道路運送法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十六日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百九十一号
道路運送法目次
第一章
総則
第二章
監理
第三章
自動車運送事業
第四章
軽車両運送事業
第五章
自動車道及び自動車道事業
第六章
國営自動車運送事業及び國営自動車道事業
第七章
自家用自動車の使用
第八章
車両
第九章
罰則
附則
道路運送法
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、道路運送に関する秩序の確立及び事業の健全な発達並びに車両の整備及び使用の適正化を図り、以て道路運送における公共の福祉を確保することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で、道路運送事業とは、自動車運送事業及び軽車両運送事業をいい、自動車運送事業とは、他人の需用に應じ自動車を使用して旅客又は物品を運送する事業をいい、軽車両運送事業とは、他人の需用に應じ軽車両を使用して旅客又は物品を運送する事業をいう。
この法律で、車両とは、自動車及び軽車両をいい、自動車とは、原動機により道路上を運行する用具で命令の定めるものをいい、軽車両とは、人力又は畜力により道路上を運行する用具で命令の定めるものをいい、道路とは、道路法による道路並びに自動車道及び一般交通の用に供する場所をいう。
この法律で自動車道事業とは、一般自動車道を開設し、これを專ら自動車の一般交通の用に供する事業をいう。
この法律で、自動車道とは、專ら自動車の一般交通の用に供する通路(一般自動車道)及び自動車運送事業者が專らその事業用自動車の用に供する通路(專用自動車道)をいう。
第二章 監理
(行政廳)
第三條 行政廳は、この法律の規定するところに從い、道路運送に関し、第一條の目的を達成するため必要な監理をする。
第四條 この法律中主務大臣とあるのは、自動車道事業に関しては運輸大臣及び内務大臣、その他に関してはこの法律に別段の定のある場合を除いて、運輸大臣とする。
この法律において行政官廳の職権に属させた事項の一部で都府縣の区域内又は政令の定める道内の区域内におけるものを掌理させるため、都府縣廳の所在地、札幌市、函館市、室蘭市、帶廣市、釧路市、北見市及び旭川市に道路運送監理事務所を置く。
前項の道路運送監理事務所中特定の道路運送監理事務所は、前項に規定する事項の外、政令の定めるところにより、この法律において行政官廳の職権に属させた事項の一部で一定の区域内における二以上の都府縣の区域又は二以上の前項に規定する政令の定める道内の区域にわたるものその他の事項を掌理することができる。
前二項に規定するものの外、道路運送監理事務所に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
この法律に規定する主務大臣の職権の一部は、政令の定めるところにより、左の各号の区分に從い、各ゝその号に定める下級の行政廳に委任することができる。
一 第三章及び第七章に規定する職権については道路運送監理事務所長
二 第五章に規定する職権については道路運送監理事務所長及び都道府縣知事
第四章、第五章及び第八章に規定する行政廳は、政令の定める場合を除いて、左の各号に定める区分による。
一 貨物軽車両運送事業に関する事項及び自動車に関する第八章に規定する事項については道路運送監理事務所長
二 旅客軽車両運送事業に関する事項及び旅客軽車両に関する第八章に規定する事項については都の区の長又は市町村長
三 自動車道の工事のためにする土地の立入及び使用に関する事項については都道府縣知事
(免許等の條件)
第五條 免許、許可又は認可には、條件を附することができる。
前項の條件は、公共の福祉を確保するため必要があるときは、これを変更することができる。
(調査及び臨檢檢査)
第六條 当該行政廳は、必要があると認めるときは、道路運送事業者その他車両を所有し、若しくは使用する者、自動車道事業者又はこれらの者の組織する團体に、事業又は車両の所有若しくは使用に関し、届出をさせ、報告をさせ、又は書類を提出させることができる。
当該行政廳は、必要があると認めるときは、当該官吏吏員に事業場その他の場所に臨檢し、事業若しくは車両の所有若しくは使用の状況若しくは帳簿書類その他の物件を檢査させ、又は質問をさせることができる。
前項の場合には、当該官吏吏員は、その身分を示す証票を携帶しなければならない。
(車両檢査官)
第七條 当該行政廳は、所部の官吏吏員の中から車両檢査官を命じ、第八章の規定による職権の行使を補助させることができる。
車両檢査官は、必要があると認めるときは、車庫その他車両の所在すると認める場所に臨檢し、車両を檢査し、又は質問をすることができる。
前項の場合には、車両檢査官は、その身分を示す証票を携帶しなければならない。
(道路運送委員会)
第八條 この法律の適正な運用を図るため、道路運送委員会を置く。
道路運送委員会は、中央道路運送委員会及び地方道路運送委員会とし、地方道路運送委員会は、第四條第三項に規定する一定区域ごとにこれを置く。
中央道路運送委員会は、委員九人を以て、地方道路運送委員会は、委員若干人を以てこれを組織する。
道路運送委員会に委員の互選による委員長を置く。
中央道路運送委員会の委員は、地方道路運送委員会の委員長を以てこれに充て、地方道路運送委員会の委員は、各都道府縣知事の推薦に基く運輸大臣の申出により、内閣総理大臣が、これを命ずる。
前項の各都道府縣知事の推薦すべき人員は、都府縣にあつては二人、北海道にあつては若干人とする。
官吏又は吏員であつた者は、その退職後一年間は道路運送委員会の委員となることができない。
道路運送委員会の委員の任期は、三年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。但し、再任されることを防げない。
道路運送委員会の委員は、在職中道路運送委員会の承認及び運輸大臣の同意のある場合を除く外、報酬のある他の職務に從事し、又は商業を営みその他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。
道路運送委員会の委員が現に経営中の道路運送事業につき著しい経済的な利害関係を有し、又は道路運送事業に関し他の者と競爭的若しくは対立的立場にあると認められる場合において、当該道路運送委員会においてその委員を罷免すべき旨の議決をしたときは、運輸大臣の申出により、内閣総理大臣が、これを解任する。
道路運送委員会の委員が心身の故障のため職務を執ることができず、又はその職務を怠り、若しくはその職務に対し不正の行爲をしたと認められる場合において、当該道路運送委員会においてその委員を罷免すべき旨の議決をしたときは、運輸大臣の申出により、内閣総理大臣が、これを解任する。
道路運送委員会の委員の報酬及び旅費については、命令でこれを定める。
行政官廳は、左の事項で重要なものは、道路運送委員会の意見を徴し、その意見を尊重してこれをしなければならない。
一 この法律を改正する法律案及びこの法律に基く政令案の立案並びにこの法律に基く命令の制定及び改正
二 自動車運送事業の免許に関する基準の設定及び変更
三 自動車運送事業の免許
四 自動車運送事業の停止及び免許の取消
五 自動車運送事業に係る第五十條第一項の協議に対する承諾
道路運送委員会は、道路運送の改善に関し、関係行政廳に建議をすることができる。
道路運送委員会は、その職務を行うため必要があるときは、公務所又は道路運送事業者若しくはその組織する團体その他の関係者に対し、必要な報告、情報又は資料を求めることができる。
道路運送委員会は、その職務を行うため必要があるときは、公務所、道路運送事業者若しくはその組織する團体又は学識経驗のある者に必要な調査を嘱託することができる。
道路運送委員会は、第十三項の規定による職務を行うには、事件関係人又は参考人に対し、出頭を求めてその意見又は報告を徴しなければならない。
この法律に規定するものの外、道路運送委員会の組織、運用その他道路運送委員会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
(訴願)
第九條 この法律又はこの法律に基いて発する命令に規定する事項につき行政廳のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
第三章 自動車運送事業
(自動車運送事業の種類)
第十條 自動車運送事業の種類は、左に掲げるものとする。
一 一般自動車運送事業(特定自動車運送事業以外の自動車運送事業)
一 一般乘合旅客自動車運送事業
二 一般貸切旅客自動車運送事業
三 一般積合貨物自動車運送事業
四 一般貸切貨物自動車運送事業
二 特定自動車運送事業(特定の者の需用に應じ特定の旅客又は物品を運送する自動車運送事業)
一 特定乘合旅客自動車運送事業
二 特定貸切旅客自動車運送事業
三 特定積合貨物自動車運送事業
四 特定貸切貨物自動車運送事業
(免許)
第十一條 自動車運送事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、事業計画を定め、主務大臣の免許を受けなければならない。
前項の免許は、前條に掲げる種類ごとに、これを受けなければならない。
(免許基準)
第十二條 主務大臣は、自動車運送事業の免許に関し妥当な基準を定め、これを公示しなければならない。
主務大臣は、前項の基準に適合する申請があつたときは、左の場合を除いては、事業の免許をしなければならない。
一 事業を経営しようとする者が一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられた者でその執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しないものであるとき。
二 事業を経営しようとする者が事業の免許の取消を受けた者でその取消の日から二年を経過しないものであるとき。
三 事業を経営しようとする者が破産の宣告を受け復権を得ない者であるとき。
四 事業を経営しようとする者が法人である場合において、その法人の役員に前三号の一に掲げる事由のあるとき。
五 事業を経営しようとする者の資力信用が不充分なため事業の確実な経営が著しく困難であると認められるとき。
六 当該事業の経営に因り公共の福祉に反する結果を生ずるような競爭がひきおこされる虞のあるとき。
(物品の附随運送)
第十三條 旅客自動車運送事業者は、命令の定めるところにより、旅客の運送に附随して物品を運送することができる。
(運賃及び料金)
第十四條 自動車運送事業の運賃及び料金については、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。
(運送約款)
第十五條 貨物自動車運送事業者は、命令の定めるところにより、運送約款を定め、主務大臣の認可を受けなければならない。
運送約款においては、少くとも運賃、料金その他の運送條件及び運送に関する事業者の責任に関する事項を定めなければならない。
(運送條件及び運送約款の公示)
第十六條 運賃、料金その他の運送條件及び運送約款は、命令の定めるところにより、これを公示しなければならない。
(運輸開始)
第十七條 自動車運送事業の免許を受けた者は、主務大臣の指定する期間内に運輸を開始しなければならない。
專用自動車道を開設して自動車運送事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、工事方法を定め、主務大臣の指定する期間内に工事施行の認可を申請しなければならない。
天災その他やむを得ない事由に因り、第一項の期間内に運輸を開始することができないとき、又は前項の期間内に同項の認可を申請することができないときは、主務大臣は、申請に因り期間を伸長することができる。
(公共の福祉に反する行爲の禁止)
第十八條 自動車運送事業者は、事業計画に定める自動車の運行を怠り、不当な運送條件によることを求めその他公共の福祉に反する行爲をしてはならない。
自動車運送事業者は、自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競爭をしてはならない。
主務大臣は、前二項に規定する行爲があるときは、自動車運送事業者に対し、当該行爲の取止その他公共の福祉を確保するため必要な措置を命ずることができる。
(運送引受義務)
第十九條 自動車運送事業者は、左の場合を除いては、運送の引受を拒絶してはならない。
一 当該運送に関し旅客又は荷送人から特別な負担を求められたとき。
二 当該運送が法令の規定、公の秩序又は善良の風俗に反するとき。
三 天災その他やむを得ない事由に因る運送上の支障のあるとき。
四 前各号に掲げる場合を除いて、命令の定める正当な事由のあるとき。
(物品運送の順序)
第二十條 物品の運送は、その申込の順序により、これをしなければならない。但し、正当な事由があるときは、この限りでない。
(事業計画等の変更)
第二十一條 自動車運送事業者は、事業計画、運送約款又は專用自動車道の工事方法を変更しようとするときは、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。
(運輸及び会計)
第二十二條 自動車運送事業における自動車の使用、運輸施設の整備その他運輸に関し必要な事項及び経理の合理化、帳簿書類の整理保存その他会計に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(運輸に関する協定)
第二十三條 自動車運送事業者は、他の運送事業者若しくは小運送業者と聯絡運輸若しくは共同経営に関する契約その他運輸に関する協定をし、又はこれを変更するには、主務大臣の認可を受けなければならない。
(事業改善の命令)
第二十四條 主務大臣は、公共の福祉を確保するため必要があるときは、自動車運送事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。
一 事業計画、運賃、料金その他の運送條件、運送約款又は專用自動車道の工事方法を変更すること。
二 他の運送事業者又は小運送業者と設備の共用、聯絡運輸、共同経営又は運輸に関する協定をすること。
三 旅客又は物品の運送に関する損害につき保險に付すること。
四 前各号に掲げるものを除いて、事業の改善をすること。
前項第二号の場合において、その実施方法又は各事業者が收得し、若しくは負担すべき金額につき協議が調わないときは、主務大臣は、申請に因りこれを裁定する。
前項の規定による裁定に係る金額に不服のある者は、他の事業者に対し、裁定のあつたことを知つた日から六箇月以内に、訴を以てその金額の増減を請求することができる。但し、裁定のあつた日から三年を経過したときは、訴を提起することができない。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)
第二十五條 第二十三條の認可を受けて行う正当な行爲及び前條第一項(他の運送事業者又は小運送業者との聯絡運輸、共同経営及び運輸に関する協定に関する部分に限る。)の規定による命令によつて行う正当な行爲には、昭和二十二年法律第五十四号の規定を適用しない。
(運送に関する命令)
第二十六條 主務大臣は、旅客又は物品の運送を確保するため必要があるときは、自動車運送事業者に対し、運送すべき旅客若しくは物品及び運送條件を定めてその運送を命じ、又は旅客若しくは物品を定めてその運送を制限し、若しくは禁止することができる。
主務大臣は、旅客又は物品の運送を確保するため必要があるときは、自動車運送事業者に対し、旅客又は物品の運送の順序を定めて、これによるべきことを命ずることができる。
(名義の利用、事業及び車両の貸借並びに事業の管理の受委託)
第二十七條 自動車運送事業者の名義は、自動車運送事業を経営するため、他人がこれを利用し、又は他人にこれを利用させてはならない。
自動車運送事業は、これを貸借してはならない。
自動車運送事業の管理の委託及び受託並びに自動車運送事業用自動車の貸渡については、主務大臣の許可を受けなければならない。
前項の管理の委託及び受託に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(事業の讓渡等)
第二十八條 自動車運送事業の讓渡は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
自動車運送事業を経営する会社の合併又は解散に関する株主総会若しくは社員総会の決議若しくは総社員の同意は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
自動車運送事業を経営する会社の合併があつたときは、合併後存続する会社又は合併に因り設立された会社は、免許に基く権利義務を承継する。
自動車運送事業者が死亡したときは、相続人は、免許に基く権利義務を承継する。
自動車運送事業者は、主務大臣の許可を受けなければ、その事業の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
(地方公共團体の区域内における乘合旅客自動車運送事業)
第二十九條 主務大臣は、事業区域が東京都の区の存する区域内又は政令の定める市の区域内に限られる乘合旅客自動車運送事業につき第十一條、第十四條、第二十一條、第二十三條、第二十七條第三項又は前條第一項、第二項若しくは第五項の規定による処分をするには、都知事又は当該市長の意見を徴しなければならない。
(事業の停止及び免許の取消)
第三十條 自動車運送事業者が左の各号の一に該当するときは、主務大臣は、自動車運送事業の全部若しくは一部の停止を命じ、又は免許の全部若しくは一部を取り消すことができる。
一 この法律、この法律に基く命令若しくは処分又は免許、許可若しくは認可に附した條件に違反したとき。
二 許可又は認可を受けた事項を故なく実施しないとき。
三 前二号の場合を除いて、公共の福祉に反する行爲をしたとき。
四 事業経営の不確実又は資産状態の著しい不良その他の事由に因り事業を継続するのに適しないとき。
(免許の失効)
第三十一條 左の場合には、自動車運送事業の免許は、その効力を失う。
一 第十七條第一項の期間内に運輸を開始しないとき。
二 第十七條第二項の期間内に同項の認可を申請しないとき。
三 第十七條第二項の規定による申請に対し不認可の処分を受けたとき。
四 事業の廃止の許可を受けたとき。
(特定自動車運送事業)
第三十二條 特定自動車運送事業には、第十五條乃至第十七條、第十九條、第二十條、第二十一條(事業計画に関する部分を除く。)、第二十八條第五項及び前條の規定を適用しない。
特定自動車運送事業者は、その事業を休止し、又は廃止したときは、遅滯なくこれを主務大臣に届け出なければならない。この場合においては、免許は、事業の廃止の届出があつた時にその効力を失う。
第四章 軽車両運送事業
(事業に関する届出)
第三十三條 軽車両運送事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、事業計画を具えて行政廳に届け出なければならない。事業計画を変更しようとするときも同樣とする。
第三十四條 軽車両運送事業者は、左の場合には、命令の定めるところにより、遅滯なくこれを行政廳に届け出なければならない。
一 他の運送事業者と聯絡運輸若しくは共同経営に関する契約その他運輸に関する協定をし、又はこれを変更したとき。
二 事業を讓り受けたとき。
三 会社の合併又は解散があつたとき。
四 相続に因る事業の承継があつたとき。
五 事業を休止し、又は廃止したとき。
(事業停止の命令)
第三十五條 軽車両運送事業者が公共の福祉に反する行爲をしたときは、行政廳は、命令の定めるところにより、その事業の停止を命ずることができる。
(準用規定)
第三十六條 軽車両運送事業には、第十八條及び第二十四條乃至第二十六條の規定を準用する。この場合において、これらの規定中「主務大臣」とあるのは、「行政廳」と読み替えるものとする。
第五章 自動車道及び自動車道事業
(免許)
第三十七條 自動車道事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、事業計画を定め、主務大臣の免許を受けなければならない。
(一般自動車道の使用料金)
第三十八條 一般自動車道の使用料金については、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。
(一般自動車道の工事)
第三十九條 自動車道事業の免許を受けた者は、一般自動車道の工事を必要とするときは、工事方法を定め、主務大臣の指定する期間内に工事施行の認可を申請しなければならない。
天災その他やむを得ない事由に因り前項の期間内に認可を申請することができないときは、主務大臣は、申請に因り期間を伸長することができる。
第四十條 自動車道事業者は、工事施行の認可を受けたときは、主務大臣の指定する期間内に、一般自動車道の工事に着手し、これを完成しなければならない。
前項の期間の伸長には、前條第二項の規定を準用する。
(自動車道の工事のためにする土地の立入及び使用)
第四十一條 自動車道に関する工事のため必要があるときは、自動車道事業者又は自動車運送事業者は、行政廳の許可を受け、沿道の土地に立ち入り、又はその土地を一時材料置場として使用することができる。
前項の規定により立入又は使用をしようとするときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、予め土地の占有者にその通知をしなければならない。
第一項の規定による立入又は使用に因つて生じた損害は、立入又は使用の後、遅滯なく事業者においてこれを補償しなければならない。
前項の規定に基いて補償すべき損害は、第一項の規定による立入又は使用に因り通常生ずべき損害とする。
第三項の規定による補償について協議が調わないときは、行政廳は、申請に因りこれを裁定する。
前項の規定による裁定に係る補償金額に不服のある者は、裁定のあつたことを知つた日から六箇月以内に、訴を以てその金額の増減を請求することができる。但し、裁定のあつた日から三年を経過したときは、訴を提起することができない。
前項の訴においては、事業者又は補償を受くべき者を被告とする。
(自動車道の供用開始)
第四十二條 自動車道は、主務大臣の認可を受けなければ、その供用を開始してはならない。
(一般自動車道の供用義務)
第四十三條 自動車道事業者は、命令の定める正当な事由のある場合を除いては、一般自動車道の供用を拒絶してはならない。
(事業計画及び工事方法の変更)
第四十四條 自動車道事業者は、事業計画又は一般自動車道の工事方法を変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
(自動車道の構造、設備及び管理)
第四十五條 自動車道の構造、設備及び管理に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(事業改善の命令)
第四十六條 主務大臣は、公共の福祉を確保するため必要があるときは、自動車道事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。
一 事業計画又は一般自動車道の使用料金若しくは工事方法を変更すること。
二 一般自動車道又はその附属物件の改善をすること。
(免許の失効)
第四十七條 左の場合には、自動車道事業の免許は、その効力を失う。
一 第三十九條第一項の期間内に同項の認可を申請しないとき。
二 第三十九條第一項の規定による申請に対し不認可の処分を受けたとき。
三 事業の廃止の許可を受けたとき。
(準用規定)
第四十八條 自動車道事業には、第十六條(運送條件に関する部分に限る。)第二十二條(会計に関する部分に限る。)、第二十七條、第二十八條及び第三十條の規定を準用する。
(自動車道に接続する道路等の造設)
第四十九條 政府又は政府の許可を受けた者が、自動車道に接続し、若しくは接近し、又はこれを横断して道路法による道路、自動車道、橋、川、運河、鉄道、軌道、索道等を造設しようとするときは、自動車道事業者又は自動車運送事業者は、これを拒むことができない。
主務大臣は、前項の場合において、公共の福祉を確保するため必要があると認めるときは、自動車道事業者又は自動車運送事業者に対し、設備の供用又は変更を命ずることができる。
前二項の場合において、その実施方法及び費用の負担につき協議が調わないときは、主務大臣は、申請に因りこれを裁定する。自動車道事業者又は自動車運送事業者が受けた損害の補償についても同樣とする。
第一項及び第二項の場合には、第四十一條第三項及び第四項の規定を、前項の場合には、第四十一條第六項及び第七項の規定を準用する。
第六章 國営自動車運送事業及び國営自動車道事業
(事業の経営)
第五十條 國において自動車運送事業又は自動車道事業を経営しようとするときは、当該官廳は、主務大臣に協議をしなければならない。
國において経営する自動車運送事業及び自動車道事業には、第六條、第十一條、第十二條、第十四條、第十五條、第十七條、第十八條、第二十一條、第二十二條(会計に関する部分に限る。)、第二十三條乃至第二十八條、第三十條、第三十一條、第三十二條第二項、第三十七條乃至第四十條、第四十二條、第四十四條、第四十六條、第四十七條及び第四十八條(第十六條の規定の準用に関する部分を除く。)の規定を適用しない。
(補償)
第五十一條 路線を定める自動車運送事業を國において経営したため、これと路線を共通にする自動車運送事業者が、その部分につき事業を継続することができなくなつたとき、又は著しく收益を減少するようになつたときは、政府は、政令の定めるところにより、その事業者が受けた損失を補償することができる。残存路線のみにつき事業を継続することができなくなつたときも同樣とする。
第七章 自家用自動車の使用
(有償運送の禁止及び賃貸の制限)
第五十二條 自動車運送事業用自動車以外の自動車(以下自家用自動車という。)は、対價を得てこれを運送の用に供してはならない。
自家用自動車は、主務大臣の許可を受けなければ、対價を得てこれを貸し渡してはならない。
(使用の制限及び禁止の処分)
第五十三條 主務大臣は、自家用自動車(命令の定める乘車定員を有する乘用自動車を除く。)の使用がこの法律の目的に照らし適正でないと認めるときは、その使用を制限し、又は禁止することができる。
第八章 車両
(車両の檢査)
第五十四條 自動車及び旅客の運送の用に供する軽車両(以下旅客軽車両という。)は、命令の定めるところにより、使用に適する構造、裝置及び性能を有するかどうかについて、行政廳の檢査を受けなければならない。
行政廳は、前項の檢査の結果車両が使用に適すると認めるときは、命令の定める場合を除いて、車両檢査証を交付し、且つ、車両番号を指定しなければならない。
第一項に規定する車両は、命令の定めるところにより、車両檢査証を備え付け、且つ指定された車両番号を表示したものでなければ、これを使用してはならない。
車両檢査証及び車両番号の指定の有効期間は、命令でこれを定める。
車両檢査証の書換、再交付及び返納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(車両の整備)
第五十五條 自動車及び旅客軽車両については、命令の定める整備をしなければならない。
行政廳は、前項に規定する車両が使用に適しないと認めるときは、必要な整備を命ずることができる。
行政廳は、前項の規定による命令に從わない者に当該車両の使用を制限し、若しくは禁止し、又は車両檢査証の提出若しくは返還を命じ、又は車両番号の指定を取り消すことができる。
(自動車の登録)
第五十六條 自動車を所有する者は、当該自動車につき行政官廳の登録を受けなければならない。
行政官廳は、前項の登録を申請した者が当該自動車の眞正な所有者であると認めるときは、命令の定めるところにより、登録をした後その者に自動車登録証を交付しなければならない。
自動車を運轉するには、当該自動車の自動車登録証を携帶しなければならない。
本條に定めるものの外、登録並びに自動車登録証の書換、再交付及び返納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第九章 罰則
第五十七條 第十一條又は第三十七條の規定に違反して事業を経営した者は、これを一万円以下の罰金に処する。第二十七條第一項又は第二項(第四十八條において準用する場合を含む。)の規定に違反した者も同樣とする。
第五十八條 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第二十八條第一項(第四十八條において準用する場合を含む。)の認可を受けないで事業を讓り渡し、又は讓り受けた者
二 第三十條(第四十八條において準用する場合を含む。)の規定による停止の処分に違反した者
三 第四十二條又は第五十六條第一項の規定に違反した者
第五十九條 左の各号の一に該当する者は、これを三千円以下の罰金、拘留又は科料に処する。
一 第五條の規定により付した條件又はその條件に基いてした処分に違反した者
二 第六條第一項の規定による届出、報告若しくは書類の提出を怠り、又は虚僞の届出若しくは報告をし、若しくは虚僞の記載をした書類を提出した者
三 第六條第二項又は第七條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚僞の陳述をした者
四 第十四條、第十五條第一項、第十九條乃至第二十一條、第二十三條、第二十七條第三項(第四十八條において準用する場合を含む。)、第二十八條第五項(第四十八條において準用する場合を含む。)、第三十三條、第三十八條、第四十三條、第四十四條又は第五十二條の規定に違反した者
五 第十八條第三項(第三十六條において準用する場合を含む。)、第二十四條第一項(第三十六條において準用する場合を含む。)、第二十六條(第三十六條において準用する場合を含む。)、第三十五條、第四十六條、第四十九條第二項又は第五十三條の規定による処分に違反した者
六 第五十四條第五項又は第五十六條第四項の規定に基いて発する命令に違反した者
七 第五十六條第三項の規定に違反した者
第六十條 左の各号の一に該当する者は、これを三箇月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
一 第五十四條第三項の規定に違反した者
二 第五十五條第三項の規定による処分に違反した者
過失に因り前項第一号の罪を犯した者は、これを拘留又は科料に処する。
第六十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務又は所有し、若しくは使用する車両に関し、第五十七條乃至前條(第五十九條第七号を除く。)の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑又は科料刑を科する。
第六十二條 自動車道若しくはその標識を損壞し、又はその他の方法で自動車道における自動車の往來の危險を生ぜしめた者は、これを五年以下の懲役に処する。
前項の未遂罪は、これを罰する。
第六十三條 人の現在する乘合旅客自動車運送事業用自動車を轉覆させ、又は破壞した者は、これを十年以下の懲役に処する。
前項の罰を犯し因つて人を傷つけた者は、これを一年以上の有期懲役に処し、死亡させた者は、これを無期又は三年以上の懲役に処する。
第一項の未遂罪は、これを罰する。
第六十四條 第六十二條の罪を犯し因つて自動車を轉覆させ、又は破壞した者も前條の例による。
第六十五條 過失に因り第六十二條第一項又は第六十三條第一項の罪を犯した者は、これを三百円以下の罰金に処する。その業務に從事する者が犯したときは、これを一年以下の禁錮又は五百円以下の罰金に処する。
第六十六條 左の各号の一に該当する者は、これを五百円以下の罰金に処する。
一 乘合旅客自動車運送事業用自動車の乘務員の職務の執行を妨げた者
二 乘合旅客自動車運送事業用自動車に石類を投げつけた者
第六十七條 道路運送事業者及び自動車道事業者は、左の各号の一に該当するときは、これを三千円以下の過料に処する。
一 第十六條(第四十八條において準用する場合を含む。)の規定による公示をせず、又は虚僞の公示をしたとき。
二 第二十二條(第四十八條において準用する場合を含む。)又は第四十五條の規定に基いて発する命令により許可を受くべき事項をこれを受けないでしたとき。
三 第二十二條(第四十八條において準用する場合を含む。)又は第四十五條の規定に基いて発する命令による届出若しくは報告を怠り、又は虚僞の届出若しくは報告をしたとき。
四 第三十二條第二項又は第三十四條の規定に違反したとき。
附 則
第一條 第一條乃至第三條、第四條第二項乃至第四項及び第六項(第八章に関する部分に限る。)、第六條(車両の所有及び使用に関する部分に限る。)、第七條、第九條、第五十四條乃至第五十六條、第五十九條第二号第三号第六号第七号、第六十條、第六十一條、附則第三條第一項(昭和八年内務省令第二十三号自動車取締令に関する部分に限る。)並びに第四條の規定は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第八條の規定施行の期日は、この法律公布の日から四十五日を超えない期間内において、政令でこれを定める。但し、運賃及び料金に関する法令の立案、制定及び改正についての第八條第十三項第一号の施行の期日は、物價統制令が効力を失う日の翌日とする。
前二項の規定により施行する規定以外の規定は、昭和二十三年三月十五日から、これを施行する。但し、第二十九條中第十四條の規定による処分に関する部分の施行の期日は、物價統制令が効力を失う日の翌日とする。
第二條 自動車交通事業法は、これを廃止する。
第三條 旧法、旧法に基いて発する命令又は昭和八年内務省令第二十三号自動車取締令によりした処分、手続その他の行爲は、この法律中これに相当する規定がある場合には、命令の定めるところにより、この法律によりこれをしたものとみなす。
第三十三條の規定施行の際現に軽車両運送事業を経営する者は、同條の規定施行後三箇月以内に、同條の規定による届出をすれば足りる。
第四條 自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合聯合会は、解散する。
第五條 自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合聯合会の清算及び課税、附則第二條の規定施行の際現に存する自動車交通事業財團並びに同條の規定施行前にした行爲に対する罰則の適用については、旧法は、同條の規定施行後でも、なおその効力を有する。
第六條 陸上交通事業調整法の一部を次のように改正する。
第一條中「旅客自動車運輸事業」を「路線ヲ定ムル一般乘合旅客自動車運送事業」に改める。
第九條中「自動車交通事業法」を「道路運送法」に改める。
第七條 國有鉄道事業特別会計法の一部を次のように改正する。
第八條第一項第三号中「旅客自動車運輸事業又は事業区間を定める貨物」を削る。
第八條 商工組合中央金庫法の一部を次のように改正する。
第一條第一項中「、貿易組合聯合会、自動車運送事業組合及自動車運送事業組合聯合会」を「及貿易組合聯合会」に改める。
第三條第一項中「自動車運送事業組合聯合会、」を削り、同條第三項及び第四項中「、貿易組合聯合会又ハ自動車運送事業組合聯合会」を「又ハ貿易組合聯合会」に改める。
第七條第一項中「、貿易組合聯合会、自動車運送事業組合又ハ自動車運送事業組合聯合会」を「又ハ貿易組合聯合会」に改める。
第二十七條第一項但書中「、貿易組合及自動車運送事業組合」を「及貿易組合」に改める。
第二十八條第一項第六号及び第二十九條第一項第三号中「、自動車運送事業組合、自動車運送事業組合聯合会」を削る。
第九條 登録税法第十九條第七号中「自動車運送事業組合、自動車運送事業組合聯合会、」及び「自動車交通事業法、」を削る。
清算中の自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合聯合会の課税については、なお從前の例による。
第十條 第八條の規定施行後最初にその地位に就く道路運送委員会の委員の任期は、政令の定めるところにより、これを二年未満に短縮することができる。
内閣総理大臣 片山哲
内務大臣 木村小左衞門
大藏大臣 栗栖赳夫
運輸大臣 北村徳太郎
道路運送法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十六日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百九十一号
道路運送法目次
第一章
総則
第二章
監理
第三章
自動車運送事業
第四章
軽車両運送事業
第五章
自動車道及び自動車道事業
第六章
国営自動車運送事業及び国営自動車道事業
第七章
自家用自動車の使用
第八章
車両
第九章
罰則
附則
道路運送法
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、道路運送に関する秩序の確立及び事業の健全な発達並びに車両の整備及び使用の適正化を図り、以て道路運送における公共の福祉を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で、道路運送事業とは、自動車運送事業及び軽車両運送事業をいい、自動車運送事業とは、他人の需用に応じ自動車を使用して旅客又は物品を運送する事業をいい、軽車両運送事業とは、他人の需用に応じ軽車両を使用して旅客又は物品を運送する事業をいう。
この法律で、車両とは、自動車及び軽車両をいい、自動車とは、原動機により道路上を運行する用具で命令の定めるものをいい、軽車両とは、人力又は畜力により道路上を運行する用具で命令の定めるものをいい、道路とは、道路法による道路並びに自動車道及び一般交通の用に供する場所をいう。
この法律で自動車道事業とは、一般自動車道を開設し、これを専ら自動車の一般交通の用に供する事業をいう。
この法律で、自動車道とは、専ら自動車の一般交通の用に供する通路(一般自動車道)及び自動車運送事業者が専らその事業用自動車の用に供する通路(専用自動車道)をいう。
第二章 監理
(行政庁)
第三条 行政庁は、この法律の規定するところに従い、道路運送に関し、第一条の目的を達成するため必要な監理をする。
第四条 この法律中主務大臣とあるのは、自動車道事業に関しては運輸大臣及び内務大臣、その他に関してはこの法律に別段の定のある場合を除いて、運輸大臣とする。
この法律において行政官庁の職権に属させた事項の一部で都府県の区域内又は政令の定める道内の区域内におけるものを掌理させるため、都府県庁の所在地、札幌市、函館市、室蘭市、帯広市、釧路市、北見市及び旭川市に道路運送監理事務所を置く。
前項の道路運送監理事務所中特定の道路運送監理事務所は、前項に規定する事項の外、政令の定めるところにより、この法律において行政官庁の職権に属させた事項の一部で一定の区域内における二以上の都府県の区域又は二以上の前項に規定する政令の定める道内の区域にわたるものその他の事項を掌理することができる。
前二項に規定するものの外、道路運送監理事務所に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
この法律に規定する主務大臣の職権の一部は、政令の定めるところにより、左の各号の区分に従い、各ゝその号に定める下級の行政庁に委任することができる。
一 第三章及び第七章に規定する職権については道路運送監理事務所長
二 第五章に規定する職権については道路運送監理事務所長及び都道府県知事
第四章、第五章及び第八章に規定する行政庁は、政令の定める場合を除いて、左の各号に定める区分による。
一 貨物軽車両運送事業に関する事項及び自動車に関する第八章に規定する事項については道路運送監理事務所長
二 旅客軽車両運送事業に関する事項及び旅客軽車両に関する第八章に規定する事項については都の区の長又は市町村長
三 自動車道の工事のためにする土地の立入及び使用に関する事項については都道府県知事
(免許等の条件)
第五条 免許、許可又は認可には、条件を附することができる。
前項の条件は、公共の福祉を確保するため必要があるときは、これを変更することができる。
(調査及び臨検検査)
第六条 当該行政庁は、必要があると認めるときは、道路運送事業者その他車両を所有し、若しくは使用する者、自動車道事業者又はこれらの者の組織する団体に、事業又は車両の所有若しくは使用に関し、届出をさせ、報告をさせ、又は書類を提出させることができる。
当該行政庁は、必要があると認めるときは、当該官吏吏員に事業場その他の場所に臨検し、事業若しくは車両の所有若しくは使用の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させ、又は質問をさせることができる。
前項の場合には、当該官吏吏員は、その身分を示す証票を携帯しなければならない。
(車両検査官)
第七条 当該行政庁は、所部の官吏吏員の中から車両検査官を命じ、第八章の規定による職権の行使を補助させることができる。
車両検査官は、必要があると認めるときは、車庫その他車両の所在すると認める場所に臨検し、車両を検査し、又は質問をすることができる。
前項の場合には、車両検査官は、その身分を示す証票を携帯しなければならない。
(道路運送委員会)
第八条 この法律の適正な運用を図るため、道路運送委員会を置く。
道路運送委員会は、中央道路運送委員会及び地方道路運送委員会とし、地方道路運送委員会は、第四条第三項に規定する一定区域ごとにこれを置く。
中央道路運送委員会は、委員九人を以て、地方道路運送委員会は、委員若干人を以てこれを組織する。
道路運送委員会に委員の互選による委員長を置く。
中央道路運送委員会の委員は、地方道路運送委員会の委員長を以てこれに充て、地方道路運送委員会の委員は、各都道府県知事の推薦に基く運輸大臣の申出により、内閣総理大臣が、これを命ずる。
前項の各都道府県知事の推薦すべき人員は、都府県にあつては二人、北海道にあつては若干人とする。
官吏又は吏員であつた者は、その退職後一年間は道路運送委員会の委員となることができない。
道路運送委員会の委員の任期は、三年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。但し、再任されることを防げない。
道路運送委員会の委員は、在職中道路運送委員会の承認及び運輸大臣の同意のある場合を除く外、報酬のある他の職務に従事し、又は商業を営みその他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。
道路運送委員会の委員が現に経営中の道路運送事業につき著しい経済的な利害関係を有し、又は道路運送事業に関し他の者と競争的若しくは対立的立場にあると認められる場合において、当該道路運送委員会においてその委員を罷免すべき旨の議決をしたときは、運輸大臣の申出により、内閣総理大臣が、これを解任する。
道路運送委員会の委員が心身の故障のため職務を執ることができず、又はその職務を怠り、若しくはその職務に対し不正の行為をしたと認められる場合において、当該道路運送委員会においてその委員を罷免すべき旨の議決をしたときは、運輸大臣の申出により、内閣総理大臣が、これを解任する。
道路運送委員会の委員の報酬及び旅費については、命令でこれを定める。
行政官庁は、左の事項で重要なものは、道路運送委員会の意見を徴し、その意見を尊重してこれをしなければならない。
一 この法律を改正する法律案及びこの法律に基く政令案の立案並びにこの法律に基く命令の制定及び改正
二 自動車運送事業の免許に関する基準の設定及び変更
三 自動車運送事業の免許
四 自動車運送事業の停止及び免許の取消
五 自動車運送事業に係る第五十条第一項の協議に対する承諾
道路運送委員会は、道路運送の改善に関し、関係行政庁に建議をすることができる。
道路運送委員会は、その職務を行うため必要があるときは、公務所又は道路運送事業者若しくはその組織する団体その他の関係者に対し、必要な報告、情報又は資料を求めることができる。
道路運送委員会は、その職務を行うため必要があるときは、公務所、道路運送事業者若しくはその組織する団体又は学識経験のある者に必要な調査を嘱託することができる。
道路運送委員会は、第十三項の規定による職務を行うには、事件関係人又は参考人に対し、出頭を求めてその意見又は報告を徴しなければならない。
この法律に規定するものの外、道路運送委員会の組織、運用その他道路運送委員会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
(訴願)
第九条 この法律又はこの法律に基いて発する命令に規定する事項につき行政庁のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
第三章 自動車運送事業
(自動車運送事業の種類)
第十条 自動車運送事業の種類は、左に掲げるものとする。
一 一般自動車運送事業(特定自動車運送事業以外の自動車運送事業)
一 一般乗合旅客自動車運送事業
二 一般貸切旅客自動車運送事業
三 一般積合貨物自動車運送事業
四 一般貸切貨物自動車運送事業
二 特定自動車運送事業(特定の者の需用に応じ特定の旅客又は物品を運送する自動車運送事業)
一 特定乗合旅客自動車運送事業
二 特定貸切旅客自動車運送事業
三 特定積合貨物自動車運送事業
四 特定貸切貨物自動車運送事業
(免許)
第十一条 自動車運送事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、事業計画を定め、主務大臣の免許を受けなければならない。
前項の免許は、前条に掲げる種類ごとに、これを受けなければならない。
(免許基準)
第十二条 主務大臣は、自動車運送事業の免許に関し妥当な基準を定め、これを公示しなければならない。
主務大臣は、前項の基準に適合する申請があつたときは、左の場合を除いては、事業の免許をしなければならない。
一 事業を経営しようとする者が一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられた者でその執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しないものであるとき。
二 事業を経営しようとする者が事業の免許の取消を受けた者でその取消の日から二年を経過しないものであるとき。
三 事業を経営しようとする者が破産の宣告を受け復権を得ない者であるとき。
四 事業を経営しようとする者が法人である場合において、その法人の役員に前三号の一に掲げる事由のあるとき。
五 事業を経営しようとする者の資力信用が不充分なため事業の確実な経営が著しく困難であると認められるとき。
六 当該事業の経営に因り公共の福祉に反する結果を生ずるような競争がひきおこされる虞のあるとき。
(物品の附随運送)
第十三条 旅客自動車運送事業者は、命令の定めるところにより、旅客の運送に附随して物品を運送することができる。
(運賃及び料金)
第十四条 自動車運送事業の運賃及び料金については、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。
(運送約款)
第十五条 貨物自動車運送事業者は、命令の定めるところにより、運送約款を定め、主務大臣の認可を受けなければならない。
運送約款においては、少くとも運賃、料金その他の運送条件及び運送に関する事業者の責任に関する事項を定めなければならない。
(運送条件及び運送約款の公示)
第十六条 運賃、料金その他の運送条件及び運送約款は、命令の定めるところにより、これを公示しなければならない。
(運輸開始)
第十七条 自動車運送事業の免許を受けた者は、主務大臣の指定する期間内に運輸を開始しなければならない。
専用自動車道を開設して自動車運送事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、工事方法を定め、主務大臣の指定する期間内に工事施行の認可を申請しなければならない。
天災その他やむを得ない事由に因り、第一項の期間内に運輸を開始することができないとき、又は前項の期間内に同項の認可を申請することができないときは、主務大臣は、申請に因り期間を伸長することができる。
(公共の福祉に反する行為の禁止)
第十八条 自動車運送事業者は、事業計画に定める自動車の運行を怠り、不当な運送条件によることを求めその他公共の福祉に反する行為をしてはならない。
自動車運送事業者は、自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない。
主務大臣は、前二項に規定する行為があるときは、自動車運送事業者に対し、当該行為の取止その他公共の福祉を確保するため必要な措置を命ずることができる。
(運送引受義務)
第十九条 自動車運送事業者は、左の場合を除いては、運送の引受を拒絶してはならない。
一 当該運送に関し旅客又は荷送人から特別な負担を求められたとき。
二 当該運送が法令の規定、公の秩序又は善良の風俗に反するとき。
三 天災その他やむを得ない事由に因る運送上の支障のあるとき。
四 前各号に掲げる場合を除いて、命令の定める正当な事由のあるとき。
(物品運送の順序)
第二十条 物品の運送は、その申込の順序により、これをしなければならない。但し、正当な事由があるときは、この限りでない。
(事業計画等の変更)
第二十一条 自動車運送事業者は、事業計画、運送約款又は専用自動車道の工事方法を変更しようとするときは、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。
(運輸及び会計)
第二十二条 自動車運送事業における自動車の使用、運輸施設の整備その他運輸に関し必要な事項及び経理の合理化、帳簿書類の整理保存その他会計に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(運輸に関する協定)
第二十三条 自動車運送事業者は、他の運送事業者若しくは小運送業者と連絡運輸若しくは共同経営に関する契約その他運輸に関する協定をし、又はこれを変更するには、主務大臣の認可を受けなければならない。
(事業改善の命令)
第二十四条 主務大臣は、公共の福祉を確保するため必要があるときは、自動車運送事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。
一 事業計画、運賃、料金その他の運送条件、運送約款又は専用自動車道の工事方法を変更すること。
二 他の運送事業者又は小運送業者と設備の共用、連絡運輸、共同経営又は運輸に関する協定をすること。
三 旅客又は物品の運送に関する損害につき保険に付すること。
四 前各号に掲げるものを除いて、事業の改善をすること。
前項第二号の場合において、その実施方法又は各事業者が収得し、若しくは負担すべき金額につき協議が調わないときは、主務大臣は、申請に因りこれを裁定する。
前項の規定による裁定に係る金額に不服のある者は、他の事業者に対し、裁定のあつたことを知つた日から六箇月以内に、訴を以てその金額の増減を請求することができる。但し、裁定のあつた日から三年を経過したときは、訴を提起することができない。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)
第二十五条 第二十三条の認可を受けて行う正当な行為及び前条第一項(他の運送事業者又は小運送業者との連絡運輸、共同経営及び運輸に関する協定に関する部分に限る。)の規定による命令によつて行う正当な行為には、昭和二十二年法律第五十四号の規定を適用しない。
(運送に関する命令)
第二十六条 主務大臣は、旅客又は物品の運送を確保するため必要があるときは、自動車運送事業者に対し、運送すべき旅客若しくは物品及び運送条件を定めてその運送を命じ、又は旅客若しくは物品を定めてその運送を制限し、若しくは禁止することができる。
主務大臣は、旅客又は物品の運送を確保するため必要があるときは、自動車運送事業者に対し、旅客又は物品の運送の順序を定めて、これによるべきことを命ずることができる。
(名義の利用、事業及び車両の貸借並びに事業の管理の受委託)
第二十七条 自動車運送事業者の名義は、自動車運送事業を経営するため、他人がこれを利用し、又は他人にこれを利用させてはならない。
自動車運送事業は、これを貸借してはならない。
自動車運送事業の管理の委託及び受託並びに自動車運送事業用自動車の貸渡については、主務大臣の許可を受けなければならない。
前項の管理の委託及び受託に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(事業の譲渡等)
第二十八条 自動車運送事業の譲渡は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
自動車運送事業を経営する会社の合併又は解散に関する株主総会若しくは社員総会の決議若しくは総社員の同意は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
自動車運送事業を経営する会社の合併があつたときは、合併後存続する会社又は合併に因り設立された会社は、免許に基く権利義務を承継する。
自動車運送事業者が死亡したときは、相続人は、免許に基く権利義務を承継する。
自動車運送事業者は、主務大臣の許可を受けなければ、その事業の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
(地方公共団体の区域内における乗合旅客自動車運送事業)
第二十九条 主務大臣は、事業区域が東京都の区の存する区域内又は政令の定める市の区域内に限られる乗合旅客自動車運送事業につき第十一条、第十四条、第二十一条、第二十三条、第二十七条第三項又は前条第一項、第二項若しくは第五項の規定による処分をするには、都知事又は当該市長の意見を徴しなければならない。
(事業の停止及び免許の取消)
第三十条 自動車運送事業者が左の各号の一に該当するときは、主務大臣は、自動車運送事業の全部若しくは一部の停止を命じ、又は免許の全部若しくは一部を取り消すことができる。
一 この法律、この法律に基く命令若しくは処分又は免許、許可若しくは認可に附した条件に違反したとき。
二 許可又は認可を受けた事項を故なく実施しないとき。
三 前二号の場合を除いて、公共の福祉に反する行為をしたとき。
四 事業経営の不確実又は資産状態の著しい不良その他の事由に因り事業を継続するのに適しないとき。
(免許の失効)
第三十一条 左の場合には、自動車運送事業の免許は、その効力を失う。
一 第十七条第一項の期間内に運輸を開始しないとき。
二 第十七条第二項の期間内に同項の認可を申請しないとき。
三 第十七条第二項の規定による申請に対し不認可の処分を受けたとき。
四 事業の廃止の許可を受けたとき。
(特定自動車運送事業)
第三十二条 特定自動車運送事業には、第十五条乃至第十七条、第十九条、第二十条、第二十一条(事業計画に関する部分を除く。)、第二十八条第五項及び前条の規定を適用しない。
特定自動車運送事業者は、その事業を休止し、又は廃止したときは、遅滞なくこれを主務大臣に届け出なければならない。この場合においては、免許は、事業の廃止の届出があつた時にその効力を失う。
第四章 軽車両運送事業
(事業に関する届出)
第三十三条 軽車両運送事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、事業計画を具えて行政庁に届け出なければならない。事業計画を変更しようとするときも同様とする。
第三十四条 軽車両運送事業者は、左の場合には、命令の定めるところにより、遅滞なくこれを行政庁に届け出なければならない。
一 他の運送事業者と連絡運輸若しくは共同経営に関する契約その他運輸に関する協定をし、又はこれを変更したとき。
二 事業を譲り受けたとき。
三 会社の合併又は解散があつたとき。
四 相続に因る事業の承継があつたとき。
五 事業を休止し、又は廃止したとき。
(事業停止の命令)
第三十五条 軽車両運送事業者が公共の福祉に反する行為をしたときは、行政庁は、命令の定めるところにより、その事業の停止を命ずることができる。
(準用規定)
第三十六条 軽車両運送事業には、第十八条及び第二十四条乃至第二十六条の規定を準用する。この場合において、これらの規定中「主務大臣」とあるのは、「行政庁」と読み替えるものとする。
第五章 自動車道及び自動車道事業
(免許)
第三十七条 自動車道事業を経営しようとする者は、命令の定めるところにより、事業計画を定め、主務大臣の免許を受けなければならない。
(一般自動車道の使用料金)
第三十八条 一般自動車道の使用料金については、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。
(一般自動車道の工事)
第三十九条 自動車道事業の免許を受けた者は、一般自動車道の工事を必要とするときは、工事方法を定め、主務大臣の指定する期間内に工事施行の認可を申請しなければならない。
天災その他やむを得ない事由に因り前項の期間内に認可を申請することができないときは、主務大臣は、申請に因り期間を伸長することができる。
第四十条 自動車道事業者は、工事施行の認可を受けたときは、主務大臣の指定する期間内に、一般自動車道の工事に着手し、これを完成しなければならない。
前項の期間の伸長には、前条第二項の規定を準用する。
(自動車道の工事のためにする土地の立入及び使用)
第四十一条 自動車道に関する工事のため必要があるときは、自動車道事業者又は自動車運送事業者は、行政庁の許可を受け、沿道の土地に立ち入り、又はその土地を一時材料置場として使用することができる。
前項の規定により立入又は使用をしようとするときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、予め土地の占有者にその通知をしなければならない。
第一項の規定による立入又は使用に因つて生じた損害は、立入又は使用の後、遅滞なく事業者においてこれを補償しなければならない。
前項の規定に基いて補償すべき損害は、第一項の規定による立入又は使用に因り通常生ずべき損害とする。
第三項の規定による補償について協議が調わないときは、行政庁は、申請に因りこれを裁定する。
前項の規定による裁定に係る補償金額に不服のある者は、裁定のあつたことを知つた日から六箇月以内に、訴を以てその金額の増減を請求することができる。但し、裁定のあつた日から三年を経過したときは、訴を提起することができない。
前項の訴においては、事業者又は補償を受くべき者を被告とする。
(自動車道の供用開始)
第四十二条 自動車道は、主務大臣の認可を受けなければ、その供用を開始してはならない。
(一般自動車道の供用義務)
第四十三条 自動車道事業者は、命令の定める正当な事由のある場合を除いては、一般自動車道の供用を拒絶してはならない。
(事業計画及び工事方法の変更)
第四十四条 自動車道事業者は、事業計画又は一般自動車道の工事方法を変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
(自動車道の構造、設備及び管理)
第四十五条 自動車道の構造、設備及び管理に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(事業改善の命令)
第四十六条 主務大臣は、公共の福祉を確保するため必要があるときは、自動車道事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。
一 事業計画又は一般自動車道の使用料金若しくは工事方法を変更すること。
二 一般自動車道又はその附属物件の改善をすること。
(免許の失効)
第四十七条 左の場合には、自動車道事業の免許は、その効力を失う。
一 第三十九条第一項の期間内に同項の認可を申請しないとき。
二 第三十九条第一項の規定による申請に対し不認可の処分を受けたとき。
三 事業の廃止の許可を受けたとき。
(準用規定)
第四十八条 自動車道事業には、第十六条(運送条件に関する部分に限る。)第二十二条(会計に関する部分に限る。)、第二十七条、第二十八条及び第三十条の規定を準用する。
(自動車道に接続する道路等の造設)
第四十九条 政府又は政府の許可を受けた者が、自動車道に接続し、若しくは接近し、又はこれを横断して道路法による道路、自動車道、橋、川、運河、鉄道、軌道、索道等を造設しようとするときは、自動車道事業者又は自動車運送事業者は、これを拒むことができない。
主務大臣は、前項の場合において、公共の福祉を確保するため必要があると認めるときは、自動車道事業者又は自動車運送事業者に対し、設備の供用又は変更を命ずることができる。
前二項の場合において、その実施方法及び費用の負担につき協議が調わないときは、主務大臣は、申請に因りこれを裁定する。自動車道事業者又は自動車運送事業者が受けた損害の補償についても同様とする。
第一項及び第二項の場合には、第四十一条第三項及び第四項の規定を、前項の場合には、第四十一条第六項及び第七項の規定を準用する。
第六章 国営自動車運送事業及び国営自動車道事業
(事業の経営)
第五十条 国において自動車運送事業又は自動車道事業を経営しようとするときは、当該官庁は、主務大臣に協議をしなければならない。
国において経営する自動車運送事業及び自動車道事業には、第六条、第十一条、第十二条、第十四条、第十五条、第十七条、第十八条、第二十一条、第二十二条(会計に関する部分に限る。)、第二十三条乃至第二十八条、第三十条、第三十一条、第三十二条第二項、第三十七条乃至第四十条、第四十二条、第四十四条、第四十六条、第四十七条及び第四十八条(第十六条の規定の準用に関する部分を除く。)の規定を適用しない。
(補償)
第五十一条 路線を定める自動車運送事業を国において経営したため、これと路線を共通にする自動車運送事業者が、その部分につき事業を継続することができなくなつたとき、又は著しく収益を減少するようになつたときは、政府は、政令の定めるところにより、その事業者が受けた損失を補償することができる。残存路線のみにつき事業を継続することができなくなつたときも同様とする。
第七章 自家用自動車の使用
(有償運送の禁止及び賃貸の制限)
第五十二条 自動車運送事業用自動車以外の自動車(以下自家用自動車という。)は、対価を得てこれを運送の用に供してはならない。
自家用自動車は、主務大臣の許可を受けなければ、対価を得てこれを貸し渡してはならない。
(使用の制限及び禁止の処分)
第五十三条 主務大臣は、自家用自動車(命令の定める乗車定員を有する乗用自動車を除く。)の使用がこの法律の目的に照らし適正でないと認めるときは、その使用を制限し、又は禁止することができる。
第八章 車両
(車両の検査)
第五十四条 自動車及び旅客の運送の用に供する軽車両(以下旅客軽車両という。)は、命令の定めるところにより、使用に適する構造、装置及び性能を有するかどうかについて、行政庁の検査を受けなければならない。
行政庁は、前項の検査の結果車両が使用に適すると認めるときは、命令の定める場合を除いて、車両検査証を交付し、且つ、車両番号を指定しなければならない。
第一項に規定する車両は、命令の定めるところにより、車両検査証を備え付け、且つ指定された車両番号を表示したものでなければ、これを使用してはならない。
車両検査証及び車両番号の指定の有効期間は、命令でこれを定める。
車両検査証の書換、再交付及び返納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(車両の整備)
第五十五条 自動車及び旅客軽車両については、命令の定める整備をしなければならない。
行政庁は、前項に規定する車両が使用に適しないと認めるときは、必要な整備を命ずることができる。
行政庁は、前項の規定による命令に従わない者に当該車両の使用を制限し、若しくは禁止し、又は車両検査証の提出若しくは返還を命じ、又は車両番号の指定を取り消すことができる。
(自動車の登録)
第五十六条 自動車を所有する者は、当該自動車につき行政官庁の登録を受けなければならない。
行政官庁は、前項の登録を申請した者が当該自動車の真正な所有者であると認めるときは、命令の定めるところにより、登録をした後その者に自動車登録証を交付しなければならない。
自動車を運転するには、当該自動車の自動車登録証を携帯しなければならない。
本条に定めるものの外、登録並びに自動車登録証の書換、再交付及び返納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第九章 罰則
第五十七条 第十一条又は第三十七条の規定に違反して事業を経営した者は、これを一万円以下の罰金に処する。第二十七条第一項又は第二項(第四十八条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者も同様とする。
第五十八条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第二十八条第一項(第四十八条において準用する場合を含む。)の認可を受けないで事業を譲り渡し、又は譲り受けた者
二 第三十条(第四十八条において準用する場合を含む。)の規定による停止の処分に違反した者
三 第四十二条又は第五十六条第一項の規定に違反した者
第五十九条 左の各号の一に該当する者は、これを三千円以下の罰金、拘留又は科料に処する。
一 第五条の規定により付した条件又はその条件に基いてした処分に違反した者
二 第六条第一項の規定による届出、報告若しくは書類の提出を怠り、又は虚偽の届出若しくは報告をし、若しくは虚偽の記載をした書類を提出した者
三 第六条第二項又は第七条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
四 第十四条、第十五条第一項、第十九条乃至第二十一条、第二十三条、第二十七条第三項(第四十八条において準用する場合を含む。)、第二十八条第五項(第四十八条において準用する場合を含む。)、第三十三条、第三十八条、第四十三条、第四十四条又は第五十二条の規定に違反した者
五 第十八条第三項(第三十六条において準用する場合を含む。)、第二十四条第一項(第三十六条において準用する場合を含む。)、第二十六条(第三十六条において準用する場合を含む。)、第三十五条、第四十六条、第四十九条第二項又は第五十三条の規定による処分に違反した者
六 第五十四条第五項又は第五十六条第四項の規定に基いて発する命令に違反した者
七 第五十六条第三項の規定に違反した者
第六十条 左の各号の一に該当する者は、これを三箇月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
一 第五十四条第三項の規定に違反した者
二 第五十五条第三項の規定による処分に違反した者
過失に因り前項第一号の罪を犯した者は、これを拘留又は科料に処する。
第六十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は所有し、若しくは使用する車両に関し、第五十七条乃至前条(第五十九条第七号を除く。)の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑又は科料刑を科する。
第六十二条 自動車道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法で自動車道における自動車の往来の危険を生ぜしめた者は、これを五年以下の懲役に処する。
前項の未遂罪は、これを罰する。
第六十三条 人の現在する乗合旅客自動車運送事業用自動車を転覆させ、又は破壊した者は、これを十年以下の懲役に処する。
前項の罰を犯し因つて人を傷つけた者は、これを一年以上の有期懲役に処し、死亡させた者は、これを無期又は三年以上の懲役に処する。
第一項の未遂罪は、これを罰する。
第六十四条 第六十二条の罪を犯し因つて自動車を転覆させ、又は破壊した者も前条の例による。
第六十五条 過失に因り第六十二条第一項又は第六十三条第一項の罪を犯した者は、これを三百円以下の罰金に処する。その業務に従事する者が犯したときは、これを一年以下の禁錮又は五百円以下の罰金に処する。
第六十六条 左の各号の一に該当する者は、これを五百円以下の罰金に処する。
一 乗合旅客自動車運送事業用自動車の乗務員の職務の執行を妨げた者
二 乗合旅客自動車運送事業用自動車に石類を投げつけた者
第六十七条 道路運送事業者及び自動車道事業者は、左の各号の一に該当するときは、これを三千円以下の過料に処する。
一 第十六条(第四十八条において準用する場合を含む。)の規定による公示をせず、又は虚偽の公示をしたとき。
二 第二十二条(第四十八条において準用する場合を含む。)又は第四十五条の規定に基いて発する命令により許可を受くべき事項をこれを受けないでしたとき。
三 第二十二条(第四十八条において準用する場合を含む。)又は第四十五条の規定に基いて発する命令による届出若しくは報告を怠り、又は虚偽の届出若しくは報告をしたとき。
四 第三十二条第二項又は第三十四条の規定に違反したとき。
附 則
第一条 第一条乃至第三条、第四条第二項乃至第四項及び第六項(第八章に関する部分に限る。)、第六条(車両の所有及び使用に関する部分に限る。)、第七条、第九条、第五十四条乃至第五十六条、第五十九条第二号第三号第六号第七号、第六十条、第六十一条、附則第三条第一項(昭和八年内務省令第二十三号自動車取締令に関する部分に限る。)並びに第四条の規定は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第八条の規定施行の期日は、この法律公布の日から四十五日を超えない期間内において、政令でこれを定める。但し、運賃及び料金に関する法令の立案、制定及び改正についての第八条第十三項第一号の施行の期日は、物価統制令が効力を失う日の翌日とする。
前二項の規定により施行する規定以外の規定は、昭和二十三年三月十五日から、これを施行する。但し、第二十九条中第十四条の規定による処分に関する部分の施行の期日は、物価統制令が効力を失う日の翌日とする。
第二条 自動車交通事業法は、これを廃止する。
第三条 旧法、旧法に基いて発する命令又は昭和八年内務省令第二十三号自動車取締令によりした処分、手続その他の行為は、この法律中これに相当する規定がある場合には、命令の定めるところにより、この法律によりこれをしたものとみなす。
第三十三条の規定施行の際現に軽車両運送事業を経営する者は、同条の規定施行後三箇月以内に、同条の規定による届出をすれば足りる。
第四条 自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合連合会は、解散する。
第五条 自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合連合会の清算及び課税、附則第二条の規定施行の際現に存する自動車交通事業財団並びに同条の規定施行前にした行為に対する罰則の適用については、旧法は、同条の規定施行後でも、なおその効力を有する。
第六条 陸上交通事業調整法の一部を次のように改正する。
第一条中「旅客自動車運輸事業」を「路線ヲ定ムル一般乗合旅客自動車運送事業」に改める。
第九条中「自動車交通事業法」を「道路運送法」に改める。
第七条 国有鉄道事業特別会計法の一部を次のように改正する。
第八条第一項第三号中「旅客自動車運輸事業又は事業区間を定める貨物」を削る。
第八条 商工組合中央金庫法の一部を次のように改正する。
第一条第一項中「、貿易組合連合会、自動車運送事業組合及自動車運送事業組合連合会」を「及貿易組合連合会」に改める。
第三条第一項中「自動車運送事業組合連合会、」を削り、同条第三項及び第四項中「、貿易組合連合会又ハ自動車運送事業組合連合会」を「又ハ貿易組合連合会」に改める。
第七条第一項中「、貿易組合連合会、自動車運送事業組合又ハ自動車運送事業組合連合会」を「又ハ貿易組合連合会」に改める。
第二十七条第一項但書中「、貿易組合及自動車運送事業組合」を「及貿易組合」に改める。
第二十八条第一項第六号及び第二十九条第一項第三号中「、自動車運送事業組合、自動車運送事業組合連合会」を削る。
第九条 登録税法第十九条第七号中「自動車運送事業組合、自動車運送事業組合連合会、」及び「自動車交通事業法、」を削る。
清算中の自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合連合会の課税については、なお従前の例による。
第十条 第八条の規定施行後最初にその地位に就く道路運送委員会の委員の任期は、政令の定めるところにより、これを二年未満に短縮することができる。
内閣総理大臣 片山哲
内務大臣 木村小左衛門
大蔵大臣 栗栖赳夫
運輸大臣 北村徳太郎