第一條 本法ハ國民食糧ノ確保及國民經濟ノ安定ヲ圖ル爲食糧ヲ管理シ其ノ需給及價格ノ調整竝ニ配給ノ統制ヲ行フコトヲ目的トス
第二條 本法ニ於テ主要食糧トハ米穀、大麥、稞麥、小麥其ノ他勅令ヲ以テ定ムル食糧ヲ謂フ
第三條 米穀、大麥、稞麥又ハ小麥(以下米麥ト稱ス)ノ生產者又ハ土地ニ付權利ヲ有シ小作料トシテ之ヲ受クル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生產シ又ハ小作料トシテ受ケタル米麥ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ買渡スベシ
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ價格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ生產費及物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第四條 政府ハ其ノ買入レタル米麥ヲ食糧營團又ハ政府ノ指定スル者ニ賣渡スモノトス
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ賣渡ノ價格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第五條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ米麥以外ノ主要食糧ノ買入又ハ賣渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第六條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ主要食糧ノ輸入若ハ移入ヲ目的トスル買入又ハ輸出若ハ移出ヲ目的トスル賣渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ政府之ヲ定ム
第七條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ貸付又ハ交付ヲ爲スコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ主要食糧ノ貯藏、交換、加工又ハ製造ヲ爲スコトヲ得
第八條 第三條第一項ノ者ハ同項ノ規定ニ依リ其ノ者ガ政府ニ賣渡スベキ米麥ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ檢査ヲ受クベシ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ檢査ノ外勅令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ニ付檢査ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
第九條 政府ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ配給、加工、製造、讓渡其ノ他ノ處分、使用、消費、保管及移動ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十條 政府ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ價格、加工賃又ハ製造ノ料金ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十一條 米麥ノ輸出若ハ移出又ハ輸入若ハ移入ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケ米麥ヲ輸入又ハ移入シタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ輸入又ハ移入シタル米麥ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ賣渡スベシ
政府ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ米麥以外ノ主要食糧ノ輸出若ハ移出又ハ輸入若ハ移入ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ得
第十二條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ主要食糧ノ輸入稅ヲ增減又ハ免除スルコトヲ得
第十三條 主要食糧ノ生產費、生產高、現在高及移動ノ調査、家計費ノ調査其ノ他主要食糧ノ管理ヲ行フ爲必要ナル調査ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ調査ヲ行フ爲必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏若ハ吏員ヲシテ必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
食糧營團ニ非ザル者ハ食糧營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第十五條 中央食糧營團ハ政府ノ定ムル食糧配給計畫ニ基キ主要食糧ヲ配給スルト共ニ政府ノ指定スル食糧ヲ貯藏スル爲必要ナル事業ヲ行フコトヲ目的トス
中央食糧營團ハ政府ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第十六條 中央食糧營團ノ資本金ハ一億圓トシ之ヲ二百萬口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ五十圓トス但シ資本金ハ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
政府ノ引受ケタル出資ノ出資金拂込ハ其ノ他ノ出資ノ出資金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第十七條 中央食糧營團ハ定款ヲ以テ出資者ノ資格ヲ制限スルコトヲ得
第十八條 中央食糧營團ニ總裁副總裁各一人、理事五人以上、監事三人以上及評議員若干人ヲ置キ政府之ヲ命ズ
第十九條 中央食糧營團ハ左ノ事業ヲ行フモノトス
二 地方食糧營團又ハ政府ノ指定スル者ニ對スル主要食糧ノ賣渡
六 前各號ノ外中央食糧營團ノ目的達成上必要ナル事業
中央食糧營團前項第五號又ハ第六號ノ事業ヲ行ハントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
中央食糧營團ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ廢止シ又ハ休止スルコトヲ得ズ
第二十條 政府ハ中央食糧營團ニ對シ主要食糧ノ配給上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ジ其ノ他業務ニ關シ公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 中央食糧營團ハ政府ノ許可ヲ受ケ其ノ寄託ヲ受ケタル物ニ付倉荷證券ヲ發行スルコトヲ得
商業組合法第三條ノ六第二項第三項、第三條ノ七、第三條ノ八第一項第二項本文及第三條ノ九ノ規定ハ前項ノ倉荷證券ニ付之ヲ準用ス但シ同法第三條ノ七、第三條ノ八第一項及第三條ノ九中商業組合倉庫證券トアルハ食糧營團倉庫證券トス
第二十二條 中央食糧營團ハ拂込資本金額ノ五倍ヲ限リ食糧營團債券ヲ發行スルコトヲ得
第二十三條 中央食糧營團ハ販賣ノ目的ヲ以テ買入ルル者ニ主要食糧ヲ賣渡ストキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ主要食糧ノ販賣ニ關シ必要ナル事項ヲ指示スルコトヲ得
政府ハ主要食糧ノ配給上特ニ必要アリト認ムルトキハ前項ノ者ニ對シ同項ノ指示ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十四條 中央食糧營團ノ解散及淸算ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條 地方食糧營團ハ地方長官(樺太廳長官ヲ含ム以下同ジ)ノ定ムル食糧配給計畫ニ基キ地方的ニ主要食糧ヲ配給スルト共ニ地方長官ノ指定スル食糧ヲ貯藏スル爲必要ナル事業ヲ行フコトヲ目的トス
地方食糧營團ノ名稱、資本金及主タル事務所ノ所在地ハ政府之ヲ定ム
地方食糧營團ノ名稱ニハ其ノ主タル事務所ノ所在スル道府縣ノ名(樺太ニ在リテハ樺太)ヲ冠ス
政府ハ樺太ニ地方食糧營團ヲ設立セシムル場合ニ於テハ八百萬圓ヲ限リ之ニ出資スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル出資ハ樺太廳特別會計ノ歲出トシ之ニ因リ取得シタル出資證券ハ同會計ノ所屬物件トス
第十六條第三項ノ規定ハ第四項ノ規定ニ依ル出資ノ出資金拂込ニ之ヲ準用ス
第二十六條 中央食糧營團ハ政府ノ認可ヲ受ケ地方食糧營團ニ出資スルコトヲ得
第十六條第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル出資ノ出資金拂込ニ之ヲ準用ス
第二十七條 地方食糧營團ニ理事長一人、理事三人以上、監事二人以上及評議員若干人ヲ置キ地方長官之ヲ命ズ
第二十八條 地方食糧營團ハ左ノ事業ヲ行フモノトス
五 前各號ノ外地方長官ノ指定スル主要食糧ノ保管其ノ他地方食糧營團ノ目的達成上必要ナル事業
地方食糧營團前項第四號又ハ第五號ノ事業ヲ行ハントスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第二十九條 第十五條第三項、第十七條、第十九條第三項、第二十條、第二十一條、第二十三條及第二十四條ノ規定ハ地方食糧營團ニ付之ヲ準用ス
第三十條 農地開發法第八條、第十條乃至第十四條、第十七條、第十九條、第二十條後段、第二十一條、第二十二條第二項第三項、第二十五條乃至第二十七條、第二十九條乃至第三十七條及第三十九條乃至第四十一條ノ規定ハ食糧營團ニ付之ヲ準用ス但シ同法第十二條第一項、第十三條第二項、第二十一條、第二十七條、第三十五條、第三十七條第二項、第三十九條、第四十條第一項及第四十一條中主務大臣トアルハ政府トシ同法第十九條第二項中副理事長ハトアルハ地方食糧營團ニ付テハ理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リトシ同法第四十條中農地開發營團監理官トアルハ食糧營團監理官トス
第三十一條 第九條又ハ第十條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第三條第一項又ハ第十一條第二項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十一條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ同條第四項ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シタル者
前項第二號ノ場合ニ於テ輸出若ハ移出又ハ輸入若ハ移入シタル主要食糧ニシテ犯人ノ所有シ又ハ所持スルモノハ之ヲ沒收スルコトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵スルコトヲ得
第三十三條 前二條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第三十四條 第二十三條第二項(第二十九條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 不正ノ手段ニ依リ第八條ノ規定ニ依ル檢査ヲ受ケ又ハ受ケントシタル者
三 第十三條第二項ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
第三十六條 第十三條第二項ノ規定ニ依ル當該官吏又ハ吏員ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十七條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十一條、第三十二條、第三十四條又ハ第三十五條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
第三十八條 食糧營團ノ總裁、副總裁、理事長、理事、監事又ハ使用人其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三十九條 前條第一項ニ揭グル者ニ對シ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十條 食糧營團本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ總裁、理事長、總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副總裁又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル理事ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
第四十一條 食糧營團ノ總裁、副總裁、理事長又ハ業務ヲ分掌スル理事第三十條ニ於テ準用スル農地開發法第二十一條ノ規定ニ違反シ他ノ業務ニ從事シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第四十二條 第十四條第三項ノ規定ニ違反シ食糧營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第四十三條 本法ノ一部ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ樺太ニ適用セザルコトヲ得
樺太ニ於テ本法ヲ適用スルニ付必要ナル事項ニ關シテハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得