第一條 文官判任以上ノ者左ニ揭クル事項ノ一ニ當ルトキハ其遺族ハ此法律ノ規定スル所ニ依リ扶助料ヲ受クルノ權利ヲ有ス但第二條ノ納金ヲナスヘキ義務ナキ者ノ遺族ハ此限ニ在ラス
第二條 文官判任以上ノ者ハ其俸給百分ノ一ヲ國庫ニ納ムヘシ
第三條 交際官及領事貿易事務官等其俸給普通文官ヨリ多額ナルトキハ普通文官ノ俸給ニ依リ少額ナルトキハ現ニ受クル所ノ俸給ニ依リ第二條ノ納金ヲ爲スヘシ
政府ヨリ俸給ヲ受ケサル官吏及商業ヲ營ムコトヲ得ヘキ官吏竝ニ高等官試補判任官見習ノ俸給及兼官ニ依テ受クル加俸ニ對シテハ第二條ノ納金ヲ要セス
第四條 寡婦扶助料年額ハ亡夫ノ受ケタル若クハ受クヘキ恩給年額三分ノ一トス
公務ノ爲メ受ケタル傷痍ニ原因シテ死去シ又ハ非常ノ勞動及困苦ヲ忍ヒ勤務ニ從事シ爲メニ發病死去シ又ハ公務ニ依リ傳染病者ニ接シ該病毒ニ感染シテ死去シ又ハ戰地ニ於テ若クハ公務旅行中流行病ニ罹リ死去シタル者ノ寡婦扶助料ハ亡夫ノ俸給ニ對シ官吏恩給法第五條ニ依リ算出シタル恩給年額三分ノ二トス
第五條 寡婦ナキトキ又ハ扶助料ヲ受クル寡婦死去シ若クハ權利消滅シタルトキハ其扶助料ヲ孤兒ニ給ス
第六條 孤兒扶助料ハ數子アルトキハ家名繼襲者ニ給シ戶主ニ非サル者ノ孤兒ニ在テハ長子ニ給ス其繼襲者及長子死去シ若クハ權利消滅シ若クハ支給期限ノ滿ツルトキハ順次年少者ニ轉給スルモノトス但家名繼襲者ヲ除クノ外男子ヲ先ニシ女子ヲ後ニス
第七條 恩給ヲ受ケタル者ノ寡婦ニシテ其夫退官後結婚シタル者ハ扶助料ヲ受クルコトヲ得ス
第八條 此法律ニ於テ孤兒トハ年齡二十歲未滿ノ男女子ニシテ未タ結婚セサル者ヲ云フ但養男女子ハ家名繼襲者ニ限ル
第九條 扶助料ハ之ヲ受クヘキ事由ノ生シタル月ノ翌月ヨリ之ヲ給ス
第十條 扶助料ヲ受クヘキ寡婦及孤兒ナク若クハ扶助料ヲ受ケタル寡婦及孤兒戶籍ヲ去リ若クハ死去シ若クハ權利消滅シタルトキ父母又ハ祖父母アルトキハ寡婦ニ相當スル扶助料ノ全額ヲ其父母又ハ祖父母ニ終身給スルコトヲ得
其扶助料ハ先ツ父ニ給シ其父存在セサルトキ若クハ權利消滅シタルトキハ母ニ給ス母ヨリ祖父ニ祖父ヨリ祖母ニ轉給スルハ順次此例ニ依ル
第十一條 扶助料ヲ受クヘキ寡婦孤兒又ハ父母祖父母ナクシテ死去シタル者ノ戶籍內ニ在ル二十歲未滿又ハ癈疾若クハ不具ニシテ產業ヲ營ムコト能ハサル兄弟姊妹アリテ之ヲ給養スル者ナキトキハ寡婦ニ相當スル扶助料一個年分ヨリ少カラス五個年分ヨリ多カラサル金額ヲ人員ニ抅ハラス一時限リ其兄弟姊妹ニ給スルコトヲ得
第十二條 扶助料ハ之チ受クヘキ權利ノ生シタル日ヨリ三個年內ニ請求セサレハ其權利ヲ抛棄シタルモノトス
第十三條 扶助料ハ賣買讓與質入書入スルコトヲ得ス又負債ノ抵償トシテ差押フルコトヲ得ス
第十五條 孤兒二十歲ニ滿ツルモ癈疾若クハ不具ニシテ產業ヲ營ムコト能ハス他ニ給養スル者ナキトキハ寡婦扶助料ノ三分ノ一ヲ其孤兒ニ各終身給スルコトヲ得但一戶籍內ニ寡婦ト同額ノ扶助料ヲ受クル者アルトキハ其間之ヲ給セス
第十六條 扶助料ヲ受クル者日本臣民タルノ分限ヲ失ヒ若クハ重罪ノ刑ニ處セラレタルトキハ扶助料ノ支給ヲ廢ス
扶助料ヲ受クル者公權停止中ハ其轉給ヲ受クヘキ者ニ之ヲ給ス
第十七條 在官十五年未滿ノ者在官中公務ノ故ニアラスシテ死去シタルトキハ其遺族ニ一時扶助金ヲ給ス
前項ノ扶助金ハ在職最終ノ俸給年額百分ノ一ヲ在官年數ニ乘シタル額トス但一年未滿ノ在官月數ハ計算セス
第十八條 扶助料ノ支給ハ地方長官ノ申牒ニ依リ恩給局ノ審査ヲ經テ內閣總理大臣之ヲ裁定ス
行政上ノ處分ニ因リ扶助料ニ關スル權利ヲ障害セラレタリトスル者ハ六個月以內ニ恩給局ニ具申シテ裁決ヲ請フコトヲ得其裁決ニ服セサル者ハ一個年以內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十九條 明治十七年達官吏恩給令ニ依リ扶助料ヲ受ケタル者及恩給ヲ受ケタル者ノ遺族扶助料ハ總テ其恩給令ニ依ルヘシ但其權利消滅及停止ハ此法律ニ依ル