電力調整令
法令番号: 勅令第七百八號
公布年月日: 昭和14年10月18日
法令の形式: 勅令
朕電力調整令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年十月十六日
內閣總理大臣 阿部信行
遞信大臣 永井柳太郞
大藏大臣 靑木一男
拓務大臣 金光庸夫
勅令第七百八號
電力調整令
第一條 國家總動員法第八條ノ規定ニ基ク電力ノ生產、配給又ハ消費ニ關シ必要ナル命令ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ニ於テ電氣事業者トハ電氣事業法第一條若ハ朝鮮電氣事業令第一條ニ揭グル事業ヲ營ム者又ハ樺太ニ於テ一般ノ需要ニ應ジ電氣ヲ供給スル事業ヲ營ム者、電氣供給事業者トハ電氣事業法第一條第一號第三號若ハ朝鮮電氣事業令第一條第一號第三號ニ揭グル事業ヲ營ム者又ハ樺太ニ於テ一般ノ需要ニ應ジ電氣ヲ供給スル事業ヲ營ム者、電氣鐵道事業者トハ電氣事業法第一條第二號又ハ朝鮮電氣事業令第一條第二號ニ揭グル事業ヲ營ム者、自家用電氣工作物施設者トハ電氣事業法第三十條第一項若ハ朝鮮電氣事業令第三十三條第一項ノ規定ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ屆出ヲ爲シ若ハ認可ヲ受ケテ强電流電氣工作物ヲ施設シタル者又ハ樺太ニ於テ電壓十ボルト以上ノ自家用電氣工作物ヲ施設シタル者ヲ謂フ
第三條 遞信大臣ハ電力ノ消費者ニ對シ一般的ニ地域、期間、用途又ハ其ノ他ノ事項ヲ指定シテ電力ノ消費ヲ制限若ハ禁止シ又ハ其ノ制限若ハ禁止ノ爲必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
電氣供給事業者ハ前項ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令アリタル場合ニ於テハ電力ノ供給ニ關シ適當ナル措置ヲ講ジ當該事項ノ實施ヲ圓滑ナラシムルコトヲ旨トスベシ
第四條 遞信大臣ハ電氣供給事業者ニ對シ當該供給事業ニ關シ電力ノ供給若ハ受入ヲ命ジ又ハ電力ノ供給ヲ制限若ハ禁止スルコトヲ得
遞信大臣ハ電氣供給事業者ニ對シ前項ノ規定ニ依ル命令、制限又ハ禁止ノ爲當該供給事業ニ關シ必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
第五條 遞信大臣ハ發電設備ヲ有スル電氣鐵道事業者若ハ自家用電氣工作物施設者ニ對シ當該設備ニ依ル電力ノ生產若ハ遞信大臣ノ指定スル者ニ對スル供給ヲ命ジ又ハ送電設備ヲ有スル電氣鐵道事業者若ハ自家用電氣工作物施設者ニ對シ當該設備ニ依ル電力ノ輸送若ハ遞信大臣ノ指定スル者ニ對スル供給ヲ命ズルコトヲ得
遞信大臣前項ノ規定ニ依ル命令事項ノ實施ノ爲必要アリト認ムルトキハ前項ニ規定スル電氣鐵道事業者又ハ自家用電氣工作物施設者ニ對シ其ノ有スル電氣工作物ニ付修理其ノ他ノ事項ヲ命ズルコトヲ得
第六條 第四條第二項又ハ前條第二項ノ規定ニ依ル命令ヲ爲ス場合ニ於テ遞信大臣必要アリト認ムルトキハ命令事項ノ實施ノ爲必要ナル工事費用ノ負擔其ノ他ノ事項ニ關シ關係ノ電氣事業者、自家用電氣工作物施設者又ハ電力ノ供給ヲ受クル者ニ對シ協議ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ遞信大臣ノ裁定スル所ニ依ルベシ
第七條 遞信大臣必要アリト認ムルトキハ電氣事業者又ハ自家用電氣工作物施設者ニ對シ電氣機械器具其ノ他電氣ニ關スル用品又ハ裝置ノ貸借又ハ讓渡ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令アリタル場合ニ於テハ賃貸料、讓渡價格其ノ他ノ事項ニ關シ當事者間ニ於テ協議スベシ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ遞信大臣ノ裁定スル所ニ依ルベシ
第八條 遞信大臣ハ第三條第一項若ハ第四條第一項ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ第三條第一項、第四條第一項若ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ爲シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ電氣供給事業者又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ニ對シ電氣料金其ノ他供給條件ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第九條 遞信大臣ハ電氣事業者又ハ自家用電氣工作物施設者ニ對シ本令ニ依リテ爲ス制限、禁止又ハ命令ノ通達ニ付事業主ニ代ルベキ管理人ノ選任ヲ命ズルコトヲ得
第十條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ第四條、第五條又ハ第七條第一項ノ規定ニ依ル處分ニ因ル通常生ズベキ損失トス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ處分ガ期間ヲ指定シテ爲サレタルモノナルトキハ當該期間終了後、其ノ他ノモノナルトキハ處分事項ノ實施終了後之ヲ請求スベシ但シ遞信大臣ノ定ムル所ニ依リ別段ノ時期ニ於テ之ヲ請求スルコトヲ得
第十一條 遞信大臣ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ電力ノ生產、配給若ハ消費ニ關シ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ電氣工作物ヲ施設シタル場所其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十二條 遞信大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ遞信局長又ハ地方長官(東京府ニ在リテハ警視總監)ニ委任スルコトヲ得
第十三條 本令ノ施行ニ關スル重要事項ニ付行政官廳ノ諮問ニ應ズル爲電力調整委員會ヲ置ク
電力調整委員會ニ關スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第十四條 遞信大臣ハ本令ノ施行ニ關スル重要事項ニ付內閣總理大臣ニ協議スベシ
第十五條 本令中遞信大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官トシ遞信局長又ハ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督府遞信局長又ハ道知事、臺灣ニ在リテハ臺灣總督府交通局總長又ハ州知事若ハ廳長トス
第十六條 第十三條及第十四條ノ規定ハ朝鮮、臺灣及樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
附 則
本令ハ昭和十四年十月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣及樺太ニ在リテハ昭和十四年十月二十七日ヨリ之ヲ施行ス
朕電力調整令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年十月十六日
内閣総理大臣 阿部信行
逓信大臣 永井柳太郎
大蔵大臣 青木一男
拓務大臣 金光庸夫
勅令第七百八号
電力調整令
第一条 国家総動員法第八条ノ規定ニ基ク電力ノ生産、配給又ハ消費ニ関シ必要ナル命令ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令ニ於テ電気事業者トハ電気事業法第一条若ハ朝鮮電気事業令第一条ニ掲グル事業ヲ営ム者又ハ樺太ニ於テ一般ノ需要ニ応ジ電気ヲ供給スル事業ヲ営ム者、電気供給事業者トハ電気事業法第一条第一号第三号若ハ朝鮮電気事業令第一条第一号第三号ニ掲グル事業ヲ営ム者又ハ樺太ニ於テ一般ノ需要ニ応ジ電気ヲ供給スル事業ヲ営ム者、電気鉄道事業者トハ電気事業法第一条第二号又ハ朝鮮電気事業令第一条第二号ニ掲グル事業ヲ営ム者、自家用電気工作物施設者トハ電気事業法第三十条第一項若ハ朝鮮電気事業令第三十三条第一項ノ規定ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依リ届出ヲ為シ若ハ認可ヲ受ケテ強電流電気工作物ヲ施設シタル者又ハ樺太ニ於テ電圧十ボルト以上ノ自家用電気工作物ヲ施設シタル者ヲ謂フ
第三条 逓信大臣ハ電力ノ消費者ニ対シ一般的ニ地域、期間、用途又ハ其ノ他ノ事項ヲ指定シテ電力ノ消費ヲ制限若ハ禁止シ又ハ其ノ制限若ハ禁止ノ為必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
電気供給事業者ハ前項ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ命令アリタル場合ニ於テハ電力ノ供給ニ関シ適当ナル措置ヲ講ジ当該事項ノ実施ヲ円滑ナラシムルコトヲ旨トスベシ
第四条 逓信大臣ハ電気供給事業者ニ対シ当該供給事業ニ関シ電力ノ供給若ハ受入ヲ命ジ又ハ電力ノ供給ヲ制限若ハ禁止スルコトヲ得
逓信大臣ハ電気供給事業者ニ対シ前項ノ規定ニ依ル命令、制限又ハ禁止ノ為当該供給事業ニ関シ必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
第五条 逓信大臣ハ発電設備ヲ有スル電気鉄道事業者若ハ自家用電気工作物施設者ニ対シ当該設備ニ依ル電力ノ生産若ハ逓信大臣ノ指定スル者ニ対スル供給ヲ命ジ又ハ送電設備ヲ有スル電気鉄道事業者若ハ自家用電気工作物施設者ニ対シ当該設備ニ依ル電力ノ輸送若ハ逓信大臣ノ指定スル者ニ対スル供給ヲ命ズルコトヲ得
逓信大臣前項ノ規定ニ依ル命令事項ノ実施ノ為必要アリト認ムルトキハ前項ニ規定スル電気鉄道事業者又ハ自家用電気工作物施設者ニ対シ其ノ有スル電気工作物ニ付修理其ノ他ノ事項ヲ命ズルコトヲ得
第六条 第四条第二項又ハ前条第二項ノ規定ニ依ル命令ヲ為ス場合ニ於テ逓信大臣必要アリト認ムルトキハ命令事項ノ実施ノ為必要ナル工事費用ノ負担其ノ他ノ事項ニ関シ関係ノ電気事業者、自家用電気工作物施設者又ハ電力ノ供給ヲ受クル者ニ対シ協議ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ逓信大臣ノ裁定スル所ニ依ルベシ
第七条 逓信大臣必要アリト認ムルトキハ電気事業者又ハ自家用電気工作物施設者ニ対シ電気機械器具其ノ他電気ニ関スル用品又ハ装置ノ貸借又ハ譲渡ニ関シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令アリタル場合ニ於テハ賃貸料、譲渡価格其ノ他ノ事項ニ関シ当事者間ニ於テ協議スベシ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ逓信大臣ノ裁定スル所ニ依ルベシ
第八条 逓信大臣ハ第三条第一項若ハ第四条第一項ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ第三条第一項、第四条第一項若ハ第五条第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ為シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ電気供給事業者又ハ第五条第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ニ対シ電気料金其ノ他供給条件ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第九条 逓信大臣ハ電気事業者又ハ自家用電気工作物施設者ニ対シ本令ニ依リテ為ス制限、禁止又ハ命令ノ通達ニ付事業主ニ代ルベキ管理人ノ選任ヲ命ズルコトヲ得
第十条 国家総動員法第二十七条ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ第四条、第五条又ハ第七条第一項ノ規定ニ依ル処分ニ因ル通常生ズベキ損失トス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ処分ガ期間ヲ指定シテ為サレタルモノナルトキハ当該期間終了後、其ノ他ノモノナルトキハ処分事項ノ実施終了後之ヲ請求スベシ但シ逓信大臣ノ定ムル所ニ依リ別段ノ時期ニ於テ之ヲ請求スルコトヲ得
第十一条 逓信大臣ハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ電力ノ生産、配給若ハ消費ニ関シ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ電気工作物ヲ施設シタル場所其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十二条 逓信大臣ハ本令ニ定ムル職権ノ一部ヲ逓信局長又ハ地方長官(東京府ニ在リテハ警視総監)ニ委任スルコトヲ得
第十三条 本令ノ施行ニ関スル重要事項ニ付行政官庁ノ諮問ニ応ズル為電力調整委員会ヲ置ク
電力調整委員会ニ関スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第十四条 逓信大臣ハ本令ノ施行ニ関スル重要事項ニ付内閣総理大臣ニ協議スベシ
第十五条 本令中逓信大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官トシ逓信局長又ハ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督府逓信局長又ハ道知事、台湾ニ在リテハ台湾総督府交通局総長又ハ州知事若ハ庁長トス
第十六条 第十三条及第十四条ノ規定ハ朝鮮、台湾及樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
附 則
本令ハ昭和十四年十月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾及樺太ニ在リテハ昭和十四年十月二十七日ヨリ之ヲ施行ス