三条第一項各号ノ一ニ該当シ兄弟姉妹以外ニ扶助料ヲ受クル者ナキトキハ其ノ兄弟姉妹未成年又ハ不具廃疾ニシテ生活資料ヲ得ルノ途ナク且之ヲ扶養スル者ナキ場合ニ限リ之ニ一時扶助料ヲ給ス
前項ノ一時扶助料ノ金額ハ兄弟姉妹ノ人員ニ拘ラス扶助料年額ノ一年分乃至五年分ニ相当スル金額トス
第八十二条 文官、教育職員若ハ待遇職員在職年一年以上十五年未満ニシテ在職中死亡シ又ハ警察監獄職員在職年一年以上十年未満ニシテ在職中死亡シタル場合ニハ其ノ遺族ニ一時扶助料ヲ給ス
前項ノ一時扶助料ノ金額ハ公務員ノ死亡ノ当時ノ俸給月額ニ相当スル金額ニ其ノ公務員ノ在職年ノ年数ヲ乗シタル金額トス
下士以上ノ軍人在職年一年以上十一年未満ニシテ在職中死亡シタル場合ニハ其ノ遺族ニ一時扶助料ヲ給ス
前項ノ一時扶助料ノ金額ハ死亡者ノ階等及在職年ノ年数ニ依リ定メタル別表第四号表ノ金額トス
附 則
第八十三条 本法ハ大正十二年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第八十四条 左ノ法令ハ之ヲ廃止ス
一 官吏恩給法
一 官吏遺族扶助法
一 軍人恩給法
一 市町村立小学校教員退隠料及遺族扶助料法
一 府県立師範学校長俸給並公立学校職員退隠料及遺族扶助料法
一 明治二十四年法律第四号
一 明治二十九年法律第十三号
一 官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則
一 明治二十九年法律第七十八号
一 明治三十三年法律第七十五号
一 明治三十三年法律第七十六号
一 明治三十三年法律第七十七号
一 巡査看守退隠料及遺族扶助料法
一 明治三十五年法律第二十九号
一 在外指定学校職員退隠料及遺族扶助料法
一 明治四十年法律第四十八号
一 明治四十年法律第四十九号
一 明治四十一年法律第三十五号
一 明治四十三年法律第三十号
一 明治四十四年法律第六十一号
一 明治四十四年法律第六十七号
一 明治四十五年法律第十一号
一 明治四十五年法律第十二号
一 大正七年法律第三十号
一 大正十年法律第三十五号
一 大正十年法律第九十四号
一 大正十一年法律第十八号
一 大正十一年法律第十九号
一 明治二十二年勅令第百三十三号
一 明治二十三年勅令第九十八号
一 明治二十五年勅令第十八号
一 明治二十五年勅令第三十二号
一 明治三十二年勅令第百九十六号
一 明治三十八年勅令第二百二十九号
一 明治四十年勅令第百八十八号
一 明治四十年勅令第百八十九号
一 明治四十一年勅令第七十一号
一 明治四十五年勅令第七十号
一 大正七年勅令第六十二号
一 大正十年勅令第二百六十八号
一 大正十一年勅令第八十七号
一 大正十一年勅令第二百八十四号
一 明治九年第九十九号達陸軍恩給令
一 明治十五年第四十一号達巡査看守給助例
一 明治十六年第三十八号達海軍恩給令
一 明治十七年第一号達官吏恩給令
第八十五条 本法施行前給与事由ノ生シタル恩給、退隠料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノニ付テハ従前ノ規定ニ依ル
従前ノ規定ニ依ル恩給、退隠料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノハ之ヲ本法ニ依リ受ケ又ハ受クヘキ恩給ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ従前ノ規定ニ依ル恩給、退隠料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノカ本法ニ依リ給与スル恩給ノ何レノ種類ニ属スヘキカハ公務員及其ノ遺族ノ種類並給与ノ事由ニ依リ之ヲ定ム
従前ノ規定ニ依ル恩給、退隠料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノニシテ本法ニ依ル恩給ニ該当セサルモノアルトキハ本法ニ依ル恩給中最近キ性質ヲ有スルモノニ依ル
第八十六条 第五条乃至第七条ノ規定ハ従前ノ規定ニ依リ生シタル恩給、退隠料、遺族扶助料、退官賜金、退職給与金、退職一時金、給助金、賑恤金、一時扶助金其ノ他之ニ準スヘキモノヲ受クヘキ権利ニシテ本法施行ノ日迄ニ従前ノ規定ニ依ル請求期間ヲ経過セサルモノニ付之ヲ適用ス
第八十七条 第十条ノ規定ハ本法施行前給与ノ事由ヲ生シタル恩給、退隠料、遺族扶助料、退官賜金、退職給与金、退職一時金、給助金、賑恤金、一時扶助金其ノ他之ニ準スヘキモノニ付本法施行後其ノ給与ヲ為ス場合ニ付之ヲ適用ス
第八十八条 従前ノ規定ニ依リ内閣総理大臣ノ為シタル裁定ハ具申、訴願又ハ行政訴訟ニ付テハ之ヲ本法ニ依ル内閣恩給局長ノ裁定ト看做シ従前ノ規定ニ依ル具申ノ裁決ハ之ヲ本法ニ依ル具申ノ裁決ト看做ス
本法施行ノ際現ニ具申中又ハ訴願中ノ事件ニ付テハ従前ノ手続規定ニ依リ之ヲ完結ス
第八十九条 府県ニシテ本法施行ノ際市町村立小学校教員退隠料及遺族扶助料法第十四条ノ規定ニ依リ小学校教員恩給基金ヲ備フルモノハ本法施行後引続キ其ノ恩給基金ヲ備フルコトヲ得
前項ノ恩給基金ヲ備フル府県ニ於テハ第十八条第二項ノ規定ニ依ル納金ハ之ヲ其ノ恩給基金ト為スヘシ
恩給基金ハ其ノ利子ヲ以テ府県カ給与スヘキ教育職員若ハ準教育職員又ハ其ノ遺族ノ恩給ニ充ツルノ外之ヲ支消スルコトヲ得ス
府県ニ於テ給与スヘキ教育職員若ハ準教育職員並其ノ遺族ノ恩給ハ恩給基金ノ利子及第十八条第三項ノ規定ニ依リ国庫ヨリ交付スル給与金其ノ他ノ収入ヲ以テ之ヲ支弁シ不足アルトキハ府県費ヲ以テ之ヲ補充スヘシ
恩給基金ノ管理ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十条 本法施行前ノ在職ニ付在職年ヲ計算スル場合ハ従前ノ規定ニ依ル但シ本法施行ノ際現ニ在職スル者ニ付テハ其ノ在職ニ継続スル在職ニ限リ本法施行前ノ在職ト雖加算年ニ関スル規定ヲ除クノ外本法ニ依リ其ノ在職年ヲ計算ス
前項但書ノ場合ニ於テ従前ノ規定ニ依リ特ニ通算シ得ヘキコトヲ定メラレタル年月数アルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラス之ヲ在職年ニ通算ス
第九十一条 内地人タル公務員其ノ職務ヲ以テ台湾、朝鮮、関東州(関東庁及其ノ所属官署職員ニ付テハ南満洲鉄道附属地ヲ含ム)、樺太又ハ南洋群島ニ一定ノ期間引続キ在勤シタルトキハ当分ノ内在勤期間ノ一月ニ付半月ヲ加算ス
前項ノ引続キ在勤スヘキ期間ハ軍人ニ在リテハ六月、警察監獄職員ニ在リテハ二年、其ノ他ノ公務員ニ在リテハ三年トス
第四十条ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第九十二条 公務員其ノ職務ヲ以テ国境警備又ハ理蕃ノ為危険地域内ニ勤務シタルトキハ当分ノ内在勤期間ノ一月ニ付一月半ヲ加算ス
前項ノ危険地域及期間ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第四十条ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第九十三条 海軍警吏補ヨリ海軍巡査ト為リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引続キ現ニ南洋庁巡査ノ職ニ在ルモノニ付テハ其ノ海軍警吏補トシテノ在職年月数ハ本法ノ適用ニ関シテハ之ヲ巡査トシテ在職シタルモノト看做ス
第九十四条 朝鮮総督府巡査補ヨリ朝鮮総督府巡査ト為リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引続キ在職スルモノニ付テハ其ノ統監府巡査補及朝鮮総督府巡査補トシテノ在職年月数ハ本法ノ適用ニ関シテハ之ヲ巡査トシテ在職シタルモノト看做ス
第九十五条 台湾総督府巡査補ヨリ台湾総督府巡査ト為リシ者ニシテ本法施行ノ際迄引続キ在職スルモノニ付テハ其ノ台湾総督府巡査補トシテノ在職年月数ハ本法ノ適用ニ関シテハ之ヲ巡査トシテ在職シタルモノト看做ス
第九十六条 大正九年七月三十一日以前ニ休職若ハ待命ト為リタル者ニシテ本法施行ノ際迄引続キ休職若ハ待命中ノモノ又ハ其ノ遺族同日以前ノ俸給ニ基キ年金タル恩給ヲ受クヘキ場合ニ於テハ其ノ金額算出ノ基礎タル俸給年額ハ其ノ額ニ勅令ノ定ムル金額ヲ加ヘタル額トス
第九十七条 第四十六条第二項第三項及第五十四条第一項第三号第二項ノ規定ハ本法施行前退職シタル公務員ニ付之ヲ適用ス
前項ノ規定ハ公務員ニ準スヘキ者ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依リ給スル恩給ノ金額ハ本法施行前ノ分ニ付テハ従前ノ規定ニ依ル
第九十八条 第四十八条ノ規定ハ本法施行前傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ本法施行後退職シ本法施行後不具廃疾ト為リタル者ニハ之ヲ適用セス仍従前ノ例ニ依ル
第九十九条 第五十八条ノ規定ハ教育職員及教官其ノ他教育事務ニ従事スル文官ニ付テハ当分ノ内之ヲ適用セス其ノ退隠料又ハ恩給ノ停止ハ仍従前ノ例ニ依ル但シ教育職員及教官其ノ他教育事務ニ従事スル文官学習院ノ職員ト為リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ノ施行セラルル期間内ニ属スル教育職員ノ在職年ト教官其ノ他教育事務ニ従事スル文官以外ノ公務員ノ在職年トハ互ニ之ヲ通算セス仍従前ノ例ニ依ル教育職員ノ在職年ト第四十二条第一項各号ニ掲クル在職年トノ間ニ付亦同シ但シ学習院ノ職員トシテノ在職年ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第一項ノ規定ノ施行セラルル期間内ニ文官ヨリ教育職員又ハ教官其ノ他教育事務ニ従事スル文官ニ転任シタル者失格原因ナクシテ退職シ年金タル恩給ヲ受ケサル場合ニ於テハ文官ノ在職年数ニ応シ之ニ一時恩給ヲ給ス
教育職員ヨリ文官ニ転シタル者教官其ノ他教育事務ニ従事スル文官以外ノ文官トシテ失格原因ナクシテ退職シタルトキハ教官其ノ他教育事務ニ従事スル文官トシテノ在職最終ノ俸給額ニ基キ之ニ恩給ヲ給ス
第百条 本法施行前死亡シタル者ノ遺族ノ扶助料ニシテ本法施行後転給セラルヘキモノニ付テハ従前ノ規定ニ依ル恩給額ヲ標準トスルノ外本法ニ依リ之ヲ給ス
前項ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ従前ノ規定ニ依リ扶助料ヲ受クル事ヲ得ル者ノ権利ヲ妨クルコトナシ
本法施行前ニ扶助料ヲ受クルノ権利ヲ有シ且其ノ権利ヲ有セサルニ至リタル者ハ之ヲ受クルノ権利ヲ本法ニ依リ取得スルコトナシ
第一項ノ場合ニ於テ本法ニ依リ扶助料ヲ受クルニ付先順位ニ在ルヘキ者ト雖本法ニ依リ後順位ニ在ル者先ニ扶助料ヲ受ケタル場合ニハ本法ニ依リ扶助料ヲ受クルノ権利ヲ有スルコトナシ
大正六年法律第六号附則ノ規定ニ依リ恩給ノ増額ヲ受ケサリシ軍人ノ遺族本法施行後扶助料ヲ転給セラルヘキ場合ニ於テ第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ軍人ノ恩給ハ之ヲ請求ヲ竢タスシテ同法附則ノ規定ニ依リ増額セラレタルモノト看做ス
第百一条 本法施行ノ際現ニ従前ノ規定ニ依リ年金タル恩給、退隠料、遺族扶助料其ノ他之ニ準スヘキモノヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニシテ本法所定ノ恩給又ハ扶助料ノ金額ヲ受ケサルモノニハ当該金額ニ其ノ金額ト本法所定ノ各相当恩給又ハ扶助料ノ金額トノ差額ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ増給ス
第百二条 明治二十四年八月十六日以降明治四十三年三月三十一日迄ニ退官退職シ又ハ死亡シタル文官、看守、陸軍監獄看守、海軍監獄看守、陸軍警査、海軍警査、貴族院守衛若ハ衆議院守衛又ハ其ノ遺族ニシテ明治四十三年四月改正前ノ俸給令ニ依ル俸給ヲ基礎トシ恩給又ハ扶助料ヲ受ケ本法施行ノ際迄其ノ権利ヲ有スル者ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ恩給又ハ扶助料ヲ本法施行ノ日ヨリ増額給与ス
前項ノ規定ハ明治四十四年三月三十一日以前ニ退職シタル小学校、実業補習学校、幼稚園及盲唖学校其ノ他ノ小学校ニ類スル各種学校ノ教育職員若ハ巡査又ハ其ノ遺族ニシテ本法施行ノ際迄其ノ権利ヲ有スルモノニ付之ヲ準用ス
第百三条 北海道屯田兵ノ現役ニ服シタル年月日数ハ之ヲ公務員ノ在職年ニ通算シ本法施行ノ日ヨリ其ノ者ノ受クル年金タル恩給ヲ改定シ又ハ新ニ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ規定ハ前項ニ規定スル者ノ遺族ノ年金タル扶助料ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テハ第五条ニ規定スル請求期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第百四条 第八十五条乃至前条ニ規定スルモノヲ除クノ外本法ノ施行ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
(別表)
第一号表
【表】
第二号表
【表】
備考 特別項ハ各号第一項ノ金額ニ其ノ十分ノ五以内ヲ加ヘタルモノトス
第三号表
【表】
第四号表
【表】