港湾法
法令番号: 法律第二百十八号
公布年月日: 昭和25年5月31日
法令の形式: 法律
港湾法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百十八号
港湾法
目次
第一章
総則(第一條―第三條)
第二章
港務局
第一節
港務局の設立等(第四條―第十一條)
第二節
港務局の業務(第十二條・第十三條)
第三節
港務局の組織(第十四條―第二十七條)
第四節
港務局の財務(第二十八條―第三十二條)
第三章
港湾管理者としての地方公共団体(第三十三條―第三十六條)
第四章
港湾区域及び臨港地区(第三十七條―第四十一條)
第五章
港湾工事の費用(第四十二條・第四十三條)
第六章
雑則(第四十四條―第六十二條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、港湾管理者の設立による港湾の開発、利用及び管理の方法を定めることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で「港湾管理者」とは、第二章第一節の規定により設立された港務局又は第三十三條の規定により指定され、若しくは設立された地方公共団体をいう。
2 この法律で「重要港湾」とは、国の利害に重大な関係を有する港湾で政令で定めるものをいい、「地方港湾」とは、重要港湾以外の港湾をいう。
3 この法律で「港湾区域」とは、第四條第四項(第九條第二項及び第三十三條第二項において準用する場合を含む。)の規定により認可があつた水域をいう。
4 この法律で「臨港地区」とは、都市計画法(大正八年法律第三十六号)第十條第三項の規定により臨港地区として指定された地区又は第三十八條の規定により港湾管理者が認可を受けて定めた地区をいう。
5 この法律で「港湾施設」とは、港湾区域及び臨港地区内における左に掲げる施設をいう。
一 水域施設 航路、泊地及び船だまり
二 外かく施設 防波堤、防砂堤、導流堤、水門、こう門及び護岸
三 けい留施設 岸壁、けい船浮標、けい船くい、さん橋、浮さん橋及び物揚場
四 臨港交通施設 道路、橋りよう、鉄道、軌道及び運河
五 航行補助施設 航路標識並びに船舶の入出港のための信号施設、照明施設及び港務通信施設
六 荷さばき施設 固定式荷役機械、軌道走行式荷役機械及び上屋
七 旅客施設 旅客乘降用固定施設、手荷物取扱所及び待合所
八 保管施設 倉庫、野積場、貯木場、貯炭場、危險物置場及び貯油施設
九 船舶補給施設 船舶のための給水施設、給油施設及び給炭施設
6 この法律で「港湾工事」とは、港湾施設を建設し、改良し、維持し、又は復旧する工事をいう。
7 この法律で「避難港」とは、暴風雨に際し小型船舶が避難のためてい泊することを主たる目的とし、通常貨物の積卸又は旅客の乘降の用に供せられない港湾で、政令で定めるものをいう。
(漁港に関する規定)
第三條 この法律は、もつぱら漁業の用に供する港湾として他の法律によつて指定された港湾には適用しない。
第二章 港務局
第一節 港務局の設立等
(設立等)
第四條 現に当該港湾において港湾の施設を管理する地方公共団体、後来当該港湾において港湾の施設の設置若しくは維持管理の費用を負担した地方公共団体又は予定港湾区域を地先水面とする地域を区域とする地方公共団体(以下「関係地方公共団体」という。)は、第三項及び第四項の手続を経た後その議会の議決を経て、協議の上、單独で又は共同して、定款を定め、港務局を設立することができる。
2 前項の規定は、国及び地方公共団体以外の者が、水域施設及び外かく施設の全部又は大部分を維持管理している港湾においては、その者が関係地方公共団体のいずれかに港務局の設立を求めた場合を除きこれを適用しない。
3 第一項の規定により港務局を設立しようとする地方公共団体は、あらかじめ、その旨、予定港湾区域及び関係地方公共団体が意見を申し出るべき期間を公告し、且つ、関係地方公共団体の申出によりこれを同項の協議に加えなければならない。但し、関係地方公共団体が意見を申し出るべき期間は一箇月を下ることができない。
4 第一項の規定により港務局の設立の協議が調つたときは、港務局を設立しようとする地方公共団体は、港務局の港湾区域について、左の区分により、運輸大臣又は都道府県知事の認可を受けなければならない。
一 重要港湾については運輸大臣
二 地方港湾であつて都道府県が港務局の設立に加わつているものについては運輸大臣
三 前二号以外の港湾については予定港湾区域を地先水面とする地域を区域とする都道府県を管轄する都道府県知事
5 運輸大臣又は都道府県知事は、河川法(明治二十九年法律第七十一号)第二條第一項の規定による河川の区域について、前項の認可をしようとするときは、港湾区域について当該河川を管理する地方行政庁に協議しなければならない。
6 運輸大臣又は都道府県知事は、予定港湾区域が、当該水域を経済的に一体の港湾として管理運営するために必要な最小限度の区域であつて、当該予定港湾区域に隣接する水域を地先水面とする地方公共団体の利益を害せず、且つ、港域法(昭和二十三年法律第百七十五号)の港の区域の定のあるものについてはその区域をこえないものでなければ、第四項の認可をすることができない。
7 第一項の協議が調わないときは、関係地方公共団体は、第四項の区分により、運輸大臣又は都道府県知事に申し出て、その調停を求めることができる。この場合において第四項第二号中「港務局の設立に加わつているもの」とあるのは「争の当事者であるもの」と読み替えるものとする。
8 前項の申出には、協議のてん末及び関係地方公共団体の意見を附さなければならない。
9 第七項の申出があつたときは、運輸大臣又は都道府県知事は、従来の沿革、関係地方公共団体の財政の事情、将来の発展の計画及び当該港湾の利用の程度その他当該港湾と、関係地方公共団体の関係を考慮し、且つ、重要港湾については内閣総理大臣に協議して調停する。
10 都道府県知事が、第四項の処分をしたとき又は前項の調停をしたときは、遅滯なくその旨を運輸大臣に報告しなければならない。
(法人格)
第五條 港務局は、営利を目的としない公法上の法人とする。
(定款)
第六條 港務局の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 名称
二 港務局を組織する地方公共団体
三 事務所の所在地
四 業務
五 港湾区域
六 委員の定数、任期、選任、罷免及び給與並びに委員会の議事に関する事項
七 事務局の組織及び職員に関する事項
八 財産及び会計に関する事項
九 港務局を組織する地方公共団体の出資又は経費の分担に関する事項
十 剩余金の処分及び損失の処理に関する事項
十一 公告の方法
2 定款又はその変更は、港務局を組織する地方公共団体の議会の承認を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第七條 港務局は、その設立、主たる事務所の所在地の変更その他政令で定める事項について、政令で定める手続により、登記しなければならない。
2 港務局に関して登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することはできない。
(成立)
第八條 港務局は、設立の登記をすることによつて成立する。
(港湾区域の公告)
第九條 港務局は、成立後遅滯なくその旨及び港湾区域を公告しなければならない。港湾区域に変更があつたときも同様である。
2 第四條第四項から第六項までの規定は、港務局が港湾区域を変更しようとする場合に準用する。
(非課税)
第十條 港務局には、所得税及び法人税を課さない。
(民法等の準用)
第十一條 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四條、第五十條、第五十四條、第五十七條、第六十八條第一項、第七十一條から第八十條まで、第八十二條及び第八十三條の規定並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五條、第三十七條及び第三十七條ノ二の規定は、港務局に準用する。
第二節 港務局の業務
(業務)
第十二條 港務局は、左の業務を行う。
一 港湾区域及び港務局の管理する港湾施設を良好な状態に維持すること(港湾区域内における漂流物その他船舶航行に支障を及ぼすおそれがある物の除去を含む。)。
二 港湾の発展のため必要な港湾施設の建設及び改良の計画を作成すること。
三 前号の計画を実施するため必要な港湾工事をすること。
四 委託により、国又は地方公共団体の所有に属する港湾施設(港湾の運営に必要な土地を含む。)であつて一般公衆の利用に供するものを管理すること。
五 一般公衆の利用に供するけい留施設のうち一般公衆の利便を増進するため必要なものを自ら運営し、及びこれを利用する船舶に対しけい留場所の指定その他使用に関し必要な規制を行うこと。
六 消火、救難及び警備に必要な設備を設けること。
七 港湾の発展のため必要な調査研究及び統計資料の作成を行い、並びに当該港湾の利用を宣伝すること。
八 船舶に対する給水、離着岸の補助その他船舶に対する役務が、他の者によつて適当且つ十分に提供されない場合において、これらの役務を提供すること。
九 港務局が管理する港湾施設で、一般公衆の利用に供することを要せず、又は自ら運営することを適当としないものを貸し付けること。
十 港務局が管理する上屋、荷役機械等の港湾施設を使用して港湾運営に必要な役務を提供する者に対し、貨物の移動を円滑に行い又は港湾施設の有効な利用を図るため当該施設の使用を規制すること。
十一 港湾運営に必要な役務の提供をあつ旋すること。
十二 船舶乘組員又は港湾労務者の休泊所等これらの者の福利厚生を増進するための施設を設置し、又は管理すること。
十三 港湾の利用に必要な役務及び施設に関する所定の料金を示す最新の料率表を作成し、及び公表すること。
十四 その他前各号の業務を行うため必要な業務
2 前項第十三号に規定する料率表は、港務局が自ら定めた料金の外、第四十五條の料金で港務局に報告され、又は港務局に知れているものに関する事項を包含しなければならない。
(私企業への不干與等)
第十三條 港務局は、港湾運送業、倉庫業その他輸送及び保管に関連する私企業の公正な活動を妨げ、その活動に干渉し、又はこれらの者と競争して事業を営んではならない。
2 港務局は、何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取扱をしてはならない。
第三節 港務局の組織
(委員会)
第十四條 港務局に、委員会を置く。
(委員会の権限及び責任)
第十五條 委員会は、港務局の施策を決定し、港務局の事務の運営を指導統制する。
(委員会の組織及び委員の任命)
第十六條 委員会は、定款の定めるところにより七人以内の委員をもつて組織する。
2 前項の委員は、港湾に関し十分な知識と経験を有する者又は声望のある者のうちから、港務局を組織する地方公共団体の長が、当該地方公共団体の議会の同意を得て任命する。
(委員の欠格條件)
第十七條 左の各号の一に該当する者は、委員になることができない。
一 国会議員又は地方公共団体の議会の議員
二 港務局の工事の請負を業とする者又はこれらの者が法人であるときはその役員若しくは名称の如何にかかわらず役員と同等以上の職権若しくは支配力を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
三 前号に掲げる事業者の団体の役員又は名称の如何にかかわらず役員と同等以上の職権又は支配力を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
2 委員が、前項各号の一に該当するに至つたときは、退職しなければならない。
(委員の任期)
第十八條 委員の任期は、三年以内とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 港務局設立後最初に任命される委員の任期は、多数の委員が同時に退任することがないように、任命の時において、港務局を組織する地方公共団体の長が定める。
(委員の罷免)
第十九條 港務局を組織する地方公共団体の長は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該地方公共団体の議会の同意を得て、これを罷免することができる。
(委員長)
第二十條 委員会に、委員長を置き、委員の互選によつて定める。
2 委員長は、委員会の会議を総理する。
(議決方法)
第二十一條 委員会の議事は、全委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
2 委員は、委員会の決定するところにより、自己に特別の利害関係を有する事項に関しては、議決に加わることができない。
(監事)
第二十二條 港務局に、定款の定めるところにより監事を置くことができる。
2 第十六條第二項及び第十九條の規定は、監事の任免に準用する。
(委員長等の職務及び権限)
第二十三條 委員長は、港務局を代表し、港務局の長としてその業務を総理する。
2 委員長以外の委員は、定款の定めるところにより、港務局を代表し、委員長を補佐して港務局の業務を掌理し、委員長に事故があるときにはその職務を代理し、委員長が欠員のときにはその職務を行う。
3 監事は、港務局の業務を監査する。
(事務局)
第二十四條 港務局に、その事務を処理させるため、定款の定めるところにより、事務局を置き、所要の職員を置く。
(委員長等の給與)
第二十五條 港務局は、常勤する委員、監事及び職員に対して、給與を支拂わなければならない。
2 前項の給與の額は、その職務の内容と責任に応ずるものでなければならず、且つ、当該地方における同様な職務に従事する者の給與と同等の基準において定められなければならない。但し、港務局を組織する地方公共団体の長(該当者が二人以上ある場合は、高い給與を受けている者)の給與をこえるものであつてはならない。
3 第一項の給與を受ける委員及び監事は、報酬を得て他の業務に従事してはならない。
(公務員たるの性質)
第二十六條 委員、監事及び職員は、刑罰法規の適用については、法令により公務に従事する者とみなす。
(港務局を組織する地方公共団体が二以上あるときの委員等の任免)
第二十七條 港務局を組織する地方公共団体が二以上あるときは、第十六條第二項、第十八條第三項、第十九條及び第二十二條第二項の規定による委員及び監事の任免に関する地方公共団体の長及び議会の権限の行使については、港務局の定款で定めなければならない。
第四節 港務局の財務
(出資)
第二十八條 港務局を組織する地方公共団体以外の者は、当該港務局に出資することができない。
(財務原則)
第二十九條 港務局がその業務を行うために要する経費(港湾工事に要する経費を除く。)は、その管理する港湾施設等の使用料及び賃貸料並びに港務局の提供する給水等の役務の料金その他港湾の管理運営に伴う收入をもつて、まかなわなければならない。
(債券発行者)
第三十條 港務局は、港湾施設の建設、改良又は復旧の費用に充てるため、債券を発行することができる。
2 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十條の規定は前項の場合に準用する。
3 港務局は、第一項の規定により発行した債券の償還に充てるため、毎事業年度、定款の定めるところにより償還準備金を積み立てなければならない。
4 前項の償還準備金は、債券の償還の目的以外に使用してはならない。
(損益の処理)
第三十一條 港務局は、剩余金を前條の償還準備金及び欠損補充のための準備金として積み立ててなお残額があるときは、その金額を、定款の定めるところにより港務局を組織する地方公共団体に納付しなければならない。
2 港務局を組織する地方公共団体は、港務局に損失を生じた場合において前項の欠損補充のための準備金をこれに充ててなお不足額があるときは、定款の定めるところによりその不足額を補てんしなければならない。
(財産目録等)
第三十二條 港務局は、毎事業年度終了後二箇月以内に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、港務局を組織する地方公共団体に提出しなければならない。
第三章 港湾管理者としての地方公共団体
(港湾管理者としての地方公共団体の決定等)
第三十三條 関係地方公共団体は、港務局を設立しない港湾について、第二項において準用する第四條第三項及び同條第四項の手続を経た後、その議会の議決を経て、協議の上、港湾管理者として、これらの地方公共団体の一を指定し、又は地方自治法第二百八十四條第一項の地方公共団体を設立することができる。
2 第四條第二項から第六項まで及び同條第十項の規定は、前項の場合に、第四條第七項から第九項までの規定は、前項の協議が調わない場合に、第九條第二項の規定は、港湾管理者としての地方公共団体が港湾区域を変更する場合に準用する。
(業務)
第三十四條 港湾管理者としての地方公共団体の業務に関しては、第十二條及び第十三條の規定を準用する。
(委員会)
第三十五條 港湾管理者としての地方公共団体は、前條の規定による業務を執行する機関として、委員会を置くことができる。
2 委員会の名称、組織及び権限は、條例で定める。
(港務局が成立した場合等)
第三十六條 地方公共団体が第三十三條の規定により港湾管理者であつた港湾について、港務局が成立したとき又は他の地方公共団体が、第三十三條の規定により港湾管理者となつたときは、新たに港湾管理者になつた者の港湾区域内にあつては、従来港湾管理者であつた地方公共団体は、港湾管理者としての地位を失う。
第四章 港湾区域及び臨港地区
(港湾区域内の工事等の許可)
第三十七條 港湾区域内において、水域施設、外かく施設若しくはけい留施設を建設し、その他水域の一部を占用し(公有水面の埋立による場合を除く。)、又は土砂を採取しようとする者は、港湾管理者の長の許可を受けなければならない。
2 港湾管理者の長は、前項の建設、占用又は採取が、港湾の開発発展に関する港湾管理者の計画の遂行を著しく阻害し、その他港湾の開発発展に著しく支障を與えるものでない限り許可しなければならない。
3 国、日本專売公社又は日本国有鉄道が、第一項の建設、占用又は採取をしようとする場合には、第一項中「港湾管理者の長の許可を受け」とあるのは「港湾管理者の長と協議し」と、前項中「許可し」とあるのは「協議に応じ」と読み替えるものとする。
4 港湾管理者は、第一項の許可を受けた者から水域占用料又は土砂採取料を徴收することができる。但し、港湾施設の建設の許可又は国の協議に係るものについては、この限りでない。
(臨港地区)
第三十八條 港湾管理者は、都市計画法第二條の規定により決定された都市計画区域以外の地域について運輸大臣の認可を受けて臨港地区を定めることができる。
2 前項の臨港地区は、当該港湾区域を地先水面とする地域において、当該港湾の管理運営に必要な最小限度のものでなければならない。
(分区の指定)
第三十九條 港湾管理者は、臨港地区において左の各号に掲げる分区を指定することができる。
一 商港区 旅客又は一般の貨物を取り扱わせることを目的とする区域
二 特殊物資港区 石炭、鉱石その他大量ばら積を通例とする物資を取り扱わせることを目的とする区域
三 工業港区 工場その他工業用施設を設置させることを目的とする区域
四 鉄道連絡港区 鉄道と鉄道連絡船との連絡を行わせることを目的とする区域
五 漁港区 水産物を取り扱わせ、又は漁船の出漁の準備を行わせることを目的とする区域
六 バンカー港区 船舶用燃料の貯蔵及び補給を行わせることを目的とする区域
七 保安港区 爆発物その他の危險物を取り扱わせることを目的とする区域
2 前項の分区は、当該港湾管理者としての地方公共団体(港湾管理者が港務局である場合には港務局を組織する地方公共団体)の区域の範囲内で指定しなければならない。
(分区内の規制)
第四十條 前條に掲げる分区の区域内においては、各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物であつて、港湾管理者としての地方公共団体(港湾管理者が港務局である場合には港務局を組織する地方公共団体であつて当該分区の区域を区域とするもののうち定款で定めるもの)の條例で定めるものを建設してはならない。
2 港務局を組織する地方公共団体がする前項の條例の制定は、当該港務局の作成した原案を尊重してこれをしなければならない。
(有害構築物の改築等)
第四十一條 港湾管理者の長は、分区内に存する建築物その他の構築物が、前條の條例の制定施行によりその條例に定められたものに該当するに至り、且つ、当該分区の目的を著しく阻害するときは、当該構築物の所有者又は占有者に対し、当該構築物の改築、移転又は撤去をすべきことを命ずることができる。
2 港湾管理者の長が前項の命令をしようとするときは、あらかじめ期日及び場所を指定して、公聽会を開き、当該所有者又は占有者その他の利害関係人の意見を聞き、その意見を十分考慮してこれをしなければならない。
3 第一項の規定による命令によつて生じた損失に対しては、港湾管理者は、当該構築物の所有者又は占有者に対し、その命令がなかつたならば通常生じなかつた損失及び通常得らるべき利益が得られなかつたことによる損失を補償しなければならない。
4 前項の規定により補償を受けることのできる者が金額の決定について不服があるときは、その金額の決定の通知を受けた日から三箇月以内に訴をもつて金額の増加を請求することができる。
第五章 港湾工事の費用
(費用の負担)
第四十二條 港湾管理者が、重要港湾において、一般公衆の利用に供する目的で、水域施設、外かく施設又はけい留施設の建設又は改良の重要な工事をする場合には、その工事に要する費用は、国と港湾管理者がそれぞれその十分の五を負担する。
2 港湾管理者が、避難港において、水域施設又は外かく施設の建設又は改良の工事をする場合には、その工事に要する費用は、国がその十分の七・五を、港湾管理者がその十分の二・五をそれぞれ負担する。
3 前二項の規定は、これによつて国が負担することとなる金額についてあらかじめ運輸大臣に申し出て国会の議決を経た予算に組入れられていないときは、これを適用しない。
4 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第十七條第一項及び第十九條第一項の規定は、港務局について第一項又は第二項の場合に準用する。この場合において、「地方公共団体」とあるのは「港務局」と読み替えるものとする。
(費用の補助)
第四十三條 国は、特に必要があると認めるときは、前條に規定するものの外、予算の範囲内で、一般公衆の利用に供する目的で港湾管理者のする港湾工事の費用に対し、左に掲げる基準で補助することができる。
一 重要港湾における臨港交通施設の建設又は改良の港湾工事については十分の五以内
二 地方港湾における水域施設、外かく施設、けい留施設又は臨港交通施設の建設又は改良の港湾工事については十分の四以内
第六章 雑則
(港湾管理者の料金)
第四十四條 港湾管理者がその提供する施設又は役務の利用に対し料金を徴收する場合には、あらかじめ料率を定めて、その施行の日の少くとも三十日前に、これを公表しなければならない。これを変更しようとするときも同様である。
2 利害関係人は、前項の規定により港湾管理者の定めた料率が不当であり又はこの法律に違反すると認めるときは、その事実を具して運輸大臣に申し出て、料率の変更を港湾管理者に命ずべきことを請求することができる。
3 前項の請求があつたときは、運輸大臣は、当該港湾で運輸審議会の開催する公聽会において、港湾管理者にその料率が不当でなく、且つ、この法律に違反しないものであることを述べる十分な機会を與えた後、当該請求に理由があると認めたときは、港湾管理者に対し理由を示して料率を変更すべきことを命ずることができる。
(港湾管理者以外の者の料金)
第四十五條 港湾管理者以外の者で当該港湾において港湾の利用に必要な施設又は役務の提供に対し料金を徴收しようとするものは、料率を定め、港湾管理者に料率を記載した書面を提出しなければならない。
2 前項の規定は、その都度契約によつて提供される施設又は役務については、適用しない。
(国が負担し又は補助した港湾施設の讓渡等)
第四十六條 この法律によりその工事の費用を国が負担し又は補助した港湾施設を讓渡し、担保に供し、若しくは貸し付けようとする者は、運輸大臣の認可を受けなければならない。但し、国が負担し、若しくは補助した金額に相当する金額を国に返還した場合、又は貸付を受けた者が、その物を一般公衆の利用に供し、且つ、その貸付が三年の期間内である場合はこの限りでない。
2 港湾管理者は、前項本文の規定により運輸大臣の認可を受けた場合、又は同項但書の場合の外、その管理する一般公衆の利用に供する港湾施設を一般公衆の利用に供せられなくする行為をしてはならない。
(不平等取扱の禁止)
第四十七條 運輸大臣は、港湾管理者が第十三條(第三十四條の規定により準用する場合を含む。)の規定に違反していると認めるときは、港湾管理者に対し、当該行為の停止又は変更を命ずることができる。
(港湾計画の審査)
第四十八條 運輸大臣は、一般交通の利便の増進に資するため必要があると認めるときは、重要港湾の港湾管理者に対し、港湾施設の配置、建設、改良その他当該港湾の開発に関する計画の提出を求めることができる。
2 運輸大臣は、前項の計画を審査し、当該計画が全国の港湾の開発のための国の計画に適合しないか、又は当該港湾の利用上著しく不適当であると認めるときは、これを変更すべきことを求めることができる。
(收支報告)
第四十九條 重要港湾の港湾管理者は、運輸省令で定める手続により、その業務に関する收入及び支出その他港湾に関する報告を毎年一回作成して公表し、且つ、その写を運輸大臣に提出しなければならない。
(入出港書類の統一)
第五十條 運輸大臣は、港湾管理者が受理する船舶の入出港に関する書類の様式の統一を図るため、港湾管理者に対し必要な指示をすることができる。
(勧告)
第五十一條 運輸大臣は、重要港湾において、港湾の利用を増進するため特に必要があると認めるときは、港湾管理者を設くべきことを関係地方公共団体に対し勧告することができる。
(直轄工事)
第五十二條 重要港湾において、一般交通の利便を増進するため必要がある場合において国と港湾管理者の協議が調つたときは、運輸大臣は、予算の範囲内で港湾工事を自らすることができる。
2 第四十二條の規定は、前項の規定により運輸大臣がする港湾工事の費用について準用する。この場合において、第四十二條第四項中「第十七條第一項及び第十九條第一項」とあるのは「第十七條第二項及び第十九條第二項」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定により運輸大臣がする港湾工事であつて、臨港交通施設の建設又は改良に係るものの費用は、当該港湾の港湾管理者が、その十分の五を負担する。
(土地又は工作物の讓渡)
第五十三條 前條に規定する港湾工事によつて生じた土地又は工作物は、運輸大臣において、港湾管理者に讓渡することができる。この場合の讓渡は、港湾管理者が負担した費用の額に相当する価額の範囲内で無償とする。
(港湾施設の貸付等)
第五十四條 前條に規定する場合の外、第五十二條に規定する港湾工事によつて生じた港湾施設(港湾の管理運営に必要な土地を含む。)は、運輸大臣(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三條の規定による普通財産(公共物を除く。)については大蔵大臣)において港湾管理者に貸し付け、又は管理を委託しなければならない。
2 前項の規定により港湾管理者が管理することとなつた港湾施設については、港湾管理者においてその管理の費用を負担する。この場合において、当該施設の使用料及び賃貸料は、港湾管理者の收入とする。
第五十五條 港湾管理者が設立されたときは、その時において国の所有又は管理に属する港湾施設で、一般公衆の利用に供するため必要なもの(航行補助施設を除く。)は、港湾管理者に讓渡し、貸し付け、又は管理を委託しなければならない。
2 前二條の規定は、前項の場合に準用する。
(港湾区域の定のない港湾)
第五十六條 港湾区域の定のない港湾において予定する水域を地先水面とする地域を区域とする都道府県を管轄する都道府県知事が、水域を定めて公告した場合において、その水域において、水域施設、外かく施設若しくはけい留施設を建設し、その他水域の一部を占用し(公有水面の埋立による場合を除く。)、又は土砂を採取しようとする者は、当該都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 第四條第五項及び第六項の規定は、前項の規定により都道府県知事が水域を定める場合に準用する。
3 第三十七條第二項から第四項までの規定は、第一項の場合に準用する。
4 当該都道府県知事は、前項の規定により準用する第三十七條第四項の規定により徴收する水域占用料又は土砂採取料を国庫に納付しなければならない。
(農林大臣に対する協議)
第五十七條 運輸大臣は、主として漁業の用に供する施設について第四十六條第一項の認可をし、又は漁業に重大な関係のある事項に関し第四十七條若しくは第四十八條第二項の命令若しくは請求をしようとするときは、農林大臣に協議しなければならない。
(他の法令との関係)
第五十八條 市街地建築物法(大正八年法律第三十七号)第二條から第五條までの規定は、第三十九條の規定により指定された分区については、適用しない。
2 公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)の規定による都道府県知事の職権は、港湾区域内については港湾管理者の長(河川法第二條第一項の規定による河川の区域内における港湾区域内については都道府県知事及び港湾管理者の長)が行う。
3 地方自治法第二百十三條第二項の規定は、地方公共団体が、港湾管理者に港湾施設を讓渡し、貸し付け、又は管理を委託する場合には、適用しない。
4 漁港区に関する特則については、漁港に関する法律で定めるところによる。
5 都道府県災害土木費国庫負担ニ関スル法律(明治四十四年法律第十五号)の規定は、港務局の災害土木費の国庫負担に準用する。この場合において「都道府県」とあるのは、「港務局」と読み替えるものとする。
(行政事件訴訟特例法の適用)
第五十九條 第三十七條第一項の許可、同條第四項の水域占用料及び土砂採取料の徴收、第四十一條第一項の命令、第四十四條の料金の徴收並びに第五十八條第二項の規定に基く公有水面埋立法による職権の行使に関する訴に関する行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)の適用については、港務局の長は、行政庁とみなす。
(運輸審議会)
第六十條 運輸大臣は、左の事項に関しては、これを運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、処理しなければならない。
一 第四條第四項(第九條第二項及び第三十三條第二項において準用する場合を含む。)の規定による港湾区域の認可
二 第四條第九項(第三十三條第二項において準用する場合を含む。)の規定による調停
三 第三十八條の規定による臨港地区を定めることについての認可
四 第四十四條の規定による料率の変更に関する請求に係る事項
五 第五十一條の規定による港湾管理者を設くべきことの勧告
(罰則)
第六十一條 第三十七條第一項又は第五十六條第一項の規定により許可を受けなければならない事項を、許可を受けないでした者は、三万円以下の罰金に処する。
2 第二十五條第一項の規定による給與を受ける委員が、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事したときは、六箇月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
(両罰規定)
第六十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前條第一項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、同項の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。但し、第四十二條の規定は、昭和二十六年四月一日から施行する。
(法令の改廃)
2 都市計画法の一部を次のように改正する。
第十條第二項の次に次の一項を加える。
都市計画区域内ニ於テハ前項ノ場合ノ外港湾ノ管理運営ノ為臨港地区ヲ指定スルコトヲ得
3 河川法の一部を次のように改正する。
第二條第二項の次に次の一項を加える。
港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)ニ規定スル港湾区域ニ付キ前二項ノ規定ニ依リ地方行政庁カ河川ノ区域ノ認定又ハ変更ヲセントスルトキハ当該地方行政庁ニ於テ港湾管理者ニ協議スヘシ
4 臨時物資需給調整法(昭和二十一年法律第三十二号)の一部を次のように改正する。
第三條の二中「地方公共団体」の下に「(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)に規定する港務局を含む。)」を加える。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 森幸太郎
運輸大臣 大屋晋三
建設大臣 増田甲子七
港湾法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百十八号
港湾法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
港務局
第一節
港務局の設立等(第四条―第十一条)
第二節
港務局の業務(第十二条・第十三条)
第三節
港務局の組織(第十四条―第二十七条)
第四節
港務局の財務(第二十八条―第三十二条)
第三章
港湾管理者としての地方公共団体(第三十三条―第三十六条)
第四章
港湾区域及び臨港地区(第三十七条―第四十一条)
第五章
港湾工事の費用(第四十二条・第四十三条)
第六章
雑則(第四十四条―第六十二条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、港湾管理者の設立による港湾の開発、利用及び管理の方法を定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「港湾管理者」とは、第二章第一節の規定により設立された港務局又は第三十三条の規定により指定され、若しくは設立された地方公共団体をいう。
2 この法律で「重要港湾」とは、国の利害に重大な関係を有する港湾で政令で定めるものをいい、「地方港湾」とは、重要港湾以外の港湾をいう。
3 この法律で「港湾区域」とは、第四条第四項(第九条第二項及び第三十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定により認可があつた水域をいう。
4 この法律で「臨港地区」とは、都市計画法(大正八年法律第三十六号)第十条第三項の規定により臨港地区として指定された地区又は第三十八条の規定により港湾管理者が認可を受けて定めた地区をいう。
5 この法律で「港湾施設」とは、港湾区域及び臨港地区内における左に掲げる施設をいう。
一 水域施設 航路、泊地及び船だまり
二 外かく施設 防波堤、防砂堤、導流堤、水門、こう門及び護岸
三 けい留施設 岸壁、けい船浮標、けい船くい、さん橋、浮さん橋及び物揚場
四 臨港交通施設 道路、橋りよう、鉄道、軌道及び運河
五 航行補助施設 航路標識並びに船舶の入出港のための信号施設、照明施設及び港務通信施設
六 荷さばき施設 固定式荷役機械、軌道走行式荷役機械及び上屋
七 旅客施設 旅客乗降用固定施設、手荷物取扱所及び待合所
八 保管施設 倉庫、野積場、貯木場、貯炭場、危険物置場及び貯油施設
九 船舶補給施設 船舶のための給水施設、給油施設及び給炭施設
6 この法律で「港湾工事」とは、港湾施設を建設し、改良し、維持し、又は復旧する工事をいう。
7 この法律で「避難港」とは、暴風雨に際し小型船舶が避難のためてい泊することを主たる目的とし、通常貨物の積卸又は旅客の乗降の用に供せられない港湾で、政令で定めるものをいう。
(漁港に関する規定)
第三条 この法律は、もつぱら漁業の用に供する港湾として他の法律によつて指定された港湾には適用しない。
第二章 港務局
第一節 港務局の設立等
(設立等)
第四条 現に当該港湾において港湾の施設を管理する地方公共団体、後来当該港湾において港湾の施設の設置若しくは維持管理の費用を負担した地方公共団体又は予定港湾区域を地先水面とする地域を区域とする地方公共団体(以下「関係地方公共団体」という。)は、第三項及び第四項の手続を経た後その議会の議決を経て、協議の上、単独で又は共同して、定款を定め、港務局を設立することができる。
2 前項の規定は、国及び地方公共団体以外の者が、水域施設及び外かく施設の全部又は大部分を維持管理している港湾においては、その者が関係地方公共団体のいずれかに港務局の設立を求めた場合を除きこれを適用しない。
3 第一項の規定により港務局を設立しようとする地方公共団体は、あらかじめ、その旨、予定港湾区域及び関係地方公共団体が意見を申し出るべき期間を公告し、且つ、関係地方公共団体の申出によりこれを同項の協議に加えなければならない。但し、関係地方公共団体が意見を申し出るべき期間は一箇月を下ることができない。
4 第一項の規定により港務局の設立の協議が調つたときは、港務局を設立しようとする地方公共団体は、港務局の港湾区域について、左の区分により、運輸大臣又は都道府県知事の認可を受けなければならない。
一 重要港湾については運輸大臣
二 地方港湾であつて都道府県が港務局の設立に加わつているものについては運輸大臣
三 前二号以外の港湾については予定港湾区域を地先水面とする地域を区域とする都道府県を管轄する都道府県知事
5 運輸大臣又は都道府県知事は、河川法(明治二十九年法律第七十一号)第二条第一項の規定による河川の区域について、前項の認可をしようとするときは、港湾区域について当該河川を管理する地方行政庁に協議しなければならない。
6 運輸大臣又は都道府県知事は、予定港湾区域が、当該水域を経済的に一体の港湾として管理運営するために必要な最小限度の区域であつて、当該予定港湾区域に隣接する水域を地先水面とする地方公共団体の利益を害せず、且つ、港域法(昭和二十三年法律第百七十五号)の港の区域の定のあるものについてはその区域をこえないものでなければ、第四項の認可をすることができない。
7 第一項の協議が調わないときは、関係地方公共団体は、第四項の区分により、運輸大臣又は都道府県知事に申し出て、その調停を求めることができる。この場合において第四項第二号中「港務局の設立に加わつているもの」とあるのは「争の当事者であるもの」と読み替えるものとする。
8 前項の申出には、協議のてん末及び関係地方公共団体の意見を附さなければならない。
9 第七項の申出があつたときは、運輸大臣又は都道府県知事は、従来の沿革、関係地方公共団体の財政の事情、将来の発展の計画及び当該港湾の利用の程度その他当該港湾と、関係地方公共団体の関係を考慮し、且つ、重要港湾については内閣総理大臣に協議して調停する。
10 都道府県知事が、第四項の処分をしたとき又は前項の調停をしたときは、遅滞なくその旨を運輸大臣に報告しなければならない。
(法人格)
第五条 港務局は、営利を目的としない公法上の法人とする。
(定款)
第六条 港務局の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 名称
二 港務局を組織する地方公共団体
三 事務所の所在地
四 業務
五 港湾区域
六 委員の定数、任期、選任、罷免及び給与並びに委員会の議事に関する事項
七 事務局の組織及び職員に関する事項
八 財産及び会計に関する事項
九 港務局を組織する地方公共団体の出資又は経費の分担に関する事項
十 剰余金の処分及び損失の処理に関する事項
十一 公告の方法
2 定款又はその変更は、港務局を組織する地方公共団体の議会の承認を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第七条 港務局は、その設立、主たる事務所の所在地の変更その他政令で定める事項について、政令で定める手続により、登記しなければならない。
2 港務局に関して登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することはできない。
(成立)
第八条 港務局は、設立の登記をすることによつて成立する。
(港湾区域の公告)
第九条 港務局は、成立後遅滞なくその旨及び港湾区域を公告しなければならない。港湾区域に変更があつたときも同様である。
2 第四条第四項から第六項までの規定は、港務局が港湾区域を変更しようとする場合に準用する。
(非課税)
第十条 港務局には、所得税及び法人税を課さない。
(民法等の準用)
第十一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条、第五十条、第五十四条、第五十七条、第六十八条第一項、第七十一条から第八十条まで、第八十二条及び第八十三条の規定並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条、第三十七条及び第三十七条ノ二の規定は、港務局に準用する。
第二節 港務局の業務
(業務)
第十二条 港務局は、左の業務を行う。
一 港湾区域及び港務局の管理する港湾施設を良好な状態に維持すること(港湾区域内における漂流物その他船舶航行に支障を及ぼすおそれがある物の除去を含む。)。
二 港湾の発展のため必要な港湾施設の建設及び改良の計画を作成すること。
三 前号の計画を実施するため必要な港湾工事をすること。
四 委託により、国又は地方公共団体の所有に属する港湾施設(港湾の運営に必要な土地を含む。)であつて一般公衆の利用に供するものを管理すること。
五 一般公衆の利用に供するけい留施設のうち一般公衆の利便を増進するため必要なものを自ら運営し、及びこれを利用する船舶に対しけい留場所の指定その他使用に関し必要な規制を行うこと。
六 消火、救難及び警備に必要な設備を設けること。
七 港湾の発展のため必要な調査研究及び統計資料の作成を行い、並びに当該港湾の利用を宣伝すること。
八 船舶に対する給水、離着岸の補助その他船舶に対する役務が、他の者によつて適当且つ十分に提供されない場合において、これらの役務を提供すること。
九 港務局が管理する港湾施設で、一般公衆の利用に供することを要せず、又は自ら運営することを適当としないものを貸し付けること。
十 港務局が管理する上屋、荷役機械等の港湾施設を使用して港湾運営に必要な役務を提供する者に対し、貨物の移動を円滑に行い又は港湾施設の有効な利用を図るため当該施設の使用を規制すること。
十一 港湾運営に必要な役務の提供をあつ旋すること。
十二 船舶乗組員又は港湾労務者の休泊所等これらの者の福利厚生を増進するための施設を設置し、又は管理すること。
十三 港湾の利用に必要な役務及び施設に関する所定の料金を示す最新の料率表を作成し、及び公表すること。
十四 その他前各号の業務を行うため必要な業務
2 前項第十三号に規定する料率表は、港務局が自ら定めた料金の外、第四十五条の料金で港務局に報告され、又は港務局に知れているものに関する事項を包含しなければならない。
(私企業への不干与等)
第十三条 港務局は、港湾運送業、倉庫業その他輸送及び保管に関連する私企業の公正な活動を妨げ、その活動に干渉し、又はこれらの者と競争して事業を営んではならない。
2 港務局は、何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取扱をしてはならない。
第三節 港務局の組織
(委員会)
第十四条 港務局に、委員会を置く。
(委員会の権限及び責任)
第十五条 委員会は、港務局の施策を決定し、港務局の事務の運営を指導統制する。
(委員会の組織及び委員の任命)
第十六条 委員会は、定款の定めるところにより七人以内の委員をもつて組織する。
2 前項の委員は、港湾に関し十分な知識と経験を有する者又は声望のある者のうちから、港務局を組織する地方公共団体の長が、当該地方公共団体の議会の同意を得て任命する。
(委員の欠格条件)
第十七条 左の各号の一に該当する者は、委員になることができない。
一 国会議員又は地方公共団体の議会の議員
二 港務局の工事の請負を業とする者又はこれらの者が法人であるときはその役員若しくは名称の如何にかかわらず役員と同等以上の職権若しくは支配力を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
三 前号に掲げる事業者の団体の役員又は名称の如何にかかわらず役員と同等以上の職権又は支配力を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
2 委員が、前項各号の一に該当するに至つたときは、退職しなければならない。
(委員の任期)
第十八条 委員の任期は、三年以内とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 港務局設立後最初に任命される委員の任期は、多数の委員が同時に退任することがないように、任命の時において、港務局を組織する地方公共団体の長が定める。
(委員の罷免)
第十九条 港務局を組織する地方公共団体の長は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該地方公共団体の議会の同意を得て、これを罷免することができる。
(委員長)
第二十条 委員会に、委員長を置き、委員の互選によつて定める。
2 委員長は、委員会の会議を総理する。
(議決方法)
第二十一条 委員会の議事は、全委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
2 委員は、委員会の決定するところにより、自己に特別の利害関係を有する事項に関しては、議決に加わることができない。
(監事)
第二十二条 港務局に、定款の定めるところにより監事を置くことができる。
2 第十六条第二項及び第十九条の規定は、監事の任免に準用する。
(委員長等の職務及び権限)
第二十三条 委員長は、港務局を代表し、港務局の長としてその業務を総理する。
2 委員長以外の委員は、定款の定めるところにより、港務局を代表し、委員長を補佐して港務局の業務を掌理し、委員長に事故があるときにはその職務を代理し、委員長が欠員のときにはその職務を行う。
3 監事は、港務局の業務を監査する。
(事務局)
第二十四条 港務局に、その事務を処理させるため、定款の定めるところにより、事務局を置き、所要の職員を置く。
(委員長等の給与)
第二十五条 港務局は、常勤する委員、監事及び職員に対して、給与を支払わなければならない。
2 前項の給与の額は、その職務の内容と責任に応ずるものでなければならず、且つ、当該地方における同様な職務に従事する者の給与と同等の基準において定められなければならない。但し、港務局を組織する地方公共団体の長(該当者が二人以上ある場合は、高い給与を受けている者)の給与をこえるものであつてはならない。
3 第一項の給与を受ける委員及び監事は、報酬を得て他の業務に従事してはならない。
(公務員たるの性質)
第二十六条 委員、監事及び職員は、刑罰法規の適用については、法令により公務に従事する者とみなす。
(港務局を組織する地方公共団体が二以上あるときの委員等の任免)
第二十七条 港務局を組織する地方公共団体が二以上あるときは、第十六条第二項、第十八条第三項、第十九条及び第二十二条第二項の規定による委員及び監事の任免に関する地方公共団体の長及び議会の権限の行使については、港務局の定款で定めなければならない。
第四節 港務局の財務
(出資)
第二十八条 港務局を組織する地方公共団体以外の者は、当該港務局に出資することができない。
(財務原則)
第二十九条 港務局がその業務を行うために要する経費(港湾工事に要する経費を除く。)は、その管理する港湾施設等の使用料及び賃貸料並びに港務局の提供する給水等の役務の料金その他港湾の管理運営に伴う収入をもつて、まかなわなければならない。
(債券発行者)
第三十条 港務局は、港湾施設の建設、改良又は復旧の費用に充てるため、債券を発行することができる。
2 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十条の規定は前項の場合に準用する。
3 港務局は、第一項の規定により発行した債券の償還に充てるため、毎事業年度、定款の定めるところにより償還準備金を積み立てなければならない。
4 前項の償還準備金は、債券の償還の目的以外に使用してはならない。
(損益の処理)
第三十一条 港務局は、剰余金を前条の償還準備金及び欠損補充のための準備金として積み立ててなお残額があるときは、その金額を、定款の定めるところにより港務局を組織する地方公共団体に納付しなければならない。
2 港務局を組織する地方公共団体は、港務局に損失を生じた場合において前項の欠損補充のための準備金をこれに充ててなお不足額があるときは、定款の定めるところによりその不足額を補てんしなければならない。
(財産目録等)
第三十二条 港務局は、毎事業年度終了後二箇月以内に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、港務局を組織する地方公共団体に提出しなければならない。
第三章 港湾管理者としての地方公共団体
(港湾管理者としての地方公共団体の決定等)
第三十三条 関係地方公共団体は、港務局を設立しない港湾について、第二項において準用する第四条第三項及び同条第四項の手続を経た後、その議会の議決を経て、協議の上、港湾管理者として、これらの地方公共団体の一を指定し、又は地方自治法第二百八十四条第一項の地方公共団体を設立することができる。
2 第四条第二項から第六項まで及び同条第十項の規定は、前項の場合に、第四条第七項から第九項までの規定は、前項の協議が調わない場合に、第九条第二項の規定は、港湾管理者としての地方公共団体が港湾区域を変更する場合に準用する。
(業務)
第三十四条 港湾管理者としての地方公共団体の業務に関しては、第十二条及び第十三条の規定を準用する。
(委員会)
第三十五条 港湾管理者としての地方公共団体は、前条の規定による業務を執行する機関として、委員会を置くことができる。
2 委員会の名称、組織及び権限は、条例で定める。
(港務局が成立した場合等)
第三十六条 地方公共団体が第三十三条の規定により港湾管理者であつた港湾について、港務局が成立したとき又は他の地方公共団体が、第三十三条の規定により港湾管理者となつたときは、新たに港湾管理者になつた者の港湾区域内にあつては、従来港湾管理者であつた地方公共団体は、港湾管理者としての地位を失う。
第四章 港湾区域及び臨港地区
(港湾区域内の工事等の許可)
第三十七条 港湾区域内において、水域施設、外かく施設若しくはけい留施設を建設し、その他水域の一部を占用し(公有水面の埋立による場合を除く。)、又は土砂を採取しようとする者は、港湾管理者の長の許可を受けなければならない。
2 港湾管理者の長は、前項の建設、占用又は採取が、港湾の開発発展に関する港湾管理者の計画の遂行を著しく阻害し、その他港湾の開発発展に著しく支障を与えるものでない限り許可しなければならない。
3 国、日本専売公社又は日本国有鉄道が、第一項の建設、占用又は採取をしようとする場合には、第一項中「港湾管理者の長の許可を受け」とあるのは「港湾管理者の長と協議し」と、前項中「許可し」とあるのは「協議に応じ」と読み替えるものとする。
4 港湾管理者は、第一項の許可を受けた者から水域占用料又は土砂採取料を徴収することができる。但し、港湾施設の建設の許可又は国の協議に係るものについては、この限りでない。
(臨港地区)
第三十八条 港湾管理者は、都市計画法第二条の規定により決定された都市計画区域以外の地域について運輸大臣の認可を受けて臨港地区を定めることができる。
2 前項の臨港地区は、当該港湾区域を地先水面とする地域において、当該港湾の管理運営に必要な最小限度のものでなければならない。
(分区の指定)
第三十九条 港湾管理者は、臨港地区において左の各号に掲げる分区を指定することができる。
一 商港区 旅客又は一般の貨物を取り扱わせることを目的とする区域
二 特殊物資港区 石炭、鉱石その他大量ばら積を通例とする物資を取り扱わせることを目的とする区域
三 工業港区 工場その他工業用施設を設置させることを目的とする区域
四 鉄道連絡港区 鉄道と鉄道連絡船との連絡を行わせることを目的とする区域
五 漁港区 水産物を取り扱わせ、又は漁船の出漁の準備を行わせることを目的とする区域
六 バンカー港区 船舶用燃料の貯蔵及び補給を行わせることを目的とする区域
七 保安港区 爆発物その他の危険物を取り扱わせることを目的とする区域
2 前項の分区は、当該港湾管理者としての地方公共団体(港湾管理者が港務局である場合には港務局を組織する地方公共団体)の区域の範囲内で指定しなければならない。
(分区内の規制)
第四十条 前条に掲げる分区の区域内においては、各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物であつて、港湾管理者としての地方公共団体(港湾管理者が港務局である場合には港務局を組織する地方公共団体であつて当該分区の区域を区域とするもののうち定款で定めるもの)の条例で定めるものを建設してはならない。
2 港務局を組織する地方公共団体がする前項の条例の制定は、当該港務局の作成した原案を尊重してこれをしなければならない。
(有害構築物の改築等)
第四十一条 港湾管理者の長は、分区内に存する建築物その他の構築物が、前条の条例の制定施行によりその条例に定められたものに該当するに至り、且つ、当該分区の目的を著しく阻害するときは、当該構築物の所有者又は占有者に対し、当該構築物の改築、移転又は撤去をすべきことを命ずることができる。
2 港湾管理者の長が前項の命令をしようとするときは、あらかじめ期日及び場所を指定して、公聴会を開き、当該所有者又は占有者その他の利害関係人の意見を聞き、その意見を十分考慮してこれをしなければならない。
3 第一項の規定による命令によつて生じた損失に対しては、港湾管理者は、当該構築物の所有者又は占有者に対し、その命令がなかつたならば通常生じなかつた損失及び通常得らるべき利益が得られなかつたことによる損失を補償しなければならない。
4 前項の規定により補償を受けることのできる者が金額の決定について不服があるときは、その金額の決定の通知を受けた日から三箇月以内に訴をもつて金額の増加を請求することができる。
第五章 港湾工事の費用
(費用の負担)
第四十二条 港湾管理者が、重要港湾において、一般公衆の利用に供する目的で、水域施設、外かく施設又はけい留施設の建設又は改良の重要な工事をする場合には、その工事に要する費用は、国と港湾管理者がそれぞれその十分の五を負担する。
2 港湾管理者が、避難港において、水域施設又は外かく施設の建設又は改良の工事をする場合には、その工事に要する費用は、国がその十分の七・五を、港湾管理者がその十分の二・五をそれぞれ負担する。
3 前二項の規定は、これによつて国が負担することとなる金額についてあらかじめ運輸大臣に申し出て国会の議決を経た予算に組入れられていないときは、これを適用しない。
4 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第十七条第一項及び第十九条第一項の規定は、港務局について第一項又は第二項の場合に準用する。この場合において、「地方公共団体」とあるのは「港務局」と読み替えるものとする。
(費用の補助)
第四十三条 国は、特に必要があると認めるときは、前条に規定するものの外、予算の範囲内で、一般公衆の利用に供する目的で港湾管理者のする港湾工事の費用に対し、左に掲げる基準で補助することができる。
一 重要港湾における臨港交通施設の建設又は改良の港湾工事については十分の五以内
二 地方港湾における水域施設、外かく施設、けい留施設又は臨港交通施設の建設又は改良の港湾工事については十分の四以内
第六章 雑則
(港湾管理者の料金)
第四十四条 港湾管理者がその提供する施設又は役務の利用に対し料金を徴収する場合には、あらかじめ料率を定めて、その施行の日の少くとも三十日前に、これを公表しなければならない。これを変更しようとするときも同様である。
2 利害関係人は、前項の規定により港湾管理者の定めた料率が不当であり又はこの法律に違反すると認めるときは、その事実を具して運輸大臣に申し出て、料率の変更を港湾管理者に命ずべきことを請求することができる。
3 前項の請求があつたときは、運輸大臣は、当該港湾で運輸審議会の開催する公聴会において、港湾管理者にその料率が不当でなく、且つ、この法律に違反しないものであることを述べる十分な機会を与えた後、当該請求に理由があると認めたときは、港湾管理者に対し理由を示して料率を変更すべきことを命ずることができる。
(港湾管理者以外の者の料金)
第四十五条 港湾管理者以外の者で当該港湾において港湾の利用に必要な施設又は役務の提供に対し料金を徴収しようとするものは、料率を定め、港湾管理者に料率を記載した書面を提出しなければならない。
2 前項の規定は、その都度契約によつて提供される施設又は役務については、適用しない。
(国が負担し又は補助した港湾施設の譲渡等)
第四十六条 この法律によりその工事の費用を国が負担し又は補助した港湾施設を譲渡し、担保に供し、若しくは貸し付けようとする者は、運輸大臣の認可を受けなければならない。但し、国が負担し、若しくは補助した金額に相当する金額を国に返還した場合、又は貸付を受けた者が、その物を一般公衆の利用に供し、且つ、その貸付が三年の期間内である場合はこの限りでない。
2 港湾管理者は、前項本文の規定により運輸大臣の認可を受けた場合、又は同項但書の場合の外、その管理する一般公衆の利用に供する港湾施設を一般公衆の利用に供せられなくする行為をしてはならない。
(不平等取扱の禁止)
第四十七条 運輸大臣は、港湾管理者が第十三条(第三十四条の規定により準用する場合を含む。)の規定に違反していると認めるときは、港湾管理者に対し、当該行為の停止又は変更を命ずることができる。
(港湾計画の審査)
第四十八条 運輸大臣は、一般交通の利便の増進に資するため必要があると認めるときは、重要港湾の港湾管理者に対し、港湾施設の配置、建設、改良その他当該港湾の開発に関する計画の提出を求めることができる。
2 運輸大臣は、前項の計画を審査し、当該計画が全国の港湾の開発のための国の計画に適合しないか、又は当該港湾の利用上著しく不適当であると認めるときは、これを変更すべきことを求めることができる。
(収支報告)
第四十九条 重要港湾の港湾管理者は、運輸省令で定める手続により、その業務に関する収入及び支出その他港湾に関する報告を毎年一回作成して公表し、且つ、その写を運輸大臣に提出しなければならない。
(入出港書類の統一)
第五十条 運輸大臣は、港湾管理者が受理する船舶の入出港に関する書類の様式の統一を図るため、港湾管理者に対し必要な指示をすることができる。
(勧告)
第五十一条 運輸大臣は、重要港湾において、港湾の利用を増進するため特に必要があると認めるときは、港湾管理者を設くべきことを関係地方公共団体に対し勧告することができる。
(直轄工事)
第五十二条 重要港湾において、一般交通の利便を増進するため必要がある場合において国と港湾管理者の協議が調つたときは、運輸大臣は、予算の範囲内で港湾工事を自らすることができる。
2 第四十二条の規定は、前項の規定により運輸大臣がする港湾工事の費用について準用する。この場合において、第四十二条第四項中「第十七条第一項及び第十九条第一項」とあるのは「第十七条第二項及び第十九条第二項」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定により運輸大臣がする港湾工事であつて、臨港交通施設の建設又は改良に係るものの費用は、当該港湾の港湾管理者が、その十分の五を負担する。
(土地又は工作物の譲渡)
第五十三条 前条に規定する港湾工事によつて生じた土地又は工作物は、運輸大臣において、港湾管理者に譲渡することができる。この場合の譲渡は、港湾管理者が負担した費用の額に相当する価額の範囲内で無償とする。
(港湾施設の貸付等)
第五十四条 前条に規定する場合の外、第五十二条に規定する港湾工事によつて生じた港湾施設(港湾の管理運営に必要な土地を含む。)は、運輸大臣(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三条の規定による普通財産(公共物を除く。)については大蔵大臣)において港湾管理者に貸し付け、又は管理を委託しなければならない。
2 前項の規定により港湾管理者が管理することとなつた港湾施設については、港湾管理者においてその管理の費用を負担する。この場合において、当該施設の使用料及び賃貸料は、港湾管理者の収入とする。
第五十五条 港湾管理者が設立されたときは、その時において国の所有又は管理に属する港湾施設で、一般公衆の利用に供するため必要なもの(航行補助施設を除く。)は、港湾管理者に譲渡し、貸し付け、又は管理を委託しなければならない。
2 前二条の規定は、前項の場合に準用する。
(港湾区域の定のない港湾)
第五十六条 港湾区域の定のない港湾において予定する水域を地先水面とする地域を区域とする都道府県を管轄する都道府県知事が、水域を定めて公告した場合において、その水域において、水域施設、外かく施設若しくはけい留施設を建設し、その他水域の一部を占用し(公有水面の埋立による場合を除く。)、又は土砂を採取しようとする者は、当該都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 第四条第五項及び第六項の規定は、前項の規定により都道府県知事が水域を定める場合に準用する。
3 第三十七条第二項から第四項までの規定は、第一項の場合に準用する。
4 当該都道府県知事は、前項の規定により準用する第三十七条第四項の規定により徴収する水域占用料又は土砂採取料を国庫に納付しなければならない。
(農林大臣に対する協議)
第五十七条 運輸大臣は、主として漁業の用に供する施設について第四十六条第一項の認可をし、又は漁業に重大な関係のある事項に関し第四十七条若しくは第四十八条第二項の命令若しくは請求をしようとするときは、農林大臣に協議しなければならない。
(他の法令との関係)
第五十八条 市街地建築物法(大正八年法律第三十七号)第二条から第五条までの規定は、第三十九条の規定により指定された分区については、適用しない。
2 公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)の規定による都道府県知事の職権は、港湾区域内については港湾管理者の長(河川法第二条第一項の規定による河川の区域内における港湾区域内については都道府県知事及び港湾管理者の長)が行う。
3 地方自治法第二百十三条第二項の規定は、地方公共団体が、港湾管理者に港湾施設を譲渡し、貸し付け、又は管理を委託する場合には、適用しない。
4 漁港区に関する特則については、漁港に関する法律で定めるところによる。
5 都道府県災害土木費国庫負担ニ関スル法律(明治四十四年法律第十五号)の規定は、港務局の災害土木費の国庫負担に準用する。この場合において「都道府県」とあるのは、「港務局」と読み替えるものとする。
(行政事件訴訟特例法の適用)
第五十九条 第三十七条第一項の許可、同条第四項の水域占用料及び土砂採取料の徴収、第四十一条第一項の命令、第四十四条の料金の徴収並びに第五十八条第二項の規定に基く公有水面埋立法による職権の行使に関する訴に関する行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)の適用については、港務局の長は、行政庁とみなす。
(運輸審議会)
第六十条 運輸大臣は、左の事項に関しては、これを運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、処理しなければならない。
一 第四条第四項(第九条第二項及び第三十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による港湾区域の認可
二 第四条第九項(第三十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による調停
三 第三十八条の規定による臨港地区を定めることについての認可
四 第四十四条の規定による料率の変更に関する請求に係る事項
五 第五十一条の規定による港湾管理者を設くべきことの勧告
(罰則)
第六十一条 第三十七条第一項又は第五十六条第一項の規定により許可を受けなければならない事項を、許可を受けないでした者は、三万円以下の罰金に処する。
2 第二十五条第一項の規定による給与を受ける委員が、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事したときは、六箇月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
(両罰規定)
第六十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、同項の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。但し、第四十二条の規定は、昭和二十六年四月一日から施行する。
(法令の改廃)
2 都市計画法の一部を次のように改正する。
第十条第二項の次に次の一項を加える。
都市計画区域内ニ於テハ前項ノ場合ノ外港湾ノ管理運営ノ為臨港地区ヲ指定スルコトヲ得
3 河川法の一部を次のように改正する。
第二条第二項の次に次の一項を加える。
港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)ニ規定スル港湾区域ニ付キ前二項ノ規定ニ依リ地方行政庁カ河川ノ区域ノ認定又ハ変更ヲセントスルトキハ当該地方行政庁ニ於テ港湾管理者ニ協議スヘシ
4 臨時物資需給調整法(昭和二十一年法律第三十二号)の一部を次のように改正する。
第三条の二中「地方公共団体」の下に「(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)に規定する港務局を含む。)」を加える。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 森幸太郎
運輸大臣 大屋晋三
建設大臣 増田甲子七