朕港灣運送業等統制令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年九月十六日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
內務大臣 田邉治通
遞信大臣 村田省藏
拓務大臣 豊田貞次郞
勅令第八百六十號
港灣運送業等統制令
第一條 國家總動員法第八條ノ規定ニ基ク港灣運送業ニ於ケル貨物ノ移動ニ關スル命令、同法第十六條ノ二ノ規定ニ基ク港灣運送業等ニ屬スル設備ノ讓渡其ノ他ノ處分及使用ニ關スル命令、同法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク港灣運送業等ノ開始、委託、共同經營、讓渡若ハ廢止ニ關スル命令又ハ港灣運送業等ヲ營ム會社ノ合併若ハ解散ニ關スル命令竝ニ同法第十八條ノ規定ニ基ク港灣運送業ノ統制ヲ目的トスル團體ノ設立等ニ關スル命令及當該團體ニ關シ必要ナル事項ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ニ於テ港灣運送業トハ海上運送ニ附隨シテ貨物ノ船積又ハ陸揚ノ爲荷捌、積卸又ハ艀船若ハ曳船ニ依ル運搬ヲ爲ス事業及此等ノ作業ノ請負ヲ爲ス事業ヲ謂フ
第三條 港灣運送業ヲ開始セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四條 遞信大臣ハ港灣運送業者ニ對シ事業ノ委託、受託、共同經營、讓渡若ハ讓受又ハ會社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル委託、共同經營、讓渡又ハ合併ノ條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ遞信大臣之ヲ裁定ス
遞信大臣前項ノ裁定ヲ爲サントスルトキハ事案ノ重要ナルモノニ付テハ海事審議會ノ議ヲ經ベシ
第五條 遞信大臣ハ港灣運送業者ニ對シ事業設備ノ讓渡、讓受若ハ貸借ヲ命ジ又ハ事業設備ノ使用ニ關シ其ノ方法ノ改善其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前條第二項及第三項ノ規定ハ前項前段ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六條 遞信大臣ハ港灣運送業者ニ對シ貨物ヲ指定シテ其ノ取扱ヲ爲スベキコトヲ命ジ又ハ貨物ノ取扱ノ方法若ハ順位ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第七條 港灣運送業者事業ヲ讓渡シ又ハ廢止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ許可ヲ受クベシ
港灣運送業ヲ營ム會社ノ合併又ハ解散ノ決議又ハ總社員ノ同意ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第八條 第四條、第五條及前條ノ規定ハ港灣運送業ノ用ニ供スル設備ノ賃貸ヲ爲ス事業ヲ營ム者ニ之ヲ準用ス
第九條 遞信大臣ハ港灣荷役ノ總力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ第十二條ノ規定ニ依リ團體員タル資格ヲ有スル者ニ對シ港灣運送業ノ綜合的統制運營ヲ圖リ且港灣運送業ニ關スル國策ノ遂行ニ協力スルコトヲ目的トスル團體(以下中央團體ト稱ス)ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル中央團體ノ設立ノ命令アリタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ創立總會ヲ開キ之ニ諮リテ定款其ノ他中央團體ノ設立ニ必要ナル事項ヲ定メ遞信大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十條 中央團體ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ニ揭グル事業ヲ行フ
一 團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ノ港灣運送業ニ關スル統制指導
二 港灣運送業ノ整備確立
三 能率ノ增進、經理ノ改善其ノ他團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ノ港灣運送業ノ發達ニ關スル施設
四 港灣運送業ニ關スル調査及硏究
五 團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ノ港灣運送業ニ關スル檢査
六 前各號ニ揭グルモノノ外中央團體ノ目的ヲ達スルニ必要ナル事業
第十一條 中央團體ノ定款ニハ左ニ揭グル事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 團體員ニ關スル規定
五 事業及其ノ執行ニ關スル規定
六 役員ニ關スル規定
七 會議ニ關スル規定
八 會計ニ關スル規定
第十二條 中央團體ノ團體員タル資格ヲ有スル者ハ左ニ揭グルモノトス
一 港灣運送業者ニシテ遞信大臣ノ指定スルモノ
二 第三十六條ノ規定ニ依リ設立セラルル團體
第十三條 中央團體ハ第九條第二項ノ認可アリタル時又ハ國家總動員法第十八條第三項ノ規定ニ依リ定款ノ作成アリタル時成立ス
前項ノ場合ニ於テハ遞信大臣ハ中央團體成立ノ旨及定款ヲ吿示スベシ
第十四條 中央團體成立シタルトキハ其ノ團體員タル資格ヲ有スル者ハ總テ中央團體ノ團體員トス
第十五條 中央團體ニハ役員トシテ會長一人、理事長一人、理事若干人、監事若干人及評議員若干人ヲ置クベシ
第十六條 會長ハ中央團體ヲ代表シ團體事務ヲ總理ス
理事長ハ會長ヲ輔佐シ團體事務ヲ掌理シ會長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ會長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ會長及理事長ヲ輔佐シ團體事務ヲ分掌シ豫メ會長ノ定ムル順位ニ依リ會長及理事長共ニ事故アルトキハ會長ノ職務ヲ代理シ會長及理事長共ニ缺員ノトキハ會長ノ職務ヲ行フ
監事ハ中央團體ノ財產ノ狀況ヲ監査ス
評議員ハ會長ノ諮問ニ對シ答申シ又ハ會長ニ對シ意見ヲ具申ス
第十七條 會長、理事長、理事、監事及評議員ハ港灣運送業ニ關シ經驗アル者及學識アル者ノ中ヨリ遞信大臣之ヲ命ズ
遞信大臣前項ノ規定ニ依リ會長、理事長又ハ理事ヲ任命シタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スベシ
會長、理事長及理事ノ任期ハ三年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第十八條 會長、理事長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ遞信大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十九條 中央團體ハ港灣運送業ニ關スル事項ニ付關係各大臣ニ建議スルコトヲ得
中央團體ハ關係各大臣ノ諮問ニ對シ答申スベシ
第二十條 中央團體ハ其ノ團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ニ對シ港灣運送業ニ關スル事項ノ調査ヲ爲ス爲必要ナル資料ノ提出ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ資料ノ提出ヲ求メラレタル者ハ遲滯ナク之ヲ提出スベシ
第二十一條 中央團體ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ團體員ニ對シ經費ヲ賦課スルコトヲ得
第二十二條 中央團體ハ其ノ事業ヲ行フ爲特ニ必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ團體員ノ全部又ハ一部ニ對シ前條ノ規定ニ依ル賦課金ノ外特別ノ賦課金ヲ課スルコトヲ得
第二十三條 中央團體ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款又ハ統制規程ニ違反シタル團體員ニ對シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第二十四條 第二十一條若ハ第二十二條ノ規定ニ依ル賦課金又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ中央團體ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ中央團體ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
前項ノ規定ニ依ル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徵收金ニ次ギ其ノ時效ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
第二十五條 中央團體ハ其ノ團體員又ハ團體員タル團體ヲ組織スル者ノ港灣運送業ニ關スル統制規程ヲ設定スベシ
第二十六條 定款ノ變更竝ニ統制規程ノ設定及變更ハ遞信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
遞信大臣前項ノ認可ヲ爲シタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スベシ
第二十七條 中央團體ノ團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ハ中央團體ノ統制規程ニ依ルベシ
第二十八條 中央團體必要アリト認ムルトキハ中央團體ノ役員又ハ使用人ヲシテ團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ノ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
中央團體ノ團體員及團體員タル團體ヲ組織スル者ハ前項ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避スルコトヲ得ズ
中央團體第一項ノ規定ニ依リ役員又ハ使用人ヲシテ檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第二十九條 通常總會ハ每年一囘會長之ヲ招集ス
會長必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ、臨時總會ヲ招集スルコトヲ得
第三十條 左ニ揭グル事項ハ總會ニ諮リ會長之ヲ決ス
一 定款ノ變更
二 收支豫算
三 第二十一條又ハ第二十二條ノ規定ニ依ル賦課金ノ賦課徵收方法
第三十一條 會長ハ每年總會ニ中央團體ノ事業ノ狀況ヲ報吿シ監事ヲシテ財產ノ狀況ヲ報吿セシムベシ
第三十二條 遞信大臣港灣運送業ノ統制運營上必要アリト認ムルトキハ中央團體ニ對シ必要ナル事業ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十三條 遞信大臣ハ中央團體ニ對シ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
遞信大臣必要アリト認ムルトキハ監事ヲシテ監査ノ結果ヲ報吿セシムルコトヲ得
第三十四條 遞信大臣ハ中央團體ノ役員ノ行爲ガ法令又ハ法令ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ、公益ヲ害シタルトキ其ノ他港灣運送業ノ統制運營上役員ヲ不適當ナリト認ムルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
遞信大臣前項ノ規定ニ依リ會長、理事長又ハ理事ヲ解任シタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スベシ
第三十五條 中央團體ハ遞信大臣ノ命令ニ因リテ解散ス
遞信大臣前項ノ命令ヲ爲シタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スベシ
第三十六條 遞信大臣ハ港灣荷役ノ總力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ地區ヲ定メ其ノ地區內ニ於テ第三十九條ノ規定ニ依リ團體員タル資格ヲ有スル者ニ對シ當該地區內ニ於ケル港灣運送業ノ統制運營ヲ圖ルコトヲ目的トスル團體(以下地區別團體ト稱ス)ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
第三十七條 地區別團體ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ニ揭グル事業ヲ行フ
一 團體員ノ港灣運送業及之ニ附隨スル事業ニ關スル統制指導
二 當該地區內ニ於ケル港灣運送業ノ整備確立
三 能率ノ增進、經理ノ改善其ノ他團體員ノ港灣運送業ノ發達ニ關スル施設
四 港灣運送業及之ニ附隨スル事業ニ關スル調査及硏究
五 團體員ノ港灣運送業及之ニ附隨スル事業ニ關スル檢査
六 前各號ニ揭グルモノノ外地區別團體ノ目的ヲ達スルニ必要ナル事業
第三十八條 地區別團體ノ定款ニハ左ニ揭グル事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名稱
三 地區
四 事務所ノ所在地
五 團體員ニ關スル規定
六 事業及其ノ執行ニ關スル規定
七 役員ニ關スル規定
八 會議ニ關スル規定
九 會計ニ關スル規定
第三十九條 地區別團體ノ團體員タル資格ヲ有スル者ハ左ニ揭グルモノトス
一 港灣運送業者ニシテ遞信大臣ノ指定スルモノ
二 港灣運送業ニ附隨スル事業ヲ營ム者ニシテ遞信大臣ノ指定スルモノ
第四十條 地區別團體ハ命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第四十一條 第九條第二項、第十三條乃至第十六條、第十七條第一項第三項、第十九條乃至第三十三條、第三十四條第一項及第三十五條第一項ノ規定ハ地區別團體ニ之ヲ準用ス但シ第十九條中關係各大臣トアルハ關係行政官廳トス
第四十二條 遞信大臣又ハ遞信局長必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ中央團體、地區別團體、港灣運送業者、港灣運送業ニ附隨スル事業ヲ營ム者又ハ港灣運送業ノ用ニ供スル設備ノ賃貸ヲ爲ス事業ヲ營ム者ヨリ其ノ事業ニ關シ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ事務所、營業所、船舶、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第四十三條 遞信大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ遞信局長ニ委任スルコトヲ得
第四十四條 遞信大臣ハ左ニ揭グル場合ニ於テハ內務大臣ニ協議スベシ
一 第四條第一項、第五條第一項又ハ第八條ノ規定ニ基キ命令ヲ爲サントスル場合ニ於テ港灣運送業者又ハ港灣運送業ノ用ニ供スル設備ノ賃貸ヲ爲ス事業ヲ營ム者ガ其ノ命令事項ノ實施上港灣、運河又ハ公有水面ニ關シ許可ヲ必要トスルモノナルトキ
二 公共團體ニ對シ第四條第一項、第五條第一項又ハ第八條ノ規定ニ基キ命令ヲ爲サントスルトキ
第四十五條 本令中遞信大臣又ハ關係各大臣トアルハ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ在リテハ各朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官トシ遞信局長トアルハ朝鮮又ハ臺灣ニ在リテハ各朝鮮總督府遞信局長又ハ臺灣總督府交通局總長トス
第二十四條中市町村トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面、臺灣ニ在リテハ市街庄トシ市町村稅トアルハ朝鮮ニ在リテハ國稅、臺灣ニ在リテハ市街庄稅トシ百分ノ四トアルハ朝鮮ニ在リテハ百分ノ五トス
第四條第三項(第五條第二項及第八條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及前條ノ規定ハ朝鮮、臺灣及樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第四十六條 本令ニ規定スルモノヲ除クノ外中央團體及地區別團體ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和十六年九月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣及樺太ニ在リテハ昭和十六年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕港湾運送業等統制令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年九月十六日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
内務大臣 田邉治通
逓信大臣 村田省蔵
拓務大臣 豊田貞次郎
勅令第八百六十号
港湾運送業等統制令
第一条 国家総動員法第八条ノ規定ニ基ク港湾運送業ニ於ケル貨物ノ移動ニ関スル命令、同法第十六条ノ二ノ規定ニ基ク港湾運送業等ニ属スル設備ノ譲渡其ノ他ノ処分及使用ニ関スル命令、同法第十六条ノ三ノ規定ニ基ク港湾運送業等ノ開始、委託、共同経営、譲渡若ハ廃止ニ関スル命令又ハ港湾運送業等ヲ営ム会社ノ合併若ハ解散ニ関スル命令並ニ同法第十八条ノ規定ニ基ク港湾運送業ノ統制ヲ目的トスル団体ノ設立等ニ関スル命令及当該団体ニ関シ必要ナル事項ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令ニ於テ港湾運送業トハ海上運送ニ附随シテ貨物ノ船積又ハ陸揚ノ為荷捌、積卸又ハ艀船若ハ曳船ニ依ル運搬ヲ為ス事業及此等ノ作業ノ請負ヲ為ス事業ヲ謂フ
第三条 港湾運送業ヲ開始セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ逓信大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四条 逓信大臣ハ港湾運送業者ニ対シ事業ノ委託、受託、共同経営、譲渡若ハ譲受又ハ会社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル委託、共同経営、譲渡又ハ合併ノ条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ逓信大臣之ヲ裁定ス
逓信大臣前項ノ裁定ヲ為サントスルトキハ事案ノ重要ナルモノニ付テハ海事審議会ノ議ヲ経ベシ
第五条 逓信大臣ハ港湾運送業者ニ対シ事業設備ノ譲渡、譲受若ハ貸借ヲ命ジ又ハ事業設備ノ使用ニ関シ其ノ方法ノ改善其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前条第二項及第三項ノ規定ハ前項前段ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六条 逓信大臣ハ港湾運送業者ニ対シ貨物ヲ指定シテ其ノ取扱ヲ為スベキコトヲ命ジ又ハ貨物ノ取扱ノ方法若ハ順位ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第七条 港湾運送業者事業ヲ譲渡シ又ハ廃止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ逓信大臣ノ許可ヲ受クベシ
港湾運送業ヲ営ム会社ノ合併又ハ解散ノ決議又ハ総社員ノ同意ハ命令ノ定ムル所ニ依リ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第八条 第四条、第五条及前条ノ規定ハ港湾運送業ノ用ニ供スル設備ノ賃貸ヲ為ス事業ヲ営ム者ニ之ヲ準用ス
第九条 逓信大臣ハ港湾荷役ノ総力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ第十二条ノ規定ニ依リ団体員タル資格ヲ有スル者ニ対シ港湾運送業ノ綜合的統制運営ヲ図リ且港湾運送業ニ関スル国策ノ遂行ニ協力スルコトヲ目的トスル団体(以下中央団体ト称ス)ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル中央団体ノ設立ノ命令アリタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ創立総会ヲ開キ之ニ諮リテ定款其ノ他中央団体ノ設立ニ必要ナル事項ヲ定メ逓信大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十条 中央団体ハ其ノ目的ヲ達スル為左ニ掲グル事業ヲ行フ
一 団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ノ港湾運送業ニ関スル統制指導
二 港湾運送業ノ整備確立
三 能率ノ増進、経理ノ改善其ノ他団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ノ港湾運送業ノ発達ニ関スル施設
四 港湾運送業ニ関スル調査及研究
五 団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ノ港湾運送業ニ関スル検査
六 前各号ニ掲グルモノノ外中央団体ノ目的ヲ達スルニ必要ナル事業
第十一条 中央団体ノ定款ニハ左ニ掲グル事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 団体員ニ関スル規定
五 事業及其ノ執行ニ関スル規定
六 役員ニ関スル規定
七 会議ニ関スル規定
八 会計ニ関スル規定
第十二条 中央団体ノ団体員タル資格ヲ有スル者ハ左ニ掲グルモノトス
一 港湾運送業者ニシテ逓信大臣ノ指定スルモノ
二 第三十六条ノ規定ニ依リ設立セラルル団体
第十三条 中央団体ハ第九条第二項ノ認可アリタル時又ハ国家総動員法第十八条第三項ノ規定ニ依リ定款ノ作成アリタル時成立ス
前項ノ場合ニ於テハ逓信大臣ハ中央団体成立ノ旨及定款ヲ告示スベシ
第十四条 中央団体成立シタルトキハ其ノ団体員タル資格ヲ有スル者ハ総テ中央団体ノ団体員トス
第十五条 中央団体ニハ役員トシテ会長一人、理事長一人、理事若干人、監事若干人及評議員若干人ヲ置クベシ
第十六条 会長ハ中央団体ヲ代表シ団体事務ヲ総理ス
理事長ハ会長ヲ輔佐シ団体事務ヲ掌理シ会長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ会長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ会長及理事長ヲ輔佐シ団体事務ヲ分掌シ予メ会長ノ定ムル順位ニ依リ会長及理事長共ニ事故アルトキハ会長ノ職務ヲ代理シ会長及理事長共ニ欠員ノトキハ会長ノ職務ヲ行フ
監事ハ中央団体ノ財産ノ状況ヲ監査ス
評議員ハ会長ノ諮問ニ対シ答申シ又ハ会長ニ対シ意見ヲ具申ス
第十七条 会長、理事長、理事、監事及評議員ハ港湾運送業ニ関シ経験アル者及学識アル者ノ中ヨリ逓信大臣之ヲ命ズ
逓信大臣前項ノ規定ニ依リ会長、理事長又ハ理事ヲ任命シタルトキハ其ノ旨ヲ告示スベシ
会長、理事長及理事ノ任期ハ三年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第十八条 会長、理事長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ逓信大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十九条 中央団体ハ港湾運送業ニ関スル事項ニ付関係各大臣ニ建議スルコトヲ得
中央団体ハ関係各大臣ノ諮問ニ対シ答申スベシ
第二十条 中央団体ハ其ノ団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ニ対シ港湾運送業ニ関スル事項ノ調査ヲ為ス為必要ナル資料ノ提出ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ資料ノ提出ヲ求メラレタル者ハ遅滞ナク之ヲ提出スベシ
第二十一条 中央団体ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ団体員ニ対シ経費ヲ賦課スルコトヲ得
第二十二条 中央団体ハ其ノ事業ヲ行フ為特ニ必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ逓信大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ団体員ノ全部又ハ一部ニ対シ前条ノ規定ニ依ル賦課金ノ外特別ノ賦課金ヲ課スルコトヲ得
第二十三条 中央団体ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款又ハ統制規程ニ違反シタル団体員ニ対シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第二十四条 第二十一条若ハ第二十二条ノ規定ニ依ル賦課金又ハ過怠金ヲ滞納スル者アル場合ニ於テ中央団体ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス此ノ場合ニ於テ中央団体ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
前項ノ規定ニ依ル徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徴収金ニ次ギ其ノ時効ニ付テハ市町村税ノ例ニ依ル
第二十五条 中央団体ハ其ノ団体員又ハ団体員タル団体ヲ組織スル者ノ港湾運送業ニ関スル統制規程ヲ設定スベシ
第二十六条 定款ノ変更並ニ統制規程ノ設定及変更ハ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
逓信大臣前項ノ認可ヲ為シタルトキハ其ノ旨ヲ告示スベシ
第二十七条 中央団体ノ団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ハ中央団体ノ統制規程ニ依ルベシ
第二十八条 中央団体必要アリト認ムルトキハ中央団体ノ役員又ハ使用人ヲシテ団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ノ業務若ハ財産ノ状況又ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
中央団体ノ団体員及団体員タル団体ヲ組織スル者ハ前項ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避スルコトヲ得ズ
中央団体第一項ノ規定ニ依リ役員又ハ使用人ヲシテ検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第二十九条 通常総会ハ毎年一回会長之ヲ招集ス
会長必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ、臨時総会ヲ招集スルコトヲ得
第三十条 左ニ掲グル事項ハ総会ニ諮リ会長之ヲ決ス
一 定款ノ変更
二 収支予算
三 第二十一条又ハ第二十二条ノ規定ニ依ル賦課金ノ賦課徴収方法
第三十一条 会長ハ毎年総会ニ中央団体ノ事業ノ状況ヲ報告シ監事ヲシテ財産ノ状況ヲ報告セシムベシ
第三十二条 逓信大臣港湾運送業ノ統制運営上必要アリト認ムルトキハ中央団体ニ対シ必要ナル事業ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ変更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十三条 逓信大臣ハ中央団体ニ対シ業務及会計ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
逓信大臣必要アリト認ムルトキハ監事ヲシテ監査ノ結果ヲ報告セシムルコトヲ得
第三十四条 逓信大臣ハ中央団体ノ役員ノ行為ガ法令又ハ法令ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ、公益ヲ害シタルトキ其ノ他港湾運送業ノ統制運営上役員ヲ不適当ナリト認ムルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
逓信大臣前項ノ規定ニ依リ会長、理事長又ハ理事ヲ解任シタルトキハ其ノ旨ヲ告示スベシ
第三十五条 中央団体ハ逓信大臣ノ命令ニ因リテ解散ス
逓信大臣前項ノ命令ヲ為シタルトキハ其ノ旨ヲ告示スベシ
第三十六条 逓信大臣ハ港湾荷役ノ総力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ予メ地区ヲ定メ其ノ地区内ニ於テ第三十九条ノ規定ニ依リ団体員タル資格ヲ有スル者ニ対シ当該地区内ニ於ケル港湾運送業ノ統制運営ヲ図ルコトヲ目的トスル団体(以下地区別団体ト称ス)ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
第三十七条 地区別団体ハ其ノ目的ヲ達スル為左ニ掲グル事業ヲ行フ
一 団体員ノ港湾運送業及之ニ附随スル事業ニ関スル統制指導
二 当該地区内ニ於ケル港湾運送業ノ整備確立
三 能率ノ増進、経理ノ改善其ノ他団体員ノ港湾運送業ノ発達ニ関スル施設
四 港湾運送業及之ニ附随スル事業ニ関スル調査及研究
五 団体員ノ港湾運送業及之ニ附随スル事業ニ関スル検査
六 前各号ニ掲グルモノノ外地区別団体ノ目的ヲ達スルニ必要ナル事業
第三十八条 地区別団体ノ定款ニハ左ニ掲グル事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名称
三 地区
四 事務所ノ所在地
五 団体員ニ関スル規定
六 事業及其ノ執行ニ関スル規定
七 役員ニ関スル規定
八 会議ニ関スル規定
九 会計ニ関スル規定
第三十九条 地区別団体ノ団体員タル資格ヲ有スル者ハ左ニ掲グルモノトス
一 港湾運送業者ニシテ逓信大臣ノ指定スルモノ
二 港湾運送業ニ附随スル事業ヲ営ム者ニシテ逓信大臣ノ指定スルモノ
第四十条 地区別団体ハ命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第四十一条 第九条第二項、第十三条乃至第十六条、第十七条第一項第三項、第十九条乃至第三十三条、第三十四条第一項及第三十五条第一項ノ規定ハ地区別団体ニ之ヲ準用ス但シ第十九条中関係各大臣トアルハ関係行政官庁トス
第四十二条 逓信大臣又ハ逓信局長必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ中央団体、地区別団体、港湾運送業者、港湾運送業ニ附随スル事業ヲ営ム者又ハ港湾運送業ノ用ニ供スル設備ノ賃貸ヲ為ス事業ヲ営ム者ヨリ其ノ事業ニ関シ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ事務所、営業所、船舶、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第四十三条 逓信大臣ハ本令ニ定ムル職権ノ一部ヲ逓信局長ニ委任スルコトヲ得
第四十四条 逓信大臣ハ左ニ掲グル場合ニ於テハ内務大臣ニ協議スベシ
一 第四条第一項、第五条第一項又ハ第八条ノ規定ニ基キ命令ヲ為サントスル場合ニ於テ港湾運送業者又ハ港湾運送業ノ用ニ供スル設備ノ賃貸ヲ為ス事業ヲ営ム者ガ其ノ命令事項ノ実施上港湾、運河又ハ公有水面ニ関シ許可ヲ必要トスルモノナルトキ
二 公共団体ニ対シ第四条第一項、第五条第一項又ハ第八条ノ規定ニ基キ命令ヲ為サントスルトキ
第四十五条 本令中逓信大臣又ハ関係各大臣トアルハ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官トシ逓信局長トアルハ朝鮮又ハ台湾ニ在リテハ各朝鮮総督府逓信局長又ハ台湾総督府交通局総長トス
第二十四条中市町村トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面、台湾ニ在リテハ市街庄トシ市町村税トアルハ朝鮮ニ在リテハ国税、台湾ニ在リテハ市街庄税トシ百分ノ四トアルハ朝鮮ニ在リテハ百分ノ五トス
第四条第三項(第五条第二項及第八条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及前条ノ規定ハ朝鮮、台湾及樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第四十六条 本令ニ規定スルモノヲ除クノ外中央団体及地区別団体ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和十六年九月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾及樺太ニ在リテハ昭和十六年十月一日ヨリ之ヲ施行ス