戦時海運管理令
法令番号: 勅令第二百三十五號
公布年月日: 昭和17年3月25日
法令の形式: 勅令
朕戰時海運管理令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年三月二十四日
內閣總理大臣 東條英機
拓務大臣 井野碩哉
遞信大臣 寺島健
勅令第二百三十五號
戰時海運管理令
第一章 總則
第一條 國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第四條ノ規定ニ基ク船舶運營會(海運事業ノ統制ノ爲ニスル經營ヲ目的トスル團體ヲ謂フ以下同ジ)ノ運航スル船舶ニ乘組マシムベキ船員ノ徵用、同法第六條ノ規定ニ基ク被徵用船員ノ解雇、從業、退職又ハ給與ニ關スル命令、同法第八條ノ規定ニ基ク船舶運營會ノ運航スル船舶ノ使用ニ關スル命令、同法第十三條ノ規定ニ基ク船舶運營會ヲシテ運航セシムベキ船舶ノ使用及船員ノ衞生及敎育訓練ニ關スル施設ノ管理竝ニ同法第十八條ノ規定ニ基ク船舶運營會ノ設立ニ關スル命令及船舶運營會ニ關シ必要ナル事項ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二章 船舶使用
第二條 遞信大臣ハ命令ヲ以テ定ムル日本船舶ヲ使用スルコトヲ得但シ陸軍官憲又ハ海軍官憲ガ法令又ハ契約ニ基キテ爲ス船舶ノ使用ヲ妨ゲズ
第三條 遞信大臣船舶ヲ使用セントスルトキハ當該船舶ノ所有者ニ對シ使用令書ヲ送達スベシ但シ已ムヲ得ザル場合ニ於テハ權原ニ基キ當該船舶ヲ占有スル者(以下管理者ト稱ス)ニ對シ之ヲ送達スルヲ以テ足ル
前項本文ノ場合ニ於テ所有者ガ管理者ニ非ザルトキハ遞信大臣ハ管理者ニ對シテモ令書ヲ送達スベシ
第四條 遞信大臣令書ノ送達ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ官報ニ公吿スベシ但シ軍機保護上其ノ他特ニ必要アリト認ムルトキハ使用ノ目的タル船舶ニ付權利ヲ有スル者(令書ノ送達ヲ受ケタル者ヲ除ク)ニシテ知レタルモノニ對シ之ヲ通知シ公吿ニ代フルコトヲ得
第五條 令書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 令書ノ送達ヲ受クベキ者ノ名
二 使用スベキ船舶ノ名稱及番號
三 使用スベキ船舶ノ引渡ノ時期及場所
四 使用ノ期間
五 其ノ他必要ト認ムル事項
第六條 使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ管理者ハ使用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外遞信大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ左ニ揭グル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
一 當該船舶ヲ改造シ又ハ修繕スルコト
二 當該船舶ノ機關若ハ艤裝品又ハ其ノ部分品若ハ附屬品ヲ撤去シ又ハ其ノ備附ヲ止ムルコト
三 當該船舶ヲ讓渡シ若ハ賃貸シ又ハ抵當權ノ目的ト爲シ其ノ他當該船舶ニ付新ナル處分ヲ爲スコト
第七條 使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ管理者ハ當該船舶ニ付讓渡其ノ他ノ事由ニ因リ他ノ者ガ所有者若ハ管理者タルニ至リタルトキ又ハ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ第九條ノ規定ニ依ル引渡ヲ爲スコト能ハザルニ至リタルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ遲滯ナク之ヲ遞信大臣ニ報吿スベシ
前項ノ規定ハ前條ノ許可アリタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第八條 遞信大臣令書ヲ送達シタル後第九條ノ規定ニ依ル引渡前ニ於テ當該船舶ヲ使用セザルモノト決定シタルトキハ其ノ所有者及管理者ニ對シ其ノ旨ヲ通知スベシ
第四條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九條 使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ管理者ハ令書ニ記載シタル引渡ノ時期及場所ニ於テ當該船舶ヲ遞信大臣ニ引渡スベシ
前項ノ規定ハ當該船舶ニ付强制執行手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第十條 遞信大臣ハ當該官吏ヲシテ使用ノ目的タル船舶ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十一條 當該官吏船舶ノ引渡ヲ受ケタルトキハ受領調書ヲ作リ引渡ヲ爲シタル所有者又ハ管理者ニ之ヲ交付スベシ
當該官吏前項ノ規定ニ依リ受領調書ヲ管理者ニ交付シタル場合ニ於テハ遲滯ナク所有者ニ其ノ謄本ヲ送達スベシ
第十二條 使用ノ目的タル船舶ノ使用權ハ當該船舶ノ引渡アリタル時ニ於テ政府之ヲ取得シ其ノ他ノ權利ハ使用ノ期間其ノ行使ヲ停止セラル但シ使用ヲ妨ゲザルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條 遞信大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被使用船舶ヲ船舶運營會ニ貸付クルモノトス
第十四條 船舶ノ使用期間滿了シ又ハ其ノ使用ヲ廢止スルトキハ遞信大臣ハ當該船舶ヲ所有者ニ返還スベシ但シ返還ノ時期ニ於テ管理者タルコトヲ得ベキ者ヨリ豫メ請求アリタルトキハ其ノ者ニ返還スルコトヲ得
遞信大臣前項ノ規定ニ依リ船舶ヲ返還セントスルトキハ豫メ返還通知書ヲ返還ヲ受クベキ者ニ送達スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ所有者ニ送達スルコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項但書ノ規定ニ依ル請求ナキトキハ官報ニ公吿スルヲ以テ足ル
第四條ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十五條 返還通知書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 返還ヲ受クベキ者ノ名
二 返還スベキ船舶ノ名稱及番號
三 返還ノ時期及場所
四 其ノ他必要ト認ムル事項
第十六條 船舶ノ使用權ハ返還通知書又ハ公吿ノ返還時期ニ於テ消滅ス
第十七條 本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ニ依リ爲シタル手續其ノ他ノ行爲ハ使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ關係者ノ承繼人ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第三章 船員徵用
第十八條 遞信大臣ハ左ノ各號ニ揭グル者ヲ徵用スルコトヲ得
一 第三條第一項ノ規定ニ依ル令書送達ノ際當該船舶ニ乘組中ノ船員
二 日本船舶ノ所有者又ハ日本船舶ノ所有者ノ組織スル團體ニシテ遞信大臣ノ指定スルモノノ保有スル豫備員タル船員
三 船員職業能力申吿令第二條ニ揭グル船員ニシテ前各號ニ揭グル以外ノモノ
前項第三號ニ揭グル者ノ徵用ハ同項第一號及第二號ニ揭グル者ノ徵用ニ依リ所要ノ人員ヲ得ラレザル場合ニ限リ之ヲ行フモノトス
第十九條 本令ニ依リ徵用スル者ハ船舶運營會ノ運航スル船舶ニ配置セラルルモノトス
第二十條 被徵用船員ハ其ノ職務ニ關シ第四十六條ノ規定ニ依リテ爲ス船舶運營會ノ指示ニ從フベシ
第二十一條 被徵用船員ニ對スル給料、手當、賞與其ノ他ノ給與ハ命令ノ定ムル所ニ依リ船舶運營會之ヲ支給スルモノトス
第二十二條 被徵用船員ノ乘組ム船舶ガ陸軍官憲又ハ海軍官憲ニ於テ使用セラルルニ至リタルトキハ遞信大臣ハ當該船舶ニ乘組ム船員ノ徵用ヲ解除ス
第二十三條 被徵用船員ノ解雇及退職ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
被徵用船員ニ付テハ雇傭期間ノ滿了其ノ他解雇及退職以外ノ事由ニ因リ雇傭關係ノ終了スル場合ニ於テハ引續キ雇傭關係ヲ存續セシムルコトヲ要ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前二項ノ規定ハ海員ノ雇入契約ニハ之ヲ適用セズ
第二十四條 被徵用船員ハ遞信大臣ノ定ムル服務規律ニ從フベシ
第二十五條 被徵用船員船舶運營會ノ運航スル船舶ニ乘組ミ職務ニ從事中戰鬪行爲又ハ之ニ準ズベキ危險ニ遭遇シ因リテ傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ又ハ死亡シタルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本人又ハ其ノ遺族ニ對シ一時金ヲ支給ス
前項ノ遺族ノ範圍及順位ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條 船員徵用令第六條、第七條、第十二條第二項、第十三條第一項、第十七條ノ二、第十九條及第二十條ノ規定ハ第十八條第一項各號ニ揭グル者ノ徵用ニ付之ヲ準用ス
船員徵用令第八條、第九條及第十六條ノ規定ハ第十八條第一項第三號ニ揭グル者ノ徵用ニ付之ヲ準用ス
遞信大臣必要アリト認ムルトキハ第十八條第一項第一號及第二號ニ揭グル者ノ徵用ニ付テハ第一項ノ規定ニ拘ラズ徵用令書及徵用解除令書竝ニ其ノ交付ニ關シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第二十七條 遞信大臣ハ船舶所有者又ハ海事ニ關スル法人ニ屬スル船員ノ衞生及敎育訓練ニ關スル施設ヲ管理スルコトヲ得
第二十八條 遞信大臣ハ前條ノ規定ニ依リ管理スル施設ニ於ケル船員ノ衞生及敎育訓練ニ關スル業務ニ付經營者ヲ指揮監督ス
第二十九條 工場事業場管理令第三條乃至第五條(第二條ノ規定ヲ準用スル部分ヲ除ク)、第八條乃至第十條及第十二條ノ規定ハ船員ノ衞生及敎育訓練ニ關スル施設ノ管理ニ付之ヲ準用ス但シ同令第四條第三號中第十四條ノ規定ニ依リ主務大臣ノ職權ノ一部ヲ行フ官衙ノ長トアルハ戰時海運管理令第六十四條ノ規定ニ依リ同令第二十八條ノ管理ニ關スル職權ノ一部ヲ行フ海務局長トス
第四章 船舶運營會
第三十條 船舶運營會ハ戰時ニ於ケル海運ノ總力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル爲海運事業ノ統制ノ爲ニスル經營ヲ爲シ且海運ニ關スル國策ノ遂行ニ協力スルコトヲ目的トス
第三十一條 船舶運營會ハ其ノ目的ヲ達スル爲被使用船舶其ノ他ノ船舶ニ依ル海運事業ヲ行フ
船舶運營會ハ遞信大臣ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外其ノ目的達成上必要ナル附帶事業ヲ行フコトヲ得
第三十二條 船舶運營會ノ構成員タル資格ヲ有スル者ハ日本船舶ノ所有者又ハ日本船舶ノ所有者ノ組織スル團體ニシテ遞信大臣ノ指定スルモノトス
第三十三條 遞信大臣船舶運營會ヲ設立セシメントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依リ構成員タル資格ヲ有スル者ニ對シ船舶運營會ノ設立ヲ命ズベシ
前項ノ規定ニ依ル船舶運營會ノ設立ノ命令アリタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ創立總會ヲ開キ之ニ諮リテ定款其ノ他船舶運營會ノ設立ニ必要ナル事項ヲ定メ遞信大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十四條 船舶運營會ノ定款ニハ左ニ揭グル事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 構成員ニ關スル規定
五 事業及其ノ執行ニ關スル規定
六 役員ニ關スル規定
七 會議ニ關スル規定
八 資產及會計ニ關スル規定
第三十五條 船舶運營會ハ第三十三條第二項ノ認可アリタル時又ハ國家總動員法第十八條第三項ノ規定ニ依リ定款ノ作成アリタル時成立ス
第三十六條 船舶運營會成立シタルトキハ其ノ構成員タル資格ヲ有スル者ハ總テ其ノ構成員トス
關東州ニ船籍港ヲ定ムル日本船舶ノ所有者又ハ其ノ團體ハ第三十二條ノ規定ニ拘ラズ遞信大臣ノ認可ヲ受ケ船舶運營會ノ構成員ト爲ルコトヲ得
第三十七條 船舶運營會ニハ左ノ役員ヲ置クベシ
總裁 一人
理事長 一人
理事 若干人
監事 若干人
評議員 若干人
第三十八條 總裁ハ船舶運營會ヲ代表シ其ノ業務ヲ統理ス
理事長ハ總裁ヲ輔佐シ船舶運營會ノ業務ヲ掌理シ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ總裁及理事長ヲ輔佐シ船舶運營會ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
業務ヲ分掌スル理事ハ豫メ總裁ノ定ムル順位ニ依リ總裁及理事長共ニ事故アルトキハ總裁ノ職務ヲ代理シ總裁及理事長共ニ缺員ノトキハ總裁ノ職務ヲ行フ
監事ハ船舶運營會ノ財產ノ狀況ヲ監査ス
評議員ハ總裁ノ諮問ニ對シ答申シ又ハ總裁ニ對シ意見ヲ具申ス
第三十九條 船舶運營會ノ役員ハ海運ニ關シ經驗アル者及學識アル者ノ中ヨリ遞信大臣之ヲ命ズ
總裁、理事長及理事ノ任期ハ三年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第四十條 總裁、理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ遞信大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十一條 通常總會ハ每年一囘總裁之ヲ招集ス
總裁必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ臨時總會ヲ招集スルコトヲ得
第四十二條 定款ノ變更ハ總會ニ諮リ總裁之ヲ決ス
第四十三條 總裁ハ每年總會ニ船舶運營會ノ事業ノ狀況ヲ報吿シ監事ヲシテ財產ノ狀況ヲ報吿セシムベシ
第四十四條 船舶運營會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被使用船舶ヲ借入ルベシ
第四十五條 船舶運營會ハ遞信大臣ノ指定スル航海及遞信大臣ノ指定スル人又ハ物ノ運送ヲ爲スベシ
船舶運營會ハ遞信大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ前項ノ航海又ハ運送以外ノ航海又ハ運送ヲ爲スコトヲ得ズ
第四十六條 船舶運營會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被徵用船員ニ對シ職務ニ關スル指示ヲ爲スベシ
第四十七條 船舶運營會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被使用船舶ノ所有者ニ對シ一定ノ金額ヲ支拂フベシ
被使用船舶ガ知レタル先取特權又ハ抵當權ノ目的タル場合ニ於テハ船舶運營會ハ前項ノ金額ヲ供託スベシ
先取特權者又ハ抵當權者ハ前項ノ供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第四十八條 船舶運營會ハ第二十五條第一項ノ規定ニ依ル一時金ノ支給及第二十六條第一項ニ於テ準用スル船員徵用令第十七條ノ二ノ規定ニ依ル扶助ニ要シタル金額ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ國庫ニ納入スベシ
第四十九條 船舶運營會ハ業務規程ヲ設定スベシ
第五十條 船舶運營會ニ運航實務者ヲ置ク
前項ノ運航實務者ハ船舶運營會ノ構成員中ヨリ遞信大臣之ヲ命ズ
第五十一條 運航實務者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ船舶運營會ノ爲ス指示ニ從ヒ船舶ノ運航ニ關スル事務ヲ處理ス
船舶運營會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ運航實務者ニ對シ一定ノ事務處理手數料ヲ支拂フベシ
第五十二條 船舶運營會ハ其ノ構成員ニ對シ船舶運營會ノ事業遂行ノ爲必要ナル事務ノ處理又ハ報吿ノ提出ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ事務ノ處理又ハ報吿ノ提出ヲ命ゼラレタル者ハ遲滯ナク之ニ應ズベシ
第五十三條 船舶運營會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款ニ違反シタル構成員ニ對シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
前項ノ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ船舶運營會ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ船舶運營會ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
前項中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノトス
第二項ノ規定ニ依ル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徵收金ニ次ギ其ノ時效ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
第五十四條 船舶運營會ノ定款ノ變更竝ニ業務規程ノ設定及變更ハ遞信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第五十五條 船舶運營會ノ剩餘金ノ處分ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六條 遞信大臣船舶運營會ノ目的達成上必要アリト認ムルトキハ船舶運營會ニ對シ必要ナル事業ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五十七條 遞信大臣ハ船舶運營會ニ對シ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
遞信大臣必要アリト認ムルトキハ監事ヲシテ監査ノ結果ヲ報吿セシムルコトヲ得
第五十八條 船舶運營會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第五十九條 遞信大臣ハ船舶運營會ノ役員又ハ運航實務者ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分、定款又ハ業務規程ニ違反シタルトキ、公益ヲ害シタルトキ其ノ他船舶運營會ノ目的達成上不適當ナリト認ムルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
第六十條 船舶運營會ハ遞信大臣ノ命令ニ因リテ解散ス
第五章 雜則
第六十一條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ第二十七條ノ規定ニ依ル處分ニ因リ通常生ズベキ損失及第二條又ハ第四十五條第一項ノ規定ニ依ル處分ニ因リ生ズベキ損失ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノトス
損失補償請求ノ時期其ノ他損失補償ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十七條第二項及第三項ノ規定ハ第一項ノ補償金ニ付之ヲ準用ス
第六十二條 遞信大臣又ハ海務局長必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ使用セントスル船舶ノ所有者若ハ管理者、遞信大臣ノ管理ニ係ル船員ノ衞生及敎育訓練ニ關スル施設ノ經營者又ハ船舶運營會ヨリ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ事務所、營業所、船舶其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第六十三條 本令及本令ニ基キテ發スル命令中船舶所有者ニ關スル規定ハ船舶共有ノ場合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキハ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合ニ在リテハ船舶借入人ニ之ヲ適用ス
第六十四條 遞信大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ海務局長ニ委任スルコトヲ得
第六十五條 第二章及第四章ヲ除クノ外本令中遞信大臣トアルハ朝鮮、臺灣、樺太又ハ南洋群島(以下外地ト稱ス)ニ在リテハ各朝鮮總督、臺灣總督、樺太廳長官又ハ南洋廳長官トシ海務局長トアルハ朝鮮又ハ臺灣ニ在リテハ各朝鮮總督府遞信局長又ハ臺灣總督府交通局總長トス
第二章中遞信大臣トアルハ朝鮮又ハ臺灣ニ船籍港ヲ定ムル日本船舶ニ付テハ各朝鮮總督又ハ臺灣總督トス
第四條及第十四條第二項中官報トアルハ朝鮮又ハ臺灣ニ在リテハ各朝鮮總督府官報又ハ臺灣總督府報トス
第五十三條中市町村トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面、臺灣ニ在リテハ市街庄、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トシ市町村稅トアルハ朝鮮ニ在リテハ國稅、臺灣ニ在リテハ市街庄稅、南洋群島ニ在リテハ地方費稅トシ百分ノ四トアルハ朝鮮ニ在リテハ百分ノ五トス
第六十六條 遞信大臣船舶運營會ガ內地ニ在ル者ト外地ニ在ル者トヲ以テ組織セラルル場合ニ於テ之ニ關シ左ニ揭グル處分ヲ爲サントスルトキハ朝鮮總督、臺灣總督、樺太廳長官又ハ南洋廳長官ニ協議スベシ但シ第一號及第二號ニ揭グル處分ニ付テハ外地ニ在ル者ニ對シ處分ヲ爲ス場合ニ限ル
一 第三十二條ノ規定ニ依ル指定
二 第三十三條第一項ノ規定ニ依ル命令
三 第三十三條第二項ノ規定ニ依ル認可
第六十七條 朝鮮總督、臺灣總督、樺太廳長官又ハ南洋廳長官第二十一條若ハ第二十五條ノ規定ニ依ル處分又ハ第二十六條第一項ニ於テ準用スル船員徵用令第十七條ノ二ノ規定ニ依ル處分ヲ爲サントスルトキハ遞信大臣ニ協議スベシ
第六十八條 本令ニ規定スルモノヲ除クノ外船舶使用、船員徵用及船舶運營會ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕戦時海運管理令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年三月二十四日
内閣総理大臣 東条英機
拓務大臣 井野碩哉
逓信大臣 寺島健
勅令第二百三十五号
戦時海運管理令
第一章 総則
第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第四条ノ規定ニ基ク船舶運営会(海運事業ノ統制ノ為ニスル経営ヲ目的トスル団体ヲ謂フ以下同ジ)ノ運航スル船舶ニ乗組マシムベキ船員ノ徴用、同法第六条ノ規定ニ基ク被徴用船員ノ解雇、従業、退職又ハ給与ニ関スル命令、同法第八条ノ規定ニ基ク船舶運営会ノ運航スル船舶ノ使用ニ関スル命令、同法第十三条ノ規定ニ基ク船舶運営会ヲシテ運航セシムベキ船舶ノ使用及船員ノ衛生及教育訓練ニ関スル施設ノ管理並ニ同法第十八条ノ規定ニ基ク船舶運営会ノ設立ニ関スル命令及船舶運営会ニ関シ必要ナル事項ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二章 船舶使用
第二条 逓信大臣ハ命令ヲ以テ定ムル日本船舶ヲ使用スルコトヲ得但シ陸軍官憲又ハ海軍官憲ガ法令又ハ契約ニ基キテ為ス船舶ノ使用ヲ妨ゲズ
第三条 逓信大臣船舶ヲ使用セントスルトキハ当該船舶ノ所有者ニ対シ使用令書ヲ送達スベシ但シ已ムヲ得ザル場合ニ於テハ権原ニ基キ当該船舶ヲ占有スル者(以下管理者ト称ス)ニ対シ之ヲ送達スルヲ以テ足ル
前項本文ノ場合ニ於テ所有者ガ管理者ニ非ザルトキハ逓信大臣ハ管理者ニ対シテモ令書ヲ送達スベシ
第四条 逓信大臣令書ノ送達ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ官報ニ公告スベシ但シ軍機保護上其ノ他特ニ必要アリト認ムルトキハ使用ノ目的タル船舶ニ付権利ヲ有スル者(令書ノ送達ヲ受ケタル者ヲ除ク)ニシテ知レタルモノニ対シ之ヲ通知シ公告ニ代フルコトヲ得
第五条 令書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 令書ノ送達ヲ受クベキ者ノ名
二 使用スベキ船舶ノ名称及番号
三 使用スベキ船舶ノ引渡ノ時期及場所
四 使用ノ期間
五 其ノ他必要ト認ムル事項
第六条 使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ管理者ハ使用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外逓信大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ左ニ掲グル行為ヲ為スコトヲ得ズ
一 当該船舶ヲ改造シ又ハ修繕スルコト
二 当該船舶ノ機関若ハ艤装品又ハ其ノ部分品若ハ附属品ヲ撤去シ又ハ其ノ備附ヲ止ムルコト
三 当該船舶ヲ譲渡シ若ハ賃貸シ又ハ抵当権ノ目的ト為シ其ノ他当該船舶ニ付新ナル処分ヲ為スコト
第七条 使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ管理者ハ当該船舶ニ付譲渡其ノ他ノ事由ニ因リ他ノ者ガ所有者若ハ管理者タルニ至リタルトキ又ハ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ第九条ノ規定ニ依ル引渡ヲ為スコト能ハザルニ至リタルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ遅滞ナク之ヲ逓信大臣ニ報告スベシ
前項ノ規定ハ前条ノ許可アリタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第八条 逓信大臣令書ヲ送達シタル後第九条ノ規定ニ依ル引渡前ニ於テ当該船舶ヲ使用セザルモノト決定シタルトキハ其ノ所有者及管理者ニ対シ其ノ旨ヲ通知スベシ
第四条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九条 使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ管理者ハ令書ニ記載シタル引渡ノ時期及場所ニ於テ当該船舶ヲ逓信大臣ニ引渡スベシ
前項ノ規定ハ当該船舶ニ付強制執行手続、国税徴収法ニ依ル強制徴収手続其ノ他此等ノ手続ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第十条 逓信大臣ハ当該官吏ヲシテ使用ノ目的タル船舶ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十一条 当該官吏船舶ノ引渡ヲ受ケタルトキハ受領調書ヲ作リ引渡ヲ為シタル所有者又ハ管理者ニ之ヲ交付スベシ
当該官吏前項ノ規定ニ依リ受領調書ヲ管理者ニ交付シタル場合ニ於テハ遅滞ナク所有者ニ其ノ謄本ヲ送達スベシ
第十二条 使用ノ目的タル船舶ノ使用権ハ当該船舶ノ引渡アリタル時ニ於テ政府之ヲ取得シ其ノ他ノ権利ハ使用ノ期間其ノ行使ヲ停止セラル但シ使用ヲ妨ゲザルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第十三条 逓信大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被使用船舶ヲ船舶運営会ニ貸付クルモノトス
第十四条 船舶ノ使用期間満了シ又ハ其ノ使用ヲ廃止スルトキハ逓信大臣ハ当該船舶ヲ所有者ニ返還スベシ但シ返還ノ時期ニ於テ管理者タルコトヲ得ベキ者ヨリ予メ請求アリタルトキハ其ノ者ニ返還スルコトヲ得
逓信大臣前項ノ規定ニ依リ船舶ヲ返還セントスルトキハ予メ返還通知書ヲ返還ヲ受クベキ者ニ送達スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ所有者ニ送達スルコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項但書ノ規定ニ依ル請求ナキトキハ官報ニ公告スルヲ以テ足ル
第四条ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十五条 返還通知書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 返還ヲ受クベキ者ノ名
二 返還スベキ船舶ノ名称及番号
三 返還ノ時期及場所
四 其ノ他必要ト認ムル事項
第十六条 船舶ノ使用権ハ返還通知書又ハ公告ノ返還時期ニ於テ消滅ス
第十七条 本令又ハ本令ニ基キテ発スル命令ニ依リ為シタル手続其ノ他ノ行為ハ使用ノ目的タル船舶ノ所有者又ハ関係者ノ承継人ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス
第三章 船員徴用
第十八条 逓信大臣ハ左ノ各号ニ掲グル者ヲ徴用スルコトヲ得
一 第三条第一項ノ規定ニ依ル令書送達ノ際当該船舶ニ乗組中ノ船員
二 日本船舶ノ所有者又ハ日本船舶ノ所有者ノ組織スル団体ニシテ逓信大臣ノ指定スルモノノ保有スル予備員タル船員
三 船員職業能力申告令第二条ニ掲グル船員ニシテ前各号ニ掲グル以外ノモノ
前項第三号ニ掲グル者ノ徴用ハ同項第一号及第二号ニ掲グル者ノ徴用ニ依リ所要ノ人員ヲ得ラレザル場合ニ限リ之ヲ行フモノトス
第十九条 本令ニ依リ徴用スル者ハ船舶運営会ノ運航スル船舶ニ配置セラルルモノトス
第二十条 被徴用船員ハ其ノ職務ニ関シ第四十六条ノ規定ニ依リテ為ス船舶運営会ノ指示ニ従フベシ
第二十一条 被徴用船員ニ対スル給料、手当、賞与其ノ他ノ給与ハ命令ノ定ムル所ニ依リ船舶運営会之ヲ支給スルモノトス
第二十二条 被徴用船員ノ乗組ム船舶ガ陸軍官憲又ハ海軍官憲ニ於テ使用セラルルニ至リタルトキハ逓信大臣ハ当該船舶ニ乗組ム船員ノ徴用ヲ解除ス
第二十三条 被徴用船員ノ解雇及退職ハ命令ノ定ムル所ニ依リ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
被徴用船員ニ付テハ雇傭期間ノ満了其ノ他解雇及退職以外ノ事由ニ因リ雇傭関係ノ終了スル場合ニ於テハ引続キ雇傭関係ヲ存続セシムルコトヲ要ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ逓信大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前二項ノ規定ハ海員ノ雇入契約ニハ之ヲ適用セズ
第二十四条 被徴用船員ハ逓信大臣ノ定ムル服務規律ニ従フベシ
第二十五条 被徴用船員船舶運営会ノ運航スル船舶ニ乗組ミ職務ニ従事中戦闘行為又ハ之ニ準ズベキ危険ニ遭遇シ因リテ傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ又ハ死亡シタルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本人又ハ其ノ遺族ニ対シ一時金ヲ支給ス
前項ノ遺族ノ範囲及順位ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条 船員徴用令第六条、第七条、第十二条第二項、第十三条第一項、第十七条ノ二、第十九条及第二十条ノ規定ハ第十八条第一項各号ニ掲グル者ノ徴用ニ付之ヲ準用ス
船員徴用令第八条、第九条及第十六条ノ規定ハ第十八条第一項第三号ニ掲グル者ノ徴用ニ付之ヲ準用ス
逓信大臣必要アリト認ムルトキハ第十八条第一項第一号及第二号ニ掲グル者ノ徴用ニ付テハ第一項ノ規定ニ拘ラズ徴用令書及徴用解除令書並ニ其ノ交付ニ関シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第二十七条 逓信大臣ハ船舶所有者又ハ海事ニ関スル法人ニ属スル船員ノ衛生及教育訓練ニ関スル施設ヲ管理スルコトヲ得
第二十八条 逓信大臣ハ前条ノ規定ニ依リ管理スル施設ニ於ケル船員ノ衛生及教育訓練ニ関スル業務ニ付経営者ヲ指揮監督ス
第二十九条 工場事業場管理令第三条乃至第五条(第二条ノ規定ヲ準用スル部分ヲ除ク)、第八条乃至第十条及第十二条ノ規定ハ船員ノ衛生及教育訓練ニ関スル施設ノ管理ニ付之ヲ準用ス但シ同令第四条第三号中第十四条ノ規定ニ依リ主務大臣ノ職権ノ一部ヲ行フ官衙ノ長トアルハ戦時海運管理令第六十四条ノ規定ニ依リ同令第二十八条ノ管理ニ関スル職権ノ一部ヲ行フ海務局長トス
第四章 船舶運営会
第三十条 船舶運営会ハ戦時ニ於ケル海運ノ総力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル為海運事業ノ統制ノ為ニスル経営ヲ為シ且海運ニ関スル国策ノ遂行ニ協力スルコトヲ目的トス
第三十一条 船舶運営会ハ其ノ目的ヲ達スル為被使用船舶其ノ他ノ船舶ニ依ル海運事業ヲ行フ
船舶運営会ハ逓信大臣ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外其ノ目的達成上必要ナル附帯事業ヲ行フコトヲ得
第三十二条 船舶運営会ノ構成員タル資格ヲ有スル者ハ日本船舶ノ所有者又ハ日本船舶ノ所有者ノ組織スル団体ニシテ逓信大臣ノ指定スルモノトス
第三十三条 逓信大臣船舶運営会ヲ設立セシメントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ前条ノ規定ニ依リ構成員タル資格ヲ有スル者ニ対シ船舶運営会ノ設立ヲ命ズベシ
前項ノ規定ニ依ル船舶運営会ノ設立ノ命令アリタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ創立総会ヲ開キ之ニ諮リテ定款其ノ他船舶運営会ノ設立ニ必要ナル事項ヲ定メ逓信大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十四条 船舶運営会ノ定款ニハ左ニ掲グル事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 構成員ニ関スル規定
五 事業及其ノ執行ニ関スル規定
六 役員ニ関スル規定
七 会議ニ関スル規定
八 資産及会計ニ関スル規定
第三十五条 船舶運営会ハ第三十三条第二項ノ認可アリタル時又ハ国家総動員法第十八条第三項ノ規定ニ依リ定款ノ作成アリタル時成立ス
第三十六条 船舶運営会成立シタルトキハ其ノ構成員タル資格ヲ有スル者ハ総テ其ノ構成員トス
関東州ニ船籍港ヲ定ムル日本船舶ノ所有者又ハ其ノ団体ハ第三十二条ノ規定ニ拘ラズ逓信大臣ノ認可ヲ受ケ船舶運営会ノ構成員ト為ルコトヲ得
第三十七条 船舶運営会ニハ左ノ役員ヲ置クベシ
総裁 一人
理事長 一人
理事 若干人
監事 若干人
評議員 若干人
第三十八条 総裁ハ船舶運営会ヲ代表シ其ノ業務ヲ統理ス
理事長ハ総裁ヲ輔佐シ船舶運営会ノ業務ヲ掌理シ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ総裁及理事長ヲ輔佐シ船舶運営会ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
業務ヲ分掌スル理事ハ予メ総裁ノ定ムル順位ニ依リ総裁及理事長共ニ事故アルトキハ総裁ノ職務ヲ代理シ総裁及理事長共ニ欠員ノトキハ総裁ノ職務ヲ行フ
監事ハ船舶運営会ノ財産ノ状況ヲ監査ス
評議員ハ総裁ノ諮問ニ対シ答申シ又ハ総裁ニ対シ意見ヲ具申ス
第三十九条 船舶運営会ノ役員ハ海運ニ関シ経験アル者及学識アル者ノ中ヨリ逓信大臣之ヲ命ズ
総裁、理事長及理事ノ任期ハ三年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第四十条 総裁、理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ逓信大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十一条 通常総会ハ毎年一回総裁之ヲ招集ス
総裁必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ臨時総会ヲ招集スルコトヲ得
第四十二条 定款ノ変更ハ総会ニ諮リ総裁之ヲ決ス
第四十三条 総裁ハ毎年総会ニ船舶運営会ノ事業ノ状況ヲ報告シ監事ヲシテ財産ノ状況ヲ報告セシムベシ
第四十四条 船舶運営会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被使用船舶ヲ借入ルベシ
第四十五条 船舶運営会ハ逓信大臣ノ指定スル航海及逓信大臣ノ指定スル人又ハ物ノ運送ヲ為スベシ
船舶運営会ハ逓信大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ前項ノ航海又ハ運送以外ノ航海又ハ運送ヲ為スコトヲ得ズ
第四十六条 船舶運営会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被徴用船員ニ対シ職務ニ関スル指示ヲ為スベシ
第四十七条 船舶運営会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被使用船舶ノ所有者ニ対シ一定ノ金額ヲ支払フベシ
被使用船舶ガ知レタル先取特権又ハ抵当権ノ目的タル場合ニ於テハ船舶運営会ハ前項ノ金額ヲ供託スベシ
先取特権者又ハ抵当権者ハ前項ノ供託金ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第四十八条 船舶運営会ハ第二十五条第一項ノ規定ニ依ル一時金ノ支給及第二十六条第一項ニ於テ準用スル船員徴用令第十七条ノ二ノ規定ニ依ル扶助ニ要シタル金額ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ国庫ニ納入スベシ
第四十九条 船舶運営会ハ業務規程ヲ設定スベシ
第五十条 船舶運営会ニ運航実務者ヲ置ク
前項ノ運航実務者ハ船舶運営会ノ構成員中ヨリ逓信大臣之ヲ命ズ
第五十一条 運航実務者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ船舶運営会ノ為ス指示ニ従ヒ船舶ノ運航ニ関スル事務ヲ処理ス
船舶運営会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ運航実務者ニ対シ一定ノ事務処理手数料ヲ支払フベシ
第五十二条 船舶運営会ハ其ノ構成員ニ対シ船舶運営会ノ事業遂行ノ為必要ナル事務ノ処理又ハ報告ノ提出ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ事務ノ処理又ハ報告ノ提出ヲ命ゼラレタル者ハ遅滞ナク之ニ応ズベシ
第五十三条 船舶運営会ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款ニ違反シタル構成員ニ対シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
前項ノ過怠金ヲ滞納スル者アル場合ニ於テ船舶運営会ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス此ノ場合ニ於テ船舶運営会ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
前項中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノトス
第二項ノ規定ニ依ル徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徴収金ニ次ギ其ノ時効ニ付テハ市町村税ノ例ニ依ル
第五十四条 船舶運営会ノ定款ノ変更並ニ業務規程ノ設定及変更ハ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第五十五条 船舶運営会ノ剰余金ノ処分ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六条 逓信大臣船舶運営会ノ目的達成上必要アリト認ムルトキハ船舶運営会ニ対シ必要ナル事業ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ変更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五十七条 逓信大臣ハ船舶運営会ニ対シ業務及会計ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
逓信大臣必要アリト認ムルトキハ監事ヲシテ監査ノ結果ヲ報告セシムルコトヲ得
第五十八条 船舶運営会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第五十九条 逓信大臣ハ船舶運営会ノ役員又ハ運航実務者ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分、定款又ハ業務規程ニ違反シタルトキ、公益ヲ害シタルトキ其ノ他船舶運営会ノ目的達成上不適当ナリト認ムルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
第六十条 船舶運営会ハ逓信大臣ノ命令ニ因リテ解散ス
第五章 雑則
第六十一条 国家総動員法第二十七条ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ第二十七条ノ規定ニ依ル処分ニ因リ通常生ズベキ損失及第二条又ハ第四十五条第一項ノ規定ニ依ル処分ニ因リ生ズベキ損失ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノトス
損失補償請求ノ時期其ノ他損失補償ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十七条第二項及第三項ノ規定ハ第一項ノ補償金ニ付之ヲ準用ス
第六十二条 逓信大臣又ハ海務局長必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ使用セントスル船舶ノ所有者若ハ管理者、逓信大臣ノ管理ニ係ル船員ノ衛生及教育訓練ニ関スル施設ノ経営者又ハ船舶運営会ヨリ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ事務所、営業所、船舶其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第六十三条 本令及本令ニ基キテ発スル命令中船舶所有者ニ関スル規定ハ船舶共有ノ場合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキハ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合ニ在リテハ船舶借入人ニ之ヲ適用ス
第六十四条 逓信大臣ハ本令ニ定ムル職権ノ一部ヲ海務局長ニ委任スルコトヲ得
第六十五条 第二章及第四章ヲ除クノ外本令中逓信大臣トアルハ朝鮮、台湾、樺太又ハ南洋群島(以下外地ト称ス)ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官トシ海務局長トアルハ朝鮮又ハ台湾ニ在リテハ各朝鮮総督府逓信局長又ハ台湾総督府交通局総長トス
第二章中逓信大臣トアルハ朝鮮又ハ台湾ニ船籍港ヲ定ムル日本船舶ニ付テハ各朝鮮総督又ハ台湾総督トス
第四条及第十四条第二項中官報トアルハ朝鮮又ハ台湾ニ在リテハ各朝鮮総督府官報又ハ台湾総督府報トス
第五十三条中市町村トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面、台湾ニ在リテハ市街庄、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トシ市町村税トアルハ朝鮮ニ在リテハ国税、台湾ニ在リテハ市街庄税、南洋群島ニ在リテハ地方費税トシ百分ノ四トアルハ朝鮮ニ在リテハ百分ノ五トス
第六十六条 逓信大臣船舶運営会ガ内地ニ在ル者ト外地ニ在ル者トヲ以テ組織セラルル場合ニ於テ之ニ関シ左ニ掲グル処分ヲ為サントスルトキハ朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官ニ協議スベシ但シ第一号及第二号ニ掲グル処分ニ付テハ外地ニ在ル者ニ対シ処分ヲ為ス場合ニ限ル
一 第三十二条ノ規定ニ依ル指定
二 第三十三条第一項ノ規定ニ依ル命令
三 第三十三条第二項ノ規定ニ依ル認可
第六十七条 朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官第二十一条若ハ第二十五条ノ規定ニ依ル処分又ハ第二十六条第一項ニ於テ準用スル船員徴用令第十七条ノ二ノ規定ニ依ル処分ヲ為サントスルトキハ逓信大臣ニ協議スベシ
第六十八条 本令ニ規定スルモノヲ除クノ外船舶使用、船員徴用及船舶運営会ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス