日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第116号
公布年月日: 昭和30年8月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

日雇労働者健康保険法は1954年1月に発足し、当初3ヶ月だった療養給付期間を同年4月に6ヶ月に延長して順調に運営してきた。しかし、他の疾病保険と比較して給付内容が十分でないため、以下の改善を図る法改正を行う。第一に療養給付期間を6ヶ月から1年に延長する。第二に歯科診療における補綴を含むよう療養給付範囲を拡張する。第三に死亡・分娩に関する現金給付を創設する。第四に被扶養者の範囲を、被保険者と同一世帯に属する三親等内の親族で主としてその者により生計を維持する者まで拡大する。今後も制度運営の実績を検討し、財政事情を考慮しながら内容改善を図っていく。

参照した発言:
第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号

審議経過

第22回国会

参議院
(昭和30年6月2日)
衆議院
(昭和30年6月13日)
(昭和30年6月23日)
(昭和30年6月24日)
(昭和30年6月27日)
(昭和30年6月28日)
(昭和30年6月30日)
(昭和30年7月1日)
(昭和30年7月9日)
(昭和30年7月18日)
(昭和30年7月19日)
参議院
(昭和30年7月26日)
(昭和30年7月27日)
(昭和30年7月29日)
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年八月一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百十六号
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律
日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)の一部を次のように改正する。
第一条中「業務外の事由による疾病又は負傷」を「業務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は分ベん」に、「被扶養者の疾病又は負傷」を「被扶養者の疾病、負傷、死亡又は分ベん」に改める。
第三条第二項を次のように改める。
2 この法律で「被扶養者」とは、次に掲げる者をいう。
一 被保険者又は被保険者であつた者の直系尊属、配偶者(届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)及び子であつて、主としてこれらの者により生計を維持するもの
二 被保険者又は被保険者であつた者の三親等内の親族であつて、これらの者と同一の世帯に属し、主としてこれらの者により生計を維持するもの
第九条を次のように改める。
(保険給付の種類)
第九条 この法律による保険給付は、次のとおりとする。
一 療養の給付
二 埋葬料の支給
三 分べん費の支給
四 家族療養費の支給
五 家族埋葬料の支給
六 配偶者分ベん費の支給
第十条第一項中「被保険者」の下に「(被保険者であつた者を含む。この章において以下同じ。)」を加え、同項第三号中「(歯科診療における補てつを除く。)」を削り、同条に次の二項を加える。
3 被保険者が療養の給付を受けるには、当該疾病又は負傷につきはじめてこれを受ける日の属する月の前二箇月間に通算して二十八日分以上又は当該月の前六箇月間に通算して七十八日分以上の保険料が、その被保険者について、納付されていなければならない。
4 保険者は、被保険者が前項の受給要件をそなえることを被保険者手帳によつて証明して申請したときは、受給資格証明書を交付するものとする。
第十四条中「六筒月」を「一年」に改める。
第十五条第二項中「第九条第二項」を「第十条第四項」に改める。
第十六条の次に次の二条を加える。
(埋葬料)
第十六条の二 被保険者が死亡したときは、被扶養者であつて埋葬を行う者に対し、埋葬料として四千円を支給する。
2 被保険者が死亡した場合において、前項の規定によつて埋葬料の支給を受けるべき者がないときは、埋葬を行つた者に対し、埋葬料として同項の金額の範囲内においてその埋葬に要した費用に相当する金額を支給する。
3 前二項の埋葬料の支給を受けるには、死亡の日の属する月の前二箇月間に通算して二十八日分以上又は当該月の前六箇月間に通算して七十八日分以上の保険料が、当該被保険者について、納付されていなければならない。
4 前項の規定は、被保険者が死亡の際療養の給付を受けていた場合には、適用しない。
(分ベん費)
第十六条の三 被保険者が分ベんしたときは、分べん費として二千円を支給する。
2 被保険者が分べん費の支給を受けるには、分ベんの日の属する月の前四箇月間に、通算して二十八日分以上の保険料が、その被保険者について、納付されていなければならない。
第十七条第五項中「第十条第二項、」を「第十条第二項から第四項まで、」に、「前条」を「第十六条」に、「前条第一項」を「第十六条第一項」に改め、同条の次に次の三条を加える。
(家族埋葬料)
第十七条の二 被扶養者が死亡したときは、被保険者に対し、家族埋葬料として二千円を支給する。
2 被保険者が家族埋葬料の支給を受けるには、死亡の日の属する月の前二箇月間に通算して二十八日分以上又は当該月の前六箇月間に通算して七十八日分以上の保険料が、その被保険者について、納付されていなければならない。
(配偶者分べん費)
第十七条の三 被扶養者である配偶者が分ベんしたときは、被保険者に対し、配偶者分べん費として千円を支給する。
2 被保険者が配偶者分ベん費の支給を受けるには、分ベんの日の属する月の前二箇月間に通算して二十八日分以上又は当該月の前六箇月間に通算して七十八日分以上の保険料が、その被保険者について、納付されていなければならない。
(受給方法)
第十七条の四 療養費、埋葬料若しくは分ベん費又は家族療養費、家族埋葬料若しくは配偶者分ベん費の支給を受けようとする者は、厚生省令の定めるところにより、受給要件をそなえることを証明できる被保険者手帳又は受給資格証明書を添えて、申請しなければならない。
第十八条を次のように改める。
(他の社会保険による給付等との調整)
第十八条 療養の給付又は埋葬料若しくは分べん費の支給は、同一の疾病、負傷、死亡又は分べんにつき、健康保険法、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)又は国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。以下同じ。)若しくは市町村職員共済組合法(昭和二十九年法律第二百四号)の規定によつてこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。
2 療養の給付又は埋葬料若しくは分べん費の支給は、同一の疾病、負傷、死亡又は分ベんにつき、健康保険法、船員保険法又は国家公務員共済組合法若しくは市町村職員共済組合法の規定によつて、この法律の規定による家族療養費、家族埋葬料又は配偶者分べん費の支給に相当する給付があつたときは、その限度において、行わない。
3 家族療養費、家族埋葬料又は配偶者分べん費の支給は、同一の疾病、負傷、死亡又は分ベんにつき、健康保険法、船員保険法又は国家公務員共済組合法若しくは市町村職員共済組合法の規定によつて、これらに相当する給付又はこの法律の規定による療養の給付若しくは埋葬料若しくは分べん費の支給に相当する給付を受けることができる場合には、行わない。
4 療養の給付又は埋葬料若しくは分べん費の支給は、同一の疾病、負傷、死亡又は分ベんにつき、国民健康保険法(昭和十三年法律第六十号)の規定によつて、これらに相当する給付があつたときは、その限度において、行わない。
5 療養の給付又は家族療養費の支給は、同一の疾病又は負傷につき、他の法律の規定によつて、国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給があつたときは、その限度において、行わない。
第二十一条第一項中「左の各号の一に該当する場合には、」の下に「疾病、負傷又は分ベんに関し、」を加える。
第二十五条を次のように改める。
(損害賠償請求権)
第二十五条 保険者は、給付事由が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付を行つたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その価額の限度で、保険給付を行う責を免かれる。
第二十五条の次に次の一条を加える。
(不正利得の徴収)
第二十五条の二 詐欺その他不正の行為によつて保険給付を受けた者があるときは、保険者は、その者からその保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の場合において、事業主が不正に被保険者手帳に健康保険印紙をちよう付し、若しくはこれに消印し、又は保険医が保険者に提出されるべき診断書に虚偽の記載をしたため、その保険給付が行われたものであるときは、保険者は、その事業主又は保険医に対し、保険給付を受けた者に連帯して同項の徴収金を納付すべきことを命ずることができる。
第三十七条の見出しを「(国税徴収法の準用)」に改め、同条中「徴収金に関する書類の送達については、」を「徴収金に関しては、」に、「第四条ノ九」を「第四条ノ二から第四条ノ五まで、第四条ノ九」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
2 被保険者若しくは被保険者であつた者又は被扶養者の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病であつて、療養の給付又は家族療養費の支給の開始の日から起算してこの法律の施行の日前に六筒月を経過したものに関する保険給付の支給については、第十四条の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。
(健康保険法の一部改正)
3 健康保険法(大正十一年法律第七十号)の一部を次のように改正する。
第五十九条ノ三を削り、第五十九条ノ四を第五十九条ノ三とし、第五十九条ノ五を第五十九条ノ四とし、同条の次に次の一条を加える。
第五十九条ノ五 家族療養費、家族埋葬料又ハ配偶者分娩費ノ支給ハ同一ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ関シ日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)ノ規定ニ依リ療養ノ給付又ハ埋葬料若ハ分娩費ノ支給アリタルトキハ其ノ限度ニ於テ之ヲ為サズ
(船員保険法の一部改正)
4 船員保険法の一部を次のように改正する。
目次中「第二節 療養ノ給付及傷病手当金(第二十八条―第三十一条ノ三)」を「第二節 療養ノ給付及傷病手当金(第二十八条―第三十一条ノ二)」に改める。
第三十一条ノ三を削る。
第五十六条ノ四の次に次の一条を加える。
第五十六条ノ五 家族療養費、配偶者分娩費又ハ家族葬祭料ノ支給ハ同一ノ疾病、負傷、分娩又ハ死亡ニ関シ日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)ノ規定ニ依リ療養ノ給付又ハ分娩費若ハ埋葬料ノ支給アリタルトキハ其ノ限度ニ於テ之ヲ為サズ
(国家公務員共済組合法の一部改正)
5 国家公務員共済組合法の一部を次のように改正する。
第三十四条の二を削る。
第三十八条の次に次の一条を加える。
(日雇労働者健康保険法による給付との調整)
第三十八条の二 家族療養費、配偶者分ベん費又は家族埋葬料は、同一の疾病、負傷、分ベん又は死亡に関し、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)の規定により療養の給付又は分べん費若しくは埋葬料の支給があつたときは、その限度において、支給しない。
(市町村職員共済組合法の一部改正)
6 市町村職員共済組合法の一部を次のように改正する。
目次中「第二節 保健給付(第三十条―第四十条)」を「第二節 保健給付(第三十条―第四十条の二)」に改める。
第三十六条を次のように改める。
第三十六条 削除
第四十条の次に次の一条を加える。
(日雇労働者健康保険法による給付との調整)
第四十条の二 家族療養費、配偶者分べん費又は家族埋葬料は、同一の疾病、負傷、分べん又は死亡に関し、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)の規定により療養の給付又は分べん費若しくは埋葬料の支給があつたときは、その限度において、支給しない。
内閣総理大臣 鳩山一郎
大蔵大臣 一万田尚登
厚生大臣 川崎秀二