地代家賃統制令
法令番号: 勅令第六百七十八號
公布年月日: 昭和15年10月19日
法令の形式: 勅令
朕地代家賃統制令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十月十六日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
厚生大臣 金光庸夫
拓務大臣 秋田淸
勅令第六百七十八號
地代家賃統制令
第一條 國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十九條ノ規定ニ基ク地代及家賃ニ關スル統制ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ニ於テ借地トハ建物所有ノ目的ヲ以テ賃借セラレ又ハ地上權ヲ設定セラレタル土地ヲ謂ヒ借家トハ賃借セラレタル建物(建物ノ一部タル室ヲ含ム)ヲ謂フ
第三條 借地又ハ借家ノ貸主(以下單ニ貸主ト稱ス)ハ借地又ハ借家ニ付左ノ各號ニ規定スル地代又ハ家賃ヲ超エテ地代又ハ家賃ヲ定ムルコトヲ得ズ
一 昭和十三年八月四日以後本令施行前ニ地代又ハ家賃アリタルモノニ付テハ本令施行前ニ於ケル最後ノ地代又ハ家賃
二 前號ニ該當セザル場合ニ於テ本令施行後ニ地代又ハ家賃アルニ至リタルモノニ付テハ本令施行後ニ於ケル最初ノ地代又ハ家賃
前項第二號ニ規定スル地代又ハ家賃アルニ至リタルトキハ貸主ハ之ヲ地方長官ニ屆出ヅベシ
第四條 厚生大臣ノ定ムル事由アル場合ニ於テ地方長官ノ許可アリタルトキハ貸主ハ前條第一項各號ニ規定スル地代又ハ家賃ヲ超エテ地代又ハ家賃ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ定メタル地代又ハ家賃ハ前條第一項及前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ前條第一項各號ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第五條 第三條第一項第二號ニ規定スル地代又ハ家賃ニ付テハ厚生大臣其ノ適正標準ヲ定ム
第六條 地方長官第三條第一項第一號ニ規定スル地代若ハ家賃ガ著シク不當ナリト認ムルトキ又ハ同項第二號ニ規定スル地代若ハ家賃ガ前條ノ適正標準ニ照シ不當ナリト認ムルトキハ貸主ニ對シ地代又ハ家賃ノ減額ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ依リ減額シタル地代又ハ家賃ハ第三條第一項及第四條第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第三條第一項各號ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第七條 貸主地代又ハ家賃ノ定ニ付左ノ各號ノ一ニ該當スル變更ヲ爲サントスルトキハ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
一 金納ヲ物納ニ改メ其ノ他確定金額ヲ以テ定ムルモノヲ確定金額以外ノ方法ヲ以テ定メントスルトキ
二 物納ヲ金納ニ改メ其ノ他確定金額以外ノ方法ヲ以テ定ムルモノヲ確定金額其ノ他別途ノ方法ヲ以テ定メントスルトキ
前項ノ許可ヲ受ケテ變更シタル地代又ハ家賃ハ第三條第一項及第四條第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第三條第一項各號ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第八條 下宿屋、共同住宅其ノ他之ニ類スル借家ニ付貸主ノ組合其ノ他之ニ準ズルモノ家賃ノ基準及其ノ借家ノ條件ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受ケタルトキハ第三條第一項及第四條第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ基準及條件ニ依リ定ムル家賃ヲ以テ第三條第一項各號ニ規定スル家賃ト看做ス
第九條 地方長官必要アリト認ムルトキハ第四條第一項若ハ第七條第一項ノ許可又ハ前條ノ認可ニ制限又ハ條件ヲ附スルコトヲ得
第十條 地方長官第四條第一項、第六條第一項、第七條第一項又ハ第八條ノ規定ニ依リ許可、認可又ハ命令ヲ爲サントスルトキハ地代家賃審査會ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
地代家賃審査會ニ關スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第十一條 地方長官必要アリト認ムルトキハ貸主ニ對シ地代若ハ家賃ニ關スル帳簿ノ作成ヲ命ジ又ハ下宿屋、共同住宅其ノ他之ニ類スル借家ニ付家賃其ノ他ノ條件ヲ借家ノ見易キ箇所ニ揭示スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十二條 地方長官必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ借地又ハ借家ニ關シ貸主、貸主ノ組合其ノ他之ニ準ズルモノ若ハ借主ヨリ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ日出ヨリ日沒迄ノ間借地、借家其ノ他ノ場所ニ臨檢シ其ノ狀況若ハ借地、借家ノ契約書、帳簿其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十三條 第三條、第四條、第六條、第九條及第十條ノ規定ハ敷金、修繕費ノ負擔其ノ他地代又ハ家賃以外ノ借地又ハ借家ノ條件ニシテ厚生大臣ノ指定スルモノニ付之ヲ準用ス
第十四條 貸主ハ何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第三條第一項(前條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル禁止ヲ免ルル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第十五條 本令ハ國又ハ道府縣ガ貸主タル借地又ハ借家ニ付テハ之ヲ適用セズ
第十六條 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ道府縣トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、臺灣ニ在リテハ州又ハ廳、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トシ昭和十三年八月四日トアルハ朝鮮ニ在リテハ昭和十三年十二月三十一日、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十四年九月十八日トス
朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ地代家賃審査會ニ關スル規定ハ之ヲ適用セズ
附 則
第十七條 本令ハ昭和十五年十月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十六年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八條 朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十四年勅令第七百四號地代家賃統制令(以下舊令ト稱ス)ハ昭和十六年六月三十日迄其ノ效力ヲ有ス但シ同日以前ニ爲シタル行爲ニ關スル罰則ノ適用ニ付テハ同日後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
第十九條 舊令ニ基キテ爲シタル許可、命令又ハ許可申請ハ之ヲ本令ニ基キテ爲シタル許可、命令又ハ許可申請ト看做ス
第二十條 舊令第十三條、第十四條第一項及第十五條ノ規定ハ昭和十五年十月十九日(朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十六年六月三十日)後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
第二十一條 舊令第十三條ニ規定スル借地又ハ借家ニ付本令施行後地代又ハ家賃ノ囘復セラレタル場合ニ於テハ其ノ囘復セラレタル地代又ハ家賃ヲ以テ第三條第一項第一號ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第二十二條 本令施行後舊令第十四條第一項ノ裁判、和解又ハ調停ニ依リ增額セラレタル地代又ハ家賃ハ之ヲ第三條第一項第一號ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第二十三條 第六條ノ規定ハ舊令第十四條第一項ノ裁判、和解又ハ調停ニ依リ增額セラレタル地代又ハ家賃ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二十四條 前三條ノ規定ハ舊令第十五條ニ規定スル場合ニ付之ヲ準用ス
朕地代家賃統制令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十月十六日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
厚生大臣 金光庸夫
拓務大臣 秋田清
勅令第六百七十八号
地代家賃統制令
第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第十九条ノ規定ニ基ク地代及家賃ニ関スル統制ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令ニ於テ借地トハ建物所有ノ目的ヲ以テ賃借セラレ又ハ地上権ヲ設定セラレタル土地ヲ謂ヒ借家トハ賃借セラレタル建物(建物ノ一部タル室ヲ含ム)ヲ謂フ
第三条 借地又ハ借家ノ貸主(以下単ニ貸主ト称ス)ハ借地又ハ借家ニ付左ノ各号ニ規定スル地代又ハ家賃ヲ超エテ地代又ハ家賃ヲ定ムルコトヲ得ズ
一 昭和十三年八月四日以後本令施行前ニ地代又ハ家賃アリタルモノニ付テハ本令施行前ニ於ケル最後ノ地代又ハ家賃
二 前号ニ該当セザル場合ニ於テ本令施行後ニ地代又ハ家賃アルニ至リタルモノニ付テハ本令施行後ニ於ケル最初ノ地代又ハ家賃
前項第二号ニ規定スル地代又ハ家賃アルニ至リタルトキハ貸主ハ之ヲ地方長官ニ届出ヅベシ
第四条 厚生大臣ノ定ムル事由アル場合ニ於テ地方長官ノ許可アリタルトキハ貸主ハ前条第一項各号ニ規定スル地代又ハ家賃ヲ超エテ地代又ハ家賃ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ定メタル地代又ハ家賃ハ前条第一項及前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ前条第一項各号ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第五条 第三条第一項第二号ニ規定スル地代又ハ家賃ニ付テハ厚生大臣其ノ適正標準ヲ定ム
第六条 地方長官第三条第一項第一号ニ規定スル地代若ハ家賃ガ著シク不当ナリト認ムルトキ又ハ同項第二号ニ規定スル地代若ハ家賃ガ前条ノ適正標準ニ照シ不当ナリト認ムルトキハ貸主ニ対シ地代又ハ家賃ノ減額ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ニ依リ減額シタル地代又ハ家賃ハ第三条第一項及第四条第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第三条第一項各号ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第七条 貸主地代又ハ家賃ノ定ニ付左ノ各号ノ一ニ該当スル変更ヲ為サントスルトキハ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
一 金納ヲ物納ニ改メ其ノ他確定金額ヲ以テ定ムルモノヲ確定金額以外ノ方法ヲ以テ定メントスルトキ
二 物納ヲ金納ニ改メ其ノ他確定金額以外ノ方法ヲ以テ定ムルモノヲ確定金額其ノ他別途ノ方法ヲ以テ定メントスルトキ
前項ノ許可ヲ受ケテ変更シタル地代又ハ家賃ハ第三条第一項及第四条第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第三条第一項各号ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第八条 下宿屋、共同住宅其ノ他之ニ類スル借家ニ付貸主ノ組合其ノ他之ニ準ズルモノ家賃ノ基準及其ノ借家ノ条件ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受ケタルトキハ第三条第一項及第四条第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ基準及条件ニ依リ定ムル家賃ヲ以テ第三条第一項各号ニ規定スル家賃ト看做ス
第九条 地方長官必要アリト認ムルトキハ第四条第一項若ハ第七条第一項ノ許可又ハ前条ノ認可ニ制限又ハ条件ヲ附スルコトヲ得
第十条 地方長官第四条第一項、第六条第一項、第七条第一項又ハ第八条ノ規定ニ依リ許可、認可又ハ命令ヲ為サントスルトキハ地代家賃審査会ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
地代家賃審査会ニ関スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第十一条 地方長官必要アリト認ムルトキハ貸主ニ対シ地代若ハ家賃ニ関スル帳簿ノ作成ヲ命ジ又ハ下宿屋、共同住宅其ノ他之ニ類スル借家ニ付家賃其ノ他ノ条件ヲ借家ノ見易キ箇所ニ掲示スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十二条 地方長官必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ借地又ハ借家ニ関シ貸主、貸主ノ組合其ノ他之ニ準ズルモノ若ハ借主ヨリ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ日出ヨリ日没迄ノ間借地、借家其ノ他ノ場所ニ臨検シ其ノ状況若ハ借地、借家ノ契約書、帳簿其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十三条 第三条、第四条、第六条、第九条及第十条ノ規定ハ敷金、修繕費ノ負担其ノ他地代又ハ家賃以外ノ借地又ハ借家ノ条件ニシテ厚生大臣ノ指定スルモノニ付之ヲ準用ス
第十四条 貸主ハ何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第三条第一項(前条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル禁止ヲ免ルル行為ヲ為スコトヲ得ズ
第十五条 本令ハ国又ハ道府県ガ貸主タル借地又ハ借家ニ付テハ之ヲ適用セズ
第十六条 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ道府県トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、台湾ニ在リテハ州又ハ庁、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トシ昭和十三年八月四日トアルハ朝鮮ニ在リテハ昭和十三年十二月三十一日、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十四年九月十八日トス
朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ地代家賃審査会ニ関スル規定ハ之ヲ適用セズ
附 則
第十七条 本令ハ昭和十五年十月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十六年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八条 朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十四年勅令第七百四号地代家賃統制令(以下旧令ト称ス)ハ昭和十六年六月三十日迄其ノ効力ヲ有ス但シ同日以前ニ為シタル行為ニ関スル罰則ノ適用ニ付テハ同日後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス
第十九条 旧令ニ基キテ為シタル許可、命令又ハ許可申請ハ之ヲ本令ニ基キテ為シタル許可、命令又ハ許可申請ト看做ス
第二十条 旧令第十三条、第十四条第一項及第十五条ノ規定ハ昭和十五年十月十九日(朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十六年六月三十日)後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス
第二十一条 旧令第十三条ニ規定スル借地又ハ借家ニ付本令施行後地代又ハ家賃ノ回復セラレタル場合ニ於テハ其ノ回復セラレタル地代又ハ家賃ヲ以テ第三条第一項第一号ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第二十二条 本令施行後旧令第十四条第一項ノ裁判、和解又ハ調停ニ依リ増額セラレタル地代又ハ家賃ハ之ヲ第三条第一項第一号ニ規定スル地代又ハ家賃ト看做ス
第二十三条 第六条ノ規定ハ旧令第十四条第一項ノ裁判、和解又ハ調停ニ依リ増額セラレタル地代又ハ家賃ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二十四条 前三条ノ規定ハ旧令第十五条ニ規定スル場合ニ付之ヲ準用ス