銀行等資金運用令
法令番号: 勅令第六百八十一號
公布年月日: 昭和15年10月19日
法令の形式: 勅令
朕銀行等資金運用令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十月十六日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
拓務大臣 秋田淸
商工大臣臨時代理 大藏大臣 河田烈
大藏大臣 河田烈
農林大臣 石黑忠篤
勅令第六百八十一號
銀行等資金運用令
第一條 國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十一條ノ規定ニ依ル銀行、信託會社、保險會社、產業組合中央金庫、商工組合中央金庫、北海道府縣又ハ樺太ヲ區域トスル信用組合聯合會、朝鮮金融組合聯合會、東洋拓殖株式會社、臺灣拓殖株式會社、南洋拓殖株式會社(以下金融機關ト總稱ス)及有價證券引受業法ノ證券引受會社(以下證券引受會社ト稱ス)竝ニ金融機關又ハ證券引受會社ニ非ズシテコール資金ノ貸借若ハ其ノ媒介又ハ手形ノ賣買若ハ其ノ媒介ヲ爲スヲ業トスル者ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ(以下ビルブローカート稱ス)ニ對スル資金ノ運用ニ關スル命令ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 主務大臣資金ノ適用ヲ適正ナラシムル爲必要アリト認ムルトキハ金融機關ニ對シ資金ノ適用ニ關スル計畫ノ變更ヲ命ジ又ハ命令ノ定ムル所ニ依リ資金ノ運用方法ヲ指定スルコトヲ得
第三條 金融機關事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張又ハ改良ニ關スル資金以外ノ資金ニシテ命令ノ定ムルモノノ貸付ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ此等ノ資金ニ付手形ノ割引ヲ爲シ又ハ當座貸越ノ契約ヲ爲サントスルトキ亦同ジ
第四條 證券引受會社又ハビルブローカー命令ノ定ムル資金ノ貸付ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ此等ノ資金ニ付手形ノ割引ヲ爲サントスルトキ亦同ジ
第五條 第三條及前條ノ規定ニ依ル許可ニ關スル處分ニシテ事案ノ重要ナルモノニ付テハ臨時資金調整法第十二條ノ臨時資金審査委員會ノ議ヲ經ベシ
第六條 主務大臣第三條及第四條ノ規定ニ依ル許可ヲ爲スニ付必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ資金ノ貸付若ハ手形ノ割引ヲ受ケ又ハ當座貸越ノ契約ヲ爲サントスル者ヨリ必要ナル事項ニ關スル報吿ヲ徵スルコトヲ得
第七條 大藏大臣生產力擴充資金其ノ他時局ニ緊要ナル資金ノ供給ヲ圓滑ナラシムル爲必要アリト認ムルトキハ銀行ニ對シ資金ノ融通又ハ有價證券ノ應募、引受若ハ買入ヲ命ズルコトヲ得
大藏大臣前項ノ規定ニ依ル命令ヲ爲サントスルトキハ資金融通審査委員會ノ議ヲ經ベシ
資金融通審査委員會ニ關スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第八條 政府ハ前條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ因リ銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ銀行ニ對シ通常生ズベキ損失ヲ補償ス
前項ノ損失ヲ決定スル基準其ノ他損失補償ニ關シ必要ナル事項ハ大藏大臣之ヲ定ム
第九條 前條第一項ノ規定ニ依リ政府ガ銀行ニ對シテ支拂フベキ損失補償金ハ國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第十條 大藏大臣ハ銀行ガ第七條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ依リ資金ノ融通ヲ爲シタル場合ニ於テ其ノ融通ニ關シ必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ資金ノ融通ヲ受ケタル者ヨリ其ノ業務ニ關スル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十一條 本令ニ於テ主務大臣トアルハ銀行、信託會社、證券引受會社及ビルブローカーニ付テハ大藏大臣、保險會社ニ付テハ商工大臣、商工組合中央金庫ニ付テハ大藏大臣及商工大臣、產業組合中央金庫及北海道府縣ヲ區域トスル信用組合聯合會ニ付テハ大藏大臣及農林大臣、東洋拓殖株式會社、臺灣拓殖株式會社及南洋拓殖株式會社ニ付テハ拓務大臣トス
商工大臣保險會社ニ對シ又ハ拓務大臣東洋拓殖株式會社、臺灣拓殖株式會社若ハ南洋拓殖株式會社ニ對シ第二條ノ命令若ハ指定又ハ第三條ノ許可ヲ爲サントスルトキハ大藏大臣ニ協議スベシ
第十二條 第一條、第三條、第四條及第六條中主務大臣トアルハ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ在リテハ各朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官トス
第二條中主務大臣トアルハ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル金融機關ニ付テハ各朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官トス但シ朝鮮銀行、臺灣銀行及臺灣又ハ樺太ニ營業所ヲ有シ銀行法又ハ貯蓄銀行法ノ適用ヲ受クル銀行ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第七條、第八條及第十條中大藏大臣トアルハ朝鮮ニ本店ヲ有スル銀行ニ付テハ朝鮮總督トス但シ朝鮮銀行ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五條ノ規定ハ朝鮮、臺灣及樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第七條第二項ノ規定ハ第三項ノ場合ニハ之ヲ適用セズ
朝鮮總督第七條第一項ノ命令ヲ爲サントスルトキハ大藏大臣ニ協議スベシ
大藏大臣前項ノ協議ヲ受ケタルトキハ其ノ協議ヲ受ケタル事項ニ付資金融通審査委員會ノ議ヲ經ベシ
朝鮮總督第八條第二項ノ規定ニ依リ損失ヲ決定スル基準其ノ他損失補償ニ關シ必要ナル事項ヲ定メントスルトキハ大藏大臣ニ協議スベシ
附 則
第十三條 本令ハ第三條乃至第六條ノ規定ヲ除キ昭和十五年十月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十五年十一月五日ヨリ之ヲ施行ス
第三條乃至第六條ノ規定ハ昭和十六年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十四條 會社利益配當及資金融通令第十二條第一項ノ規定ニ依ル日本興業銀行ニ對スル資金ノ融通又ハ有價證券ノ應募、引受若ハ買入ノ命令及同行ノ爲シタル資金ノ融通又ハ有價證券ノ應募、引受若ハ買入ハ本令第七條第一項ノ規定ニ依リ爲シタルモノト看做シ同令第十三條第二項ノ規定ニ依リ大藏大臣ノ定メタル損失ヲ決定スル基準其ノ他損失補償ニ關シ必要ナル事項ハ日本興業銀行ニ付本令第八條第二項ノ規定ニ依リ定メタルモノト看做ス
朕銀行等資金運用令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十月十六日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
拓務大臣 秋田清
商工大臣臨時代理 大蔵大臣 河田烈
大蔵大臣 河田烈
農林大臣 石黒忠篤
勅令第六百八十一号
銀行等資金運用令
第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十一条ノ規定ニ依ル銀行、信託会社、保険会社、産業組合中央金庫、商工組合中央金庫、北海道府県又ハ樺太ヲ区域トスル信用組合連合会、朝鮮金融組合連合会、東洋拓殖株式会社、台湾拓殖株式会社、南洋拓殖株式会社(以下金融機関ト総称ス)及有価証券引受業法ノ証券引受会社(以下証券引受会社ト称ス)並ニ金融機関又ハ証券引受会社ニ非ズシテコール資金ノ貸借若ハ其ノ媒介又ハ手形ノ売買若ハ其ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ(以下ビルブローカート称ス)ニ対スル資金ノ運用ニ関スル命令ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 主務大臣資金ノ適用ヲ適正ナラシムル為必要アリト認ムルトキハ金融機関ニ対シ資金ノ適用ニ関スル計画ノ変更ヲ命ジ又ハ命令ノ定ムル所ニ依リ資金ノ運用方法ヲ指定スルコトヲ得
第三条 金融機関事業ニ属スル設備ノ新設、拡張又ハ改良ニ関スル資金以外ノ資金ニシテ命令ノ定ムルモノノ貸付ヲ為サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ此等ノ資金ニ付手形ノ割引ヲ為シ又ハ当座貸越ノ契約ヲ為サントスルトキ亦同ジ
第四条 証券引受会社又ハビルブローカー命令ノ定ムル資金ノ貸付ヲ為サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ此等ノ資金ニ付手形ノ割引ヲ為サントスルトキ亦同ジ
第五条 第三条及前条ノ規定ニ依ル許可ニ関スル処分ニシテ事案ノ重要ナルモノニ付テハ臨時資金調整法第十二条ノ臨時資金審査委員会ノ議ヲ経ベシ
第六条 主務大臣第三条及第四条ノ規定ニ依ル許可ヲ為スニ付必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ資金ノ貸付若ハ手形ノ割引ヲ受ケ又ハ当座貸越ノ契約ヲ為サントスル者ヨリ必要ナル事項ニ関スル報告ヲ徴スルコトヲ得
第七条 大蔵大臣生産力拡充資金其ノ他時局ニ緊要ナル資金ノ供給ヲ円滑ナラシムル為必要アリト認ムルトキハ銀行ニ対シ資金ノ融通又ハ有価証券ノ応募、引受若ハ買入ヲ命ズルコトヲ得
大蔵大臣前項ノ規定ニ依ル命令ヲ為サントスルトキハ資金融通審査委員会ノ議ヲ経ベシ
資金融通審査委員会ニ関スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第八条 政府ハ前条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ因リ銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ銀行ニ対シ通常生ズベキ損失ヲ補償ス
前項ノ損失ヲ決定スル基準其ノ他損失補償ニ関シ必要ナル事項ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第九条 前条第一項ノ規定ニ依リ政府ガ銀行ニ対シテ支払フベキ損失補償金ハ国債証券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第十条 大蔵大臣ハ銀行ガ第七条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ依リ資金ノ融通ヲ為シタル場合ニ於テ其ノ融通ニ関シ必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ資金ノ融通ヲ受ケタル者ヨリ其ノ業務ニ関スル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十一条 本令ニ於テ主務大臣トアルハ銀行、信託会社、証券引受会社及ビルブローカーニ付テハ大蔵大臣、保険会社ニ付テハ商工大臣、商工組合中央金庫ニ付テハ大蔵大臣及商工大臣、産業組合中央金庫及北海道府県ヲ区域トスル信用組合連合会ニ付テハ大蔵大臣及農林大臣、東洋拓殖株式会社、台湾拓殖株式会社及南洋拓殖株式会社ニ付テハ拓務大臣トス
商工大臣保険会社ニ対シ又ハ拓務大臣東洋拓殖株式会社、台湾拓殖株式会社若ハ南洋拓殖株式会社ニ対シ第二条ノ命令若ハ指定又ハ第三条ノ許可ヲ為サントスルトキハ大蔵大臣ニ協議スベシ
第十二条 第一条、第三条、第四条及第六条中主務大臣トアルハ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官トス
第二条中主務大臣トアルハ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル金融機関ニ付テハ各朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官トス但シ朝鮮銀行、台湾銀行及台湾又ハ樺太ニ営業所ヲ有シ銀行法又ハ貯蓄銀行法ノ適用ヲ受クル銀行ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第七条、第八条及第十条中大蔵大臣トアルハ朝鮮ニ本店ヲ有スル銀行ニ付テハ朝鮮総督トス但シ朝鮮銀行ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五条ノ規定ハ朝鮮、台湾及樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第七条第二項ノ規定ハ第三項ノ場合ニハ之ヲ適用セズ
朝鮮総督第七条第一項ノ命令ヲ為サントスルトキハ大蔵大臣ニ協議スベシ
大蔵大臣前項ノ協議ヲ受ケタルトキハ其ノ協議ヲ受ケタル事項ニ付資金融通審査委員会ノ議ヲ経ベシ
朝鮮総督第八条第二項ノ規定ニ依リ損失ヲ決定スル基準其ノ他損失補償ニ関シ必要ナル事項ヲ定メントスルトキハ大蔵大臣ニ協議スベシ
附 則
第十三条 本令ハ第三条乃至第六条ノ規定ヲ除キ昭和十五年十月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十五年十一月五日ヨリ之ヲ施行ス
第三条乃至第六条ノ規定ハ昭和十六年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十四条 会社利益配当及資金融通令第十二条第一項ノ規定ニ依ル日本興業銀行ニ対スル資金ノ融通又ハ有価証券ノ応募、引受若ハ買入ノ命令及同行ノ為シタル資金ノ融通又ハ有価証券ノ応募、引受若ハ買入ハ本令第七条第一項ノ規定ニ依リ為シタルモノト看做シ同令第十三条第二項ノ規定ニ依リ大蔵大臣ノ定メタル損失ヲ決定スル基準其ノ他損失補償ニ関シ必要ナル事項ハ日本興業銀行ニ付本令第八条第二項ノ規定ニ依リ定メタルモノト看做ス