企業整備令
法令番号: 勅令第五百三號
公布年月日: 昭和17年5月13日
法令の形式: 勅令
朕企業整備令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年五月十二日
內閣總理大臣兼陸軍大臣 東條英機
農林大臣兼拓務大臣 井野碩哉
厚生大臣 小泉親彥
海軍大臣 嶋田繁太郞
遞信大臣 寺島健
大藏大臣 賀屋興宣
商工大臣 岸信介
勅令第五百三號
企業整備令
第一條 國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十六條ノ二ノ規定ニ基ク事業ニ屬スル設備又ハ權利(水ノ使用ニ關スル權利ヲ除ク以下同ジ)ノ讓渡其ノ他ノ處分、出資、使用又ハ移動ニ關スル命令及國家總動員法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク事業ノ委託、讓渡、廢止若ハ休止又ハ法人ノ合併若ハ解散ニ關スル命令ニ付テハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ハ國民經濟ノ總力發揮ニ資スル爲企業ヲ整備シ又ハ之ガ爲事業ニ屬スル設備若ハ權利ノ利用ヲ有效ナラシムルコトヲ目的トス
第三條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ物資ノ生產(加工ヲ含ム以下同ジ)、修理、販賣、輸出、輸入又ハ保管ノ事業ニシテ主務大臣ノ指定スルモノニ屬スル設備又ハ權利ニ付一般的ニ讓渡其ノ他ノ處分、出資、使用又ハ移動ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
前項ノ設備又ハ權利ハ主務大臣之ヲ指定ス
第四條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ物資ノ生產、修理、販賣、輸出、輸入又ハ保管ノ事業ニシテ主務大臣ノ指定スルモノニ付一般的ニ當該事業ノ全部又ハ一部ノ讓渡、廢止又ハ休止ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定スル事業ヲ營ム法人ノ合併又ハ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第五條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ物資ノ生產、修理、販賣、輸出、輸入若ハ保管ノ業ヲ營ム者(以下事業主ト稱ス)又ハ主務大臣ノ指定スル法人ニ對シ其ノ事業ニ屬スル設備若ハ權利ノ讓渡若ハ貸渡ヲ命ジ又ハ事業主若ハ主務大臣ノ指定スル法人ニ對シ當該設備若ハ權利ノ讓受若ハ借受ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ讓渡又ハ貸借ヲ爲スコトヲ得
第六條 前條ノ場合ニ於ケル讓渡又ハ貸借ノ條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ主務大臣ハ讓渡又ハ貸借ニ關シ必要ナル決定ヲ爲スコトヲ得
第七條 知レタル擔保權ノ目的タル設備又ハ權利ニ付第五條第一項ノ規定ニ依ル讓渡又ハ讓受ノ命令アリタル場合ニ於テ當該擔保權ヲ消滅セシムルニ非ザレバ企業ヲ整備シ又ハ當該設備若ハ權利ノ利用ヲ有效ナラシムルコト困難ナルトキハ當事者ハ擔保權ノ處理ニ付擔保權者ニ協議スルコトヲ得
前項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ當事者又ハ擔保權者ハ當該事項ニ付主務大臣ノ裁定ヲ申請スルコトヲ得
第八條 前條ノ規定ハ知レタル賃借權其ノ他ノ權利ノ目的タル設備又ハ權利ニ付第五條第一項ノ規定ニ依ル命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第九條 讓渡ヲ受クル設備又ハ權利ニ付知レタル擔保權ノ存スル場合ニ於テ當該擔保權ガ第七條ノ規定ニ依リ消滅スルトキハ當該設備又ハ權利ノ讓渡價格ヲ支拂フベキ者ハ其ノ讓渡價格ヲ供託スルコトヲ要ス但シ同條ノ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ場合ニ於テハ當該擔保權者ハ供託金ニ對シ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第十條 主務大臣ハ第五條第一項ノ規定ニ依リ事業ニ屬スル設備ノ讓渡又ハ貸渡ノ命令ヲ爲シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ第六條ノ協議又ハ決定前ト雖モ當該設備ヲ占有スル者ニ對シ必要ナル事項ヲ指定シテ當該設備ノ讓受又ハ借受ヲ爲スベキ者ニ當該設備ヲ使用セシムベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ當該設備ノ讓受又ハ借受ヲ爲スベキ者ヲシテ相當ノ擔保ヲ供託セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ供託シタルモノノ處理ニ付テハ第六條ノ協議又ハ決定ニ於テ必要ナル定ヲ爲スベシ
第十一條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ對シ其ノ事業ニ屬スル設備又ハ權利ヲ株式會社、株式合資會社又ハ有限會社ニ出資スベキコトヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ主務大臣ハ出資ノ相手方タル會社ニ對シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五條第二項及第六條乃至第八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
出資スル設備又ハ權利ニ付知レタル擔保權ノ存スル場合ニ於テ當該擔保權ガ前項ニ於テ準用スル第七條ノ規定ニ依リ消滅スルトキハ當該擔保權者ハ出資ニ對シ割當テラレタル株式又ハ持分ノ上ニ質權ヲ有ス但シ同條ノ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ質權ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 事業ニ屬スル設備ニ付第五條第一項又ハ前條第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ當該設備ノ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ命令ニ應ズルコト能ハザルニ至ルベキトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ報吿スベシ
前項ノ規定ハ事業ニ屬スル權利ニ付第五條第一項又ハ前條第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十三條 第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ニ依ル讓渡、貸渡又ハ出資ノ命令ヲ受ケタル者ハ讓渡、貸渡又ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ當該設備又ハ權利ヲ讓渡シ、貸渡シ其ノ他當該設備又ハ權利ニ關シ新ナル處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第十四條 第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者當該設備又ハ權利ニ付讓渡其ノ他ノ處分ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十五條 事業ニ屬スル設備又ハ權利ニ關シ强制競賣手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續、土地收用法ニ依ル使用若ハ收用ノ手續又ハ國家總動員法第十條若ハ第十三條ノ規定ニ基ク使用若ハ收用ノ手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ當該設備又ハ權利ニ關シテハ第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第十六條 工場財團又ハ鑛業財團ニ屬スルモノハ第七條(第十一條第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依リ擔保權ノ消滅シタル場合ヲ除クノ外第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ讓渡又ハ出資アリタル後ト雖モ仍原財團ニ屬スルモノトス
第十七條 主務大臣ハ第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ事業ニ屬スル設備又ハ權利ヲ讓渡又ハ出資シタル者ヲシテ第十八條ノ規定ニ依リ債務ノ承繼アリタル場合ヲ除クノ外讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ガ擔保權ノ實行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル爲命令ノ定ムル所ニ依リ相當ノ擔保ヲ供託セシムルコトヲ得
讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質權ヲ有ス
第十八條 主務大臣ハ第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ニ依リ事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ讓渡又ハ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ讓渡又ハ出資シタル者ヲシテ當該設備又ハ權利ヲ擔保トスル債務ヲ引續キ負擔セシメ置クコトヲ適當ナラズト認ムルトキハ國家總動員法第十八條ノ二ノ規定ニ基キ命令ノ定ムル所ニ依リ讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ヲシテ當該債務ノ全部又ハ一部ヲ承繼セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル承繼價格其ノ他ノ承繼ニ關スル條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル
第六條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十九條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ對シ事業ノ委託、受託、讓渡若ハ讓受又ハ事業主タル會社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第五條第二項、第六條乃至第十條及第十二條乃至前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ事業ノ讓渡又ハ讓受ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五條第二項及第六條ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ事業ノ委託若ハ受託又ハ會社ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十條 第六條(第十一條第二項、第十八條第三項及前條第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議若ハ決定、第七條(第八條、第十一條第二項及前條第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議若ハ裁定又ハ第十八條ノ協議ニ基キ會社ガ事業ノ讓渡、合併其ノ他當該協議、決定又ハ裁定ニ於テ定メラレタル事項ノ實行ヲ爲サントスルニ付株主總會又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ當該事項ノ實行ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 本令ニ規定スルモノノ外第六條(第十一條第二項、第十八條第三項及第十九條第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ決定及第七條(第八條、第十一條第二項及第十九條第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ裁定竝ニ第五條第一項又ハ第十一條第一項ノ規定ニ依リ事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ讓渡又ハ出資ヲ命ジタル場合及第十九條第一項ノ規定ニ依リ事業ノ讓渡ヲ命ジタル場合ニ於ケル讓渡又ハ出資シタル者ノ負擔スル債務ノ承繼及擔保ノ處理ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ對シ事業ノ全部又ハ一部ノ廢止又ハ休止ヲ命ズルコトヲ得
第五條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ前條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ因ル通常生ズベキ損失トス
前項ノ規定ニ依ル損失補償請求ノ時期ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條 主務大臣ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ事業主、第五條ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定スル法人其ノ他關係者ヨリ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ工場、事業場、店舖、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第二十五條 主務大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ地方長官(東京府ニ在リテハ警視總監ヲ含ム)又ハ當該主務大臣ノ所轄スル官衙ノ長ニ委任スルコトヲ得
前項ノ規定中地方長官(東京府ニ在リテハ警視總監ヲ含ム)ニ關スル規定ハ樺太及南洋群島ニハ之ヲ適用セズ
第二十六條 第五條、第六條(第十一條第二項及第十八條第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第七條(第八條及第十一條第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十條乃至第十四條、第十七條、第十八條、第二十條(事業ノ委託、受託、讓渡、讓受及會社ノ合併ニ關スル場合ヲ除ク)及第二十四條中主務大臣トアルハ軍事上特ニ必要アル設備又ハ權利ニ付テハ陸軍大臣又ハ海軍大臣トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中主務大臣、他ノ大臣、所管大臣又ハ當該大臣トアルハ朝鮮、臺灣、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮總督、臺灣總督、樺太廳長官又ハ南洋廳長官トス
條中地方長官(東京府ニ在リテハ前警視總監ヲ含ム)トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長トス
第二十七條 主務大臣本令ニ依リ命令ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該設備若ハ權利ノ屬スル事業又ハ當該事業ガ他ノ大臣ノ所管ニ屬スルモノナルトキハ當該所管大臣ニ協議スベシ但シ陸軍大臣又ハ海軍大臣軍機保護上特ニ必要アル設備又ハ權利ニ付命令ヲ爲サントスル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣本令ニ依リ命令ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該命令ガ軍事上ニ影響ヲ及ボスベキモノナルトキハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ニ協議スベシ
主務大臣本令ニ依リ命令ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該事項ガ他ノ法令ニ基キ他ノ大臣ノ許可、認可、承認、免許等ヲ要スルモノナルトキハ當該大臣ニ協議スベシ
附 則
本令ハ昭和十七年五月十五日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十七年六月十五日ヨリ之ヲ施行ス
朕企業整備令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年五月十二日
内閣総理大臣兼陸軍大臣 東条英機
農林大臣兼拓務大臣 井野碩哉
厚生大臣 小泉親彦
海軍大臣 嶋田繁太郎
逓信大臣 寺島健
大蔵大臣 賀屋興宣
商工大臣 岸信介
勅令第五百三号
企業整備令
第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十六条ノ二ノ規定ニ基ク事業ニ属スル設備又ハ権利(水ノ使用ニ関スル権利ヲ除ク以下同ジ)ノ譲渡其ノ他ノ処分、出資、使用又ハ移動ニ関スル命令及国家総動員法第十六条ノ三ノ規定ニ基ク事業ノ委託、譲渡、廃止若ハ休止又ハ法人ノ合併若ハ解散ニ関スル命令ニ付テハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令ハ国民経済ノ総力発揮ニ資スル為企業ヲ整備シ又ハ之ガ為事業ニ属スル設備若ハ権利ノ利用ヲ有効ナラシムルコトヲ目的トス
第三条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ物資ノ生産(加工ヲ含ム以下同ジ)、修理、販売、輸出、輸入又ハ保管ノ事業ニシテ主務大臣ノ指定スルモノニ属スル設備又ハ権利ニ付一般的ニ譲渡其ノ他ノ処分、出資、使用又ハ移動ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
前項ノ設備又ハ権利ハ主務大臣之ヲ指定ス
第四条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ物資ノ生産、修理、販売、輸出、輸入又ハ保管ノ事業ニシテ主務大臣ノ指定スルモノニ付一般的ニ当該事業ノ全部又ハ一部ノ譲渡、廃止又ハ休止ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定スル事業ヲ営ム法人ノ合併又ハ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第五条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ物資ノ生産、修理、販売、輸出、輸入若ハ保管ノ業ヲ営ム者(以下事業主ト称ス)又ハ主務大臣ノ指定スル法人ニ対シ其ノ事業ニ属スル設備若ハ権利ノ譲渡若ハ貸渡ヲ命ジ又ハ事業主若ハ主務大臣ノ指定スル法人ニ対シ当該設備若ハ権利ノ譲受若ハ借受ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ譲渡又ハ貸借ヲ為スコトヲ得
第六条 前条ノ場合ニ於ケル譲渡又ハ貸借ノ条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ主務大臣ハ譲渡又ハ貸借ニ関シ必要ナル決定ヲ為スコトヲ得
第七条 知レタル担保権ノ目的タル設備又ハ権利ニ付第五条第一項ノ規定ニ依ル譲渡又ハ譲受ノ命令アリタル場合ニ於テ当該担保権ヲ消滅セシムルニ非ザレバ企業ヲ整備シ又ハ当該設備若ハ権利ノ利用ヲ有効ナラシムルコト困難ナルトキハ当事者ハ担保権ノ処理ニ付担保権者ニ協議スルコトヲ得
前項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ当事者又ハ担保権者ハ当該事項ニ付主務大臣ノ裁定ヲ申請スルコトヲ得
第八条 前条ノ規定ハ知レタル賃借権其ノ他ノ権利ノ目的タル設備又ハ権利ニ付第五条第一項ノ規定ニ依ル命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第九条 譲渡ヲ受クル設備又ハ権利ニ付知レタル担保権ノ存スル場合ニ於テ当該担保権ガ第七条ノ規定ニ依リ消滅スルトキハ当該設備又ハ権利ノ譲渡価格ヲ支払フベキ者ハ其ノ譲渡価格ヲ供託スルコトヲ要ス但シ同条ノ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ場合ニ於テハ当該担保権者ハ供託金ニ対シ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第十条 主務大臣ハ第五条第一項ノ規定ニ依リ事業ニ属スル設備ノ譲渡又ハ貸渡ノ命令ヲ為シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ第六条ノ協議又ハ決定前ト雖モ当該設備ヲ占有スル者ニ対シ必要ナル事項ヲ指定シテ当該設備ノ譲受又ハ借受ヲ為スベキ者ニ当該設備ヲ使用セシムベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ当該設備ノ譲受又ハ借受ヲ為スベキ者ヲシテ相当ノ担保ヲ供託セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ供託シタルモノノ処理ニ付テハ第六条ノ協議又ハ決定ニ於テ必要ナル定ヲ為スベシ
第十一条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ対シ其ノ事業ニ属スル設備又ハ権利ヲ株式会社、株式合資会社又ハ有限会社ニ出資スベキコトヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ主務大臣ハ出資ノ相手方タル会社ニ対シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五条第二項及第六条乃至第八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
出資スル設備又ハ権利ニ付知レタル担保権ノ存スル場合ニ於テ当該担保権ガ前項ニ於テ準用スル第七条ノ規定ニ依リ消滅スルトキハ当該担保権者ハ出資ニ対シ割当テラレタル株式又ハ持分ノ上ニ質権ヲ有ス但シ同条ノ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ質権ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 事業ニ属スル設備ニ付第五条第一項又ハ前条第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ当該設備ノ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ命令ニ応ズルコト能ハザルニ至ルベキトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ遅滞ナク之ヲ主務大臣ニ報告スベシ
前項ノ規定ハ事業ニ属スル権利ニ付第五条第一項又ハ前条第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十三条 第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ニ依ル譲渡、貸渡又ハ出資ノ命令ヲ受ケタル者ハ譲渡、貸渡又ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ当該設備又ハ権利ヲ譲渡シ、貸渡シ其ノ他当該設備又ハ権利ニ関シ新ナル処分ヲ為スコトヲ得ズ
第十四条 第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ事業ニ属スル設備又ハ権利ノ譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者当該設備又ハ権利ニ付譲渡其ノ他ノ処分ヲ為サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十五条 事業ニ属スル設備又ハ権利ニ関シ強制競売手続、国税徴収法ニ依ル強制徴収手続、土地収用法ニ依ル使用若ハ収用ノ手続又ハ国家総動員法第十条若ハ第十三条ノ規定ニ基ク使用若ハ収用ノ手続其ノ他此等ノ手続ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ当該設備又ハ権利ニ関シテハ第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第十六条 工場財団又ハ鉱業財団ニ属スルモノハ第七条(第十一条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依リ担保権ノ消滅シタル場合ヲ除クノ外第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ譲渡又ハ出資アリタル後ト雖モ仍原財団ニ属スルモノトス
第十七条 主務大臣ハ第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ事業ニ属スル設備又ハ権利ヲ譲渡又ハ出資シタル者ヲシテ第十八条ノ規定ニ依リ債務ノ承継アリタル場合ヲ除クノ外譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者ガ担保権ノ実行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル為命令ノ定ムル所ニ依リ相当ノ担保ヲ供託セシムルコトヲ得
譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質権ヲ有ス
第十八条 主務大臣ハ第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ニ依リ事業ニ属スル設備又ハ権利ノ譲渡又ハ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ譲渡又ハ出資シタル者ヲシテ当該設備又ハ権利ヲ担保トスル債務ヲ引続キ負担セシメ置クコトヲ適当ナラズト認ムルトキハ国家総動員法第十八条ノ二ノ規定ニ基キ命令ノ定ムル所ニ依リ譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者ヲシテ当該債務ノ全部又ハ一部ヲ承継セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル承継価格其ノ他ノ承継ニ関スル条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル
第六条第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十九条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ対シ事業ノ委託、受託、譲渡若ハ譲受又ハ事業主タル会社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第五条第二項、第六条乃至第十条及第十二条乃至前条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ事業ノ譲渡又ハ譲受ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五条第二項及第六条ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ事業ノ委託若ハ受託又ハ会社ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十条 第六条(第十一条第二項、第十八条第三項及前条第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議若ハ決定、第七条(第八条、第十一条第二項及前条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議若ハ裁定又ハ第十八条ノ協議ニ基キ会社ガ事業ノ譲渡、合併其ノ他当該協議、決定又ハ裁定ニ於テ定メラレタル事項ノ実行ヲ為サントスルニ付株主総会又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ会社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ当該事項ノ実行ヲ為スコトヲ得
第二十一条 本令ニ規定スルモノノ外第六条(第十一条第二項、第十八条第三項及第十九条第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ決定及第七条(第八条、第十一条第二項及第十九条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ裁定並ニ第五条第一項又ハ第十一条第一項ノ規定ニ依リ事業ニ属スル設備又ハ権利ノ譲渡又ハ出資ヲ命ジタル場合及第十九条第一項ノ規定ニ依リ事業ノ譲渡ヲ命ジタル場合ニ於ケル譲渡又ハ出資シタル者ノ負担スル債務ノ承継及担保ノ処理ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ事業主ニ対シ事業ノ全部又ハ一部ノ廃止又ハ休止ヲ命ズルコトヲ得
第五条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条 国家総動員法第二十七条ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ前条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ因ル通常生ズベキ損失トス
前項ノ規定ニ依ル損失補償請求ノ時期ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四条 主務大臣ハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ事業主、第五条ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定スル法人其ノ他関係者ヨリ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ工場、事業場、店舗、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第二十五条 主務大臣ハ本令ニ定ムル職権ノ一部ヲ地方長官(東京府ニ在リテハ警視総監ヲ含ム)又ハ当該主務大臣ノ所轄スル官衙ノ長ニ委任スルコトヲ得
前項ノ規定中地方長官(東京府ニ在リテハ警視総監ヲ含ム)ニ関スル規定ハ樺太及南洋群島ニハ之ヲ適用セズ
第二十六条 第五条、第六条(第十一条第二項及第十八条第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第七条(第八条及第十一条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十条乃至第十四条、第十七条、第十八条、第二十条(事業ノ委託、受託、譲渡、譲受及会社ノ合併ニ関スル場合ヲ除ク)及第二十四条中主務大臣トアルハ軍事上特ニ必要アル設備又ハ権利ニ付テハ陸軍大臣又ハ海軍大臣トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中主務大臣、他ノ大臣、所管大臣又ハ当該大臣トアルハ朝鮮、台湾、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官トス
条中地方長官(東京府ニ在リテハ前警視総監ヲ含ム)トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長トス
第二十七条 主務大臣本令ニ依リ命令ヲ為サントスル場合ニ於テ当該設備若ハ権利ノ属スル事業又ハ当該事業ガ他ノ大臣ノ所管ニ属スルモノナルトキハ当該所管大臣ニ協議スベシ但シ陸軍大臣又ハ海軍大臣軍機保護上特ニ必要アル設備又ハ権利ニ付命令ヲ為サントスル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣本令ニ依リ命令ヲ為サントスル場合ニ於テ当該命令ガ軍事上ニ影響ヲ及ボスベキモノナルトキハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ニ協議スベシ
主務大臣本令ニ依リ命令ヲ為サントスル場合ニ於テ当該事項ガ他ノ法令ニ基キ他ノ大臣ノ許可、認可、承認、免許等ヲ要スルモノナルトキハ当該大臣ニ協議スベシ
附 則
本令ハ昭和十七年五月十五日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十七年六月十五日ヨリ之ヲ施行ス