工場事業場技能者養成令
法令番号: 勅令第百三十一號
公布年月日: 昭和14年3月31日
法令の形式: 勅令
朕工場事業場技能者養成令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月三十日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
商工大臣兼拓務大臣 八田嘉明
厚生大臣 廣瀨久忠
勅令第百三十一號
工場事業場技能者養成令
第一條 國家總動員法第二十二條ノ規定ニ基ク工場及事業場ニ於ケル技能者ノ養成ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 厚生大臣ノ指定スル事業ニ屬スル工場又ハ事業場ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノノ事業主(以下事業主ト稱ス)ハ技能者ノ養成ヲ爲スベシ但シ第一號ニ該當スル工場又ハ事業場ノ事業主ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ厚生大臣ノ許可ヲ受ケタルモノハ此ノ限ニ在ラズ
一 年齡十六年以上ノ男子勞働者ヲ常時二百人以上使用スル工場又ハ事業場
二 年齡十六年以上ノ男子勞働者ヲ常時二百人未滿五十人以上使用スル工場又ハ事業場ニシテ厚生大臣ノ指定スルモノ
第三條 前條ノ規定ニ依リ養成セラルベキ者(以下養成工ト稱ス)ノ員數ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 養成工ハ事業主ニ雇傭セラルル養成開始ノ際年齡十四年以上十七年未滿ノ男子ニシテ修業年限二年ノ高等小學校ヲ卒業シ若ハ靑年學校普通科ノ課程ヲ修了シタルモノ又ハ文部大臣ニ於テ之ト同等以上ノ學力ヲ有スト認メタルモノナルコトヲ要ス
事業主ハ地方長官(東京府ニ在リテハ警視總監以下之ニ同ジ)ノ許可ヲ受ケ養成工ノ年齡又ハ敎育程度ニ付前項ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第五條 事業主ハ養成工ニ對シ其ノ德性ヲ涵養シ中堅職工タルニ須要ナル知識及技能ヲ授クベシ
第六條 養成工ノ養成期間ハ三年トス
前項ノ養成期間ハ養成ニ關スル施設ノ狀況其ノ他特別ノ事情ニ依リ養成上別段ノ支障ナキ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ二年迄短縮スルコトヲ得
養成ニ必要ナル時數ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 事業主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ養成計畫ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
地方長官必要アリト認ムルトキハ養成計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第八條 厚生大臣戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム)ニ際シ特別ノ必要アリト認ムルトキハ前五條ノ規定ニ拘ラズ事業主ニ對シ短期ノ養成期間ニ依ル技能者ノ養成ヲ命ズルコトヲ得
厚生大臣ハ前項ノ規定ニ依リ技能者ノ養成ヲ命ゼラレタル事業主ニ對シ前五條ノ規定ニ依ル技能者養成ノ義務ノ全部又ハ一部ヲ免除スルコトヲ得
第九條 地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業主ニ對シ養成ヲ行フニ必要ナル施設ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ命ズルコトヲ得ベキ設備ノ種類ハ工場又ハ事業場ノ規模ニ應ジ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 他ノ法令ニ於テ就業時間ニ關スル規定アルトキハ養成工ノ養成ハ其ノ就業時間內ニ於テ之ヲ行フベシ此ノ場合ニ於テハ養成ニ要スル時間ハ之ヲ就業時間ト看做ス
第十一條 事業主ハ養成工ヲシテ授業料其ノ他養成ヲ行フ爲必要ナル費用ヲ負擔セシムルコトヲ得ズ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二條 厚生大臣又ハ地方長官ハ技能者ノ養成ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十三條 厚生大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ技能者ノ養成ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基ク報吿ヲ徵スルコトヲ得
第十四條 厚生大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ技能者ノ養成ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ當該官吏ヲシテ工場、事業場、事務所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ養成ノ狀況又ハ之ニ關スル帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ當該官吏ヲシテ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十五條 厚生大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ本令ニ依リ技能者ノ養成ヲ爲ス者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ補助金ヲ交付ス
厚生大臣ハ本令ニ依ル技能者養成ニ因リ損失ヲ生ジタル場合ニ於テハ通常生ズベキ損失ヲ補償ス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ養成期間ノ終了後之ヲ請求スベシ但シ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ別段ノ時期ニ之ヲ請求スルコトヲ得
第十六條 本令中地方長官トアルハ內地ニ於ケル鑛業法又ハ砂鑛法ノ適用ヲ受クル事業ニ付テハ鑛山監督局長トス
第十七條 本令中厚生大臣又ハ文部大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トス
本令中地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ臺灣鑛業規則ノ適用ヲ受クル事業ニ付テハ臺灣總督、其ノ他ノ事業ニ付テハ州知事又ハ廳長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トス
附 則
本令ハ昭和十四年四月五日ヨリ之ヲ施行ス
朕工場事業場技能者養成令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月三十日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
商工大臣兼拓務大臣 八田嘉明
厚生大臣 広瀬久忠
勅令第百三十一号
工場事業場技能者養成令
第一条 国家総動員法第二十二条ノ規定ニ基ク工場及事業場ニ於ケル技能者ノ養成ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 厚生大臣ノ指定スル事業ニ属スル工場又ハ事業場ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノノ事業主(以下事業主ト称ス)ハ技能者ノ養成ヲ為スベシ但シ第一号ニ該当スル工場又ハ事業場ノ事業主ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ厚生大臣ノ許可ヲ受ケタルモノハ此ノ限ニ在ラズ
一 年齢十六年以上ノ男子労働者ヲ常時二百人以上使用スル工場又ハ事業場
二 年齢十六年以上ノ男子労働者ヲ常時二百人未満五十人以上使用スル工場又ハ事業場ニシテ厚生大臣ノ指定スルモノ
第三条 前条ノ規定ニ依リ養成セラルベキ者(以下養成工ト称ス)ノ員数ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 養成工ハ事業主ニ雇傭セラルル養成開始ノ際年齢十四年以上十七年未満ノ男子ニシテ修業年限二年ノ高等小学校ヲ卒業シ若ハ青年学校普通科ノ課程ヲ修了シタルモノ又ハ文部大臣ニ於テ之ト同等以上ノ学力ヲ有スト認メタルモノナルコトヲ要ス
事業主ハ地方長官(東京府ニ在リテハ警視総監以下之ニ同ジ)ノ許可ヲ受ケ養成工ノ年齢又ハ教育程度ニ付前項ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第五条 事業主ハ養成工ニ対シ其ノ徳性ヲ涵養シ中堅職工タルニ須要ナル知識及技能ヲ授クベシ
第六条 養成工ノ養成期間ハ三年トス
前項ノ養成期間ハ養成ニ関スル施設ノ状況其ノ他特別ノ事情ニ依リ養成上別段ノ支障ナキ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ二年迄短縮スルコトヲ得
養成ニ必要ナル時数ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 事業主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ養成計画ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
地方長官必要アリト認ムルトキハ養成計画ノ変更ヲ命ズルコトヲ得
第八条 厚生大臣戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム)ニ際シ特別ノ必要アリト認ムルトキハ前五条ノ規定ニ拘ラズ事業主ニ対シ短期ノ養成期間ニ依ル技能者ノ養成ヲ命ズルコトヲ得
厚生大臣ハ前項ノ規定ニ依リ技能者ノ養成ヲ命ゼラレタル事業主ニ対シ前五条ノ規定ニ依ル技能者養成ノ義務ノ全部又ハ一部ヲ免除スルコトヲ得
第九条 地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業主ニ対シ養成ヲ行フニ必要ナル施設ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ命ズルコトヲ得ベキ設備ノ種類ハ工場又ハ事業場ノ規模ニ応ジ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 他ノ法令ニ於テ就業時間ニ関スル規定アルトキハ養成工ノ養成ハ其ノ就業時間内ニ於テ之ヲ行フベシ此ノ場合ニ於テハ養成ニ要スル時間ハ之ヲ就業時間ト看做ス
第十一条 事業主ハ養成工ヲシテ授業料其ノ他養成ヲ行フ為必要ナル費用ヲ負担セシムルコトヲ得ズ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二条 厚生大臣又ハ地方長官ハ技能者ノ養成ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十三条 厚生大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ技能者ノ養成ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基ク報告ヲ徴スルコトヲ得
第十四条 厚生大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ技能者ノ養成ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ当該官吏ヲシテ工場、事業場、事務所其ノ他ノ場所ニ臨検シ養成ノ状況又ハ之ニ関スル帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ当該官吏ヲシテ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十五条 厚生大臣ハ其ノ定ムル所ニ依リ本令ニ依リ技能者ノ養成ヲ為ス者ニ対シ予算ノ範囲内ニ於テ補助金ヲ交付ス
厚生大臣ハ本令ニ依ル技能者養成ニ因リ損失ヲ生ジタル場合ニ於テハ通常生ズベキ損失ヲ補償ス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ養成期間ノ終了後之ヲ請求スベシ但シ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ別段ノ時期ニ之ヲ請求スルコトヲ得
第十六条 本令中地方長官トアルハ内地ニ於ケル鉱業法又ハ砂鉱法ノ適用ヲ受クル事業ニ付テハ鉱山監督局長トス
第十七条 本令中厚生大臣又ハ文部大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トス
本令中地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ台湾鉱業規則ノ適用ヲ受クル事業ニ付テハ台湾総督、其ノ他ノ事業ニ付テハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トス
附 則
本令ハ昭和十四年四月五日ヨリ之ヲ施行ス