(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)
法令番号: 法律第五十四号
公布年月日: 昭和22年4月14日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議会の協賛を経た私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
厚生大臣 河合良成
大藏大臣 石橋湛山
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
農林大臣 木村小左衞門
法律第五十四号
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律目次
第一章
総則
第二章
私的独占及び不当な取引制限
第三章
不当な事業能力の較差
第四章
株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の讓受
第五章
不公正な競爭方法
第六章
適用除外
第七章
損害賠償
第八章
公正取引委員会
第一節
組織及び権限
第二節
手続
第三節
雜則
第九章
訴訟
第十章
罰則
第一章 総則
第一條 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な競爭方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生產、販賣、價格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競爭を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び國民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、國民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
第二條 この法律において事業者とは、商業、工業、金融業その他の事業を営む者をいう。
この法律において競爭又は競爭者とは、潛在的な競爭又は競爭者を含むものとする。
この法律において私的独占とは、事業者が、單独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法を以てするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することをいう。
この法律において不当な取引制限とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義を以てするかを問わず、他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することをいう。
この法律において不当な事業能力の較差とは、事業者と競爭者の事業能力の間に、著しい較差がある場合において、その事業者の優越した事業能力が、技術的理由により正当とされるものでなく、且つ、その較差が左の各号の一に掲げる事由により私的独占を行うことができる程度であるものをいう。
一 他の事業者があらたに事業を起すことを著しく困難にする程度に、事業者が、当該事業分野に属する事業又はこれに使用する原材料を支配していること
二 事業者が、一定の事業分野において、他の事業者が現実に競爭することを著しく困難にする程度に生產を支配してゐること
三 事業者が、私的独占を行うことができる程度に自由な競爭を抑圧し、又は著しく制限していること
この法律において不公正な競爭方法とは、左の各号の一に該当する競爭手段をいう。
一 他の事業者から不当に物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けず、又は他の事業者に対し不当に物資、資金その他の経済上の利益を供給しないこと
二 不当な差別対價を以て、物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
三 不当に低い対價を以て、物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
四 不当に、利益又は不利益を以て、競爭者の顧客を自己と取り引きするように勧誘し、又は強制すること
五 相手方が自己の競爭者から不当に物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けないことを條件として、当該相手方と取り引きすること
六 相手方とこれに物資、資金その他の経済上の利益を供給する者若しくは顧客との取引若しくは相手方とその競爭者との関係を不当に拘束する條件を附け、又は相手方である会社の役員(取締役、業務を執行する無限責任社員若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の営業の主任者をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の承認を受けるべき旨の條件を附けて、当該相手方に物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
七 前各号に掲げるものの外、公共の利益に反する競爭手段であつて、第七十一條及び第七十二條に規定する手続に從い公正取引委員会の指定するもの
第二章 私的独占及び不当な取引制限
第三條 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
第四條 事業者は、共同して左の各号の一に該当する行爲をしてはならない。
一 対價を決定し、維持し、又は引き上げること
二 生產数量又は販賣数量を制限すること
三 技術、製品、販路又は顧客を制限すること
四 設備の新設若しくは拡張又は新技術若しくは新生產方式の採用を制限すること
前項の規定は、一定の取引分野における競爭に対する当該共同行爲の影響が問題とする程度に至らないものである場合には、これを適用しない。
第五條 事業者は、一手買取及び一手販賣の方法による資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の統制又は資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の割当を行う法人その他の團体を設立し、若しくは組織し、又はこれらの團体に加入してはならない。
第六條 事業者は、外國の事業者と左の各号の一に該当する事項を内容とする國際的協定若しくは國際的契約をし、又は國内の事業者と貿易に関し左の各号の一に該当する事項を内容とする協定若しくは契約をしてはならない。
一 第四條第一項各号の一に掲げる事項
二 事業活動に必要な科学又は技術に関する知識又は情報の交換を制限すること
前項の規定は、國際取引又は國内取引の一定の分野における競爭に対する当該協定又は当該契約の影響が問題とする程度に至らないものである場合には、これを適用しない。
事業者は、外國の事業者との國際的協定若しくは國際的契約又は國内の事業者との貿易に関する協定若しくは契約であつて相当期間継続するもの(一の取引による目的物の授受のみが相当期間にわたるものを除く。)をしようとする場合には、公正取引委員会に届け出て、その認可を受けなければならない。
前項の場合において、事業者は、届出の日から三十日を経過するまでは、当該協定又は当該契約をしてはならない。
第七條 私的独占又は不当な取引制限に該当する行爲があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に從い、事業者に対し、当該行爲の差止、営業の一部の讓渡その他私的独占又は不当な取引制限を排除するために必要な措置を命ずることができる。
第三章 不当な事業能力の較差
第八條 不当な事業能力の較差があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に從い、事業者に対し、営業施設の讓渡その他その較差を排除するために必要な措置を命ずることができる。
公正取引委員会が前項の措置を命ずるに当つては、当該事業者につき、左の各号に掲げる事項を考慮しなければならない。
一 資本金、積立金その他資產の状況
二 收支その他経営の状況
三 役員の構成
四 工場、事業場及び事務所の位置その他の立地條件
五 事業設備の状況
六 特許権の有無及び内容その他技術上の特質
七 生產、販賣等の能力及び状況
八 資金、原材料等の取得の能力及び状況
九 投資その他の方法による他の事業者との関係
十 前各号に掲げる事項に関する競爭者との比較
第四章 株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の讓受
第九條 持株会社は、これを設立してはならない。
前項において持株会社とは、株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより、他の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社をいう。
第十條 金融業(銀行業、信託業、保險業、無盡業又は証券業をいう。以下同じ。)以外の事業を営む会社は、他の会社の株式(議決権のない株式を除く。以下同じ。)を取得してはならない。
前項の規定は、会社(商品の賣買を主たる事業とするものを除く。)が、左の各号に該当する他の会社の株式の全部を所有することとなる場合において、その会社の株式の取得について公正取引委員会の認可を申請し、公正取引委員会が、当該株式の所有が一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなることがないと認めて認可したときには、これを適用しない。
一 原材料、半製品、部分品、副產物、廃物若しくは事業活動に必要な物資その他の経済上の利益(資金を除く。)の供給について継続的で緊密な関係にある会社又は特許発明若しくは実用新案の利用関係にある会社
二 他の会社の株式を所有していない会社
前項に規定する場合の外、株式を取得しようとする会社(現に存する会社の株式を取得しようとする場合には、株式を取得しようとする会社及びその株式を発行する会社)が、その株式の取得が左の各号に掲げる要件を備えていることを明かにした場合には、その会社の株式の全部を所有することとならないときでも、同項に規定する他の要件を備えているときには、同項と同樣とする。
一 必要な資金を調達するために発行される株式の取得であること
二 申請会社において株式を引き受ける外、資本の取得が事実上困難である場合の株式の取得であること
三 株式の取得が不公正な競爭方法に因るものでないこと
四 取得しようとする会社と競爭関係にある会社が株式を所有していない会社の株式の取得であること。但し、商品の賣買を主たる事業とする会社の株式の取得については、取得しようとする会社以外の会社が株式を所有していない場合に限る
第十一條 金融業を営む会社は、自己と競爭関係にある同種の金融業を営む他の会社の株式を取得してはならない。
金融業を営む会社であつてその総資產(未拂込株金、未拂込出資金又は未拂込基金に対する請求権を除く。)が五百万円を超えるものは、他の会社の株式総数の百分の五を超えてその会社の株式を所有することとなる場合には、その株式を取得してはならない。
前二項の規定は、左の各号の一に該当する場合には、これを適用しない。
一 証券業を営む会社が業務として株式を取得する場合
二 証券業以外の金融業を営む会社が賣出のための引受によつて株式を取得する場合
三 委託者を受益者とする有價証券信託の引受によつて株式を取得する場合。但し、委託者が議決権を行使する場合に限る
前項第一号又は第二号の場合において、取得の日から一年を超えて株式を所有しようとするときは、あらかじめ公正取引委員会の認可を受けなければならない。
第十二條 会社は、他の会社の資本金額(株金総額、出資総額、株金総額及び出資総額の合計額又は基金総額をいう。)の百分の二十五に相当する金額を超えてその会社の社債(銀行業を営む会社の社債を除く。以下同じ。)を所有することとなる場合には、その社債を取得してはならない。
前條第三項及び第四項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、株式とあるのは、社債と読み替えるものとする。
第十三條 会社の役員又は從業員(継続して会社の業務に從業する者であつて役員以外のものをいう。)は、左の各号の一に該当する場合には、他の会社の役員の地位を兼ねてはならない。
一 両会社が競爭関係にある場合
二 両会社の何れか一方の役員の四分の一以上が両会社以外の会社の役員の地位を占めている場合
会社の役員は、いかなる場合においても四以上の会社の役員の地位を占めてはならない。
第十四條 何人も、相互に競爭関係にある二以上の会社の株式を所有することにより、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなる場合には、その株式を取得してはならない。
何人も、相互に競爭関係にある二以上の会社の株式を各会社の株式総数の百分の十を超えて所有することとなる場合には、その株式の取得について公正取引委員会の認可を受けなければならない。
会社の役員は、その会社と競爭関係にある他の会社の株式を取得してはならない。
会社の役員は、その就任の際、就任する会社と競爭関係にある会社の株式を所有している場合には、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
公正取引委員会は、前項の届出があつた場合において、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなる虞があると認めるときは、その全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。
第十五條 会社は、公正取引委員会の認可を受けなければ、合併をしてはならない。
公正取引委員会は、前項の認可の申請があつた場合において、当該合併が左の各号の一に該当し公共の利益に反すると認めるときは、これを認可してはならない。
一 当該合併が生產、販賣又は経営の合理化に役立たない場合
二 当該合併によつて不当な事業能力の較差が生ずることとなる場合
三 当該合併によつて一定の取引分野における競爭を実質的に制限することとなる虞がある場合
四 当該合併が不公正な競爭方法によつて強制されたものである場合
第十六條 会社は、公正取引委員会の認可を受けなければ、他の会社の営業の全部若しくは一部の讓受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約をしてはならない。
前條第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、当該合併とあるのは、当該行爲と読み替えるものとする。
第十七條 何らの名義を以てするかを問わず、第九條から前條までの規定による禁止又は制限を免れる行爲をしてはならない。
第十八條 公正取引委員会は、第五條若しくは第九條第一項の規定に違反して会社が設立された場合又は第十五條第一項の規定に違反して会社が合併した場合においては、設立又は合併の無効の訴を提起することができる。
第五章 不公正な競爭方法
第十九條 事業者は、不公正な競爭方法を用いてはならない。
第二十條 前條の規定に違反する行爲があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に從い、当該行爲の差止を命ずることができる。
第六章 適用除外
第二十一條 この法律の規定は、鉄道事業、電氣事業、瓦斯事業その他その性質上当然に独占となる事業を営む者の行う生產、販賣又は供給に関する行爲であつてその事業に固有のものについては、これを適用しない。
第二十二條 この法律の規定は、特定の事業について特別の法律がある場合において、事業者が、その法律又はその法律に基く命令によつて行う正当な行爲には、これを適用しない。
前項の特別の法律は、別に法律を以てこれを指定する。
第二十三條 この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行爲にはこれを適用しない。
第二十四條 この法律の規定は、左の各号に掲げる要件を備え、且つ、法律の規定に基いて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行爲には、これを適用しない。但し、不公正な競爭方法を用いる場合又は一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより不当に対價を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること
二 任意に設立され、且つ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること
三 各組合員が平等の議決権を有すること
四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること
第七章 損害賠償
第二十五條 私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な競爭方法を用いた事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。
事業者は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
第二十六條 前條の規定による損害賠償の請求権は、第四十八條第三項又は第五十四條の規定による審決が確定した後でなければ、裁判上これを主張することができない。
前項の請求権は、同項の審決が確定した日から三年を経過したときは、時効に因つて消滅する。
第八章 公正取引委員会
第一節 組織及び権限
第二十七條 この法律の目的を達成するため、公正取引委員会を置く。
公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
第二十八條 公正取引委員会の委員は、独立してその職権を行う。
第二十九條 公正取引委員会は、委員七人を以て、これを組織する。
委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経驗のある者のうちから、内閣総理大臣が、衆議院の同意を得て、これを任命する。
委員は、これを官吏とする。
第三十條 委員の任期は、五年とする。但し、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
委員は、再任されることができる。
委員は、年齢が六十五年に達したときには、その地位を退く。
國会閉会の場合又は衆議院解散の場合に委員の任期が満了したとき又は欠員を生じたときの措置については、命令を以てこれを定める。
第三十一條 委員は、左の各号の一に該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 禁治產、準禁治產又は破產の宣告を受けた場合
二 懲戒免官の処分を受けた場合
三 この法律の規定に違反して刑に処せられた場合
四 禁錮以上の刑に処せられた場合
五 公正取引委員会により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合
第三十二條 前條第一号又は第三号から第五号までの場合においては、内閣総理大臣は、その委員を罷免しなければならない。
第三十三條 内閣総理大臣は、委員のうちから、委員長一人を命ずる。
委員長は、公正取引委員会の会務を総理し、公正取引委員会を代表する。
公正取引委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
第三十四條 公正取引委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
公正取引委員会の議事は、出席者の過半数を以て、これを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
公正取引委員会が第三十一條第五号の規定による決定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
第三十五條 公正取引委員会の事務を処理させるため、公正取引委員会に事務局を附置し、所要の職員を置く。
前項の職員は、これを官吏とする。
第一項の職員中には、檢察官、任命の際現に弁護士たる者又は弁護士の資格を有する者を加えなければならない。
前項の檢察官たる職員の掌る職務は、この法律の規定に違反する犯罪に関するものに限る。
第三十六條 委員長、委員及び公正取引委員会の職員の報酬は、命令を以てこれを定める。
委員長及び委員の報酬は、在任中、その意に反してこれを減額することができない。
第三十七條 委員長、委員及び命令を以て定める公正取引委員会の職員は、在任中、左の各号の一に該当する行爲をすることができない。
一 國会若しくは地方公共團体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除く外、報酬のある他の職務に從事すること
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと
第三十八條 委員長、委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。但し、この法律に規定する場合又はこの法律に関する研究の結果を発表する場合は、この限りでない。
第三十九條 委員長、委員及び公正取引委員会の職員並びに委員長、委員又は公正取引委員会の職員であつた者は、その職務に関して知得した事業者の祕密を他に漏し、又は窃用してはならない。
第四十條 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の團体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。
第四十一條 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、学校、事業者、事業者の團体又は学識経驗ある者に対し、必要な調査を嘱託することができる。
第四十二條 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公聽会を開いて一般の意見を求めることができる。
第四十三條 公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の祕密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。
第四十四條 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して、國会に対し、毎年この法律の施行の状況を報告しなければならない。
公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して國会に対し、この法律の目的を達成するために必要な事項に関し、意見を提出することができる。
第二節 手続
第四十五條 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
前項に規定する報告があつたときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。
公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権を以て適当な措置をとることができる。
第四十六條 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、左の各号に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審訊し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること
三 帳簿書類その他の物件の所有者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと
四 事件関係の営業所その他必要な場所に臨檢して、業務及び財產の状況、帳簿書類その他の物件を檢査すること
公正取引委員会が相当と認めるときは、命令を以て定める公正取引委員会の職員をして、前項の処分をさせることができる。
前項の規定により職員に臨檢檢査をさせる場合においては、これに証票を携帶させなければならない。
第四十七條 公正取引委員会は、事件について必要な調査をしたときは、その要旨を調書に記載し、且つ、特に前條に規定する処分があつたときは、その結果を明かにして置かなければならない。
第四十八條 公正取引委員会は、事業者が、私的独占をし、不当な取引制限をし、若しくは不公正な競爭方法を用いていると認める場合又は不当な事業能力の較差があると認める場合には、当該事業者に対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
前項の規定による勧告があつたときは、事業者は、遅滯なく公正取引委員会に対し、当該勧告を應諾するかしないかを通知しなければならない。
事業者が勧告を應諾したときは、公正取引委員会は、審判手続を経ないで勧告と同趣旨の審決をすることができる。
第四十九條 前條第一項の場合において、事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めるときは、公正取引委員会は、当該事件について審判手続を開始することができる。
審判手続は、当該事業者に審判開始決定書を送達することにより、これを開始する。
第五十條 審判開始決定書には、事件の要旨並びに審判の期日及び場所を記載し、且つ、事業者が出頭するべき旨を附記しなければならない。
審判の期日は、審判開始決定書を発送した日から三十日後に、これを定めなければならない。
第五十一條 事業者は、審判開始決定書の送達を受けたときは、これに対する答弁書を遅滯なく公正取引委員会に提出しなければならない。
第五十二條 事業者又はその代理人は、審判に際して、公正取引委員会が当該事件について第七條、第八條第一項又は第二十條の規定による措置を命ずることが不当である理由を述べ、且つ、これを立証する資料を提出し、公正取引委員会に対し、必要な参考人を審訊し、鑑定人に鑑定を命じ、帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物件の提出を命じ、若しくは必要な場所に臨檢して業務及び財產の状況、帳簿書類その他の物件を檢査することを求め、又は公正取引委員会が出頭を命じた参考人若しくは鑑定人を審訊することができる。
事業者は、弁護士その他適当な者を代理人とすることができる。
第五十三條 審判は、これを公開しなければならない。但し、事業者の事業上の祕密を保つため必要があると認めるとき又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。
審判には、速記者を立ち会わせて、陳述を筆記させなければならない。
第五十四條 公正取引委員会は、審判をした後、事業者が、私的独占をし、不当な取引制限をし、若しくは不公正な競爭方法を用いていると認める場合又は不当な事業能力の較差があると認める場合には、審決を以て、事業者に対し第七條、第八條第一項又は第二十條に規定する措置を命じなければならない。
第五十五條 審決は、委員長及び委員の合議によらなければならない。
第三十四條第一項及び第二項の規定は、前項の合議にこれを準用する。
第五十六條 公正取引委員会の合議は、これを公開しない。
第五十七條 審決は、文書によつてこれを行い、審決書には、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を示し、委員長及び合議に出席した委員がこれに署名押印しなければならない。
審決書には、少数意見を附記することができる。
第五十八條 審決は、事業者に審決書の謄本が到達した時に、その効力を生ずる。
第五十九條 公正取引委員会は、必要があると認めるときは、職権で、審決の結果について関係のある第三者を当事者として審判手続に参加させることができる。但し、あらかじめ事業者及び当該第三者を審訊しなければならない。
第六十條 関係のある公務所又は公共的な團体は、公益上必要があると認めるときは、公正取引委員会の承認を得て、当事者として審判手続に参加することができる。
第六十一條 関係のある公務所又は公共的な團体は、公共の利益を保護するため、公正取引委員会に対して意見を述べることができる。
第六十二條 公正取引委員会が、第五十四條の規定により、審決を以て違反行爲の差止その他の処分を命じた場合においては、事業者は、裁判所の定める保証金又は有價証券を供託して、当該審決が確定するまでその執行を免れることができる。
前項の規定による裁判は、非訟事件手続法により、これを行う。
第六十三條 事業者が、前條第一項の規定により供託をした場合において、当該審決が確定したときは、裁判所は、公正取引委員会の申立により、供託に係る保証金又は有價証券の全部又は一部を沒取することができる。
前條第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
第六十四條 公正取引委員会は、第五十四條の審決をした後においても、將に必要があるときは、第四十六條の規定により、処分をし、又はその職員をして処分をさせることができる。
第六十五條 公正取引委員会は、第六條第三項、第十條第二項若しくは第三項、第十一條第四項(第十二條第二項で準用する場合を含む。)、第十四條第二項、第十五條第一項又は第十六條第一項の規定による認可の申請があつた場合において、当該申請を理由がないと認めるときは、審決を以てこれを却下しなければならない。
第四十五條第二項の規定は、前項の認可の申請があつた場合に、これを準用する。
第六十六條 公正取引委員会は、前條第一項に掲げる認可について、その認可の要件である事実が消滅し、又は変更したと認めるときは、審判手続を経て、審決を以てこれを取り消し、又は変更することができる。
公正取引委員会は、経済事情の変化その他の事由により、審決の基礎となつた事実が消滅し、若しくは変更した場合において、当該審決を維持することが不当であつて公共の利益に反すると認めるときは、審判手続を経て、審決を以てこれを取り消し、又は変更することができる。
第六十七條 裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、公正取引委員会の申立により、事業者に対し、私的独占、不当な取引制限又は不公正な競爭方法に該当する疑のある行爲を一時停止するべきことを命じ、又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。
第六十二條第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
第六十八條 事業者は、裁判所の定める保証金又は有價証券を供託して、前條第一項の規定による裁判の執行を免れることができる。
第六十三條の規定は、前項の規定による供託に係る保証金又は有價証券の沒取にこれを準用する。
第六十九條 利害関係人は、公正取引委員会に対し、事件記録の閲覽若しくは謄写又は審決書の正本、謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
第七十條 この法律に定めるものを除く外、公正取引委員会の調査及び審判に関する手続その他事件の処理並びに第六十二條第一項及び第六十八條第一項の供託に関し必要な事項は、命令を以てこれを定める。
第三節 雜則
第七十一條 公正取引委員会が第二條第六項第七号の規定により不公正な競爭方法を指定するには、指定しようとする競爭方法を用いる事業者と同種の事業を営む事業者の意見を聞き、且つ、公聽会を開いて一般の意見を求めた後、指定仮案を作成して、これを公表し、当該仮案について事業者に反対意見があるときは、これを充分に考慮した上で、これをしなければならない。
第七十二條 第二條第六項第七号の規定による不公正な競爭方法の指定は、告示によつてこれを行う。
前項の指定は、告示の日から三十日を経過した日に、その効力を生ずる。
第七十三條 公正取引委員会は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは檢事総長に告発しなければならない。
前項の規定による告発に係る事件について公訴を提起しない処分をしたときは、檢事総長は、遅滯なく、司法大臣を経由して、その旨及びその理由を、文書を以て内閣総理大臣に報告しなければならない。
第七十四條 檢事総長は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その旨を通知して、調査及びその結果の報告を求めることができる。
第七十五條 第四十六條第一項第一号若しくは第二号又は同條第二項の規定により出頭又は鑑定を命ぜられた参考人又は鑑定人は、命令の定めるところにより、旅費及び手当を請求することができる。
第七十六條 公正取引委員会は、その内部規律及び事件の処理手続に関する事項について規則を定めることができる。
第九章 訴訟
第七十七條 公正取引委員会の審決に不服のある者は、裁判所に審決の取消又は変更の訴を提起することができる。但し、審決がその効力を生じた日から三十日を経過したときは、この限りでない。
前項の訴については、公正取引委員会を以て被告とする。
第七十八條 訴の提起があつたときは、裁判所は、遅滯なく公正取引委員会に対し、当該事件の記録(事件関係人、参考人又は鑑定人の審訊調書及び速記録その他裁判上証拠となるべき一切のものを含む。)の送付を求めなければならない。
第七十九條 第七十七條第一項の訴の提起は、公正取引委員会の審決の執行を停止しない。但し、裁判所は、必要と認めるときは、何時でも、利害関係人の申立により、又は職権で、決定を以て公正取引委員会の審決の全部若しくは一部の執行の停止を命じ、又はその処分を取り消し、若しくは変更することができる。
第八十條 第七十七條第一項に規定する訴訟については、公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘求する。
前項に規定する実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断するものとする。
第八十一條 当事者は、左の各号の一に該当する場合に限り、裁判所に対し、当該事件に関係のあるあたらしい証拠の申出をすることができる。
一 公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかつた場合
二 公正取引委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、且つ、これを提出できなかつたことについて過失がなかつた場合
前項各号に掲げる場合においては、当事者において、その事由を明かにしなければならない。
裁判所は、第一項の規定によるあたらしい証拠を取り調べる必要があると認めるときは、公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻し、当該証拠を取り調べた上適当な措置をとるべきことを命じなければならない。
第八十二條 裁判所は、公正取引委員会の審決が、左の各号の一に該当する場合には、これを取り消すことができる。
一 審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
裁判所は、審決の内容が憲法その他の法令の適用について独断に過ぎ、又は不当であると認めるときは、これを変更することができる。
第八十三條 裁判所は、公正取引委員会の審決を変更することを相当と認めるときは、変更するべき点を指示して事件を公正取引委員会に差し戻すことができる。
第八十四條 第二十五條の規定による損害賠償に関する訴が提起されたときは、裁判所は、遅滯なく、公正取引委員会に対し、同條に規定する違反行爲に因つて生じた損害の額について、意見を求めなければならない。
前項の規定は、第二十五條の規定による損害賠償の請求が、相殺のために裁判上主張された場合に、これを準用する。
第八十五條 左の各号の一に該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る訴訟
二 第二十五條の規定による損害賠償に係る訴訟
三 第八十九條及び第九十條の罪に係る訴訟
第八十六條 第六十二條第一項、第六十三條第一項(第六十八條第二項で準用する場合を含む。)、第六十七條第一項、第九十七條及び第九十八條に規定する事件は、東京高等裁判所の專属管轄とする。
第八十七條 東京高等裁判所に、第八十五條に掲げる訴訟事件及び前條に掲げる事件のみを取り扱う裁判官の合議体を設ける。
前項の合議体の裁判官の員数は、これを五人とする。
第八十八條 前條第一項に規定する事件に関する裁判に対しては、その裁判において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とする場合又はその判決が法令に違反することを理由とする場合に限り、上告することができる。
第十章 罰則
第八十九條 第三條の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者は、これを三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
前項の未遂罪は、これを罰する。
第九十條 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第四條第一項の規定に違反して共同行爲をした者
二 第五條の規定に違反して法人その他の團体を設立し、若しくは組織し、又はこれらの團体に加入した者
三 第六條第一項の規定に違反して協定又は契約をした者
四 第四十八條第三項又は第五十四條の審決が確定した後においてこれに從わない者
第九十一條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
一 第六條第三項又は第四項の規定に違反して協定又は契約をした者
二 第九條第一項の規定に違反して持株会社を設立した者
三 第十條第一項又は第十一條第一項、第二項若しくは第四項の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
四 第十二條第一項又は同條第二項の規定で準用する第十一條第四項の規定に違反して社債を取得し、又は所有した者
五 第十三條の規定に違反して役員の地位に就いた者
六 第十四條第一項から第三項までの規定に違反して株式を取得し、同條第四項の規定に違反して届出をせず、又は同條第五項の規定による公正取引委員会の命令が確定した後においてこれに從わない者
七 第十六條第一項の規定に違反して他の会社の営業の全部若しくは一部の讓受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約をした者
八 第十七條の規定に違反した者
第九十二條 前三條の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第九十三條 第三十九條の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
第九十四條 第四十六條第一項第四号又は同條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、六月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
第九十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関して、第八十九條、第九十條、第九十一條第一号から第四号まで、若しくは第六号から第八号まで又は第九十四條の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
第九十六條 第八十九條及び第九十條の罪は、公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。
前項の告発は、文書を以てこれを行う。
公正取引委員会は、第一項の告発をするに当り、その告発に係る犯罪について、第百條第一項第一号の宣告をすることを相当と認めるときは、その旨を前項の文書に記載することができる。
第一項の告発は、公訴の提起があつた後は、これを取り消すことができない。
第九十七條 第四十八條第三項又は第五十四條の審決に違反した者は、これを五万円以下の過料に処する。但し、その行爲につき刑を科するべきときは、この限りでない。
第九十八條 第六十七條第一項の規定による裁判に違反した者は、これを三万円以下の過料に処する。
第九十九條 左の各号の一に該当する者は、これを五百円以下の過料に処する。
一 第四十條の規定による公正取引委員会の処分に違反して出頭せず、報告、情報若しくは資料を提出せず、又は虚僞の報告、情報若しくは資料を提出した者
二 第四十六條第一項第一号又は同條第二項の規定による事件関係人又は参考人に対する処分に違反して出頭せず、陳述をせず、虚僞の陳述をし、又は報告をせず、若しくは虚僞の報告をした者
三 第四十六條第一項第二号又は同條第二項の規定による鑑定人に対する処分に違反して、出頭せず、鑑定をせず、又は虚僞の鑑定をした者
四 第四十六條第一項第三号又は同條第二項の規定による物件の所持者に対する処分に違反して物件を提出しない者
第百條 第八十九條又は第九十條の場合において、裁判所は、情状により、刑の言渡と同時に、左に掲げる宣告をすることができる。但し、第一号の宣告をするのは、その特許権又は特許発明の実施権が、犯人に属している場合に限る。
一 違反行爲に供せられた特許権の特許又は特許発明の実施権は取り消されるべき旨
二 判決確定後六箇月以上三年以下の期間、政府との間に契約をすることができない旨
前項第一号の宣告をした判決が確定したときは、裁判所は、判決の謄本を特許標準局長官に送付しなければならない。
前項の規定による判決の謄本の送付があつたときは、特許標準局長官は、その特許権の特許又は特許発明の実施権を取り消さなければならない。
附 則
第百一條 この法律の施行の期日は、各規定について命令を以てこれを定める。
第百二條 各規定施行の際現に存する契約で、当該規定に違反するものは、当該規定の施行の日からその効力を失う。
第百三條 この法律の規定は、企業再建整備法の規定による決定整備計画又は金融機関再建整備法の規定による整備計画に基いて行う事業者の行爲には、これを適用しない。
第百四條 第五條の規定施行の際現に存する法人その他の團体で、一手買取及び一手販賣の方法による資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の統制又は資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の割当を行うものの処置については、命令を以てこれを定める。
第百五條 第九條の規定施行の際現に存する持株会社の処置については、命令を以てこれを定める。
第百六條 第九條、第十條、第十二條、第十四條第一項及び第二項、前條、第百七條並びに第百十條の規定は、東北興業株式会社には、これを適用しない。
第百七條 金融業以外の事業を営む会社が、第十條又は第十二條の規定施行の際現に当該規定に反して所有する他の会社の株式又は社債の処置については、命令を以てこれを定める。
第百八條 金融業を営む会社が、第十一條又は第十二條の規定施行の際現に当該規定に反して所有する他の会社の株式又は社債の処置については、命令を以てこれを定める。
第百九條 第十三條の規定施行の際現に同條第一項の規定に反して役員の地位を兼ねている者は、同條の規定施行の日から九十日以内に、何れか一の地位を除いて他の地位を辞さなければならない。
第十三條の規定施行の際現に四以上の会社の役員の地位を占めている者は、同條の規定施行の日から九十日以内に、何れか三の地位を除いて他の地位を辞さなければならない。
第百十條 第十四條の規定施行の際現に同條の規定に反して所有されている株式の処置については、命令を以てこれを定める。
第百十一條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第百九條の規定に違反した者
二 第百四條、第百五條、第百七條、第百八條又は前條の規定に基く命令に違反した者
第百十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関して、前條第二号の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、同條の罰金刑を科する。
第百十三條 公正取引委員会の委員長及び委員は、持株会社整理委員会又は証券処理調整協議会の会議に出席して意見を述べることができる。
第百十四條 公正取引委員会の第一期の委員の任期は、内閣総理大臣の定めるところにより、そのうちの一人については一年、二人については二年、一人については三年、二人については四年、一人については五年とする。
朕は、帝国議会の協賛を経た私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
厚生大臣 河合良成
大蔵大臣 石橋湛山
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
農林大臣 木村小左衛門
法律第五十四号
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律目次
第一章
総則
第二章
私的独占及び不当な取引制限
第三章
不当な事業能力の較差
第四章
株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の譲受
第五章
不公正な競争方法
第六章
適用除外
第七章
損害賠償
第八章
公正取引委員会
第一節
組織及び権限
第二節
手続
第三節
雑則
第九章
訴訟
第十章
罰則
第一章 総則
第一条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な競争方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
第二条 この法律において事業者とは、商業、工業、金融業その他の事業を営む者をいう。
この法律において競争又は競争者とは、潜在的な競争又は競争者を含むものとする。
この法律において私的独占とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法を以てするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
この法律において不当な取引制限とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義を以てするかを問わず、他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
この法律において不当な事業能力の較差とは、事業者と競争者の事業能力の間に、著しい較差がある場合において、その事業者の優越した事業能力が、技術的理由により正当とされるものでなく、且つ、その較差が左の各号の一に掲げる事由により私的独占を行うことができる程度であるものをいう。
一 他の事業者があらたに事業を起すことを著しく困難にする程度に、事業者が、当該事業分野に属する事業又はこれに使用する原材料を支配していること
二 事業者が、一定の事業分野において、他の事業者が現実に競争することを著しく困難にする程度に生産を支配してゐること
三 事業者が、私的独占を行うことができる程度に自由な競争を抑圧し、又は著しく制限していること
この法律において不公正な競争方法とは、左の各号の一に該当する競争手段をいう。
一 他の事業者から不当に物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けず、又は他の事業者に対し不当に物資、資金その他の経済上の利益を供給しないこと
二 不当な差別対価を以て、物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
三 不当に低い対価を以て、物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
四 不当に、利益又は不利益を以て、競争者の顧客を自己と取り引きするように勧誘し、又は強制すること
五 相手方が自己の競争者から不当に物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けないことを条件として、当該相手方と取り引きすること
六 相手方とこれに物資、資金その他の経済上の利益を供給する者若しくは顧客との取引若しくは相手方とその競争者との関係を不当に拘束する条件を附け、又は相手方である会社の役員(取締役、業務を執行する無限責任社員若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の営業の主任者をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の承認を受けるべき旨の条件を附けて、当該相手方に物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
七 前各号に掲げるものの外、公共の利益に反する競争手段であつて、第七十一条及び第七十二条に規定する手続に従い公正取引委員会の指定するもの
第二章 私的独占及び不当な取引制限
第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
第四条 事業者は、共同して左の各号の一に該当する行為をしてはならない。
一 対価を決定し、維持し、又は引き上げること
二 生産数量又は販売数量を制限すること
三 技術、製品、販路又は顧客を制限すること
四 設備の新設若しくは拡張又は新技術若しくは新生産方式の採用を制限すること
前項の規定は、一定の取引分野における競争に対する当該共同行為の影響が問題とする程度に至らないものである場合には、これを適用しない。
第五条 事業者は、一手買取及び一手販売の方法による資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の統制又は資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の割当を行う法人その他の団体を設立し、若しくは組織し、又はこれらの団体に加入してはならない。
第六条 事業者は、外国の事業者と左の各号の一に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約をし、又は国内の事業者と貿易に関し左の各号の一に該当する事項を内容とする協定若しくは契約をしてはならない。
一 第四条第一項各号の一に掲げる事項
二 事業活動に必要な科学又は技術に関する知識又は情報の交換を制限すること
前項の規定は、国際取引又は国内取引の一定の分野における競争に対する当該協定又は当該契約の影響が問題とする程度に至らないものである場合には、これを適用しない。
事業者は、外国の事業者との国際的協定若しくは国際的契約又は国内の事業者との貿易に関する協定若しくは契約であつて相当期間継続するもの(一の取引による目的物の授受のみが相当期間にわたるものを除く。)をしようとする場合には、公正取引委員会に届け出て、その認可を受けなければならない。
前項の場合において、事業者は、届出の日から三十日を経過するまでは、当該協定又は当該契約をしてはならない。
第七条 私的独占又は不当な取引制限に該当する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止、営業の一部の譲渡その他私的独占又は不当な取引制限を排除するために必要な措置を命ずることができる。
第三章 不当な事業能力の較差
第八条 不当な事業能力の較差があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、営業施設の譲渡その他その較差を排除するために必要な措置を命ずることができる。
公正取引委員会が前項の措置を命ずるに当つては、当該事業者につき、左の各号に掲げる事項を考慮しなければならない。
一 資本金、積立金その他資産の状況
二 収支その他経営の状況
三 役員の構成
四 工場、事業場及び事務所の位置その他の立地条件
五 事業設備の状況
六 特許権の有無及び内容その他技術上の特質
七 生産、販売等の能力及び状況
八 資金、原材料等の取得の能力及び状況
九 投資その他の方法による他の事業者との関係
十 前各号に掲げる事項に関する競争者との比較
第四章 株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の譲受
第九条 持株会社は、これを設立してはならない。
前項において持株会社とは、株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより、他の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社をいう。
第十条 金融業(銀行業、信託業、保険業、無尽業又は証券業をいう。以下同じ。)以外の事業を営む会社は、他の会社の株式(議決権のない株式を除く。以下同じ。)を取得してはならない。
前項の規定は、会社(商品の売買を主たる事業とするものを除く。)が、左の各号に該当する他の会社の株式の全部を所有することとなる場合において、その会社の株式の取得について公正取引委員会の認可を申請し、公正取引委員会が、当該株式の所有が一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなることがないと認めて認可したときには、これを適用しない。
一 原材料、半製品、部分品、副産物、廃物若しくは事業活動に必要な物資その他の経済上の利益(資金を除く。)の供給について継続的で緊密な関係にある会社又は特許発明若しくは実用新案の利用関係にある会社
二 他の会社の株式を所有していない会社
前項に規定する場合の外、株式を取得しようとする会社(現に存する会社の株式を取得しようとする場合には、株式を取得しようとする会社及びその株式を発行する会社)が、その株式の取得が左の各号に掲げる要件を備えていることを明かにした場合には、その会社の株式の全部を所有することとならないときでも、同項に規定する他の要件を備えているときには、同項と同様とする。
一 必要な資金を調達するために発行される株式の取得であること
二 申請会社において株式を引き受ける外、資本の取得が事実上困難である場合の株式の取得であること
三 株式の取得が不公正な競争方法に因るものでないこと
四 取得しようとする会社と競争関係にある会社が株式を所有していない会社の株式の取得であること。但し、商品の売買を主たる事業とする会社の株式の取得については、取得しようとする会社以外の会社が株式を所有していない場合に限る
第十一条 金融業を営む会社は、自己と競争関係にある同種の金融業を営む他の会社の株式を取得してはならない。
金融業を営む会社であつてその総資産(未払込株金、未払込出資金又は未払込基金に対する請求権を除く。)が五百万円を超えるものは、他の会社の株式総数の百分の五を超えてその会社の株式を所有することとなる場合には、その株式を取得してはならない。
前二項の規定は、左の各号の一に該当する場合には、これを適用しない。
一 証券業を営む会社が業務として株式を取得する場合
二 証券業以外の金融業を営む会社が売出のための引受によつて株式を取得する場合
三 委託者を受益者とする有価証券信託の引受によつて株式を取得する場合。但し、委託者が議決権を行使する場合に限る
前項第一号又は第二号の場合において、取得の日から一年を超えて株式を所有しようとするときは、あらかじめ公正取引委員会の認可を受けなければならない。
第十二条 会社は、他の会社の資本金額(株金総額、出資総額、株金総額及び出資総額の合計額又は基金総額をいう。)の百分の二十五に相当する金額を超えてその会社の社債(銀行業を営む会社の社債を除く。以下同じ。)を所有することとなる場合には、その社債を取得してはならない。
前条第三項及び第四項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、株式とあるのは、社債と読み替えるものとする。
第十三条 会社の役員又は従業員(継続して会社の業務に従業する者であつて役員以外のものをいう。)は、左の各号の一に該当する場合には、他の会社の役員の地位を兼ねてはならない。
一 両会社が競争関係にある場合
二 両会社の何れか一方の役員の四分の一以上が両会社以外の会社の役員の地位を占めている場合
会社の役員は、いかなる場合においても四以上の会社の役員の地位を占めてはならない。
第十四条 何人も、相互に競争関係にある二以上の会社の株式を所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなる場合には、その株式を取得してはならない。
何人も、相互に競争関係にある二以上の会社の株式を各会社の株式総数の百分の十を超えて所有することとなる場合には、その株式の取得について公正取引委員会の認可を受けなければならない。
会社の役員は、その会社と競争関係にある他の会社の株式を取得してはならない。
会社の役員は、その就任の際、就任する会社と競争関係にある会社の株式を所有している場合には、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
公正取引委員会は、前項の届出があつた場合において、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなる虞があると認めるときは、その全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。
第十五条 会社は、公正取引委員会の認可を受けなければ、合併をしてはならない。
公正取引委員会は、前項の認可の申請があつた場合において、当該合併が左の各号の一に該当し公共の利益に反すると認めるときは、これを認可してはならない。
一 当該合併が生産、販売又は経営の合理化に役立たない場合
二 当該合併によつて不当な事業能力の較差が生ずることとなる場合
三 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる虞がある場合
四 当該合併が不公正な競争方法によつて強制されたものである場合
第十六条 会社は、公正取引委員会の認可を受けなければ、他の会社の営業の全部若しくは一部の譲受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約をしてはならない。
前条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、当該合併とあるのは、当該行為と読み替えるものとする。
第十七条 何らの名義を以てするかを問わず、第九条から前条までの規定による禁止又は制限を免れる行為をしてはならない。
第十八条 公正取引委員会は、第五条若しくは第九条第一項の規定に違反して会社が設立された場合又は第十五条第一項の規定に違反して会社が合併した場合においては、設立又は合併の無効の訴を提起することができる。
第五章 不公正な競争方法
第十九条 事業者は、不公正な競争方法を用いてはならない。
第二十条 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該行為の差止を命ずることができる。
第六章 適用除外
第二十一条 この法律の規定は、鉄道事業、電気事業、瓦斯事業その他その性質上当然に独占となる事業を営む者の行う生産、販売又は供給に関する行為であつてその事業に固有のものについては、これを適用しない。
第二十二条 この法律の規定は、特定の事業について特別の法律がある場合において、事業者が、その法律又はその法律に基く命令によつて行う正当な行為には、これを適用しない。
前項の特別の法律は、別に法律を以てこれを指定する。
第二十三条 この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。
第二十四条 この法律の規定は、左の各号に掲げる要件を備え、且つ、法律の規定に基いて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。但し、不公正な競争方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること
二 任意に設立され、且つ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること
三 各組合員が平等の議決権を有すること
四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること
第七章 損害賠償
第二十五条 私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な競争方法を用いた事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。
事業者は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
第二十六条 前条の規定による損害賠償の請求権は、第四十八条第三項又は第五十四条の規定による審決が確定した後でなければ、裁判上これを主張することができない。
前項の請求権は、同項の審決が確定した日から三年を経過したときは、時効に因つて消滅する。
第八章 公正取引委員会
第一節 組織及び権限
第二十七条 この法律の目的を達成するため、公正取引委員会を置く。
公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
第二十八条 公正取引委員会の委員は、独立してその職権を行う。
第二十九条 公正取引委員会は、委員七人を以て、これを組織する。
委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が、衆議院の同意を得て、これを任命する。
委員は、これを官吏とする。
第三十条 委員の任期は、五年とする。但し、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
委員は、再任されることができる。
委員は、年齢が六十五年に達したときには、その地位を退く。
国会閉会の場合又は衆議院解散の場合に委員の任期が満了したとき又は欠員を生じたときの措置については、命令を以てこれを定める。
第三十一条 委員は、左の各号の一に該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けた場合
二 懲戒免官の処分を受けた場合
三 この法律の規定に違反して刑に処せられた場合
四 禁錮以上の刑に処せられた場合
五 公正取引委員会により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合
第三十二条 前条第一号又は第三号から第五号までの場合においては、内閣総理大臣は、その委員を罷免しなければならない。
第三十三条 内閣総理大臣は、委員のうちから、委員長一人を命ずる。
委員長は、公正取引委員会の会務を総理し、公正取引委員会を代表する。
公正取引委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
第三十四条 公正取引委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
公正取引委員会の議事は、出席者の過半数を以て、これを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
公正取引委員会が第三十一条第五号の規定による決定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
第三十五条 公正取引委員会の事務を処理させるため、公正取引委員会に事務局を附置し、所要の職員を置く。
前項の職員は、これを官吏とする。
第一項の職員中には、検察官、任命の際現に弁護士たる者又は弁護士の資格を有する者を加えなければならない。
前項の検察官たる職員の掌る職務は、この法律の規定に違反する犯罪に関するものに限る。
第三十六条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員の報酬は、命令を以てこれを定める。
委員長及び委員の報酬は、在任中、その意に反してこれを減額することができない。
第三十七条 委員長、委員及び命令を以て定める公正取引委員会の職員は、在任中、左の各号の一に該当する行為をすることができない。
一 国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除く外、報酬のある他の職務に従事すること
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと
第三十八条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。但し、この法律に規定する場合又はこの法律に関する研究の結果を発表する場合は、この限りでない。
第三十九条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員並びに委員長、委員又は公正取引委員会の職員であつた者は、その職務に関して知得した事業者の秘密を他に漏し、又は窃用してはならない。
第四十条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。
第四十一条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、学校、事業者、事業者の団体又は学識経験ある者に対し、必要な調査を嘱託することができる。
第四十二条 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めることができる。
第四十三条 公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。
第四十四条 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、毎年この法律の施行の状況を報告しなければならない。
公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して国会に対し、この法律の目的を達成するために必要な事項に関し、意見を提出することができる。
第二節 手続
第四十五条 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
前項に規定する報告があつたときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。
公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権を以て適当な措置をとることができる。
第四十六条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、左の各号に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審訊し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること
三 帳簿書類その他の物件の所有者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと
四 事件関係の営業所その他必要な場所に臨検して、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること
公正取引委員会が相当と認めるときは、命令を以て定める公正取引委員会の職員をして、前項の処分をさせることができる。
前項の規定により職員に臨検検査をさせる場合においては、これに証票を携帯させなければならない。
第四十七条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をしたときは、その要旨を調書に記載し、且つ、特に前条に規定する処分があつたときは、その結果を明かにして置かなければならない。
第四十八条 公正取引委員会は、事業者が、私的独占をし、不当な取引制限をし、若しくは不公正な競争方法を用いていると認める場合又は不当な事業能力の較差があると認める場合には、当該事業者に対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
前項の規定による勧告があつたときは、事業者は、遅滞なく公正取引委員会に対し、当該勧告を応諾するかしないかを通知しなければならない。
事業者が勧告を応諾したときは、公正取引委員会は、審判手続を経ないで勧告と同趣旨の審決をすることができる。
第四十九条 前条第一項の場合において、事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めるときは、公正取引委員会は、当該事件について審判手続を開始することができる。
審判手続は、当該事業者に審判開始決定書を送達することにより、これを開始する。
第五十条 審判開始決定書には、事件の要旨並びに審判の期日及び場所を記載し、且つ、事業者が出頭するべき旨を附記しなければならない。
審判の期日は、審判開始決定書を発送した日から三十日後に、これを定めなければならない。
第五十一条 事業者は、審判開始決定書の送達を受けたときは、これに対する答弁書を遅滞なく公正取引委員会に提出しなければならない。
第五十二条 事業者又はその代理人は、審判に際して、公正取引委員会が当該事件について第七条、第八条第一項又は第二十条の規定による措置を命ずることが不当である理由を述べ、且つ、これを立証する資料を提出し、公正取引委員会に対し、必要な参考人を審訊し、鑑定人に鑑定を命じ、帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物件の提出を命じ、若しくは必要な場所に臨検して業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査することを求め、又は公正取引委員会が出頭を命じた参考人若しくは鑑定人を審訊することができる。
事業者は、弁護士その他適当な者を代理人とすることができる。
第五十三条 審判は、これを公開しなければならない。但し、事業者の事業上の秘密を保つため必要があると認めるとき又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。
審判には、速記者を立ち会わせて、陳述を筆記させなければならない。
第五十四条 公正取引委員会は、審判をした後、事業者が、私的独占をし、不当な取引制限をし、若しくは不公正な競争方法を用いていると認める場合又は不当な事業能力の較差があると認める場合には、審決を以て、事業者に対し第七条、第八条第一項又は第二十条に規定する措置を命じなければならない。
第五十五条 審決は、委員長及び委員の合議によらなければならない。
第三十四条第一項及び第二項の規定は、前項の合議にこれを準用する。
第五十六条 公正取引委員会の合議は、これを公開しない。
第五十七条 審決は、文書によつてこれを行い、審決書には、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を示し、委員長及び合議に出席した委員がこれに署名押印しなければならない。
審決書には、少数意見を附記することができる。
第五十八条 審決は、事業者に審決書の謄本が到達した時に、その効力を生ずる。
第五十九条 公正取引委員会は、必要があると認めるときは、職権で、審決の結果について関係のある第三者を当事者として審判手続に参加させることができる。但し、あらかじめ事業者及び当該第三者を審訊しなければならない。
第六十条 関係のある公務所又は公共的な団体は、公益上必要があると認めるときは、公正取引委員会の承認を得て、当事者として審判手続に参加することができる。
第六十一条 関係のある公務所又は公共的な団体は、公共の利益を保護するため、公正取引委員会に対して意見を述べることができる。
第六十二条 公正取引委員会が、第五十四条の規定により、審決を以て違反行為の差止その他の処分を命じた場合においては、事業者は、裁判所の定める保証金又は有価証券を供託して、当該審決が確定するまでその執行を免れることができる。
前項の規定による裁判は、非訟事件手続法により、これを行う。
第六十三条 事業者が、前条第一項の規定により供託をした場合において、当該審決が確定したときは、裁判所は、公正取引委員会の申立により、供託に係る保証金又は有価証券の全部又は一部を没取することができる。
前条第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
第六十四条 公正取引委員会は、第五十四条の審決をした後においても、将に必要があるときは、第四十六条の規定により、処分をし、又はその職員をして処分をさせることができる。
第六十五条 公正取引委員会は、第六条第三項、第十条第二項若しくは第三項、第十一条第四項(第十二条第二項で準用する場合を含む。)、第十四条第二項、第十五条第一項又は第十六条第一項の規定による認可の申請があつた場合において、当該申請を理由がないと認めるときは、審決を以てこれを却下しなければならない。
第四十五条第二項の規定は、前項の認可の申請があつた場合に、これを準用する。
第六十六条 公正取引委員会は、前条第一項に掲げる認可について、その認可の要件である事実が消滅し、又は変更したと認めるときは、審判手続を経て、審決を以てこれを取り消し、又は変更することができる。
公正取引委員会は、経済事情の変化その他の事由により、審決の基礎となつた事実が消滅し、若しくは変更した場合において、当該審決を維持することが不当であつて公共の利益に反すると認めるときは、審判手続を経て、審決を以てこれを取り消し、又は変更することができる。
第六十七条 裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、公正取引委員会の申立により、事業者に対し、私的独占、不当な取引制限又は不公正な競争方法に該当する疑のある行為を一時停止するべきことを命じ、又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。
第六十二条第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
第六十八条 事業者は、裁判所の定める保証金又は有価証券を供託して、前条第一項の規定による裁判の執行を免れることができる。
第六十三条の規定は、前項の規定による供託に係る保証金又は有価証券の没取にこれを準用する。
第六十九条 利害関係人は、公正取引委員会に対し、事件記録の閲覧若しくは謄写又は審決書の正本、謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
第七十条 この法律に定めるものを除く外、公正取引委員会の調査及び審判に関する手続その他事件の処理並びに第六十二条第一項及び第六十八条第一項の供託に関し必要な事項は、命令を以てこれを定める。
第三節 雑則
第七十一条 公正取引委員会が第二条第六項第七号の規定により不公正な競争方法を指定するには、指定しようとする競争方法を用いる事業者と同種の事業を営む事業者の意見を聞き、且つ、公聴会を開いて一般の意見を求めた後、指定仮案を作成して、これを公表し、当該仮案について事業者に反対意見があるときは、これを充分に考慮した上で、これをしなければならない。
第七十二条 第二条第六項第七号の規定による不公正な競争方法の指定は、告示によつてこれを行う。
前項の指定は、告示の日から三十日を経過した日に、その効力を生ずる。
第七十三条 公正取引委員会は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは検事総長に告発しなければならない。
前項の規定による告発に係る事件について公訴を提起しない処分をしたときは、検事総長は、遅滞なく、司法大臣を経由して、その旨及びその理由を、文書を以て内閣総理大臣に報告しなければならない。
第七十四条 検事総長は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その旨を通知して、調査及びその結果の報告を求めることができる。
第七十五条 第四十六条第一項第一号若しくは第二号又は同条第二項の規定により出頭又は鑑定を命ぜられた参考人又は鑑定人は、命令の定めるところにより、旅費及び手当を請求することができる。
第七十六条 公正取引委員会は、その内部規律及び事件の処理手続に関する事項について規則を定めることができる。
第九章 訴訟
第七十七条 公正取引委員会の審決に不服のある者は、裁判所に審決の取消又は変更の訴を提起することができる。但し、審決がその効力を生じた日から三十日を経過したときは、この限りでない。
前項の訴については、公正取引委員会を以て被告とする。
第七十八条 訴の提起があつたときは、裁判所は、遅滞なく公正取引委員会に対し、当該事件の記録(事件関係人、参考人又は鑑定人の審訊調書及び速記録その他裁判上証拠となるべき一切のものを含む。)の送付を求めなければならない。
第七十九条 第七十七条第一項の訴の提起は、公正取引委員会の審決の執行を停止しない。但し、裁判所は、必要と認めるときは、何時でも、利害関係人の申立により、又は職権で、決定を以て公正取引委員会の審決の全部若しくは一部の執行の停止を命じ、又はその処分を取り消し、若しくは変更することができる。
第八十条 第七十七条第一項に規定する訴訟については、公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘求する。
前項に規定する実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断するものとする。
第八十一条 当事者は、左の各号の一に該当する場合に限り、裁判所に対し、当該事件に関係のあるあたらしい証拠の申出をすることができる。
一 公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかつた場合
二 公正取引委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、且つ、これを提出できなかつたことについて過失がなかつた場合
前項各号に掲げる場合においては、当事者において、その事由を明かにしなければならない。
裁判所は、第一項の規定によるあたらしい証拠を取り調べる必要があると認めるときは、公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻し、当該証拠を取り調べた上適当な措置をとるべきことを命じなければならない。
第八十二条 裁判所は、公正取引委員会の審決が、左の各号の一に該当する場合には、これを取り消すことができる。
一 審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
裁判所は、審決の内容が憲法その他の法令の適用について独断に過ぎ、又は不当であると認めるときは、これを変更することができる。
第八十三条 裁判所は、公正取引委員会の審決を変更することを相当と認めるときは、変更するべき点を指示して事件を公正取引委員会に差し戻すことができる。
第八十四条 第二十五条の規定による損害賠償に関する訴が提起されたときは、裁判所は、遅滞なく、公正取引委員会に対し、同条に規定する違反行為に因つて生じた損害の額について、意見を求めなければならない。
前項の規定は、第二十五条の規定による損害賠償の請求が、相殺のために裁判上主張された場合に、これを準用する。
第八十五条 左の各号の一に該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る訴訟
二 第二十五条の規定による損害賠償に係る訴訟
三 第八十九条及び第九十条の罪に係る訴訟
第八十六条 第六十二条第一項、第六十三条第一項(第六十八条第二項で準用する場合を含む。)、第六十七条第一項、第九十七条及び第九十八条に規定する事件は、東京高等裁判所の専属管轄とする。
第八十七条 東京高等裁判所に、第八十五条に掲げる訴訟事件及び前条に掲げる事件のみを取り扱う裁判官の合議体を設ける。
前項の合議体の裁判官の員数は、これを五人とする。
第八十八条 前条第一項に規定する事件に関する裁判に対しては、その裁判において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とする場合又はその判決が法令に違反することを理由とする場合に限り、上告することができる。
第十章 罰則
第八十九条 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者は、これを三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
前項の未遂罪は、これを罰する。
第九十条 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第四条第一項の規定に違反して共同行為をした者
二 第五条の規定に違反して法人その他の団体を設立し、若しくは組織し、又はこれらの団体に加入した者
三 第六条第一項の規定に違反して協定又は契約をした者
四 第四十八条第三項又は第五十四条の審決が確定した後においてこれに従わない者
第九十一条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
一 第六条第三項又は第四項の規定に違反して協定又は契約をした者
二 第九条第一項の規定に違反して持株会社を設立した者
三 第十条第一項又は第十一条第一項、第二項若しくは第四項の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
四 第十二条第一項又は同条第二項の規定で準用する第十一条第四項の規定に違反して社債を取得し、又は所有した者
五 第十三条の規定に違反して役員の地位に就いた者
六 第十四条第一項から第三項までの規定に違反して株式を取得し、同条第四項の規定に違反して届出をせず、又は同条第五項の規定による公正取引委員会の命令が確定した後においてこれに従わない者
七 第十六条第一項の規定に違反して他の会社の営業の全部若しくは一部の譲受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約をした者
八 第十七条の規定に違反した者
第九十二条 前三条の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第九十三条 第三十九条の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
第九十四条 第四十六条第一項第四号又は同条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、六月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
第九十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第八十九条、第九十条、第九十一条第一号から第四号まで、若しくは第六号から第八号まで又は第九十四条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第九十六条 第八十九条及び第九十条の罪は、公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。
前項の告発は、文書を以てこれを行う。
公正取引委員会は、第一項の告発をするに当り、その告発に係る犯罪について、第百条第一項第一号の宣告をすることを相当と認めるときは、その旨を前項の文書に記載することができる。
第一項の告発は、公訴の提起があつた後は、これを取り消すことができない。
第九十七条 第四十八条第三項又は第五十四条の審決に違反した者は、これを五万円以下の過料に処する。但し、その行為につき刑を科するべきときは、この限りでない。
第九十八条 第六十七条第一項の規定による裁判に違反した者は、これを三万円以下の過料に処する。
第九十九条 左の各号の一に該当する者は、これを五百円以下の過料に処する。
一 第四十条の規定による公正取引委員会の処分に違反して出頭せず、報告、情報若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告、情報若しくは資料を提出した者
二 第四十六条第一項第一号又は同条第二項の規定による事件関係人又は参考人に対する処分に違反して出頭せず、陳述をせず、虚偽の陳述をし、又は報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者
三 第四十六条第一項第二号又は同条第二項の規定による鑑定人に対する処分に違反して、出頭せず、鑑定をせず、又は虚偽の鑑定をした者
四 第四十六条第一項第三号又は同条第二項の規定による物件の所持者に対する処分に違反して物件を提出しない者
第百条 第八十九条又は第九十条の場合において、裁判所は、情状により、刑の言渡と同時に、左に掲げる宣告をすることができる。但し、第一号の宣告をするのは、その特許権又は特許発明の実施権が、犯人に属している場合に限る。
一 違反行為に供せられた特許権の特許又は特許発明の実施権は取り消されるべき旨
二 判決確定後六箇月以上三年以下の期間、政府との間に契約をすることができない旨
前項第一号の宣告をした判決が確定したときは、裁判所は、判決の謄本を特許標準局長官に送付しなければならない。
前項の規定による判決の謄本の送付があつたときは、特許標準局長官は、その特許権の特許又は特許発明の実施権を取り消さなければならない。
附 則
第百一条 この法律の施行の期日は、各規定について命令を以てこれを定める。
第百二条 各規定施行の際現に存する契約で、当該規定に違反するものは、当該規定の施行の日からその効力を失う。
第百三条 この法律の規定は、企業再建整備法の規定による決定整備計画又は金融機関再建整備法の規定による整備計画に基いて行う事業者の行為には、これを適用しない。
第百四条 第五条の規定施行の際現に存する法人その他の団体で、一手買取及び一手販売の方法による資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の統制又は資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の割当を行うものの処置については、命令を以てこれを定める。
第百五条 第九条の規定施行の際現に存する持株会社の処置については、命令を以てこれを定める。
第百六条 第九条、第十条、第十二条、第十四条第一項及び第二項、前条、第百七条並びに第百十条の規定は、東北興業株式会社には、これを適用しない。
第百七条 金融業以外の事業を営む会社が、第十条又は第十二条の規定施行の際現に当該規定に反して所有する他の会社の株式又は社債の処置については、命令を以てこれを定める。
第百八条 金融業を営む会社が、第十一条又は第十二条の規定施行の際現に当該規定に反して所有する他の会社の株式又は社債の処置については、命令を以てこれを定める。
第百九条 第十三条の規定施行の際現に同条第一項の規定に反して役員の地位を兼ねている者は、同条の規定施行の日から九十日以内に、何れか一の地位を除いて他の地位を辞さなければならない。
第十三条の規定施行の際現に四以上の会社の役員の地位を占めている者は、同条の規定施行の日から九十日以内に、何れか三の地位を除いて他の地位を辞さなければならない。
第百十条 第十四条の規定施行の際現に同条の規定に反して所有されている株式の処置については、命令を以てこれを定める。
第百十一条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第百九条の規定に違反した者
二 第百四条、第百五条、第百七条、第百八条又は前条の規定に基く命令に違反した者
第百十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、前条第二号の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。
第百十三条 公正取引委員会の委員長及び委員は、持株会社整理委員会又は証券処理調整協議会の会議に出席して意見を述べることができる。
第百十四条 公正取引委員会の第一期の委員の任期は、内閣総理大臣の定めるところにより、そのうちの一人については一年、二人については二年、一人については三年、二人については四年、一人については五年とする。