商工組合中央金庫法
法令番号: 法律第十四號
公布年月日: 昭和11年5月27日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル商工組合中央金庫法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年五月二十六日
內閣總理大臣 廣田弘毅
大藏大臣 馬場鍈一
商工大臣 小川鄕太郞
法律第十四號
商工組合中央金庫法
第一章 總則
第一條 商工組合中央金庫ハ商業組合、商業組合聯合會、工業組合、工業組合聯合會、輸出組合及輸出組合聯合會ニ對スル金融ノ圓滑ヲ圖ル爲必要ナル業務ヲ營ムコトヲ目的トス
商工組合中央金庫ハ法人トス
第二條 商工組合中央金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
商工組合中央金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ商工組合中央金庫ニ命ジテ從タル事務所ヲ設置セシムルコトヲ得
第三條 商業組合聯合會、工業組合聯合會、輸出組合聯合會又ハ銀行ハ商工組合中央金庫ノ業務ノ一部ヲ代理スルコトヲ得
商工組合中央金庫前項ノ聯合會又ハ銀行ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
商業組合聯合會、工業組合聯合會又ハ輸出組合聯合會ハ商工組合中央金庫ニ對シ所屬組合又ハ所屬聯合會ノ爲ニ債務ノ保證ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ債務ノ保證ヲ爲シタルトキハ商業組合聯合會、工業組合聯合會又ハ輸出組合聯合會ハ商工組合中央金庫ノ委任ヲ受ケ其ノ債權ノ取立ヲ爲スコトヲ得
第四條 商工組合中央金庫ノ存立期間ハ設立認可ノ日ヨリ五十年トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第五條 商工組合中央金庫ノ定款ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 存立期間
五 出資者タル資格ニ關スル規定
六 所屬組合又ハ所屬聯合會ノ加入及脫退ニ關スル規定
七 資本金額竝ニ出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
八 剩餘金ノ處分及損失分擔ニ關スル規定
九 準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十 出資者ノ權利義務ニ關スル規定
十一 業務及其ノ執行ニ關スル規定
十二 商工債券ノ發行ニ關スル規定
十三 役員ニ關スル規定
十四 會議ニ關スル規定
十五 會計ニ關スル規定
十六 公吿ノ方法
第六條 商工組合中央金庫ノ資本金ハ千萬圓トシ之ヲ十萬口ニ分チ一口ノ金額ヲ百圓トス
商工組合中央金庫ハ資本金全額ノ拂込前ト雖モ總會ノ決議ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ資本金ヲ增加スルコトヲ得
第七條 政府、商業組合、商業組合聯合會、工業組合、工業組合聯合會、輸出組合又ハ輸出組合聯合會ノ外商工組合中央金庫ノ出資者タルコトヲ得ズ
一組合又ハ一聯合會ノ有スベキ出資口數ハ千口ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アルトキハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ增加スルコトヲ得
商工組合中央金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
第八條 政府ハ五百萬圓ヲ商工組合中央金庫ニ出資ス
政府ハ其ノ出資額ニ對シ設立當初ニ於テ二百萬圓ヲ拂込ミ爾後三年間ニ其ノ殘餘ヲ拂込ムモノトス
組合又ハ聯合會ハ其ノ出資額ニ對シ設立當初ニ於テ出資額ノ五分ノ一ヲ拂込ミ爾後十年間ニ其ノ殘餘ヲ拂込ムモノトス
政府ノ商工組合中央金庫ニ對シテ有スベキ持分ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 商工組合中央金庫ハ出資者ニ對シ其ノ持分ヲ拂戾スコトヲ得ズ
第十條 所屬組合又ハ所屬聯合會ハ持分ノ讓渡ニ依リテノミ脫退スルコトヲ得
第十一條 出資者ハ總出資者ノ五分ノ一以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タル事項及其ノ招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ理事長ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
理事長ガ正當ノ理由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後二週間以內ニ總會招集ノ手續ヲ爲サザルトキハ其ノ請求ヲ爲シタル出資者ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
第十二條 商工組合中央金庫ニ非ザルモノハ商工組合中央金庫又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第十三條 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十四條 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ其ノ事實ノ生ジタル後二週間以內ニ之ヲ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ主務大臣ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十五條 商工組合中央金庫ハ理事長ガ設立委員ヨリ其ノ事務ノ引渡ヲ受ケタル後二週間以內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一 第五條第一號、第二號、第四號、第七號及第十六號ニ揭ゲタル事項
二 事務所
三 拂込資本金額
四 設立認可ノ年月日
五 理事長、理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭ゲタル事項中ニ變更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項第三號ニ揭ゲタル事項ニ付テハ每事業年度末ノ現在ニ依リ事業年度終了後一月以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第十六條 設立ノ登記ハ理事長、理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
前項ノ登記申請書ニハ定款、創立總會ノ決議錄、出資ノ引受ヲ證スル書面、出資ノ第一囘ノ拂込アリタルコトヲ證スル書面及申請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スベシ
第十七條 事務所ノ新設、移轉其ノ他登記事項ノ變更ノ登記ハ理事長又ハ淸算人全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
前項ノ登記申請書ニハ申請人ノ資格ヲ證スル書面及登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附スベシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ爲シタル申請人ガ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要セズ
第十八條 解散ノ登記ハ淸算人全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
前項ノ登記申請書ニハ解散ノ事由ヲ證スル書面及理事長ガ淸算人タラザル場合ニ於テハ申請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スベシ
商工組合中央金庫ガ命令ニ因リテ解散シタルトキハ登記所ハ主務大臣ノ囑託ニ因リテ登記ヲ爲スベシ
第十九條 淸算人ノ選任アリタルトキハ商工組合中央金庫ハ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ氏名及住所ヲ登記スベシ
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項中ニ變更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ
第二十條 淸算人ニ關スル登記及淸算結了ノ登記ハ淸算人全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
第二十一條 商工組合中央金庫ニ關スル登記ニ付テハ其ノ事務所所在地ノ區裁判所ヲ以テ管轄登記所トス
各登記所ニ商工組合中央金庫登記簿ヲ備フ
第二十二條 商工組合中央金庫ニハ所得稅及營業收益稅ヲ課セズ
第二十三條 民法第四十四條第一項、第四十五條第二項第三項、第四十八條、第五十條、第五十三條乃至第五十五條、第五十九條、第六十一條第一項、第六十二條、第六十四條、第六十五條第一項、第六十六條、第七十條、第七十三條、第七十四條及第七十八條乃至第八十一條、非訟事件手續法第百三十八條、第百三十八條ノ三、第百四十條第五號、第百四十一條乃至第百五十一條ノ六、第百五十四條乃至第百五十七條、第百六十五條、第百七十二條乃至第百七十六條、第百七十七條第二項及第百七十八條竝ニ產業組合法第五條、第十條、第十七條第一項、第十八條乃至第二十二條、第二十四條、第二十九條乃至第三十一條ノ三、第三十三條、第三十四條ノ二第一項、第三十五條乃至第三十七條、第三十八條ノ二、第三十九條第一項第二項、第四十三條、第四十四條、第四十八條、第四十八條ノ二、第六十條第二項、第六十二條(第一項第四號ヲ除ク)、第六十三條第一項、第六十五條、第七十條乃至第七十三條ノ三、第七十四條ノ二第一項及第百四條ノ規定ハ商工組合中央金庫ニ之ヲ準用ス但シ民法第四十五條第三項及第四十八條第一項中一週間トアルハ之ヲ二週間トシ民法及產業組合法中理事トアルハ之ヲ理事長(民法第五十九條竝ニ產業組合法第三十三條及第三十四條ノ二第一項ニ在リテハ理事長及理事)トシ地方長官又ハ監督官廳トアルハ之ヲ主務大臣トス
第二章 役員
第二十四條 商工組合中央金庫ニ理事長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十五條 理事長ハ商工組合中央金庫ヲ代表シ其ノ事務ヲ總理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ理事長ヲ補助シ商工組合中央金庫ノ業務ヲ掌理シ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ理事長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ商工組合中央金庫ノ業務ヲ監査ス
第二十六條 理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
理事長及理事ノ任期ハ五年、監事ノ任期ハ三年トス
第二十七條 商工組合中央金庫ニ評議員二十人以內ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ但シ其ノ半數以上ハ商業組合、工業組合及輸出組合ノ關係者中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
評議員ハ名譽職トシ定款ノ定ムル所ニ依リ業務經營ニ關スル重要ナル事項ニ付理事長ノ諮問ニ應ズルモノトス
評議員ノ任期ハ三年トス
第三章 業務
第二十八條 商工組合中央金庫ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ業務ヲ營ムモノトス
一 所屬組合又ハ所屬聯合會ニ對シ擔保ヲ徵セズシテ五年以內ノ定期償還又ハ月賦償還貸付ヲ爲スコト
二 所屬組合又ハ所屬聯合會ニ對シ擔保ヲ徵セズシテ二十年以內ノ年賦償還又ハ半年賦償還貸付ヲ爲スコト
三 所屬組合又ハ所屬聯合會ニ對シ手形ノ割引又ハ當座預金貸越ヲ爲スコト
四 所屬組合又ハ所屬聯合會ノ爲ニ荷爲替手形ニ關スル保證業務ヲ爲スコト
五 所屬組合又ハ所屬聯合會ノ爲ニ內國爲替業務ヲ爲スコト
六 商業組合、商業組合聯合會、工業組合、工業組合聯合會、輸出組合、輸出組合聯合會、公共團體其ノ他營利ヲ目的トセザル法人ヨリ預金ノ受入ヲ爲スコト
七 所屬組合又ハ所屬聯合會ノ爲ニ有價證券ノ保護預リ又ハ其ノ委託賣買ヲ爲スコト
商工組合中央金庫ハ必要アリト認ムルトキハ擔保ヲ徵シテ前項第一號乃至第四號ノ業務ヲ爲スコトヲ得
年賦償還又ハ半年賦償還貸付ニシテ其ノ期限五年ヲ超ユルモノニ付テハ其ノ總額ハ拂込資本金額及商工債券發行額ノ合計額ノ二分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十九條 商工組合中央金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 國債證券、地方債證券又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有價證券ノ買入ヲ爲スコト
二 大藏省預金部若ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト爲スコト
三 商業組合、商業組合聯合會、工業組合、工業組合聯合會、輸出組合又ハ輸出組合聯合會ニ對シ短期貸付ヲ爲スコト
前項ノ餘裕金運用ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條 商工組合中央金庫ハ本法ニ規定セザル業務ヲ營ムコトヲ得ズ
第四章 商工債券
第三十一條 商工組合中央金庫ハ拂込資本金額ノ十倍ヲ限リ商工債券ヲ發行スルコトヲ得但シ貸付金現在額、割引手形現在額及其ノ所有ニ係ル有價證券現在額ノ合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三十二條 商工債券ハ券面金額五十圓以上トシ無記名式利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト爲スコトヲ得
第三十三條 商工組合中央金庫ハ商工債券借換ノ爲一時第三十一條ノ制限ニ依ラズ商工債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ商工債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月以內ニ其ノ發行券面金額ニ相當スル舊商工債券ヲ償還スベシ
第三十四條 商工組合中央金庫ニ於テ商工債券ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十五條 商工債券ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第三十六條 所得稅法、資本利子稅法及登錄稅法中社債ニ關スル規定ハ商工債券ニ之ヲ準用ス
第三十七條 商工債券ノ模造ニ關シテハ通貨及證券模造取締法ヲ準用ス
第三十八條 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外商工債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 計算
第三十九條 商工組合中央金庫ノ事業年度ハ四月ヨリ九月迄及十月ヨリ翌年三月迄トス
第四十條 商工組合中央金庫ハ事業年度每ニ準備金トシテ剩餘金ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第六章 監督及補助
第四十一條 主務大臣ハ商工組合中央金庫ノ業務ヲ監督ス
第四十二條 商工組合中央金庫ノ定款ノ變更及剩餘金ノ處分ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第四十三條 主務大臣ハ商工組合中央金庫ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十四條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ商工組合中央金庫ノ貸付、手形ノ割引又ハ保證ニ付其ノ金額又ハ方法ヲ制限スルコトヲ得
第四十五條 商工組合中央金庫ハ事業年度每ニ貸付利率及手形ノ割引步合ノ最高限度ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第四十六條 主務大臣ハ商工組合中央金庫監理官ヲ置キ商工組合中央金庫ノ業務ヲ監視セシム
第四十七條 商工組合中央金庫監理官ハ何時ニテモ商工組合中央金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
商工組合中央金庫監理官ハ監視上必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ商工組合中央金庫ニ命ジテ業務及財產ノ狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
商工組合中央金庫監理官ハ商工組合中央金庫ノ總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第四十八條 商工組合中央金庫ノ業務若ハ財產ノ狀況ニ依リ其ノ業務ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ商工組合中央金庫ノ行爲ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 總會ノ決議ノ取消
二 役員又ハ淸算人ノ解任
三 業務ノ停止
四 解散
第四十九條 商工組合中央金庫ハ設立ノ時ヨリ三十事業年度間政府ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第七章 罰則
第五十條 商工組合中央金庫ノ理事長、理事又ハ監事何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ商工組合中央金庫ノ業務ノ範圍外ニ於テ貸付若ハ手形ノ割引ヲ爲シ又ハ投機取引ノ爲ニ商工組合中央金庫ノ財產ヲ處分シタルトキハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正條アル場合ニハ之ヲ適用セズ
第五十一條 左ノ場合ニ於テハ商工組合中央金庫ノ理事長、理事、監事又ハ淸算人ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 行政官廳又ハ總會若ハ總代會ニ對シ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
三 本法ニ依リ行政官廳ノ命ズル報吿ヲ爲サズ、其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ他行政官廳ノ命令又ハ處分ニ從ハザルトキ
四 本法ニ違反シテ出資者ノ持分ヲ拂戾シタルトキ
五 本法ニ違反シテ出資者ノ持分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受ケタルトキ
六 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シテ業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
七 本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタルトキ
八 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シテ商工債券ヲ發行シタルトキ
九 第三十三條第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
十 本法ニ違反シテ破產ノ宣吿ヲ請求セザルトキ
十一 淸算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シテ辨濟ヲ爲シ又ハ財產ノ分配ヲ爲シタルトキ
第五十二條 左ノ場合ニ於テハ商工組合中央金庫ノ理事長、理事、監事又ハ淸算人ヲ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 本法ニ依ル總會又ハ總代會ノ招集ヲ怠リタルトキ
三 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ事務所ニ備置クベキ書類ヲ備ヘザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
四 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル公吿ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタルトキ
第五十三條 第十二條ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
第五十四條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第五十五條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六條 政府ハ設立委員ヲ命ジ商工組合中央金庫ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第五十七條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後政府以外ノ出資者ヲ募集スベシ
第五十八條 設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ商工組合中央金庫設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資ノ第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
設立委員ハ商工組合中央金庫ノ設立ニ關スル事項ヲ創立總會ニ報吿スベシ
第五十九條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ商工組合中央金庫理事長ニ引渡スベシ
第六十條 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外商工組合中央金庫ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條 
登錄稅法第六條第一項第十一號中「產業債券」ノ下ニ「、商工債券」ヲ、第十九條第七號中「漁業組合聯合會」ノ下ニ「、商工組合中央金庫」ヲ、「漁業法」ノ下ニ「、商工組合中央金庫法」ヲ加フ
印紙稅法第四條第一項第十一號中「漁業組合聯合會」ノ下ニ「、商工組合中央金庫」ヲ加フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル商工組合中央金庫法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年五月二十六日
内閣総理大臣 広田弘毅
大蔵大臣 馬場鍈一
商工大臣 小川郷太郎
法律第十四号
商工組合中央金庫法
第一章 総則
第一条 商工組合中央金庫ハ商業組合、商業組合連合会、工業組合、工業組合連合会、輸出組合及輸出組合連合会ニ対スル金融ノ円滑ヲ図ル為必要ナル業務ヲ営ムコトヲ目的トス
商工組合中央金庫ハ法人トス
第二条 商工組合中央金庫ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
商工組合中央金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ従タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ商工組合中央金庫ニ命ジテ従タル事務所ヲ設置セシムルコトヲ得
第三条 商業組合連合会、工業組合連合会、輸出組合連合会又ハ銀行ハ商工組合中央金庫ノ業務ノ一部ヲ代理スルコトヲ得
商工組合中央金庫前項ノ連合会又ハ銀行ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
商業組合連合会、工業組合連合会又ハ輸出組合連合会ハ商工組合中央金庫ニ対シ所属組合又ハ所属連合会ノ為ニ債務ノ保証ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ債務ノ保証ヲ為シタルトキハ商業組合連合会、工業組合連合会又ハ輸出組合連合会ハ商工組合中央金庫ノ委任ヲ受ケ其ノ債権ノ取立ヲ為スコトヲ得
第四条 商工組合中央金庫ノ存立期間ハ設立認可ノ日ヨリ五十年トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第五条 商工組合中央金庫ノ定款ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 存立期間
五 出資者タル資格ニ関スル規定
六 所属組合又ハ所属連合会ノ加入及脱退ニ関スル規定
七 資本金額並ニ出資一口ノ金額及其ノ払込ノ方法
八 剰余金ノ処分及損失分担ニ関スル規定
九 準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十 出資者ノ権利義務ニ関スル規定
十一 業務及其ノ執行ニ関スル規定
十二 商工債券ノ発行ニ関スル規定
十三 役員ニ関スル規定
十四 会議ニ関スル規定
十五 会計ニ関スル規定
十六 公告ノ方法
第六条 商工組合中央金庫ノ資本金ハ千万円トシ之ヲ十万口ニ分チ一口ノ金額ヲ百円トス
商工組合中央金庫ハ資本金全額ノ払込前ト雖モ総会ノ決議ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ資本金ヲ増加スルコトヲ得
第七条 政府、商業組合、商業組合連合会、工業組合、工業組合連合会、輸出組合又ハ輸出組合連合会ノ外商工組合中央金庫ノ出資者タルコトヲ得ズ
一組合又ハ一連合会ノ有スベキ出資口数ハ千口ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アルトキハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ増加スルコトヲ得
商工組合中央金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
第八条 政府ハ五百万円ヲ商工組合中央金庫ニ出資ス
政府ハ其ノ出資額ニ対シ設立当初ニ於テ二百万円ヲ払込ミ爾後三年間ニ其ノ残余ヲ払込ムモノトス
組合又ハ連合会ハ其ノ出資額ニ対シ設立当初ニ於テ出資額ノ五分ノ一ヲ払込ミ爾後十年間ニ其ノ残余ヲ払込ムモノトス
政府ノ商工組合中央金庫ニ対シテ有スベキ持分ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 商工組合中央金庫ハ出資者ニ対シ其ノ持分ヲ払戻スコトヲ得ズ
第十条 所属組合又ハ所属連合会ハ持分ノ譲渡ニ依リテノミ脱退スルコトヲ得
第十一条 出資者ハ総出資者ノ五分ノ一以上ノ同意ヲ得テ会議ノ目的タル事項及其ノ招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ理事長ニ提出シテ総会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
理事長ガ正当ノ理由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後二週間以内ニ総会招集ノ手続ヲ為サザルトキハ其ノ請求ヲ為シタル出資者ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
第十二条 商工組合中央金庫ニ非ザルモノハ商工組合中央金庫又ハ之ニ類似ノ名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第十三条 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十四条 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ其ノ事実ノ生ジタル後二週間以内ニ之ヲ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ主務大臣ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十五条 商工組合中央金庫ハ理事長ガ設立委員ヨリ其ノ事務ノ引渡ヲ受ケタル後二週間以内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一 第五条第一号、第二号、第四号、第七号及第十六号ニ掲ゲタル事項
二 事務所
三 払込資本金額
四 設立認可ノ年月日
五 理事長、理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ掲ゲタル事項中ニ変更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ為スベシ但シ前項第三号ニ掲ゲタル事項ニ付テハ毎事業年度末ノ現在ニ依リ事業年度終了後一月以内ニ登記ヲ為スコトヲ得
第十六条 設立ノ登記ハ理事長、理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為スベシ
前項ノ登記申請書ニハ定款、創立総会ノ決議録、出資ノ引受ヲ証スル書面、出資ノ第一回ノ払込アリタルコトヲ証スル書面及申請人ノ資格ヲ証スル書面ヲ添附スベシ
第十七条 事務所ノ新設、移転其ノ他登記事項ノ変更ノ登記ハ理事長又ハ清算人全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為スベシ
前項ノ登記申請書ニハ申請人ノ資格ヲ証スル書面及登記事項ノ変更ヲ証スル書面ヲ添附スベシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ為シタル申請人ガ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ為ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要セズ
第十八条 解散ノ登記ハ清算人全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為スベシ
前項ノ登記申請書ニハ解散ノ事由ヲ証スル書面及理事長ガ清算人タラザル場合ニ於テハ申請人ノ資格ヲ証スル書面ヲ添附スベシ
商工組合中央金庫ガ命令ニ因リテ解散シタルトキハ登記所ハ主務大臣ノ嘱託ニ因リテ登記ヲ為スベシ
第十九条 清算人ノ選任アリタルトキハ商工組合中央金庫ハ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ氏名及住所ヲ登記スベシ
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項中ニ変更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ為スベシ
第二十条 清算人ニ関スル登記及清算結了ノ登記ハ清算人全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為スベシ
第二十一条 商工組合中央金庫ニ関スル登記ニ付テハ其ノ事務所所在地ノ区裁判所ヲ以テ管轄登記所トス
各登記所ニ商工組合中央金庫登記簿ヲ備フ
第二十二条 商工組合中央金庫ニハ所得税及営業収益税ヲ課セズ
第二十三条 民法第四十四条第一項、第四十五条第二項第三項、第四十八条、第五十条、第五十三条乃至第五十五条、第五十九条、第六十一条第一項、第六十二条、第六十四条、第六十五条第一項、第六十六条、第七十条、第七十三条、第七十四条及第七十八条乃至第八十一条、非訟事件手続法第百三十八条、第百三十八条ノ三、第百四十条第五号、第百四十一条乃至第百五十一条ノ六、第百五十四条乃至第百五十七条、第百六十五条、第百七十二条乃至第百七十六条、第百七十七条第二項及第百七十八条並ニ産業組合法第五条、第十条、第十七条第一項、第十八条乃至第二十二条、第二十四条、第二十九条乃至第三十一条ノ三、第三十三条、第三十四条ノ二第一項、第三十五条乃至第三十七条、第三十八条ノ二、第三十九条第一項第二項、第四十三条、第四十四条、第四十八条、第四十八条ノ二、第六十条第二項、第六十二条(第一項第四号ヲ除ク)、第六十三条第一項、第六十五条、第七十条乃至第七十三条ノ三、第七十四条ノ二第一項及第百四条ノ規定ハ商工組合中央金庫ニ之ヲ準用ス但シ民法第四十五条第三項及第四十八条第一項中一週間トアルハ之ヲ二週間トシ民法及産業組合法中理事トアルハ之ヲ理事長(民法第五十九条並ニ産業組合法第三十三条及第三十四条ノ二第一項ニ在リテハ理事長及理事)トシ地方長官又ハ監督官庁トアルハ之ヲ主務大臣トス
第二章 役員
第二十四条 商工組合中央金庫ニ理事長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十五条 理事長ハ商工組合中央金庫ヲ代表シ其ノ事務ヲ総理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ理事長ヲ補助シ商工組合中央金庫ノ業務ヲ掌理シ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ理事長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ商工組合中央金庫ノ業務ヲ監査ス
第二十六条 理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ズ
理事長及理事ノ任期ハ五年、監事ノ任期ハ三年トス
第二十七条 商工組合中央金庫ニ評議員二十人以内ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ但シ其ノ半数以上ハ商業組合、工業組合及輸出組合ノ関係者中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
評議員ハ名誉職トシ定款ノ定ムル所ニ依リ業務経営ニ関スル重要ナル事項ニ付理事長ノ諮問ニ応ズルモノトス
評議員ノ任期ハ三年トス
第三章 業務
第二十八条 商工組合中央金庫ハ其ノ目的ヲ達スル為左ノ業務ヲ営ムモノトス
一 所属組合又ハ所属連合会ニ対シ担保ヲ徴セズシテ五年以内ノ定期償還又ハ月賦償還貸付ヲ為スコト
二 所属組合又ハ所属連合会ニ対シ担保ヲ徴セズシテ二十年以内ノ年賦償還又ハ半年賦償還貸付ヲ為スコト
三 所属組合又ハ所属連合会ニ対シ手形ノ割引又ハ当座預金貸越ヲ為スコト
四 所属組合又ハ所属連合会ノ為ニ荷為替手形ニ関スル保証業務ヲ為スコト
五 所属組合又ハ所属連合会ノ為ニ内国為替業務ヲ為スコト
六 商業組合、商業組合連合会、工業組合、工業組合連合会、輸出組合、輸出組合連合会、公共団体其ノ他営利ヲ目的トセザル法人ヨリ預金ノ受入ヲ為スコト
七 所属組合又ハ所属連合会ノ為ニ有価証券ノ保護預リ又ハ其ノ委託売買ヲ為スコト
商工組合中央金庫ハ必要アリト認ムルトキハ担保ヲ徴シテ前項第一号乃至第四号ノ業務ヲ為スコトヲ得
年賦償還又ハ半年賦償還貸付ニシテ其ノ期限五年ヲ超ユルモノニ付テハ其ノ総額ハ払込資本金額及商工債券発行額ノ合計額ノ二分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十九条 商工組合中央金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ余裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 国債証券、地方債証券又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有価証券ノ買入ヲ為スコト
二 大蔵省預金部若ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト為スコト
三 商業組合、商業組合連合会、工業組合、工業組合連合会、輸出組合又ハ輸出組合連合会ニ対シ短期貸付ヲ為スコト
前項ノ余裕金運用ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十条 商工組合中央金庫ハ本法ニ規定セザル業務ヲ営ムコトヲ得ズ
第四章 商工債券
第三十一条 商工組合中央金庫ハ払込資本金額ノ十倍ヲ限リ商工債券ヲ発行スルコトヲ得但シ貸付金現在額、割引手形現在額及其ノ所有ニ係ル有価証券現在額ノ合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三十二条 商工債券ハ券面金額五十円以上トシ無記名式利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト為スコトヲ得
第三十三条 商工組合中央金庫ハ商工債券借換ノ為一時第三十一条ノ制限ニ依ラズ商工債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ商工債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月以内ニ其ノ発行券面金額ニ相当スル旧商工債券ヲ償還スベシ
第三十四条 商工組合中央金庫ニ於テ商工債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十五条 商工債券ノ消滅時効ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第三十六条 所得税法、資本利子税法及登録税法中社債ニ関スル規定ハ商工債券ニ之ヲ準用ス
第三十七条 商工債券ノ模造ニ関シテハ通貨及証券模造取締法ヲ準用ス
第三十八条 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外商工債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 計算
第三十九条 商工組合中央金庫ノ事業年度ハ四月ヨリ九月迄及十月ヨリ翌年三月迄トス
第四十条 商工組合中央金庫ハ事業年度毎ニ準備金トシテ剰余金ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第六章 監督及補助
第四十一条 主務大臣ハ商工組合中央金庫ノ業務ヲ監督ス
第四十二条 商工組合中央金庫ノ定款ノ変更及剰余金ノ処分ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第四十三条 主務大臣ハ商工組合中央金庫ニ対シ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第四十四条 主務大臣必要アリト認ムルトキハ商工組合中央金庫ノ貸付、手形ノ割引又ハ保証ニ付其ノ金額又ハ方法ヲ制限スルコトヲ得
第四十五条 商工組合中央金庫ハ事業年度毎ニ貸付利率及手形ノ割引歩合ノ最高限度ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第四十六条 主務大臣ハ商工組合中央金庫監理官ヲ置キ商工組合中央金庫ノ業務ヲ監視セシム
第四十七条 商工組合中央金庫監理官ハ何時ニテモ商工組合中央金庫ノ業務及財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
商工組合中央金庫監理官ハ監視上必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ商工組合中央金庫ニ命ジテ業務及財産ノ状況ヲ報告セシムルコトヲ得
商工組合中央金庫監理官ハ商工組合中央金庫ノ総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第四十八条 商工組合中央金庫ノ業務若ハ財産ノ状況ニ依リ其ノ業務ノ継続ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ商工組合中央金庫ノ行為ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキハ主務大臣ハ左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 総会ノ決議ノ取消
二 役員又ハ清算人ノ解任
三 業務ノ停止
四 解散
第四十九条 商工組合中央金庫ハ設立ノ時ヨリ三十事業年度間政府ニ対シ剰余金ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第七章 罰則
第五十条 商工組合中央金庫ノ理事長、理事又ハ監事何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ商工組合中央金庫ノ業務ノ範囲外ニ於テ貸付若ハ手形ノ割引ヲ為シ又ハ投機取引ノ為ニ商工組合中央金庫ノ財産ヲ処分シタルトキハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正条アル場合ニハ之ヲ適用セズ
第五十一条 左ノ場合ニ於テハ商工組合中央金庫ノ理事長、理事、監事又ハ清算人ヲ百円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 行政官庁又ハ総会若ハ総代会ニ対シ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ
三 本法ニ依リ行政官庁ノ命ズル報告ヲ為サズ、其ノ検査ヲ拒ミ其ノ他行政官庁ノ命令又ハ処分ニ従ハザルトキ
四 本法ニ違反シテ出資者ノ持分ヲ払戻シタルトキ
五 本法ニ違反シテ出資者ノ持分ヲ取得シ又ハ質権ノ目的トシテ之ヲ受ケタルトキ
六 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シテ業務上ノ余裕金ヲ運用シタルトキ
七 本法ニ規定セザル業務ヲ営ミタルトキ
八 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シテ商工債券ヲ発行シタルトキ
九 第三十三条第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
十 本法ニ違反シテ破産ノ宣告ヲ請求セザルトキ
十一 清算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シテ弁済ヲ為シ又ハ財産ノ分配ヲ為シタルトキ
第五十二条 左ノ場合ニ於テハ商工組合中央金庫ノ理事長、理事、監事又ハ清算人ヲ十円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 本法ニ依ル総会又ハ総代会ノ招集ヲ怠リタルトキ
三 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ事務所ニ備置クベキ書類ヲ備ヘザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ又ハ正当ノ理由ナクシテ其ノ閲覧ヲ拒ミタルトキ
四 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ
第五十三条 第十二条ノ規定ニ違反シタル者ハ十円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
第五十四条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前三条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第五十五条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六条 政府ハ設立委員ヲ命ジ商工組合中央金庫ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第五十七条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後政府以外ノ出資者ヲ募集スベシ
第五十八条 設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ商工組合中央金庫設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク出資ノ第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
設立委員ハ商工組合中央金庫ノ設立ニ関スル事項ヲ創立総会ニ報告スベシ
第五十九条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ商工組合中央金庫理事長ニ引渡スベシ
第六十条 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外商工組合中央金庫ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一条 
登録税法第六条第一項第十一号中「産業債券」ノ下ニ「、商工債券」ヲ、第十九条第七号中「漁業組合連合会」ノ下ニ「、商工組合中央金庫」ヲ、「漁業法」ノ下ニ「、商工組合中央金庫法」ヲ加フ
印紙税法第四条第一項第十一号中「漁業組合連合会」ノ下ニ「、商工組合中央金庫」ヲ加フ