第一條 國家總動員法(昭和十三年勅令第三百十七號ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第五條ノ規定ニ基ク海運關係事業ニ關スル試驗硏究ニ關スル業務ニ付テノ協力命令、同法第八條ノ規定ニ基ク船舶、船體、船舶用機關、艤裝品、其ノ部分品若ハ附屬品(以下船舶等ト稱ス)ノ製造若ハ修繕又ハ海運關係事業ノ用ニ供スル物資ノ讓渡、使用、保有若ハ消費ニ關スル命令、同法第十六條ノ二ノ規定ニ基ク海運關係事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ讓渡、出資又ハ貸渡ニ關スル命令、同法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク海運關係事業ノ委託、共同經營、讓渡、廢止若ハ休止又ハ海運關係事業ヲ營ム會社ノ合併ニ關スル命令及同法第十九條ノ規定ニ基ク船舶ノ價格若ハ修繕料、水上ノ運送賃、船舶ノ賃貸料若ハ運航手數料、船積若ハ陸揚ニ關スル請負料若ハ手數料又ハ船舶ノ賣買、船舶ノ貸借、船舶ノ運航委託若ハ船舶ニ依ル運送ノ斡旋手數料(以下船舶ノ價格等ト稱ス)ニ關スル命令ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ニ於テ海運關係事業トハ左ニ揭グル事業ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ謂フ
一 船舶ニ依ル人若ハ物ノ運送、船舶ノ貸渡又ハ其ノ運航ノ委託ヲ爲ス事業
三 船舶ノ運航、製造又ハ修繕ニ必要ナル多種類ノ物品ノ販賣ヲ爲ス事業
本令ニ於テ貸渡又ハ借受トハ船舶ニ付テハ期間傭船ヲ含ムモノトシ船舶ノ賃貸料トハ期間傭船料ヲ含ムモノトス
第三條 遞信大臣海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業ヲ營ム者(以下海運關係事業者ト稱ス)ニ對シ其ノ事業ニ屬スル設備若ハ權利又ハ其ノ事業ノ用ニ供スル物資ノ讓渡、讓受、貸渡又ハ借受ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ讓渡又ハ貸渡ヲ爲スコトヲ得
第四條 前條ノ場合ニ於ケル讓渡又ハ貸渡ノ條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ遞信大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ遞信大臣之ヲ裁定ス
遞信大臣前項ノ裁定ヲ爲サントスルトキハ事案ノ重要ナルモノニ付テハ海事審議會ノ議ヲ經ベシ
第五條 遞信大臣海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ出資ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ遞信大臣ハ出資ノ相手方ニ對シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第六條 遞信大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ノ用ニ供スル物資ノ使用、消費若ハ保有ニ關シ必要ナル事項ヲ命ジ又ハ讓渡其ノ他ノ處分、使用、消費若ハ保有ノ制限若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第七條 遞信大臣ハ海運關係事業者ニ對シ規格ヲ指定シテ船舶等ノ製造ヲ命ジ若ハ範圍ヲ指定シテ船舶等ノ修繕ヲ命ジ、指定シタル規格若ハ範圍以外ノ船舶等ノ製造若ハ修繕ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ船舶等ノ製造若ハ修繕ニ付順位ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第八條 船舶等ノ製造又ハ修繕ヲ爲サントスル者及外國ニ船舶等ノ製造又ハ修繕ノ注文ヲ爲サントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當該船舶等ノ製造又ハ修繕ニ付遞信大臣ノ許可ヲ受クベシ
第九條 第三條第一項又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル讓渡、貸渡又ハ出資ノ命令ヲ受ケタル者ハ讓渡、貸渡又ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外遞信大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ當該設備、權利又ハ物資ノ讓渡、貸渡其ノ他ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第十條 第三條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備、權利若ハ物資ノ讓渡ヲ受ケタル者又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備若ハ權利ノ出資ヲ受ケタル者當該設備、權利又ハ物資ニ付讓渡其ノ他ノ處分ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十一條 事業ニ屬スル設備若ハ權利又ハ事業ノ用ニ供スル物資ニ關シ强制競賣手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續、土地收用法ニ依ル使用若ハ收用シ手續又ハ國家總動員法第十條若ハ第十三條ノ規定ニ基ク使用若ハ收用ノ手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ當該設備、權利又ハ物資ニ關シテハ第三條第一項、第五條第一項若ハ第六條前段ノ規定又ハ第七條中船舶等ノ製造若ハ修繕ヲ命ズル規定ハ之ヲ適用セズ
第十二條 工場財團ニ屬スルモノハ第三條第一項又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ讓渡又ハ出資アリタル後ト雖モ仍原財團ニ屬スルモノトス
前項ノ場合ニ於ケル登記ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 遞信大臣ハ第三條第一項又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備、權利又ハ物資ヲ讓渡又ハ出資シタル者ヲシテ第十四條ノ規定ニ依リ債務ノ全部ノ承繼アリタル場合ヲ除クノ外讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ガ擔保權ノ實行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル爲命令ノ定ムル所ニ依リ相當ノ擔保ヲ供託セシムルコトヲ得
讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質權ヲ有ス
第十四條 遞信大臣ハ第三條第一項又ハ第五條第一項ノ規定ニ依リ設備、權利又ハ物資ノ讓渡又ハ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ讓渡又ハ出資シタル者ヲシテ當該設備、權利又ハ物資ヲ擔保トスル債務ヲ引續キ負擔セシメ置クコトヲ適當ナラズト認ムルトキハ國家總動員法第十八條ノ二ノ規定ニ基キ命令ノ定ムル所ニ依リ讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ヲシテ當該債務ノ全部又ハ一部ヲ承繼セシムルコトヲ得
第十五條 遞信大臣海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者ニ對シ海運關係事業ノ全部若ハ一部ノ委託、受託、共同經營、讓渡若ハ讓受又ハ會社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第三條第二項、第四條及第九條乃至前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ事業ノ讓渡又ハ讓受ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第三條第二項、第四條及第九條ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ事業ノ委託、受託若ハ共同經營又ハ會社ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十六條 第四條(第五條第二項、第十四條第二項及前條第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議又ハ裁定ニ基キ會社ガ事業ノ讓渡、合併其ノ他當該協議又ハ裁定ニ於テ定メラレタルニ事項ノ實行ヲ爲サントスルニ付株主總會又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ會社ハ遞信大臣ノ認可ヲ受ケ當該事項ノ實行ヲ爲スコトヲ得
第十七條 遞信大臣ハ海運關係事業者又ハ其ノ團體ヲシテ海運關係事業ニ關シ國又ハ遞信大臣ノ指定スル者ノ行フ國家總動員上必要ナル試驗硏究ニ關スル業務ニ付協力セシムルコトヲ得
第十八條 遞信大臣海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ノ全部又ハ一部ノ廢止又ハ休止ヲ命ズルコトヲ得
第十九條 帝國臣民又ハ帝國法人日本船舶ニ非ザル船舶ヲ借受ケ若ハ其ノ運航ノ委託ヲ受ケントスルトキ又ハ日本船舶ニ非ザル船舶ニ依リ命令ヲ以テ定ムル物資ヲ運送セシメントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ遞信大臣ノ許可ヲ受クベシ
第二十條 遞信大臣ハ航路若ハ區域ヲ指定シ若ハ一般的ニ船舶ヲ指定シテ航海ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ一般的ニ人若ハ物ヲ指定シテ其ノ運送ヲ制限若ハ禁止スルコトヲ得但シ他ノ法令ニ基キテ爲サルル別段ノ處分ノ效力ヲ妨ゲズ
第二十一條 遞信大臣ハ海上輸送ノ圓滑ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ運送取扱業者、荷送人若ハ荷受人又ハ此等ノ者ノ團體ニ對シ運送品ノ船積又ハ陸揚ノ方法、順位、期日、期間又ハ數量ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第二十二條 遞信大臣ハ海運關係事業者、港灣運送業者若ハ海運仲立業者又ハ此等ノ者ノ團體ニ對シ船舶ノ價格等ノ設定又ハ變更ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設定又ハ變更シタル價格等ニ付テハ遞信大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十三條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ第六條、第七條又ハ第十八條ノ規定ニ依ル處分ニ因リ通常生ズベキ損失トス
損失補償請求ノ時期其ノ他損失補償ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條 遞信大臣ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ海運關係事業者、港灣運送業者若ハ海運仲立業者又ハ此等ノ者ノ團體ヨリ其ノ事業ニ關シ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ事務所、營業所、船舶、工場其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第二十五條 遞信大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ海務局長又ハ地方長官(東京府ニ於テハ水上ノ運送賃ニ在リテハ知事及警視總監)ニ委任スルコトヲ得
第二十六條 遞信大臣本令ニ依ル命令ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該命令ガ工場事業場管理令ニ依リ政府ノ管理ニ係ル工場又ハ事業場ニ關スルモノナルトキハ當該工場又ハ事業場ヲ管理スル主務大臣ニ協議スベシ
遞信大臣第三條第一項、第五條第一項又ハ第十五條第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該事項ガ他ノ法令ニ基キ他ノ大臣ノ許可、認可、免許等ヲ要スルモノナルトキハ當該大臣ニ協議スベシ
第二十七條 第三條第一項、第四條第二項第三項、第六條、第七條、第九條、第十條、第十三條第一項、第十四條第一項、第十六條、第二十四條第一項及前條中遞信大臣トアルハ昭和十七年勅令第六十八號第一條ノ規定ニ依リ海軍大臣ノ管理スル事項ニ付テハ海軍大臣トス
第二十八條 前條ノ場合ヲ除クノ外本令中遞信大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官、南洋群島ニ在リテハ南洋廳長官トシ海務局長又ハ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督府遞信局長又ハ道知事、臺灣ニ在リテハ臺灣總督府交通局總長又ハ州知事若ハ廳長トス
第四條第四項(第五條第二項、第十四條第二項及第十五條第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ハ朝鮮、臺灣、樺太及南洋群島ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第二十九條 朝鮮總督、臺灣總督、樺太廳長官又ハ南洋廳長官第三條乃至第五條、第七條乃至第十條、第十五條、第十八條乃至第二十條又ハ第二十二條ノ規定ニ依ル處分ヲ爲サントスルトキハ其ノ重要ナルモノニ付豫メ遞信大臣ニ協議スベシ