従業者移動防止令
法令番号: 勅令第七百五十號
公布年月日: 昭和15年11月9日
法令の形式: 勅令
朕從業者移動防止令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十一月八日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
厚生大臣 金光庸夫
拓務大臣 秋田淸
勅令第七百五十號
從業者移動防止令
第一條 從業者移動防止ノ爲ニスル國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第六條ノ規定ニ基ク從業者ノ雇入及使用ノ制限竝ニ解雇ニ關スル命令ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ニ於テ指定從業者ト稱スルハ年齡十四年以上六十年未滿ノ男子ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
一 厚生大臣ノ指定スル事業ヲ行フ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ引續キ一月以上雇傭契約ニ基キ厚生大臣ノ指定スル勞務者(以下指定勞務者ト稱ス)トシテ使用セラルル者
二 前號ノ事業ヲ行フ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ引續キ一月以上雇傭契約ニ基キ指定勞務者トシテ使用セラレ本令施行後ニ於テ其ノ雇傭ヲ終了シ且其ノ雇傭ヲ終了シタル日ヨリ一年ヲ經過セザル者
三 引續キ一月以上雇傭契約ニ基キ厚生大臣ノ指定スル技術者(以下指定技術者ト稱ス)トシテ使用セラルル者
四 引續キ一月以上雇傭契約ニ基キ指定技術者トシテ使用セラレ本令施行後ニ於テ其ノ雇傭ヲ終了シ且其ノ雇傭ヲ終了シタル日ヨリ一年ヲ經過セザル者
第三條 何人ト雖モ工場若ハ事業場ニ於テ使用スル爲又ハ指定技術者トシテ使用スル爲前條第一號又ハ第三號ノ指定從業者ニ對シ自ラ又ハ他人ヲシテ其ノ被傭者タルコトヲ勸誘シ又ハ勸誘セシムルコトヲ得ズ他人ノ工場若ハ事業場ニ於テ使用セシムル爲又ハ指定技術者トシテ使用セシムル爲他人ノ被傭者タルコトヲ勸誘シ又ハ勸誘セシムルコト亦同ジ
第四條 工場若ハ事業場ニ於テ使用スル爲又ハ指定技術者トシテ使用スル爲他人ヲ雇入レントスルトキハ豫メ其ノ者ガ指定從業者ナルヤ否ヲ確認スルコトヲ要ス但シ職業紹介所ノ紹介ニ依リ雇入ルル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
指定從業者工場若ハ事業場ニ於テ使用セラルル爲又ハ指定技術者トシテ使用セラルル爲雇入レラレントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ其ノ前歷ニ關スル事項ヲ職業紹介所長ニ報吿スベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ報吿ハ職業紹介所ノ紹介ニ依ラズシテ雇入レラレントスル場合ニ在リテハ雇入レントスル者ヲ經由シテ之ヲ爲スベシ
第五條 工場若ハ事業場ニ於テ使用スル爲又ハ指定技術者トシテ使用スル爲雇入レントスル者ガ指定從業者ナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ職業紹介所長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ雇入ルルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第六條 何人ト雖モ勞務供給契約ニ基キ工場又ハ事業場ニ於テ指定從業者ヲ使用スルコトヲ得ズ
第七條 職業紹介所長第五條ノ認可ノ申請ニ付不正又ハ虛僞ノ事實アリト認ムルトキハ認可ヲ取消スコトヲ得
第八條 第五條ノ規定ニ違反シテ指定從業者ヲ雇入レタル者アルトキハ職業紹介所長ハ其ノ者ニ對シ其ノ指定從業者ヲ解雇スベキコトヲ命ズルコトヲ得前條ノ規定ニ依リ認可ノ取消ヲ爲シタルトキ亦同ジ
第九條 地方長官從業者ノ移動ヲ防止スル爲必要アリト認ムルトキハ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ指定技術者又ハ指定勞務者ヲ雇傭スル者ニ對シ指定從業者以外ノ從業者ノ雇入ノ方法ニ關シ制限ヲ爲スコトヲ得
第十條 何人ト雖モ何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第五條又ハ第六條ノ規定ニ依ル制限ヲ免ルル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第十一條 厚生大臣、地方長官又ハ職業紹介所長必要アリト認ムルトキハ指定從業者ノ雇入、使用又ハ解雇ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ關係人ヨリ報吿ヲ徵スルコトヲ得
第十二條 厚生大臣、地方長官又ハ職業紹介所長必要アリト認ムルトキハ指定從業者ノ雇入又ハ使用ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ當該官吏ヲシテ指定從業者ヲ雇入レ若ハ雇入レントスル者又ハ使用シ若ハ使用セントスル者ノ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況又ハ帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十三條 第三條乃至第五條、第七條、第十條及第十一條ノ規定ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニ於テ指定從業者ヲ吏員トシテ採用スル場合ニ之ヲ準用ス
第十四條 本令ハ國又ハ道府縣ニ於ケル從業者ノ雇入又ハ使用ニハ之ヲ適用セズ
第十五條 本令ハ學校卒業者使用制限令及靑少年雇入制限令ノ適用ヲ妨ゲズ
第十六條 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ職業紹介所長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹、那守又ハ島司、臺灣ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖廳ニ在リテハ廳長)、樺太ニ在リテハ樺太廳支廳長、南洋群島ニ在リテハ南洋廳支廳長トシ職業紹介所トアルハ朝鮮ニ在リテハ國トシ道府縣トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、臺灣ニ在リテハ州又ハ廳、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トス
本令中職業紹介所ニ關スル規定ハ臺灣及南洋群島ニ在リテハ之ヲ適用セズ
附 則
本令ハ昭和十五年十一月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十五年十二月五日ヨリ之ヲ施行ス
從業者雇入制限令ハ之ヲ廢止ス但シ本令施行前ニ爲シタル行爲ニ關スル罰則ノ適用ニ付テハ本令施行後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
本令施行ノ際現ニ從業者雇入制限令第一條第二號又ハ第四號ニ該當スル者ニシテ本令施行前ニ於テ其ノ雇傭ヲ終了シタルモノハ其ノ雇傭セラレタル場所ガ第二條第一號ノ事業ヲ行フ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ該當スル場合又ハ其ノ者ガ指定技術者ニ該當スル場合ニ於テハ從業者雇入制限令第一條第二號ノ學校卒業者ニ該當スル者ニ在リテハ其ノ雇傭終了後一年間、其ノ他ノ者ニ在リテハ其ノ雇傭終了後六月間之ヲ本令ノ規定ニ依ル指定從業者ト看做ス
朕従業者移動防止令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年十一月八日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
厚生大臣 金光庸夫
拓務大臣 秋田清
勅令第七百五十号
従業者移動防止令
第一条 従業者移動防止ノ為ニスル国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第六条ノ規定ニ基ク従業者ノ雇入及使用ノ制限並ニ解雇ニ関スル命令ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令ニ於テ指定従業者ト称スルハ年齢十四年以上六十年未満ノ男子ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノヲ謂フ
一 厚生大臣ノ指定スル事業ヲ行フ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ引続キ一月以上雇傭契約ニ基キ厚生大臣ノ指定スル労務者(以下指定労務者ト称ス)トシテ使用セラルル者
二 前号ノ事業ヲ行フ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ引続キ一月以上雇傭契約ニ基キ指定労務者トシテ使用セラレ本令施行後ニ於テ其ノ雇傭ヲ終了シ且其ノ雇傭ヲ終了シタル日ヨリ一年ヲ経過セザル者
三 引続キ一月以上雇傭契約ニ基キ厚生大臣ノ指定スル技術者(以下指定技術者ト称ス)トシテ使用セラルル者
四 引続キ一月以上雇傭契約ニ基キ指定技術者トシテ使用セラレ本令施行後ニ於テ其ノ雇傭ヲ終了シ且其ノ雇傭ヲ終了シタル日ヨリ一年ヲ経過セザル者
第三条 何人ト雖モ工場若ハ事業場ニ於テ使用スル為又ハ指定技術者トシテ使用スル為前条第一号又ハ第三号ノ指定従業者ニ対シ自ラ又ハ他人ヲシテ其ノ被傭者タルコトヲ勧誘シ又ハ勧誘セシムルコトヲ得ズ他人ノ工場若ハ事業場ニ於テ使用セシムル為又ハ指定技術者トシテ使用セシムル為他人ノ被傭者タルコトヲ勧誘シ又ハ勧誘セシムルコト亦同ジ
第四条 工場若ハ事業場ニ於テ使用スル為又ハ指定技術者トシテ使用スル為他人ヲ雇入レントスルトキハ予メ其ノ者ガ指定従業者ナルヤ否ヲ確認スルコトヲ要ス但シ職業紹介所ノ紹介ニ依リ雇入ルル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
指定従業者工場若ハ事業場ニ於テ使用セラルル為又ハ指定技術者トシテ使用セラルル為雇入レラレントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ予メ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ其ノ前歴ニ関スル事項ヲ職業紹介所長ニ報告スベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ報告ハ職業紹介所ノ紹介ニ依ラズシテ雇入レラレントスル場合ニ在リテハ雇入レントスル者ヲ経由シテ之ヲ為スベシ
第五条 工場若ハ事業場ニ於テ使用スル為又ハ指定技術者トシテ使用スル為雇入レントスル者ガ指定従業者ナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ職業紹介所長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ雇入ルルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第六条 何人ト雖モ労務供給契約ニ基キ工場又ハ事業場ニ於テ指定従業者ヲ使用スルコトヲ得ズ
第七条 職業紹介所長第五条ノ認可ノ申請ニ付不正又ハ虚偽ノ事実アリト認ムルトキハ認可ヲ取消スコトヲ得
第八条 第五条ノ規定ニ違反シテ指定従業者ヲ雇入レタル者アルトキハ職業紹介所長ハ其ノ者ニ対シ其ノ指定従業者ヲ解雇スベキコトヲ命ズルコトヲ得前条ノ規定ニ依リ認可ノ取消ヲ為シタルトキ亦同ジ
第九条 地方長官従業者ノ移動ヲ防止スル為必要アリト認ムルトキハ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ指定技術者又ハ指定労務者ヲ雇傭スル者ニ対シ指定従業者以外ノ従業者ノ雇入ノ方法ニ関シ制限ヲ為スコトヲ得
第十条 何人ト雖モ何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第五条又ハ第六条ノ規定ニ依ル制限ヲ免ルル行為ヲ為スコトヲ得ズ
第十一条 厚生大臣、地方長官又ハ職業紹介所長必要アリト認ムルトキハ指定従業者ノ雇入、使用又ハ解雇ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ関係人ヨリ報告ヲ徴スルコトヲ得
第十二条 厚生大臣、地方長官又ハ職業紹介所長必要アリト認ムルトキハ指定従業者ノ雇入又ハ使用ニ関シ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ当該官吏ヲシテ指定従業者ヲ雇入レ若ハ雇入レントスル者又ハ使用シ若ハ使用セントスル者ノ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況又ハ帳簿書類ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十三条 第三条乃至第五条、第七条、第十条及第十一条ノ規定ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニ於テ指定従業者ヲ吏員トシテ採用スル場合ニ之ヲ準用ス
第十四条 本令ハ国又ハ道府県ニ於ケル従業者ノ雇入又ハ使用ニハ之ヲ適用セズ
第十五条 本令ハ学校卒業者使用制限令及青少年雇入制限令ノ適用ヲ妨ゲズ
第十六条 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ職業紹介所長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹、那守又ハ島司、台湾ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖庁ニ在リテハ庁長)、樺太ニ在リテハ樺太庁支庁長、南洋群島ニ在リテハ南洋庁支庁長トシ職業紹介所トアルハ朝鮮ニ在リテハ国トシ道府県トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、台湾ニ在リテハ州又ハ庁、南洋群島ニ在リテハ南洋群島地方費トス
本令中職業紹介所ニ関スル規定ハ台湾及南洋群島ニ在リテハ之ヲ適用セズ
附 則
本令ハ昭和十五年十一月二十日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和十五年十二月五日ヨリ之ヲ施行ス
従業者雇入制限令ハ之ヲ廃止ス但シ本令施行前ニ為シタル行為ニ関スル罰則ノ適用ニ付テハ本令施行後ト雖モ仍其ノ効力ヲ有ス
本令施行ノ際現ニ従業者雇入制限令第一条第二号又ハ第四号ニ該当スル者ニシテ本令施行前ニ於テ其ノ雇傭ヲ終了シタルモノハ其ノ雇傭セラレタル場所ガ第二条第一号ノ事業ヲ行フ工場、事業場其ノ他ノ場所ニ該当スル場合又ハ其ノ者ガ指定技術者ニ該当スル場合ニ於テハ従業者雇入制限令第一条第二号ノ学校卒業者ニ該当スル者ニ在リテハ其ノ雇傭終了後一年間、其ノ他ノ者ニ在リテハ其ノ雇傭終了後六月間之ヲ本令ノ規定ニ依ル指定従業者ト看做ス