府県立師範学校長俸給並公立学校職員退隠料及遺族扶助料法
法令番号: 法律第九十一號
公布年月日: 明治23年10月3日
法令の形式: 法律
朕府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年十月二日
內閣總理大臣　伯爵　山縣有朋
文部大臣　芳川顯正
法律第九十一號
府縣立師範學校長俸給竝公立學校職員退隱料及遺族扶助料法
第一條　府縣立師範學校長ノ俸給ハ國庫ノ負擔トス
第二條　府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員ハ此法律ノ規定ニ從ヒ退隱料ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第三條　在職滿十五年以上ノ者左ノ事項ノ一ニ當ルトキハ終身退隱料ヲ給ス
一　年齡六十歲ヲ超ヘ退職ヲ命シタルトキ
二　傷痍ヲ受ケ若クハ疾病ニ罹リ其職務ニ堪ヘサルカ爲退職ヲ命シタルトキ
三　廢校ニ依リ退職シ又ハ學校編制ノ變更ニ依リ退職ヲ命シタルトキ
第四條　左ノ事項ノ一ニ當ルトキハ前條ノ年限ニ滿タサルモ終身退隱料ヲ給シ尙其最下金額十分ノ七マテノ增加退隱料ヲ給ス
一　職務ニ依リ傷痍ヲ受ケ一肢以上ノ用ヲ失ヒ若クハ之ニ準スヘキ者ニシテ其職務ニ堪ヘサルカ爲退職ヲ命シタルトキ
二　職務ニ依リ健康ニ有害ナル感動ヲ受クルヲ顧ミルコト能ハスシテ勤務ニ從事シ爲ニ疾病ニ罹リ一肢以上ノ用ヲ失ヒ若クハ之ニ準スヘキ者ニシテ其職務ニ堪ヘサルカ爲退職ヲ命シタルトキ
第五條　官吏恩給法第五條第一項第四項第五項第六條及第十一條ハ退隱料ニ適用ス
第六條　府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員ニ準スヘキ官立公立學校職員ヨリ府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員ニ轉シタル者ハ該官立公立學校ニ於ケル勤務ノ年數ヲ退隱料等ノ給與上在職年數ニ算入スヘキモノトス其在職年數ノ算定ニ關スル規則竝府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員ニ準スヘキ官立公立學校職員ト認ムヘキ者ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條　退隱料ヲ受クル者左ノ事項ノ一ニ當ルトキハ退隱料ヲ受クルノ權利ヲ失フモノトス
一　失職ニ該當スヘキ現職中ノ所爲確定シタルトキ
二　禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
三　日本臣民タルノ分限ヲ失ヒタルトキ
四　第三條第二第四條若クハ第九條ニ依リ退隱料ヲ受クル者復タヒ其職務ニ堪フルニ至ルコトアルモ仍官ヨリ指命セラルヽ所ノ敎職ニ就カサルトキ又ハ第三條第三ニ依リ退隱料ヲ受クル者官ヨリ指命セラルヽ所ノ敎職ニ就カサルトキ但其俸給ハ退職現時ノ俸給ヨリ少額ナラス且年齡未タ六十歲ニ至ラサル場合ニ限ル
五　府縣知事ノ許可ヲ經スシテ公務ニ就キタルトキ
退隱料ヲ受クル者左ノ事項ノ一ニ當ルトキハ其時間退隱料ヲ受クルコトヲ得ス
一　公務ニ就キ退職現時ノ俸給額ト同額以上ノ給料ヲ受クルトキ
二　三箇年以上受領ヲ怠リタルトキ
三　公權ヲ停止セラレタルトキ
第八條　年齡未タ六十歲ニ至ラスシテ自己ノ便宜ニ依リ退職シタル者又ハ免職ニ處セラレ若クハ失職ニ該當シタル者ハ退隱料ヲ受クルノ資格ヲ失フモノトス
第九條　府縣立師範學校及公立中學校ノ准敎員ハ職務ノ爲傷痍ヲ受ケ若クハ疾病ニ罹リ第四條ニ該當スル者ニ限リ退職現時ノ俸給四分ノ一ノ退隱料ヲ終身給與ス
第十條　府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員在職滿一年以上五年未滿ニシテ退職シタル者ハ退職現時ノ俸給一箇月分ニ當ル金員ヲ給シ其滿五年以上十一年未滿ニシテ退職シタル者ハ俸給二箇月分ニ當ル金員ヲ給シ其滿十一年以上十五年未滿ニシテ退職シタル者ハ俸給三箇月分ニ當ル金員ヲ給ス
第三條第四條又ハ第九條ニ依リ退隱料ヲ受クル者自己ノ便宜ニ依リ退職シタル者又ハ免職ニ處セラレ若クハ失職ニ該當シタル者又ハ前項ノ給與ヲ受クヘキ事由ノ生シタル後三箇月內ニ之ヲ請求セサル者ハ前項ノ限ニ在ラス
自己ノ便宜ニ依リ本條第一項ノ給與ヲ受ケサル者他日府縣立師範學校及公立中學校長正敎員ノ職ニ就クトキハ前ノ在職年數ヲ以テ退隱料等ノ給與上ニ關スル在職年數ニ算入スヘキモノトス但其給與ヲ受クヘキ事由ノ生シタル後三箇月內ニ之ヲ受ケサルコトヲ申立サル者ハ本文ノ限ニ在ラス
本條ノ給與及之ニ關スル費用ハ退職者ノ退職ノ際勤務セシ學校所屬府縣郡市町村ノ負擔トス
第十一條　退隱料ノ支給ハ府縣知事ノ證明ニ依リ文部大臣之ヲ裁定ス
官吏恩給法第十六條及第十八條ハ退隱料ニ適用ス
第十二條　府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員左ノ事項ノ一ニ當ルトキハ其遺族ハ此法律ノ規定ニ從ヒ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有ス
一　在職十五年以上ノ者在職中死去シタルトキ
二　在職十五年未滿ノ者職務ノ爲死去シタルトキ
三　退隱料ヲ受クル者死去シタルトキ
第十三條　官吏遺族扶助法第四條乃至第十條第十二條乃至第十六條ハ此法律ニ規定スル扶助料ニ適用ス
官吏遺族扶助法第十一條ハ此法律ニ規定スル扶助料ヲ受クヘキ寡婦孤兒又ハ父母祖父母ナクシテ死去シタル者ノ戶籍內ニ在ル二十歲未滿又ハ癈疾若クハ不具ニシテ產業ヲ營ムコト能ハサル兄弟姊妹アリテ之ヲ給養スル者ナキ場合ニ適用ス
第十四條　府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員ニシテ在職十五年未滿ノ者在職中職務ノ故ニアラスシテ死去シタルトキハ其遺族ニ一時扶助金ヲ給ス
前項ノ扶助金ニ就キテハ官吏遺族扶助法第十七條第二項ヲ適用ス
第十五條　扶助料及扶助金ノ支給竝第十三條第二項ノ給與ハ府縣知事ノ申牒ニ依リ文部大臣之ヲ裁定ス
第十六條　府縣立師範學校及公立中學校ノ學校長正敎員ハ其俸給百分ノ一ヲ每年國庫ニ納ムヘシ
府縣郡市町村ハ其府縣立師範學校及公立中學校長正敎員ノ俸給百分ノ一ニ當ル金員ヲ每年國庫ニ納ムヘシ
第十七條　退隱料扶助料扶助金及第十三條第二項ノ給與竝其支給ニ關スル費用ハ國庫ノ負擔トス
退隱料扶助料扶助金等ノ支給ニ關スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム
第十八條　同一人ニシテ國庫ヨリ二種以上ノ退隱料又ハ扶助料ヲ受クヘキ者アルトキハ本人ノ所擇ニ任セ其一ヲ給スルモノトス
第十九條　府縣立師範學校及公立中學校書記ノ退隱料等ハ府縣知事郡長市町村長ニ於テ府縣郡市町村會ノ意見ヲ聞キ之ヲ定ムルコトヲ得
府縣立師範學校及公立中學校竝市町村立小學校ニアラサル公立學校職員ノ退隱料等ハ前項ノ例ニ依ル
本條ノ退隱料等及其支給ニ關スル費用ハ其府縣郡市町村ノ負擔トス
第二十條　此法律第一條ハ明治二十五年度ヨリ第二條乃至第十九條ハ明治二十六年度ヨリ之ヲ施行ス
第二十一條　府縣制郡制又ハ市制町村制ヲ施行セサル地方ニ於テ此法律ノ條規ニ對シ特例ヲ設クルコトヲ必要トスルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕府県立師範学校長俸給並公立学校職員退隠料及遺族扶助料法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年十月二日
内閣総理大臣　伯爵　山県有朋
文部大臣　芳川顕正
法律第九十一号
府県立師範学校長俸給並公立学校職員退隠料及遺族扶助料法
第一条　府県立師範学校長ノ俸給ハ国庫ノ負担トス
第二条　府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員ハ此法律ノ規定ニ従ヒ退隠料ヲ受クルノ権利ヲ有ス
第三条　在職満十五年以上ノ者左ノ事項ノ一ニ当ルトキハ終身退隠料ヲ給ス
一　年齢六十歳ヲ超ヘ退職ヲ命シタルトキ
二　傷痍ヲ受ケ若クハ疾病ニ罹リ其職務ニ堪ヘサルカ為退職ヲ命シタルトキ
三　廃校ニ依リ退職シ又ハ学校編制ノ変更ニ依リ退職ヲ命シタルトキ
第四条　左ノ事項ノ一ニ当ルトキハ前条ノ年限ニ満タサルモ終身退隠料ヲ給シ尚其最下金額十分ノ七マテノ増加退隠料ヲ給ス
一　職務ニ依リ傷痍ヲ受ケ一肢以上ノ用ヲ失ヒ若クハ之ニ準スヘキ者ニシテ其職務ニ堪ヘサルカ為退職ヲ命シタルトキ
二　職務ニ依リ健康ニ有害ナル感動ヲ受クルヲ顧ミルコト能ハスシテ勤務ニ従事シ為ニ疾病ニ罹リ一肢以上ノ用ヲ失ヒ若クハ之ニ準スヘキ者ニシテ其職務ニ堪ヘサルカ為退職ヲ命シタルトキ
第五条　官吏恩給法第五条第一項第四項第五項第六条及第十一条ハ退隠料ニ適用ス
第六条　府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員ニ準スヘキ官立公立学校職員ヨリ府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員ニ転シタル者ハ該官立公立学校ニ於ケル勤務ノ年数ヲ退隠料等ノ給与上在職年数ニ算入スヘキモノトス其在職年数ノ算定ニ関スル規則並府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員ニ準スヘキ官立公立学校職員ト認ムヘキ者ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条　退隠料ヲ受クル者左ノ事項ノ一ニ当ルトキハ退隠料ヲ受クルノ権利ヲ失フモノトス
一　失職ニ該当スヘキ現職中ノ所為確定シタルトキ
二　禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
三　日本臣民タルノ分限ヲ失ヒタルトキ
四　第三条第二第四条若クハ第九条ニ依リ退隠料ヲ受クル者復タヒ其職務ニ堪フルニ至ルコトアルモ仍官ヨリ指命セラルヽ所ノ教職ニ就カサルトキ又ハ第三条第三ニ依リ退隠料ヲ受クル者官ヨリ指命セラルヽ所ノ教職ニ就カサルトキ但其俸給ハ退職現時ノ俸給ヨリ少額ナラス且年齢未タ六十歳ニ至ラサル場合ニ限ル
五　府県知事ノ許可ヲ経スシテ公務ニ就キタルトキ
退隠料ヲ受クル者左ノ事項ノ一ニ当ルトキハ其時間退隠料ヲ受クルコトヲ得ス
一　公務ニ就キ退職現時ノ俸給額ト同額以上ノ給料ヲ受クルトキ
二　三箇年以上受領ヲ怠リタルトキ
三　公権ヲ停止セラレタルトキ
第八条　年齢未タ六十歳ニ至ラスシテ自己ノ便宜ニ依リ退職シタル者又ハ免職ニ処セラレ若クハ失職ニ該当シタル者ハ退隠料ヲ受クルノ資格ヲ失フモノトス
第九条　府県立師範学校及公立中学校ノ准教員ハ職務ノ為傷痍ヲ受ケ若クハ疾病ニ罹リ第四条ニ該当スル者ニ限リ退職現時ノ俸給四分ノ一ノ退隠料ヲ終身給与ス
第十条　府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員在職満一年以上五年未満ニシテ退職シタル者ハ退職現時ノ俸給一箇月分ニ当ル金員ヲ給シ其満五年以上十一年未満ニシテ退職シタル者ハ俸給二箇月分ニ当ル金員ヲ給シ其満十一年以上十五年未満ニシテ退職シタル者ハ俸給三箇月分ニ当ル金員ヲ給ス
第三条第四条又ハ第九条ニ依リ退隠料ヲ受クル者自己ノ便宜ニ依リ退職シタル者又ハ免職ニ処セラレ若クハ失職ニ該当シタル者又ハ前項ノ給与ヲ受クヘキ事由ノ生シタル後三箇月内ニ之ヲ請求セサル者ハ前項ノ限ニ在ラス
自己ノ便宜ニ依リ本条第一項ノ給与ヲ受ケサル者他日府県立師範学校及公立中学校長正教員ノ職ニ就クトキハ前ノ在職年数ヲ以テ退隠料等ノ給与上ニ関スル在職年数ニ算入スヘキモノトス但其給与ヲ受クヘキ事由ノ生シタル後三箇月内ニ之ヲ受ケサルコトヲ申立サル者ハ本文ノ限ニ在ラス
本条ノ給与及之ニ関スル費用ハ退職者ノ退職ノ際勤務セシ学校所属府県郡市町村ノ負担トス
第十一条　退隠料ノ支給ハ府県知事ノ証明ニ依リ文部大臣之ヲ裁定ス
官吏恩給法第十六条及第十八条ハ退隠料ニ適用ス
第十二条　府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員左ノ事項ノ一ニ当ルトキハ其遺族ハ此法律ノ規定ニ従ヒ扶助料ヲ受クルノ権利ヲ有ス
一　在職十五年以上ノ者在職中死去シタルトキ
二　在職十五年未満ノ者職務ノ為死去シタルトキ
三　退隠料ヲ受クル者死去シタルトキ
第十三条　官吏遺族扶助法第四条乃至第十条第十二条乃至第十六条ハ此法律ニ規定スル扶助料ニ適用ス
官吏遺族扶助法第十一条ハ此法律ニ規定スル扶助料ヲ受クヘキ寡婦孤児又ハ父母祖父母ナクシテ死去シタル者ノ戸籍内ニ在ル二十歳未満又ハ廃疾若クハ不具ニシテ産業ヲ営ムコト能ハサル兄弟姉妹アリテ之ヲ給養スル者ナキ場合ニ適用ス
第十四条　府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員ニシテ在職十五年未満ノ者在職中職務ノ故ニアラスシテ死去シタルトキハ其遺族ニ一時扶助金ヲ給ス
前項ノ扶助金ニ就キテハ官吏遺族扶助法第十七条第二項ヲ適用ス
第十五条　扶助料及扶助金ノ支給並第十三条第二項ノ給与ハ府県知事ノ申牒ニ依リ文部大臣之ヲ裁定ス
第十六条　府県立師範学校及公立中学校ノ学校長正教員ハ其俸給百分ノ一ヲ毎年国庫ニ納ムヘシ
府県郡市町村ハ其府県立師範学校及公立中学校長正教員ノ俸給百分ノ一ニ当ル金員ヲ毎年国庫ニ納ムヘシ
第十七条　退隠料扶助料扶助金及第十三条第二項ノ給与並其支給ニ関スル費用ハ国庫ノ負担トス
退隠料扶助料扶助金等ノ支給ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム
第十八条　同一人ニシテ国庫ヨリ二種以上ノ退隠料又ハ扶助料ヲ受クヘキ者アルトキハ本人ノ所択ニ任セ其一ヲ給スルモノトス
第十九条　府県立師範学校及公立中学校書記ノ退隠料等ハ府県知事郡長市町村長ニ於テ府県郡市町村会ノ意見ヲ聞キ之ヲ定ムルコトヲ得
府県立師範学校及公立中学校並市町村立小学校ニアラサル公立学校職員ノ退隠料等ハ前項ノ例ニ依ル
本条ノ退隠料等及其支給ニ関スル費用ハ其府県郡市町村ノ負担トス
第二十条　此法律第一条ハ明治二十五年度ヨリ第二条乃至第十九条ハ明治二十六年度ヨリ之ヲ施行ス
第二十一条　府県制郡制又ハ市制町村制ヲ施行セサル地方ニ於テ此法律ノ条規ニ対シ特例ヲ設クルコトヲ必要トスルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム