第一條 國家總動員法第十條ノ規定ニ基ク總動員物資ノ使用又ハ收用ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 主務大臣國家總動員上必要ナル需要ヲ充足スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ軍用ニ供スル總動員物資、其ノ生產又ハ修理ニ要スル總動員物資其ノ他閣令ヲ以テ定ムル總動員物資ヲ使用又ハ收用スルコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依リ總動員物資ヲ使用又ハ收用セントスルトキハ內閣總理大臣ニ協議スベシ
第三條 主務大臣總動員物資ヲ使用又ハ收用セントスルトキハ當該總動員物資ノ所有者ニ對シ使用令書又ハ收用令書ヲ交付スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ交付ニ著シキ日數ヲ要スル場合其ノ他所有者ニ交付スルコト著シク困難ナル場合ニ於テハ權原ニ基キ當該總動員物資ヲ占有スル者(以下管理者ト稱ス)ニ對シ之ヲ交付スルヲ以テ足ル
第四條 主務大臣令書ノ交付ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク令書ノ交付ノ際ニ於ケル當該總動員物資ノ所有者又ハ管理者(令書ノ交付ヲ受ケタル者ヲ除ク)其ノ他當該總動員物資ニ付權利ヲ有スル者ニシテ知レタルモノニ對シ之ヲ通知スベシ令書ノ交付後當該總動員物資ノ所有者又ハ管理者ト爲リタル者其ノ他當該總動員物資ニ付權利ヲ有スルニ至リタル者ニシテ知レタルモノニ對シ亦同ジ
主務大臣令書ノ交付ヲ爲シタルトキハ前項ノ通知ノ外軍機保護上特ニ支障アル場合ヲ除クノ外之ヲ官報ニ公吿スベシ
使用又ハ收用スベキ總動員物資ニ付先取特權、質權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ第一項ノ通知ヲ受ケタルトキ(通知ヲ受ケザル者ノ中令書ノ交付ノ際權利ヲ有スル者ニ在リテハ公吿アリタル場合ハ公吿ノトキ、公吿ナカリシ場合ハ令書ノ交付アリタルトキ、令書ノ交付後權利ヲ有スルニ至リタル者ニ在リテハ權利ヲ有スルニ至リタルトキ)ハ遲滯ナク當該權利ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
第五條 使用令書又ハ收用令書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
三 使用又ハ收用スベキ總動員物資ノ所有者名(所有者知レザルトキハ管理者名)
四 使用又ハ收用スベキ總動員物資ノ名稱、種類及數量竝ニ所在ノ場所
七 第十一條第二項ノ規定ニ依リ所轄官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ主務大臣ノ職權ヲ行ハシムル場合ニ於テハ其ノ旨
第六條 令書ノ交付又ハ第四條第一項ノ通知ヲ受ケタル者ハ使用又ハ收用ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ當該總動員物資ノ形質若ハ所在ノ場所ヲ變更シ又ハ之ヲ讓渡シ、賃貸シ、質權若ハ抵當權ノ目的ト爲シ其ノ他當該總動員物資ニ關シ新ナル處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第七條 令書ノ交付又ハ第四條第一項ノ通知ヲ受ケタル所有者又ハ管理者ハ他ノ者ガ左ノ各號ノ一ニ基キ當該總動員物資ノ所有者又ハ管理者ト爲リタルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ報吿スベシ
一 令書ノ交付アリタル際現ニ存シタル先取特權、質權又ハ抵當權ニシテ當該總動員物資ヲ目的トスルモノ
二 令書ノ交付アリタル際現ニ存シタル債權ニシテ當該總動員物資ノ讓渡又ハ占有ノ移轉ヲ目的トスルモノ
三 前二號ニ揭グルモノノ外令書ノ交付アリタル際現ニ存シタル法律上ノ原因
四 强制執行手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノ
第八條 令書ノ交付又ハ第四條第一項ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ第十條ノ規定ニ依リ當該總動員物資ノ引渡義務者タルベキモノ當該總動員物資ニ付滅失、毀損其ノ他已ムヲ得ザル事由ニ因リ其ノ使用又ハ收用ニ應ズルコト能ハザルニ至ルベキトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ報吿スベシ
前項ノ規定ハ第六條ノ許可アリタル場合及前條ノ場合ニハ之ヲ適用セズ
第九條 主務大臣令書ヲ交付シタル後使用又ハ收用ノ開始前ニ於テ當該總動員物資ヲ使用又ハ收用セザルモノト決定シタルトキハ第十條ノ規定ニ依リ當該總動員物資ノ引渡義務者タルベキ者ニ對シ其ノ旨ヲ通知スベシ
第四條第一項前段及第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十條 令書ノ交付又ハ第四條第一項ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ令書ニ記載シタル引渡時期ニ於テ當該總動員物資ノ所有者タルモノハ其ノ令書ニ記載シタル引渡時期ニ當該總動員物資ノ所在場所ニ於テ之ヲ引渡スベシ引渡時期ニ於テ所有者知レザル場合又ハ所有者ヨリ引渡スコト能ハザル場合若ハ引渡スコト著シク困難ナル場合ニ於テハ令書ノ交付又ハ第四條第一項ノ通知ヲ受ケタル者ニシテ令書ニ記載シタル引渡時期ニ於テ當該總動員物資ノ管理者タルモノ之ヲ引渡スベシ
前項ノ規定ハ當該總動員物資ニ關シ强制執行手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ト雖モ其ノ適用ヲ妨ゲズ
第十一條 主務大臣ハ當該官吏ヲシテ使用又ハ收用スベキ總動員物資ノ引渡ヲ受ケシムルモノトス
主務大臣必要アリト認ムルトキハ其ノ所轄スル官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ前項ニ規定スル職權ヲ行ハシムルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ引渡ヲ受ケシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十二條 當該官吏總動員物資ノ引渡ヲ受ケタルトキハ受領調書ヲ作リ引渡ヲ爲シタル所有者又ハ管理者ニ之ヲ交付スベシ
當該官吏前項ノ規定ニ依リ受領調書ヲ管理者ニ交付シタル場合ニ於テハ遲滯ナク所有者ニ其ノ謄本ヲ交付スベシ
第十三條 總動員物資ヲ使用スル場合ニ於テハ當該總動員物資ノ引渡アリタル時ニ於テ政府其ノ使用權ヲ取得シ其ノ他ノ權利ハ使用ノ期間其ノ行使ヲ停止セラル但シ使用ヲ妨ゲザルモノハ此ノ限ニ在ラズ
總動員物資ヲ收用スル場合ニ於テハ當該總動員物資ノ引渡アリタル時ニ於テ政府其ノ所有權ヲ取得シ其ノ他ノ權利ハ消滅ス
第十四條 使用スベキ總動員物資ノ引渡アリタル後當該總動員物資ノ所有者ト爲リタル者ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ報吿スベシ
第十五條 總動員物資ノ使用期間滿了シ又ハ其ノ使用ヲ廢止スルトキハ主務大臣ハ當該總動員物資ヲ所有者ニ返還スベシ但シ返還ノ時期ニ於テ管理者タルコトヲ得ベキ者ヨリ豫メ請求アリタルトキハ其ノ者ニ返還スルコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依リ總動員物資ヲ返還セントスルトキハ豫メ返還通知書ヲ返還ヲ受クベキ者ニ交付スベシ但シ所有者知レザル場合又ハ所有者ニ交付スルコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項但書ノ規定ニ依ル請求ナキトキハ其ノ旨及返還通知書ニ記載スベキ事項ノ槪要ヲ官報ニ公吿スルヲ以テ足ル
第四條第一項前段ノ規定ハ前項ノ場合ニ、同條第二項ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十六條 返還通知書ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
四 返還スベキ總動員物資ノ名稱、種類及數量竝ニ所在ノ場所
前項ノ返還場所ハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外引渡ヲ受ケタル場所トス
第十七條 總動員物資ノ使用權ハ返還通知書又ハ公吿ノ返還時期ニ於テ消滅ス
第十八條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ令書ノ交付ノ時ヨリ使用ノ場合ニ在リテハ返還通知書又ハ公吿ノ返還時期迄、收用ノ場合ニ在リテハ第十條ノ規定ニ依リ當該總動員物資ノ引渡アリタル時迄ノ間ニ當該總動員物資ニ關シ所有權其ノ他ノ權利ヲ有シタル者ニ付使用又ハ收用ノ處分ニ因ル通常生ズベキ損失トス
損失ノ補償ヲ請求セントスル者ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ使用ノ場合ニ在リテハ使用期間滿了又ハ使用廢止ノ後、收用ノ場合ニ在リテハ收用アリタル後之ヲ請求スベシ但シ使用ノ場合ニ在リテハ閣令ヲ以テ定ムル別段ノ時期ニ之ヲ請求スルコトヲ得
第六條ノ規定ニ違反シテ當該總動員物資ノ形質若ハ所在ノ場所ヲ變更シ又ハ之ヲ讓渡シ、賃貸シ、質權若ハ抵當權ノ目的ト爲シ其ノ他當該總動員物資ニ關シ新ナル處分ヲ爲シタル者ニ對シテハ之ニ係ル損失ノ補償ヲ爲サザルコトヲ得
第十九條 使用又ハ收用シタル總動員物資ガ第四條第三項ノ屆出アリタル先取特權、質權又ハ抵當權ノ目的タル場合ニ於テハ主務大臣ハ當該總動員物資ニ付交付スベキ補償金ヲ供託スベシ屆出ナキ場合ト雖モ知レタル先取特權、質權又ハ抵當權ノ目的タルトキ亦同ジ
先取特權者、質權者又ハ抵當權者ハ前項ノ供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十條 主務大臣ハ使用又ハ收用セントスル總動員物資ニ關シ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ當該總動員物資ノ所在ノ場所其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ當該總動員物資、帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ其ノ所轄スル官衙ノ長又ハ地方長官ヲシテ前項ニ規定スル職權ノ一部ヲ行ハシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該官衙ノ長ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ前項ノ規定ニ依ル職權ヲ其ノ所屬官衙ノ長ヲシテ行ハシムルコトヲ得
前三項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第二十一條 第四條乃至第八條、第十一條、第十二條、第十四條乃至第十六條及前條第四項ノ規定ノ施行ニ關シ必要ナル事項ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條 本令中閣令トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル總動員物資ノ使用又ハ收用ニ關スル場合ニ在リテハ陸軍省令又ハ海軍省令トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中閣令トアルハ朝鮮又ハ臺灣ニ在リテハ總督府令、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ廳令トス
本令中官報トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル總動員物資ノ使用又ハ收用ニ關スル場合ヲ除クノ外朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督府官報、臺灣ニ在リテハ臺灣總督府報、樺太ニ在リテハ樺太廳公報、南洋群島ニ在リテハ南洋廳公報トス
第二十三條 本令中主務大臣トアルハ軍機保護上其ノ他軍事上特ニ必要アル總動員物資ノ使用又ハ收用ニ關シテハ陸軍大臣又ハ海軍大臣トス
前項ノ場合ヲ除クノ外本令中主務大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トス
本令中地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トス