(療養の給付)
第三十六条 市町村及び組合(以下「保険者」という。)は、被保険者の疾病及び負傷に関しては、次の各号に掲げる療養の給付を行う。
2 前項第四号から第六号までに定める給付は、政令で定める場合及び保険者が必要と認める場合に限り、行うものとする。
3 第一項第一号から第四号までに定める療養は、第三十八条に規定する登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「国民健康保険医」という。)又は同条に規定する登録を受けた薬剤師(以下「国民健康保険薬剤師」という。)が担当するものとする。
4 次条の規定により療養の給付を取り扱う旨の申出を受理された病院、診療所及び薬局(以下「療養取扱機関」という。)の開設者は、当該機関において業務に従事する国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師に対し、その者が前項の規定により担当する療養を実施するにつき、必要な措置を講じなければならない。
5 被保険者が第一項第一号から第四号までに定める給付を受けようとするときは、自己の選定する療養取扱機関に被保険者証を提出して、そのものについて受けるものとする。ただし、厚生省令で定める場合に該当するときは、被保険者証を提出することを要しない。
6 第一項第五号及び第六号に定める給付は、医師又は歯科医師の意見を聞いて行うものとする。
(療養取扱機関)
第三十七条 病院若しくは診療所又は薬局の開設者は、療養の給付を取り扱おうとするときは、病院若しくは診療所又は薬局ごとに、その所在地の都道府県知事にその旨を申し出なければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による申出があつた場合において、その受理を拒むには、地方社会保険医療協議会の議によらなければならない。
3 療養取扱機関以外の病院若しくは診療所又は薬局につき健康保険法第四十三条ノ三第一項の規定による保険医療機関又は保険薬局の指定があつたときは、その指定の時に、当該病院若しくは診療所又は薬局につき第一項の申出の受理があつたものとみなす。ただし、その開設者が厚生省令の定めるところにより別段の申出をしたときは、この限りでない。
4 健康保険法第四十三条ノ十二の規定による保険医療機関又は保険薬局の指定の取消は、前項本文の規定により療養取扱機関とみなされたものの地位に影響を及ぼすものではない。
5 療養取扱機関は、その所在地の都道府県及びその開設者が所在地の都道府県知事に申し出たその他の都道府県の区域内の保険者(組合の場合にあつては、その区域内に主たる事務所がある組合とする。)及びその保険者に係る被保険者に対する関係においてのみ、療養取扱機関たるものとする。
(国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師の登録)
第三十八条 第三十六条第三項に規定する療養を担当しようとする医師若しくは歯科医師又は薬剤師は、都道府県知事の登録を受けなければならない。
第三十九条 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録は、医師若しくは歯科医師又は薬剤師の申請に基き、その住所地の都道府県知事が行う。
2 診療所又は薬局が医師若しくは歯科医師又は薬剤師が開設したものであり、かつ、当該開設者である医師若しくは歯科医師又は薬剤師のみが診療又は調剤に従事している場合において、当該診療所又は薬局につき第三十七条の規定による療養の給付を取り扱う旨の申出の受理があつたときは、その申出の受理の時に、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師につき前項の登録があつたものとみなす。
3 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師以外の医師若しくは歯科医師又は薬剤師につき健康保険法第四十三条ノ五の規定による保険医又は保険薬剤師の登録があつたときは、その登録の時に、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師につき第一項の登録があつたものとみなす。ただし、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師が厚生省令の定めるところにより別段の申出をしたときは、この限りでない。
4 前三項の場合において、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師が、この法律の規定により国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録を取り消され、二年を経過しないものであるときは、都道府県知事は、第一項の登録を拒み、又は同項の登録があつたものとみなさないこととすることができる。
5 健康保険法第四十三条ノ十三の規定による保険医又は保険薬剤師の登録の取消は、第三項本文の規定により国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師とみなされた者の地位に影響を及ぼすものではない。
(療養取扱機関等の責務)
第四十条 療養取扱機関において行われる療養の給付に関する準則については、厚生省令で定めるもののほか、健康保険法第四十三条ノ四第一項及び第四十三条ノ六第一項の規定による命令の例による。
(厚生大臣又は都道府県知事の指導)
第四十一条 国民健康保険医、国民健康保険薬剤師及び療養取扱機関は、療養の給付に関し、厚生大臣又は都道府県知事の指導を受けなければならない。
(療養の給付を受ける場合の一部負担金)
第四十二条 第三十六条第五項の規定により療養取扱機関について療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、当該給付につき第四十五条第二項又は第三項の規定により算定した額の二分の一に相当する額を、一部負担金として、当該療養取扱機関に支払わなければならない。
2 療養取扱機関は、前項の一部負担金(次条第一項の規定により一部負担金の割合が減ぜられたときは、同条第二項に規定する療養取扱機関にあつては、当該減ぜられた割合による一部負担金とし、第四十四条第一項第一号の措置がとられたときは、当該減額された一部負担金とする。)の支払を受けるべきものとし、療養取扱機関が善良な管理者と同一の注意をもつてその支払を受けることにつとめたにもかかわらず、なお被保険者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該療養取扱機関の請求に基き、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。
第四十三条 保険者は、政令の定めるところにより、条例又は規約で、前条第一項に規定する一部負担金の割合を減ずることができる。
2 前項の規定により一部負担金の割合が減ぜられたときは、保険者が開設者の同意を得て定める療養取扱機関について療養の給付を受ける被保険者は、前条第一項の規定にかかわらず、その減ぜられた割合による一部負担金を当該療養取扱機関に支払うをもつて足りる。
3 第一項の規定により一部負担金の割合が減ぜられた場合において、被保険者が前項に規定する療養取扱機関以外の療養取扱機関について療養の給付を受けたときは、保険者は、当該被保険者が前条第一項の規定により当該療養取扱機関に支払つた一部負担金と第一項の規定により減ぜられた割合による一部負担金との差額を当該被保険者に支給しなければならない。
4 市町村は、当該市町村に係る被保険者の大多数につき前条第一項並びに第一項及び第二項の規定によりがたい特別の事情があると認める場合において、都道府県知事の承認を受けたときは、条例で、当該市町村が開設者の同意を得て定める療養取扱機関について療養の給付を受ける被保険者から、当該療養取扱機関に対する支払に代えて、一部負担金を直接に徴収するものとすることができる。
5 前項の被保険者は、前条第一項及びこの条第二項の規定にかかわらず、一部負担金を療養取扱機関に支払うことを要しない。
第四十四条 保険者は、特別の理由がある被保険者で、療養取扱機関に前二条の規定による一部負担金を支払うことが困難であると認められるものに対し、次の各号の措置をとることができる。
三 療養取扱機関に対する支払に代えて、一部負担金を直接に徴収することとし、その徴収を猶予すること。
2 前項の措置を受けた被保険者は、第四十二条第一項及び前条第二項の規定にかかわらず、前項第一号の措置を受けた被保険者にあつては、その減額された一部負担金を療養取扱機関に支払うをもつて足り、同項第二号又は第三号の措置を受けた被保険者にあつては、一部負担金を療養取扱機関に支払うとを要しない。
3 前条第四項の場合においては、市町村は、特別の理由がある被保険者で、同項の規定による一部負担金を納付することが困難であると認められるものに対し、その一部負担金を減免し、又はその徴収を猶予することができる。
(療養取扱機関の診療報酬)
第四十五条 保険者は、療養の給付に関する費用を療養取扱機関に支払うものとし、療養取扱機関が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者(第五十七条に規定する場合にあつては、世帯主又は組合員)が当該療養取扱機関に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2 前項の療養の給付に要する費用の額の算定については、健康保険法第四十三条ノ九第二項の規定による厚生大臣の定の例による。
3 保険者は、都道府県知事の認可を受け、療養取扱機関との契約により、当該療養取扱機関において行われる療養の給付に関する第一項の療養の給付に要する費用の額につき、前項の規定により算定される額の範囲内において、別段の定をすることができる。
4 保険者は、療養取扱機関から療養の給付に関する費用の請求があつたときは、第四十条に規定する準則並びに第二項に規定する額の算定方法及び前項の定に照らして審査した上、支払うものとする。
5 保険者は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を都道府県の区域を区域とする国民健康保険団体連合会(加入している保険者の数がその区域内の保険者の総数の三分の二に達しないものを除く。)又は社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)による社会保険診療報酬支払基金に委託することができる。
6 前五項に規定するもののほか、療養取扱機関の療養の給付に関する費用の請求に関して必要な事項は、厚生省令で定める。
(療養取扱機関の報告等)
第四十六条 厚生大臣又は都道府県知事は、療養の給付に関し必要があると認めるときは、療養取扱機関に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、療養取扱機関の開設者若しくは管理者、国民健康保険医、国民健康保険薬剤師その他の従業者に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは療養取扱機関について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定による質問又は検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(療養取扱機関の辞退等)
第四十七条 療養取扱機関は、療養取扱機関たることを辞し、又は第三十七条第五項の規定による申出を撤回し、若しくは二以上の都道府県につきその申出をした場合にその申出の範囲を縮少することができる。
2 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師は、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録の消除を求めることができる。
3 第一項の規定により療養取扱機関たることを辞し、申出を撤回し、若しくは申出の範囲を縮少し、又は前項の規定により登録の消除を求めるには、一箇月以上の予告期間を設けなければならない。
(療養取扱機関に係る申出受理の取消)
第四十八条 都道府県知事は、療養取扱機関が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該療養取扱機関に係る第三十七条の規定による申出の受理を取り消すことができる。
一 第四十条に規定する療養の給付に関する準則に違反したとき。
二 療養の給付に関する費用の請求又は第五十六条第三項の規定による支払に関し不正があつたとき。
三 第四十六条第一項の規定により報告又は診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告をしたとき。
四 当該療養取扱機関の開設者又は従業者が、第四十六条第一項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず、同条同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は当該職員の同条同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。ただし、当該療養取扱機関の従業者がその行為をした場合において、その行為を防止するため当該療養取扱機関において相当の注意及び監督が尽されたときを除く。
(国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録の取消)
第四十九条 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師が次の各号のいずれかに該当する場合においては、都道府県知事は、その登録を取り消すことができる。
一 第四十条に規定する療養の給付に関する準則に違反したとき。
二 第四十六条第一項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず、同条同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は当該職員の同条同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
(社会保険医療協議会への諮問)
第五十条 厚生大臣は、第四十条の規定による厚生省令を定めようとするときは、中央社会保険医療協議会に諮問すものとする。
2 都道府県知事は、第三十七条第一項の申出を受理し、又はその申出の受理を取り消そうとするときは、地方社会保険医療協義会に諮問するものとする。国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録を取り消そうとするときも、同様とする。
(弁明)
第五十一条 都道府県知事は、第三十七条第一項の申出の受理を拒み、又はその申出の受理を取り消そうとするときは、当該病院若しくは診療所又は薬局の開設者に対し、弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、書面で、弁明をすべき日時、場所及び当該処分をすべき理由を通知しなければならない。
2 都道府県知事は、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録を取り消そうとするときは、当該国民健康保険医又は国民健康康保険薬剤師に対し、弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
(看護又は移送の給付に関する一部負担金)
第五十二条 第三十六条第一項第五号又は第六号に定める給付を受けた被保険者は、当該給付に要する費用の額の二分の一に相当する額を、一部負担金として、保険者に納付しなければならない。
2 保険者は、政令の定めるところにより、条例又は規約で、前項に規定する一部負担金の割合を減ずることができる。
3 保険者は、特別の理由がある被保険者で、前二項の規定による一部負担金を納付することが困難であると認められるものに対し、その一部負担金を減免し、又はその徴収を猶予することができる。
(給付の期間)
第五十三条 療養の給付は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病に関しては、当該保険者がこれを開始した日から起算して三年を経過したときは、行わない。ただし、市町村にあつては、条例で、三年をこえて行うことができる。
(療養費)
第五十四条 保険者は、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が緊急その他やむを得ない理由により療養取扱機関以外の病院、診療所若しくは薬局その他の者について診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、必要があると認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給することができる。
2 保険者は、被保険者が被保険者証を提出しないで療養取扱機関について診療又は薬剤の支給を受けた場合において、被保険者証を堤出しなかつたことが、緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるときは、療養の給付に代えて、療養費を支給するものとする。
3 療養費の額は、療養に要する費用の額から、その額に一部負担金の割合を乗じて得 た額を控除した額を基準として、保険者が定める。
4 前項の療養に要する費用の額の算定については、第四十五条第二項の規定を準用する。ただし、その額は、現に療養に要した費用の額をこえることができない。
(被保険者が日雇労働者又はその被扶養者となつた場合)
第五十五条 被保険者が第六条第五号に該当するに至つたためその資格を喪失した場合において、その資格を喪失した際現に療養の給付を受けていたときは、その者は、被保険者として受けることができる期間、継続して当該保険者から療養の給付を受けることができる。
2 前項の規定による療養の給付は、次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、行わない。
一 当該疾病又は負傷につき、日雇労働者健康保険法の規定による療養の給付又は家族療養費の支給を受けることができるに至つたとき。
二 その者が、第六条第一号から第四号まで、第六号又は第八号のいずれかに該当するに至つたとき。
四 被保険者の資格を喪失した日から起算して六箇月を経過したとき。
(他の法令による医療に関する給付との調整)
第五十六条 療養の給付は、被保険者の当該疾病又は負傷につき、健康保険法、船員保険法、日雇労働者健康保険法、国家公務員共済組合法(他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)、公共企業体職員等共済組合法又は市町村職員共済組合法の規定によつて、医療に関する給付を受けることができる場合には、行わない。労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の規定による療養補償、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定による療養補償費、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用する場合を含む。)の規定による療養補償その他政令で定める法令による医療に関する給付を受けることができるとき、又はこれらの法令以外の法令により国若しくは地方公共団体の負担において医療に関する給付が行われたときも、同様とする。
2 保険者は、前項に規定する法令による給付が医療の現物給付である場合において、その給付に関し一部負担金の支払若しくは実費徴収が行われ、かつ、その一部負担金若しくは実費徴収の額が、その給付がこの法律による療養の給付として行われたものとした場合におけるこの法律による一部負担金の額(第四十三条第一項又は第五十二条第二項の規定により一部負担金の割合が減ぜられているときは、その減ぜられた割合による一部負担金の額)をこえるとき、又は前項に規定する法令による給付が医療費の支給である場合において、その支給額が、当該療養につきこの法律による療養費の支給をすべきものとした場合における療養費の額に満たないときは、それぞれその差額を当該被保険者に支給しなければならない。
3 前項の場合において、被保険者が療養取扱機関について当該療養を受けたときは、保険者は、同項の規定により被保険者に支給すべき額の限度において、当該被保険者が療養取扱機関に支払うべき当該療養に要した費用を、当該被保険者に代つて療養取扱機関に支払うことができる。ただし、当該保険者が第四十三条第一項の規定により一部負担金の割合を減じているときは、被保険者が同条第二項に規定する療養取扱機関について当該療養を受けた場合に限る。
4 前項の規定により療養取扱機関に対して費用が支払われたときは、その限度において、被保険者に対し第二項の規定による支給が行われたものとみなす。
(世帯主又は組合員でない被保険者に係る一部負担金等)
第五十七条 一部負担金の支払又は納付、第四十三条第三項又は前条第二項の規定による差額の支給及び療養費の支給に関しては、当該疾病又は負傷が世帯主又は組合員でない被保険者に係るものであるときは、これらの事項に関する各本条の規定にかかわらず、当該被保険者の属する世帯の世帯主又は組合員が一部負担金を支払い、又は納付すべき義務を負い、及び当該世帯主又は組合員に対して第四十三条第三項若しくは前条第二項の規定による差額又は療養費を支給するものとする。