金融事業整備令
法令番号: 勅令第五百十一號
公布年月日: 昭和17年5月16日
法令の形式: 勅令
朕金融事業整備令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年五月十五日
內閣總理大臣 東條英機
農林大臣兼拓務大臣 井野碩哉
大藏大臣 賀屋興宣
勅令第五百十一號
金融事業整備令
第一條 國家總動員法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク金融事業(有價證券ニ關スル事業ヲ含ム以下同ジ)ノ委託若ハ讓渡又ハ金融事業ヲ營ム法人ノ合併ニ關スル命令ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 主務大臣金融事業ノ整備ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ金融事業ヲ營ム者(以下金融機關ト稱ス)ニ對シ金融事業ノ委託、受託、讓渡若ハ讓受又ハ法人ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第三條 前條ノ場合ニ於ケル委託、讓渡又ハ合併ノ條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス
第四條 主務大臣金融事業ノ委託ニ關シ前條ノ認可又ハ裁定ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク其ノ旨及當該委託ニ關スル協議又ハ裁定ノ要旨ヲ吿示シ且命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ囑託スルコトヲ要ス
第五條 本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外第二條ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ委託ヲ爲シタル金融機關(以下委託金融機關ト稱ス)ト同條ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ受託ヲ爲シタル金融機關(以下受託金融機關ト稱ス)トノ間ノ關係ハ委任ニ關スル規定ニ從フ
第六條 受託金融機關ガ委託金融機關ノ爲ニ法律行爲ヲ爲スニハ委託金融機關ノ爲ニスルコトヲ表示スルモノトス
前項ノ表示ヲ爲サズシテ爲シタル法律行爲ハ之ヲ自己ノ爲ニ爲シタルモノト看做ス
商法第三十八條第一項ノ規定ハ受託金融機關ニ之ヲ準用ス
民法第四十四條第一項ノ規定ハ第二條ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ委託アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第七條 第二條ノ規定ニ依ル命令ニ基キ爲シタル金融事業ノ委託ハ第三條ノ協議又ハ裁定ニ於テ定ムル事由ニ因リテノミ終了ス
前項ノ場合ニ於テハ主務大臣ハ遲滯ナク金融事業ノ委託ノ終了シタル旨ヲ吿示シ且命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ囑託スルコトヲ要ス
第八條 金融機關金融事業ノ讓渡ニ關シ第三條ノ認可又ハ裁定アリタル場合ニ於テ遲滯ナク其ノ旨及當該讓渡ニ關スル協議又ハ裁定ノ要旨ヲ公吿シ且預金者其ノ他命令ヲ以テ定ムル者以外ノ知レタル債權者ニ各別ニ之ヲ通知シタルトキハ當該讓渡ニ付債權者ノ承認アリタルモノト看做ス
第九條 金融機關第二條ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ讓渡ヲ爲シタル場合ニ於テ遲滯ナク其ノ旨ヲ公吿シタルトキハ當該金融機關ノ債務者ニ對シ民法第四百六十七條ノ規定ニ依ル確定日附アル證書ヲ以テスル通知アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ其ノ公吿ノ日附ヲ以テ確定日附トス
第十條 第八條ノ規定ハ第二條ノ規定ニ依リ法人ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一條 主務大臣第二條ノ規定ニ依リ命令ヲ爲シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ當該金融機關ニ對シ事業ノ停止、株主ノ名義書換ノ停止其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十二條 金融機關第二條ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ委託、受託、讓渡若ハ讓受又ハ法人ノ合併ヲ爲ス場合ニ於テハ他ノ法令ニ依ル認可又ハ許可ヲ受クルコトヲ要セズ
第十三條 第三條ノ協議又ハ裁定ニ基キ法人タル金融機關ガ金融事業ノ委託、讓渡、合併其ノ他當該協議又ハ裁定ニ於テ定ムル事項ノ實行ヲ爲サントスルニ付株主總會又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ當該金融機關ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ當該事項ノ實行ヲ爲スコトヲ得
第十四條 主務大臣第二條ノ規定ニ依ル命令又ハ第三條ノ認可若ハ裁定ヲ爲スニ付必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ金融機關ノ取引先ヨリ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十五條 主務大臣ノ指定スル金融機關ハ第二條ノ規定ニ依ル命令ニ基ク場合ヲ除クノ外主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ金融事業ヲ讓渡シ又ハ讓受クルコトヲ得ズ
第十六條 本令中主務大臣トアルハ第二項及第三項ニ規定スル場合ヲ除クノ外大藏大臣トス
本令中主務大臣トアルハ產業組合中央金庫及產業組合法第一條第四項ノ規定ニ依リ手形ノ割引又ハ貯金ノ取扱ヲ爲ス信用組合(以下市街地信用組合ト稱ス)ニ付テハ大藏大臣及農林大臣トシ信用組合聯合會及市街地信用組合ニ非ザル信用組合ニ付テハ農林大臣トス但シ市街地信用組合ト市街地信用組合ニ非ザル信用組合トノ間ノ金融事業ノ委託若ハ讓渡又ハ合併ニ關シテハ大藏大臣及農林大臣トス
本令中主務大臣トアルハ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル金融機關(朝鮮銀行、臺灣銀行及臺灣ニ本店ヲ有シ銀行法又ハ貯蓄銀行法ノ適用ヲ受クル銀行ヲ除ク)ニ付テハ各朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官トス
第十七條 大藏大臣第二條、第三條又ハ第十五條ノ規定ニ依リ命令、認可又ハ裁定ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該命令、認可又ハ裁定ガ前條第一項ノ規定ニ依リ大藏大臣ノ所管スル金融機關ト同條第三項ノ規定ニ依リ朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官ノ所管スル金融機關トノ間ノ金融事業ノ委託若ハ讓渡又ハ合併ニ關スルモノナルトキハ朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官ニ協議スベシ
朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官第二條、第三條又ハ第十五條ノ規定ニ依リ命令、認可又ハ裁定ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該命令、認可又ハ裁定ガ前條第一項ノ規定ニ依リ大藏大臣ノ所管スル金融機關ト同條第三項ノ規定ニ依リ朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官ノ所管スル金融機關トノ間ノ金融事業ノ委託若ハ讓渡又ハ合併ニ關スルモノナルトキハ大藏大臣ニ協議スベシ
第十八條 本令ニ規定スルモノヲ除クノ外金融事業ノ整備ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、臺灣及樺太ニ在リテハ昭和十七年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕金融事業整備令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年五月十五日
内閣総理大臣 東条英機
農林大臣兼拓務大臣 井野碩哉
大蔵大臣 賀屋興宣
勅令第五百十一号
金融事業整備令
第一条 国家総動員法第十六条ノ三ノ規定ニ基ク金融事業(有価証券ニ関スル事業ヲ含ム以下同ジ)ノ委託若ハ譲渡又ハ金融事業ヲ営ム法人ノ合併ニ関スル命令ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 主務大臣金融事業ノ整備ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ金融事業ヲ営ム者(以下金融機関ト称ス)ニ対シ金融事業ノ委託、受託、譲渡若ハ譲受又ハ法人ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第三条 前条ノ場合ニ於ケル委託、譲渡又ハ合併ノ条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス
第四条 主務大臣金融事業ノ委託ニ関シ前条ノ認可又ハ裁定ヲ為シタルトキハ遅滞ナク其ノ旨及当該委託ニ関スル協議又ハ裁定ノ要旨ヲ告示シ且命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ嘱託スルコトヲ要ス
第五条 本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外第二条ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ委託ヲ為シタル金融機関(以下委託金融機関ト称ス)ト同条ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ受託ヲ為シタル金融機関(以下受託金融機関ト称ス)トノ間ノ関係ハ委任ニ関スル規定ニ従フ
第六条 受託金融機関ガ委託金融機関ノ為ニ法律行為ヲ為スニハ委託金融機関ノ為ニスルコトヲ表示スルモノトス
前項ノ表示ヲ為サズシテ為シタル法律行為ハ之ヲ自己ノ為ニ為シタルモノト看做ス
商法第三十八条第一項ノ規定ハ受託金融機関ニ之ヲ準用ス
民法第四十四条第一項ノ規定ハ第二条ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ委託アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第七条 第二条ノ規定ニ依ル命令ニ基キ為シタル金融事業ノ委託ハ第三条ノ協議又ハ裁定ニ於テ定ムル事由ニ因リテノミ終了ス
前項ノ場合ニ於テハ主務大臣ハ遅滞ナク金融事業ノ委託ノ終了シタル旨ヲ告示シ且命令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ嘱託スルコトヲ要ス
第八条 金融機関金融事業ノ譲渡ニ関シ第三条ノ認可又ハ裁定アリタル場合ニ於テ遅滞ナク其ノ旨及当該譲渡ニ関スル協議又ハ裁定ノ要旨ヲ公告シ且預金者其ノ他命令ヲ以テ定ムル者以外ノ知レタル債権者ニ各別ニ之ヲ通知シタルトキハ当該譲渡ニ付債権者ノ承認アリタルモノト看做ス
第九条 金融機関第二条ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ譲渡ヲ為シタル場合ニ於テ遅滞ナク其ノ旨ヲ公告シタルトキハ当該金融機関ノ債務者ニ対シ民法第四百六十七条ノ規定ニ依ル確定日附アル証書ヲ以テスル通知アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ其ノ公告ノ日附ヲ以テ確定日附トス
第十条 第八条ノ規定ハ第二条ノ規定ニ依リ法人ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一条 主務大臣第二条ノ規定ニ依リ命令ヲ為シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ当該金融機関ニ対シ事業ノ停止、株主ノ名義書換ノ停止其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十二条 金融機関第二条ノ規定ニ依ル命令ニ基キ金融事業ノ委託、受託、譲渡若ハ譲受又ハ法人ノ合併ヲ為ス場合ニ於テハ他ノ法令ニ依ル認可又ハ許可ヲ受クルコトヲ要セズ
第十三条 第三条ノ協議又ハ裁定ニ基キ法人タル金融機関ガ金融事業ノ委託、譲渡、合併其ノ他当該協議又ハ裁定ニ於テ定ムル事項ノ実行ヲ為サントスルニ付株主総会又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ当該金融機関ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ当該事項ノ実行ヲ為スコトヲ得
第十四条 主務大臣第二条ノ規定ニ依ル命令又ハ第三条ノ認可若ハ裁定ヲ為スニ付必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ金融機関ノ取引先ヨリ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十五条 主務大臣ノ指定スル金融機関ハ第二条ノ規定ニ依ル命令ニ基ク場合ヲ除クノ外主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ金融事業ヲ譲渡シ又ハ譲受クルコトヲ得ズ
第十六条 本令中主務大臣トアルハ第二項及第三項ニ規定スル場合ヲ除クノ外大蔵大臣トス
本令中主務大臣トアルハ産業組合中央金庫及産業組合法第一条第四項ノ規定ニ依リ手形ノ割引又ハ貯金ノ取扱ヲ為ス信用組合(以下市街地信用組合ト称ス)ニ付テハ大蔵大臣及農林大臣トシ信用組合連合会及市街地信用組合ニ非ザル信用組合ニ付テハ農林大臣トス但シ市街地信用組合ト市街地信用組合ニ非ザル信用組合トノ間ノ金融事業ノ委託若ハ譲渡又ハ合併ニ関シテハ大蔵大臣及農林大臣トス
本令中主務大臣トアルハ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル金融機関(朝鮮銀行、台湾銀行及台湾ニ本店ヲ有シ銀行法又ハ貯蓄銀行法ノ適用ヲ受クル銀行ヲ除ク)ニ付テハ各朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官トス
第十七条 大蔵大臣第二条、第三条又ハ第十五条ノ規定ニ依リ命令、認可又ハ裁定ヲ為サントスル場合ニ於テ当該命令、認可又ハ裁定ガ前条第一項ノ規定ニ依リ大蔵大臣ノ所管スル金融機関ト同条第三項ノ規定ニ依リ朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官ノ所管スル金融機関トノ間ノ金融事業ノ委託若ハ譲渡又ハ合併ニ関スルモノナルトキハ朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官ニ協議スベシ
朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官第二条、第三条又ハ第十五条ノ規定ニ依リ命令、認可又ハ裁定ヲ為サントスル場合ニ於テ当該命令、認可又ハ裁定ガ前条第一項ノ規定ニ依リ大蔵大臣ノ所管スル金融機関ト同条第三項ノ規定ニ依リ朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官ノ所管スル金融機関トノ間ノ金融事業ノ委託若ハ譲渡又ハ合併ニ関スルモノナルトキハ大蔵大臣ニ協議スベシ
第十八条 本令ニ規定スルモノヲ除クノ外金融事業ノ整備ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ朝鮮、台湾及樺太ニ在リテハ昭和十七年七月一日ヨリ之ヲ施行ス