重要水産物生産令
法令番号: 勅令第八十八號
公布年月日: 昭和20年3月2日
法令の形式: 勅令
朕重要水產物生產令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十年三月一日
內閣總理大臣 小磯國昭
農商大臣 島田俊雄
厚生大臣 相川勝六
勅令第八十八號
重要水產物生產令
第一條 國家總動員法第八條ノ規定ニ基ク重要水產物ノ生產ニ關スル命令及漁船、漁具其ノ他ノ漁業用器具資材ノ讓渡其ノ他ノ處分ニ關スル命令、同法第十六條ノ二ノ規定ニ基ク漁業ニ屬スル權利ノ貸付又ハ使用ニ關スル命令竝ニ同法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク漁業ノ共同經營又ハ委託ニ關スル命令ニ付テハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 農商大臣又ハ地方長官重要水產物ノ生產ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ漁業ヲ營ム者及漁業ニ從事スル者ノ中當該業務ニ練熟シ漁業生產上基幹タル者ヲ戰時水產要員トシテ指定スルコトヲ得
第三條 戰時水產要員ハ重要水產物ノ生產確保ノ國家要請ニ應ヘ全力ヲ發揮シテ之ガ增產ヲ圖ルベキモノトス
第四條 戰時水產要員漁業ヲ營ムコトヲ罷メ又ハ漁業ニ從事スルコトヲ罷メントスル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ農商大臣又ハ地方長官ノ承認ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五條 戰時水產要員左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ農商大臣又ハ地方長官ハ戰時水產要員ノ指定ヲ解除スルコトヲ得
一 疾病其ノ他ノ事由ニ因リ戰時水產要員タルニ適セザルニ至リタル場合
二 農商大臣ノ指定スル場合
第六條 戰時水產要員左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ戰時水產要員指定ノ效果ハ其ノ者ガ軍務ニ服シ又ハ第二號ニ揭グル者タル間停止セラルルモノトス
一 陸海軍ニ徵集若ハ召集セラレ又ハ志願ニ依リ陸海軍ノ現役ニ服セシメラレタル場合
二 陸海軍學生生徒(海軍豫備練習生及海軍豫備補習生ヲ含ム)ニ採用セラレタル場合
第七條 第二條乃至前條ノ規定ハ重要水產物ノ生產指導上缺クベカラザル職務ニ從事スル者ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ付之ヲ準用ス
第八條 農商大臣重要水產物ノ生產ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ漁業生產上基幹タル漁船ヲ戰時基幹漁船トシテ指定スルコトヲ得
戰時基幹漁船ヲ所有スル者又ハ權原ニ基キ占有スル者其ノ所有又ハ占有ニ係ル戰時基幹漁船ニ付讓渡其ノ他ノ處分ヲ爲シ又ハ之ヲ漁業以外ノ用ニ供セントスルトキハ農商大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
戰時基幹漁船ノ指定及其ノ解除ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 農商大臣又ハ地方長官重要水產物ノ生產ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ漁業ヲ營ム者ニ對シ一般的ニ漁業ノ時期、場所若ハ方法又ハ漁獲物ノ陸揚其ノ他ノ處理ニ付必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十條 農商大臣又ハ地方長官重要水產物ノ生產ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ漁業權者若ハ漁業權ノ借受人ニ對シ當該權利ノ貸付若ハ當該權利ニ係ル漁場ニ他人ヲシテ入漁セシムベキコトヲ命ジ又ハ入漁權者其ノ他權原ニ基キ入漁ヲ爲ス者ニ對シ當該權利ニ係ル漁場ニ他人ヲシテ入漁セシムルコトニ付同意ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル權利ノ貸付若ハ入漁又ハ同意ニ關スル條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ農商大臣又ハ地方長官之ヲ裁定ス
第十一條 農商大臣又ハ地方長官重要水產物ノ生產ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル漁業ヲ營ム者ニ對シ當該漁業ノ共同經營又ハ委託ヲ命ズルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十二條 農商大臣又ハ地方長官重要水產物ノ生產ヲ確保スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル漁船、漁具其ノ他ノ漁業用器具資材(以下漁業用器材ト稱ス)ヲ所有スル者ニ對シ其ノ所有ニ係ル漁業用器材ノ讓渡又ハ貸渡ヲ命ズルコトヲ得
第十條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十三條 農商大臣又ハ地方長官ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ漁業ヲ營ム者、漁業ニ從事スル者、漁業用器材ヲ所有シ若ハ占有スル者、漁業權者、漁業權ノ借受人、入漁權者又ハ漁業權ニ屬スル漁場ニ入漁ヲ爲ス者ヨリ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ事業場、事務所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕重要水産物生産令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十年三月一日
内閣総理大臣 小磯国昭
農商大臣 島田俊雄
厚生大臣 相川勝六
勅令第八十八号
重要水産物生産令
第一条 国家総動員法第八条ノ規定ニ基ク重要水産物ノ生産ニ関スル命令及漁船、漁具其ノ他ノ漁業用器具資材ノ譲渡其ノ他ノ処分ニ関スル命令、同法第十六条ノ二ノ規定ニ基ク漁業ニ属スル権利ノ貸付又ハ使用ニ関スル命令並ニ同法第十六条ノ三ノ規定ニ基ク漁業ノ共同経営又ハ委託ニ関スル命令ニ付テハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 農商大臣又ハ地方長官重要水産物ノ生産ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ漁業ヲ営ム者及漁業ニ従事スル者ノ中当該業務ニ練熟シ漁業生産上基幹タル者ヲ戦時水産要員トシテ指定スルコトヲ得
第三条 戦時水産要員ハ重要水産物ノ生産確保ノ国家要請ニ応ヘ全力ヲ発揮シテ之ガ増産ヲ図ルベキモノトス
第四条 戦時水産要員漁業ヲ営ムコトヲ罷メ又ハ漁業ニ従事スルコトヲ罷メントスル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ農商大臣又ハ地方長官ノ承認ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五条 戦時水産要員左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ農商大臣又ハ地方長官ハ戦時水産要員ノ指定ヲ解除スルコトヲ得
一 疾病其ノ他ノ事由ニ因リ戦時水産要員タルニ適セザルニ至リタル場合
二 農商大臣ノ指定スル場合
第六条 戦時水産要員左ノ各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキハ戦時水産要員指定ノ効果ハ其ノ者ガ軍務ニ服シ又ハ第二号ニ掲グル者タル間停止セラルルモノトス
一 陸海軍ニ徴集若ハ召集セラレ又ハ志願ニ依リ陸海軍ノ現役ニ服セシメラレタル場合
二 陸海軍学生生徒(海軍予備練習生及海軍予備補習生ヲ含ム)ニ採用セラレタル場合
第七条 第二条乃至前条ノ規定ハ重要水産物ノ生産指導上欠クベカラザル職務ニ従事スル者ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ付之ヲ準用ス
第八条 農商大臣重要水産物ノ生産ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ漁業生産上基幹タル漁船ヲ戦時基幹漁船トシテ指定スルコトヲ得
戦時基幹漁船ヲ所有スル者又ハ権原ニ基キ占有スル者其ノ所有又ハ占有ニ係ル戦時基幹漁船ニ付譲渡其ノ他ノ処分ヲ為シ又ハ之ヲ漁業以外ノ用ニ供セントスルトキハ農商大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
戦時基幹漁船ノ指定及其ノ解除ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 農商大臣又ハ地方長官重要水産物ノ生産ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ漁業ヲ営ム者ニ対シ一般的ニ漁業ノ時期、場所若ハ方法又ハ漁獲物ノ陸揚其ノ他ノ処理ニ付必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十条 農商大臣又ハ地方長官重要水産物ノ生産ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ漁業権者若ハ漁業権ノ借受人ニ対シ当該権利ノ貸付若ハ当該権利ニ係ル漁場ニ他人ヲシテ入漁セシムベキコトヲ命ジ又ハ入漁権者其ノ他権原ニ基キ入漁ヲ為ス者ニ対シ当該権利ニ係ル漁場ニ他人ヲシテ入漁セシムルコトニ付同意ヲ為スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル権利ノ貸付若ハ入漁又ハ同意ニ関スル条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ農商大臣又ハ地方長官之ヲ裁定ス
第十一条 農商大臣又ハ地方長官重要水産物ノ生産ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル漁業ヲ営ム者ニ対シ当該漁業ノ共同経営又ハ委託ヲ命ズルコトヲ得
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十二条 農商大臣又ハ地方長官重要水産物ノ生産ヲ確保スル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル漁船、漁具其ノ他ノ漁業用器具資材(以下漁業用器材ト称ス)ヲ所有スル者ニ対シ其ノ所有ニ係ル漁業用器材ノ譲渡又ハ貸渡ヲ命ズルコトヲ得
第十条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十三条 農商大臣又ハ地方長官ハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ漁業ヲ営ム者、漁業ニ従事スル者、漁業用器材ヲ所有シ若ハ占有スル者、漁業権者、漁業権ノ借受人、入漁権者又ハ漁業権ニ属スル漁場ニ入漁ヲ為ス者ヨリ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ事業場、事務所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス