(基本計画)
第四条 内閣総理大臣は、対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該対応措置を実施すること及び当該対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならない。
2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。
二 対応措置を実施する場合における次に掲げる事項
ハ 当該対応措置を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
ニ 当該対応措置を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該対応措置を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
ホ 国際連合、人道復興関係国際機関又は国際連合加盟国(第十八条において「国際連合等」という。)に無償又は時価よりも低い対価で譲渡するために関係行政機関がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達する場合には、その実施に係る重要事項
三 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項
3 第一項の規定は、基本計画の変更について準用する。
4 対応措置を外国の領域で実施する場合には、当該外国(イラクにあっては、第二条第三項第一号の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関を含む。)及び人道復興関係国際機関その他の関係機関と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。
(国会への報告)
第五条 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
一 基本計画の決定又は変更があったときは、その内容
二 基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果
(国会の承認)
第六条 内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、当該対応措置を開始した日(防衛庁長官が第八条第二項の規定により当該対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日をいう。)から二十日以内に国会に付議して、当該対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、速やかに、その承認を求めなければならない。
2 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該対応措置を終了させなければならない。
(本府による対応措置の実施)
第七条 内閣総理大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての物品の提供(次条第一項に規定する物品の提供を除く。)を行うものとする。
2 内閣総理大臣は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての役務の提供(次条第二項に規定する役務の提供を除く。)を行うものとする。この場合において、内閣総理大臣は、イラク復興支援職員(一般職に属する国家公務員のうち対応措置に従事する内閣府本府(以下「本府」という。)の職員をいう。以下同じ。)にその実施を命ずるものとする。
3 前二項に定めるもののほか、本府による対応措置の実施に関し必要な事項は、政令で定める。
(自衛隊による対応措置の実施)
第八条 内閣総理大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての物品の提供(自衛隊に属する物品の提供に限る。)を行うものとする。
2 防衛庁長官は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての役務の提供(自衛隊による役務の提供に限る。)について実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
3 防衛庁長官は、前項の実施要項において、対応措置を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。
4 防衛庁長官は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
5 対応措置のうち公海若しくはその上空又は外国の領域における活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。
6 自衛隊の部隊等が対応措置として実施する業務には、次に掲げるものを含まないものとする。
一 武器(弾薬を含む。第十八条において同じ。)の提供
二 戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備
7 自衛隊の部隊等は、外国の領域において対応措置を実施するに当たり、外務大臣の指定する在外公館と密接に連絡を保つものとする。
8 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、自衛隊による対応措置の実施のため必要な協力を行うものとする。
9 第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。
(配慮事項)
第九条 内閣総理大臣及び防衛庁長官は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、イラク復興支援職員及び自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。
(イラク復興支援職員の採用)
第十条 内閣総理大臣は、対応措置に従事させるため、当該対応措置に従事することを志望する者のうちから、選考により、任期を定めてイラク復興支援職員を採用することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による採用に当たり、関係行政機関若しくは地方公共団体又は民間の団体の協力を得て、広く人材の確保に努めるものとする。
(行政機関の職員の定員に関する法律の特例)
第十一条 行政機関の職員の定員に関する法律(昭和四十四年法律第三十三号)第一条及び第二条の規定にかかわらず、前条第一項の規定により採用されるイラク復興支援職員の定員は、政令で定めるところにより、同法第一条第一項及び第二条の定員に含まないものとする。
(関係行政機関の職員の派遣)
第十二条 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に対し、基本計画に従い、対応措置を実施するため必要な技術、能力等を有する職員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第三項各号に掲げる者を除く。)を本府に派遣するよう要請することができる。
2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の職員に該当する職員を期間を定めて本府に派遣するものとする。
3 前項の規定により派遣された職員は、従前の官職を保有したまま、同項の期間を任期としてイラク復興支援職員に任用されるものとする。
4 前項の規定により従前の官職を保有したままイラク復興支援職員に任用される者は、内閣総理大臣の指揮監督の下に対応措置に従事する。
(国家公務員法の適用除外)
第十三条 第十条第一項の規定により採用されるイラク復興支援職員については、イラク復興支援職員になる前に、国家公務員法第百三条第一項に規定する営利企業(以下この条において「営利企業」という。)を営むことを目的とする団体の役員、顧問若しくは評議員(以下この条において「役員等」という。)の職に就き、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等の職に就き、若しくは事業に従事し、若しくは事務を行っていた場合においても、同項及び同法第百四条の規定は、適用しない。
(イラク人道復興支援等手当)
第十四条 我が国以外の領域(公海を含む。)において対応措置に従事する者には、対応措置が行われる地域の勤務環境及び対応措置の特質にかんがみ、イラク人道復興支援等手当を支給することができる。
2 前項のイラク人道復興支援等手当に関し必要な事項は、政令で定める。
3 内閣総理大臣は、前項の政令の制定又は改廃に際しては、人事院の意見を聴かなければならない。
(国家公務員災害補償法等の読替え)
第十五条 イラク人道復興支援等手当が支給される者に係る国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)第四条第二項及び防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)第二十七条第二項ただし書の規定の適用については、これらの規定中「及び国際平和協力手当」とあるのは、「、国際平和協力手当及びイラク人道復興支援等手当」とする。
(関係行政機関の協力)
第十六条 内閣総理大臣及び防衛庁長官は、対応措置を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えその他の協力を要請することができる。
2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の協力を行うものとする。
(武器の使用)
第十七条 対応措置の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。)、イラク復興支援職員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第四条第二項第二号ニの規定により基本計画に定める装備である武器を使用することができる。
2 前項の規定による武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。ただし、生命又は身体に対する侵害又は危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。
3 第一項の場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項及び次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。
4 第一項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。