社会保険審議会、社会保険医療協議会、社会保険審査官及び社会保険審査会の設置に関する法律
法令番号: 法律第四十七号
公布年月日: 昭和25年3月31日
法令の形式: 法律
社会保險審議会、社会保險医療協議会、社会保險審査官及び社会保險審査会の設置に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第四十七号
社会保險審議会、社会保險医療協議会、社会保險審査官及び社会保險審査会の設置に関する法律
目次
第一章
社会保險審議会(第一條―第十二條)
第二章
社会保險医療協議会(第十三條―第二十一條)
第三章
社会保險審査官及び社会保險審査会
第一節
社会保險審査官(第二十二條)
第二節
社会保險審査会(第二十三條―第三十條)
附則
第一章 社会保險審議会
(設置)
第一條 政府の管掌する健康保險事業並びに船員保險事業及び厚生年金保險事業の運営に関する事項を審議するため、厚生省に、社会保險審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第二條 審議会は、政府の管掌する健康保險事業並びに船員保險事業及び厚生年金保險事業の運営に関する事項について、厚生大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する外、自ら厚生大臣又は関係各大臣に、文書をもつて建議することができる。
(組織)
第三條 審議会は、左に掲げる委員二十七人をもつて組織する。
一 政府の管掌する健康保險並びに船員保險及び厚生年金保險の被保險者の利益を代表する委員 九人
二 政府の管掌する健康保險並びに船員保險及び厚生年金保險の被保險者を使用する事業主及び船舶所有者の利益を代表をする委員 九人
三 公益を代表する委員 九人
2 前項第三号の委員中には、医療関係の経験者を含むものとする。
3 厚生大臣は、審議会において專門の事項を審議するため必要があると認めるときは、その都度、六人以内の專門委員を置くことができる。
4 委員及び專門委員は、厚生大臣が任命する。
5 委員及び專門委員は、非常勤とする。
第四條 委員の任期は、二年とし、一年ごとにその半数を任命する。
2 委員に欠員を生じたときあらたに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第五條 審議会に、公益を代表する委員のうちから委員の選挙した会長一人を置く。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 会長に事故があるときは、第一項の規定に準じて選挙された委員が、その職務を代行する。
第六條 会長は、審議会に部会を置き、その所掌事務を分掌させることができる。
2 部会に属すべき委員及び專門委員は、会長が指名する。
3 部会に部会長を置く。部会長は、その部会に属する委員のうちから、会長が指名する。
4 部会長は、部会の事務を総理する。
5 部会長に事故があるときは、その部会に属する委員のうち会長の指名する委員がその職務を代行する。
6 審議会は、その定めるところにより、部会の決議をもつて審議会の決議とすることができる。
(資料及び情報の提供)
第七條 厚生大臣は、審議会の要求があつたときは、健康保險事業、船員保險事業又は厚生年金保險事業に関する資料及び情報を提供しなければならない。
(会議)
第八條 審議会は、正当な理由がある場合を除いては、三月に一回以上開かなければならない。
第九條 審議会は、会長が招集する。
2 会長は、厚生大臣の諮問があつたとき、又は委員の三分の一以上が審議すべき事項を示して招集を請求したときは、その諮問又は請求の日から二週間以内に、審議会を招集しなければならない。但し、その諮問又は請求に係る事項を分掌する部会が置かれているときは、審議会の招集に替え、その部会の部会長に、その部会を招集させることができる。
(厚生大臣への報告)
第十條 審議会は、毎会計年度の終了後六十日以内に、前会計年度における審議会の活動状況、審議の結果及び建議の大要を、文書をもつて厚生大臣に報告しなければならない。
(庶務)
第十一條 審議会の庶務は、厚生省保險局において処理する。
(雑則)
第十二條 この法律に定めるものの外、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、審議会が定める。
第二章 社会保險医療協議会
(設置)
第十三條 健康保險及び船員保險の保險医及び保險薬剤師(以下「保險医及び保險薬剤師」という。)並びに国民健康保險の療養の給付を担当する者(以下「療養担当者」という。)に対する適切な保險診療の指導監督に関する事項を審議し、及び勧告するとともに、健康保險及び船員保險の適正な診療報酬額並びに国民健康保險の適正な診療報酬の標準額を審議し、及び勧告するため、厚生省に、中央社会保險医療協議会(以下「中央協議会」という。)を置く。
2 保險医及び保險薬剤師並びに療養担当者に対する適切な保險診療の指導に関する事項を審議し、及び勧告するため、各都道府県に、地方社会保險医療協議会(以下「地方協議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第十四條 中央協議会は、左に掲げる事項について、厚生大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する外、自ら厚生大臣に、文書をもつて建議することができる。
一 保險医及び保險薬剤師の指定及び指定の取消並びに保險医及び保險薬剤師並びに療養担当者の保險診療に対する指導監督に関する事項
二 健康保險及び船員保險における適正な診療報酬額並びに国民健康保險における適正な診療報酬の標準額に関する事項
2 地方協議会は、前項第一号に掲げる事項について、都道府県知事の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する外、自ら都道府県知事に、文書をもつて建議することができる。
(組織)
第十五條 中央協議会又は地方協議会は、それぞれ、左に掲げる委員二十四人をもつて組織する。
一 健康保險、船員保險及び国民健康保險の保險者の利益を代表する委員 六人
二 健康保險、船員保險及び国民健康保險の被保險者、事業主及び船舶所有者の利益を代表する委員 六人
三 医師、歯科医師及び薬剤師の利益を代表する委員 六人
四 公益を代表する委員 六人
2 厚生大臣又は都道府県知事は、それぞれ中央協議会又は地方協議会において專門の事項を審議するため必要があると認めるときは、その都度、各十人以内の專門委員を置くことができる。
3 委員及び專門委員は、中央協議会にあつては厚生大臣、地方協議会にあつては都道府県知事が、任命する。
4 第一項第一号から第三号までの委員の任命は、各関係団体の推薦によるものとする。
5 委員及び專門委員は、非常勤とする。
第十六條 委員の任期は、二年とし、一年ごとに、その半数を任命する。
2 委員に欠員を生じたときあらたに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第十七條 中央協議会及び地方協議会に、それぞれ、公益を代表する委員のうちから委員の選挙した会長一人を置く。
2 会長は、会務を総理し、それぞれ、中央協議会又は地方協議会を代表する。
3 会長に事故があるときは、第一項の規定に準じて選挙された委員が、その職務を代行する。
(会議)
第十八條 中央協議会及び地方協議会は、正当な理由がある場合を除いては、六月に一回以上開かなければならない。
第十九條 中央協議会及び地方協議会は、それぞれ、会長が招集する。
2 会長は、厚生大臣若しくは都道府県知事の諮問があつたとき、又は委員の半数以上が審議すべき事項を示して招集を請求したときは、その諮問又は請求の日から、二週間以内に、それぞれ、中央協議会又は地方協議会を招集しなければならない。
(庶務)
第二十條 中央協議会の庶務は、厚生省保險局において処理する。
2 地方協議会の庶務は、地方協議会の置かれている都の民政局又は道府県の民生部において処理する。
(雑則)
第二十一條 この法律に定めるものの外、議事の手続その他中央協議会又は地方協議会の運営に関し必要な事項は、それぞれ、中央協議会又は地方協議会が定める。
第三章 社会保險審査官及び社会保險審査会
第一節 社会保險審査官
(設置)
第二十二條 健康保險、船員保險又は厚生年金保險の保險給付に関する保險者の決定についての不服に関して審査するために、各都道府県に、社会保險審査官を置く。
2 社会保險審査官は、二級の地方事務官のうちから、厚生大臣が命ずる。
第二節 社会保險審査会
(設置)
第二十三條 社会保險審査官の保險給付に関する決定についての不服及び保險者の保險料その他健康保險法(大正十一年法律第七十号)、船員保險法(昭和十四年法律第七十三号)又は厚生年金保險法(昭和十六年法律第六十号)の規定による徴收金の賦課若しくは徴收の処分又は健康保險法第十一條ノ二、船員保險法第十二條ノ二若しくは厚生年金保險法第十一條ノ二の規定による処分についての不服に関して審査するために、厚生省に、社会保險審査会(以下「審査会」という。)を置く。
(組織)
第二十四條 審査会は、左に掲げる委員十八人をもつて組織する。
一 健康保險、船員保險又は厚生年金保險の被保險者の利益を代表する委員 六人
二 健康保險、船員保險又は厚生年金保險の被保險者を使用する事業主及び船舶所有者の利益を代表する委員 六人
三 公益を代表する委員 六人
2 委員は、厚生大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
第二十五條 委員の任期は、三年とし、一年ごとに、委員の数の三分の一を任命する。
2 委員に欠員を生じたときあらたに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第二十六條 審査会に、公益を代表する委員のうちから委員の選挙した会長一人を置く。
2 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、第一項の規定に準じて選挙された委員が、その職務を代行する。
(定足数)
第二十七條 審査会は、健康保險に関する事件を審査する場合は、健康保險の被保險者の利益を代表する委員、健康保險の被保險者を使用する事業主の利益を代表する委員及び公益を代表する委員がそれぞれ一人以上、船員保險に関する事件を審査する場合は、船員保險の被保險者の利益を代表する委員、船員保險の被保險者を使用する船舶所有者の利益を代表する委員及び公益を代表する委員がそれぞれ一人以上、厚生年金保險に関する事件を審査する場合は、厚生年金保險の被保險者の利益を代表する委員、厚生年金保險の被保險者を使用する事業主の利益を代表する委員及び公益を代表する委員がそれぞれ一人以上出席しなければ、議事を開き、議決を行うことができない。
(可否同数の場合の決定)
第二十八條 審査会の議事は、出席した委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(庶務)
第二十九條 審査会の庶務は、厚生省保險局において処理する。
(雑則)
第三十條 この法律に定めるものの外、議事の手続その他審査会の運営に関し必要な事項は、審査会が定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する。
(他の法令の改廃)
2 健康保險法の一部を次のように改正する。
第二十四條の次に次の一條を加える。
第二十四條ノ二 厚生大臣ハ政府ノ管掌スル健康保險事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保險審議会ニ諮問スルモノトス
第四十三條ノ四第二項中「中央社会保險診療協議会ノ意見ヲ聽クベシ」を「中央社会保險医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第四十三條ノ五を次のように改める。
第四十三條ノ五 保險医及保險薬剤師ノ指定、指定ノ取消及保險診療ノ指導ニ関スル大綱ヲ定メントスルトキハ厚生大臣ハ中央社会保險医療協議会ニ、都道府県知事ハ地方社会保險医療協議会ニ諮問スルモノトス
第四十三條ノ六第三項中「社会保險診療報酬算定協議会ノ意見ヲ聽クベシ」を「中央社会保險医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第四十三條ノ七を削る。
第七十一條ノ四第二項中「健康保險審議会」を「社会保險審議会」に改める。
第六章を削り、第七章を第六章とし、第八章を第七章とする。
第八十條第一項、第八十三條ノ七から第八十三條ノ十二まで、第八十六條第一項及び第八十六條ノ二中「保險審査官」を「社会保險審査官」に、「健康保險審査会」を「社会保險審査会」に改める。
第八十一條中「健康保險審査会」を「社会保險審査会」に改める。
第八十一條ノ二を削り、第八十二條から第八十三條ノ五までを次のように改める。
第八十二條乃至第八十三條ノ五 削除
第八十三條ノ六中「保險審査官」を「社会保險審査官」に、「所轄保險審査官」を「所轄社会保險審査官」に改める。
第八十四條ノ三及び第八十四條ノ四を削り、第八十五條を次のように改める。
第八十五條 削除
3 国民健康保險法(昭和十三年法律第六十号)の一部を次のように改正する。
第八條ノ五を次のように改める。
第八條ノ五 保險者ハ療養ノ給付ヲ担当スル者ト協議ノ上厚生大臣ノ定ムル標準額ヲ基準トシテ適正ナル診療報酬ノ額ヲ定メ都道府県知事ノ認可ヲ受クベシ
厚生大臣前項ノ規定ニ依リ診療報酬ノ標準額ヲ定メントスルトキハ中央社会保險医療協議会ニ諮問スベシ
普通国民健康保險組合又ハ国民健康保險ヲ行フ社団法人第一項ノ規定ニ依リ都道府県知事ノ認可ヲ受ケントスルトキハ関係市町村長ヲ経由スベシ
第八條ノ七を次のように改める。
第八條ノ七 療養ノ給付ヲ担当スル者ガ被保險者ノ保險診療ヲ行フトキハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ懇切丁寧ニ之ヲ担当シ都道府県知事ノ指導ヲ受クベシ
厚生大臣前項ノ定ヲ為サントスルトキハ中央社会保險医療協議会ニ諮問スベシ
都道府県知事療養ノ給付ヲ担当スル者ノ保險診療ニ関シ其ノ指導監督ノ大綱ヲ定メントスルトキハ地方社会保險医療協議会ニ諮問スベシ
4 船員保險法の一部を次のように改正する。
第二條の次に次の一條を加える。
第二條ノ二 厚生大臣ハ船員保險事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保險審議会ニ諮問スルモノトス
第二十八條ノ四第二項中「中央社会保險診療協議会ノ意見ヲ聽クベシ」を「中央社会保險医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第二十八條ノ五を次のように改める。
第二十八條ノ五 保險医及保險薬剤師ノ指定、指定ノ取消及保險診療ノ指導ニ関スル大綱ヲ定メントスルトキハ厚生大臣ハ中央社会保險医療協議会ニ、都道府県知事ハ地方社会保險医療協議会ニ諮問スルモノトス
第二十八條ノ六第三項中「社会保險診療報酬算定協議会ノ意見ヲ聽クベシ」を「中央社会保險医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第二十八條ノ七を削る。
第三十三條ノ十三第一項、第三十三條ノ十四第二項、第五十二條ノ二第二項及び第五十二條ノ三第二項中「船員保險審議会」を「社会保險審議会」に改める。
第五章を削り、第六章を第五章とし、第七章を第六章とする。
第六十三條第一項、第六十五條ノ九から第六十五條ノ十四まで、第六十七條第一項及び第六十七條ノ二中「保險審査官」を「社会保險審査官」に、「船員保險審査会」を「社会保險審査会」に改める。
第六十四條中「船員保險審査会」を「社会保險審査会」に改める。
第六十五條から第六十五條ノ七までを次のように改める。
第六十五條乃至第六十五條ノ七 削除
第六十五條ノ八中「保險審査官」を「社会保險審査官」に、「所轄保險診査官」を「所轄社会保險審査官」に改める。
第六十五條ノ十六及び第六十五條ノ十七を削り、第六十六條を次のように改める。
第六十六條 削除
5 厚生年金保險法の一部を次のように改正する。
第二條の次に次の一條を加える。
第二條ノ二 厚生大臣ハ厚生年金保險事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ社会保險審議会ニ諮問スルモノトス
第五章を削り、第六章を第五章とし、第七章を第六章とする。
第六十二條第一項、第六十五條ノ八から第六十五條ノ十三まで、第六十六條及び第六十六條ノ二中「保險審査官」を「社会保險審査官」に、「厚生年金保險審査会」を「社会保險審査会」に改める。
第六十三條中「厚生年金保險審査会」を「社会保險審査会」に改める。
第六十四條から第六十五條ノ六までを次のように改める。
第六十四條乃至第六十五條ノ六 削除
第六十五條ノ七中「保險審査官」を「社会保險審査官」に、「所轄保險審査官」を「所轄社会保險審査官」に改める。
第六十五條ノ十五から第六十五條ノ十七までを削る。
6 社会保險診療協議会令(昭和二十四年政令第三百六十七号)及び社会保險診療報酬算定協議会令(昭和二十四年政令第三百六十八号)は、廃止する。
(経過規定)
7 この法律の施行後最初に任命される審議会の委員のうち、厚生大臣が任命の際に指名する半数の者の任期は、第四條第一項の規定にかかわらず、一年とする。
8 この法律の施行後最初に任命される中央協議会又は地方協議会の委員のうち、厚生大臣又は都道府県知事が、それぞれ任命の際に指名する半数の者の任期は、第十六條第一項の規定にかかわらず、一年とする。
9 この法律の施行の際、健康保險法第八十條第一項の規定による保險審査官、船員保險法第六十三條第一項の規定による保險審査官又は厚生年金保險法第六十二條第一項の規定による保險審査官の職にある者は、この法律の規定による社会保險審査官を命ぜられたものとみなす。
10 第二十五條第一項の規定にかかわらず、この法律の施行後最初に任命される審査会の委員のうち、三分の一の者の任期は、一年とし、他の三分の一の者の任期は二年とする。その委員は、厚生大臣が、任命の際に指名する。
11 この法律の施行前に保險審査官、健康保險審査会、船員保險審査会又は厚生年金保險審査会においてされた事件の受理その他の手続は、社会保險審査官又は社会保險審査会においてされた事件の受理その他の手続とみなす。
内閣総理大臣 吉田茂
厚生大臣 林讓治
社会保険審議会、社会保険医療協議会、社会保険審査官及び社会保険審査会の設置に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第四十七号
社会保険審議会、社会保険医療協議会、社会保険審査官及び社会保険審査会の設置に関する法律
目次
第一章
社会保険審議会(第一条―第十二条)
第二章
社会保険医療協議会(第十三条―第二十一条)
第三章
社会保険審査官及び社会保険審査会
第一節
社会保険審査官(第二十二条)
第二節
社会保険審査会(第二十三条―第三十条)
附則
第一章 社会保険審議会
(設置)
第一条 政府の管掌する健康保険事業並びに船員保険事業及び厚生年金保険事業の運営に関する事項を審議するため、厚生省に、社会保険審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第二条 審議会は、政府の管掌する健康保険事業並びに船員保険事業及び厚生年金保険事業の運営に関する事項について、厚生大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する外、自ら厚生大臣又は関係各大臣に、文書をもつて建議することができる。
(組織)
第三条 審議会は、左に掲げる委員二十七人をもつて組織する。
一 政府の管掌する健康保険並びに船員保険及び厚生年金保険の被保険者の利益を代表する委員 九人
二 政府の管掌する健康保険並びに船員保険及び厚生年金保険の被保険者を使用する事業主及び船舶所有者の利益を代表をする委員 九人
三 公益を代表する委員 九人
2 前項第三号の委員中には、医療関係の経験者を含むものとする。
3 厚生大臣は、審議会において専門の事項を審議するため必要があると認めるときは、その都度、六人以内の専門委員を置くことができる。
4 委員及び専門委員は、厚生大臣が任命する。
5 委員及び専門委員は、非常勤とする。
第四条 委員の任期は、二年とし、一年ごとにその半数を任命する。
2 委員に欠員を生じたときあらたに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第五条 審議会に、公益を代表する委員のうちから委員の選挙した会長一人を置く。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 会長に事故があるときは、第一項の規定に準じて選挙された委員が、その職務を代行する。
第六条 会長は、審議会に部会を置き、その所掌事務を分掌させることができる。
2 部会に属すべき委員及び専門委員は、会長が指名する。
3 部会に部会長を置く。部会長は、その部会に属する委員のうちから、会長が指名する。
4 部会長は、部会の事務を総理する。
5 部会長に事故があるときは、その部会に属する委員のうち会長の指名する委員がその職務を代行する。
6 審議会は、その定めるところにより、部会の決議をもつて審議会の決議とすることができる。
(資料及び情報の提供)
第七条 厚生大臣は、審議会の要求があつたときは、健康保険事業、船員保険事業又は厚生年金保険事業に関する資料及び情報を提供しなければならない。
(会議)
第八条 審議会は、正当な理由がある場合を除いては、三月に一回以上開かなければならない。
第九条 審議会は、会長が招集する。
2 会長は、厚生大臣の諮問があつたとき、又は委員の三分の一以上が審議すべき事項を示して招集を請求したときは、その諮問又は請求の日から二週間以内に、審議会を招集しなければならない。但し、その諮問又は請求に係る事項を分掌する部会が置かれているときは、審議会の招集に替え、その部会の部会長に、その部会を招集させることができる。
(厚生大臣への報告)
第十条 審議会は、毎会計年度の終了後六十日以内に、前会計年度における審議会の活動状況、審議の結果及び建議の大要を、文書をもつて厚生大臣に報告しなければならない。
(庶務)
第十一条 審議会の庶務は、厚生省保険局において処理する。
(雑則)
第十二条 この法律に定めるものの外、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、審議会が定める。
第二章 社会保険医療協議会
(設置)
第十三条 健康保険及び船員保険の保険医及び保険薬剤師(以下「保険医及び保険薬剤師」という。)並びに国民健康保険の療養の給付を担当する者(以下「療養担当者」という。)に対する適切な保険診療の指導監督に関する事項を審議し、及び勧告するとともに、健康保険及び船員保険の適正な診療報酬額並びに国民健康保険の適正な診療報酬の標準額を審議し、及び勧告するため、厚生省に、中央社会保険医療協議会(以下「中央協議会」という。)を置く。
2 保険医及び保険薬剤師並びに療養担当者に対する適切な保険診療の指導に関する事項を審議し、及び勧告するため、各都道府県に、地方社会保険医療協議会(以下「地方協議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第十四条 中央協議会は、左に掲げる事項について、厚生大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する外、自ら厚生大臣に、文書をもつて建議することができる。
一 保険医及び保険薬剤師の指定及び指定の取消並びに保険医及び保険薬剤師並びに療養担当者の保険診療に対する指導監督に関する事項
二 健康保険及び船員保険における適正な診療報酬額並びに国民健康保険における適正な診療報酬の標準額に関する事項
2 地方協議会は、前項第一号に掲げる事項について、都道府県知事の諮問に応じて審議し、及び文書をもつて答申する外、自ら都道府県知事に、文書をもつて建議することができる。
(組織)
第十五条 中央協議会又は地方協議会は、それぞれ、左に掲げる委員二十四人をもつて組織する。
一 健康保険、船員保険及び国民健康保険の保険者の利益を代表する委員 六人
二 健康保険、船員保険及び国民健康保険の被保険者、事業主及び船舶所有者の利益を代表する委員 六人
三 医師、歯科医師及び薬剤師の利益を代表する委員 六人
四 公益を代表する委員 六人
2 厚生大臣又は都道府県知事は、それぞれ中央協議会又は地方協議会において専門の事項を審議するため必要があると認めるときは、その都度、各十人以内の専門委員を置くことができる。
3 委員及び専門委員は、中央協議会にあつては厚生大臣、地方協議会にあつては都道府県知事が、任命する。
4 第一項第一号から第三号までの委員の任命は、各関係団体の推薦によるものとする。
5 委員及び専門委員は、非常勤とする。
第十六条 委員の任期は、二年とし、一年ごとに、その半数を任命する。
2 委員に欠員を生じたときあらたに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第十七条 中央協議会及び地方協議会に、それぞれ、公益を代表する委員のうちから委員の選挙した会長一人を置く。
2 会長は、会務を総理し、それぞれ、中央協議会又は地方協議会を代表する。
3 会長に事故があるときは、第一項の規定に準じて選挙された委員が、その職務を代行する。
(会議)
第十八条 中央協議会及び地方協議会は、正当な理由がある場合を除いては、六月に一回以上開かなければならない。
第十九条 中央協議会及び地方協議会は、それぞれ、会長が招集する。
2 会長は、厚生大臣若しくは都道府県知事の諮問があつたとき、又は委員の半数以上が審議すべき事項を示して招集を請求したときは、その諮問又は請求の日から、二週間以内に、それぞれ、中央協議会又は地方協議会を招集しなければならない。
(庶務)
第二十条 中央協議会の庶務は、厚生省保険局において処理する。
2 地方協議会の庶務は、地方協議会の置かれている都の民政局又は道府県の民生部において処理する。
(雑則)
第二十一条 この法律に定めるものの外、議事の手続その他中央協議会又は地方協議会の運営に関し必要な事項は、それぞれ、中央協議会又は地方協議会が定める。
第三章 社会保険審査官及び社会保険審査会
第一節 社会保険審査官
(設置)
第二十二条 健康保険、船員保険又は厚生年金保険の保険給付に関する保険者の決定についての不服に関して審査するために、各都道府県に、社会保険審査官を置く。
2 社会保険審査官は、二級の地方事務官のうちから、厚生大臣が命ずる。
第二節 社会保険審査会
(設置)
第二十三条 社会保険審査官の保険給付に関する決定についての不服及び保険者の保険料その他健康保険法(大正十一年法律第七十号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)又は厚生年金保険法(昭和十六年法律第六十号)の規定による徴収金の賦課若しくは徴収の処分又は健康保険法第十一条ノ二、船員保険法第十二条ノ二若しくは厚生年金保険法第十一条ノ二の規定による処分についての不服に関して審査するために、厚生省に、社会保険審査会(以下「審査会」という。)を置く。
(組織)
第二十四条 審査会は、左に掲げる委員十八人をもつて組織する。
一 健康保険、船員保険又は厚生年金保険の被保険者の利益を代表する委員 六人
二 健康保険、船員保険又は厚生年金保険の被保険者を使用する事業主及び船舶所有者の利益を代表する委員 六人
三 公益を代表する委員 六人
2 委員は、厚生大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
第二十五条 委員の任期は、三年とし、一年ごとに、委員の数の三分の一を任命する。
2 委員に欠員を生じたときあらたに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第二十六条 審査会に、公益を代表する委員のうちから委員の選挙した会長一人を置く。
2 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、第一項の規定に準じて選挙された委員が、その職務を代行する。
(定足数)
第二十七条 審査会は、健康保険に関する事件を審査する場合は、健康保険の被保険者の利益を代表する委員、健康保険の被保険者を使用する事業主の利益を代表する委員及び公益を代表する委員がそれぞれ一人以上、船員保険に関する事件を審査する場合は、船員保険の被保険者の利益を代表する委員、船員保険の被保険者を使用する船舶所有者の利益を代表する委員及び公益を代表する委員がそれぞれ一人以上、厚生年金保険に関する事件を審査する場合は、厚生年金保険の被保険者の利益を代表する委員、厚生年金保険の被保険者を使用する事業主の利益を代表する委員及び公益を代表する委員がそれぞれ一人以上出席しなければ、議事を開き、議決を行うことができない。
(可否同数の場合の決定)
第二十八条 審査会の議事は、出席した委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(庶務)
第二十九条 審査会の庶務は、厚生省保険局において処理する。
(雑則)
第三十条 この法律に定めるものの外、議事の手続その他審査会の運営に関し必要な事項は、審査会が定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する。
(他の法令の改廃)
2 健康保険法の一部を次のように改正する。
第二十四条の次に次の一条を加える。
第二十四条ノ二 厚生大臣ハ政府ノ管掌スル健康保険事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス
第四十三条ノ四第二項中「中央社会保険診療協議会ノ意見ヲ聴クベシ」を「中央社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第四十三条ノ五を次のように改める。
第四十三条ノ五 保険医及保険薬剤師ノ指定、指定ノ取消及保険診療ノ指導ニ関スル大綱ヲ定メントスルトキハ厚生大臣ハ中央社会保険医療協議会ニ、都道府県知事ハ地方社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス
第四十三条ノ六第三項中「社会保険診療報酬算定協議会ノ意見ヲ聴クベシ」を「中央社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第四十三条ノ七を削る。
第七十一条ノ四第二項中「健康保険審議会」を「社会保険審議会」に改める。
第六章を削り、第七章を第六章とし、第八章を第七章とする。
第八十条第一項、第八十三条ノ七から第八十三条ノ十二まで、第八十六条第一項及び第八十六条ノ二中「保険審査官」を「社会保険審査官」に、「健康保険審査会」を「社会保険審査会」に改める。
第八十一条中「健康保険審査会」を「社会保険審査会」に改める。
第八十一条ノ二を削り、第八十二条から第八十三条ノ五までを次のように改める。
第八十二条乃至第八十三条ノ五 削除
第八十三条ノ六中「保険審査官」を「社会保険審査官」に、「所轄保険審査官」を「所轄社会保険審査官」に改める。
第八十四条ノ三及び第八十四条ノ四を削り、第八十五条を次のように改める。
第八十五条 削除
3 国民健康保険法(昭和十三年法律第六十号)の一部を次のように改正する。
第八条ノ五を次のように改める。
第八条ノ五 保険者ハ療養ノ給付ヲ担当スル者ト協議ノ上厚生大臣ノ定ムル標準額ヲ基準トシテ適正ナル診療報酬ノ額ヲ定メ都道府県知事ノ認可ヲ受クベシ
厚生大臣前項ノ規定ニ依リ診療報酬ノ標準額ヲ定メントスルトキハ中央社会保険医療協議会ニ諮問スベシ
普通国民健康保険組合又ハ国民健康保険ヲ行フ社団法人第一項ノ規定ニ依リ都道府県知事ノ認可ヲ受ケントスルトキハ関係市町村長ヲ経由スベシ
第八条ノ七を次のように改める。
第八条ノ七 療養ノ給付ヲ担当スル者ガ被保険者ノ保険診療ヲ行フトキハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ懇切丁寧ニ之ヲ担当シ都道府県知事ノ指導ヲ受クベシ
厚生大臣前項ノ定ヲ為サントスルトキハ中央社会保険医療協議会ニ諮問スベシ
都道府県知事療養ノ給付ヲ担当スル者ノ保険診療ニ関シ其ノ指導監督ノ大綱ヲ定メントスルトキハ地方社会保険医療協議会ニ諮問スベシ
4 船員保険法の一部を次のように改正する。
第二条の次に次の一条を加える。
第二条ノ二 厚生大臣ハ船員保険事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス
第二十八条ノ四第二項中「中央社会保険診療協議会ノ意見ヲ聴クベシ」を「中央社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第二十八条ノ五を次のように改める。
第二十八条ノ五 保険医及保険薬剤師ノ指定、指定ノ取消及保険診療ノ指導ニ関スル大綱ヲ定メントスルトキハ厚生大臣ハ中央社会保険医療協議会ニ、都道府県知事ハ地方社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス
第二十八条ノ六第三項中「社会保険診療報酬算定協議会ノ意見ヲ聴クベシ」を「中央社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス」に改める。
第二十八条ノ七を削る。
第三十三条ノ十三第一項、第三十三条ノ十四第二項、第五十二条ノ二第二項及び第五十二条ノ三第二項中「船員保険審議会」を「社会保険審議会」に改める。
第五章を削り、第六章を第五章とし、第七章を第六章とする。
第六十三条第一項、第六十五条ノ九から第六十五条ノ十四まで、第六十七条第一項及び第六十七条ノ二中「保険審査官」を「社会保険審査官」に、「船員保険審査会」を「社会保険審査会」に改める。
第六十四条中「船員保険審査会」を「社会保険審査会」に改める。
第六十五条から第六十五条ノ七までを次のように改める。
第六十五条乃至第六十五条ノ七 削除
第六十五条ノ八中「保険審査官」を「社会保険審査官」に、「所轄保険診査官」を「所轄社会保険審査官」に改める。
第六十五条ノ十六及び第六十五条ノ十七を削り、第六十六条を次のように改める。
第六十六条 削除
5 厚生年金保険法の一部を次のように改正する。
第二条の次に次の一条を加える。
第二条ノ二 厚生大臣ハ厚生年金保険事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス
第五章を削り、第六章を第五章とし、第七章を第六章とする。
第六十二条第一項、第六十五条ノ八から第六十五条ノ十三まで、第六十六条及び第六十六条ノ二中「保険審査官」を「社会保険審査官」に、「厚生年金保険審査会」を「社会保険審査会」に改める。
第六十三条中「厚生年金保険審査会」を「社会保険審査会」に改める。
第六十四条から第六十五条ノ六までを次のように改める。
第六十四条乃至第六十五条ノ六 削除
第六十五条ノ七中「保険審査官」を「社会保険審査官」に、「所轄保険審査官」を「所轄社会保険審査官」に改める。
第六十五条ノ十五から第六十五条ノ十七までを削る。
6 社会保険診療協議会令(昭和二十四年政令第三百六十七号)及び社会保険診療報酬算定協議会令(昭和二十四年政令第三百六十八号)は、廃止する。
(経過規定)
7 この法律の施行後最初に任命される審議会の委員のうち、厚生大臣が任命の際に指名する半数の者の任期は、第四条第一項の規定にかかわらず、一年とする。
8 この法律の施行後最初に任命される中央協議会又は地方協議会の委員のうち、厚生大臣又は都道府県知事が、それぞれ任命の際に指名する半数の者の任期は、第十六条第一項の規定にかかわらず、一年とする。
9 この法律の施行の際、健康保険法第八十条第一項の規定による保険審査官、船員保険法第六十三条第一項の規定による保険審査官又は厚生年金保険法第六十二条第一項の規定による保険審査官の職にある者は、この法律の規定による社会保険審査官を命ぜられたものとみなす。
10 第二十五条第一項の規定にかかわらず、この法律の施行後最初に任命される審査会の委員のうち、三分の一の者の任期は、一年とし、他の三分の一の者の任期は二年とする。その委員は、厚生大臣が、任命の際に指名する。
11 この法律の施行前に保険審査官、健康保険審査会、船員保険審査会又は厚生年金保険審査会においてされた事件の受理その他の手続は、社会保険審査官又は社会保険審査会においてされた事件の受理その他の手続とみなす。
内閣総理大臣 吉田茂
厚生大臣 林譲治