朕勞務調整令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年十二月六日
內閣總理大臣 東條英機
拓務大臣 井野碩哉
厚生大臣 小泉親彥
勅令第千六十三號
勞務調整令
第一章 總則
第一條 國家ニ緊要ナル事業ニ必要ナル勞務ヲ確保スル爲ニスル國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第六條ノ規定ニ基ク從業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ノ制限ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二章 從業者ノ解雇及退職ノ制限
第二條 厚生大臣ノ指定スル工場、事業場其ノ他ノ場所(以下指定工場ト稱ス)ニ於テ使用セラルル從業者又ハ厚生大臣ノ指定スル範圍ノ從業者ノ解雇及退職ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國民職業指導所長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
前項ノ從業者ニ付テハ雇傭期間ノ滿了其ノ他解雇及退職以外ノ事由ニ依リ雇傭關係ノ終了スル場合ニ於テハ引續キ雇傭關係ヲ存續セシムルコトヲ要ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ國民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第一項ノ指定ハ指定スベキ工場、事業場其ノ他ノ場所ノ事業主又ハ指定ヲ受クベキ範圍ノ從業者ヲ使用スル事業主ニ對スル通知ニ依リ之ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ指定ノ通知ヲ受ケタル事業主ハ其ノ旨ヲ關係從業者ニ周知セシムベシ
第三條 前條第一項及第二項ノ規定ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 陸海軍ニ徵集若ハ召集セラレ又ハ志願ニ依リ陸海軍ノ現役ニ服セシメラレタル場合
二 陸海軍學生生徒(海軍豫備練習生及海軍豫備補習生ヲ含ム)ニ採用セラレタル場合
三 國家總動員法第四條ノ規定ニ基キ徵用セラレタル場合
四 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
前條第一項及第二項ノ規定ハ國及道府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニハ之ヲ適用セズ
第三章 從業者ノ雇入、就職及使用ノ制限
第四條 技術、技能又ハ學識經驗ヲ有スル者ニシテ厚生大臣ノ指定スルモノ(以下技能者ト稱ス)ノ雇入及就職ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ國民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合又ハ國民職業指導所ノ紹介アル場合ヲ除クノ外之ヲ爲スコトヲ得ズ
第五條 前條ノ規定ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 年齡十四年未滿若ハ年齡六十年以上ノ男子又ハ年齡十四年未滿若ハ年齡四十年以上ノ女子タル技能者ノ雇入及就職ノ場合
二 入營(應召ノ場合ヲ含ム以下同ジ)ヲ命ゼラレ若ハ徵用セラレタルニ因リ解雇セラレタル者又ハ入營若ハ徵用ノ期間中雇傭期間ノ滿了シタル者ガ其ノ退營(入營ノ際行フ身體檢査ノ結果歸鄕ヲ命ゼラレタル場合ヲ含ム)若ハ徵用解除ノ日ヨリ三月以內ニ再ビ原職ニ復歸スル場合
三 學校卒業者使用制限令第一條ノ卒業者ノ雇入及就職ノ場合
四 國及道府縣ニ於ケル技能者ノ雇入及就職ノ場合
五 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
第六條 本令施行後國民學校初等科(內地ニ於ケル之ニ準ズベキモノヲ含ム以下同ジ)ヲ修了シ又ハ國民學校高等科(內地ニ於ケル之ニ準ズベキモノヲ含ム以下同ジ)ヲ修了シ若ハ中途退學シタル後二年ヲ經過セザル者ニシテ技能者タラザルモノ(以下國民學校修了者ト稱ス)ノ雇入及就職ハ國民職業指導所ノ紹介ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ國及道府縣ニ於ケル雇入及就職ノ場合、船員職業紹介所ノ紹介ニ依ル船員ノ雇入及就職ノ場合竝ニ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七條 年齡十四年以上四十年未滿ノ男子又ハ年齡十四年以上二十五年未滿ノ女子ニシテ技能者及國民學校修了者タラザルモノ(以下一般靑壯年ト稱ス)ノ雇入及就職ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ヲ除クノ外之ヲ爲スコトヲ得ズ
一 國民職業指導所ノ紹介ニ依リ雇入レ及就職スル場合
二 指定工場ノ事業主、厚生大臣ノ指定スル事業ヲ營ム者又ハ厚生大臣ノ指定スル者命令ノ定ムル所ニ依リ國民職業指導所ノ紹介ニ依ラズシテ雇入ルベキ一般靑壯年ノ員數其ノ他雇入ニ關スル事項ニ付國民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合
三 命令ノ定ムル所ニ依リ特定ノ一般靑壯年ノ雇入及就職ニ付國民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合
第八條 前條ノ規定ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 第五條第二號ノ場合
二 船員職業紹介所ノ紹介ニ依ル船員ノ雇入及就職ノ場合
三 命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外農業、林業、畜產業、養蠶業及水產業ニ於ケル一般靑壯年ノ雇入及就職ノ場合
四 國及道府縣ニ於ケル一般靑壯年ノ雇入及就職ノ場合
五 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
第九條 厚生大臣ハ勞務供給業者ノ供給ニ依ル從業者ノ使用ノ制限ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十條 前條ノ規定ハ國及道府縣ニ於ケル勞務供給業者ノ供給ニ依ル從業者ノ使用ニハ之ヲ適用セズ
第十一條 國民學校初等科又ハ國民學校高等科在學中ノ者ヲ雇入レ其ノ者ガ國民學校初等科ヲ修了シ國民學校高等科ニ進學セザル場合又ハ國民學校高等科ヲ修了シ若ハ中途退學シタル場合引續キ其ノ者ヲ雇傭スル場合ニ於テハ第六條ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ者ガ國民學校初等科ヲ修了シ又ハ國民學校高等科ヲ修了シ若ハ中途退學スル時ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
年齡十四年未滿ノ者ヲ雇入レ引續キ其ノ者ヲ雇傭スル場合ニ於テハ第七條ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ者ガ年齡十四年ニ達スル時ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
事業主其ノ雇傭スル從業者ニ付工場、事業場其ノ他ノ使用ノ場所間ニ所屬ノ移動ヲ行フ場合ニ於テハ本令ノ適用ニ付テハ後ノ使用ノ場所ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
第一項及第二項ノ場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ新ナル雇入ニ關シ第六條若ハ第七條ノ規定ニ依ル認可又ハ第六條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ依ル認可ノ申請アリタルトキハ其ノ申請ニ對スル認可又ハ不認可ノ處分アル時ニ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
第四章 雜則
第十二條 國民職業指導所長本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ニ依ル認可ノ申請ニ付不正若ハ虛僞ノ事實アリト認ムルトキ又ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ認可ヲ取消スコトヲ得
第十三條 第四條、第六條又ハ第七條ノ規定ニ違反スル雇入又ハ就職アリタル場合ニ於テハ國民職業指導所長ハ雇入ヲ爲シタル者ニ對シ雇入レタル者ノ解雇ヲ、就職シタル者ニ對シ退職ヲ命ズルコトヲ得前條ノ規定ニ依リ認可ノ取消アリタル場合亦同ジ
第十四條 厚生大臣ハ從業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ニ關シ事業主ニ對シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十五條 國民職業指導所長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ從業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基ク報吿ヲ徵スルコトヲ得
第十六條 厚生大臣、地方長官又ハ國民職業指導所長必要アリト認ムルトキハ從業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ當該官吏ヲシテ關係ノ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況又ハ帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十七條 前三條ノ規定ハ國及道府縣ノ從業者ノ雇入、使用及解雇ニハ之ヲ適用セズ
國民職業指導所長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國又ハ道府縣ニ於テ爲ス從業者ノ雇入、使用又ハ解雇ニ關シ從業者ヲ使用スル官衙(陸海軍ノ部隊及學校ヲ含ム)又ハ道府縣ヨリ通報ヲ求ムルコトヲ得
第十八條 厚生大臣第二條第一項ノ規定ニ依リ工場、事業場其ノ他ノ場所又ハ從業者ノ範圍ヲ指定セントスルトキハ內閣總理大臣ニ協議スベシ
第十九條 朝鮮及臺灣ニ在リテハ第六條、第七條、第八條及第十一條ノ規定ハ之ヲ適用セズ
朝鮮及臺灣ニ在リテハ年齡十二年以上四十年未滿ノ男子ニシテ技能者タラザルモノ(以下男子靑壯年ト稱ス)ノ雇入及就職ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ヲ除クノ外之ヲ爲スコトヲ得ズ
一 國ノ紹介ニ依リ雇入レ及就職スル場合
二 指定工場ノ事業主竝ニ朝鮮總督又ハ臺灣總督ノ指定スル者ニ於ケル雇入及就職ノ場合
三 男子靑壯年ヲ雇傭シ得ベキ總員數ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、臺灣ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖廳ニ在リテハ廳長)ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ員數ニ滿ツル迄ノ雇入及就職ノ場合
四 命令ノ定ムル所ニ依リ特定ノ男子靑壯年ノ雇入及就職ニ付朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、臺灣ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖廳ニ在リテハ廳長)ノ認可ヲ受ケタル場合
五 第五條第二號ノ場合
六 國竝ニ道、州及廳ニ於ケル男子靑壯年ノ雇入及就職ノ場合
七 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
朝鮮及臺灣ニ在リテ年齡十二年未滿ノ男子ニシテ技能者タラザルモノヲ雇入レ引續キ其ノ者ヲ雇傭スル場合ニ於テハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ者ガ年齡十二年ニ達スル時ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ新ナル雇入ニ關シ第二項ノ規定ニ依ル認可又ハ同項ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ依ル認可ノ申請アリタルトキハ其ノ申請ニ對スル認可又ハ不認可ノ處分アル時ニ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
第二十條 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ國民職業指導所長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、臺灣ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖廳ニ在リテハ廳長)、樺太ニ在リテハ樺太廳支廳長、南洋群島ニ在リテハ南洋廳支廳長トシ國民職業指導所トアルハ朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ國トス
本令中道府縣トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、臺灣ニ在リテハ州又ハ廳、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トシ國民學校初等科トアルハ樺太ニ在リテハ樺太國民學校令ニ依ル國民學校初等科、南洋群島ニ在リテハ南洋廳國民學校規則ニ依ル國民學校初等科トシ國民學校高等科トアルハ樺太ニ在リテハ樺太國民學校令ニ依ル國民學校高等科、南洋群島ニ在リテハ南洋廳國民學校規則ニ依ル國民學校高等科トシ內地ニ於ケル之ニ準ズベキモノトアルハ樺太ニ在リテハ樺太ニ於ケル之ニ準ズベキモノ、南洋群島ニ在リテハ南洋群島ニ於ケル之ニ準ズベキモノトス
第十三條中第四條、第六條又ハ第七條トアルハ朝鮮及臺灣ニ在リテハ第四條又ハ第十九條第二項トス
附 則
本令ハ昭和十七年一月十日ヨリ之ヲ施行ス但シ內地、樺太及南洋群島ニ於テ第七條第二號ノ規定ノ、朝鮮及臺灣ニ於テ第十九條第二項第二號及第三號ノ規定ノ實施ノ爲ニ豫メ必要ナル範圍內ニ於テハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
從業者移動防止令及靑少年雇入制限令ハ之ヲ廢止ス但シ本令施行前ニ爲シタル行爲ニ關スル罰則ノ適用及本令施行前ニ從業者移動防止令第五條ノ規定ニ違反スル雇入ヲ爲シタル者ニ對スル同令第八條ノ規定ノ適用ニ付テハ本令施行後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
國民勞務手帳法施行令中左ノ通改正ス
第八條第一項第一號ヲ左ノ如ク改ム
一 勞務調整令第二條第一項ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケ退職スルトキ又ハ同令第四條若ハ第七條第三號ノ規定ニ依ル認可若ハ同令第六條但書ノ規定ニ基ク命令ニ依ル認可ヲ受ケ就職スルトキ
朕労務調整令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年十二月六日
内閣総理大臣 東条英機
拓務大臣 井野碩哉
厚生大臣 小泉親彦
勅令第千六十三号
労務調整令
第一章 総則
第一条 国家ニ緊要ナル事業ニ必要ナル労務ヲ確保スル為ニスル国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第六条ノ規定ニ基ク従業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ノ制限ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二章 従業者ノ解雇及退職ノ制限
第二条 厚生大臣ノ指定スル工場、事業場其ノ他ノ場所(以下指定工場ト称ス)ニ於テ使用セラルル従業者又ハ厚生大臣ノ指定スル範囲ノ従業者ノ解雇及退職ハ命令ノ定ムル所ニ依リ国民職業指導所長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
前項ノ従業者ニ付テハ雇傭期間ノ満了其ノ他解雇及退職以外ノ事由ニ依リ雇傭関係ノ終了スル場合ニ於テハ引続キ雇傭関係ヲ存続セシムルコトヲ要ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ国民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第一項ノ指定ハ指定スベキ工場、事業場其ノ他ノ場所ノ事業主又ハ指定ヲ受クベキ範囲ノ従業者ヲ使用スル事業主ニ対スル通知ニ依リ之ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ指定ノ通知ヲ受ケタル事業主ハ其ノ旨ヲ関係従業者ニ周知セシムベシ
第三条 前条第一項及第二項ノ規定ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 陸海軍ニ徴集若ハ召集セラレ又ハ志願ニ依リ陸海軍ノ現役ニ服セシメラレタル場合
二 陸海軍学生生徒(海軍予備練習生及海軍予備補習生ヲ含ム)ニ採用セラレタル場合
三 国家総動員法第四条ノ規定ニ基キ徴用セラレタル場合
四 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
前条第一項及第二項ノ規定ハ国及道府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニハ之ヲ適用セズ
第三章 従業者ノ雇入、就職及使用ノ制限
第四条 技術、技能又ハ学識経験ヲ有スル者ニシテ厚生大臣ノ指定スルモノ(以下技能者ト称ス)ノ雇入及就職ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ国民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合又ハ国民職業指導所ノ紹介アル場合ヲ除クノ外之ヲ為スコトヲ得ズ
第五条 前条ノ規定ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 年齢十四年未満若ハ年齢六十年以上ノ男子又ハ年齢十四年未満若ハ年齢四十年以上ノ女子タル技能者ノ雇入及就職ノ場合
二 入営(応召ノ場合ヲ含ム以下同ジ)ヲ命ゼラレ若ハ徴用セラレタルニ因リ解雇セラレタル者又ハ入営若ハ徴用ノ期間中雇傭期間ノ満了シタル者ガ其ノ退営(入営ノ際行フ身体検査ノ結果帰郷ヲ命ゼラレタル場合ヲ含ム)若ハ徴用解除ノ日ヨリ三月以内ニ再ビ原職ニ復帰スル場合
三 学校卒業者使用制限令第一条ノ卒業者ノ雇入及就職ノ場合
四 国及道府県ニ於ケル技能者ノ雇入及就職ノ場合
五 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
第六条 本令施行後国民学校初等科(内地ニ於ケル之ニ準ズベキモノヲ含ム以下同ジ)ヲ修了シ又ハ国民学校高等科(内地ニ於ケル之ニ準ズベキモノヲ含ム以下同ジ)ヲ修了シ若ハ中途退学シタル後二年ヲ経過セザル者ニシテ技能者タラザルモノ(以下国民学校修了者ト称ス)ノ雇入及就職ハ国民職業指導所ノ紹介ニ依ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ国及道府県ニ於ケル雇入及就職ノ場合、船員職業紹介所ノ紹介ニ依ル船員ノ雇入及就職ノ場合並ニ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七条 年齢十四年以上四十年未満ノ男子又ハ年齢十四年以上二十五年未満ノ女子ニシテ技能者及国民学校修了者タラザルモノ(以下一般青壮年ト称ス)ノ雇入及就職ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ヲ除クノ外之ヲ為スコトヲ得ズ
一 国民職業指導所ノ紹介ニ依リ雇入レ及就職スル場合
二 指定工場ノ事業主、厚生大臣ノ指定スル事業ヲ営ム者又ハ厚生大臣ノ指定スル者命令ノ定ムル所ニ依リ国民職業指導所ノ紹介ニ依ラズシテ雇入ルベキ一般青壮年ノ員数其ノ他雇入ニ関スル事項ニ付国民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合
三 命令ノ定ムル所ニ依リ特定ノ一般青壮年ノ雇入及就職ニ付国民職業指導所長ノ認可ヲ受ケタル場合
第八条 前条ノ規定ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 第五条第二号ノ場合
二 船員職業紹介所ノ紹介ニ依ル船員ノ雇入及就職ノ場合
三 命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外農業、林業、畜産業、養蚕業及水産業ニ於ケル一般青壮年ノ雇入及就職ノ場合
四 国及道府県ニ於ケル一般青壮年ノ雇入及就職ノ場合
五 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
第九条 厚生大臣ハ労務供給業者ノ供給ニ依ル従業者ノ使用ノ制限ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十条 前条ノ規定ハ国及道府県ニ於ケル労務供給業者ノ供給ニ依ル従業者ノ使用ニハ之ヲ適用セズ
第十一条 国民学校初等科又ハ国民学校高等科在学中ノ者ヲ雇入レ其ノ者ガ国民学校初等科ヲ修了シ国民学校高等科ニ進学セザル場合又ハ国民学校高等科ヲ修了シ若ハ中途退学シタル場合引続キ其ノ者ヲ雇傭スル場合ニ於テハ第六条ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ者ガ国民学校初等科ヲ修了シ又ハ国民学校高等科ヲ修了シ若ハ中途退学スル時ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
年齢十四年未満ノ者ヲ雇入レ引続キ其ノ者ヲ雇傭スル場合ニ於テハ第七条ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ者ガ年齢十四年ニ達スル時ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
事業主其ノ雇傭スル従業者ニ付工場、事業場其ノ他ノ使用ノ場所間ニ所属ノ移動ヲ行フ場合ニ於テハ本令ノ適用ニ付テハ後ノ使用ノ場所ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
第一項及第二項ノ場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ新ナル雇入ニ関シ第六条若ハ第七条ノ規定ニ依ル認可又ハ第六条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ依ル認可ノ申請アリタルトキハ其ノ申請ニ対スル認可又ハ不認可ノ処分アル時ニ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
第四章 雑則
第十二条 国民職業指導所長本令又ハ本令ニ基キテ発スル命令ニ依ル認可ノ申請ニ付不正若ハ虚偽ノ事実アリト認ムルトキ又ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ認可ヲ取消スコトヲ得
第十三条 第四条、第六条又ハ第七条ノ規定ニ違反スル雇入又ハ就職アリタル場合ニ於テハ国民職業指導所長ハ雇入ヲ為シタル者ニ対シ雇入レタル者ノ解雇ヲ、就職シタル者ニ対シ退職ヲ命ズルコトヲ得前条ノ規定ニ依リ認可ノ取消アリタル場合亦同ジ
第十四条 厚生大臣ハ従業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ニ関シ事業主ニ対シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十五条 国民職業指導所長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ従業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基ク報告ヲ徴スルコトヲ得
第十六条 厚生大臣、地方長官又ハ国民職業指導所長必要アリト認ムルトキハ従業者ノ雇入、使用、解雇、就職及退職ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ当該官吏ヲシテ関係ノ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況又ハ帳簿書類ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十七条 前三条ノ規定ハ国及道府県ノ従業者ノ雇入、使用及解雇ニハ之ヲ適用セズ
国民職業指導所長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ国又ハ道府県ニ於テ為ス従業者ノ雇入、使用又ハ解雇ニ関シ従業者ヲ使用スル官衙(陸海軍ノ部隊及学校ヲ含ム)又ハ道府県ヨリ通報ヲ求ムルコトヲ得
第十八条 厚生大臣第二条第一項ノ規定ニ依リ工場、事業場其ノ他ノ場所又ハ従業者ノ範囲ヲ指定セントスルトキハ内閣総理大臣ニ協議スベシ
第十九条 朝鮮及台湾ニ在リテハ第六条、第七条、第八条及第十一条ノ規定ハ之ヲ適用セズ
朝鮮及台湾ニ在リテハ年齢十二年以上四十年未満ノ男子ニシテ技能者タラザルモノ(以下男子青壮年ト称ス)ノ雇入及就職ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ヲ除クノ外之ヲ為スコトヲ得ズ
一 国ノ紹介ニ依リ雇入レ及就職スル場合
二 指定工場ノ事業主並ニ朝鮮総督又ハ台湾総督ノ指定スル者ニ於ケル雇入及就職ノ場合
三 男子青壮年ヲ雇傭シ得ベキ総員数ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、台湾ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖庁ニ在リテハ庁長)ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ員数ニ満ツル迄ノ雇入及就職ノ場合
四 命令ノ定ムル所ニ依リ特定ノ男子青壮年ノ雇入及就職ニ付朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、台湾ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖庁ニ在リテハ庁長)ノ認可ヲ受ケタル場合
五 第五条第二号ノ場合
六 国並ニ道、州及庁ニ於ケル男子青壮年ノ雇入及就職ノ場合
七 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
朝鮮及台湾ニ在リテ年齢十二年未満ノ男子ニシテ技能者タラザルモノヲ雇入レ引続キ其ノ者ヲ雇傭スル場合ニ於テハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ者ガ年齢十二年ニ達スル時ニ於テ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ新ナル雇入ニ関シ第二項ノ規定ニ依ル認可又ハ同項ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ依ル認可ノ申請アリタルトキハ其ノ申請ニ対スル認可又ハ不認可ノ処分アル時ニ新ニ雇入レ及就職スルモノト看做ス
第二十条 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ国民職業指導所長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、台湾ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖庁ニ在リテハ庁長)、樺太ニ在リテハ樺太庁支庁長、南洋群島ニ在リテハ南洋庁支庁長トシ国民職業指導所トアルハ朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ国トス
本令中道府県トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、台湾ニ在リテハ州又ハ庁、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トシ国民学校初等科トアルハ樺太ニ在リテハ樺太国民学校令ニ依ル国民学校初等科、南洋群島ニ在リテハ南洋庁国民学校規則ニ依ル国民学校初等科トシ国民学校高等科トアルハ樺太ニ在リテハ樺太国民学校令ニ依ル国民学校高等科、南洋群島ニ在リテハ南洋庁国民学校規則ニ依ル国民学校高等科トシ内地ニ於ケル之ニ準ズベキモノトアルハ樺太ニ在リテハ樺太ニ於ケル之ニ準ズベキモノ、南洋群島ニ在リテハ南洋群島ニ於ケル之ニ準ズベキモノトス
第十三条中第四条、第六条又ハ第七条トアルハ朝鮮及台湾ニ在リテハ第四条又ハ第十九条第二項トス
附 則
本令ハ昭和十七年一月十日ヨリ之ヲ施行ス但シ内地、樺太及南洋群島ニ於テ第七条第二号ノ規定ノ、朝鮮及台湾ニ於テ第十九条第二項第二号及第三号ノ規定ノ実施ノ為ニ予メ必要ナル範囲内ニ於テハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
従業者移動防止令及青少年雇入制限令ハ之ヲ廃止ス但シ本令施行前ニ為シタル行為ニ関スル罰則ノ適用及本令施行前ニ従業者移動防止令第五条ノ規定ニ違反スル雇入ヲ為シタル者ニ対スル同令第八条ノ規定ノ適用ニ付テハ本令施行後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス
国民労務手帳法施行令中左ノ通改正ス
第八条第一項第一号ヲ左ノ如ク改ム
一 労務調整令第二条第一項ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケ退職スルトキ又ハ同令第四条若ハ第七条第三号ノ規定ニ依ル認可若ハ同令第六条但書ノ規定ニ基ク命令ニ依ル認可ヲ受ケ就職スルトキ