(海岸管理者)
第五条 海岸保全区域の管理は、当該海岸保全区域の存する地域を統括する都道府県知事が行うものとする。
2 前項の規定にかかわらず、市町村長が管理することが適当であると認められる海岸保全区域で都道府県知事が主務大臣の承認を得て指定したものについては、当該海岸保全区域の存する市町村の長がその管理を行うものとする。
3 前二項の規定にかかわらず、海岸保全区域と港湾区域若しくは港湾隣接地域又は漁港区域とが重複して存するときは、その重複する部分については、当該港湾区域若しくは港湾隣接地域の港湾管理者の長又は当該漁港の漁港管理者である地方公共団体の長がその管理を行うものとする。
4 第一項及び第二項の規定にかかわらず、港湾区域若しくは港湾隣接地域又は漁港区域に接する海岸保全区域のうち、港湾管理者の長又は漁港管理者である地方公共団体の長が管理することが適当であると認められ、かつ、都道府県知事と当該港湾管理者の長又は漁港管理者である地方公共団体の長とが協議して定める区域については、当該港湾管理者の長又は漁港管理者である地方公共団体の長がその管理を行うものとする。
5 前四項の規定にかかわらず、海岸管理者を異にする海岸保全区域相互にわたる海岸保全施設で一連の施設として一の海岸管理者が管理することが適当であると認められるものがある場合において、第四十条第二項の規定による関係主務大臣の協議が成立したときは、当該協議に基きその管理を所掌する主務大臣の監督を受ける海岸管理者がその管理を行うものとする。
6 都道府県知事は、第二項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ当該市町村長の意見をきかなければならない。
7 都道府県知事は、第二項の規定により指定をするとき、又は第四項の規定により協議して区域を定めるときは、主務省令で定めるところにより、これを公示するとともに、その旨を主務大臣に報告しなければならない。これを変更するときも、同様とする。
8 第二項に規定する指定及び第四項に規定する協議は、前項の公示によつてその効力を生ずる。
(主務大臣の直轄工事)
第六条 主務大臣は、次の各号の一に該当する場合において、当該海岸保全施設が国土の保全上特に重要なものであると認められるときは、海岸管理者に代つて自ら当該海岸保全施設の新設又は改良に関する工事を施行することができる。この場合においては、主務大臣は、あらかじめ当該海岸管理者の意見をきかなければならない。
一 海岸保全施設の新設又は改良に関する工事の規模が著しく大であるとき。
二 海岸保全施設の新設又は改良に関する工事が高度の技術を必要とするとき。
三 海岸保全施設の新設又は改良に関する工事が高度の機械力を使用して実施する必要があるとき。
四 海岸保全施設の新設又は改良に関する工事が都府県の区域の境界に係るとき。
2 主務大臣は、前項の規定により海岸保全施設の新設又は改良に関する工事を施行する場合においては、政令で定めるところにより、海岸管理者に代つてその権限を行うものとする。
3 主務大臣は、第一項の規定により海岸保全施設の新設又は改良に関する工事を施行する場合においては、主務省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
(海岸保全区域の占用)
第七条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(水面及び海岸管理者以外の者がその権原に基き管理する土地(以下次条及び第十一条において「他の土地」という。)を除く。)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下次条、第九条及び第十二条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 海岸管理者は、前項の規定による許可の申請があつた場合において、その申請に係る事項が海岸の保全に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、これを許可してはならない。
3 海岸管理者は、第一項の許可に海岸の保全上必要な条件を附することができる。
(海岸保全区域における行為の制限)
第八条 海岸保全区域内において、次の各号の一に該当する行為をしようとする者は、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
二 水面若しくは他の土地に他の施設等を新設し、又は水面若しくは他の土地にある他の施設等を改築すること。
三 土地の掘さく、盛土、切土その他政令で定める行為をすること。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の許可について準用する。
(経過措置)
第九条 第三条の規定による海岸保全区域の指定の際現に当該海岸保全区域内において権原に基き他の施設等を設置(工事中の場合を含む。)している者は、従前と同様の条件により、当該他の施設等の設置について第七条第一項又は前条第一項の規定による許可を受けたものとみなす。第三条の規定による海岸保全区域の指定の際現に当該海岸保全区域内において権原に基き前条第一項第一号及び第三号に掲げる行為を行つている者についても、同様とする。
(許可の特例)
第十条 港湾法第三十七条第一項又は第五十六条第一項の規定による許可を受けた者は、当該許可に係る事項については、第七条第一項又は第八条第一項の規定による許可を受けることを要しない。
2 国、日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社、原子燃料公社又は地方公共団体(港湾法に規定する港務局を含む。以下同じ。)が第七条第一項の規定による占用又は第八条第一項の規定による行為をしようとするときは、あらかじめ海岸管理者に協議することをもつて足りる。
(占用料及び土石採取料)
第十一条 海岸管理者は、主務省令で定める基準に従い、第七条第一項又は第八条第一項第一号の規定による許可を受けた者から占用料又は土石採取料を徴収することができる。ただし、他の土地における土石の採取については、土石採取料を徴収することができない。
(監督処分及び損失補償)
第十二条 海岸管理者は、次の各号の一に該当する者に対して、その許可を取り消し、若しくはその条件を変更し、又はその行為の中止、他の施設等の改築、移転若しくは除却、他の施設等により生ずべき海岸の保全上の障害を予防するために必要な施設をすること若しくは原状回復を命ずることができる。
一 第七条第一項又は第八条第一項の規定に違反した者
二 第七条第一項又は第八条第一項の規定による許可に附した条件に違反した者
三 偽りその他不正な手段により第七条第一項又は第八条第一項の規定による許可を受けた者
2 海岸管理者は、次の各号の一に該当する場合においては、第七条第一項又は第八条第一項の規定による許可を受けた者に対し、前項に規定する処分をし、又は同項に規定する必要な措置を命ずることができる。
一 海岸保全施設に関する工事のためやむを得ない必要が生じたとき。
三 海岸の保全上の理由以外の理由に基く公益上やむを得ない必要が生じたとき。
3 海岸管理者は、前項の規定による処分又は命令により損失を受けた者に対し通常生ずべき損失を補償しなければならない。
4 前項の規定による損失の補償については、海岸管理者と損失を受けた者とが協議しなければならない。
5 前項の規定による協議が成立しない場合においては、海岸管理者は、自己の見積つた金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服がある者は、政令で定めるところにより、補償金の支払を受けた日から三十日以内に収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条の規定による裁決を申請することができる。
6 海岸管理者は、第三項の規定による補償の原因となつた損失が第二項第三号の規定による処分又は命令によるものであるときは、当該補償金額を当該理由を生じさせた者に負担させることができる。
(海岸管理者以外の者の施行する工事)
第十三条 海岸管理者以外の者が海岸保全施設に関する工事を施行しようとするときは、あらかじめ当該海岸保全施設に関する工事の設計及び実施計画について海岸管理者の承認を受けなければならない。ただし、第六条第一項の規定による場合は、この限りでない。
2 第十条第二項に規定する者は、前項本文の規定にかかわらず、海岸保全施設に関する工事の設計及び実施計画について海岸管理者に協議することをもつて足りる。
3 海岸管理者は、第一項本文の承認に海岸の保全上必要な条件を附することができる。
(築造の基準)
第十四条 海岸保全施設は、地形、地質、地盤の変動、侵食の状態その他海岸の状況を考慮し、自重、水圧、波力、土圧及び風圧並びに地震、漂流物等による振動及び衝撃に対して安全な構造のものでなければならない。
2 海岸保全施設の形状、構造及び位置は、前項の規定によるほか、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 堤防及び護岸については、イ 高さは、異常高潮位、波高、砕波の状況等を考慮して定めること。
ロ のりこう配及び堤防の天ば幅は、堤体の型式及び地盤並びに使用材料の種類及び性質を考慮して定めること。
ハ 堤防又は護岸の表のりは、波力に耐え、海水その他による侵食及びま耗並びに表のり背面の土砂の流失を防止しうる構造とすること。
ニ 状況により、堤防及び護岸の表のりには波返工を設け、波の洗掘力に耐えるように充分に根入れをし、又はこれに根固工若しくは波力を減殺する施設を設け、堤防及び護岸の天ばには被覆工を施し、かつ、排水こうを設け、堤防の裏のりには被覆工、のり尻保護工、根留工若しくは水たたき工を施し、又は潮遊びを施すこと。
二 胸壁については、前号に定めるところに準ずること。
三 突堤については、潮流、潮位、風速、風向、漂砂、波高、波向等を考慮して定めること。
3 海岸保全施設には、近傍の土地の利用状況により、ひ門、ひ管、陸こう、えい船道その他排水又は通行のための設備を設けなければならない。
4 海岸保全施設の形状、構造及び位置は、状況により、船舶の運航及び船舶による衝撃を考慮して定めなければならない。
(兼用工作物の工事の施行)
第十五条 海岸管理者は、その管理する海岸保全施設が道路、水門、物揚場その他の施設又は工作物(以下これらを「他の工作物」と総称する。)の効用を兼ねるときは、当該他の工作物の管理者との協議によりその者に当該海岸保全施設に関する工事を施行させ、又は当該海岸保全施設を維持させることができる。
(工事原因者の工事の施行)
第十六条 海岸管理者は、その管理する海岸保全施設に関する工事以外の工事(以下「他の工事」という。)又は海岸保全施設に関する工事の必要を生じさせた行為(以下「他の行為」という。)により必要を生じたその管理する海岸保全施設に関する工事を当該他の工事の施行者又は他の行為者に施行させることができる。
2 前項の場合において、他の工事が河川に関する工事又は道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路をいう。以下同じ。)に関する工事であるときは、当該海岸保全施設に関する工事については、河川法第十一条第二項又は道路法第二十三条第一項の規定を適用する。
(附帯工事の施行)
第十七条 海岸管理者は、その管理する海岸保全施設に関する工事により必要を生じた他の工事又はその管理する海岸保全施設に関する工事を施行するため必要を生じた他の工事をその海岸保全施設に関する工事とあわせて施行することができる。
2 前項の場合において、他の工事が河川に関する工事若しくは道路に関する工事又は砂防工事(砂防法による砂防工事をいう。以下同じ。)であるときは、当該他の工事の施行については、河川法第十一条第一項若しくは道路法第二十二条第一項又は砂防法第八条の規定を適用する。
(土地等の立入及び一時使用並びに損失補償)
第十八条 海岸管理者又はその命じた者若しくはその委任を受けた者は、海岸保全区域に関する調査若しくは測量又は海岸保全施設に関する工事のためやむを得ない必要があるときは、あらかじめその占有者に通知して、他人の占有する土地若しくは水面に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を材料置場若しくは作業場として一時使用することができる。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、通知することを要しない。
2 前項の規定により宅地又はかき、さく等で囲まれた土地若しくは水面に立ち入ろうとするときは、立入の際あらかじめその旨を当該土地又は水面の占有者に告げなければならない。
3 日出前及び日没後においては、占有者の承認があつた場合を除き、前項に規定する土地又は水面に立ち入つてはならない。
4 第一項の規定により土地又は水面に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
5 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を材料置場又は作業場として一時使用しようとするときは、あらかじめ当該土地の占有者及び所有者に通知して、その者の意見をきかなければならない。
6 土地又は水面の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
7 海岸管理者は、第一項の規定による立入又は一時使用により損失を受けた者に対し通常生ずべき損失を補償しなければならない。
8 第十二条第四項及び第五項の規定は、前項の場合について準用する。
9 第四項の規定による証明書の様式その他証明書に関し必要な事項は、主務省令で定める。
(海岸保全施設の新設又は改良に伴う損失補償)
第十九条 土地収用法第九十三条第一項の規定による場合を除き、海岸管理者が海岸保全施設を新設し、又は改良したことにより、当該海岸保全施設に面する土地又は水面について、通路、みぞ、かき、さくその他の施設若しくは工作物を新築し、増築し、修繕し、若しくは移転し、又は盛土若しくは切土をするやむを得ない必要があると認められる場合においては、海岸管理者は、これらの工事をすることを必要とする者(以下この条において「損失を受けた者」という。)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。この場合において、海岸管理者又は損失を受けた者は、補償金の全部又は一部に代えて、海岸管理者が当該工事を施行することを要求することができる。
2 前項の規定による損失の補償は、海岸保全施設に関する工事の完了の日から一年を経過した後においては、請求することができない。
3 第一項の規定による損失の補償については、海岸管理者と損失を受けた者とが協議しなければならない。
4 前項の規定による協議が成立しない場合においては、海岸管理者又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第九十四条の規定による裁決を申請することができる。
(海岸管理者以外の者の管理する海岸保全施設に関する監督)
第二十条 海岸管理者は、その職務の執行に関し必要があると認めるときは、海岸管理者以外の海岸保全施設の管理者に対し報告若しくは資料の提出を求め、又はその命じた者に当該海岸保全施設に立ち入り、これを検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
4 第二項の規定による証明書の様式その他証明書に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第二十一条 海岸管理者は、海岸管理者以外の者の管理する海岸保全施設が次の各号の一に該当する場合において、当該海岸保全施設が第十四条の規定に適合しないときは、その管理者に対し改良、補修その他当該海岸保全施設の管理につき必要な措置を命ずることができる。
一 第十三条第一項本文の規定に違反して工事が施行されたとき。
二 第十三条第一項本文の規定による承認に附した条件に違反して工事が施行されたとき。
三 偽りその他不正な手段により第十三条第一項本文の承認を受けて工事が施行されたとき。
2 海岸管理者は、海岸保全施設が前項各号のいずれにも該当しない場合において、当該海岸保全施設が第十四条の規定に適合しなくなり、かつ、海岸の保全上著しい支障があると認められるときは、その管理者に対し前項に規定する措置を命ずることができる。
3 海岸管理者は、前項の規定による命令により損失を受けた者に対し通常生ずべき損失を補償しなければならない。
4 第十二条第四項及び第五項の規定は、前項の場合について準用する。
5 前三項の規定は、第十条第二項に規定する者の管理する海岸保全施設については、適用しない。
(漁業権の取消等及び損失補償)
第二十二条 都道府県知事は、海岸管理者の申請があつた場合において、海岸保全施設に関する工事を行うため特に必要があるときは、海岸保全区域内の水面に設定されている漁業権を取り消し、変更し、又はその行使の停止を命じなければならない。
2 海岸管理者は、前項の規定による漁業権の取消、変更又はその行使の停止によつて生じた損失を当該漁業権者に対し補償しなければならない。
3 漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第三十九条第六項から第十四項まで(公益上の必要による漁業権の変更、取消又は行使の停止)の規定は、前項の規定による損失の補償について準用する。この場合において、同条第九項中「国」とあり、同条第十項中「政府」とあり、又は同条第十二項中「都道府県知事」とあるのは、「海岸管理者」と読み替えるものとする。
(海岸保全施設の整備基本計画)
第二十三条 都道府県知事は、政令で定めるところにより、海岸保全施設の整備に関する基本計画を作成し、これを主務大臣に提出するものとする。これを変更したときも、同様とする。
2 都道府県知事は、前項の規定による基本計画を作成しようとするときは、関係海岸管理者に協議しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(海岸保全区域台帳)
第二十四条 海岸管理者は、海岸保全区域台帳を調製し、これを保管しなければならない。
2 海岸管理者は、海岸保全区域台帳の閲覧を求められたときは、正当な理由がなければこれを拒むことができない。
3 海岸保全区域台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は、主務省令で定める。