(目的)
第一條 この法律は、長期金融の円滑を図るため、長期信用銀行の制度を確立し、その業務の公共性にかんがみ、監督の適正を期するとともに、銀行業務の分化により金融制度の整備に資することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「長期信用銀行」とは、第四條第一項の規定により大蔵大臣の免許を受けた者をいう。
(資本の額)
第三條 長期信用銀行は、資本の額が五億円以上の株式会社でなければならない。
(営業の免許)
第四條 預金の受入に代え債券を発行して設備資金又は長期運転資金に関する貸付をすることを主たる業務として営もうとする者は、大蔵大臣の免許を受けなければならない。
2 大蔵大臣は、免許を申請した者の人的構成及び事業収支の見込、経済金融の状況その他を勘案し長期信用銀行の業務を行うにつき十分な適格性を有するものと認めた場合に限り、前項の免許をすることができる。
(商号)
第五條 長期信用銀行は、その商号中に銀行という文字を用いなければならない。
2 銀行法(昭和二年法律第二十一号)第四條第二項(商号)の規定は、長期信用銀行には適用しない。
(長期信用銀行の業務)
第六條 長期信用銀行は、左に掲げる業務を営むことができる。
一 設備資金又は長期運転資金に関する貸付、手形の割引、債務の保証又は手形の引受
二 国債、地方債、社債その他の債券、株式又は出資証券の応募その他の方法による取得。但し、社債その他の債券(政府が元本の償還及び利息の支払について保証しているものを除く。)、株式又は出資証券については、売出の目的で取得する場合を除く。
三 預金の受入。但し、国若しくは地方公共団体又は貸付先、社債募集の委託会社その他の取引先からの預金の受入に限る。
2 長期信用銀行は、前項に掲げる業務の外、同項の業務に妨げのない範囲において、設備資金及び長期運転資金以外の長期資金(資金需要の期間が六箇月をこえるものをいう。以下同じ。)に関する不動産を担保とする貸付をし、又はその受け入れた預金及びこれに準ずるものの合計金額に相当する金額を限度とする短期資金(資金需要の期間が六箇月以下のものをいう。)に関する貸付、手形の割引、債務の保証又は手形の引受をすることができる。
3 長期信用銀行は、担保附社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)により、担保附社債に関する信託業を営むことができる。
4 長期信用銀行は、前各項に掲げる業務以外の業務を営むことができない。
(債権の保全等)
第七條 長期信用銀行は、長期資金に関する貸付等に基く債権については、その特殊性にかんがみ、その保全及び回収の確保を図るため、確実な担保を徴し、又は分割して弁済させる方法をとる等特別の考慮をしなければならない。
(債券の発行)
第八條 長期信用銀行は、資本及び準備金(利益準備金、資本準備金その他株主勘定に属する準備金をいう。以下同じ。)の合計金額の二十倍に相当する金額を限度として、債券を発行することができる。
(債券の借換発行の場合の特例)
第九條 長期信用銀行は、その発行した債券の借換のため、一時前條に規定する限度をこえて債券を発行することができる。
2 前項の規定により債券を発行したときは、発行後一箇月以内にその発行券面額に相当する額の旧債券を償還しなければならない。
(債券発行の届出)
第十條 長期信用銀行は、債券を発行しようとするときは、その都度、その金額及び條件をあらかじめ大蔵大臣に届け出でなければならない。
2 商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百九十八條(既存の社債に未払込のある場合の社債発行の制限)の規定は、長期信用銀行が債券を発行する場合については適用しない。
(債券の発行方法、登記等)
第十一條 長期信用銀行が債券を発行する場合において、応募総額が社債申込証に記載した債券の総額に達しないときでも債券を成立させる旨を社債申込証に記載したときは、その応募総額をもつて債券の総額とする。
2 長期信用銀行の発行する債券は、無記名とする。但し、応募者又は所有者の請求により記名式とすることができる。
3 長期信用銀行は、債券を発行する場合においては、売出の方法によることができる。この場合においては、売出期間を定めなければならない。
4 前項の場合においては、社債申込証を作ることを要しない。
5 第三項の規定により発行する債券には、左の事項を記載しなければならない。
6 商法第三百五條第一項(社債の登記)の期間は、債券の売出期間満了の日から起算する。
7 長期信用銀行は、売出の方法により債券を発行しようとするときは、左の事項を公告しなければならない。
三 数回に分けて債券の払込をさせるときは、その払込の金額及び時期
8 長期信用銀行は、債券を発行する場合においては、割引の方法によることができる。
9 長期信用銀行が発行する債券の登記については、その総額(総額を数回に分けて発行する場合においては、各回の発行金額とする。以下同じ。)を登記すれば足りる。
10 長期信用銀行が発行する債券については、変更の登記をすることを要しない。但し、その総額の償還があつたときはその登記をし、且つ、毎年三月末におけるその償還を終らない金額の合計金額を本店の所在地においては四週間以内、支店の所在地においては五週間以内に登記しなければならない。
11 売出の方法により発行する債券の登記の申請書には、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百九十一條第二項第二号(社債の引受を証する書面)の書面に代え、左の各号に掲げる書類を添附しなければならない。
12 第九項及び第十項の規定は、長期信用銀行がその目的を変更して他の業務を営む会社として存続する場合又は長期信用銀行でない会社が合併若しくは営業の譲受により長期信用銀行の債券を承継した場合において、第九項の規定により登記した債券について準用する。
(債券の消滅時効)
第十二條 長期信用銀行が発行する債券の消滅時効は、元本については十五年、利子については五年で完成する。
(通貨及証券模造取締法の準用)
第十三條 通貨及証券模造取締法(明治二十八年法律第二十八号)は、長期信用銀行が発行する債券の模造について準用する。
(合併異議の催告)
第十四條 長期信用銀行が合併の決議をした場合において、商法第百條第一項(合併異議の公告及び催告)の規定によつてしなければならない催告は、債券の権利者又は預金者に対してはすることを要しない。
(銀行との合併等)
第十五條 長期信用銀行は、合併により銀行業又は貯蓄銀行業に属する契約に基く権利義務を承継した場合において、その契約が当該長期信用銀行の営むことができない業務に属するときは、その契約で期限の定のあるものは期限満了まで、期限の定のないものは承継の日から一年以内の期間に限り、その契約に関する業務を継続することができる。銀行(銀行法に規定する銀行をいう。以下同じ。)が長期信用銀行となつた場合において、従前の業務に属する契約のうち当該長期信用銀行の営むことができない業務に属するものがあるときも同様である。
2 貯蓄銀行法(大正十年法律第七十四号)第九條(供託)及び第十條(優先弁済)の規定は、前項の規定により貯蓄銀行の業務を継続する長期信用銀行について準用する。
(他業会社への転移等)
第十六條 長期信用銀行がその目的を変更して他の業務を営む銀行以外の会社として存続する場合において、従前の債券及び預金の債務が残存するときは、大蔵大臣は、その債務を完済するまで、その債務の総額を限度として財産の供託を命じ、又は債券の権利者及び預金者の保護を図るため必要な範囲において、資産の管理若しくは運用につき命令をすることができる。合併により長期信用銀行及び銀行以外の会社が長期信用銀行の債券及び預金の債務を承継した場合も同様である。
2 銀行法第二十條(報告)及び第二十一條(検査)の規定は、前項に規定する場合において、長期信用銀行に係る債券及び預金の債務を完済するまで、長期信用銀行の業務を営んでいた会社並びに長期信用銀行の債券及び預金の債務を承継した会社について準用する。
(銀行法の準用)
第十七條 銀行法の規定は、同法第一條から第三條まで(定義、営業の免許、資本の額)、第四條(商号)、第五條(他業の禁止)、第八條(準備金)、第十五條(合併異議の催告)、第十七條(貯蓄銀行との合併)、第二十六條(他業会社への転移)、第三十三條から第三十六條まで(罰則)及び附則の規定を除く外、長期信用銀行について準用する。この場合において、同法第三十二條第一項(外国銀行の支店等設置の免許)中「銀行ガ」とあるのは「長期信用銀行ノ業務ヲ営ム会社ガ」と、「第二條」とあるのは「長期信用銀行法第四條」と、同條第二項(外国銀行に関する特則)中「本法」とあるのは「長期信用銀行法」と、「第三條乃至第六條、第八條、第十二條乃至第十七條、第二十五條及第二十七條乃至前條」とあるのは「同法第三條、第五條、第六條第四項、第十四條及第十五條並ニ第六條、第十二條乃至第十四條、第十六條、第二十五條及第二十七條乃至前條」と読み替えるものとする。
(銀行との関係)
第十八條 長期信用銀行は、銀行法にいう銀行ではない。但し、銀行法及びこれに基く命令以外の法令において「銀行」とあるのは、別段の定がない限り、長期信用銀行を含むものとする。
(実施規定)
第十九條 この法律による免許又は認可に関する申請、届出及び業務報告書その他の書類の提出の手続その他この法律を実施するため必要な手続は、大蔵省令で定める。
(罰則)
第二十條 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした長期信用銀行の取締役、監査役、支配人又は清算人(第十七條において準用する銀行法第三十二條第二項(外国銀行に関する特則)の規定により長期信用銀行とみなされる者については、その代表者又は残務の取扱者)を一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処する。
一 第十七條において準用する銀行法第十條(業務報告書)の規定による業務報告書又は第十二條(監査書)の規定による監査書の不実の記載その他の方法により官庁又は公衆を欺もうしたとき。
二 第十七條において準用する銀行法第二十一條(検査)の規定による検査に際し、帳簿書類の隠ぺい、不実の申立その他の方法により検査を妨げたとき。
第二十一條 長期信用銀行の取締役、監査役、支配人又は清算人(第十七條において準用する銀行法第三十二條第二項(外国銀行に関する特則)の規定により長期信用銀行とみなされる者については、その代表者又は残務の取扱者)が、その長期信用銀行の業務に関して前條の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その長期信用銀行に対しても同條の罰金刑を科する。
第二十二條 左の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした長期信用銀行の取締役、監査役、支配人又は清算人(第十七條において準用する銀行法第三十二條第二項(外国銀行に関する特則)の規定により長期信用銀行とみなされる者については、その代表者又は残務の取扱者)を一万円以下の過料に処する。
一 第六條第四項の規定又は第十七條において準用する銀行法第三條の二(無額面株式の発行禁止)、第六條(業態変更)、第七條(代理店の出張所等設置の禁止)若しくは第十三條(役員の兼職制限)の規定に違反したとき。
二 第十五條第二項において準用する貯蓄銀行法第九條(供託)の規定に違反したとき。
三 この法律により長期信用銀行に備えて置くべき書類を備えて置かず、若しくは大蔵大臣に提出すべき書類の提出を怠り、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたとき。
四 第十六條第一項の規定又は第十七條において準用する銀行法第二十二條(業務の停止等)、第二十三條(免許の取消等)若しくは第二十九條(清算の監督)の規定による大蔵大臣又は裁判所の命令に違反したとき。