国家総動員法
法令番号: 法律第五十五號
公布年月日: 昭和13年4月1日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國家總動員法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
外務大臣 廣田弘毅
海軍大臣 米內光政
司法大臣 鹽野季彥
陸軍大臣 杉山元
遞信大臣 永井柳太郞
大藏大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬賴寧
商工大臣 吉野信次
鐵道大臣 中島知久平
拓務大臣 大谷尊由
文部大臣兼厚生大臣 侯爵 木戶幸一
內務大臣 末次信正
法律第五十五號
國家總動員法
第一條 本法ニ於テ國家總動員トハ戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ國防目的達成ノ爲國ノ全力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル樣人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ
第二條 本法ニ於テ總動員物資トハ左ニ揭グルモノヲ謂フ
一 兵器、艦艇、彈藥其ノ他ノ軍用物資
二 國家總動員上必要ナル被服、食糧、飮料及飼料
三 國家總動員上必要ナル醫藥品、醫療機械器具其ノ他ノ衞生用物資及家畜衞生用物資
四 國家總動員上必要ナル船舶、航空機、車輛、馬其ノ他ノ輸送用物資
五 國家總動員上必要ナル通信用物資
六 國家總動員上必要ナル土木建築用物資及照明用物資
七 國家總動員上必要ナル燃料及電力
八 前各號ニ揭グルモノノ生產、修理、配給又ハ保存ニ要スル原料、材料、機械器具、裝置其ノ他ノ物資
九 前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル國家總動員上必要ナル物資
第三條 本法ニ於テ總動員業務トハ左ニ揭グルモノヲ謂フ
一 總動員物資ノ生產、修理、配給、輸出、輸入又ハ保管ニ關スル業務
二 國家總動員上必要ナル運輸又ハ通信ニ關スル業務
三 國家總動員上必要ナル金融ニ關スル業務
四 國家總動員上必要ナル衞生、家畜衞生又ハ救護ニ關スル業務
五 國家總動員上必要ナル敎育訓練ニ關スル業務
六 國家總動員上必要ナル試驗硏究ニ關スル業務
七 國家總動員上必要ナル情報又ハ啓發宣傳ニ關スル業務
八 國家總動員上必要ナル警備ニ關スル業務
九 前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル國家總動員上必要ナル業務
第四條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民ヲ徵用シテ總動員業務ニ從事セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ妨ゲズ
第五條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民及帝國法人其ノ他ノ團體ヲシテ國又ハ地方公共團體ノ行フ總動員業務ニ付協力セシムルコトヲ得
第六條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ從業者ノ使用、雇入若ハ解雇又ハ賃金其ノ他ノ勞働條件ニ付必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第七條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勞働爭議ノ豫防若ハ解決ニ關シ必要ナル命令ヲ爲シ又ハ作業所ノ閉鎖、作業若ハ勞務ノ中止其ノ他ノ勞働爭議ニ關スル行爲ノ制限若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第八條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ノ生產、修理、配給、讓渡其ノ他ノ處分、使用、消費、所持及移動ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第九條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ輸出若ハ輸入ノ制限若ハ禁止ヲ爲シ、輸出若ハ輸入ヲ命ジ、輸出稅若ハ輸入稅ヲ課シ又ハ輸出稅若ハ輸入稅ヲ增課若ハ減免スルコトヲ得
第十條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ヲ使用又ハ收用スルコトヲ得
第十一條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ會社ノ設立、資本ノ增加、合併、目的變更、社債ノ募集若ハ第二囘以後ノ株金ノ拂込ニ付制限若ハ禁止ヲ爲シ、會社ノ利益金ノ處分、償却其ノ他經理ニ關シ必要ナル命令ヲ爲シ又ハ銀行、信託會社、保險會社其ノ他勅令ヲ以テ指定スル者ニ對シ資金ノ運用ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十二條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ總動員業務タル事業ヲ營ム會社ノ當該事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲ノ社債ノ募集又ハ資本ノ增加ニ付商法第二百條又ハ第二百十條ノ規定ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第十三條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務タル事業ニ屬スル工場、事業場、船舶其ノ他ノ施設又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル施設ノ全部又ハ一部ヲ管理、使用又ハ收用スルコトヲ得
政府ハ前項ニ揭グルモノヲ使用又ハ收用スル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ從業者ヲ供用セシメ又ハ當該施設ニ於テ現ニ實施スル特許發明若ハ登錄實用新案ヲ實施スルコトヲ得
政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務ニ必要ナル土地又ハ家屋其ノ他ノ工作物ヲ管理、使用又ハ收用スルコトヲ得
第十四條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ鑛業權、砂鑛權及水ノ使用ニ關スル權利ヲ使用又ハ收用スルコトヲ得
第十五條 前二條ノ規定ニ依リ收用シタルモノ不用ニ歸シタル場合ニ於テ收用シタル時ヨリ十年內ニ拂下グルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ舊所有者若ハ舊權利者又ハ其ノ一般承繼人ハ優先ニ之ヲ買受クルコトヲ得
第十六條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若ハ改良ヲ制限若ハ禁止シ又ハ總動員業務タル事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第十七條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務タル同種若ハ異種ノ事業ノ事業主間ニ於ケル當該事業ニ關スル統制協定ノ設定、變更若ハ廢止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制協定ノ設定、變更若ハ取消ヲ命ジ又ハ統制協定ノ加盟者若ハ其ノ統制協定ニ加盟セザル事業主ニ對シ其ノ統制協定ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十八條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務タル同種又ハ異種ノ事業ノ事業主ニ對シ當該事業ノ統制ヲ目的トスル組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ組合ハ法人トス
第一項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル者其ノ設立ヲ爲サザルトキハ政府ハ定款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ組合成立シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ當該組合ノ組合員タル資格ヲ有スル者ヲシテ其ノ組合ノ組合員タラシムルコトヲ得
政府ハ第一項ノ組合ニ對シ其ノ組合員ノ營業ニ關スル統制規程ノ設定、變更若ハ廢止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制規程ノ設定若ハ變更ヲ命ジ又ハ其ノ組合員ニ對シ組合ノ統制規程ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得
第一項ノ組合ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ價格、運送賃、保管料、保險料、賃貸料又ハ加工賃ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ新聞紙其ノ他ノ出版物ノ揭載ニ付制限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
政府ハ前項ノ制限又ハ禁止ニ違反シタル新聞紙其ノ他ノ出版物ニシテ國家總動員上支障アルモノノ發賣及頒布ヲ禁止シ之ヲ差押フルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ併セテ其ノ原版ヲ差押フルコトヲ得
第二十一條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民及帝國臣民ヲ雇傭若ハ使用スル者ヲシテ帝國臣民ノ職業能力ニ關スル事項ヲ申吿セシメ又ハ帝國臣民ノ職業能力ニ關シ檢査スルコトヲ得
第二十二條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ學校、養成所、工場、事業場其ノ他技能者ノ養成ニ適スル施設ノ管理者又ハ養成セラルベキ者ノ雇傭主ニ對シ國家總動員上必要ナル技能者ノ養成ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ノ生產、販賣又ハ輸入ヲ業トスル者ヲシテ當該物資又ハ其ノ原料若ハ材料ノ一定數量ヲ保有セシムルコトヲ得
第二十四條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員業務タル事業ノ事業主又ハ戰時ニ際シ總動員業務ヲ實施セシムベキ者ヲシテ戰時ニ際シ實施セシムベキ總動員業務ニ關スル計畫ヲ設定セシメ又ハ當該計畫ニ基キ必要ナル演練ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十五條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ總動員物資ノ生產若ハ修理ヲ業トスル者又ハ試驗硏究機關ノ管理者ニ對シ試驗硏究ヲ命ズルコトヲ得
第二十六條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物資ノ生產又ハ修理ヲ業トスル者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ一定ノ利益ヲ保證シ又ハ補助金ヲ交付スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ政府ハ其ノ者ニ對シ總動員物資ノ生產若ハ修理ヲ爲サシメ又ハ國家總動員上必要ナル設備ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十七條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第八條、第十條、第十三條若ハ第十四條ノ規定ニ依ル處分、第九條ノ規定ニ依ル輸出若ハ輸入ノ命令、第十一條ノ規定ニ依ル資金ノ融通若ハ有價證券ノ應募、引受若ハ買入ノ命令又ハ第十六條ノ規定ニ依ル設備ノ新設、擴張若ハ改良ノ命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
第二十八條 政府ハ第二十二條、第二十三條又ハ第二十五條ノ規定ニ依リ命令ヲ爲ス場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償シ又ハ補助金ヲ交付ス
第二十九條 前二條ノ規定ニ依ル補償ノ金額及第十五條ノ規定ニ依ル拂下ノ價額ハ總動員補償委員會ノ議ヲ經テ政府之ヲ定ム
總動員補償委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條 政府ハ第二十六條又ハ第二十八條ノ規定ニ依リ利益ノ保證又ハ補助金ノ交付ヲ受クル事業ヲ監督シ之ガ爲必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 政府ハ國家總動員上必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
第三十二條 第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ爲シ又ハ爲サントシタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ輸出又ハ輸入ヲ爲シ又ハ爲サントシタル物ニシテ犯人ノ所有シ又ハ所持スルモノハ之ヲ沒收スルコトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵スルコトヲ得
第三十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第七條ノ規定ニ依ル命令又ハ制限若ハ禁止ニ違反シタル者
二 第八條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
三 第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ爲サザル者
四 第十條ノ規定ニ依ル總動員物資ノ使用又ハ收用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
五 第十三條ノ規定ニ依ル施設、土地若ハ工作物ノ管理、使用若ハ收用又ハ從業者ノ供用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
六 第十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第三十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十一條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令ニ違反シタル者
二 第十六條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令ニ違反シタル者
三 第十七條若ハ第十八條第五項ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ統制協定若ハ統制規程ヲ設定、變更若ハ廢止シ又ハ第十七條若ハ第十八條第五項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
四 第二十三條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ保有ヲ爲サザル者
五 第二十六條ノ規定ニ違反シ生產、修理又ハ設備ヲ爲サザル者
第三十五條 前三條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第三十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第四條ノ規定ニ依ル徵用ニ應ゼズ又ハ同條ノ規定ニ依ル業務ニ從事セザル者
二 第六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第三十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第二十二條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
二 第二十四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ計畫ノ設定又ハ演練ヲ爲サザル者
三 第二十五條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ試驗硏究ヲ爲サザル者
第三十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十八條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ組合ノ設立ヲ爲サザル者
二 第三十條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタル者
三 第三十一條ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
第三十九條 第二十條第一項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ發行人及編輯人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ發行者及著作者ヲ二年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
新聞紙ニ在リテハ編輯人以外ニ於テ實際編輯ヲ擔當シタル者及揭載ノ記事ニ署名シタル者亦前項ニ同ジ
第四十條 第二十條第二項ノ規定ニ依ル差押處分ノ執行ヲ妨害シタル者ハ六月以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十一條 前二條ノ罪ニハ刑法併合罪ノ規定ヲ適用セズ
第四十二條 第三十一條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十三條 第二十一條ノ規定ニ違反シテ申吿ヲ怠リ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ處ス
第四十四條 總動員業務ニ從事シタル者其ノ業務遂行ニ關シ知得シタル當該官廳指定ノ總動員業務ニ關スル官廳ノ機密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
公務員又ハ其ノ職ニ在リタル者職務上知得シタル當該官廳指定ノ總動員業務ニ關スル官廳ノ機密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
第四十五條 公務員又ハ其ノ職ニ在リタル者本法ノ規定ニ依ル職務執行ニ關シ知得シタル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條 第十八條第一項又ハ第三項ノ規定ニ依リ設立シタル組合ノ役員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第四十七條 前條第一項ニ揭グル者ニ對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十八條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十二條乃至第三十四條、第三十六條第二號、第三十七條、第三十八條又ハ第四十三條前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑又ハ科料刑ヲ科ス
第四十九條 前條ノ規定ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ付亦同ジ
本法ノ罰則ハ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル帝國臣民ニモ之ヲ適用ス
第五十條 本法施行ニ關スル重要事項(軍機ニ關スルモノヲ除ク)ニ付政府ノ諮問ニ應ズル爲國家總動員審議會ヲ置ク
國家總動員審議會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軍需工業動員法及昭和十二年法律第八十八號ハ之ヲ廢止ス
本法施行前軍需工業動員法ニ基キテ爲シタル命令又ハ處分ハ之ヲ本法中ノ相當規定ニ基キテ爲シタルモノト看做ス
軍需工業動員法ニ違反シタル者ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国家総動員法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
外務大臣 広田弘毅
海軍大臣 米内光政
司法大臣 塩野季彦
陸軍大臣 杉山元
逓信大臣 永井柳太郎
大蔵大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬頼寧
商工大臣 吉野信次
鉄道大臣 中島知久平
拓務大臣 大谷尊由
文部大臣兼厚生大臣 侯爵 木戸幸一
内務大臣 末次信正
法律第五十五号
国家総動員法
第一条 本法ニ於テ国家総動員トハ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ
第二条 本法ニ於テ総動員物資トハ左ニ掲グルモノヲ謂フ
一 兵器、艦艇、弾薬其ノ他ノ軍用物資
二 国家総動員上必要ナル被服、食糧、飲料及飼料
三 国家総動員上必要ナル医薬品、医療機械器具其ノ他ノ衛生用物資及家畜衛生用物資
四 国家総動員上必要ナル船舶、航空機、車輛、馬其ノ他ノ輸送用物資
五 国家総動員上必要ナル通信用物資
六 国家総動員上必要ナル土木建築用物資及照明用物資
七 国家総動員上必要ナル燃料及電力
八 前各号ニ掲グルモノノ生産、修理、配給又ハ保存ニ要スル原料、材料、機械器具、装置其ノ他ノ物資
九 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル国家総動員上必要ナル物資
第三条 本法ニ於テ総動員業務トハ左ニ掲グルモノヲ謂フ
一 総動員物資ノ生産、修理、配給、輸出、輸入又ハ保管ニ関スル業務
二 国家総動員上必要ナル運輸又ハ通信ニ関スル業務
三 国家総動員上必要ナル金融ニ関スル業務
四 国家総動員上必要ナル衛生、家畜衛生又ハ救護ニ関スル業務
五 国家総動員上必要ナル教育訓練ニ関スル業務
六 国家総動員上必要ナル試験研究ニ関スル業務
七 国家総動員上必要ナル情報又ハ啓発宣伝ニ関スル業務
八 国家総動員上必要ナル警備ニ関スル業務
九 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル国家総動員上必要ナル業務
第四条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民ヲ徴用シテ総動員業務ニ従事セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ妨ゲズ
第五条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民及帝国法人其ノ他ノ団体ヲシテ国又ハ地方公共団体ノ行フ総動員業務ニ付協力セシムルコトヲ得
第六条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ従業者ノ使用、雇入若ハ解雇又ハ賃金其ノ他ノ労働条件ニ付必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第七条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ労働争議ノ予防若ハ解決ニ関シ必要ナル命令ヲ為シ又ハ作業所ノ閉鎖、作業若ハ労務ノ中止其ノ他ノ労働争議ニ関スル行為ノ制限若ハ禁止ヲ為スコトヲ得
第八条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員物資ノ生産、修理、配給、譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費、所持及移動ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第九条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ輸出若ハ輸入ノ制限若ハ禁止ヲ為シ、輸出若ハ輸入ヲ命ジ、輸出税若ハ輸入税ヲ課シ又ハ輸出税若ハ輸入税ヲ増課若ハ減免スルコトヲ得
第十条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員物資ヲ使用又ハ収用スルコトヲ得
第十一条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ会社ノ設立、資本ノ増加、合併、目的変更、社債ノ募集若ハ第二回以後ノ株金ノ払込ニ付制限若ハ禁止ヲ為シ、会社ノ利益金ノ処分、償却其ノ他経理ニ関シ必要ナル命令ヲ為シ又ハ銀行、信託会社、保険会社其ノ他勅令ヲ以テ指定スル者ニ対シ資金ノ運用ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十二条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ総動員業務タル事業ヲ営ム会社ノ当該事業ニ属スル設備ノ費用ニ充ツル為ノ社債ノ募集又ハ資本ノ増加ニ付商法第二百条又ハ第二百十条ノ規定ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第十三条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務タル事業ニ属スル工場、事業場、船舶其ノ他ノ施設又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル施設ノ全部又ハ一部ヲ管理、使用又ハ収用スルコトヲ得
政府ハ前項ニ掲グルモノヲ使用又ハ収用スル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ従業者ヲ供用セシメ又ハ当該施設ニ於テ現ニ実施スル特許発明若ハ登録実用新案ヲ実施スルコトヲ得
政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務ニ必要ナル土地又ハ家屋其ノ他ノ工作物ヲ管理、使用又ハ収用スルコトヲ得
第十四条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ鉱業権、砂鉱権及水ノ使用ニ関スル権利ヲ使用又ハ収用スルコトヲ得
第十五条 前二条ノ規定ニ依リ収用シタルモノ不用ニ帰シタル場合ニ於テ収用シタル時ヨリ十年内ニ払下グルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ旧所有者若ハ旧権利者又ハ其ノ一般承継人ハ優先ニ之ヲ買受クルコトヲ得
第十六条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業ニ属スル設備ノ新設、拡張若ハ改良ヲ制限若ハ禁止シ又ハ総動員業務タル事業ニ属スル設備ノ新設、拡張若ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第十七条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務タル同種若ハ異種ノ事業ノ事業主間ニ於ケル当該事業ニ関スル統制協定ノ設定、変更若ハ廃止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制協定ノ設定、変更若ハ取消ヲ命ジ又ハ統制協定ノ加盟者若ハ其ノ統制協定ニ加盟セザル事業主ニ対シ其ノ統制協定ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十八条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務タル同種又ハ異種ノ事業ノ事業主ニ対シ当該事業ノ統制ヲ目的トスル組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ組合ハ法人トス
第一項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル者其ノ設立ヲ為サザルトキハ政府ハ定款ノ作成其ノ他設立ニ関シ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第一項ノ組合成立シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ当該組合ノ組合員タル資格ヲ有スル者ヲシテ其ノ組合ノ組合員タラシムルコトヲ得
政府ハ第一項ノ組合ニ対シ其ノ組合員ノ営業ニ関スル統制規程ノ設定、変更若ハ廃止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制規程ノ設定若ハ変更ヲ命ジ又ハ其ノ組合員ニ対シ組合ノ統制規程ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得
第一項ノ組合ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ価格、運送賃、保管料、保険料、賃貸料又ハ加工賃ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ新聞紙其ノ他ノ出版物ノ掲載ニ付制限又ハ禁止ヲ為スコトヲ得
政府ハ前項ノ制限又ハ禁止ニ違反シタル新聞紙其ノ他ノ出版物ニシテ国家総動員上支障アルモノノ発売及頒布ヲ禁止シ之ヲ差押フルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ併セテ其ノ原版ヲ差押フルコトヲ得
第二十一条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民及帝国臣民ヲ雇傭若ハ使用スル者ヲシテ帝国臣民ノ職業能力ニ関スル事項ヲ申告セシメ又ハ帝国臣民ノ職業能力ニ関シ検査スルコトヲ得
第二十二条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ学校、養成所、工場、事業場其ノ他技能者ノ養成ニ適スル施設ノ管理者又ハ養成セラルベキ者ノ雇傭主ニ対シ国家総動員上必要ナル技能者ノ養成ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十三条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員物資ノ生産、販売又ハ輸入ヲ業トスル者ヲシテ当該物資又ハ其ノ原料若ハ材料ノ一定数量ヲ保有セシムルコトヲ得
第二十四条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務タル事業ノ事業主又ハ戦時ニ際シ総動員業務ヲ実施セシムベキ者ヲシテ戦時ニ際シ実施セシムベキ総動員業務ニ関スル計画ヲ設定セシメ又ハ当該計画ニ基キ必要ナル演練ヲ為サシムルコトヲ得
第二十五条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ総動員物資ノ生産若ハ修理ヲ業トスル者又ハ試験研究機関ノ管理者ニ対シ試験研究ヲ命ズルコトヲ得
第二十六条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員物資ノ生産又ハ修理ヲ業トスル者ニ対シ予算ノ範囲内ニ於テ一定ノ利益ヲ保証シ又ハ補助金ヲ交付スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ政府ハ其ノ者ニ対シ総動員物資ノ生産若ハ修理ヲ為サシメ又ハ国家総動員上必要ナル設備ヲ為サシムルコトヲ得
第二十七条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第八条、第十条、第十三条若ハ第十四条ノ規定ニ依ル処分、第九条ノ規定ニ依ル輸出若ハ輸入ノ命令、第十一条ノ規定ニ依ル資金ノ融通若ハ有価証券ノ応募、引受若ハ買入ノ命令又ハ第十六条ノ規定ニ依ル設備ノ新設、拡張若ハ改良ノ命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
第二十八条 政府ハ第二十二条、第二十三条又ハ第二十五条ノ規定ニ依リ命令ヲ為ス場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償シ又ハ補助金ヲ交付ス
第二十九条 前二条ノ規定ニ依ル補償ノ金額及第十五条ノ規定ニ依ル払下ノ価額ハ総動員補償委員会ノ議ヲ経テ政府之ヲ定ム
総動員補償委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十条 政府ハ第二十六条又ハ第二十八条ノ規定ニ依リ利益ノ保証又ハ補助金ノ交付ヲ受クル事業ヲ監督シ之ガ為必要ナル命令又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第三十一条 政府ハ国家総動員上必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
第三十二条 第九条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ為シ又ハ為サントシタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ輸出又ハ輸入ヲ為シ又ハ為サントシタル物ニシテ犯人ノ所有シ又ハ所持スルモノハ之ヲ没収スルコトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴スルコトヲ得
第三十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第七条ノ規定ニ依ル命令又ハ制限若ハ禁止ニ違反シタル者
二 第八条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
三 第九条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ為サザル者
四 第十条ノ規定ニ依ル総動員物資ノ使用又ハ収用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
五 第十三条ノ規定ニ依ル施設、土地若ハ工作物ノ管理、使用若ハ収用又ハ従業者ノ供用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
六 第十九条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第三十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十一条ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令ニ違反シタル者
二 第十六条ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令ニ違反シタル者
三 第十七条若ハ第十八条第五項ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ統制協定若ハ統制規程ヲ設定、変更若ハ廃止シ又ハ第十七条若ハ第十八条第五項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
四 第二十三条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ保有ヲ為サザル者
五 第二十六条ノ規定ニ違反シ生産、修理又ハ設備ヲ為サザル者
第三十五条 前三条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情状ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第三十六条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第四条ノ規定ニ依ル徴用ニ応ゼズ又ハ同条ノ規定ニ依ル業務ニ従事セザル者
二 第六条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第三十七条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第二十二条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
二 第二十四条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ計画ノ設定又ハ演練ヲ為サザル者
三 第二十五条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ試験研究ヲ為サザル者
第三十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十八条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ組合ノ設立ヲ為サザル者
二 第三十条ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタル者
三 第三十一条ノ規定ニ依ル報告ヲ怠リ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
第三十九条 第二十条第一項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ発行人及編輯人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ発行者及著作者ヲ二年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
新聞紙ニ在リテハ編輯人以外ニ於テ実際編輯ヲ担当シタル者及掲載ノ記事ニ署名シタル者亦前項ニ同ジ
第四十条 第二十条第二項ノ規定ニ依ル差押処分ノ執行ヲ妨害シタル者ハ六月以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第四十一条 前二条ノ罪ニハ刑法併合罪ノ規定ヲ適用セズ
第四十二条 第三十一条ノ規定ニ依ル当該官吏ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第四十三条 第二十一条ノ規定ニ違反シテ申告ヲ怠リ又ハ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ処ス
第四十四条 総動員業務ニ従事シタル者其ノ業務遂行ニ関シ知得シタル当該官庁指定ノ総動員業務ニ関スル官庁ノ機密ヲ漏泄又ハ窃用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
公務員又ハ其ノ職ニ在リタル者職務上知得シタル当該官庁指定ノ総動員業務ニ関スル官庁ノ機密ヲ漏泄又ハ窃用シタルトキハ五年以下ノ懲役ニ処ス
第四十五条 公務員又ハ其ノ職ニ在リタル者本法ノ規定ニ依ル職務執行ニ関シ知得シタル法人又ハ人ノ業務上ノ秘密ヲ漏泄又ハ窃用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十六条 第十八条第一項又ハ第三項ノ規定ニ依リ設立シタル組合ノ役員其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為サザルトキハ五年以下ノ懲役ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第四十七条 前条第一項ニ掲グル者ニ対シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第四十八条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第三十二条乃至第三十四条、第三十六条第二号、第三十七条、第三十八条又ハ第四十三条前段ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ各本条ノ罰金刑又ハ科料刑ヲ科ス
第四十九条 前条ノ規定ハ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ本法施行地外ニ於テ為シタル行為ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ本法施行地外ニ於テ為シタル行為ニ付亦同ジ
本法ノ罰則ハ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル帝国臣民ニモ之ヲ適用ス
第五十条 本法施行ニ関スル重要事項(軍機ニ関スルモノヲ除ク)ニ付政府ノ諮問ニ応ズル為国家総動員審議会ヲ置ク
国家総動員審議会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軍需工業動員法及昭和十二年法律第八十八号ハ之ヲ廃止ス
本法施行前軍需工業動員法ニ基キテ為シタル命令又ハ処分ハ之ヲ本法中ノ相当規定ニ基キテ為シタルモノト看做ス
軍需工業動員法ニ違反シタル者ノ処罰ニ付テハ仍旧法ニ依ル