特許発明等実施令
法令番号: 勅令第百五十九號
公布年月日: 昭和18年3月23日
法令の形式: 勅令
朕特許發明等實施令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月二十二日
內閣總理大臣 東條英機
內務大臣 湯澤三千男
勅令第百五十九號
特許發明等實施令
第一條 國家總動員法第十四條ノ規定ニ基ク特許發明及登錄實用新案ノ實施ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 總動員業務ヲ行フ者其ノ業務遂行上他人ノ特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施ヲ必要トスルトキハ內閣總理大臣ニ實施權ノ設定ヲ申請スルコトヲ得
第三條 內閣總理大臣前條ノ規定ニ依ル申請アリタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ申請ノ要旨ヲ特許發明又ハ登錄實用新案ニ付權利ヲ有スル者ニ通知シ期間ヲ指定シテ之ニ意見書提出ノ機會ヲ與フルコトヲ得
第四條 內閣總理大臣ハ第二條ノ規定ニ依ル申請アリタルトキハ實施權ノ設定ニ付決定ヲ爲シ決定書ノ謄本ヲ申請人及特許發明又ハ登錄實用新案ニ付權利ヲ有スル者ニ送付スベシ
前條ノ規定ニ依リ期間ヲ指定シテ特許發明又ハ登錄實用新案ニ付權利ヲ有スル者ニ意見書提出ノ機會ヲ與ヘタル場合ニ於テハ實施權設定ノ決定ハ其ノ期間經過後之ヲ爲スベシ
第五條 主務大臣總動員業務ヲ行フ者ヲシテ他人ノ特許發明又ハ登錄實用新案ヲ實施セシムルノ必要アリト認ムルトキハ內閣總理大臣ニ實施權ノ設定ヲ請求スルコトヲ得
前二條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ決定書ノ謄本ハ總動員業務ヲ行フ者ニモ之ヲ送付スベシ
主務大臣第一項ノ請求ヲ爲ス場合ニ於テ實施ヲ必要トスル理由ガ軍事上祕密ヲ要スルモノナルコトヲ示シタルトキハ內閣總理大臣ハ實施權設定ノ決定ヲ爲スベシ
第六條 本令ニ依ル實施權(以下實施權ト稱ス)ハ其ノ登錄前當該特許權又ハ實用新案權ニ付設定セラレタル質權ヲ有スル者ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第七條 實施權ノ讓渡其ノ他ノ處分ハ內閣總理大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第八條 內閣總理大臣ハ左ニ揭グル場合ニ於テハ利害關係人ノ請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ實施權ヲ取消スコトヲ得
一 實施權者ガ當該特許發明又ハ登錄實用新案ヲ適當ニ實施セザルトキ其ノ他內閣總理大臣實施權ノ存續ヲ適當ナラズト認ムルトキ
二 實施權者補償金ノ支拂ヲ爲サザルトキ
三 實施權者第十三條ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキ
第九條 前條ノ規定ニ依ル實施權ノ取消アリタルトキハ實施權ハ爾後其ノ效力ナキモノトス
第十條 國家總動員法第二十七條第二項ノ規定ニ依リ實施權者ガ補償スベキ損失ハ實施ニ係ル特許發明又ハ登錄實用新案ニ付實施權設定ノ申請又ハ請求ノ登錄アリタル時ニ於テ權利ヲ有スル者及其ノ承繼人ガ當該特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施ニ因リテ通常受クベキ損失トス
內閣總理大臣實施權設定ノ決定ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク補償金ノ額及其ノ支拂時期ヲ定ムベシ
第十一條 實施ニ係ル特許發明又ハ登錄實用新案ニ關スル權利ガ知レタル質權ノ目的タル場合ニ於テハ實施權者ハ其ノ質權ノ目的タルモノニ付交付スベキ補償金ヲ供託スベシ
質權者ハ前項ノ供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第十二條 左ニ揭グル場合ニ於テハ特許局ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ職權ヲ以テ特許原簿又ハ實用新案原簿ニ其ノ登錄ヲ爲スベシ
一 第二條ノ規定ニ依ル申請又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル請求アリタルトキ
二 前號ノ申請又ハ請求ノ取下アリタルトキ
三 第四條第一項(第五條第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル決定アリタルトキ
四 第八條ノ規定ニ依ル實施權ノ取消アリタルトキ
五 第十條第二項ノ規定ニ依リ補償金ニ付決定アリタルトキ
第十三條 內閣總理大臣ハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ基キ特許發明又ハ登錄實用新案ノ實施ニ關シ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ工場其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十四條 內閣總理大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ特許局長官ニ委任スルコトヲ得
第十五條 本令中主務大臣トアルハ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ在リテハ各朝鮮總督、臺灣總督又ハ樺太廳長官トス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕特許発明等実施令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月二十二日
内閣総理大臣 東条英機
内務大臣 湯沢三千男
勅令第百五十九号
特許発明等実施令
第一条 国家総動員法第十四条ノ規定ニ基ク特許発明及登録実用新案ノ実施ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 総動員業務ヲ行フ者其ノ業務遂行上他人ノ特許発明又ハ登録実用新案ノ実施ヲ必要トスルトキハ内閣総理大臣ニ実施権ノ設定ヲ申請スルコトヲ得
第三条 内閣総理大臣前条ノ規定ニ依ル申請アリタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ申請ノ要旨ヲ特許発明又ハ登録実用新案ニ付権利ヲ有スル者ニ通知シ期間ヲ指定シテ之ニ意見書提出ノ機会ヲ与フルコトヲ得
第四条 内閣総理大臣ハ第二条ノ規定ニ依ル申請アリタルトキハ実施権ノ設定ニ付決定ヲ為シ決定書ノ謄本ヲ申請人及特許発明又ハ登録実用新案ニ付権利ヲ有スル者ニ送付スベシ
前条ノ規定ニ依リ期間ヲ指定シテ特許発明又ハ登録実用新案ニ付権利ヲ有スル者ニ意見書提出ノ機会ヲ与ヘタル場合ニ於テハ実施権設定ノ決定ハ其ノ期間経過後之ヲ為スベシ
第五条 主務大臣総動員業務ヲ行フ者ヲシテ他人ノ特許発明又ハ登録実用新案ヲ実施セシムルノ必要アリト認ムルトキハ内閣総理大臣ニ実施権ノ設定ヲ請求スルコトヲ得
前二条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ決定書ノ謄本ハ総動員業務ヲ行フ者ニモ之ヲ送付スベシ
主務大臣第一項ノ請求ヲ為ス場合ニ於テ実施ヲ必要トスル理由ガ軍事上秘密ヲ要スルモノナルコトヲ示シタルトキハ内閣総理大臣ハ実施権設定ノ決定ヲ為スベシ
第六条 本令ニ依ル実施権(以下実施権ト称ス)ハ其ノ登録前当該特許権又ハ実用新案権ニ付設定セラレタル質権ヲ有スル者ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス
第七条 実施権ノ譲渡其ノ他ノ処分ハ内閣総理大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第八条 内閣総理大臣ハ左ニ掲グル場合ニ於テハ利害関係人ノ請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ実施権ヲ取消スコトヲ得
一 実施権者ガ当該特許発明又ハ登録実用新案ヲ適当ニ実施セザルトキ其ノ他内閣総理大臣実施権ノ存続ヲ適当ナラズト認ムルトキ
二 実施権者補償金ノ支払ヲ為サザルトキ
三 実施権者第十三条ノ規定ニ依ル報告ヲ怠リ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキ
第九条 前条ノ規定ニ依ル実施権ノ取消アリタルトキハ実施権ハ爾後其ノ効力ナキモノトス
第十条 国家総動員法第二十七条第二項ノ規定ニ依リ実施権者ガ補償スベキ損失ハ実施ニ係ル特許発明又ハ登録実用新案ニ付実施権設定ノ申請又ハ請求ノ登録アリタル時ニ於テ権利ヲ有スル者及其ノ承継人ガ当該特許発明又ハ登録実用新案ノ実施ニ因リテ通常受クベキ損失トス
内閣総理大臣実施権設定ノ決定ヲ為シタルトキハ遅滞ナク補償金ノ額及其ノ支払時期ヲ定ムベシ
第十一条 実施ニ係ル特許発明又ハ登録実用新案ニ関スル権利ガ知レタル質権ノ目的タル場合ニ於テハ実施権者ハ其ノ質権ノ目的タルモノニ付交付スベキ補償金ヲ供託スベシ
質権者ハ前項ノ供託金ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第十二条 左ニ掲グル場合ニ於テハ特許局ハ閣令ノ定ムル所ニ依リ職権ヲ以テ特許原簿又ハ実用新案原簿ニ其ノ登録ヲ為スベシ
一 第二条ノ規定ニ依ル申請又ハ第五条第一項ノ規定ニ依ル請求アリタルトキ
二 前号ノ申請又ハ請求ノ取下アリタルトキ
三 第四条第一項(第五条第二項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル決定アリタルトキ
四 第八条ノ規定ニ依ル実施権ノ取消アリタルトキ
五 第十条第二項ノ規定ニ依リ補償金ニ付決定アリタルトキ
第十三条 内閣総理大臣ハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ基キ特許発明又ハ登録実用新案ノ実施ニ関シ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ工場其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十四条 内閣総理大臣ハ本令ニ定ムル職権ノ一部ヲ特許局長官ニ委任スルコトヲ得
第十五条 本令中主務大臣トアルハ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督又ハ樺太庁長官トス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス