執行官法
法令番号: 法律第111号
公布年月日: 昭和41年7月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

明治23年以来、執行吏制度は実質的な改善がなされないまま今日に至っている。完全な俸給制の国家公務員への移行など抜本的な改正には課題が残されているものの、現行制度の社会情勢との不適合を改善し、適正円滑な運営を確保するため本法案を提出した。従来の執行吏に代えて執行官を置き、その職務内容や事務処理体制、手数料等を明確化・近代化し、公務員としての性格を強化する。具体的には、執行官を裁判所勤務とし、事務の分配を裁判所が定め、職務上取り扱う金銭を裁判所が保管するなど、職務体制を合理化し、民事裁判の執行その他の事務運営の適正円滑化を図るものである。

参照した発言:
第51回国会 衆議院 法務委員会 第34号

審議経過

第51回国会

衆議院
(昭和41年5月10日)
(昭和41年5月24日)
参議院
(昭和41年5月24日)
衆議院
(昭和41年5月26日)
(昭和41年5月31日)
(昭和41年6月2日)
(昭和41年6月7日)
(昭和41年6月9日)
(昭和41年6月9日)
参議院
(昭和41年6月21日)
(昭和41年6月23日)
(昭和41年6月25日)
(昭和41年6月27日)
(昭和41年6月27日)
執行官法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十一年七月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百十一号
執行官法
(職務)
第一条 執行官は、次の事務を取り扱う。
一 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)、競売法(明治三十一年法律第十五号)その他の法令において執行官が取り扱うべきものとされている事務
二 民事訴訟法の規定による強制執行、競売法の規定による競売その他私法上の権利を実現し又は保全するための手続を構成する物の保管、管理、換価その他の行為に係る事務で、裁判において執行官が取り扱うべきものとされたもの
(事務の処理)
第二条 執行官は、申立によりその事務を取り扱う。ただし、裁判所が、その係属する事件の手続の一部として、直接に執行官に取り扱わせる事務については、この限りでない。
2 執行官の事務の分配は、所属の地方裁判所が定める。ただし、前条第二号の事務のうち裁判において特定の執行官が取り扱うべきものとされた事務は、その執行官が取り扱う。
(除斥)
第三条 執行官は、次の各号に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
一 執行官又はその配偶者が、当事者(刑事事件及び少年の保護事件における被害者を含む。以下同じ。)であるとき、又は当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。
二 執行官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族又は同居の親族であるとき。
三 執行官が当事者の後見人、後見監督人又は保佐人であるとき。
四 執行官がその取り扱うべき事務について当事者の代理人であるとき。
(職務執行区域)
第四条 執行官は、他の法令に別段の定めがある場合を除き、所属の地方裁判所の管轄区域内においてその職務を行なう。
(不服の申立て)
第五条 申立てにより取り扱う事務についてした執行官の事務について執行官の処分(手数料及び費用の額の計算を含む。)に対する不報の申立てについては、民事訴訟法又は競売法に特別の定めがあるものを除くほか、民事訴訟法第五百四十四条第一項に規定する異議の例による。
(金銭の保管)
第六条 執行官が職務の執行として差し押え、又は交付を受けた金銭は、これを受け取るべき者に直ちに交付し、又は供託するものを除き、最高裁判所の規則で定めるところにより、執行官の所属の地方裁判所が保管する。
(手数料及び費用)
第七条 執行官は、その職務の執行につき、手数料を受け、及び職務の執行に要する費用の支払又は償還を受ける。
(手数料を受ける場合)
第八条 執行官は、次の各号に掲げる事務ごとに、その手数料を受けるものとする。
一 文書の送達(執行行為に属するものを除く。)
二 差押え又は仮差押え(民事訴訟法第五百八十六条第二項の規定による照査手続において行なわれるものを除く。)
三 民事訴訟法第五百八十六条第二項の規定による照査手続に係る事務
四 換価のために有体動産の引渡しを受けること。
五 競売又はその他の方法による換価の実施(民事訴訟法第五百八十二条又は第五百八十三条に規定する事務を含む。)
六 特定の動産又は代替物の一定の数量を債務者から取り上げて債権者に引き渡すこと。
七 不動産又は人の居住する船舶について債務者の占有を解いて債権者にその占有を得させること。
八 差押え又は仮差押えをした物を債務者その他の者に保管させた場合におけるその状況の点検
九 差押え又は仮差押えをした物を執行処分の取消しとして債務者その他これを受け取る権利を有する者に引き渡すこと。
十 商法(明治三十二年法律第四十八号)、破産法(大正十一年法律第七十一号)又は会社更生法確(昭和二十七年法律第百七十二号)の規定による財産の調査等に関する援助若しくは立会い又は財産の封印若しくは封印の除去
十一 拒絶証書の作成
十二 債務者が抵当証券の所持人に対して支払をしない旨の証明
十三 民事訴訟法第六百四十三条第三項の規定による不動産の取調べ
十四 前各号の事務以外の第一条第一号に掲げる事務
十五 民事訴訟法第七百三十三条第一項の規定による決定に基づく執行
十六 仮処分その他の保全処分の執行で、第一号から第十三号までのいずれにも該当しないもの
十七 前二号の事務以外の第一条第二号に掲げる事務で、第一号から第十三号までのいずれにも該当しないもの
2 執行官は、前項各号の事務の実施に着手する前であつても、次の各号に掲げる場合においては、当該事務に係る手数料を受ける。
一 送達を行なうべき場所に臨んだ場合において、執行官の責めに帰することができない事由によつて送達を実施することができなかつたとき。
二 前項第二号から第十二号まで及び第十四号から第十六号までに掲げる事務について、競売の日時及び場所の公告その他最高裁判所の規則で定める当該事務の実施に必要な準備行為をした後において、民事訴訟法第五百五十条に規定する事由又は申立ての取下げその他当事者に存する事由により、その実施を取りやめたとき。
(手数料の額)
第九条 前条第一項第一号から第十六号までの事務に係る手数料の額は、事務の内容、当事者の受ける利益、物価の状況、一般賃金事情その他一切の事情を考慮して、最高裁判所の規則で定める。
2 前条第一項第十七号の事務に係る手数料の額は、裁判において当該事務を執行官が取り扱うべきものとした裁判所が定める。
(費用の種類)
第十条 執行官が支払又は償還を受ける費用は、次のとおりとする。
一 郵便料及び電信電話料
二 公告の費用
三 民事訴訟法第五百三十七条に規定する立会人の日当及び旅費
四 鑑定人の日当、旅費、宿泊料及び報酬
五 技術者及び労務者の手当
六 民事訴訟法第五百八十二条又は第五百八十三条に規定する事務を行なうための費用
七 物の運搬、保管、監守及び保存の費用
八 果実収穫の費用
九 官庁その他の公の団体から証明を受ける費用
十 物の現況を記録するために撮影する写真の費用
十一 民事訴訟法第五百九十三条の規定により執行裁判所に差し出すべき届書の作成の費用
十二 執行官の旅費及び宿泊料
2 前項第三号に規定する日当及び旅費並びに同項第四号に規定する日当、旅費及び宿泊料は、最高裁判所の規則で定める場合に執行官が支給するこれらの費用とする。
3 執行官の旅費及び宿泊料は、執行官がその勤務する裁判所から一キロメートル以上の地においてその職務を行なう場合及び執行官がその職務を行なうために宿泊を要する場合におけるこれらの費用とする。
(費用の額)
第十一条 前条第一項第三号、第四号、第十一号及び第十二号の費用(鑑定人の報酬を除く。)の額は、最高裁判所の規則で定めるところによる。
2 前項に規定する費用を除くほか、費用の額は、実費の額による。
(支払義務者)
第十二条 執行官の手数料及び職務の執行に要する費用は、執行官が申立てにより取り扱う事務については申立人が、裁判所が直接に執行官に取り扱わせる事務については裁判所が、支払い又は償還する。ただし、法律に別段の定めがあるときは、その定めによる。
(手数料の弁済期)
第十三条 執行官は、各個の事務を完了した後又はこれを続行することを要しないこととなつた後でなければ、その事務についての手数料を受けることができない。ただし、第八条第二項に規定する場合又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(時効)
第十四条 手数料を受け、及び立て替えた費用の償還を受ける権利は、裁判所が支払い又は償還する場合を除き、五年間行なわないときは、時効により消滅する。
(予納)
第十五条 執行官は、申立てにより取り扱う事務については、最高裁判所の規則で定めるところにより、申立人に手数料及び職務の執行に要する費用の概算額を予納させることができる。ただし、申立人が訴訟上の救助を受けた者であるときは、その限りでない。
2 前項の概算額の予納は、執行官の所属の地方裁判所にするものとする。
3 申立人が第一項の概算額を予納しないときは、執行官は、申立てを却下することができる。
4 申立人は、予納した金額の限度において、手数料及び費用の支払又は償還の義務を免れる。この場合においては、執行官は、予納を受けた裁判所から手数料及び費用の支払又は償還を受ける。
(訴訟上の救助を受けた者の申立てによる場合の特例)
第十六条 訴訟上の救助を受けた者の申立てによる強制執行についての手数料及び職務の執行に要した費用で、債務者から取り立てることができなかつたものがあるときは、執行官の請求により、国庫がこれを支給する。
(執行記録の保管等)
第十七条 執行記録その他執行官が職務上作成する書類は、執行官が保管する。
2 当事者その他の利害関係人は、前項の書類その他執行官が職務上保管する書類の閲覧を求めることができる。
3 前項の規定により書類の閲覧を求めるには、最高裁判所の規則で定めるところにより、執行官に手数料を納めなければならない。ただし、当事者が未済の執行記録の閲覧を求める場合は、この限りでない。
(謄本等の作成)
第十八条 当事者その他の利害関係人は、執行記録その他執行官が職務上作成する書類の謄本若しくは抄本又は執行官が取り扱つた事務に関する証明書の交付を求めることができる。
2 前項の規定により書類の交付を求めるには、最高裁判所の規則で定めるところにより、執行官に書記料を納めなければならない。
(援助)
第十九条 執行官は、その職務を行なうについて特に必要があるときは、所属の地方裁判所の許可を受けて、他の執行官の援助を求めることができる。
2 前項の場合においては、各執行官は、それぞれその手数料を受け、及び職務の執行に要する費用につき、各別にその支払又は償還を受けるものとする。
(職務の代行)
第二十条 地方裁判所は、執行官の事故その他の理由により必要があるときは、最高裁判所の規則で定めるところにより、裁判所書記官に執行官の職務の全部又は一部を行なわせることができる。
2 前項の場合においては、執行官の受けるべき手数料、第十条第一項第十一号及び第十二号の費用、第十八条第二項の書記料並びにその他の費用の償還金は、国庫の収入とする。
(国庫補助金)
第二十一条 執行官は、一年間に収入した手数料が政令で定める額に達しないときは、国庫からその不足額の支給を受ける。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(執達吏規則等の廃止)
第二条 執達吏規則(明治二十三年法律第五十一号)及び執達吏手数料規則(明治二十三年法律第五十二号)は、廃止する。
(裁判所法の一部改正)
第三条 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)の一部を次のように改正する。
第六十二条の見出し、第一項及び第三項から第五項までの規定中「執行吏」を「執行官」に改め、同条第二項を削る。
第六十三条第三項中「執行吏」を「執行官」に改める。
第六十五条中「家庭裁判所調査官補」の下に「、執行官」を加える。
(民事訴訟法の一部改正)
第四条 民事訴訟法の一部を次のように改正する。
第九十八条第一項中「執行吏」を「執行官」に改める。
第百二十条第一号中「裁判費用」の下に「並執行官ノ手数料及其ノ職務ノ執行ニ要スル費用」を加え、同条第二号中「執行吏及」を削る。
第百二十三条中「執行吏」を「執行官」に改め、「報酬」の下に「又ハ手数料」を加える。
第百六十二条第一項中「執行吏」を「執行官」に改める。
第百七十四条を次のように改める。
第百七十四条 削除
第五百三十一条第一項中「執行吏」を「執行官」に改め、同条第二項及び第三項を削る。
第五百三十三条中「債権者執行力アル正本ヲ交付シテ強制執行ヲ委任シタルトキハ執行吏ハ特別ノ委任ヲ受ケザルトキト雖モ」を「適法ナル強制執行ノ申立アリタルトキハ執行官ハ」に改める。
第五百三十四条を次のように改める。
第五百三十四条 執行官ハ執行力アル正本ヲ所持スルニ非ザレバ債務者及ビ第三者ニ対シ強制執行及ビ前条ニ掲ゲタル行為を為スコトヲ得ズ
第五百三十五条第一項及び第五百三十六条から第五百三十八条までの規定中「執行吏」を「執行官」に改める。
第五百三十九条第一項中「夜間及ビ日曜日並ニ一般ノ祝祭日ニハ」を「日曜日其他ノ一般ノ休日又ハ午後七時ヨリ翌日ノ午前七時マデノ間ニ於テハ」に改める。
第五百四十条第一項及び第二項第六号中「執行吏」を「執行官」に改める。
第五百四十一条第一項中「執行吏」を「執行官」に改め、同条第二項中「第百六十七条、」を削る。
第五百四十四条第一項中「執行吏」を「執行官」に改め、同条第二項を次のように改める。
執行官ガ強制執行ノ申立ヲ却下シタル場合ニ於ケル異議ニ付テモ亦前項ト同様トス
第五百六十六条第一項及び第三項、第五百七十条第二項及び第三項並びに第五百七十一条中「執行吏」を「執行官」に改める。
第五百七十二条中「執行吏」を「執行官」に改め、「債権者又ハ裁判所ノ特別委任ヲ要セズシテ」を削る。
第五百七十三条、第五百七十四条第二項、第五百七十九条から第五百八十三条まで、第五百八十四条第一項及び第五百八十五条中「執行吏」を「執行官」に改める。
第五百八十六条第一項中「執行吏」を「執行官」に改め、同条第二項を次のように改め、同条第三項を削る。
既ニ差押ヲ為シタル後更ニ強制執行ノ申立アリタル場合ニ於テハ執行官ハ差押調書ニ基キ物ノ照査ヲ為シ未ダ差押ニ係ラザル物アルトキハ之ヲ差押へ差押調書ヲ作リ前ノ差押調書ニ之ヲ添附ス可シ若シ差押フべキ物アラザルトキハ照査調書ヲ作リ前ノ差押調書ニ之ヲ添附ス可シ
第五百八十八条、第五百九十条及び第五百九十一条中「執行吏」を「執行官」に改める。
第五百九十三条第一項中「其売得金ヲ供託ス可シ」を「執行官ハ其事情ヲ執行裁判所ニ届出ヅ可ク其届出書ニハ執行手続ニ関スル書類ヲ添附ス可シ」に改め、同条第三項を削る。
第六百三条中「執行吏」を「執行官」に改める。
第六百十五条第一項中「債権者ノ委任シタル執行吏」を「執行官」に改める。
第六百二十条第一項中「執行吏」を「執行官」に改める。
第六百二十六条中「金額ヲ供託シタル」を「事情ヲ届出デタル」に改める。
第六百三十条第二項及び第三項並びに第六百三十九条第四項中「仍ホ」を削る。
第六百四十三条第一項第三号中「反別若クハ坪数」を「地積」に改め、同項第四号中「建坪」を「床面積」に改め、同条第三項中「執行吏」を「執行官」に改める。
第六百五十五条中「鑑定人ヲシテ不動産ノ評価ヲ為サシメ其評価額ヲ以テ最低競売価額ト為ス」を「適当ト認ムル者ヲシテ不動産ノ評価ヲ為サシメ之ヲ斟酌シテ最低競売価額ヲ定ム可シ」に改める。
第六百五十八条第五号中「、日時及び競売ヲ為ス可キ執行吏ノ氏名並ニ住所」を「及び日時」に改める。
第六百五十九条第二項、第六百六十二条ノ二第三項、第六百六十三条、第六百六十四条、第六百六十六条第一項、第六百六十七条第三項、第六百六十八条、第六百六十九条第二項、第六百八十七条第三項、第七百三条第一項、第七百四条第一項及び第二項、第七百十一条第二項、第七百三十条、第七百三十一条第一項及び第三項から第五項まで並びに第七百五十条第四項中「執行吏」を「執行官」に改める。
(競売法の一部改正)
第五条 競売法の一部を次のように改正する。
第三条第一項中「委任」を「申立」に、「区裁判所」を「地方裁判所」に、「執達吏」を「執行官」に改め、同条第二項中「委任」を「申立」に改める。
第四条及び第六条中「委任」を「申立」に、「執達吏」を「執行官」に改める。
第七条第三項第一号中「競売委任者」を「競売申立人」に改め、同項第五号を削り、同条第四項中「委任者」を「申立人」に改める。
第十二条中「執達吏」を「執行官」に改める。
第十四条第一項中「執達吏」を「執行官」に改め、同項第一号中「競売委任者」を「競売申立人」に改め、同条第二項中「委任者」を「申立人」に、「委任状」を「競売ノ申立書」に改め、同条第三項中「執達吏」を「執行官」に、「委任者」を「申立人」に改める。
第十五条中「執達吏」を「執行官」に改める。
第十六条中「執達吏」を「執行官」に、「委任者」を「申立人」に改める。
第十七条第一項中「執達吏」を「執行官」に、「区裁判所」を「地方裁判所」に改め、同条第二項中「裁判ハ」の下に「異議ノ」を加える。
第十九条中「執達吏」を「執行官」に改める。
第二十条中「執達吏」を「執行官」に、「委任者」を「競売申立人」に改める。
第二十一条第一項中「委任」を「申立」に、「取消ス」を「取下グル」に改め、同条第二項中「委任者」を「申立人」に改める。
第二十二条第一項中「区裁判所」を「地方裁判所」に改める。
第二十五条第二項中「判事」を「裁判官」に改める。
第二十八条を次のように改める。
第二十八条 裁判所ハ適当ト認ムル者ヲシテ競売ニ付スべキ不動産ノ評価ヲ為サシメ之ヲ斟酌シテ最低競売価額ヲ定ムべシ
第三十六条及び第四十条第一項中「区裁判所」を「地方裁判所」に改める。
(執行吏の身分についての経過措置)
第六条 この法律の施行の際現に執行吏に任命されている者は、別に辞令を発せられないときは、執行官に任命され、かつ、現にその者の属する裁判所に勤務することを命ぜられたものとみなす。
(執行吏の取り扱つた事務等についての経過措置)
第七条 この法律及びこの法律による改正後の裁判所法、民事訴訟法、競売法その他の法律の規定は、別段の定めがある場合を除き、執行吏がこの法律の施行前に職務を行なうべき命令又は委任を受けた事務についても適用する。ただし、旧執達吏規則又はこの法律による改正前の法律の規定によつて生じた効力を妨げない。
2 この法律の施行前に旧執達吏規則又はこの法律による改正前の法律の規定によつて執行吏がした強制執行その他の職務行為は、この法律及びこの法律による改正後の法律の適用については、これらの法律の相当規定によつて執行官がしたものとみなす。
3 この法律の施行前に当事者その他の関係人が旧執達吏規則又はこの法律による改正前の法律の規定によつてした執行吏に対する委任その他の行為は、この法律及びこの法律による改正後の法律の適用については、これらの法律の相当規定によつてした執行官に対する申立てその他の行為とみなす。
4 前二項の規定は、この法律の施行前に旧執達吏規則の規定により執行吏の職務を行なう裁判所書記官がした職務行為及びこれに対して当事者その他の関係人がした行為について準用する。
(手数料及び立替金についての経過措置)
第八条 この法律の施行前に完了し又は続行することを要しないこととなつた各個の事務及びこの法律の施行前に着手されこの法律の施行の際まだ完了していない各個の事務に係る手数料及び立替金の額については、なお従前の例による。この法律の施行前に第八条第二項各号に掲げる場合に該当した各個の事務に係る手数料及び立替金の額についても、同様とする。
2 この法律の施行前に、執行吏又は旧執達吏規則の規定により執行吏の職務を行なう裁判所書記官が、旧執達吏手数料規則の規定により予納させた手数料及び立替金は、この法律の適用については、執行官又はこの法律の規定により執行官の職務を行なう裁判所書記官が、この法律の相当規定によつて予納させたものとみなす。
(告知書等の送付についての暫定措置)
第九条 執行官は、当分の間、第一条に定めるもののほか、私法上の法律関係に関する告知書又は催告書の送付の事務を取り扱うものとする。
2 第八条第二項第一号及び第九条第一項の規定は、前項の事務につき執行官が受ける手数料について準用する。
(金銭の保管等についての暫定措置)
第十条 第六条の規定による金銭の保管及び第十五条の予納金の予納については、当分の間、第六条及び第十五条第二項の規定にかかわらず、最高裁判所の規則で別段の定めをすることができる。
2 刑事事件及び少年の保護事件における書類の送達については、当分の間、この法律中手数料に関する規定を適用しない。
(臨時の職務の代行についての暫定措置)
第十一条 執行官は、当分の間、所属の地方裁判所の許可を受けて、この法律の施行前に旧執達吏規則第十一条第一号から第三号までのいずれかに該当した者又はこの法律の施行の際現に執行吏事務処理規則(昭和二十八年最高裁判所規則第二十三号)第十二条第一項の規定による認定を受けている者に、臨時にその職務を代行させることができる。
2 執行官は、前項の規定により職務を代行させたときは、旧執達吏規則第十七条の例により、その職務を代行した者に報酬を支給しなければならない。
(退職後の給付等についての検討)
第十二条 執行官の退職手当及び退職後の年金その他の給付については、引き続き検討が加えられ、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。
(退職後の年金についての暫定措置)
第十三条 前条の退職後の年金に関する措置が講ぜられるまでの間は、執行官は、恩給法の例によつて、国務大臣以外の文官が受ける普通恩給又は増加恩給に相当する恩給を受ける。
2 前項の恩給の年額は、第二十一条の政令で定める額を俸給年額とみなして算出する。ただし、前条の退職手当に関する措置が講ぜられた後の退職に係る前項の恩給の年額については、この限りでない。
(恩給についての経過措置)
第十四条 この法律の施行前に給与事由の生じた旧執達吏規則に基づく恩給については、なお従前の例による。
2 前項の規定によつて従前の例によることとされる恩給は、前条の規定により執行官が受ける恩給とみなす。
3 この法律の施行前に執達吏又は執行吏として在職した者が執行官に任命された場合においては、その者が執達吏又は執行官として在職した期間は、前条の規定の適用については、執行官として在職した期間とみなす。
(民事訴訟費用法の一部改正)
第十五条 民事訴訟費用法(明治二十三年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。
第五条を次のように改める。
第五条 執行官ノ手数料及ビ其職務ノ執行ニ要スル費用ハ執行官法ノ規定ニ従フ
第十六条第一項中「執達吏手数料規則」を「執行官法」に改める。
(民法の一部改正)
第十六条 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第百七十一条中「及ビ執行吏」を削る。
第百七十二条中「、公証人及ビ執行吏」を「及ビ公証人」に改める。
(民法の一部改正に関する経過措置)
第十七条 この法律の施行前に執行を終えた職務に関して受け取つた書類についての執行吏の責任の消滅時効については、前条の規定による民法の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。この法律の施行前に原因たる事件が終了した場合における執行吏の職務に関する債権及びこの法律の施行前に原因たる事件中の各事項が終了した場合におけるその事項に関する債権についても、同様とする。
(商法施行法の一部改正)
第十八条 商法施行法(明治三十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第百十八条第一項中「執達吏」を「執行官」に改める。
(訴訟費用等臨時措置法の一部改正)
第十九条 訴訟費用等臨時措置法(昭和十九年法律第二号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
訴訟費用臨時措置法
第一条中「、刑事訴訟費用、執行吏手数料等」を「及刑事訴訟費用」に改める。
第四条から第六条までを削る。
(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の一部改正)
第二十条 国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和二十二年法律第百九十四号)の一部を次のように改正する。
第八条中「第四号」を「第五号」に改める。
(公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法の一部改正)
第二十一条 公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法(昭和二十四年法律第五十七号)の一部を次のように改正する。
第一条第一項中「訴訟費用等臨時措置法」を「訴訟費用臨時措置法」に改める。
(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法の一部改正)
第二十二条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(昭和二十七年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。
第五条中「債権者の委任した執行吏」を「執行官」に改める。
(元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等の特別措置に関する法律の一部改正)
第二十三条 元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等の特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
第十一条第一項中「又は執行吏」を「、執行吏又は執行官」に改める。
(商法等の一部改正)
第二十四条 次に掲げる法律の規定中「執行吏」を「執行官」に改める。
一 商法第三百九十条第二項
二 鉄道抵当法(明治三十八年法律第五十三号)第八十三条第三項
三 破産法第百八十六条第一項及び第百八十八条
四 抵当証券法(昭和六年法律第十五号)第二十七条第二項
五 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第六十九条の二
六 検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)第六条第六号
七 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十三条の三第二項
八 裁判所職員定員法(昭和二十六年法律第五十三号)第二条
九 会社更生法第四十一条第三項及び第百七十七条
十 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律(昭和三十二年法律第九十四号)第三条第二項及び第三項、第五条第一項、第六条、第七条、第十条第三項、第十一条第三項、第十七条、第二十一条第二項、第二十三条、第二十四条並びに第二十六条第二項
十一 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百九十条
十二 国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第二条第十三号及び第五十五条第三号
(国民年金法の一部改正)
第二十五条 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第二項第三号中「執行吏規則(明治二十三年法律第五十一号)に基く」を「執行官法(昭和四十一年法律第百十一号)附則第十三条の規定に基づく」に改める。
(通算年金通則法等の一部改正)
第二十六条 次に掲げる法律の規定中「執達吏規則(明治二十三年法律第五十一号)」を「執行官法(昭和四十一年法律第百十一号)附則第十三条の規定」に改める。
一 通算年金通則法(昭和三十六年法律第百八十一号)第四条第二項第二号ホ
二 児童扶養手当法(昭和三十六年法律第二百三十八号)第三条第二項第十二号
三 特別児童扶養手当法(昭和三十九年法律第百三十四号)第三条第二項第十二号
(国民年金法等の一部改正に関する経過措置)
第二十七条 旧執達吏規則に基づく年金たる給付は、国民年金法、通算年金通則法、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の適用については、附則第十三条の規定に基づく年金たる給付とみなす。
(読替規定)
第二十八条 他の法律中「執達吏規則」とあるのは「執行官法」と、「執達吏」又は「執行吏」とあるのは「執行官」に読み替える。
内閣総理大臣 佐藤栄作
法務大臣 石井光次郎
大蔵大臣 福田赳夫
厚生大臣 鈴木善幸
通商産業大臣 三木武夫
運輸大臣 中村寅太
自治大臣 永山忠則