工場事業場使用収用令
法令番号: 勅令第九百一號
公布年月日: 昭和14年12月29日
法令の形式: 勅令
朕工場事業場使用收用令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年十二月二十八日
內閣總理大臣 阿部信行
遞信大臣 永井柳太郞
陸軍大臣 畑俊六
大藏大臣 靑木一男
海軍大臣 吉田善吾
內務大臣 小原直
商工大臣 伍堂卓雄
拓務大臣 金光庸夫
文部大臣 河原田稼吉
農林大臣 伯爵 酒井忠正
厚生大臣 秋田淸
鐵道大臣 永田秀次郞
勅令第九百一號
工場事業場使用收用令
第一條 國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十三條第一項ノ規定ニ基ク總動員業務タル事業ニ屬スル工場若ハ事業場又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル施設ノ使用又ハ收用竝ニ同條第二項ノ規定ニ基ク從業者ノ供用及特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
前項ノ工場若ハ事業場又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル施設ハ以下之ヲ工場事業場ト稱ス
第二條 主務大臣總動員物資ノ生產又ハ修理ニ關シ國家總動員上特ニ必要アリト認ムルトキハ軍用ニ供スル物資又ハ閣令ヲ以テ定ムル總動員物資ノ生產又ハ修理ヲ爲ス工場事業場ニ屬スル土地、建物其ノ他ノ工作物、機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物ノ全部又ハ一部ヲ使用又ハ收用スルコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依リ工場事業場ヲ使用又ハ收用セントスルトキハ內閣總理大臣ニ協議スベシ
第三條 主務大臣工場事業場ヲ使用又ハ收用セントスルトキハ工場事業場ノ使用又ハ收用ノ目的タル部分(以下使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ト稱ス)ノ所有者ニ對シ使用令書又ハ收用令書ヲ送達スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ送達ニ著シキ日時ヲ要スル場合其ノ他所有者ニ送達スルコト著シク困難ナル場合ニ於テハ權原ニ基キ當該工場事業場ヲ占有スル者(以下管理者ト稱ス)ニ對シ送達スルヲ以テ足ル
前項本文ノ場合ニ於テ所有者ガ管理者ニ非ザルトキハ主務大臣ハ管理者ニ對シテモ令書ヲ送達スベシ
第四條 主務大臣令書ノ送達ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ニ付權利ヲ有スル者(令書ノ送達ヲ受ケタル者ヲ除ク)ニシテ知レタルモノニ對シ之ヲ通知スベシ
主務大臣令書ノ送達ヲ爲シタルトキハ前項ノ通知ノ外軍機保護上特ニ支障アル事項ヲ除キ之ヲ官報ニ公吿スベシ
使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ニ付先取特權、質權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタルトキ(通知ヲ受ケザル者ノ中令書ノ送達ノ際權利ヲ有スル者ニ在リテハ公吿ノトキ、令書ノ送達後權利ヲ有スルニ至リタル者ニ在リテハ權利ヲ有スルニ至リタルトキ)ハ遲滯ナク當該權利ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
第五條 使用令書又ハ收用令書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 使用又ハ收用スル主務大臣名
二 令書ノ送達ヲ受クベキ者ノ名
三 使用又ハ收用スベキ工場事業場ノ名稱及所在ノ場所
四 使用又ハ收用ノ範圍
五 使用ノ時期及期間又ハ收用ノ時期
六 第三十條第一項ノ規定ニ依リ所轄官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ第六條又ハ第十條第一項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ職權ヲ行ハシムル場合ニ於テハ其ノ旨
七 其ノ他必要ト認ムル事項
第六條 使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ノ所有者又ハ管理者ハ使用又ハ收用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ左ニ揭グル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
一 當該工場事業場ニ建物其ノ他ノ工作物、機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物ヲ設置シ又ハ備附クルコト
二 當該工場事業場ニ屬スル建物其ノ他ノ工作物ヲ撤去シ又ハ當該工場事業場ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物ニシテ使用若ハ收用ノ目的タルモノノ備附ケヲ止ムルコト
三 當該工場事業場ノ形質ヲ變更スルコト
四 當該工場事業場ヲ讓渡シ、賃貸シ、質權又ハ抵當權ノ目的ト爲シ其ノ他當該工場事業場ニ關シ新ナル處分ヲ爲スコト
第七條 使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ノ所有者又ハ管理者ハ當該工場事業場ニ付讓渡、賃貸其ノ他ノ事由ニ因リ他ノ者ガ所有者若ハ管理者タルニ至リタルトキ又ハ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ使用若ハ收用ニ應ズルコト能ハザルニ至リタルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ報吿スベシ
前項ノ規定ハ前條ノ許可アリタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第八條 主務大臣令書ヲ送達シタル後使用又ハ收用前ニ於テ當該工場事業場ノ全部又ハ一部ヲ使用又ハ收用セザルモノト決定シタルトキハ其ノ所有者及管理者ニ其ノ旨ヲ通知スベシ
第四條第一項及第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九條 使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ノ所有者及管理者ハ令書ニ記載シタル使用又ハ收用ノ時期ニ當該工場事業場ヲ引渡スベシ
前項ノ規定ハ當該工場事業場ニ付强制執行手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第十條 主務大臣ハ當該官吏ヲシテ使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十一條 當該官吏工場事業場ノ引渡ヲ受ケタルトキハ受領調書ヲ作リ引渡ヲ爲シタル所有者及管理者ニ之ヲ交付スベシ
當該官吏前項ノ規定ニ依リ受領調書ヲ管理者ノミニ交付シタル場合ニ於テハ遲滯ナク所有者ニ其ノ謄本ヲ送達スベシ
第十二條 主務大臣工場事業場ノ使用又ハ收用ヲ爲ス場合ニ於テ國家總動員法第十三條第二項ノ規定ニ依リ其ノ從業者ヲ供用セシメントスルトキハ當該工場事業場ノ事業主ニ對シ左ノ事項ヲ記載シタル供用令書ヲ送達スベシ
一 供用ニ依ル從業者ヲ使用スル官廳名
二 供用セシムベキ從業者ノ勤務スル工場事業場ノ表示
三 供用セシムベキ從業者ノ職種及員數
四 供用ノ時期
五 供用ノ期間ヲ定メタルトキハ其ノ期間
六 其ノ他必要ト認ムル事項
第十三條 主務大臣國家總動員法第十三條第二項ノ規定ニ依リ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施セントスルトキハ實施ノ決定ヲ爲スベシ
第十四條 主務大臣前條ノ決定ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク決定書ノ謄本ヲ特許權者又ハ實用新案權者及特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施權者ニ送達スベシ
決定書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施スル官廳名
二 決定ノ要旨
三 特許番號又ハ登錄番號
四 發明又ハ實用新案ノ名稱
五 特許權者又ハ實用新案權者及特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施權者ノ住所及名
六 其ノ他必要ト認ムル事項
第十五條 第十三條ノ規定ニ依ル實施ノ決定アリタルトキハ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施スル官廳ハ特許局ニ實施權設定ノ登錄ヲ囑託スベシ
第十六條 主務大臣第十四條ノ決定書ノ謄本ヲ送達シタルトキハ特許權若ハ實用新案權又ハ特許發明若ハ登錄實用新案ノ實施權ニ付登錄シタル權利ヲ有スル者ニ其ノ旨ヲ通知シ且軍機保護上特ニ支障アル事項ヲ除キ之ヲ官報及特許公報又ハ實用新案公報ニ公吿スベシ
第十七條 主務大臣當該特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施スルノ必要ナキニ至リタルトキハ特許權者又ハ實用新案權者及特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施權者竝ニ特許權若ハ實用新案權又ハ特許發明若ハ登錄實用新案ノ實施權ニ付登錄シタル權利ヲ有スル者ニ其ノ旨ヲ通知スベシ
主務大臣前項ノ通知ヲ爲シタルトキハ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施スル官廳ハ特許局ニ實施權抹消ノ登錄ヲ囑託スベシ
第十八條 工場事業場ヲ使用スル場合ニ於テハ使用令書ニ記載シタル使用ノ時期ニ於テ政府其ノ使用權ヲ取得シ其ノ他ノ權利ハ使用ノ期間其ノ行使ヲ停止セラル但シ使用ヲ妨ゲザルモノハ此ノ限ニ在ラズ
工場事業場ヲ收用スル場合ニ於テハ收用令書ニ記載シタル收用ノ時期ニ於テ政府其ノ所有權ヲ取得シ其ノ他ノ權利ハ消滅ス
第十九條 工場事業場ノ使用開始後當該工場事業場ノ所有者ト爲リタル者ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ報吿スベシ
第二十條 工場事業場ニ屬スル土地又ハ建物ヲ本令ニ依リ收用シタル場合ニ於ケル所有權移轉ノ登記ハ主務大臣遲滯ナク之ヲ登記所ニ囑託スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ囑託書ニ收用令書及土地又ハ建物ニ關スル受領調書ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
不動產登記法第百三條第二項及第百三條ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條 工場事業場ノ使用期間滿了シ又ハ其ノ全部若ハ一部ノ使用ヲ廢止スルトキハ主務大臣ハ之ヲ所有者ニ返還スベシ但シ返還ノ時期ニ於テ管理者タルコトヲ得ベキ者ヨリ豫メ請求アリタルトキハ其ノ者ニ返還スルコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依リ返還セントスルトキハ豫メ返還通知書ヲ返還ヲ受クベキ者ニ送達スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ所有者ニ送達スルコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項但書ノ規定ニ依ル請求ナキトキハ官報ニ公吿スルヲ以テ足ル
第四條第一項ノ規定ハ前項ノ場合ニ、同條第二項ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 返還通知書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 返還官廳名
二 返還ヲ受クベキ者ノ名
三 返還スベキ工場事業場ノ名稱及所在ノ場所
四 返還ノ範圍
五 返還ノ時期
六 其ノ他必要ト認ムル事項
第二十三條 工場事業場ノ使用權ハ返還通知書又ハ公吿ノ返還時期ニ於テ消滅ス
第二十四條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ工場事業場ノ使用又ハ收用ニ因ル損失ノ補償ニ付テハ令書送達ノ時ヨリ使用ノ場合ニ在リテハ返還通知書又ハ公吿ノ返還時期迄ノ間ニ、收用ノ場合ニ在リテハ收用ノ時期迄ノ間ニ使用又ハ收用ノ目的タル工場事業場ニ付所有權其ノ他ノ權利ヲ有シタル者ガ使用又ハ收用ノ處分ニ因リテ通常受クベキ損失トシ特許發明若ハ登錄實用新案ノ實施又ハ從業者ノ供用ニ因ル損失ノ補償ニ付テハ實施ニ係ル特許發明若ハ登錄實用新案ニ付決定ノ時ニ於テ權利ヲ有スル者又ハ供用ヲ爲シタル事業主ガ其ノ實施又ハ供用ニ因リテ通常受クベキ損失トス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ工場事業場ノ使用ノ場合ニ在リテハ使用期間滿了又ハ使用廢止ノ後ニ、工場事業場ノ收用ノ場合ニ在リテハ收用ノ後ニ、特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施ノ場合ニ在リテハ實施ノ後ニ、從業者ノ供用ノ場合ニ在リテハ供用ノ後ニ之ヲ請求スベシ但シ工場事業場ノ使用ノ場合ニ在リテハ閣令ヲ以テ定ムル別段ノ時期ニ於テ之ヲ請求スルコトヲ得
第六條ノ規定ニ違反シテ同條各號ニ揭グル行爲ヲ爲シタル者ニ對シテハ之ニ係ル損失ノ補償ヲ爲サザルコトヲ得
第二十五條 使用若ハ收用シタル工場事業場ニ屬スル土地、建物其ノ他ノ工作物、機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物又ハ實施ニ係ル特許發明若ハ登錄實用新案ニ關スル權利ガ知レタル先取特權、質權又ハ抵當權ノ目的タル場合ニ於テハ主務大臣ハ其ノ權利ノ目的タルモノニ付交付スベキ補償金ヲ供託スベシ
先取特權者、質權者又ハ抵當權者ハ前項ノ供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十六條 工場事業場ノ一部ヲ收用スルニ因リテ殘部ヲ從來用ヒタル目的ニ供スルコト能ハザルトキハ所有者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ其ノ全部ノ收用ヲ請求スルコトヲ得
第二十七條 工場事業場ノ使用ガ三年以上ニ亙ルトキ又ハ工場事業場ノ使用ニ因リ從來用ヒタル目的ニ供スルコト著シク困難トナルニ至ルトキハ所有者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ其ノ工場事業場ノ收用ヲ請求スルコトヲ得
第二十八條 收用シタル工場事業場ノ全部又ハ一部不用ニ歸シ國家總動員法第十五條ノ規定ニ依リ拂下ゲントスルトキハ主務大臣ハ舊所有者又ハ其ノ一般承繼人ニ對シ其ノ旨及拂下ノ價格ヲ通知スベシ但シ主務大臣舊所有者又ハ其ノ一般承繼人ヲ確知スルコト能ハザルトキハ官報ニ少クトモ二囘公吿スベシ
前項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ二月以內又ハ同項ノ第二囘ノ公吿ヲ爲シタル日ヨリ六月以內ニ舊所有者又ハ其ノ一般承繼人ガ買受ノ通知ヲ爲サザルトキハ其ノ權利ヲ失フ
第二十六條ノ規定ニ依リ收用シタル殘部ハ他ノ部分ガ不用ニ歸シ國家總動員法第十五條ノ規定ニ依リ之ト併セテ拂下ゲントスル場合ニ於テノミ前二項ノ例ニ依ル
第二十九條 主務大臣ハ使用又ハ收用セントスル工場事業場又ハ實施セントスル特許發明又ハ登錄實用新案ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ使用若ハ收用セントスル工場事業場ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第三十條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ其ノ所轄スル官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ第六條、第十條第一項又ハ前條第一項ニ規定スル職權ノ一部ヲ行ハシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシメ又ハ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第三十一條 第四條乃至第七條、第十條乃至第十二條、第十四條、第十九條、第二十一條、第二十二條、第二十八條、第二十九條第二項及前條第二項ノ規定ノ施行ニ關シ必要ナル事項ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二條 本令中閣令トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル工場事業場ノ使用若ハ收用、從業者ノ供用又ハ特許發明若ハ登錄實用新案ノ實施ニ關スル場合ニ在リテハ陸軍省令又ハ海軍省令トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中閣令トアルハ朝鮮又ハ臺灣ニ在リテハ總督府令、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ廳令トス
本令中官報トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル工場事業場ノ使用若ハ收用又ハ特許發明若ハ登錄實用新案ノ實施ニ關スル場合ヲ除クノ外朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督府官報、臺灣ニ在リテハ臺灣總督府報、樺太ニ在リテハ樺太廳公報、南洋群島ニ在リテハ南洋廳公報トス
本令中不動產登記法トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮不動產登記令、南洋群島ニ在リテハ南洋群島裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル不動產登記法トス
第三十三條 本令中主務大臣トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル工場事業場ノ使用若ハ收用、從業者ノ供用又ハ特許發明若ハ登錄實用新案ノ實施ニ關シテハ陸軍大臣又ハ海軍大臣トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中主務大臣トアルハ朝鮮、臺灣、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮總督、臺灣總督、樺太廳長官又ハ南洋廳長官トス
本令中地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トス
附 則
本令ハ昭和十五年二月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕工場事業場使用収用令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年十二月二十八日
内閣総理大臣 阿部信行
逓信大臣 永井柳太郎
陸軍大臣 畑俊六
大蔵大臣 青木一男
海軍大臣 吉田善吾
内務大臣 小原直
商工大臣 伍堂卓雄
拓務大臣 金光庸夫
文部大臣 河原田稼吉
農林大臣 伯爵 酒井忠正
厚生大臣 秋田清
鉄道大臣 永田秀次郎
勅令第九百一号
工場事業場使用収用令
第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十三条第一項ノ規定ニ基ク総動員業務タル事業ニ属スル工場若ハ事業場又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル施設ノ使用又ハ収用並ニ同条第二項ノ規定ニ基ク従業者ノ供用及特許発明又ハ登録実用新案ノ実施ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
前項ノ工場若ハ事業場又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル施設ハ以下之ヲ工場事業場ト称ス
第二条 主務大臣総動員物資ノ生産又ハ修理ニ関シ国家総動員上特ニ必要アリト認ムルトキハ軍用ニ供スル物資又ハ閣令ヲ以テ定ムル総動員物資ノ生産又ハ修理ヲ為ス工場事業場ニ属スル土地、建物其ノ他ノ工作物、機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物ノ全部又ハ一部ヲ使用又ハ収用スルコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依リ工場事業場ヲ使用又ハ収用セントスルトキハ内閣総理大臣ニ協議スベシ
第三条 主務大臣工場事業場ヲ使用又ハ収用セントスルトキハ工場事業場ノ使用又ハ収用ノ目的タル部分(以下使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ト称ス)ノ所有者ニ対シ使用令書又ハ収用令書ヲ送達スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ送達ニ著シキ日時ヲ要スル場合其ノ他所有者ニ送達スルコト著シク困難ナル場合ニ於テハ権原ニ基キ当該工場事業場ヲ占有スル者(以下管理者ト称ス)ニ対シ送達スルヲ以テ足ル
前項本文ノ場合ニ於テ所有者ガ管理者ニ非ザルトキハ主務大臣ハ管理者ニ対シテモ令書ヲ送達スベシ
第四条 主務大臣令書ノ送達ヲ為シタルトキハ遅滞ナク使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ニ付権利ヲ有スル者(令書ノ送達ヲ受ケタル者ヲ除ク)ニシテ知レタルモノニ対シ之ヲ通知スベシ
主務大臣令書ノ送達ヲ為シタルトキハ前項ノ通知ノ外軍機保護上特ニ支障アル事項ヲ除キ之ヲ官報ニ公告スベシ
使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ニ付先取特権、質権又ハ抵当権ヲ有スル者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタルトキ(通知ヲ受ケザル者ノ中令書ノ送達ノ際権利ヲ有スル者ニ在リテハ公告ノトキ、令書ノ送達後権利ヲ有スルニ至リタル者ニ在リテハ権利ヲ有スルニ至リタルトキ)ハ遅滞ナク当該権利ヲ主務大臣ニ届出ヅベシ
第五条 使用令書又ハ収用令書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 使用又ハ収用スル主務大臣名
二 令書ノ送達ヲ受クベキ者ノ名
三 使用又ハ収用スベキ工場事業場ノ名称及所在ノ場所
四 使用又ハ収用ノ範囲
五 使用ノ時期及期間又ハ収用ノ時期
六 第三十条第一項ノ規定ニ依リ所轄官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ第六条又ハ第十条第一項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ職権ヲ行ハシムル場合ニ於テハ其ノ旨
七 其ノ他必要ト認ムル事項
第六条 使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ノ所有者又ハ管理者ハ使用又ハ収用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ左ニ掲グル行為ヲ為スコトヲ得ズ
一 当該工場事業場ニ建物其ノ他ノ工作物、機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物ヲ設置シ又ハ備附クルコト
二 当該工場事業場ニ属スル建物其ノ他ノ工作物ヲ撤去シ又ハ当該工場事業場ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物ニシテ使用若ハ収用ノ目的タルモノノ備附ケヲ止ムルコト
三 当該工場事業場ノ形質ヲ変更スルコト
四 当該工場事業場ヲ譲渡シ、賃貸シ、質権又ハ抵当権ノ目的ト為シ其ノ他当該工場事業場ニ関シ新ナル処分ヲ為スコト
第七条 使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ノ所有者又ハ管理者ハ当該工場事業場ニ付譲渡、賃貸其ノ他ノ事由ニ因リ他ノ者ガ所有者若ハ管理者タルニ至リタルトキ又ハ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ使用若ハ収用ニ応ズルコト能ハザルニ至リタルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ遅滞ナク之ヲ主務大臣ニ報告スベシ
前項ノ規定ハ前条ノ許可アリタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第八条 主務大臣令書ヲ送達シタル後使用又ハ収用前ニ於テ当該工場事業場ノ全部又ハ一部ヲ使用又ハ収用セザルモノト決定シタルトキハ其ノ所有者及管理者ニ其ノ旨ヲ通知スベシ
第四条第一項及第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九条 使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ノ所有者及管理者ハ令書ニ記載シタル使用又ハ収用ノ時期ニ当該工場事業場ヲ引渡スベシ
前項ノ規定ハ当該工場事業場ニ付強制執行手続、国税徴収法ニ依ル強制徴収手続其ノ他此等ノ手続ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第十条 主務大臣ハ当該官吏ヲシテ使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十一条 当該官吏工場事業場ノ引渡ヲ受ケタルトキハ受領調書ヲ作リ引渡ヲ為シタル所有者及管理者ニ之ヲ交付スベシ
当該官吏前項ノ規定ニ依リ受領調書ヲ管理者ノミニ交付シタル場合ニ於テハ遅滞ナク所有者ニ其ノ謄本ヲ送達スベシ
第十二条 主務大臣工場事業場ノ使用又ハ収用ヲ為ス場合ニ於テ国家総動員法第十三条第二項ノ規定ニ依リ其ノ従業者ヲ供用セシメントスルトキハ当該工場事業場ノ事業主ニ対シ左ノ事項ヲ記載シタル供用令書ヲ送達スベシ
一 供用ニ依ル従業者ヲ使用スル官庁名
二 供用セシムベキ従業者ノ勤務スル工場事業場ノ表示
三 供用セシムベキ従業者ノ職種及員数
四 供用ノ時期
五 供用ノ期間ヲ定メタルトキハ其ノ期間
六 其ノ他必要ト認ムル事項
第十三条 主務大臣国家総動員法第十三条第二項ノ規定ニ依リ特許発明又ハ登録実用新案ヲ実施セントスルトキハ実施ノ決定ヲ為スベシ
第十四条 主務大臣前条ノ決定ヲ為シタルトキハ遅滞ナク決定書ノ謄本ヲ特許権者又ハ実用新案権者及特許発明又ハ登録実用新案ノ実施権者ニ送達スベシ
決定書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 特許発明又ハ登録実用新案ヲ実施スル官庁名
二 決定ノ要旨
三 特許番号又ハ登録番号
四 発明又ハ実用新案ノ名称
五 特許権者又ハ実用新案権者及特許発明又ハ登録実用新案ノ実施権者ノ住所及名
六 其ノ他必要ト認ムル事項
第十五条 第十三条ノ規定ニ依ル実施ノ決定アリタルトキハ特許発明又ハ登録実用新案ヲ実施スル官庁ハ特許局ニ実施権設定ノ登録ヲ嘱託スベシ
第十六条 主務大臣第十四条ノ決定書ノ謄本ヲ送達シタルトキハ特許権若ハ実用新案権又ハ特許発明若ハ登録実用新案ノ実施権ニ付登録シタル権利ヲ有スル者ニ其ノ旨ヲ通知シ且軍機保護上特ニ支障アル事項ヲ除キ之ヲ官報及特許公報又ハ実用新案公報ニ公告スベシ
第十七条 主務大臣当該特許発明又ハ登録実用新案ヲ実施スルノ必要ナキニ至リタルトキハ特許権者又ハ実用新案権者及特許発明又ハ登録実用新案ノ実施権者並ニ特許権若ハ実用新案権又ハ特許発明若ハ登録実用新案ノ実施権ニ付登録シタル権利ヲ有スル者ニ其ノ旨ヲ通知スベシ
主務大臣前項ノ通知ヲ為シタルトキハ特許発明又ハ登録実用新案ヲ実施スル官庁ハ特許局ニ実施権抹消ノ登録ヲ嘱託スベシ
第十八条 工場事業場ヲ使用スル場合ニ於テハ使用令書ニ記載シタル使用ノ時期ニ於テ政府其ノ使用権ヲ取得シ其ノ他ノ権利ハ使用ノ期間其ノ行使ヲ停止セラル但シ使用ヲ妨ゲザルモノハ此ノ限ニ在ラズ
工場事業場ヲ収用スル場合ニ於テハ収用令書ニ記載シタル収用ノ時期ニ於テ政府其ノ所有権ヲ取得シ其ノ他ノ権利ハ消滅ス
第十九条 工場事業場ノ使用開始後当該工場事業場ノ所有者ト為リタル者ハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ遅滞ナク之ヲ主務大臣ニ報告スベシ
第二十条 工場事業場ニ属スル土地又ハ建物ヲ本令ニ依リ収用シタル場合ニ於ケル所有権移転ノ登記ハ主務大臣遅滞ナク之ヲ登記所ニ嘱託スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ嘱託書ニ収用令書及土地又ハ建物ニ関スル受領調書ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
不動産登記法第百三条第二項及第百三条ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一条 工場事業場ノ使用期間満了シ又ハ其ノ全部若ハ一部ノ使用ヲ廃止スルトキハ主務大臣ハ之ヲ所有者ニ返還スベシ但シ返還ノ時期ニ於テ管理者タルコトヲ得ベキ者ヨリ予メ請求アリタルトキハ其ノ者ニ返還スルコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依リ返還セントスルトキハ予メ返還通知書ヲ返還ヲ受クベキ者ニ送達スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ所有者ニ送達スルコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項但書ノ規定ニ依ル請求ナキトキハ官報ニ公告スルヲ以テ足ル
第四条第一項ノ規定ハ前項ノ場合ニ、同条第二項ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二条 返還通知書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 返還官庁名
二 返還ヲ受クベキ者ノ名
三 返還スベキ工場事業場ノ名称及所在ノ場所
四 返還ノ範囲
五 返還ノ時期
六 其ノ他必要ト認ムル事項
第二十三条 工場事業場ノ使用権ハ返還通知書又ハ公告ノ返還時期ニ於テ消滅ス
第二十四条 国家総動員法第二十七条ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ工場事業場ノ使用又ハ収用ニ因ル損失ノ補償ニ付テハ令書送達ノ時ヨリ使用ノ場合ニ在リテハ返還通知書又ハ公告ノ返還時期迄ノ間ニ、収用ノ場合ニ在リテハ収用ノ時期迄ノ間ニ使用又ハ収用ノ目的タル工場事業場ニ付所有権其ノ他ノ権利ヲ有シタル者ガ使用又ハ収用ノ処分ニ因リテ通常受クベキ損失トシ特許発明若ハ登録実用新案ノ実施又ハ従業者ノ供用ニ因ル損失ノ補償ニ付テハ実施ニ係ル特許発明若ハ登録実用新案ニ付決定ノ時ニ於テ権利ヲ有スル者又ハ供用ヲ為シタル事業主ガ其ノ実施又ハ供用ニ因リテ通常受クベキ損失トス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ工場事業場ノ使用ノ場合ニ在リテハ使用期間満了又ハ使用廃止ノ後ニ、工場事業場ノ収用ノ場合ニ在リテハ収用ノ後ニ、特許発明又ハ登録実用新案ノ実施ノ場合ニ在リテハ実施ノ後ニ、従業者ノ供用ノ場合ニ在リテハ供用ノ後ニ之ヲ請求スベシ但シ工場事業場ノ使用ノ場合ニ在リテハ閣令ヲ以テ定ムル別段ノ時期ニ於テ之ヲ請求スルコトヲ得
第六条ノ規定ニ違反シテ同条各号ニ掲グル行為ヲ為シタル者ニ対シテハ之ニ係ル損失ノ補償ヲ為サザルコトヲ得
第二十五条 使用若ハ収用シタル工場事業場ニ属スル土地、建物其ノ他ノ工作物、機械、器具其ノ他工場事業場ノ用ニ供スル物又ハ実施ニ係ル特許発明若ハ登録実用新案ニ関スル権利ガ知レタル先取特権、質権又ハ抵当権ノ目的タル場合ニ於テハ主務大臣ハ其ノ権利ノ目的タルモノニ付交付スベキ補償金ヲ供託スベシ
先取特権者、質権者又ハ抵当権者ハ前項ノ供託金ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第二十六条 工場事業場ノ一部ヲ収用スルニ因リテ残部ヲ従来用ヒタル目的ニ供スルコト能ハザルトキハ所有者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ其ノ全部ノ収用ヲ請求スルコトヲ得
第二十七条 工場事業場ノ使用ガ三年以上ニ亘ルトキ又ハ工場事業場ノ使用ニ因リ従来用ヒタル目的ニ供スルコト著シク困難トナルニ至ルトキハ所有者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ其ノ工場事業場ノ収用ヲ請求スルコトヲ得
第二十八条 収用シタル工場事業場ノ全部又ハ一部不用ニ帰シ国家総動員法第十五条ノ規定ニ依リ払下ゲントスルトキハ主務大臣ハ旧所有者又ハ其ノ一般承継人ニ対シ其ノ旨及払下ノ価格ヲ通知スベシ但シ主務大臣旧所有者又ハ其ノ一般承継人ヲ確知スルコト能ハザルトキハ官報ニ少クトモ二回公告スベシ
前項ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ二月以内又ハ同項ノ第二回ノ公告ヲ為シタル日ヨリ六月以内ニ旧所有者又ハ其ノ一般承継人ガ買受ノ通知ヲ為サザルトキハ其ノ権利ヲ失フ
第二十六条ノ規定ニ依リ収用シタル残部ハ他ノ部分ガ不用ニ帰シ国家総動員法第十五条ノ規定ニ依リ之ト併セテ払下ゲントスル場合ニ於テノミ前二項ノ例ニ依ル
第二十九条 主務大臣ハ使用又ハ収用セントスル工場事業場又ハ実施セントスル特許発明又ハ登録実用新案ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ使用若ハ収用セントスル工場事業場ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第三十条 主務大臣必要アリト認ムルトキハ其ノ所轄スル官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ第六条、第十条第一項又ハ前条第一項ニ規定スル職権ノ一部ヲ行ハシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシメ又ハ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第三十一条 第四条乃至第七条、第十条乃至第十二条、第十四条、第十九条、第二十一条、第二十二条、第二十八条、第二十九条第二項及前条第二項ノ規定ノ施行ニ関シ必要ナル事項ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二条 本令中閣令トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル工場事業場ノ使用若ハ収用、従業者ノ供用又ハ特許発明若ハ登録実用新案ノ実施ニ関スル場合ニ在リテハ陸軍省令又ハ海軍省令トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中閣令トアルハ朝鮮又ハ台湾ニ在リテハ総督府令、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ庁令トス
本令中官報トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル工場事業場ノ使用若ハ収用又ハ特許発明若ハ登録実用新案ノ実施ニ関スル場合ヲ除クノ外朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督府官報、台湾ニ在リテハ台湾総督府報、樺太ニ在リテハ樺太庁公報、南洋群島ニ在リテハ南洋庁公報トス
本令中不動産登記法トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮不動産登記令、南洋群島ニ在リテハ南洋群島裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル不動産登記法トス
第三十三条 本令中主務大臣トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル工場事業場ノ使用若ハ収用、従業者ノ供用又ハ特許発明若ハ登録実用新案ノ実施ニ関シテハ陸軍大臣又ハ海軍大臣トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中主務大臣トアルハ朝鮮、台湾、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官トス
本令中地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トス
附 則
本令ハ昭和十五年二月一日ヨリ之ヲ施行ス