国民健康保険法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第78号
公布年月日: 昭和63年6月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

国民健康保険制度は国民皆保険体制の基盤として重要な役割を果たしているが、人口高齢化等による医療費増加に伴い、運営上の問題が生じている。特に、保険料負担能力の低い被保険者の加入割合が高い問題や医療費の地域差問題等、制度の不安定要因に対して、国、都道府県及び市町村が共同して取り組む仕組みを構築することにより、国民健康保険事業の運営の安定化を図ることを目的として本法律案を提出するものである。

参照した発言:
第112回国会 衆議院 本会議 第9号

審議経過

第112回国会

衆議院
(昭和63年3月22日)
(昭和63年3月24日)
(昭和63年3月31日)
(昭和63年4月5日)
(昭和63年4月14日)
(昭和63年4月15日)
参議院
(昭和63年4月18日)
(昭和63年4月19日)
(昭和63年4月26日)
(昭和63年5月9日)
(昭和63年5月10日)
(昭和63年5月17日)
(昭和63年5月18日)
国民健康保険法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十三年六月一日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 宮澤喜一
法律第七十八号
国民健康保険法の一部を改正する法律
国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)の一部を次のように改正する。
目次中「第五章 費用等」を
第四章の二
指定市町村の安定化計画(第六十八条の二)
第五章
費用等
に改める。
第九条第三項中「第七十二条の二」を「第七十二条の三」に改める。
第四十二条第一項第一号中「被保険者」の下に「(以下「一般被保険者」という。)」を加える。
第五十条第一項中「第十一項」の下に「並びに第五十四条の二第三項」を加える。
第五十四条の二第三項を同条第六項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第四項とし、同項の次に次の一項を加える。
5 第一項に規定する場合において、被保険者が被保険者資格証明書を提出しないで療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関について診療又は薬剤の支給を受け、被保険者資格証明書を提出しなかつたことが、緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるときは、保険者は、療養費を支給するものとする。
第五十四条の二第一項の次に次の二項を加える。
2 前項の規定により支給する療養費は、特別療養費と称する。
3 第三十六条第二項から第六項まで、第四十条、第四十一条、第四十五条第三項、第四十六条、第四十八条、第四十九条並びに第五十三条第二項及び第五項の規定は、療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関について受けた特別療養費に係る療養及びこれに伴う特別療養費の支給並びに当該療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関について準用する。この場合において、第五十三条第二項中「特定療養費の額」とあるのは「特別療養費の額」と、「健康保険法第四十四条第二項」とあるのは「、被保険者証が交付されているならば療養の給付を受けることができる場合は健康保険法第四十三条ノ九第二項の規定による厚生大臣の定めの例により、被保険者証が交付されているならば特定療養費の支給を受けることができる場合は同法第四十四条第二項」と読み替えるほか、その他の規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
第四章の次に次の一章を加える。
第四章の二 指定市町村の安定化計画
第六十八条の二 厚生大臣は、毎年度につき、政令の定めるところにより、療養の給付並びに特定療養費、療養費及び高額療養費の支給に要する費用並びに老人保健法の規定による医療費拠出金(以下「老人保健医療費拠出金」という。)の納付に要する費用(以下この条において「療養の給付等に要する費用」という。)の額が被保険者の数及び年齢階層別の分布状況その他の事情を勘案してもなお著しく多額となると見込まれる市町村であつて、療養の給付等に要する費用の適正化その他の国民健康保険事業の運営の安定化のための措置を特に講ずる必要があると認められるものを指定市町村として指定する。
2 厚生大臣は、前項の指定をしようとするときは、都道府県の意見を聴かなければならない。
3 指定市町村は、厚生大臣の定める指針に従い、国民健康保険事業の運営の安定化に関する計画(以下「安定化計画」という。)を定めるとともに、その安定化計画に従い、療養の給付等に要する費用の適正化その他の国民健康保険事業の運営の安定化のための措置を講じなければならない。
4 指定市町村は、前項に規定する措置を講ずるに当たつては、他の市町村、組合、第六条第一号から第三号までに掲げる法律の規定による保険者又は共済組合その他の関係者との連携を図ることにより、その効果的な実施に努めるものとする。
5 都道府県は、指定市町村に対して安定化計画の作成に関し必要な助言及び指導を行うとともに、安定化計画の達成に必要な措置を定め、当該措置に基づいて必要な施策を実施しなければならない。
6 国は、指定市町村に対しては安定化計画の作成に関し、都道府県に対しては前項に規定する措置に関し必要な助言及び指導を行うとともに、安定化計画の達成に必要な措置を講じなければならない。
第七十条第一項中「老人保健法の規定による医療費拠出金(以下「老人保健医療費拠出金」という。)」を「老人保健医療費拠出金」に改め、同項各号中「第四十二条第一項第一号に掲げる被保険者」を「一般被保険者」に改め、同条に次の三項を加える。
3 第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村であつて、当該指定に係る年度(以下「指定年度」という。)の第一号に掲げる額が指定年度の第二号に掲げる額に政令で定める率を乗じて得た額を超えるものに対して指定年度の翌々年度において国が負担する額は、前二項の規定により算定した額からその超える額(その額が国民健康保険事業の運営に与える影響の程度その他の事情を勘案して政令の定めるところにより算定した額を超えるときは、当該算定した額。以下「基準超過費用額」という。)の百分の四十に相当する額を控除した額とする。
一 次に掲げる額の合算額(災害その他の政令で定める特別の事情により当該合算額が多額となつたときは、当該合算額から当該事情により多額となつた部分の額として政令の定めるところにより算定した額を控除した額)
イ 一般被保険者に係る療養の給付に要した費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額並びに特定療養費、療養費及び高額療養費の支給に要した費用の額の合算額
ロ 老人保健法の規定による確定医療費拠出金の額
二 次に掲げる額の合算額
イ 政令の定めるところにより、年齢階層ごとに、当該年齢階層に係る平均一人当たり給付額に当該市町村の当該年齢階層に属する一般被保険者(老人保健法の規定による医療を受けることができる者を除く。)の数を乗じて得た額の合算額として算定した額
ロ 政令の定めるところにより、年齢階層ごとに、当該年齢階層に係る平均一人当たり老人医療費額に当該市町村の当該年齢階層に属する被保険者(老人保健法の規定による医療を受けることができる者に限る。)の数を乗じて得た額の合算額に、当該市町村に係る指定年度の同法第五十六条第二項の確定加入者調整率を乗じて得た額の十分の七に相当する額として算定した額
4 前項の政令で定める率は、すべての市町村に係る同項第二号に掲げる額に対する同項第一号に掲げる額の比率の状況等からみて、その比率が著しく大きい指定市町村について同項の規定が適用されるように定めるものとする。
5 第三項第二号イの「平均一人当たり給付額」とは、すべての市町村の一般被保険者(老人保健法の規定による医療を受けることができる者を除く。)に係る同項第一号イに掲げる額の合算額を当該一般被保険者の数で除して得た額をいい、同項第二号ロの「平均一人当たり老人医療費額」とは、同法第四十七条の規定により支弁が行われたすべての市町村の被保険者(同法の規定による医療を受けることができる者に限る。)に対する同条に規定する医療等に要する費用の額の合算額を当該被保険者の数で除して得た額をいう。
第七十二条第二項中「見込額」の下に「から前々年度の基準超過費用額の合算額を控除した額」を加える。
第七十二条の三を第七十二条の四とし、第七十二条の二を第七十二条の三とし、第七十二条の次に次の一条を加える。
(国民健康保険に関する特別会計への繰入れ等)
第七十二条の二 第七十条第三項に規定する市町村は、指定年度の翌々年度において、政令の定めるところにより、一般会計から、当該指定年度の基準超過費用額の二分の一に相当する額を国民健康保険に関する特別会計に繰り入れなければならない。
2 国及び都道府県は、政令の定めるところにより、前項の規定による繰入金の三分の一に相当する額をそれぞれ負担する。
第七十四条中「第七十二条」の下に「、第七十二条の二第二項」を加える。
第七十五条中「市町村は」の下に「、第七十二条の二第二項に規定するもののほか」を加える。
第八十一条の十第一項第二号中「第七十二条の二第一項」を「第七十二条の三第一項」に改める。
第八十一条の十一中「第七十二条の三第一項」を「第七十二条の四第一項」に改める。
第百十四条第二項中「特定療養費」の下に「若しくは特別療養費」を加える。
第百十八条の次に次の一条を加える。
(指定市町村に廃置分合があつた場合の特例)
第百十八条の二 第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村につき廃置分合があつた場合における当該廃置分合に係る市町村についての第七十条及び第七十二条の二第一項の規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。
附則に次の九項を加える。
11 市町村は、その行う国民健康保険の財政の基盤の安定に資するため、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、政令の定めるところにより、一般会計から、所得の少ない者について条例の定めるところにより行う保険料の減額賦課又は地方税法第七百三条の五に規定する国民健康保険税の減額に基づき一般被保険者に係る当該年度分の保険料又は同法の規定による国民健康保険税につき減額した額の総額を基礎とし、国民健康保険の財政の状況その他の事情を勘案して政令の定めるところにより算定した額を国民健康保険に関する特別会計に繰り入れなければならない。
12 国は、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、前項の規定による繰入金の二分の一に相当する額を負担する。
13 都道府県は、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、第十一項の規定による繰入金の四分の一に相当する額を負担する。
14 昭和六十三年度における第七十条の規定による国の負担については、同条第一項第一号中「合算額」とあるのは「合算額から昭和六十三年度における附則第十一項の規定による繰入金に相当する額を控除した額」と、同項第二号中「老人保健医療費拠出金の納付に要する費用の額に七分の十を乗じて得た額に、」とあるのは「老人保健法等の一部を改正する法律(昭和六十一年法律第百六号)附則第六条の規定による昭和六十三年度の概算医療費拠出金の額(以下「昭和六十三年度概算医療費拠出金の額」という。)と、昭和六十三年度概算医療費拠出金の額に七分の十を乗じて得た額に」と、「前号に掲げる額」とあるのは「前号に規定する合算額」と、「率を乗じて得た額」とあるのは「率(以下「給付率」という。)を乗じて得た額から昭和六十三年度概算医療費拠出金の額を控除した額に十分の四を乗じて得た額との合算額(同法附則第四条の規定による概算医療費拠出金の額(以下「昭和六十一年度概算医療費拠出金の額」という。)が同法附則第五条の規定による確定医療費拠出金の額(以下「昭和六十一年度確定医療費拠出金の額」という。)を超えるときは、その超える額とその超える額に係る老人保健法第五十四条第二項の規定による調整金額(以下「調整金額」という。)との合計額に七分の十を乗じて得た額に給付率を乗じて得た額を当該合算額から控除するものとし、昭和六十一年度概算医療費拠出金の額が昭和六十一年度確定医療費拠出金の額に満たないときは、その満たない額とその満たない額に係る調整金額との合計額に七分の十を乗じて得た額に給付率を乗じて得た額を当該合算額に加算するものとする。)」とする。
15 前項の規定は、昭和六十四年度における第七十条の規定による国の負担について準用する。この場合において、同項中「昭和六十三年度における」とあるのは「昭和六十四年度における」と、「昭和六十三年度の」とあるのは「昭和六十四年度の」と、「昭和六十三年度概算医療費拠出金の額」とあるのは「昭和六十四年度概算医療費拠出金の額」と、「同法附則第四条の規定による」とあるのは「同法附則第六条、第九条第一項及び第十条の規定により算定される昭和六十二年度の」と、「昭和六十一年度概算医療費拠出金の額」とあるのは「昭和六十二年度概算医療費拠出金の額」と、「同法附則第五条の規定による」とあるのは「同法附則第七条、第九条第二項において準用する同条第一項及び第十条の規定により算定される同年度の」と、「昭和六十一年度確定医療費拠出金の額」とあるのは「昭和六十二年度確定医療費拠出金の額」と読み替えるものとする。
16 昭和六十三年度における第七十二条の規定による調整交付金については、同条第二項中「第七十条第一項各号」とあるのは、「附則第十四項の規定により読み替えられた第七十条第一項各号」とする。
17 前項の規定は、昭和六十四年度における第七十二条の規定による調整交付金について準用する。この場合において、同項中「附則第十四項」とあるのは、「附則第十五項において準用する附則第十四項」と読み替えるものとする。
18 昭和六十五年度及び昭和六十六年度における第七十条の規定による国の負担及び第七十二条の規定による調整交付金に関し、第十四項から前項までの措置に伴い必要な第七十条及び第七十二条の規定の特例その他の事項は、政令で定める。
19 国及び都道府県は、高額な医療に関する給付の発生が国民健康保険の財政に与える影響を緩和するため、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、その会員である市町村に対して高額な医療に関する給付に係る交付金を交付する事業を行う連合会に対し、当該事業に要する費用の一部を補助することができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(経過措置)
第二条 改正後の国民健康保険法(以下「新法」という。)第五十四条の二の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に行われる療養及び当該療養に係る療養費の支給について適用し、施行日前に行われた療養及び当該療養に係る療養費の支給については、なお従前の例による。
第三条 昭和六十三年度につき新法第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村であつて新法第七十条第三項に規定する市町村に該当するものに対して国が昭和六十五年度において同項の規定により負担する額については、同項中「百分の四十に相当する額を控除した額」とあるのは、「百分の二十に相当する額を控除した額」とする。
2 昭和六十五年度における新法第七十二条の規定による調整交付金の総額については、同条第二項中「前々年度の基準超過費用額の合算額」とあるのは、「昭和六十三年度の基準超過費用額の合算額の二分の一に相当する額」とする。
3 第一項に規定する市町村の昭和六十五年度における新法第七十二条の二第一項の規定による繰入れについては、同項中「二分の一」とあるのは、「四分の一」とする。
第四条 昭和六十三年度及び昭和六十四年度につき新法第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村について新法第七十条第三項の規定を適用する場合においては、同項第二号ロ中「合算額に、」とあるのは「合算額に百分の十を乗じて得た額と、当該合算額の百分の九十に相当する額に」と、「の十分の七」とあるのは「との合計額の十分の七」とする。
(健康保険法等の一部を改正する法律の一部改正)
第五条 健康保険法等の一部を改正する法律(昭和五十九年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
附則第十七条第一項第一号中「第七十二条の二第一項」を「第七十二条の三第一項」に改め、同項第二号中「第七十条に規定する額」を「第七十条第一項及び第二項の規定により算定した額」に改める。
(租税特別措置法の一部改正)
第六条 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第二十六条第二項第一号中「特定療養費又は家族療養費」を「特定療養費、家族療養費又は特別療養費(国民健康保険法第五十四条の二第二項に規定する特別療養費をいう。以下この号において同じ。)」に、「又は家族療養費の額」を「、家族療養費の額又は特別療養費の額」に改め、「相当する部分」の下に「(特別療養費に係る当該部分にあつては、当該部分であることにつき大蔵省令で定めるところにより証明がされたものに限る。)」を加える。
(租税特別措置法の一部改正に伴う経過措置)
第七条 前条の規定による改正後の租税特別措置法第二十六条第二項の規定は、施行日以後に行われる同項に規定する社会保険診療について適用し、施行日前に行われた前条の規定による改正前の同法第二十六条第二項に規定する社会保険診療については、なお従前の例による。
(地方税法の一部改正)
第八条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の十四第一項中「特定療養費又は家族療養費」を「特定療養費、家族療養費又は特別療養費(国民健康保険法第五十四条の二第二項に規定する特別療養費をいう。以下本項において同じ。)」に、「又は家族療養費の額」を「、家族療養費の額又は特別療養費の額」に改め、「相当する部分」の下に「(特別療養費に係る当該部分にあつては、当該部分であることにつき自治省令で定めるところにより証明がされたものに限る。)」を加える。
(地方税法の一部改正に伴う経過措置)
第九条 前条の規定による改正後の地方税法第七十二条の十四第一項及び第七十二条の十七第一項の規定は、施行日以後に行われる前条の規定による改正後の同法第七十二条の十四第一項に規定する療養の給付について適用し、施行日前に行われた前条の規定による改正前の同法第七十二条の十四第一項に規定する療養の給付については、なお従前の例による。
大蔵大臣 宮澤喜一
厚生大臣 藤本孝雄
自治大臣 梶山静六
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 宮澤喜一
国民健康保険法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十三年六月一日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 宮沢喜一
法律第七十八号
国民健康保険法の一部を改正する法律
国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)の一部を次のように改正する。
目次中「第五章 費用等」を
第四章の二
指定市町村の安定化計画(第六十八条の二)
第五章
費用等
に改める。
第九条第三項中「第七十二条の二」を「第七十二条の三」に改める。
第四十二条第一項第一号中「被保険者」の下に「(以下「一般被保険者」という。)」を加える。
第五十条第一項中「第十一項」の下に「並びに第五十四条の二第三項」を加える。
第五十四条の二第三項を同条第六項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第四項とし、同項の次に次の一項を加える。
5 第一項に規定する場合において、被保険者が被保険者資格証明書を提出しないで療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関について診療又は薬剤の支給を受け、被保険者資格証明書を提出しなかつたことが、緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるときは、保険者は、療養費を支給するものとする。
第五十四条の二第一項の次に次の二項を加える。
2 前項の規定により支給する療養費は、特別療養費と称する。
3 第三十六条第二項から第六項まで、第四十条、第四十一条、第四十五条第三項、第四十六条、第四十八条、第四十九条並びに第五十三条第二項及び第五項の規定は、療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関について受けた特別療養費に係る療養及びこれに伴う特別療養費の支給並びに当該療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関について準用する。この場合において、第五十三条第二項中「特定療養費の額」とあるのは「特別療養費の額」と、「健康保険法第四十四条第二項」とあるのは「、被保険者証が交付されているならば療養の給付を受けることができる場合は健康保険法第四十三条ノ九第二項の規定による厚生大臣の定めの例により、被保険者証が交付されているならば特定療養費の支給を受けることができる場合は同法第四十四条第二項」と読み替えるほか、その他の規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
第四章の次に次の一章を加える。
第四章の二 指定市町村の安定化計画
第六十八条の二 厚生大臣は、毎年度につき、政令の定めるところにより、療養の給付並びに特定療養費、療養費及び高額療養費の支給に要する費用並びに老人保健法の規定による医療費拠出金(以下「老人保健医療費拠出金」という。)の納付に要する費用(以下この条において「療養の給付等に要する費用」という。)の額が被保険者の数及び年齢階層別の分布状況その他の事情を勘案してもなお著しく多額となると見込まれる市町村であつて、療養の給付等に要する費用の適正化その他の国民健康保険事業の運営の安定化のための措置を特に講ずる必要があると認められるものを指定市町村として指定する。
2 厚生大臣は、前項の指定をしようとするときは、都道府県の意見を聴かなければならない。
3 指定市町村は、厚生大臣の定める指針に従い、国民健康保険事業の運営の安定化に関する計画(以下「安定化計画」という。)を定めるとともに、その安定化計画に従い、療養の給付等に要する費用の適正化その他の国民健康保険事業の運営の安定化のための措置を講じなければならない。
4 指定市町村は、前項に規定する措置を講ずるに当たつては、他の市町村、組合、第六条第一号から第三号までに掲げる法律の規定による保険者又は共済組合その他の関係者との連携を図ることにより、その効果的な実施に努めるものとする。
5 都道府県は、指定市町村に対して安定化計画の作成に関し必要な助言及び指導を行うとともに、安定化計画の達成に必要な措置を定め、当該措置に基づいて必要な施策を実施しなければならない。
6 国は、指定市町村に対しては安定化計画の作成に関し、都道府県に対しては前項に規定する措置に関し必要な助言及び指導を行うとともに、安定化計画の達成に必要な措置を講じなければならない。
第七十条第一項中「老人保健法の規定による医療費拠出金(以下「老人保健医療費拠出金」という。)」を「老人保健医療費拠出金」に改め、同項各号中「第四十二条第一項第一号に掲げる被保険者」を「一般被保険者」に改め、同条に次の三項を加える。
3 第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村であつて、当該指定に係る年度(以下「指定年度」という。)の第一号に掲げる額が指定年度の第二号に掲げる額に政令で定める率を乗じて得た額を超えるものに対して指定年度の翌々年度において国が負担する額は、前二項の規定により算定した額からその超える額(その額が国民健康保険事業の運営に与える影響の程度その他の事情を勘案して政令の定めるところにより算定した額を超えるときは、当該算定した額。以下「基準超過費用額」という。)の百分の四十に相当する額を控除した額とする。
一 次に掲げる額の合算額(災害その他の政令で定める特別の事情により当該合算額が多額となつたときは、当該合算額から当該事情により多額となつた部分の額として政令の定めるところにより算定した額を控除した額)
イ 一般被保険者に係る療養の給付に要した費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額並びに特定療養費、療養費及び高額療養費の支給に要した費用の額の合算額
ロ 老人保健法の規定による確定医療費拠出金の額
二 次に掲げる額の合算額
イ 政令の定めるところにより、年齢階層ごとに、当該年齢階層に係る平均一人当たり給付額に当該市町村の当該年齢階層に属する一般被保険者(老人保健法の規定による医療を受けることができる者を除く。)の数を乗じて得た額の合算額として算定した額
ロ 政令の定めるところにより、年齢階層ごとに、当該年齢階層に係る平均一人当たり老人医療費額に当該市町村の当該年齢階層に属する被保険者(老人保健法の規定による医療を受けることができる者に限る。)の数を乗じて得た額の合算額に、当該市町村に係る指定年度の同法第五十六条第二項の確定加入者調整率を乗じて得た額の十分の七に相当する額として算定した額
4 前項の政令で定める率は、すべての市町村に係る同項第二号に掲げる額に対する同項第一号に掲げる額の比率の状況等からみて、その比率が著しく大きい指定市町村について同項の規定が適用されるように定めるものとする。
5 第三項第二号イの「平均一人当たり給付額」とは、すべての市町村の一般被保険者(老人保健法の規定による医療を受けることができる者を除く。)に係る同項第一号イに掲げる額の合算額を当該一般被保険者の数で除して得た額をいい、同項第二号ロの「平均一人当たり老人医療費額」とは、同法第四十七条の規定により支弁が行われたすべての市町村の被保険者(同法の規定による医療を受けることができる者に限る。)に対する同条に規定する医療等に要する費用の額の合算額を当該被保険者の数で除して得た額をいう。
第七十二条第二項中「見込額」の下に「から前々年度の基準超過費用額の合算額を控除した額」を加える。
第七十二条の三を第七十二条の四とし、第七十二条の二を第七十二条の三とし、第七十二条の次に次の一条を加える。
(国民健康保険に関する特別会計への繰入れ等)
第七十二条の二 第七十条第三項に規定する市町村は、指定年度の翌々年度において、政令の定めるところにより、一般会計から、当該指定年度の基準超過費用額の二分の一に相当する額を国民健康保険に関する特別会計に繰り入れなければならない。
2 国及び都道府県は、政令の定めるところにより、前項の規定による繰入金の三分の一に相当する額をそれぞれ負担する。
第七十四条中「第七十二条」の下に「、第七十二条の二第二項」を加える。
第七十五条中「市町村は」の下に「、第七十二条の二第二項に規定するもののほか」を加える。
第八十一条の十第一項第二号中「第七十二条の二第一項」を「第七十二条の三第一項」に改める。
第八十一条の十一中「第七十二条の三第一項」を「第七十二条の四第一項」に改める。
第百十四条第二項中「特定療養費」の下に「若しくは特別療養費」を加える。
第百十八条の次に次の一条を加える。
(指定市町村に廃置分合があつた場合の特例)
第百十八条の二 第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村につき廃置分合があつた場合における当該廃置分合に係る市町村についての第七十条及び第七十二条の二第一項の規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。
附則に次の九項を加える。
11 市町村は、その行う国民健康保険の財政の基盤の安定に資するため、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、政令の定めるところにより、一般会計から、所得の少ない者について条例の定めるところにより行う保険料の減額賦課又は地方税法第七百三条の五に規定する国民健康保険税の減額に基づき一般被保険者に係る当該年度分の保険料又は同法の規定による国民健康保険税につき減額した額の総額を基礎とし、国民健康保険の財政の状況その他の事情を勘案して政令の定めるところにより算定した額を国民健康保険に関する特別会計に繰り入れなければならない。
12 国は、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、前項の規定による繰入金の二分の一に相当する額を負担する。
13 都道府県は、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、第十一項の規定による繰入金の四分の一に相当する額を負担する。
14 昭和六十三年度における第七十条の規定による国の負担については、同条第一項第一号中「合算額」とあるのは「合算額から昭和六十三年度における附則第十一項の規定による繰入金に相当する額を控除した額」と、同項第二号中「老人保健医療費拠出金の納付に要する費用の額に七分の十を乗じて得た額に、」とあるのは「老人保健法等の一部を改正する法律(昭和六十一年法律第百六号)附則第六条の規定による昭和六十三年度の概算医療費拠出金の額(以下「昭和六十三年度概算医療費拠出金の額」という。)と、昭和六十三年度概算医療費拠出金の額に七分の十を乗じて得た額に」と、「前号に掲げる額」とあるのは「前号に規定する合算額」と、「率を乗じて得た額」とあるのは「率(以下「給付率」という。)を乗じて得た額から昭和六十三年度概算医療費拠出金の額を控除した額に十分の四を乗じて得た額との合算額(同法附則第四条の規定による概算医療費拠出金の額(以下「昭和六十一年度概算医療費拠出金の額」という。)が同法附則第五条の規定による確定医療費拠出金の額(以下「昭和六十一年度確定医療費拠出金の額」という。)を超えるときは、その超える額とその超える額に係る老人保健法第五十四条第二項の規定による調整金額(以下「調整金額」という。)との合計額に七分の十を乗じて得た額に給付率を乗じて得た額を当該合算額から控除するものとし、昭和六十一年度概算医療費拠出金の額が昭和六十一年度確定医療費拠出金の額に満たないときは、その満たない額とその満たない額に係る調整金額との合計額に七分の十を乗じて得た額に給付率を乗じて得た額を当該合算額に加算するものとする。)」とする。
15 前項の規定は、昭和六十四年度における第七十条の規定による国の負担について準用する。この場合において、同項中「昭和六十三年度における」とあるのは「昭和六十四年度における」と、「昭和六十三年度の」とあるのは「昭和六十四年度の」と、「昭和六十三年度概算医療費拠出金の額」とあるのは「昭和六十四年度概算医療費拠出金の額」と、「同法附則第四条の規定による」とあるのは「同法附則第六条、第九条第一項及び第十条の規定により算定される昭和六十二年度の」と、「昭和六十一年度概算医療費拠出金の額」とあるのは「昭和六十二年度概算医療費拠出金の額」と、「同法附則第五条の規定による」とあるのは「同法附則第七条、第九条第二項において準用する同条第一項及び第十条の規定により算定される同年度の」と、「昭和六十一年度確定医療費拠出金の額」とあるのは「昭和六十二年度確定医療費拠出金の額」と読み替えるものとする。
16 昭和六十三年度における第七十二条の規定による調整交付金については、同条第二項中「第七十条第一項各号」とあるのは、「附則第十四項の規定により読み替えられた第七十条第一項各号」とする。
17 前項の規定は、昭和六十四年度における第七十二条の規定による調整交付金について準用する。この場合において、同項中「附則第十四項」とあるのは、「附則第十五項において準用する附則第十四項」と読み替えるものとする。
18 昭和六十五年度及び昭和六十六年度における第七十条の規定による国の負担及び第七十二条の規定による調整交付金に関し、第十四項から前項までの措置に伴い必要な第七十条及び第七十二条の規定の特例その他の事項は、政令で定める。
19 国及び都道府県は、高額な医療に関する給付の発生が国民健康保険の財政に与える影響を緩和するため、昭和六十三年度及び昭和六十四年度において、その会員である市町村に対して高額な医療に関する給付に係る交付金を交付する事業を行う連合会に対し、当該事業に要する費用の一部を補助することができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(経過措置)
第二条 改正後の国民健康保険法(以下「新法」という。)第五十四条の二の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に行われる療養及び当該療養に係る療養費の支給について適用し、施行日前に行われた療養及び当該療養に係る療養費の支給については、なお従前の例による。
第三条 昭和六十三年度につき新法第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村であつて新法第七十条第三項に規定する市町村に該当するものに対して国が昭和六十五年度において同項の規定により負担する額については、同項中「百分の四十に相当する額を控除した額」とあるのは、「百分の二十に相当する額を控除した額」とする。
2 昭和六十五年度における新法第七十二条の規定による調整交付金の総額については、同条第二項中「前々年度の基準超過費用額の合算額」とあるのは、「昭和六十三年度の基準超過費用額の合算額の二分の一に相当する額」とする。
3 第一項に規定する市町村の昭和六十五年度における新法第七十二条の二第一項の規定による繰入れについては、同項中「二分の一」とあるのは、「四分の一」とする。
第四条 昭和六十三年度及び昭和六十四年度につき新法第六十八条の二第一項の規定により指定を受けた市町村について新法第七十条第三項の規定を適用する場合においては、同項第二号ロ中「合算額に、」とあるのは「合算額に百分の十を乗じて得た額と、当該合算額の百分の九十に相当する額に」と、「の十分の七」とあるのは「との合計額の十分の七」とする。
(健康保険法等の一部を改正する法律の一部改正)
第五条 健康保険法等の一部を改正する法律(昭和五十九年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
附則第十七条第一項第一号中「第七十二条の二第一項」を「第七十二条の三第一項」に改め、同項第二号中「第七十条に規定する額」を「第七十条第一項及び第二項の規定により算定した額」に改める。
(租税特別措置法の一部改正)
第六条 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第二十六条第二項第一号中「特定療養費又は家族療養費」を「特定療養費、家族療養費又は特別療養費(国民健康保険法第五十四条の二第二項に規定する特別療養費をいう。以下この号において同じ。)」に、「又は家族療養費の額」を「、家族療養費の額又は特別療養費の額」に改め、「相当する部分」の下に「(特別療養費に係る当該部分にあつては、当該部分であることにつき大蔵省令で定めるところにより証明がされたものに限る。)」を加える。
(租税特別措置法の一部改正に伴う経過措置)
第七条 前条の規定による改正後の租税特別措置法第二十六条第二項の規定は、施行日以後に行われる同項に規定する社会保険診療について適用し、施行日前に行われた前条の規定による改正前の同法第二十六条第二項に規定する社会保険診療については、なお従前の例による。
(地方税法の一部改正)
第八条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の十四第一項中「特定療養費又は家族療養費」を「特定療養費、家族療養費又は特別療養費(国民健康保険法第五十四条の二第二項に規定する特別療養費をいう。以下本項において同じ。)」に、「又は家族療養費の額」を「、家族療養費の額又は特別療養費の額」に改め、「相当する部分」の下に「(特別療養費に係る当該部分にあつては、当該部分であることにつき自治省令で定めるところにより証明がされたものに限る。)」を加える。
(地方税法の一部改正に伴う経過措置)
第九条 前条の規定による改正後の地方税法第七十二条の十四第一項及び第七十二条の十七第一項の規定は、施行日以後に行われる前条の規定による改正後の同法第七十二条の十四第一項に規定する療養の給付について適用し、施行日前に行われた前条の規定による改正前の同法第七十二条の十四第一項に規定する療養の給付については、なお従前の例による。
大蔵大臣 宮沢喜一
厚生大臣 藤本孝雄
自治大臣 梶山静六
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 宮沢喜一