水産統制令
法令番号: 勅令第五百二十號
公布年月日: 昭和17年5月20日
法令の形式: 勅令
朕水產統制令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年五月十九日
內閣總理大臣 東條英機
農林大臣 井野碩哉
遞信大臣 寺島健
大藏大臣 賀屋興宣
勅令第五百二十號
水產統制令
第一章 總則
第一條 國家總動員法第四條ノ規定ニ基ク水產業用船舶ニ乘組マシムベキ船員ノ徵用、同法第六條ノ規定ニ基ク被徵用船員ノ解雇、從業、退職又ハ給與ニ關スル命令、同法第十三條ノ規定ニ基ク水產業用ノ船舶、工場、事業場其ノ他ノ施設又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル施設(以下水產施設ト稱ス)ノ使用、同法第十六條ノ二ノ規定ニ基ク水產業ニ屬スル設備又ハ權利ノ出資ニ關スル命令、同法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク水產業ノ開始ノ制限ニ關スル命令、同法第十八條ノ規定ニ基ク水產業ノ統制ノ爲ニスル經營ヲ目的トスル會社ノ設立ニ關スル命令及其ノ會社ニ關シ必要ナル事項、同法第十八條ノ二ノ規定ニ基ク水產業ニ屬スル設備又ハ權利ヲ出資シタル者ノ負擔スル債務ノ承繼及其ノ擔保ノ處理ニ關スル事項竝ニ同法第十八條ノ三ノ規定ニ基ク水產業ニ屬スル設備若ハ權利ノ出資又ハ水產業ノ統制ノ爲ニスル經營ヲ目的トスル會社ニ付テノ課稅標準ノ計算ニ關スル特例ノ設定又ハ租稅ノ免除ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
本令ニ於テ水產業トハ命令ヲ以テ定ムル水產ニ關スル事業ヲ謂フ
第二章 帝國水產統制株式會社
第二條 農林大臣ハ水產業ヲ營ム者ニ對シ帝國水產統制株式會社ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ於テハ水產業ニ屬スル設備又ハ權利ヲ出資スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ當該設備又ハ權利ノ出資ヲ爲スコトヲ得
水產業ニ屬スル設備又ハ權利ニ關シ强制競賣手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續、土地收用法ニ依ル使用若ハ收用手續又ハ國家總動員法第十條若ハ第十三條ノ規定ニ基ク使用若ハ收用手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ當該設備又ハ權利ニ關シテハ第二項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第三條 農林大臣前條ノ命令ヲ爲ス場合ニ於テハ當該事業者ニ對シ左ニ揭グル事項ヲ記載シタル命令書ヲ交付スベシ
一 前條第一項ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名稱及住所
二 前條第二項ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名稱及其ノ各自ノ出資スベキ設備又ハ權利ノ範圍
三 帝國水產統制株式會社ヲ設立スベキ期限
四 前各號ニ揭グルモノノ外必要ト認ムル事項
農林大臣前條ノ命令ヲ爲シタルトキハ前項第一號乃至第三號ニ揭グル事項ヲ公吿スベシ
第四條 第二條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ハ設立委員ヲ選任シ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
設立委員ハ帝國水產統制株式會社ノ設立ニ關スル事務ヲ處理スベシ
農林大臣ハ前項ノ事務ノ處理ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第五條 設立委員ハ定款ヲ作成シ第二條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ定款ニハ商法ニ規定スル事項ノ外第二條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ氏名又ハ名稱及住所ヲ記載スベシ
設立委員第一項ノ承認ヲ得タルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
農林大臣前項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ商法第百六十八條第一項第五號ニ揭グル事項ニ付テハ水產事業評價審査委員會ノ議ヲ經ベシ
水產事業評價審査委員會ニ關スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第六條 前條第三項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總株式ヨリ第二條第二項ノ命令ニ依リ出資ヲ爲ス者ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第七條 株式申込證ニハ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ揭グル事項ノ外第二條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ氏名又ハ名稱及住所竝ニ定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第八條 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ農林大臣ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第九條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク第一囘ノ拂込及出資ノ目的タル財產ノ全部ノ給付ヲ爲サシムベシ
第十條 設立委員ハ前條ノ拂込及給付アリタルトキハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第十一條 創立總會ニ於テハ第二十一條ニ規定スル役員ヲ選任シ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十二條 設立委員ハ創立總會終結シタルトキハ其ノ事務ヲ帝國水產統制株式會社社長ニ引渡スベシ
第十三條 第二條第二項ノ命令ニ依リ帝國水產統制株式會社ニ出資セラルル設備ニ付當該命令ヲ受ケタル者ガ水面又ハ土地ノ占用又ハ使用ニ關シ行政官廳ノ許可、承認其ノ他ノ處分ニ基キ有スル權利義務ハ命令ノ定ムル所ニ依リ帝國水產統制株式會社成立シタル時帝國水產統制株式會社之ヲ承繼ス
第十四條 第二條第二項ノ命令ヲ受ケタル者ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外農林大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ出資ノ目的タル設備又ハ權利ヲ讓渡シ、貸渡シ其ノ他當該設備又ハ權利ニ關シ新ナル處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第十五條 水產業ニ屬スル設備ニ付第二條第二項ノ命令ヲ受ケタル者ハ當該設備ノ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ命令ニ應ズルコト能ハザルニ至ルベキトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ農林大臣ニ報吿スベシ
前項ノ規定ハ水產業ニ屬スル權利ニ付第二條第二項ノ命令ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十六條 商法第百六十七條、第百八十一條及第百八十五條ノ規定ハ帝國水產統制株式會社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第十七條 本令ニ規定スルモノノ外帝國水產統制株式會社ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條 帝國水產統制株式會社ハ水產業ノ綜合的統制運營ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第十九條 帝國水產統制株式會社ノ資本ハ五千萬圓トス但シ農林大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第二十條 帝國水產統制株式會社ハ左ニ揭グル事業ヲ營ムモノトス
一 水產業用船舶其ノ他水產業用設備ノ貸付
二 水產業用資材ノ配給
三 水產業ニ對スル投資及融資
四 水產物ノ買入及賣渡
五 製氷、冷藏及冷凍
六 前各號ノ事業ニ附帶スル事業
七 前各號ニ揭グルモノノ外水產業ノ發達ヲ圖ル爲必要ナル施設其ノ他帝國水產統制株式會社ノ目的ヲ達成スル爲必要ナル事業
帝國水產統制株式會社前項第六號又ハ第七號ノ事業ヲ營マントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十一條 帝國水產統制株式會社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十二條 社長ハ帝國水產統制株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ帝國水產統制株式會社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ帝國水產統制株式會社ノ業務ヲ監査ス
第二十三條 役員ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ農林大臣ノ認可ヲ受クルモノトス
社長及副社長ノ任期ハ四年、理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第二十四條 帝國水產統制株式會社ノ社長、副社長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ農林大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十五條 農林大臣ハ帝國水產統制株式會社ノ業務ヲ監督ス
第二十六條 帝國水產統制株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十七條 帝國水產統制株式會社社債ヲ募集セントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外借入金ヲ爲サントスルトキ亦同ジ
第二十八條 帝國水產統制株式會社ノ定款ノ變更、合併及解散ノ決議ハ農林大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十九條 帝國水產統制株式會社ハ第二條第二項ノ命令ニ依ル出資ニ係ル設備又ハ權利ニ付讓渡其ノ他ノ處分ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ農林大臣ノ許可ヲ受クベシ
第三十條 農林大臣ハ帝國水產統制株式會社ノ業務ニ關シ監督上又ハ公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 農林大臣ハ帝國水產統制株式會社ノ決議ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シタルトキ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アルトキハ其ノ決議ヲ取消スコトヲ得
農林大臣ハ帝國水產統制株式會社ノ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分又ハ定款ニ違反シタルトキ、公益ヲ害シタルトキ其ノ他役員ヲ不適當ナリト認ムルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
第三十二條 第二條第二項ノ命令ニ依ル出資ニ係ル設備又ハ權利ガ知レタル擔保權ノ目的タル場合ニ於テ當該擔保權ヲ消滅セシムルニ非ザレバ帝國水產統制株式會社ガ當該設備又ハ權利ヲ有效ニ利用スルコト困難ナルトキハ當事者ハ擔保權ノ處理ニ付擔保權者ニ協議スルコトヲ得
前項ノ協議ハ農林大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ當事者又ハ擔保權者ハ當該事項ニ付農林大臣ノ裁定ヲ申請スルコトヲ得
農林大臣前項ノ裁定ヲ爲サントスルトキハ水產事業評價審査委員會ノ議ヲ經ベシ
第三十三條 前條ノ規定ニ依リ擔保權ガ消滅スルトキハ當該擔保權者ハ出資ニ對シ割當テラレタル株式ノ上ニ質權ヲ有ス但シ同條ノ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ質權ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條 漁業財團又ハ工場財團ニ屬スルモノハ第三十二條ノ規定ニ依リ擔保權ノ消滅シタル場合ヲ除クノ外第二條第二項ノ命令ニ依ル出資アリタル後ト雖モ仍原財團ニ屬スルモノトス
第三十五條 農林大臣ハ第二條第二項ノ命令ニ依リ設備又ハ權利ヲ出資シタル者ヲシテ第三十六條ノ規定ニ依リ債務ノ承繼アリタル場合ヲ除クノ外帝國水產統制株式會社ガ擔保權ノ實行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル爲命令ノ定ムル所ニ依リ相當ノ擔保ヲ供託セシムルコトヲ得
帝國水產統制株式會社ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質權ヲ有ス
第三十六條 農林大臣ハ第二條第二項ノ命令ニ依リ設備又ハ權利ノ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ出資者ヲシテ當該設備又ハ權利ヲ擔保トスル債務ヲ引續キ負擔セシメ置クコトヲ適當ナラズト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ帝國水產統制株式會社ヲシテ當該債務ノ全部又ハ一部ヲ承繼セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル承繼價格其ノ他承繼ニ關スル條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル
第三十二條第二項乃至第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十七條 本令ニ規定スルモノノ外第三十二條ノ規定ニ依ル擔保ノ處理及裁定竝ニ前條ノ規定ニ依ル債務ノ承繼及裁定ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條 帝國水產統制株式會社ハ水產業ノ經營ノ安定ヲ圖ル爲水產安定資金ヲ設定スベシ
帝國水產統制株式會社ハ每營業年度ノ收入ニ付農林大臣ノ定ムル所ニ從ヒ前項ノ水產安定資金ニ繰入ルベキ金額ヲ定メ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ帝國水產統制株式會社ハ其ノ金額ヲ水產安定資金ニ繰入ルベシ
前項ノ規定ニ依リ水產安定資金ニ繰入レタル金額ハ法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
帝國水產統制株式會社水產安定資金ヲ使用セントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
前各項ニ規定スルモノノ外水產安定資金ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 海洋漁業統制株式會社
第三十九條 農林大臣ハ一定ノ水產業ヲ營ム者ニ對シ當該水產業ノ統制ノ爲ニスル經營ヲ目的トスル株式會社(以下海洋漁業統制株式會社ト稱ス)ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ於テハ海洋漁業統制株式會社ト爲ルベキコト又ハ水產業ニ屬スル設備若ハ權利ヲ出資スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第四十條 前條ノ命令ヲ受ケタル者ニシテ海洋漁業統制株式會社ト爲ルベキコトヲ命ゼラレタル株式會社(以下指定會社ト稱ス)ハ本令ニ依リ海洋漁業統制株式會社ト爲ルコトヲ得
第四十一條 第二條第三項第四項、第四條及第八條乃至第十七條ノ規定ハ海洋漁業統制株式會社ノ設立ニ之ヲ準用ス
指定會社アル場合ニ於ケル海洋漁業統制株式會社ノ設立ニ付テハ前項ノ規定ニ依ルノ外第四十二條乃至第五十一條ノ定ムル所ニ依ル
指定會社ナキ場合ニ於ケル海洋漁業統制株式會社ノ設立ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ルノ外第三條及第五條乃至第七條ノ規定ヲ準用ス
第四十二條 農林大臣第三十九條ノ命令ヲ爲ス場合ニ於テハ當該事業者ニ對シ左ニ揭グル事項ヲ記載シタル命令書ヲ交付スベシ
一 第三十九條第一項ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名稱及住所
二 設立スベキ海洋漁業統制株式會社ノ商號及事業
三 指定會社ノ商號
四 第三十九條第二項後段ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名稱及其ノ各自ノ出資スベキ設備又ハ權利ノ範圍
五 海洋漁業統制株式會社ヲ設立スベキ期限
六 前各號ニ揭グルモノノ外必要ト認ムル事項
農林大臣第三十九條ノ命令ヲ爲シタルトキハ前項第一號乃至第五號ニ揭グル事項ヲ公吿スベシ
第四十三條 設立委員ハ左ニ揭グル事項ヲ記載シタル書面ヲ作成シ第一號及第三號乃至第六號ニ揭グル事項ニ付テハ第三十九條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
一 海洋漁業統制株式會社ノ商號、資本ノ總額、一株ノ金額及本店ノ所在地
二 指定會社ノ商號
三 海洋漁業統制株式會社ノ發行スベキ株式ノ種類、數及拂込金額竝ニ指定會社ノ株主ニ對スル株式ノ割當ニ關スル事項
四 指定會社ノ株主ニ支拂ヲ爲スベキ金額ヲ定メタルトキハ其ノ規定
五 第三十九條第二項後段ノ命令ニ依リ出資ヲ爲ス者ノ氏名又ハ名稱、出資ノ目的タル財產、其ノ價格竝ニ之ニ對シ與フル株式ノ種類及數
六 海洋漁業統制株式會社ヲ設立スベキ時期
七 第三十九條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ニ於テ承認ヲ爲スベキ期日
八 前各號ニ揭グルモノノ外必要ト認ムル事項
前項ノ承認ハ第三十九條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ガ株式會社ナル場合ニ於テハ商法第三百四十三條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ前項ノ書面ノ要領ハ同法第二百三十二條ニ定ムル通知及公吿ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス
設立委員第一項ノ承認ヲ得タルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
農林大臣前項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ第一項第三號乃至第五號ニ揭グル事項ニ付テハ水產事業評價審査委員會ノ議ヲ經ベシ
設立委員ハ第三項ノ認可アリタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ第三十九條ノ命令ヲ受ケタル者ニ通知スベシ
第四十四條 商法第四百十六條第三項及第四項ノ規定ハ海洋漁業統制株式會社ノ設立ニ之ヲ準用ス但シ同條第三項ニ於テ準用スル同法第三百七十七條第一項但書及第三百七十八條第一項但書(同法第三百七十九條第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)中三月トアルハ一月トス
第四十五條 設立委員ハ第四十三條第三項ノ認可アリタルトキハ定款ヲ作成シ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ定款ニハ商法ニ規定スル事項ノ外左ニ揭グル事項ヲ記載スベシ
一 第三十九條第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ氏名又ハ名稱及住所
二 指定會社ノ株主ニ對スル株式ノ割當ニ關スル事項
三 指定會社ノ株主ニ支拂ヲ爲スベキ金額ヲ定メタルトキハ其ノ規定
四 指定會社ノ財產ノ槪況
第四十六條 前條第一項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總株式ヨリ指定會社ノ株主及第三十九條第二項後段ノ命令ニ依リ出資ヲ爲ス者ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十七條 株式申込證ニハ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ揭グル事項ノ外第四十五條第二項各號ニ揭グル事項及定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第四十八條 海洋漁業統制株式會社ノ創立總會ニ關シ商法第百八十條第二項第三項及第二百二十四條第三項ノ規定ヲ適用スルニ付テハ海洋漁業統制株式會社ノ株式ノ割當ヲ受ケタル指定會社ノ株主ハ之ヲ株式引受人ト看做ス
第四十九條 指定會社ハ海洋漁業統制株式會社ノ成立ニ因リ之ニ吸收セラルルモノトシ指定會社ノ權利義務(指定會社ガ其ノ水產業ニ屬スル設備又ハ權利ニ付水面又ハ土地ノ占用又ハ使用ニ關シ行政官廳ノ許可、承認其ノ他ノ處分ニ基キ有スル權利義務ヲ含ム)ハ海洋漁業統制株式會社ニ於テ之ヲ承繼ス
第五十條 前條ノ場合ニ於ケル指定會社ヨリ海洋漁業統制株式會社ヘノ有價證券ノ移轉ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ免除ス
第五十一條 海洋漁業統制株式會社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ拂込株金額中指定會社ノ拂込株金額ニ相當スル部分ニ付テハ登錄稅ヲ免除ス
海洋漁業統制株式會社ガ第四十九條ノ規定ニ依リ指定會社ヨリ不動產又ハ船舶ニ關スル權利ヲ承繼スル場合ニ於ケル其ノ取得ニ付登記ヲ受クルトキ亦前項ニ同ジ
第五十二條 海洋漁業統制株式會社ハ一定ノ水產業ノ統制ノ爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第五十三條 海洋漁業統制株式會社ハ左ニ揭グル事業ヲ營ムモノトス
一 海洋漁業其ノ他ノ水產業
二 前號ノ事業ニ附帶スル事業
三 前各號ニ揭グルモノノ外海洋漁業統制株式會社ノ目的ヲ達成スル爲必要ナル事業
海洋漁業統制株式會社前項第二號又ハ第三號ノ事業ヲ營マントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十四條 海洋漁業統制株式會社ニ役員トシテ社長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
海洋漁業統制株式會社ニ前項ノ役員ノ外定款ノ定ムル所ニ依リ副社長一人ヲ置クコトヲ得
第五十五條 第二十二條乃至第三十七條ノ規定ハ海洋漁業統制株式會社ニ付之ヲ準用ス
第四章 雜則
第五十六條 遞信大臣ハ命令ヲ以テ定ムル水產業用船舶ヲ使用スルコトヲ得
戰時海運管理令第二條但書、第三條乃至第十二條及第十四條乃至第十七條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル使用ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第五十七條 農林大臣ハ命令ヲ以テ定ムル水產業用船舶以外ノ水產施設ヲ使用スルコトヲ得
工場事業場使用收用令第二條第二項、第三條乃至第十一條、第十八條第一項、第十九條、第二十一條乃至第二十三條及第三十一條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル使用ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス但シ同令中閣令トアルハ命令トス
第五十八條 戰時海運管理令第十三條、第四十四條、第四十七條及第六十一條ノ規定ハ前二條ノ規定ニ依リ水產業用船舶及其ノ他ノ水產施設ノ使用ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス但シ同令中船舶運營會トアルハ帝國水產統制株式會社トシ所有者トアルハ水產業用船舶及其ノ他ノ水產施設ノ貸借ノ場合ニ在リテハ當該施設ノ借入人トシ遞信大臣トアルハ水產業用船舶以外ノ水產施設ニ關シテハ農林大臣トス
帝國水產統制株式會社ハ前項ニ於テ準用スル戰時海運管理令第十三條ノ規定ニ依リ貸付ケラレタル水產業用船舶及其ノ他ノ水產施設ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ水產業ニ使用シ又ハ使用セシムベシ
第五十九條 遞信大臣ハ第五十六條ノ規定ニ依リ使用シタル水產業用船舶ニ乘組マシムベキ船員ヲ徵用シ及被徵用船員ニ付解雇、從業、退職又ハ給與ニ關シ命令ヲ爲スコトヲ得
戰時海運管理令第十八條乃至第二十六條、第四十六條、第四十八條及第六十三條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル徵用ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス但シ同令中船舶運營會トアルハ當該船舶ヲ運航スル者トス
第六十條 前四條ニ規定スルモノノ外水產業用船舶及其ノ他ノ水產施設ノ使用竝ニ船員ノ徵用ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條 第五十六條第一項及第五十九條第一項ノ規定ニ依ル水產業用船舶ノ使用及船員ノ徵用ハ農林大臣ト遞信大臣トノ協議ニ基キ遞信大臣之ヲ行フモノトス
第六十二條 農林大臣ノ指定スル水產業ハ其ノ指定スル海洋漁業統制株式會社ニ非ザレバ之ヲ開始スルコトヲ得ズ
第六十三條 行政官廳ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ水產業ノ統制ニ關シ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ漁場、水產業用船舶、事業場、事務所其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ其ノ狀況若ハ帳簿、書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕水産統制令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年五月十九日
内閣総理大臣 東条英機
農林大臣 井野碩哉
逓信大臣 寺島健
大蔵大臣 賀屋興宣
勅令第五百二十号
水産統制令
第一章 総則
第一条 国家総動員法第四条ノ規定ニ基ク水産業用船舶ニ乗組マシムベキ船員ノ徴用、同法第六条ノ規定ニ基ク被徴用船員ノ解雇、従業、退職又ハ給与ニ関スル命令、同法第十三条ノ規定ニ基ク水産業用ノ船舶、工場、事業場其ノ他ノ施設又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル施設(以下水産施設ト称ス)ノ使用、同法第十六条ノ二ノ規定ニ基ク水産業ニ属スル設備又ハ権利ノ出資ニ関スル命令、同法第十六条ノ三ノ規定ニ基ク水産業ノ開始ノ制限ニ関スル命令、同法第十八条ノ規定ニ基ク水産業ノ統制ノ為ニスル経営ヲ目的トスル会社ノ設立ニ関スル命令及其ノ会社ニ関シ必要ナル事項、同法第十八条ノ二ノ規定ニ基ク水産業ニ属スル設備又ハ権利ヲ出資シタル者ノ負担スル債務ノ承継及其ノ担保ノ処理ニ関スル事項並ニ同法第十八条ノ三ノ規定ニ基ク水産業ニ属スル設備若ハ権利ノ出資又ハ水産業ノ統制ノ為ニスル経営ヲ目的トスル会社ニ付テノ課税標準ノ計算ニ関スル特例ノ設定又ハ租税ノ免除ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
本令ニ於テ水産業トハ命令ヲ以テ定ムル水産ニ関スル事業ヲ謂フ
第二章 帝国水産統制株式会社
第二条 農林大臣ハ水産業ヲ営ム者ニ対シ帝国水産統制株式会社ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ於テハ水産業ニ属スル設備又ハ権利ヲ出資スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ当該設備又ハ権利ノ出資ヲ為スコトヲ得
水産業ニ属スル設備又ハ権利ニ関シ強制競売手続、国税徴収法ニ依ル強制徴収手続、土地収用法ニ依ル使用若ハ収用手続又ハ国家総動員法第十条若ハ第十三条ノ規定ニ基ク使用若ハ収用手続其ノ他此等ノ手続ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ当該設備又ハ権利ニ関シテハ第二項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第三条 農林大臣前条ノ命令ヲ為ス場合ニ於テハ当該事業者ニ対シ左ニ掲グル事項ヲ記載シタル命令書ヲ交付スベシ
一 前条第一項ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名称及住所
二 前条第二項ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名称及其ノ各自ノ出資スベキ設備又ハ権利ノ範囲
三 帝国水産統制株式会社ヲ設立スベキ期限
四 前各号ニ掲グルモノノ外必要ト認ムル事項
農林大臣前条ノ命令ヲ為シタルトキハ前項第一号乃至第三号ニ掲グル事項ヲ公告スベシ
第四条 第二条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ハ設立委員ヲ選任シ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
設立委員ハ帝国水産統制株式会社ノ設立ニ関スル事務ヲ処理スベシ
農林大臣ハ前項ノ事務ノ処理ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第五条 設立委員ハ定款ヲ作成シ第二条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ定款ニハ商法ニ規定スル事項ノ外第二条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ氏名又ハ名称及住所ヲ記載スベシ
設立委員第一項ノ承認ヲ得タルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
農林大臣前項ノ認可ヲ為サントスルトキハ商法第百六十八条第一項第五号ニ掲グル事項ニ付テハ水産事業評価審査委員会ノ議ヲ経ベシ
水産事業評価審査委員会ニ関スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第六条 前条第三項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総株式ヨリ第二条第二項ノ命令ニ依リ出資ヲ為ス者ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第七条 株式申込証ニハ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ掲グル事項ノ外第二条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ氏名又ハ名称及住所並ニ定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第八条 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ農林大臣ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第九条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク第一回ノ払込及出資ノ目的タル財産ノ全部ノ給付ヲ為サシムベシ
第十条 設立委員ハ前条ノ払込及給付アリタルトキハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第十一条 創立総会ニ於テハ第二十一条ニ規定スル役員ヲ選任シ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十二条 設立委員ハ創立総会終結シタルトキハ其ノ事務ヲ帝国水産統制株式会社社長ニ引渡スベシ
第十三条 第二条第二項ノ命令ニ依リ帝国水産統制株式会社ニ出資セラルル設備ニ付当該命令ヲ受ケタル者ガ水面又ハ土地ノ占用又ハ使用ニ関シ行政官庁ノ許可、承認其ノ他ノ処分ニ基キ有スル権利義務ハ命令ノ定ムル所ニ依リ帝国水産統制株式会社成立シタル時帝国水産統制株式会社之ヲ承継ス
第十四条 第二条第二項ノ命令ヲ受ケタル者ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外農林大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ出資ノ目的タル設備又ハ権利ヲ譲渡シ、貸渡シ其ノ他当該設備又ハ権利ニ関シ新ナル処分ヲ為スコトヲ得ズ
第十五条 水産業ニ属スル設備ニ付第二条第二項ノ命令ヲ受ケタル者ハ当該設備ノ滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ命令ニ応ズルコト能ハザルニ至ルベキトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ遅滞ナク之ヲ農林大臣ニ報告スベシ
前項ノ規定ハ水産業ニ属スル権利ニ付第二条第二項ノ命令ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十六条 商法第百六十七条、第百八十一条及第百八十五条ノ規定ハ帝国水産統制株式会社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第十七条 本令ニ規定スルモノノ外帝国水産統制株式会社ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八条 帝国水産統制株式会社ハ水産業ノ綜合的統制運営ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第十九条 帝国水産統制株式会社ノ資本ハ五千万円トス但シ農林大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第二十条 帝国水産統制株式会社ハ左ニ掲グル事業ヲ営ムモノトス
一 水産業用船舶其ノ他水産業用設備ノ貸付
二 水産業用資材ノ配給
三 水産業ニ対スル投資及融資
四 水産物ノ買入及売渡
五 製氷、冷蔵及冷凍
六 前各号ノ事業ニ附帯スル事業
七 前各号ニ掲グルモノノ外水産業ノ発達ヲ図ル為必要ナル施設其ノ他帝国水産統制株式会社ノ目的ヲ達成スル為必要ナル事業
帝国水産統制株式会社前項第六号又ハ第七号ノ事業ヲ営マントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十一条 帝国水産統制株式会社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十二条 社長ハ帝国水産統制株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ帝国水産統制株式会社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ帝国水産統制株式会社ノ業務ヲ監査ス
第二十三条 役員ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ農林大臣ノ認可ヲ受クルモノトス
社長及副社長ノ任期ハ四年、理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第二十四条 帝国水産統制株式会社ノ社長、副社長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ農林大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十五条 農林大臣ハ帝国水産統制株式会社ノ業務ヲ監督ス
第二十六条 帝国水産統制株式会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第二十七条 帝国水産統制株式会社社債ヲ募集セントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外借入金ヲ為サントスルトキ亦同ジ
第二十八条 帝国水産統制株式会社ノ定款ノ変更、合併及解散ノ決議ハ農林大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十九条 帝国水産統制株式会社ハ第二条第二項ノ命令ニ依ル出資ニ係ル設備又ハ権利ニ付譲渡其ノ他ノ処分ヲ為サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ農林大臣ノ許可ヲ受クベシ
第三十条 農林大臣ハ帝国水産統制株式会社ノ業務ニ関シ監督上又ハ公益上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第三十一条 農林大臣ハ帝国水産統制株式会社ノ決議ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シタルトキ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アルトキハ其ノ決議ヲ取消スコトヲ得
農林大臣ハ帝国水産統制株式会社ノ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分又ハ定款ニ違反シタルトキ、公益ヲ害シタルトキ其ノ他役員ヲ不適当ナリト認ムルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
第三十二条 第二条第二項ノ命令ニ依ル出資ニ係ル設備又ハ権利ガ知レタル担保権ノ目的タル場合ニ於テ当該担保権ヲ消滅セシムルニ非ザレバ帝国水産統制株式会社ガ当該設備又ハ権利ヲ有効ニ利用スルコト困難ナルトキハ当事者ハ担保権ノ処理ニ付担保権者ニ協議スルコトヲ得
前項ノ協議ハ農林大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ当事者又ハ担保権者ハ当該事項ニ付農林大臣ノ裁定ヲ申請スルコトヲ得
農林大臣前項ノ裁定ヲ為サントスルトキハ水産事業評価審査委員会ノ議ヲ経ベシ
第三十三条 前条ノ規定ニ依リ担保権ガ消滅スルトキハ当該担保権者ハ出資ニ対シ割当テラレタル株式ノ上ニ質権ヲ有ス但シ同条ノ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ質権ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四条 漁業財団又ハ工場財団ニ属スルモノハ第三十二条ノ規定ニ依リ担保権ノ消滅シタル場合ヲ除クノ外第二条第二項ノ命令ニ依ル出資アリタル後ト雖モ仍原財団ニ属スルモノトス
第三十五条 農林大臣ハ第二条第二項ノ命令ニ依リ設備又ハ権利ヲ出資シタル者ヲシテ第三十六条ノ規定ニ依リ債務ノ承継アリタル場合ヲ除クノ外帝国水産統制株式会社ガ担保権ノ実行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル為命令ノ定ムル所ニ依リ相当ノ担保ヲ供託セシムルコトヲ得
帝国水産統制株式会社ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質権ヲ有ス
第三十六条 農林大臣ハ第二条第二項ノ命令ニ依リ設備又ハ権利ノ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ出資者ヲシテ当該設備又ハ権利ヲ担保トスル債務ヲ引続キ負担セシメ置クコトヲ適当ナラズト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ帝国水産統制株式会社ヲシテ当該債務ノ全部又ハ一部ヲ承継セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル承継価格其ノ他承継ニ関スル条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル
第三十二条第二項乃至第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十七条 本令ニ規定スルモノノ外第三十二条ノ規定ニ依ル担保ノ処理及裁定並ニ前条ノ規定ニ依ル債務ノ承継及裁定ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八条 帝国水産統制株式会社ハ水産業ノ経営ノ安定ヲ図ル為水産安定資金ヲ設定スベシ
帝国水産統制株式会社ハ毎営業年度ノ収入ニ付農林大臣ノ定ムル所ニ従ヒ前項ノ水産安定資金ニ繰入ルベキ金額ヲ定メ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ帝国水産統制株式会社ハ其ノ金額ヲ水産安定資金ニ繰入ルベシ
前項ノ規定ニ依リ水産安定資金ニ繰入レタル金額ハ法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
帝国水産統制株式会社水産安定資金ヲ使用セントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
前各項ニ規定スルモノノ外水産安定資金ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 海洋漁業統制株式会社
第三十九条 農林大臣ハ一定ノ水産業ヲ営ム者ニ対シ当該水産業ノ統制ノ為ニスル経営ヲ目的トスル株式会社(以下海洋漁業統制株式会社ト称ス)ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ於テハ海洋漁業統制株式会社ト為ルベキコト又ハ水産業ニ属スル設備若ハ権利ヲ出資スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第四十条 前条ノ命令ヲ受ケタル者ニシテ海洋漁業統制株式会社ト為ルベキコトヲ命ゼラレタル株式会社(以下指定会社ト称ス)ハ本令ニ依リ海洋漁業統制株式会社ト為ルコトヲ得
第四十一条 第二条第三項第四項、第四条及第八条乃至第十七条ノ規定ハ海洋漁業統制株式会社ノ設立ニ之ヲ準用ス
指定会社アル場合ニ於ケル海洋漁業統制株式会社ノ設立ニ付テハ前項ノ規定ニ依ルノ外第四十二条乃至第五十一条ノ定ムル所ニ依ル
指定会社ナキ場合ニ於ケル海洋漁業統制株式会社ノ設立ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ルノ外第三条及第五条乃至第七条ノ規定ヲ準用ス
第四十二条 農林大臣第三十九条ノ命令ヲ為ス場合ニ於テハ当該事業者ニ対シ左ニ掲グル事項ヲ記載シタル命令書ヲ交付スベシ
一 第三十九条第一項ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名称及住所
二 設立スベキ海洋漁業統制株式会社ノ商号及事業
三 指定会社ノ商号
四 第三十九条第二項後段ノ命令ヲ受クベキ者ノ氏名又ハ名称及其ノ各自ノ出資スベキ設備又ハ権利ノ範囲
五 海洋漁業統制株式会社ヲ設立スベキ期限
六 前各号ニ掲グルモノノ外必要ト認ムル事項
農林大臣第三十九条ノ命令ヲ為シタルトキハ前項第一号乃至第五号ニ掲グル事項ヲ公告スベシ
第四十三条 設立委員ハ左ニ掲グル事項ヲ記載シタル書面ヲ作成シ第一号及第三号乃至第六号ニ掲グル事項ニ付テハ第三十九条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
一 海洋漁業統制株式会社ノ商号、資本ノ総額、一株ノ金額及本店ノ所在地
二 指定会社ノ商号
三 海洋漁業統制株式会社ノ発行スベキ株式ノ種類、数及払込金額並ニ指定会社ノ株主ニ対スル株式ノ割当ニ関スル事項
四 指定会社ノ株主ニ支払ヲ為スベキ金額ヲ定メタルトキハ其ノ規定
五 第三十九条第二項後段ノ命令ニ依リ出資ヲ為ス者ノ氏名又ハ名称、出資ノ目的タル財産、其ノ価格並ニ之ニ対シ与フル株式ノ種類及数
六 海洋漁業統制株式会社ヲ設立スベキ時期
七 第三十九条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ニ於テ承認ヲ為スベキ期日
八 前各号ニ掲グルモノノ外必要ト認ムル事項
前項ノ承認ハ第三十九条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ガ株式会社ナル場合ニ於テハ商法第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ前項ノ書面ノ要領ハ同法第二百三十二条ニ定ムル通知及公告ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス
設立委員第一項ノ承認ヲ得タルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
農林大臣前項ノ認可ヲ為サントスルトキハ第一項第三号乃至第五号ニ掲グル事項ニ付テハ水産事業評価審査委員会ノ議ヲ経ベシ
設立委員ハ第三項ノ認可アリタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ第三十九条ノ命令ヲ受ケタル者ニ通知スベシ
第四十四条 商法第四百十六条第三項及第四項ノ規定ハ海洋漁業統制株式会社ノ設立ニ之ヲ準用ス但シ同条第三項ニ於テ準用スル同法第三百七十七条第一項但書及第三百七十八条第一項但書(同法第三百七十九条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)中三月トアルハ一月トス
第四十五条 設立委員ハ第四十三条第三項ノ認可アリタルトキハ定款ヲ作成シ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ定款ニハ商法ニ規定スル事項ノ外左ニ掲グル事項ヲ記載スベシ
一 第三十九条第一項ノ命令ヲ受ケタル者ノ氏名又ハ名称及住所
二 指定会社ノ株主ニ対スル株式ノ割当ニ関スル事項
三 指定会社ノ株主ニ支払ヲ為スベキ金額ヲ定メタルトキハ其ノ規定
四 指定会社ノ財産ノ概況
第四十六条 前条第一項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総株式ヨリ指定会社ノ株主及第三十九条第二項後段ノ命令ニ依リ出資ヲ為ス者ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十七条 株式申込証ニハ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ掲グル事項ノ外第四十五条第二項各号ニ掲グル事項及定款認可ノ年月日ヲ記載スベシ
第四十八条 海洋漁業統制株式会社ノ創立総会ニ関シ商法第百八十条第二項第三項及第二百二十四条第三項ノ規定ヲ適用スルニ付テハ海洋漁業統制株式会社ノ株式ノ割当ヲ受ケタル指定会社ノ株主ハ之ヲ株式引受人ト看做ス
第四十九条 指定会社ハ海洋漁業統制株式会社ノ成立ニ因リ之ニ吸収セラルルモノトシ指定会社ノ権利義務(指定会社ガ其ノ水産業ニ属スル設備又ハ権利ニ付水面又ハ土地ノ占用又ハ使用ニ関シ行政官庁ノ許可、承認其ノ他ノ処分ニ基キ有スル権利義務ヲ含ム)ハ海洋漁業統制株式会社ニ於テ之ヲ承継ス
第五十条 前条ノ場合ニ於ケル指定会社ヨリ海洋漁業統制株式会社ヘノ有価証券ノ移転ニ付テハ有価証券移転税ヲ免除ス
第五十一条 海洋漁業統制株式会社ガ設立ノ登記ヲ受クルトキハ其ノ払込株金額中指定会社ノ払込株金額ニ相当スル部分ニ付テハ登録税ヲ免除ス
海洋漁業統制株式会社ガ第四十九条ノ規定ニ依リ指定会社ヨリ不動産又ハ船舶ニ関スル権利ヲ承継スル場合ニ於ケル其ノ取得ニ付登記ヲ受クルトキ亦前項ニ同ジ
第五十二条 海洋漁業統制株式会社ハ一定ノ水産業ノ統制ノ為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第五十三条 海洋漁業統制株式会社ハ左ニ掲グル事業ヲ営ムモノトス
一 海洋漁業其ノ他ノ水産業
二 前号ノ事業ニ附帯スル事業
三 前各号ニ掲グルモノノ外海洋漁業統制株式会社ノ目的ヲ達成スル為必要ナル事業
海洋漁業統制株式会社前項第二号又ハ第三号ノ事業ヲ営マントスルトキハ農林大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十四条 海洋漁業統制株式会社ニ役員トシテ社長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
海洋漁業統制株式会社ニ前項ノ役員ノ外定款ノ定ムル所ニ依リ副社長一人ヲ置クコトヲ得
第五十五条 第二十二条乃至第三十七条ノ規定ハ海洋漁業統制株式会社ニ付之ヲ準用ス
第四章 雑則
第五十六条 逓信大臣ハ命令ヲ以テ定ムル水産業用船舶ヲ使用スルコトヲ得
戦時海運管理令第二条但書、第三条乃至第十二条及第十四条乃至第十七条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル使用ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
第五十七条 農林大臣ハ命令ヲ以テ定ムル水産業用船舶以外ノ水産施設ヲ使用スルコトヲ得
工場事業場使用収用令第二条第二項、第三条乃至第十一条、第十八条第一項、第十九条、第二十一条乃至第二十三条及第三十一条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル使用ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス但シ同令中閣令トアルハ命令トス
第五十八条 戦時海運管理令第十三条、第四十四条、第四十七条及第六十一条ノ規定ハ前二条ノ規定ニ依リ水産業用船舶及其ノ他ノ水産施設ノ使用ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス但シ同令中船舶運営会トアルハ帝国水産統制株式会社トシ所有者トアルハ水産業用船舶及其ノ他ノ水産施設ノ貸借ノ場合ニ在リテハ当該施設ノ借入人トシ逓信大臣トアルハ水産業用船舶以外ノ水産施設ニ関シテハ農林大臣トス
帝国水産統制株式会社ハ前項ニ於テ準用スル戦時海運管理令第十三条ノ規定ニ依リ貸付ケラレタル水産業用船舶及其ノ他ノ水産施設ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ水産業ニ使用シ又ハ使用セシムベシ
第五十九条 逓信大臣ハ第五十六条ノ規定ニ依リ使用シタル水産業用船舶ニ乗組マシムベキ船員ヲ徴用シ及被徴用船員ニ付解雇、従業、退職又ハ給与ニ関シ命令ヲ為スコトヲ得
戦時海運管理令第十八条乃至第二十六条、第四十六条、第四十八条及第六十三条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル徴用ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス但シ同令中船舶運営会トアルハ当該船舶ヲ運航スル者トス
第六十条 前四条ニ規定スルモノノ外水産業用船舶及其ノ他ノ水産施設ノ使用並ニ船員ノ徴用ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一条 第五十六条第一項及第五十九条第一項ノ規定ニ依ル水産業用船舶ノ使用及船員ノ徴用ハ農林大臣ト逓信大臣トノ協議ニ基キ逓信大臣之ヲ行フモノトス
第六十二条 農林大臣ノ指定スル水産業ハ其ノ指定スル海洋漁業統制株式会社ニ非ザレバ之ヲ開始スルコトヲ得ズ
第六十三条 行政官庁ハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ水産業ノ統制ニ関シ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ漁場、水産業用船舶、事業場、事務所其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ其ノ状況若ハ帳簿、書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス