港湾法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第五十五号
公布年月日: 平成29年6月9日
法令の形式: 法律
港湾法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十九年六月九日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第五十五号
港湾法の一部を改正する法律
港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の一部を次のように改正する。
第二条の二の次に次の一条を加える。
(国際旅客船拠点形成港湾の指定)
第二条の三 国土交通大臣は、主として本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路に就航する旅客船(以下「国際旅客船」という。)の利用に供され、又は供されることとなる国土交通省令で定める規模その他の要件に該当する埠頭(以下「国際旅客船取扱埠頭」という。)を有する港湾のうち、船舶乗降旅客数その他の国土交通省令で定める事情を勘案し、当該国際旅客船取扱埠頭を中核として官民の連携による国際旅客船の受入れの促進を図ることにより国際旅客船の寄港の拠点を形成することが我が国の観光の国際競争力の強化及び地域経済の活性化その他の地域の活力の向上のために特に重要なものを、国際旅客船拠点形成港湾として指定することができる。
2 国土交通大臣は、前項の規定による指定をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
3 国土交通大臣は、第一項の国際旅客船拠点形成港湾(以下この項及び第五十条の十六第一項において単に「国際旅客船拠点形成港湾」という。)について指定の事由がなくなつたと認めるときは、当該国際旅客船拠点形成港湾について指定を取り消すものとする。
4 第二項の規定は、前項の規定による指定の取消しについて準用する。
第三条の二第二項中第六号を第七号とし、第五号の次に次の一号を加える。
六 官民の連携による港湾の効果的な利用に関する基本的な事項
第三条の二第三項中「考慮して」を「考慮するとともに、国際観光の振興のため果たすべき港湾及び開発保全航路の役割に配慮して」に改める。
第十二条第四項中「第二項」の下に「(第五十条の二十一において準用する場合を含む。)」を加え、「同条第五項」を「第四十五条第五項」に改める。
第三十九条第一項中「左の各号に」を「次に」に改め、同項第二号中「大量ばら積」を「大量ばら積み」に改め、同項中第九号を第十号とし、第八号の次に次の一号を加える。
九 クルーズ港区 専ら観光旅客の利便に供することを目的とする区域
第四十五条第一項中「定める料金」の下に「及び第五十条の十八第五項第二号イに規定する協定民間国際旅客船受入促進施設の所有者が収受する第五十条の二十一の国土交通省令で定める料金」を加える。
第五十条の八第一項中「同条第九項」の下に「(同条第十一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)」を加える。
第五十条の九第一項中「以下同じ」を「次項、第五十条の十二第一項、第五十条の十三、第五十条の十四第一項及び第五十条の十五において同じ」に改め、同条第二項中「以下」を「第五十条の十二第一項、第五十条の十三及び第五十条の十四第一項において」に改める。
第五十条の十五の次に次の七条を加える。
(国際旅客船拠点形成計画)
第五十条の十六 国際旅客船拠点形成港湾の港湾管理者(以下「国際旅客船港湾管理者」という。)は、当該国際旅客船拠点形成港湾について、国際旅客船取扱埠頭を中核として官民の連携による国際旅客船の受入れの促進を図ることにより国際旅客船の寄港の拠点を形成するための計画(以下「国際旅客船拠点形成計画」という。)を作成することができる。
2 国際旅客船拠点形成計画においては、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。
一 国際旅客船取扱埠頭における旅客施設を整備する者による係留施設の優先的な利用その他の官民の連携による国際旅客船の受入れの促進を通じた国際旅客船の寄港の拠点の形成に関する基本的な方針
二 国際旅客船拠点形成計画の目標
三 前号の目標を達成するために行う国際旅客船取扱埠頭の機能の高度化を図る事業(次項及び次条第二項において「国際旅客船取扱埠頭機能高度化事業」という。)その他の事業及びその実施主体に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、国際旅客船拠点形成計画の実施に関し当該国際旅客船港湾管理者が必要と認める事項
3 前項第三号に掲げる事項には、国際旅客船取扱埠頭機能高度化事業の実施に係る次に掲げる事項を定めることができる。
一 第二条第六項の規定による認定を要する施設に関する事項
二 第三十七条第一項の許可を要する行為に関する事項
三 第三十八条の二第一項又は第四項の規定による届出を要する行為に関する事項
四 第五十五条の七第一項の国の貸付けに係る国際旅客船港湾管理者の貸付けを受けて行う同条第二項に規定する特定用途港湾施設の建設又は改良に関する事項
4 国際旅客船拠点形成計画は、基本方針に適合したものでなければならない。
5 国際旅客船港湾管理者は、国際旅客船拠点形成計画に第二項第三号に掲げる事項を定めようとするときは、あらかじめ、同号の実施主体として定めようとする者の同意を得なければならない。
6 国際旅客船港湾管理者は、国際旅客船拠点形成計画に第三項第一号又は第四号に掲げる事項を定めようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得なければならない。
7 国際旅客船港湾管理者は、国際旅客船拠点形成計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、国土交通大臣及び第二項第三号の実施主体に、国際旅客船拠点形成計画を送付しなければならない。
8 国土交通大臣は、前項の規定により国際旅客船拠点形成計画の送付を受けたときは、国際旅客船港湾管理者に対し、必要な助言をすることができる。
9 第五項から前項までの規定は、国際旅客船拠点形成計画の変更について準用する。
(港湾施設等の認定等の特例)
第五十条の十七 前条第三項第一号に掲げる事項が定められた国際旅客船拠点形成計画が同条第七項(同条第九項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定により公表されたときは、当該公表の日に当該事項に係る施設についての第二条第六項の規定による認定があつたものとみなす。
2 前条第三項第二号又は第四号に掲げる事項が定められた国際旅客船拠点形成計画が同条第七項の規定により公表されたときは、当該公表の日に当該事項に係る国際旅客船取扱埠頭機能高度化事業の実施主体に対する第三十七条第一項の許可又は第五十五条の七第一項の規定による認定があつたものとみなす。
3 前条第三項第三号に掲げる事項が定められた国際旅客船拠点形成計画が同条第七項の規定により公表されたときは、第三十八条の二第一項又は第四項の規定による届出があつたものとみなす。
(官民連携国際旅客船受入促進協定の締結等)
第五十条の十八 国際旅客船港湾管理者は、官民の連携による国際旅客船の受入れの促進を図るため必要があると認めるときは、国際旅客船拠点形成計画に定められた第五十条の十六第二項第三号に掲げる事項に係る旅客施設その他の国際旅客船の受入れを促進するために必要な港湾施設として国土交通省令で定めるもののうち、国際旅客船港湾管理者以外の者が整備するもの(以下「民間国際旅客船受入促進施設」という。)の施設所有者等(当該民間国際旅客船受入促進施設の所有者等(所有者及びその者の株式の所有その他の事由を通じてその者の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にあるものとして国土交通省令で定める者をいう。以下この条において同じ。)、その敷地である土地の所有者又は当該土地の使用及び収益を目的とする権利(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。第三項において同じ。)を有する者をいう。以下同じ。)との間において、国際旅客船取扱埠頭の係留施設の優先的な利用及び当該民間国際旅客船受入促進施設の一般公衆への供用その他当該民間国際旅客船受入促進施設の整備又は管理に関する協定を締結することができる。
2 前項に規定する協定については、民間国際旅客船受入促進施設の施設所有者等の全員の合意がなければならない。
3 国際旅客船港湾管理者は、官民の連携による国際旅客船の受入れの促進を図るため必要があると認めるときは、国際旅客船拠点形成計画に定められた第五十条の十六第二項第三号に掲げる事項に係る建設が予定されている民間国際旅客船受入促進施設又は建設中の民間国際旅客船受入促進施設の施設所有者等となろうとする者(当該民間国際旅客船受入促進施設の敷地である土地の所有者又は当該土地の使用及び収益を目的とする権利を有する者を含む。以下「予定施設所有者等」という。)との間において、国際旅客船取扱埠頭の係留施設の優先的な利用及び建設後の当該民間国際旅客船受入促進施設の一般公衆への供用その他当該民間国際旅客船受入促進施設の整備又は管理に関する協定を締結することができる。
4 前項に規定する協定については、民間国際旅客船受入促進施設の予定施設所有者等の全員の合意がなければならない。
5 第一項又は第三項に規定する協定(以下「官民連携国際旅客船受入促進協定」という。)においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 官民連携国際旅客船受入促進協定の目的となる係留施設及び民間国際旅客船受入促進施設(以下「協定国際旅客船受入促進施設」という。)
二 次に掲げる官民の連携による国際旅客船の受入れの促進に関する事項のうち、必要なもの
イ 協定国際旅客船受入促進施設を構成する民間国際旅客船受入促進施設(以下「協定民間国際旅客船受入促進施設」という。)の所有者等による協定国際旅客船受入促進施設を構成する係留施設の優先的な利用に関する事項
ロ 協定民間国際旅客船受入促進施設の規模、構造又は用途に関する基準
ハ 協定民間国際旅客船受入促進施設の整備又は管理の方法
ニ 協定民間国際旅客船受入促進施設の整備又は管理に要する費用の負担の方法
三 官民連携国際旅客船受入促進協定を変更し、又は廃止する場合の手続
四 官民連携国際旅客船受入促進協定の有効期間
五 官民連携国際旅客船受入促進協定に違反した場合の措置
六 官民連携国際旅客船受入促進協定の掲示方法
七 その他必要な事項
6 官民連携国際旅客船受入促進協定の内容は、次に掲げる基準のいずれにも適合するものでなければならない。
一 協定民間国際旅客船受入促進施設の利用を不当に制限するものでないこと。
二 前項第二号から第七号までに掲げる事項について国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
7 国際旅客船港湾管理者は、官民連携国際旅客船受入促進協定を締結しようとする場合において、協定国際旅客船受入促進施設が次に掲げる港湾施設を含むものであるときは、あらかじめ、国土交通大臣の同意を得なければならない。
一 国有財産法第三条第二項に規定する行政財産である港湾施設
二 その工事の費用を国が負担し、又は補助した地方自治法第二百三十八条第四項に規定する行政財産である港湾施設
8 協定民間国際旅客船受入促進施設の所有者等は、正当な理由がある場合を除き、官民連携国際旅客船受入促進協定に従つて当該協定民間国際旅客船受入促進施設をその者以外の者の利用に供しなければならない。
(官民連携国際旅客船受入促進協定の縦覧等)
第五十条の十九 国際旅客船港湾管理者は、官民連携国際旅客船受入促進協定を締結しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該官民連携国際旅客船受入促進協定を当該公告の日から二週間利害関係人の縦覧に供さなければならない。
2 前項の規定による公告があつたときは、利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、当該官民連携国際旅客船受入促進協定について、国際旅客船港湾管理者に意見書を提出することができる。
3 国際旅客船港湾管理者は、官民連携国際旅客船受入促進協定を締結したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を公示し、かつ、当該官民連携国際旅客船受入促進協定の写しを国際旅客船港湾管理者の事務所に備えて一般の閲覧に供するとともに、当該官民連携国際旅客船受入促進協定において定めるところにより、協定国際旅客船受入促進施設又はその敷地内の見やすい場所に、国際旅客船港湾管理者の事務所においてこれを閲覧に供している旨を掲示しなければならない。
4 前条第二項、第四項、第六項及び第七項並びに前三項の規定は、官民連携国際旅客船受入促進協定において定めた事項の変更について準用する。この場合において、前条第四項中「予定施設所有者等」とあるのは、「予定施設所有者等(当該民間国際旅客船受入促進施設の建設後にあつては、施設所有者等)」と読み替えるものとする。
(官民連携国際旅客船受入促進協定の効力)
第五十条の二十 前条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定による公示のあつた官民連携国際旅客船受入促進協定は、その公示のあつた後において協定民間国際旅客船受入促進施設の施設所有者等又は予定施設所有者等となつた者に対しても、その効力があるものとする。
(協定民間国際旅客船受入促進施設の所有者の料金)
第五十条の二十一 第四十五条第二項、第三項及び第六項の規定は、協定民間国際旅客船受入促進施設の所有者がその所有する協定民間国際旅客船受入促進施設の利用に関する料金として国土交通省令で定める料金を収受しようとする場合について準用する。この場合において、同条第二項中「その指定をした国土交通大臣又は国際拠点港湾の港湾管理者」とあり、及び同条第三項中「国土交通大臣又は国際拠点港湾の港湾管理者」とあるのは「第五十条の十六第一項に規定する国際旅客船港湾管理者」と、同条第六項中「前各項」とあるのは「第五十条の二十一において準用する第二項及び第三項」と読み替えるものとする。
(国土交通大臣の援助)
第五十条の二十二 国土交通大臣は、官民連携国際旅客船受入促進協定を締結し、又は締結しようとする民間国際旅客船受入促進施設の施設所有者等又は予定施設所有者等に対し、官民連携国際旅客船受入促進協定の締結及びその円滑な実施に関し必要な情報の提供、指導、助言その他の援助を行うよう努めるものとする。
第五十五条の三の四を第五十五条の三の五とし、第五十五条の三の三を第五十五条の三の四とし、第五十五条の三の二の次に次の一条を加える。
(非常災害の場合における国土交通大臣による港湾施設の管理等)
第五十五条の三の三 国土交通大臣は、非常災害が発生した場合において、当該非常災害の発生によりその機能に支障が生じ、又は生ずるおそれがある港湾の港湾管理者から要請があり、かつ、物資の輸送の状況、当該港湾管理者における業務の実施体制その他の事情を勘案して必要があると認めるときは、その事務の遂行に支障のない範囲内で、当該港湾管理者の管理する港湾施設の管理の全部又は一部を、期間を定めて、自ら行うことができる。この場合においては、第五十四条第一項及び第五十四条の二第一項の規定は、適用しない。
2 国土交通大臣は、前項の規定により港湾施設の管理を開始したときは、遅滞なく、当該港湾施設を管理する期間その他国土交通省令で定める事項を告示しなければならない。
3 国土交通大臣は、第一項の規定により港湾施設の管理を自ら行う場合において、同項の港湾管理者から要請があり、かつ、物資の輸送の状況、当該港湾管理者における業務の実施体制その他の事情を勘案して必要があると認めるときは、その事務の遂行に支障のない範囲内で、当該管理の内容又は期間を変更するものとする。
4 国土交通大臣は、前項の規定により第二項の規定による告示をした事項に変更があつたときは、遅滞なく、変更に係る事項を告示しなければならない。
5 第五十五条の三の規定は、第一項の規定により国土交通大臣が港湾施設の管理を行う場合について準用する。
第五十五条の四第一項中「第五十五条の三第一項」の下に「(第五十五条の三の三第五項において準用する場合を含む。)」を加え、「第五十五条の三の三」を「第五十五条の三の四」に改める。
第五十六条の四第一項第一号イ中「第五十五条の三の四第一項」を「第五十五条の三の五第一項」に改め、同項第二号及び第三号中「第五十五条の三の四第二項」を「第五十五条の三の五第二項」に改める。
第五十六条の五第一項中「第五十五条の三の四第二項」を「第五十五条の三の五第二項」に改める。
第六十三条第四項第一号中「第五十五条の三の四第二項」を「第五十五条の三の五第二項」に改め、同項第二号中「第五十五条の三の四第一項」を「第五十五条の三の五第一項」に改め、同条第六項を次のように改める。
6 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第三十八条の二第八項、第五十六条の三第二項又は第五十六条の四第一項の規定による処分に違反した者
二 第五十条の二十一において準用する第四十五条第二項の規定による書面の提出をしないで、又は提出した書面に記載された料率によらないで、料金を収受した者
三 第五十条の二十一において準用する第四十五条第三項の規定による命令に違反して、料金を収受した者
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(政令への委任)
2 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
3 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の港湾法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
国土交通大臣 石井啓一
内閣総理大臣 安倍晋三