健康保険法
法令番号: 法律第七十號
公布年月日: 大正11年4月22日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル健康保險法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年四月二十一日
內閣總理大臣兼大藏大臣 子爵 高橋是淸
農商務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第七十號
健康保險法
第一章 總則
第一條 健康保險ニ於テハ保險者カ被保險者ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ關シ療養ノ給付又ハ傷病手當金、埋葬料、分娩費若ハ出產手當金ノ支給ヲ爲スモノトス
第二條 本法ニ於テ報酬ト稱スルハ事業ニ使用セラルル者カ勞務ノ對償トシテ事業主ヨリ受クル賃金、給料又ハ俸給及之ニ準スヘキモノヲ謂フ
賃金、給料又ハ俸給ニ準スヘキモノノ範圍及評價ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 報酬ノ額ニ基キ保險料又ハ保險給付ノ額ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬ニ依リ之ヲ算定ス
標準報酬ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 保險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徵收金ヲ徵收シ又ハ其ノ還付ヲ受クル權利及保險給付ヲ受クル權利ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
前項ノ時效ノ中斷、停止其ノ他ノ事項ニ關シテハ民法ノ時效ニ關スル規定ヲ準用ス
命令ノ定ムル所ニ依リ保險者ノ爲ス保險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徵收金ノ徵收ノ告知ハ民法第百五十三條ノ規定ニ拘ラス時效中斷ノ效力ヲ有ス
第五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定スル期間ノ計算ニ付テハ民法ノ期間ノ計算ニ關スル規定ヲ準用ス
第六條 健康保險ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セス
第七條 保險者又ハ保險給付ヲ受クヘキ者ハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ戶籍ニ關シ戶籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ對シ無償ニテ證明ヲ求ムルコトヲ得
第八條 保險者ハ被保險者ヲ使用スル事業主ニ對シ其ノ使用スル者ノ異動、報酬其ノ他健康保險ノ施行ニ必要ナル事項ニ關シ報告ヲ爲サシメ又ハ文書ヲ提示セシムルコトヲ得
第九條 保險官署ハ必要アリト認ムルトキハ當該官吏又ハ吏員ヲシテ保險事故ノ生シタル作業ノ場所ニ臨檢セシムルコトヲ得
第十條 主務大臣ハ本法ニ規定スル其ノ職權ノ一部ヲ命令ヲ以テ保險官署ニ委任スルコトヲ得
第十一條 保險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徵收金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ保險者ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ保險者ハ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項ノ規定ニ於テ市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノトス
第一項ニ規定スル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノノ徵收金ニ次キ他ノ公課ニ先ツモノトス
第十二條 政府ノ事業ニ使用セラルル者ニ關シテハ本法ノ適用ニ付勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
第二章 被保險者
第十三條 工場法ノ適用ヲ受クル工場又ハ鑛業法ノ適用ヲ受クル事業場若ハ工場ニ使用セラルル者ハ健康保險ノ被保險者トス但シ臨時ニ使用セラルル者ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ及一年ノ報酬千二百圓ヲ超ユル職員ハ此ノ限ニ在ラス
第十四條 前條ニ規定スル工場及事業場ヲ除クノ外左ノ各號ノ一ニ該當スル事業ノ事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ事業及之ニ附屬スル事業ニ使用セラルル者ヲ包括シテ健康保險ノ被保險者ト爲スコトヲ得
一 鑛物ノ採掘又ハ採取ノ事業
二 物ノ製造、加工、選別、包裝、修理又ハ解體ノ事業
三 電氣又ハ動力ノ發生、變壓又ハ傳導ノ事業
四 土木工事又ハ工作物ノ建設、保存、修理若ハ破壞ノ工事ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ
五 地方鐵道法又ハ軌道法ノ適用ヲ受クル事業
六 前號ニ揭クルモノヲ除クノ外陸上ニ於テ爲ス貨物又ハ旅客ノ運送ノ事業ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ
七 貨物積卸ノ事業
八 前各號ニ揭クルモノノ外勅令ヲ以テ指定スル事業
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ト爲ルヘキ者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
一事業ニ於テ作業ノ場所二以上アル場合ニ於テハ第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ主務大臣ハ其ノ一又ハ二以上ノ場所ニ於ケル作業ヲ一事業ト看做スコトヲ得
第十五條 前條ノ認可アリタルトキハ其ノ事業ニ使用セラルル者ハ健康保險ノ被保險者トス
第十三條但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十六條 工場法又ハ鑛業法ノ適用ヲ受クル工場カ其ノ適用ヲ受ケサルニ至リタルトキハ其ノ工場ニ付第十四條ノ認可アリタルモノト看做ス
第十七條 第十三條及第十五條ノ規定ニ依ル被保險者ハ其ノ業務ニ使用セラルルニ至リタル日又ハ第十三條但書若ハ第十五條第二項ノ規定ニ該當セサルニ至リタル日ヨリ其ノ資格ヲ取得ス
第十八條 第十三條及第十五條ノ規定ニ依ル被保險者ハ死亡シタル日、其ノ業務ニ使用セラレサルニ至リタル日又ハ第十三條但書若ハ第十五條第二項ノ規定ニ該當スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス但シ其ノ事實アリタル日ニ更ニ前條ノ規定ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第十九條 第十五條ノ規定ニ依ル被保險者ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ被保險者ノ全部ヲシテ其ノ資格ヲ喪失セシムルコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第一項ノ認可アリタルトキハ被保險者ハ認可アリタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十條 第十八條ノ規定ニ依リ被保險者ノ資格ヲ喪失シタル者ニシテ喪失ノ日前一年內ニ於テ百八十日以上被保險者タリシモノ又ハ喪失ノ際引續キ六十日以上被保險者タリシモノハ勅令ノ定ムル期間內ニ申請ヲ爲ストキハ繼續シテ被保險者ト爲ルコトヲ得
第二十一條 前條ノ規定ニ依ル被保險者ハ前條ノ規定ニ依リ被保險者ト爲リタル日ヨリ百八十日ヲ經過シタルトキ、保險料ヲ納付セスシテ命令ヲ以テ定ムル猶豫期間ヲ經過シタルトキ又ハ第十三條若ハ第十五條ノ規定ニ依ル被保險者ト爲リタルトキハ其ノ資格ヲ喪失ス
前條ノ規定ニ依ル被保險者死亡シタル場合ニハ第十八條ノ規定ヲ準用ス
第三章 保險者
第二十二條 健康保險ノ保險者ハ政府及健康保險組合トス
第二十三條 保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保險者ノ健康ヲ保持スル爲必要ナル施設ヲ爲スコトヲ得
第二十四條 政府ハ健康保險組合ノ組合員ニ非サル被保險者ノ保險ヲ管掌ス
第二十五條 健康保險組合ハ其ノ組合員タル被保險者ノ保險ヲ管掌ス
第二十六條 健康保險組合ハ法人トス
第二十七條 健康保險組合ハ事業主、其ノ事業ニ使用セラルル被保險者及第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十八條 一又ハ二以上ノ事業ニ付被保險者常時三百人以上ヲ使用スル事業主ハ健康保險組合ヲ設立スルコトヲ得
被保險者ヲ使用スル二以上ノ事業主ハ共同シテ健康保險組合ヲ設立スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ被保險者ノ員數ハ合算シテ常時三百人以上タルコトヲ要ス
第二十九條 健康保險組合ヲ設立セムトスルトキハ組合員タル資格ヲ有スル被保險者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得規約ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
二以上ノ事業ニ付健康保險組合ヲ設立セムトスル場合ニ於テハ前項ノ同意ハ各事業ニ付之ヲ得ルコトヲ要ス
第三十條 前二條ノ規定ニ於テ被保險者トアルハ第十四條第一項ノ規定ニ依ル認可ノ申請ト同時ニ健康保險組合ノ設立認可ノ申請ヲ爲ス場合ニ在リテハ被保險者ト爲ルヘキ者トス
第三十一條 主務大臣ハ一事業ニ付第十三條ノ規定ニ依ル被保險者常時五百人以上ヲ使用スル事業主ニ對シ健康保險組合ノ設立ヲ命スルコトヲ得
第三十二條 前條ノ規定ニ依リ健康保險組合ノ設立ヲ命セラレタル事業主ハ規約ヲ作リ設立ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三十三條 第十四條第三項ノ規定ハ第二十八條、第二十九條及第三十一條ノ規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第三十四條 健康保險組合ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時ニ成立ス
第三十五條 健康保險組合成立シタルトキハ事業主及其ノ事業ニ使用セラルル被保險者ハ總テ之ヲ組合員トス
前項ノ被保險者ハ其ノ事業ニ使用セラレサルニ至リタルトキト雖第二十條ノ規定ニ依ル被保險者タルトキハ仍之ヲ組合員トス
第三十六條 健康保險組合ノ規約ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第三十七條 主務大臣ハ健康保險組合ニ對シ事實ニ關スル報告ヲ爲サシメ、事業及財產ノ狀況ヲ檢査シ、規約ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第三十八條 健康保險組合ノ役員ニ欠缺若ハ故障アルトキ又ハ組合ノ役員保險給付其ノ他其ノ執行スヘキ職務ヲ執行セサルトキハ主務大臣ハ官吏又ハ其ノ他ノ者ヲ指定シテ其ノ職務ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其ノ職務ノ執行ニ要スル費用ハ健康保險組合ノ負擔トス
第三十九條 主務大臣ハ健康保險組合ノ決議若ハ役員ノ行爲カ法令、主務大臣ノ處分若ハ規約ニ違反シ、組合員ノ利益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキ又ハ組合ノ事業若ハ財產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ解職シ又ハ組合ノ解散ヲ命スルコトヲ得
第四十條 解散ニ因リテ消滅シタル健康保險組合ノ權利義務ハ政府之ヲ承繼ス
第四十一條 本法ニ規定スルモノノ外健康保險組合ノ管理、財產ノ保管及利用方法、分合、解散其ノ他健康保險組合ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十二條 同時ニ二以上ノ業務ニ使用セラルル被保險者ノ保險者ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第四章 保險給付
第四十三條 被保險者ノ疾病又ハ負傷ニ關シテハ療養ノ給付ヲ爲ス
前項ノ療養ノ給付ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ場合ニ於テ療養上必要アリト認ムルトキハ保險者ハ被保險者ヲ病院ニ收容スルコトヲ得
第四十四條 療養ノ給付ヲ爲スコト困難ナル場合又ハ被保險者ノ申請アリタル場合ニ於テハ保險者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ給付ニ代ヘテ療養費ヲ支給スルコトヲ得
第四十五條 被保險者療養ノ爲勞務ニ服スルコト能ハサルトキハ其ノ期間傷病手當金トシテ一日ニ付報酬日額ノ百分ノ六十ニ相當スル金額ヲ支給ス但シ業務上ノ事由ニ因リ疾病ニ罹リ又ハ負傷シタル場合以外ノ場合ニ於テハ勞務ニ服スルコト能ハサルニ至リタル日ヨリ起算シ第四日ヨリ之ヲ支給ス
第四十六條 病院ニ收容シタル被保險者ニ對シテ支給スヘキ傷病手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
第四十七條 療養ノ給付及傷病手當金ノ支給ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ發シタル疾病ニ付百八十日ヲ超エテ之ヲ爲サス
業務上ノ事由ニ因リ疾病ニ罹リ又ハ負傷シタル場合以外ノ場合ニ於テハ療養ノ給付及傷病手當金ノ支給ハ一年內百八十日ヲ超エテ之ヲ爲サス
被保險者ハ前二項ノ規定ニ拘ラス傷病手當金ノ支給ヲ受クル期間療養ノ給付ヲ受ク
第四十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ保險者ハ前條ニ規定スル期間ヲ超エテ療養ヲ必要トスル者ニ對シ繼續シテ療養ノ給付ヲ爲スコトヲ得
一 他ノ法令ノ規定ニ依リ事業主ヨリ扶助ヲ受クヘキ者ニ付其ノ事業主ヨリ申請アリタルトキ
二 前號以外ノ場合ニ於テ療養ノ給付ニ要スル費用ノ償還ニ付擔保ヲ提供シ其ノ他確實ナル方法ヲ定メ本人又ハ第三者ヨリ申請アリタルトキ
前項第一號ノ場合ニ於テハ療養ノ給付ニ要シタル費用ニ相當スル金額ハ事業主ヨリ之ヲ徵收ス
第四十九條 被保險者死亡シタルトキハ被保險者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノニ對シ埋葬料トシテ被保險者ノ報酬日額ノ二十日分ニ相當スル金額ヲ支給ス但シ其ノ金額カ二十圓ニ滿タサルトキハ之ヲ二十圓トス
被保險者死亡シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クヘキ者ナキトキハ埋葬ヲ行ヒタル者ニ對シ前項ノ金額ノ範圍內ニ於テ其ノ埋葬ニ要シタル費用ニ相當スル金額ヲ支給ス
第五十條 被保險者分娩シタルトキハ分娩費トシテ二十圓ヲ、出產手當金トシテ分娩ノ前後勅令ヲ以テ定ムル期間一日ニ付報酬日額ノ百分ノ六十ニ相當スル金額ヲ支給ス
第五十一條 保險者ハ被保險者ヲ產院ニ收容シ又ハ助產ノ手當ヲ爲スコトヲ得
產院ニ收容シ又ハ助產ノ手當ヲ爲シタル被保險者ニ對シテ支給スヘキ分娩費及出產手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
第五十二條 分娩ニ關スル保險給付ニ付テハ勅令ヲ以テ分娩前一定ノ期間被保險者タリシ者ニ非サレハ之ヲ爲ササルコトヲ定ムルコトヲ得
第五十三條 分娩ノ前後ニ保險者ニ變更アリタル場合ニ於テハ分娩ニ關スル保險給付ニ要スル費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ關係アル保險者之ヲ分擔ス
第五十四條 出產手當金ノ支給ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ期間傷病手當金ハ之ヲ支給セス
第五十五條 被保險者ノ資格ヲ喪失シタル際疾病、負傷又ハ分娩ニ關シ保險給付ヲ受クル者ハ被保險者トシテ保險給付ヲ受クルコトヲ得ヘカリシ期間繼續シテ同一保險者ヨリ其ノ給付ヲ受クルコトヲ得
第五十六條 前條ノ規定ニ依リ保險給付ヲ受クル者死亡シタルトキ、前條ノ規定ニ依リ保險給付ヲ受ケタル者其ノ給付ヲ受ケサルニ至リタル日後九十日以內ニ死亡シタルトキ又ハ其ノ他ノ被保險者タリシ者被保險者ノ資格ヲ喪失シタル日後九十日以內ニ死亡シタルトキハ被保險者タリシ者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノハ最後ノ保險者ヨリ埋葬料ノ支給ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クル者ナキ場合及前項ノ埋葬料ノ金額ニ付テハ第四十九條ノ規定ヲ準用ス
第五十七條 被保險者タリシ者被保險者ノ資格ヲ喪失シタル日後勅令ヲ以テ定ムル期間內ニ分娩シタルトキハ分娩ニ關シ被保險者トシテ受クルコトヲ得ヘカリシ保險給付ヲ最後ノ保險者ヨリ受クルコトヲ得
第五十八條 疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分娩シタル場合ニ於テ繼續シテ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ對シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ受クルコトヲ得ヘキ期間傷病手當金又ハ出產手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セス
第五十九條 前條ニ揭クル者疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分娩シタル場合ニ於テ其ノ受クルコトヲ得ヘカリシ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコト能ハサリシトキハ保險者ハ之ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手當金又ハ出產手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給ス
前項ノ規定ニ依リ保險者ノ支給シタル金額ハ事業主ヨリ之ヲ徵收ス
第六十條 被保險者又ハ被保險者タリシ者自己ノ故意ノ犯罪行爲ニ因リ又ハ故意ニ事故ヲ生セシメタルトキハ保險給付ヲ爲サス
第六十一條 被保險者鬪爭若ハ泥醉ニ因リ又ハ故意ニ危害豫防ニ關スル業務上ノ監督者ノ指揮ニ從ハサルニ因リ事故ヲ生セシメタルトキハ傷病手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セサルコトヲ得
第六十二條 保險給付ヲ受クヘキ者左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ其ノ期間保險給付ヲ爲サス
一 陸海軍ニ徵集又ハ召集セラレタルトキ
二 本法施行區域外ニ在ルトキ
三 感化院其ノ他之ニ準スヘキモノニ入院セシメラレタルトキ
四 監獄、留置場又ハ勞役場ニ拘禁又ハ留置セラレタルトキ
他ノ法令ノ規定ニ依リ國又ハ公共團體ノ負擔ニ於テ病院、病舍又ハ療養所ニ收容セラレタル者ニ對シテハ療養ノ給付ヲ爲サス
前項ニ揭クル者ニ付テハ第四十六條ノ規定ヲ準用ス
第六十三條 保險者ハ正當ノ理由ナクシテ療養ニ關スル指揮ニ從ハサル者ニ對シ之ニ支給スヘキ傷病手當金ノ一部ヲ支給セサルコトヲ得
第六十四條 保險者ハ詐欺其ノ他不正ノ行爲ニ依リ保險給付ヲ受ケ又ハ受ケムトシタル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定メ保險給付ノ全部又ハ一部ヲ爲ササルコトヲ得
第六十五條 保險者ハ必要アリト認ムルトキハ保險給付ヲ受クル者ノ診斷ヲ行フコトヲ得
保險者ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ診斷ヲ拒ミタル者ニ對シ保險給付ノ全部又ハ一部ヲ爲ササルコトヲ得
第六十六條 保險給付ノ支給期日ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十七條 保險者ハ事故カ第三者ノ行爲ニ因リテ生シタル場合ニ於テ保險給付ヲ爲シタルトキハ其ノ給付ノ價額ノ限度ニ於テ被保險者又ハ被保險者タリシ者カ第三者ニ對シテ有スル損害賠償請求ノ權利ヲ取得ス
第六十八條 保險給付ヲ受クル權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ス
第六十九條 保險給付トシテ支給ヲ受ケタル金品ヲ標準トシテ租稅其ノ他ノ公課ヲ課セス
第五章 費用ノ負擔
第七十條 國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ各健康保險組合ノ保險給付ニ要スル費用ノ十分ノ一ヲ負擔ス
前項ノ規定ニ依ル國庫負擔金ノ總額カ被保險者一人ニ付一年平均二圓ノ割合ヲ超ユル場合ニ於テハ各健康保險組合ニ對スル國庫負擔金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ限度ニ至ル迄之ヲ減額スルモノトス
前項ニ規定スル被保險者ノ員數ノ計算ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十一條 保險者ハ健康保險事業ニ要スル費用ニ充ツル爲保險料ヲ徵收ス
保險料ノ算定ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十二條 被保險者及被保險者ヲ使用スル事業主ハ各保險料額ノ二分ノ一ヲ負擔ス但シ第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ハ其ノ全額ヲ負擔ス
第七十三條 業務ノ性質上事故多キ事業ニ使用セラルル被保險者又ハ少額ノ報酬ヲ受クル被保險者ニ關スル保險料ニ付テハ勅令ヲ以テ事業主ノ負擔スヘキ割合ヲ增加スルコトヲ得
第七十四條 被保險者ノ負擔スヘキ保險料額ハ一日ニ付報酬日額ノ百分ノ三ヲ超ユルコトヲ得ス但シ第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ規定スル制限ヲ超エテ保險料ヲ徵收スルコトヲ要スル場合ニ於テハ其ノ超過部分ハ事業主ノ負擔トス
第七十五條 健康保險組合ハ第七十二條若ハ前條ノ規定又ハ第七十三條ニ基キテ發スル勅令ノ規定ニ拘ラス其ノ規約ヲ以テ事業主ノ負擔スヘキ保險料額ノ負擔ノ割合ヲ增加スルコトヲ得
第七十六條 被保險者左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ其ノ期間保險料ヲ徵收セス
一 傷病手當金又ハ出產手當金ノ支給ヲ受クルトキ
二 第六十二條第一項各號ノ一ニ該當スルトキ
第七十七條 事業主ハ其ノ使用スル被保險者ノ負擔スヘキ保險料ヲ納付スル義務ヲ負フ但シ第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ノ負擔スル保險料ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第七十八條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依リ納付スヘキ保險料ヲ被保險者ニ支拂フヘキ報酬ヨリ控除スルコトヲ得
第七十九條 保險料ノ納付期日ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 審査ノ請求、訴願及訴訟
第八十條 保險給付ニ關スル決定ニ不服アル者ハ第一次健康保險審査會ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アル者ハ第二次健康保險審査會ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アル者ハ通常裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
第八十一條 保險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徵收金ノ賦課又ハ徵收ノ處分ニ不服アル者ハ其ノ處分ヲ爲シタル保險官署又ハ健康保險組合ヲ監督スル保險官署ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十二條 前條ノ規定ニ依ル訴願ノ提起アリタルトキハ保險官署ハ第二次健康保險審査會ノ審査ヲ經、主務大臣ハ第三次健康保險審査會ノ審査ヲ經テ裁決ヲ爲スヘシ
第八十三條 健康保險審査會ノ組織及審査ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十四條 第十一條ノ規定ニ依ル處分ニ不服アル者ハ地方長官ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十五條 健康保險審査會ハ審査ノ爲必要アリト認ムルトキハ證人又ハ鑑定人ノ訊問其ノ他ノ證據調ヲ爲スコトヲ得
證據調ハ所要ノ事務ヲ取扱フヘキ地ノ區裁判所ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
證據調ニ關シテハ民事訴訟法ノ證據調ニ關スル規定ヲ準用ス但シ健康保險審査會ノ爲ス證據調ニ關シテハ罰金ノ言渡ヲ爲シ又ハ勾引ヲ命スルコトヲ得ス
第八十六條 審査ノ請求、訴ノ提起又ハ訴願若ハ行政訴訟ノ提起ハ處分ノ通知又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ之ヲ爲スヘシ此ノ場合ニ於テ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八條第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴訟法第百六十七條及第百七十四條乃至第百七十七條ノ規定ヲ準用ス
第七章 罰則
第八十七條 正當ノ理由ナクシテ第九條ノ規定ニ依ル當該官吏又ハ吏員ノ臨檢ヲ拒ミ若ハ妨ケ又ハ其ノ訊問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ答辯ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十八條 第八條ノ規定ニ依ル保險者ノ請求アリタル場合ニ於テ正當ノ理由ナクシテ報告ヲ爲サス、虛僞ノ報告ヲ爲シ又ハ文書ノ提示ヲ拒ミタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十九條 健康保險組合ノ設立ヲ命セラレタル事業主正當ノ理由ナクシテ主務大臣ノ指定スル期日迄ニ設立ノ認可ヲ申請セサルトキハ其ノ手續ノ遲延シタル期間其ノ負擔スヘキ保險料額ノ二倍ニ相當スル金額以下ノ過料ニ處ス
第九十條 健康保險組合カ第三十七條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ處分ヲ拒ミ若ハ妨ケタルトキハ其ノ役員ヲ百圓以下ノ過料ニ處ス
本法ニ基キテ發スル健康保險組合ニ關スル勅令ニ於テハ組合カ之ニ違反シタル場合ニ於テ其ノ役員ヲ百圓以下ノ過料ニ處スル規定ヲ設クルコトヲ得
第九十一條 前二條ノ過料ニ付テハ非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル健康保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年四月二十一日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 子爵 高橋是清
農商務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第七十号
健康保険法
第一章 総則
第一条 健康保険ニ於テハ保険者カ被保険者ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ関シ療養ノ給付又ハ傷病手当金、埋葬料、分娩費若ハ出産手当金ノ支給ヲ為スモノトス
第二条 本法ニ於テ報酬ト称スルハ事業ニ使用セラルル者カ労務ノ対償トシテ事業主ヨリ受クル賃金、給料又ハ俸給及之ニ準スヘキモノヲ謂フ
賃金、給料又ハ俸給ニ準スヘキモノノ範囲及評価ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 報酬ノ額ニ基キ保険料又ハ保険給付ノ額ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬ニ依リ之ヲ算定ス
標準報酬ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 保険料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徴収金ヲ徴収シ又ハ其ノ還付ヲ受クル権利及保険給付ヲ受クル権利ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
前項ノ時効ノ中断、停止其ノ他ノ事項ニ関シテハ民法ノ時効ニ関スル規定ヲ準用ス
命令ノ定ムル所ニ依リ保険者ノ為ス保険料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徴収金ノ徴収ノ告知ハ民法第百五十三条ノ規定ニ拘ラス時効中断ノ効力ヲ有ス
第五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定スル期間ノ計算ニ付テハ民法ノ期間ノ計算ニ関スル規定ヲ準用ス
第六条 健康保険ニ関スル書類ニハ印紙税ヲ課セス
第七条 保険者又ハ保険給付ヲ受クヘキ者ハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ戸籍ニ関シ戸籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ対シ無償ニテ証明ヲ求ムルコトヲ得
第八条 保険者ハ被保険者ヲ使用スル事業主ニ対シ其ノ使用スル者ノ異動、報酬其ノ他健康保険ノ施行ニ必要ナル事項ニ関シ報告ヲ為サシメ又ハ文書ヲ提示セシムルコトヲ得
第九条 保険官署ハ必要アリト認ムルトキハ当該官吏又ハ吏員ヲシテ保険事故ノ生シタル作業ノ場所ニ臨検セシムルコトヲ得
第十条 主務大臣ハ本法ニ規定スル其ノ職権ノ一部ヲ命令ヲ以テ保険官署ニ委任スルコトヲ得
第十一条 保険料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徴収金ヲ滞納スル者アル場合ニ於テ保険者ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス此ノ場合ニ於テ保険者ハ徴収金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項ノ規定ニ於テ市町村トアルハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノトス
第一項ニ規定スル徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノノ徴収金ニ次キ他ノ公課ニ先ツモノトス
第十二条 政府ノ事業ニ使用セラルル者ニ関シテハ本法ノ適用ニ付勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ為スコトヲ得
第二章 被保険者
第十三条 工場法ノ適用ヲ受クル工場又ハ鉱業法ノ適用ヲ受クル事業場若ハ工場ニ使用セラルル者ハ健康保険ノ被保険者トス但シ臨時ニ使用セラルル者ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ及一年ノ報酬千二百円ヲ超ユル職員ハ此ノ限ニ在ラス
第十四条 前条ニ規定スル工場及事業場ヲ除クノ外左ノ各号ノ一ニ該当スル事業ノ事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ事業及之ニ附属スル事業ニ使用セラルル者ヲ包括シテ健康保険ノ被保険者ト為スコトヲ得
一 鉱物ノ採掘又ハ採取ノ事業
二 物ノ製造、加工、選別、包装、修理又ハ解体ノ事業
三 電気又ハ動力ノ発生、変圧又ハ伝導ノ事業
四 土木工事又ハ工作物ノ建設、保存、修理若ハ破壊ノ工事ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ
五 地方鉄道法又ハ軌道法ノ適用ヲ受クル事業
六 前号ニ掲クルモノヲ除クノ外陸上ニ於テ為ス貨物又ハ旅客ノ運送ノ事業ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ
七 貨物積卸ノ事業
八 前各号ニ掲クルモノノ外勅令ヲ以テ指定スル事業
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保険者ト為ルヘキ者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
一事業ニ於テ作業ノ場所二以上アル場合ニ於テハ第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ主務大臣ハ其ノ一又ハ二以上ノ場所ニ於ケル作業ヲ一事業ト看做スコトヲ得
第十五条 前条ノ認可アリタルトキハ其ノ事業ニ使用セラルル者ハ健康保険ノ被保険者トス
第十三条但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十六条 工場法又ハ鉱業法ノ適用ヲ受クル工場カ其ノ適用ヲ受ケサルニ至リタルトキハ其ノ工場ニ付第十四条ノ認可アリタルモノト看做ス
第十七条 第十三条及第十五条ノ規定ニ依ル被保険者ハ其ノ業務ニ使用セラルルニ至リタル日又ハ第十三条但書若ハ第十五条第二項ノ規定ニ該当セサルニ至リタル日ヨリ其ノ資格ヲ取得ス
第十八条 第十三条及第十五条ノ規定ニ依ル被保険者ハ死亡シタル日、其ノ業務ニ使用セラレサルニ至リタル日又ハ第十三条但書若ハ第十五条第二項ノ規定ニ該当スルニ至リタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス但シ其ノ事実アリタル日ニ更ニ前条ノ規定ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第十九条 第十五条ノ規定ニ依ル被保険者ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ被保険者ノ全部ヲシテ其ノ資格ヲ喪失セシムルコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保険者ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第一項ノ認可アリタルトキハ被保険者ハ認可アリタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十条 第十八条ノ規定ニ依リ被保険者ノ資格ヲ喪失シタル者ニシテ喪失ノ日前一年内ニ於テ百八十日以上被保険者タリシモノ又ハ喪失ノ際引続キ六十日以上被保険者タリシモノハ勅令ノ定ムル期間内ニ申請ヲ為ストキハ継続シテ被保険者ト為ルコトヲ得
第二十一条 前条ノ規定ニ依ル被保険者ハ前条ノ規定ニ依リ被保険者ト為リタル日ヨリ百八十日ヲ経過シタルトキ、保険料ヲ納付セスシテ命令ヲ以テ定ムル猶予期間ヲ経過シタルトキ又ハ第十三条若ハ第十五条ノ規定ニ依ル被保険者ト為リタルトキハ其ノ資格ヲ喪失ス
前条ノ規定ニ依ル被保険者死亡シタル場合ニハ第十八条ノ規定ヲ準用ス
第三章 保険者
第二十二条 健康保険ノ保険者ハ政府及健康保険組合トス
第二十三条 保険者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保険者ノ健康ヲ保持スル為必要ナル施設ヲ為スコトヲ得
第二十四条 政府ハ健康保険組合ノ組合員ニ非サル被保険者ノ保険ヲ管掌ス
第二十五条 健康保険組合ハ其ノ組合員タル被保険者ノ保険ヲ管掌ス
第二十六条 健康保険組合ハ法人トス
第二十七条 健康保険組合ハ事業主、其ノ事業ニ使用セラルル被保険者及第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十八条 一又ハ二以上ノ事業ニ付被保険者常時三百人以上ヲ使用スル事業主ハ健康保険組合ヲ設立スルコトヲ得
被保険者ヲ使用スル二以上ノ事業主ハ共同シテ健康保険組合ヲ設立スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ被保険者ノ員数ハ合算シテ常時三百人以上タルコトヲ要ス
第二十九条 健康保険組合ヲ設立セムトスルトキハ組合員タル資格ヲ有スル被保険者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得規約ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
二以上ノ事業ニ付健康保険組合ヲ設立セムトスル場合ニ於テハ前項ノ同意ハ各事業ニ付之ヲ得ルコトヲ要ス
第三十条 前二条ノ規定ニ於テ被保険者トアルハ第十四条第一項ノ規定ニ依ル認可ノ申請ト同時ニ健康保険組合ノ設立認可ノ申請ヲ為ス場合ニ在リテハ被保険者ト為ルヘキ者トス
第三十一条 主務大臣ハ一事業ニ付第十三条ノ規定ニ依ル被保険者常時五百人以上ヲ使用スル事業主ニ対シ健康保険組合ノ設立ヲ命スルコトヲ得
第三十二条 前条ノ規定ニ依リ健康保険組合ノ設立ヲ命セラレタル事業主ハ規約ヲ作リ設立ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三十三条 第十四条第三項ノ規定ハ第二十八条、第二十九条及第三十一条ノ規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第三十四条 健康保険組合ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時ニ成立ス
第三十五条 健康保険組合成立シタルトキハ事業主及其ノ事業ニ使用セラルル被保険者ハ総テ之ヲ組合員トス
前項ノ被保険者ハ其ノ事業ニ使用セラレサルニ至リタルトキト雖第二十条ノ規定ニ依ル被保険者タルトキハ仍之ヲ組合員トス
第三十六条 健康保険組合ノ規約ノ変更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第三十七条 主務大臣ハ健康保険組合ニ対シ事実ニ関スル報告ヲ為サシメ、事業及財産ノ状況ヲ検査シ、規約ノ変更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第三十八条 健康保険組合ノ役員ニ欠欠若ハ故障アルトキ又ハ組合ノ役員保険給付其ノ他其ノ執行スヘキ職務ヲ執行セサルトキハ主務大臣ハ官吏又ハ其ノ他ノ者ヲ指定シテ其ノ職務ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其ノ職務ノ執行ニ要スル費用ハ健康保険組合ノ負担トス
第三十九条 主務大臣ハ健康保険組合ノ決議若ハ役員ノ行為カ法令、主務大臣ノ処分若ハ規約ニ違反シ、組合員ノ利益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキ又ハ組合ノ事業若ハ財産ノ状況ニ依リ其ノ事業ノ継続ヲ困難ナリト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ解職シ又ハ組合ノ解散ヲ命スルコトヲ得
第四十条 解散ニ因リテ消滅シタル健康保険組合ノ権利義務ハ政府之ヲ承継ス
第四十一条 本法ニ規定スルモノノ外健康保険組合ノ管理、財産ノ保管及利用方法、分合、解散其ノ他健康保険組合ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十二条 同時ニ二以上ノ業務ニ使用セラルル被保険者ノ保険者ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第四章 保険給付
第四十三条 被保険者ノ疾病又ハ負傷ニ関シテハ療養ノ給付ヲ為ス
前項ノ療養ノ給付ノ範囲ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ場合ニ於テ療養上必要アリト認ムルトキハ保険者ハ被保険者ヲ病院ニ収容スルコトヲ得
第四十四条 療養ノ給付ヲ為スコト困難ナル場合又ハ被保険者ノ申請アリタル場合ニ於テハ保険者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ給付ニ代ヘテ療養費ヲ支給スルコトヲ得
第四十五条 被保険者療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサルトキハ其ノ期間傷病手当金トシテ一日ニ付報酬日額ノ百分ノ六十ニ相当スル金額ヲ支給ス但シ業務上ノ事由ニ因リ疾病ニ罹リ又ハ負傷シタル場合以外ノ場合ニ於テハ労務ニ服スルコト能ハサルニ至リタル日ヨリ起算シ第四日ヨリ之ヲ支給ス
第四十六条 病院ニ収容シタル被保険者ニ対シテ支給スヘキ傷病手当金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
第四十七条 療養ノ給付及傷病手当金ノ支給ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ付百八十日ヲ超エテ之ヲ為サス
業務上ノ事由ニ因リ疾病ニ罹リ又ハ負傷シタル場合以外ノ場合ニ於テハ療養ノ給付及傷病手当金ノ支給ハ一年内百八十日ヲ超エテ之ヲ為サス
被保険者ハ前二項ノ規定ニ拘ラス傷病手当金ノ支給ヲ受クル期間療養ノ給付ヲ受ク
第四十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ保険者ハ前条ニ規定スル期間ヲ超エテ療養ヲ必要トスル者ニ対シ継続シテ療養ノ給付ヲ為スコトヲ得
一 他ノ法令ノ規定ニ依リ事業主ヨリ扶助ヲ受クヘキ者ニ付其ノ事業主ヨリ申請アリタルトキ
二 前号以外ノ場合ニ於テ療養ノ給付ニ要スル費用ノ償還ニ付担保ヲ提供シ其ノ他確実ナル方法ヲ定メ本人又ハ第三者ヨリ申請アリタルトキ
前項第一号ノ場合ニ於テハ療養ノ給付ニ要シタル費用ニ相当スル金額ハ事業主ヨリ之ヲ徴収ス
第四十九条 被保険者死亡シタルトキハ被保険者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノニ対シ埋葬料トシテ被保険者ノ報酬日額ノ二十日分ニ相当スル金額ヲ支給ス但シ其ノ金額カ二十円ニ満タサルトキハ之ヲ二十円トス
被保険者死亡シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クヘキ者ナキトキハ埋葬ヲ行ヒタル者ニ対シ前項ノ金額ノ範囲内ニ於テ其ノ埋葬ニ要シタル費用ニ相当スル金額ヲ支給ス
第五十条 被保険者分娩シタルトキハ分娩費トシテ二十円ヲ、出産手当金トシテ分娩ノ前後勅令ヲ以テ定ムル期間一日ニ付報酬日額ノ百分ノ六十ニ相当スル金額ヲ支給ス
第五十一条 保険者ハ被保険者ヲ産院ニ収容シ又ハ助産ノ手当ヲ為スコトヲ得
産院ニ収容シ又ハ助産ノ手当ヲ為シタル被保険者ニ対シテ支給スヘキ分娩費及出産手当金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ減額スルコトヲ得
第五十二条 分娩ニ関スル保険給付ニ付テハ勅令ヲ以テ分娩前一定ノ期間被保険者タリシ者ニ非サレハ之ヲ為ササルコトヲ定ムルコトヲ得
第五十三条 分娩ノ前後ニ保険者ニ変更アリタル場合ニ於テハ分娩ニ関スル保険給付ニ要スル費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ関係アル保険者之ヲ分担ス
第五十四条 出産手当金ノ支給ヲ為ス場合ニ於テハ其ノ期間傷病手当金ハ之ヲ支給セス
第五十五条 被保険者ノ資格ヲ喪失シタル際疾病、負傷又ハ分娩ニ関シ保険給付ヲ受クル者ハ被保険者トシテ保険給付ヲ受クルコトヲ得ヘカリシ期間継続シテ同一保険者ヨリ其ノ給付ヲ受クルコトヲ得
第五十六条 前条ノ規定ニ依リ保険給付ヲ受クル者死亡シタルトキ、前条ノ規定ニ依リ保険給付ヲ受ケタル者其ノ給付ヲ受ケサルニ至リタル日後九十日以内ニ死亡シタルトキ又ハ其ノ他ノ被保険者タリシ者被保険者ノ資格ヲ喪失シタル日後九十日以内ニ死亡シタルトキハ被保険者タリシ者ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノハ最後ノ保険者ヨリ埋葬料ノ支給ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クル者ナキ場合及前項ノ埋葬料ノ金額ニ付テハ第四十九条ノ規定ヲ準用ス
第五十七条 被保険者タリシ者被保険者ノ資格ヲ喪失シタル日後勅令ヲ以テ定ムル期間内ニ分娩シタルトキハ分娩ニ関シ被保険者トシテ受クルコトヲ得ヘカリシ保険給付ヲ最後ノ保険者ヨリ受クルコトヲ得
第五十八条 疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分娩シタル場合ニ於テ継続シテ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ対シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ受クルコトヲ得ヘキ期間傷病手当金又ハ出産手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給セス
第五十九条 前条ニ掲クル者疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分娩シタル場合ニ於テ其ノ受クルコトヲ得ヘカリシ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受クルコト能ハサリシトキハ保険者ハ之ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手当金又ハ出産手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給ス
前項ノ規定ニ依リ保険者ノ支給シタル金額ハ事業主ヨリ之ヲ徴収ス
第六十条 被保険者又ハ被保険者タリシ者自己ノ故意ノ犯罪行為ニ因リ又ハ故意ニ事故ヲ生セシメタルトキハ保険給付ヲ為サス
第六十一条 被保険者闘争若ハ泥酔ニ因リ又ハ故意ニ危害予防ニ関スル業務上ノ監督者ノ指揮ニ従ハサルニ因リ事故ヲ生セシメタルトキハ傷病手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給セサルコトヲ得
第六十二条 保険給付ヲ受クヘキ者左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ其ノ期間保険給付ヲ為サス
一 陸海軍ニ徴集又ハ召集セラレタルトキ
二 本法施行区域外ニ在ルトキ
三 感化院其ノ他之ニ準スヘキモノニ入院セシメラレタルトキ
四 監獄、留置場又ハ労役場ニ拘禁又ハ留置セラレタルトキ
他ノ法令ノ規定ニ依リ国又ハ公共団体ノ負担ニ於テ病院、病舎又ハ療養所ニ収容セラレタル者ニ対シテハ療養ノ給付ヲ為サス
前項ニ掲クル者ニ付テハ第四十六条ノ規定ヲ準用ス
第六十三条 保険者ハ正当ノ理由ナクシテ療養ニ関スル指揮ニ従ハサル者ニ対シ之ニ支給スヘキ傷病手当金ノ一部ヲ支給セサルコトヲ得
第六十四条 保険者ハ詐欺其ノ他不正ノ行為ニ依リ保険給付ヲ受ケ又ハ受ケムトシタル者ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定メ保険給付ノ全部又ハ一部ヲ為ササルコトヲ得
第六十五条 保険者ハ必要アリト認ムルトキハ保険給付ヲ受クル者ノ診断ヲ行フコトヲ得
保険者ハ正当ノ理由ナクシテ前項ノ診断ヲ拒ミタル者ニ対シ保険給付ノ全部又ハ一部ヲ為ササルコトヲ得
第六十六条 保険給付ノ支給期日ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十七条 保険者ハ事故カ第三者ノ行為ニ因リテ生シタル場合ニ於テ保険給付ヲ為シタルトキハ其ノ給付ノ価額ノ限度ニ於テ被保険者又ハ被保険者タリシ者カ第三者ニ対シテ有スル損害賠償請求ノ権利ヲ取得ス
第六十八条 保険給付ヲ受クル権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ差押フルコトヲ得ス
第六十九条 保険給付トシテ支給ヲ受ケタル金品ヲ標準トシテ租税其ノ他ノ公課ヲ課セス
第五章 費用ノ負担
第七十条 国庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ各健康保険組合ノ保険給付ニ要スル費用ノ十分ノ一ヲ負担ス
前項ノ規定ニ依ル国庫負担金ノ総額カ被保険者一人ニ付一年平均二円ノ割合ヲ超ユル場合ニ於テハ各健康保険組合ニ対スル国庫負担金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ限度ニ至ル迄之ヲ減額スルモノトス
前項ニ規定スル被保険者ノ員数ノ計算ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十一条 保険者ハ健康保険事業ニ要スル費用ニ充ツル為保険料ヲ徴収ス
保険料ノ算定ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十二条 被保険者及被保険者ヲ使用スル事業主ハ各保険料額ノ二分ノ一ヲ負担ス但シ第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ハ其ノ全額ヲ負担ス
第七十三条 業務ノ性質上事故多キ事業ニ使用セラルル被保険者又ハ少額ノ報酬ヲ受クル被保険者ニ関スル保険料ニ付テハ勅令ヲ以テ事業主ノ負担スヘキ割合ヲ増加スルコトヲ得
第七十四条 被保険者ノ負担スヘキ保険料額ハ一日ニ付報酬日額ノ百分ノ三ヲ超ユルコトヲ得ス但シ第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ規定スル制限ヲ超エテ保険料ヲ徴収スルコトヲ要スル場合ニ於テハ其ノ超過部分ハ事業主ノ負担トス
第七十五条 健康保険組合ハ第七十二条若ハ前条ノ規定又ハ第七十三条ニ基キテ発スル勅令ノ規定ニ拘ラス其ノ規約ヲ以テ事業主ノ負担スヘキ保険料額ノ負担ノ割合ヲ増加スルコトヲ得
第七十六条 被保険者左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ其ノ期間保険料ヲ徴収セス
一 傷病手当金又ハ出産手当金ノ支給ヲ受クルトキ
二 第六十二条第一項各号ノ一ニ該当スルトキ
第七十七条 事業主ハ其ノ使用スル被保険者ノ負担スヘキ保険料ヲ納付スル義務ヲ負フ但シ第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ノ負担スル保険料ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第七十八条 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前条ノ規定ニ依リ納付スヘキ保険料ヲ被保険者ニ支払フヘキ報酬ヨリ控除スルコトヲ得
第七十九条 保険料ノ納付期日ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章 審査ノ請求、訴願及訴訟
第八十条 保険給付ニ関スル決定ニ不服アル者ハ第一次健康保険審査会ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アル者ハ第二次健康保険審査会ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アル者ハ通常裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
第八十一条 保険料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徴収金ノ賦課又ハ徴収ノ処分ニ不服アル者ハ其ノ処分ヲ為シタル保険官署又ハ健康保険組合ヲ監督スル保険官署ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十二条 前条ノ規定ニ依ル訴願ノ提起アリタルトキハ保険官署ハ第二次健康保険審査会ノ審査ヲ経、主務大臣ハ第三次健康保険審査会ノ審査ヲ経テ裁決ヲ為スヘシ
第八十三条 健康保険審査会ノ組織及審査ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十四条 第十一条ノ規定ニ依ル処分ニ不服アル者ハ地方長官ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十五条 健康保険審査会ハ審査ノ為必要アリト認ムルトキハ証人又ハ鑑定人ノ訊問其ノ他ノ証拠調ヲ為スコトヲ得
証拠調ハ所要ノ事務ヲ取扱フヘキ地ノ区裁判所ニ之ヲ嘱託スルコトヲ得
証拠調ニ関シテハ民事訴訟法ノ証拠調ニ関スル規定ヲ準用ス但シ健康保険審査会ノ為ス証拠調ニ関シテハ罰金ノ言渡ヲ為シ又ハ勾引ヲ命スルコトヲ得ス
第八十六条 審査ノ請求、訴ノ提起又ハ訴願若ハ行政訴訟ノ提起ハ処分ノ通知又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ之ヲ為スヘシ此ノ場合ニ於テ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八条第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴訟法第百六十七条及第百七十四条乃至第百七十七条ノ規定ヲ準用ス
第七章 罰則
第八十七条 正当ノ理由ナクシテ第九条ノ規定ニ依ル当該官吏又ハ吏員ノ臨検ヲ拒ミ若ハ妨ケ又ハ其ノ訊問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ答弁ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第八十八条 第八条ノ規定ニ依ル保険者ノ請求アリタル場合ニ於テ正当ノ理由ナクシテ報告ヲ為サス、虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ文書ノ提示ヲ拒ミタル者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第八十九条 健康保険組合ノ設立ヲ命セラレタル事業主正当ノ理由ナクシテ主務大臣ノ指定スル期日迄ニ設立ノ認可ヲ申請セサルトキハ其ノ手続ノ遅延シタル期間其ノ負担スヘキ保険料額ノ二倍ニ相当スル金額以下ノ過料ニ処ス
第九十条 健康保険組合カ第三十七条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ処分ヲ拒ミ若ハ妨ケタルトキハ其ノ役員ヲ百円以下ノ過料ニ処ス
本法ニ基キテ発スル健康保険組合ニ関スル勅令ニ於テハ組合カ之ニ違反シタル場合ニ於テ其ノ役員ヲ百円以下ノ過料ニ処スル規定ヲ設クルコトヲ得
第九十一条 前二条ノ過料ニ付テハ非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム