臨時物資需給調整法
法令番号: 法律第32号
公布年月日: 昭和21年10月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

戦災による工場設備の被害、設備の老朽化、原材料不足、物価高騰、産業秩序の混乱、労働争議など、産業の回復が遅れている。また、戦後の国民生活は困窮を深めており、必需物資の適正配分が必要である。この経済危機を克服し、産業の回復・振興を図るため、基礎資材、見返り物資、食糧などの重点的な計画生産の実施と、物資の合理的配分が急務である。そのためには物資の需給に関する基本的な総合計画を策定し、法的裏付けのもと臨機応変に施策を実施する必要がある。これが本法案提出の理由である。

参照した発言:
第90回帝国議会 衆議院 本会議 第38号

審議経過

第90回帝国議会

衆議院
(昭和21年8月31日)
(昭和21年9月3日)
(昭和21年9月4日)
(昭和21年9月21日)
貴族院
(昭和21年9月23日)
(昭和21年9月27日)
朕は、帝國議會の協贊を經た臨時物資需給調整法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
農林大臣 和田博雄
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
大藏大臣 石橋湛山
法律第三十二號
臨時物資需給調整法
第一條 主務大臣は、産業の囘復及び振興に關し、經濟安定本部總裁が定める基本的な政策及び計畫の實施を確保するために、左に掲げる事項に關して、必要な命令をなすことができる。
一 經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資の割當又は配給
二 經濟安定本部總裁が定める方策に基く供給の特に不足する物資の使用の制限又は禁止
三 經濟安定本部總裁が定める方策に基く供給の特に不足する物資の生産(加工及び修理を含む。以下同じ。)若しくは出荷若しくは工事の施行又は物資の生産若しくは出荷若しくは工事の施行の制限若しくは禁止
四 經濟安定本部總裁が定める方策に基く供給の特に不足する物資又は遊休設備の讓渡、引渡又は貸與
政府は、勅令の定めるところにより、前項第三號に掲げる物資の生産若しくは出荷若しくは工事の施行又は第四號に掲げる事項に關する命令により生じた損失を補償する。
第一項の規定による命令をなす場合における擔保權の處理その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の命令は、經濟安定本部總裁の同意を得てこれをなすものとし、且つ同樣の條件の下にある者には、差別なく適用されるものとする。
第二條 主務大臣は、前條第一項第一號の割當の實施について必要且つ適當と認めるときには、民主的に組織された産業團體に、その構成員の議決に基いて、その構成員及びその構成員以外の同業者で物資の割當を請求する者に對する物資の割當を行はせることができる。
前項の産業團體は、主務大臣が、告示により、これを指定する。
第一項の産業團體の組織その他の事項に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第二項の規定により指定された産業團體から、第一項の規定により物資の割當を受ける者で、その産業團體の行つた物資の割當の決定に不服のある者は、遲滯なくその旨を物資需給調停委員會に申し出ることができる。この場合には、物資需給調停委員會は、事案について公正な調査及び審議を行つた上、公益に適した決定をなすことを要する。
物資需給調停委員會に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第四項の決定にその産業團體が從はない場合又は第二項の規定により指定された産業團體の行ふ物資の割當を經濟安定本部總裁が定める方策に適合させるために必要がある場合には、主務大臣は、その産業團體に對して、その行ふ物資の割當の決定の變更を命ずることができる。
第三條 主務大臣は、第一條の規定の適用に關して左に掲げる事項につき、關係事業者又は前條第二項の規定により指定された産業團體から報告を取ることができる。この場合において、報告がなされず、又は報告が虚僞と認められるときには、主務大臣は、當該官吏に事務所、營業所、工場、事業場又は倉庫に臨檢し、業務の状況又は帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
一 物資の割當又は配給
二 物資の使用
三 物資の生産若しくは出荷又は工事の施行
四 物資又は設備の状況
前項の規定により、當該官吏が臨檢檢査する場合には、その身分を示す證票を携帶し、且つ關係者の要求に應じて、これを示さなければならない。
第四條 第一條第一項の規定による命令に違反した者は、これを十年以下の懲役又は十萬圓以下の罰金に處する。
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第五條 左の各號の一に該當する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處する。
一 第三條第一項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
二 第三條第一項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第六條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に關して第四條第一項又は前條第一號の違反行爲をしたときには、行爲者を罰するの外、その法人又は人に對して各本條の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十三年四月一日又は經濟安定本部の廢止の時の何れか早い時に、その效力を失ふ。但し、その時までになした行爲に對する罰則の適用については、この法律は、その時以後もなほその效力を有する。
この法律の效力を失ふ際における損失の補償、擔保權の處理その他必要な事項に關する經過規定は、勅令でこれを定めることができる。
朕は、帝国議会の協賛を経た臨時物資需給調整法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月三十日
内閣総理大臣 吉田茂
農林大臣 和田博雄
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
大蔵大臣 石橋湛山
法律第三十二号
臨時物資需給調整法
第一条 主務大臣は、産業の回復及び振興に関し、経済安定本部総裁が定める基本的な政策及び計画の実施を確保するために、左に掲げる事項に関して、必要な命令をなすことができる。
一 経済安定本部総裁が定める方策に基く物資の割当又は配給
二 経済安定本部総裁が定める方策に基く供給の特に不足する物資の使用の制限又は禁止
三 経済安定本部総裁が定める方策に基く供給の特に不足する物資の生産(加工及び修理を含む。以下同じ。)若しくは出荷若しくは工事の施行又は物資の生産若しくは出荷若しくは工事の施行の制限若しくは禁止
四 経済安定本部総裁が定める方策に基く供給の特に不足する物資又は遊休設備の譲渡、引渡又は貸与
政府は、勅令の定めるところにより、前項第三号に掲げる物資の生産若しくは出荷若しくは工事の施行又は第四号に掲げる事項に関する命令により生じた損失を補償する。
第一項の規定による命令をなす場合における担保権の処理その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の命令は、経済安定本部総裁の同意を得てこれをなすものとし、且つ同様の条件の下にある者には、差別なく適用されるものとする。
第二条 主務大臣は、前条第一項第一号の割当の実施について必要且つ適当と認めるときには、民主的に組織された産業団体に、その構成員の議決に基いて、その構成員及びその構成員以外の同業者で物資の割当を請求する者に対する物資の割当を行はせることができる。
前項の産業団体は、主務大臣が、告示により、これを指定する。
第一項の産業団体の組織その他の事項に関し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第二項の規定により指定された産業団体から、第一項の規定により物資の割当を受ける者で、その産業団体の行つた物資の割当の決定に不服のある者は、遅滞なくその旨を物資需給調停委員会に申し出ることができる。この場合には、物資需給調停委員会は、事案について公正な調査及び審議を行つた上、公益に適した決定をなすことを要する。
物資需給調停委員会に関し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第四項の決定にその産業団体が従はない場合又は第二項の規定により指定された産業団体の行ふ物資の割当を経済安定本部総裁が定める方策に適合させるために必要がある場合には、主務大臣は、その産業団体に対して、その行ふ物資の割当の決定の変更を命ずることができる。
第三条 主務大臣は、第一条の規定の適用に関して左に掲げる事項につき、関係事業者又は前条第二項の規定により指定された産業団体から報告を取ることができる。この場合において、報告がなされず、又は報告が虚偽と認められるときには、主務大臣は、当該官吏に事務所、営業所、工場、事業場又は倉庫に臨検し、業務の状況又は帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
一 物資の割当又は配給
二 物資の使用
三 物資の生産若しくは出荷又は工事の施行
四 物資又は設備の状況
前項の規定により、当該官吏が臨検検査する場合には、その身分を示す証票を携帯し、且つ関係者の要求に応じて、これを示さなければならない。
第四条 第一条第一項の規定による命令に違反した者は、これを十年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第五条 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 第三条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第四条第一項又は前条第一号の違反行為をしたときには、行為者を罰するの外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十三年四月一日又は経済安定本部の廃止の時の何れか早い時に、その効力を失ふ。但し、その時までになした行為に対する罰則の適用については、この法律は、その時以後もなほその効力を有する。
この法律の効力を失ふ際における損失の補償、担保権の処理その他必要な事項に関する経過規定は、勅令でこれを定めることができる。