第一條 本法ニ於テ軍需品ト稱スルハ左ノ各號ニ揭クルモノヲ謂フ
二 軍用ニ供シ得ヘキ船舶、海陸聯絡輸送設備、鐵道軌道及其ノ附屬設備其ノ他ノ輸送用物件
六 前各號ニ揭クルモノノ生產又ハ修理ニ要スル材料、原料、器具機械、設備及建築材料
七 前各號ニ揭クルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル軍用ニ供シ得ヘキ物件
第二條 政府ハ戰時ニ際シ軍需品ノ生產又ハ修理ノ爲必要アルトキハ左ノ各號ニ揭クル工場及事業場竝其ノ附屬設備ノ全部又ハ一部ヲ管理シ、使用シ又ハ收用スルコトヲ得
二 前號ニ揭クル工場及事業場ニ要スル原料若ハ燃料ヲ生產シ又ハ電力若ハ動力ヲ發生スル工場及事業場
第三條 政府ハ戰時ニ際シ軍需品ノ生產、修理又ハ貯藏ノ爲必要アルトキハ土地竝家屋倉庫其ノ他ノ工作物及其ノ附屬設備ノ全部又ハ一部ヲ管理シ、使用シ又ハ收用スルコトヲ得
政府ハ戰時ニ際シ必要アルトキハ第一條第二號ニ揭クル物件ノ全部又ハ一部ヲ管理スルコトヲ得
第四條 前二條ノ場合ニ於テ政府ハ從業者ヲ供用セシムルコトヲ得
第五條 前三條ノ規定ニ依ル處分ニ因リ生シタル損害ハ政府之ヲ補償ス
第六條 政府ハ戰時ニ際シ軍需品又ハ第二條第二號ノ原料若ハ燃料ノ讓渡、使用、消費、所持、移動若ハ輸出入ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第七條 戰時ニ際シ第一條ニ揭クル物件ニシテ徵發令中ニ規定ナキモノヲ使用又ハ收用セムトスルトキハ徵發令ノ規定ヲ準用ス
第八條 政府ハ戰時ニ際シ兵役ニ在ル者ヲ徵兵令ニ拘ラス勅令ノ定ムル所ニ依リ召集シテ軍事輸送機關又ハ第二條ノ規定ニ依リ政府ノ管理スル工場若ハ事業場ノ業務ニ從事セシムルコトヲ得
前項ノ規定ハ第二條各號ニ揭クル工場又ハ事業場ニシテ國ノ經營ニ係ルモノニ關シ之ヲ準用ス
第九條 政府ハ戰時ニ際シ勅令ノ定ムル所ニ依リ兵役ニ在ラサル者ヲ徵用シテ前條ニ揭クル業務ニ從事セシムルコトヲ得
第十條 第二條又ハ第三條ノ規定ニ依リ收用シタル工場、事業場、土地又ハ家屋其ノ他ノ工作物及其ノ附屬設備不用ニ歸シタル場合ニ於テ收用シタル時ヨリ五年內ニ拂下クルトキハ舊所有者又ハ其ノ承繼人ニ於テ優先ニ之ヲ買受クルコトヲ得
第十一條 政府ハ軍事上必要アルトキハ第二條各號ニ揭クル工場若ハ事業場ヲ有スル者又ハ其ノ管理者ニ對シ其ノ事業ニ使用スル設備、器具機械、從業者若ハ材料原料器具機械ノ供給者又ハ生產發生若ハ修理ノ能力若ハ數量其ノ他事業ノ狀況ニ付必要ト認ムル事項ノ報吿ヲ命スルコトヲ得
第十二條 政府ハ軍事上必要アルトキハ鐵道、軌道、船舶、海陸聯絡輸送設備其ノ他ノ輸送用物件ノ所有者又ハ管理者ニ對シ車輛、軌條、船舶又ハ海陸聯絡輸送設備ノ數量、構造、輸送能力、從業者其ノ他必要ト認ムル事項ノ報吿ヲ命スルコトヲ得
第十三條 政府ハ軍事上必要アルトキハ軍需品又ハ第二條第二號ノ原料若ハ燃料ノ取引又ハ保管ヲ業トスル者ニ對シ其ノ取引ノ相手方、取引又ハ保管ノ數量、保管ノ設備其ノ他事業ノ狀況ニ付必要ト認ムル事項ノ報吿ヲ命スルコトヲ得
第十四條 政府ハ軍事上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第二條各號ニ揭クル工場若ハ事業場ヲ有スル者又ハ前條ニ揭クル者ニシテ一定ノ資格アルモノニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ一定ノ利益ヲ保證シ又ハ奬勵金ヲ下付スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ政府ハ其ノ者ニ對シ軍需品ノ生產、修理若ハ貯藏ヲ爲サシメ又ハ軍事上必要ナル設備ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ前項ノ規定ニ依リ利益保證又ハ奬勵金下付ヲ受クル事業ヲ監督シ又ハ之カ爲必要ナル命令若ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十五條 第五條ノ規定ニ依ル補償金及前條ノ利益保證又ハ奬勵金ノ算定竝第十條ノ規定ニ依ル拂下價額ハ軍需評議會ノ決議ヲ經テ之ヲ定ム
第十六條 當該官吏又ハ吏員ハ第十一條乃至第十三條ノ規定ニ依リ報吿ヲ命シ得ル事項調査ノ爲又ハ第十四條ノ規定ニ依ル監督若ハ處分ヲ爲ス爲必要ナル場所ニ立入リ、檢査ヲ爲シ、調査資料ノ提供ヲ求メ又ハ從業者ニ對シ質問ヲ爲スコトヲ得
第十七條 工業的發明ニ係ル物又ハ方法ニ關シ豫メ政府ノ承認ヲ得タル事項又ハ設備ニ付テハ報吿ヲ命シ、檢査ヲ爲シ、調査資料ノ提供ヲ求メ又ハ從業者ニ對シ質問ヲ爲スコトヲ得ス
第十八條 利益保證又ハ奬勵金ヲ受クル事業ヲ承繼スル者ハ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令、之ニ依リテ爲ス處分又ハ利益保證若ハ奬勵金下付ニ附シタル條件ニ依ル前者ノ權利義務ヲ承繼ス
第十九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第二條又ハ第三條ノ規定ニ依ル管理、使用又ハ收用ヲ拒ミタル者
第二十條 第十四條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第八條ノ規定ニ依ル召集ニ應セス又ハ同條ノ規定ニ依ル業務ニ從事スルコトヲ拒ミタル者
二 第九條ノ規定ニ依ル徵用ニ應セス又ハ同條ノ規定ニ依ル業務ニ從事スルコトヲ拒ミタル者
三 第十一條乃至第十三條ノ規定ニ依リ命セラレタル報吿ヲ爲サス又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
五 第十六條ノ規定ニ依ル當該官吏又ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ拒ミ妨ケ若ハ忌避シ、調査資料ノ提供ヲ爲サス若ハ虛僞ノ調査資料ヲ提供シ又ハ質問ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第二十二條 當該官吏若ハ吏員又ハ其ノ職ニ在リタル者本法ニ依ル職務ニ依リ知得シタル事業上ノ祕密ヲ漏洩シ又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス當該官吏又ハ吏員第十七條ノ規定ニ違反シタルトキ亦同シ
職務上前項ノ祕密ヲ知得シタル他ノ公務員又ハ公務員タリシ者其ノ祕密ヲ漏洩シ又ハ竊用シタルトキ罰前項ニ同シ