下請代金支払遅延等防止法
法令番号: 法律第120号
公布年月日: 昭和31年6月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

親事業者の下請事業者に対する代金支払遅延等の不公正な取引行為について、独占禁止法等による防止措置を講じてきたが、経済情勢が好転した現在でも十分な改善が見られていない。このような親事業者の不公正な行為は、中小下請事業者の経営を圧迫し、日本経済の健全な発達を阻害する。下請事業者の利益保護のため、より積極的な防止措置が必要である。政府関係機関がこれまでの経験を基に対策を研究した結果、独占禁止法に加えて別個の法制を整備する必要があるとの結論に達し、本法案を提出することとした。

参照した発言:
第24回国会 衆議院 本会議 第23号

審議経過

第24回国会

参議院
(昭和31年3月15日)
衆議院
(昭和31年3月16日)
(昭和31年3月20日)
参議院
(昭和31年3月23日)
衆議院
(昭和31年4月20日)
(昭和31年4月24日)
(昭和31年4月25日)
(昭和31年4月26日)
参議院
(昭和31年5月15日)
(昭和31年5月16日)
衆議院
(昭和31年6月3日)
参議院
(昭和31年6月3日)
下請代金支払遅延等防止法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年六月一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百二十号
下請代金支払遅延等防止法
(目的)
第一条 この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによつて、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品又はその半製品、部品、附属品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託することをいう。
2 この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。
3 この法律で「親事業者」とは、資本の額又は出資の総額が一千万円をこえる法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本の額若しくは出資の総額が一千万円以下の法人たる事業者に対し製造委託又は修理委託をするものをいう。
4 この法律で「下請事業者」とは、個人又は資本の額若しくは出資の総額が一千万円以下の法人たる事業者であつて、親事業者から製造委託又は修理委託を受けるものをいう。
5 この法律で「下請代金」とは、親事業者が製造委託又は修理委託をした場合に下請事業者の給付に対し支払うべき代金をいう。
(書面の交付)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、直ちに、下請事業者の給付の内容及び下請代金の額を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
(親事業者の遵守事項)
第四条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。
二 下請事業者の給付を受領した後、下請代金を遅滞なく支払わないこと。
三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
四 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
(書類の作成及び保存)
第五条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところにより、下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払その他の事項について記載した書類を作成し、これを保存しなければならない。
(中小企業庁長官の請求)
第六条 中小企業庁長官は、親事業者が第四条第一号若しくは第二号に掲げる行為をしているかどうか又は同条第三号若しくは第四号に掲げる行為をしたかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
(勧告等)
第七条 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一号又は第二号に掲げる行為をしていると認めるときは、その親事業者に対し、すみやかにその下請事業者の給付を受領し又はその下請代金を支払うべきことを勧告することができる。
2 公正取引委員会は、親事業者が第四条第三号又は第四号に掲げる行為をしたと認めるときは、その親事業者に対し、すみやかにその減じた額を支払い又はその下請事業者の給付に係る物を再び引き取るべきことを勧告することができる。
3 公正取引委員会は、前二項の規定による勧告をした場合において親事業者がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
第八条 公正取引委員会が前条第一項又は第二項の規定による勧告をした場合において、親事業者がその勧告に従つたときは、親事業者のその勧告に係る行為については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第四十八条、第四十九条、第五十三条の三及び第五十四条の規定は、適用しない。
(報告及び検査)
第九条 公正取引委員会は、親事業者の下請事業者に対する製造委託又は修理委託に関する取引(以下単に「取引」という。)を公正ならしめるため必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 中小企業庁長官は、下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 親事業者又は下請事業者の営む事業を所管する主務大臣は、中小企業庁長官の第六条の規定による調査に協力するため特に必要があると認めるときは、所管事業を営む親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員にこれらの者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
4 前三項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
5 第一項から第三項までの規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(罰則)
第十条 第五条の規定による書類を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類を作成したときは、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、三万円以下の罰金に処する。
第十一条 第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。
第十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。
2 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を次のように改正する。
第三十五条の四に次の一号を加える。
五 下請代金支払遅延等防止法の施行に関すること。
内閣総理大臣 鳩山一郎
大蔵大臣 一万田尚登
厚生大臣 小林英三
農林大臣 河野一郎
通商産業大臣 石橋湛山
運輸大臣 吉野信次