(漁業権の定義)
第六條 この法律において「漁業権」とは、定置漁業権、区画漁業権及び共同漁業権をいう。
2 「定置漁業権」とは、定置漁業を営む権利をいい、「区画漁業権」とは、区画漁業を営む権利をいい、「共同漁業権」とは、共同漁業を営む権利をいう。
3 「定置漁業」とは、漁具を定置して営む漁業であつて左に掲げるものをいう。
一 身網の設置される場所の最深部が最高潮時において水深二十七メートル以上であるもの
二 北海道においてにしん、いわし、さけ又はます(陸封性のますを除く。)を主たる漁獲物とするもの
4 「区画漁業」とは、左に掲げる漁業をいう。
一 第一種区画漁業一定の区域内において石、かわら、竹、木等を敷設して営む養殖業
二 第二種区画漁業 土、石、竹、木等によつて囲まれた一定の区域内において営む養殖業
三 第三種区画漁業 一定の区域内において営む養殖業であつて前二号に掲げるもの以外のもの
5 「共同漁業」とは、左に掲げる漁業であつて一定の水面を共同に利用して営むものをいう。
一 第一種共同漁業 そう類、貝類又は主務大臣の指定する定着性の水産動物を目的とする漁業
二 第二種共同漁業 網漁具(えりやな類を含む。)を移動しないように敷設して営む漁業であつて定置漁業以外のもの
三 第三種共同漁業 地びき網漁業、地こぎ網漁業、船びき網漁業、飼付漁業、しいらづけ漁業又はつきいそ漁業
五 第五種共同漁業 内水面(主務大臣の指定する湖沼を除く。以下第二十五條までにおいて同じ。)又は主務大臣の指定する湖沼に準ずる海面において営む漁業であつて前四号に掲げるもの以外のもの
(入漁権の定義)
第七條 この法律において「入漁権」とは、設定行為に基き、他人の共同漁業権又はひび建養殖業、かき養殖業若しくは第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権に属する漁場においてその漁業権の内容たる漁業の全部又は一部を営む権利をいう。
(各自漁業を営む権利)
第八條 漁業協同組合の組合員であつて漁民(漁業者又は漁業従事者たる個人をいう。以下同じ。)であるものは、定款の定めるところにより、当該漁業協同組合又は当該漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会の有する共同漁業権、区画漁業権(ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とするものに限る。)又は入漁権の範囲内において各自漁業を営む権利を有する。
(漁業権に基かない定置漁業等の禁止)
第九條 定置漁業及び区画漁業は、漁業権又は入漁権に基くのでなければ、営んではならない。
(漁業の免許)
第十條 漁業権の設定を受けようとする者は、都道府県知事に申請してその免許を受けなければならない。
(免許の内容等の事前決定)
第十一條 都道府県知事は、漁業の免許について、海区漁業調整委員会の意見をきき、漁業種類、漁場の位置及び区域、漁業時期その他免許の内容たるべき事項、申請期間並びに共同漁業についてはその関係地区をあらかじめ定めなければならない。
2 都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきいて、前項の規定により定めた免許の内容たるべき事項、申請期間又は関係地区を変更することができる。
3 海区漁業調整委員会は、前二項の意見を述べようとするときは、あらかじめ、期日及び場所を公示して公聽会を開き、利害関係人の意見をきかなければならない。
4 第一項又は第二項の規定により免許の内容たるべき事項、申請期間及び関係地区を定め、又はこれを変更したときは、都道府県知事は、これを公示しなければならない。
(海区漁業調整委員会への諮問)
第十二條 第十條の免許の申請があつたときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
(免許をしない場合)
第十三條 左の各号の一に該当する場合は、都道府県知事は、漁業の免許をしてはならない。
一 申請者が第十四條に規定する適格性を有する者でない場合
二 第十一條第四項の規定により公示した漁業の免許の内容と異なる申請があつた場合
三 その申請に係る漁業と同種の漁業を内容とする漁業権の不当な集中に至る虞がある場合
五 免許を受けようとする漁場の敷地が他人の所有に属する場合又は水面が他人の占有に係る場合において、その所有者又は占有者の同意がないとき
2 前項第五号の場合においてその者の住所又は居所が明らかでないため同意が得られないときは、最高裁判所の定める手続により、裁判所の許可をもつてその者の同意に代えることができる。
3 前項の許可に対する裁判に関しては、最高裁判所の定める手続により、上訴することができる。
4 第一項第五号の所有者又は占有者は、正当な事由がなければ、同意を拒むことができない。
5 海区漁業調整委員会は、都道府県知事に対し、第一項の規定により漁業の免許をすべきでない旨の意見を述べようとするときは、あらかじめ、当該申請者に同項各号の一に該当する理由を文書をもつて通知し、当該申請者又はその代理人が公開の聽聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を與えなければならない。
(免許についての適格性)
第十四條 定置漁業又は区画漁業の免許について適格性を有する者は、左の各号のいずれにも該当しない者とする。
一 海区漁業調整委員会における投票の結果、総委員の三分の二以上によつて漁業若しくは労働に関する法令を遵守する精神を著しく欠き、又は漁村の民主化を阻害すると認められた者であること。
二 海区漁業調整委員会における投票の結果、総委員の三分の二以上によつて、どんな名目によるのであつても、前号の規定により適格性を有しない者によつて、実質上その申請に係る漁業の経営が支配される虞があると認められた者であること。
2 ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業の免許については、地元地区(自然的及び社会経済的條件により、当該漁業の漁場が属すると認められる地区をいう。以下同じ。)の全部又は一部をその地区内に含む漁業協同組合又はその漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会であつて当該漁業権の内容たる漁業を営まないものは、前項の規定にかかわらず、左に掲げるものに限り、適格性を有する。但し、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十八條第二項の規定により組合員の資格を限る漁業協同組合及びその漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会は、適格性を有しない。
一 その組合員(漁業協同組合連合会の場合にはその会員たる漁業協同組合の組合員。以下同じ。)のうち地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者(内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業の場合には当該漁業の漁業従事者又は当該漁業の目的たる水産動物の採捕を業とする者を含む。以下同じ。)の属する世帶の数が、地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帶の数の三分の二以上であるもの
二 二以上共同して申請した場合において、これらの組合員のうち地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帶の総数が、地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帶の数の三分の二以上であるもの
3 前項の地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者を組合員とする漁業協同組合又は漁業協同組合連合会が同項の規定により適格性を有する漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に対して同項に規定する漁業の免許を共同して申請することを申し出た場合には、その漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、正当な事由がなければ、これを拒むことができない。
4 第二項の規定により適格性を有する漁業協同組合又は漁業協同組合連合会が同項に規定する漁業の免許を受けた場合には、その免許の際に同項の地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者であつた者を組合員とする漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、都道府県知事の認可を受けて、その漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に対し当該漁業権を共有すべきことを請求することができる。この場合には、第二十七條第一項の規定は、適用しない。
5 前項の認可の申請があつたときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
6 共同漁業の免許について適格性を有する者は、第十一條に規定する関係地区の全部又は一部をその地区内に含む漁業協同組合又はその漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会であつて左に掲げるものとする。
一 その組合員のうち関係地区内に住所を有し一年に三十日以上沿岸漁業(第七十五條第三項に掲げる漁業と第百二十七條に規定する内水面における漁業とを除いた漁業をいう。以下同じ。)を営む者(河川以外の第百二十七條に規定する内水面における共同漁業の免許については当該内水面において漁業を営む者、河川における共同漁業の免許については遊漁者以外の当該河川において水産動植物の採捕又は養殖をする者。以下同じ。)の属する世帶の数が関係地区内に住所を有し一年に三十日以上沿岸漁業を営む者の属する世帶の数の三分の二以上であるもの
二 二以上共同して申請した場合において、これらの組合員のうち関係地区内に住所を有し一年に三十日以上沿岸漁業を営む者の属する世帶の総数が、関係地区内に住所を有し一年に三十日以上沿岸漁業を営む者の属する世帶の数の三分の二以上であるもの
7 第三項から第五項までの規定は、共同漁業に準用する。この場合において、「地元地区」とあるのは「関係地区」と、「当該漁業」とあるのは「一年に三十日以上沿岸漁業」と読み替えるものとする。
8 漁業協同組合又は漁業協同組合連合会が第一種共同漁業又は第五種共同漁業を内容とする共同漁業権を取得した場合においては、海区漁業調整委員会は、その漁業協同組合又は漁業協同組合連合会と第十一條に規定する関係地区内に住所を有する漁民であつてその組合員でないものとの関係において当該共同漁業権の行使を適切にするため、第六十七條第一項の規定に従い、必要な指示をするものとする。
9 旧漁業法(明治三十四年法律第三十四号)施行前からの慣行によりこの法律施行の際現に効力を有する專用漁業権を有している市、町、村、町村組合又は財産区であつて特別の事情によりこれに免許をするのが妥当であると認められるものは、第六項の規定にかかわらず、第一種共同漁業の免許について適格性を有する。
(定置漁業の免許の優先順位)
第十六條 定置漁業の免許の優先順位は、左の順序による。
2 前項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
二 沿岸漁業であつて前号に掲げる漁業以外のものに経験がある者
3 前項の規定において「経験」とは、その申請の日以前十箇年(この法律施行後主務大臣が指定する期日までの間は、昭和二十三年九月一日以前十箇年)の間において、漁業を営み又はこれに従事したことをいう。以下第十九條までにおいて同じである。
4 前三項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
一 その申請に係る漁業の漁場の存する第八十四條第一項の海区(以下「当該海区」という。)において経験がある者
5 前四項の規定により同順位の者がある場合においては、都道府県知事は、免許をするには、その申請に係る漁業について左に掲げる事項を勘案しなければならない。
二 地元地区内に住所を有する漁民特に当該漁業の操業により従前の生業を奪われる漁民を使用する程度
三 地元地区内に住所を有する漁民が当該漁業の経営に参加する程度
四 当該漁業についての経験の程度、資本その他の経営能力
六 当該漁業の漁場の属する水面において操業する他の漁業との協調その他当該水面の総合的利用に関する配慮の程度
6 地元地区内に住所を有する漁民七人以上によつて構成される法人であつて左の各号の全部に該当するものは、前五号の規定にかかわらず、第一順位とする。
一 漁業を営むことを主たる目的とする者であること。
二 構成員の過半数が、当該海区においてその申請に係る漁業と同種の漁業に経験がある者であるか又は当該漁業の免許が他の者にされたときは従前の生業を失うに至る者であること。
三 構成員の三分の二以上がその営む事業に常時従事する者であること。
四 当該漁業に常時従事する者の三分の二以上がその構成員であること。
五 構成員のうちその営む事業に常時従事する者の出資額が総出資額の過半を占めていること。
六 一構成員の出資額が構成員の平均出資額の二倍に相当する額をこえず、且つ、その出資することができる額の最高限度が定められていること。
7 前項の規定により同順位の者がある場合においては、都道府県知事は、免許をするには、その申請に係る漁業について第五項第三号から第六号までに掲げる事項を勘案しなければならない。
8 地元地区の全部又は一部をその地区内に含む漁業協同組合であつてその組合員(二以上共同して申請した場合にはこれらの総組合員)のうち地元地区内に住所を有し漁民である者の属する世帶の数が地元地区内に住所を有する漁民の属する世帶の数の七割以上であるもの又は地元地区内に住所を有する漁民によつて構成される法人であつて左の各号の全部に該当するものは、前七項の規定にかかわらず、第一順位とする。
一 構成員(二以上共同して申請した場合にはその総構成員)の属する世帶の数が地元地区内に住所を有する漁民の属する世帶の数の七割以上であること。
二 当該漁業に常時従事する者の三分の二以上がその構成員であるか又はその構成員と世帶を同じくする者であること。
9 地元地区の属する市町村又は市町村内の漁民の部落が孤立しており、且つ、その区域内に住所を有する者が当該漁業に高度に依存している場合においては、当該漁業については、当該市町村又は当該部落を地区とし、地区内に住所を有する者によつて構成される法人であつて左の各号の全部に該当するものは、前八項の規定にかかわらず、第一順位とする。
一 構成員の属する世帶の数が地区内の総世帶数の七割以上であること。
二 構成員のうち漁民であるものの属する世帶の数が地区内に住所を有する漁民の属する世帶の数の八割以上であり、且つ、構成員の属する世帶の数の七割以上であること。
三 当該漁業に常時従事する者の三分の二以上がその構成員であるか又はその構成員と世帶を同じくする者であること。
10 第八項の地元地区内に住所を有する漁民が同項の漁業協同組合若しくは法人に加入を申し出た場合又は前項の地区内に住所を有する者が同項の法人に加入を申し出た場合には、申出を受けた者は、正当な事由がなければ、これを拒むことができない。第八項の地元地区の全部又は一部をその地区内に含む漁業協同組合又は同項の地元地区内に住所を有する漁民によつて構成される法人が同項に規定する漁業協同組合又は法人に対し当該漁業の免許を共同して申請することを申し出た場合もまた同じである。
11 二人以上共同して申請した場合において、その申請者が第一項、第二項又は第四項の各号のいずれに該当するかは、各申請者のうちいずれに該当する者が議決権及び出資額において過半を占めているかによつて定める。この場合において、いずれに該当する者も議決権及び出資額において過半を占めていない場合は、その申請者は、第一項第二号、第二項第三号又は第四項第二号に該当するものとみなす。
12 二人以上共同して申請した場合において、その申請者が第六項、第八項又は第九項に規定する者に該当するかどうかは、各申請者のうち第六項、第八項又は第九項に規定する者に該当する者が議決権及び出資額において過半を占めているかどうかによつて定める。
13 法人が第一項第一号、第二項第一号若しくは第二号又は第四項第一号に該当しない場合であつても、その構成員のうちこれに該当する者が議決権及び出資額において過半を占めている場合は、その法人は、これに該当するものとみなす。
14 第十一項又は前項の議決権及び出資額の過半の計算については、第二項第一号に該当する者は、同項第二号に該当する者でもあるとみなす。
15 法人以外の社団は、前十四項の規定の適用に関しては、法人とみなす。
(区画漁業の免許の優先順位)
第十七條 区画漁業(ひび建養殖業、かき養殖業、真珠養殖業、内水面における魚類養殖業及び第三種区画漁業たる貝類養殖業を除く。)の免許の優先順位は、左の順序による。
2 前項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
3 前二項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
4 前三項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
二 沿岸漁業であつて前号に掲げる漁業以外のものに経験がある者
5 前四項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
6 前五項の規定により同順位の者がある場合においては、都道府県知事は、免許をするには、その申請に係る漁業について左の事項を勘案しなければならない。
四 地元地区内に住所を有する漁民が当該漁業の経営に参加する程度
五 当該漁業についての経験の程度、資本その他経営能力
六 当該漁業の漁場の属する水面において操業する他の漁業との協調その他当該水面の総合的利用に関する配慮の程度
7 前六項の規定の適用に関しては、前條第十一項及び第十三項から第十五項までの規定を準用する。この場合において、第十六條第十一項中「第一項、第二項又は第四項」とあるのは「第十七條第一項から第五項まで」と、「第一項第二号、第二項第三号又は第四項第二号」とあるのは「第十七條第一項第二号、第二項第二号、第三項第二号、第四項第三号又は第五項第二号」と、第十三項中「第一項第一号、第二項第一号若しくは第二号又は第四項第一号」とあるのは「第十七條第一項第一号、第二項第一号、第三項第一号、第四項第一号若しくは第二号又は第五項第一号」と、第十四項中「第二項第一号」とあるのは「第十七條第四項第一号」と読み替えるものとする。
8 法人が地元地区内に住所を有する場合であつても、その構成員のうち地元地区内に住所を有する者が議決権及び出資額において過半を占めていない場合は、第三項の規定の適用に関しては、その法人は、地元地区内に住所を有しないものとみなす。
第十八條 ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業の免許の優先順位は、第十四條第二項の規定により適格性を有する者を第一順位とする。
2 前項に規定する者が申請しない場合においては、前條並びに第十六條第六項から第八項まで、第十項、第十二項及び第十五項の規定を準用する。この場合において、第十六條第六項中「前五項」とあるのは「第十八條第二項において準用する第十七條」と、同條第八項中「前七項」とあるのは「第十八條第二項において準用する第十七條及び第十六條第六項、第七項」と読み替えるものとする。
第十九條 真珠養殖業を内容とする区画漁業の免許の優先順位は、左の順序による。
2 前項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
3 第一項及び前項第二号の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。
4 前三項の規定により同順位の者がある場合においては、都道府県知事は、免許をするには、その申請に係る漁業について左に掲げる事項を勘案しなければならない。
二 地元地区内に住所を有する漁民を使用する程度。大規模の経営の場合にあつては、特に、当該漁業の操業により従前の生業を奪われる漁民を使用する程度
三 当該漁業についての経験の程度、資本その他経営能力。特に当該漁業に関する進歩的企画の程度
五 当該漁業の漁場の属する水面において操業する他の漁業との協調その他当該水面の総合的利用に関する配慮の程度
5 前四項の規定の適用に関しては、第十六條第十一項、第十三項、第十五項及び第十七條第八項の規定を準用する。
(共同漁業の免許の優先順位)
第二十條 第一種共同漁業の免許の優先順位は、左の順序による。
(漁業権の存続期間)
第二十一條 漁業権の存続期間は、免許の日から起算して、定置漁業権又は区画漁業権にあつては五年、共同漁業権にあつては十年とする。
2 区画漁業権については、前項の期間は、その満了の際、漁業権者の申請により、延長することができる。
3 前項の申請があつたときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきき、第三十七條、第三十八條、第三十九條第一項若しくは第二項又は第四十條の規定による漁業権又は免許の取消事由がある場合を除いて、期間延長の免許をしなければならない。
4 第二項の規定により延長する期間は五年とする。但し、再延長を妨げない。
5 都道府県知事は、漁業調整のため必要な限度において第一項又は前項の期間より短い期間を定めることができる。
(漁業権の分割又は変更)
第二十二條 漁業権を分割し、又は変更しようとするときは、都道府県知事に申請してその免許を受けなければならない。
2 前項の場合においては、第十二條(海区漁業調整委員会への諮問)及び第十三條(免許をしない場合)の規定を準用する。
(漁業権の性質)
第二十三條 漁業権は、物権とみなし、土地に関する規定を準用する。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第二編第九章(質権)の規定は定置漁業権及び区画漁業権(ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権であつて漁業協同組合又は漁業協同組合連合会の有するものを除く。第二十四條から第二十八條までにおいて同じ。)に、第八章から第十章まで(先取特権、質権及び抵当権)の規定はひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権であつて漁業協同組合又は漁業協同組合連合会の有するもの及び共同漁業権に、いずれも適用しない。
(抵当権の設定)
第二十四條 定置漁業権又は区画漁業権について抵当権を設定した場合において、その漁場に定着した工作物は、民法第三百七十條(抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲)の規定の準用に関しては、漁業権に附加してこれと一体を成す物とみなす。定置漁業権又は区画漁業権が先取特権の目的である場合もまた同じである。
2 定置漁業権は、都道府県知事の認可を受けた場合を除き、抵当権の目的となることができない。
3 都道府県知事は、定置漁業権を目的とする抵当権の設定が、当該漁業の経営に必要な資金の融通のためやむを得ないと認められる場合でなければ、前項の認可をしてはならない。
4 第二項の認可をしようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
(区画漁業権の讓渡により先取特権又は抵当権が消滅する場合)
第二十五條 ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権が先取特権又は抵当権の目的である場合において、これを漁業協同組合又は漁業協同組合連合会に讓渡するには、漁業権者は、先取特権者又は抵当権者(登録した者に限る。以下同じ。)の同意を得なければならない。
2 先取特権者又は抵当権者は、正当な事由がなければ、前項の同意を拒むことができない。
3 第一項の讓渡があつたときは、先取特権又は抵当権は、消滅する。
(漁業権の移転の制限又は禁止)
第二十六條 区画漁業権は、都道府県知事の認可を受けた場合を除き、移転(讓渡、滯納処分、強制執行並びに先取特権及び抵当権の実行による移転をいう。第二項、第二十七條第一項及び附則第五項において同じ。)の目的となることができない。
2 都道府県知事は、第十四條第一項又は第二項に規定する適格性を有する者に移転する場合でなければ、前項の認可をしてはならない。
3 前項の規定により認可をしようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
第二十七條 区画漁業権以外の漁業権は、移転の目的となることができない。但し、定置漁業権については、先取特権又は抵当権の実行による場合及び第二十八條第二項の讓渡の場合は、この限りでない。
2 前項但書の規定による定置漁業権の移転には、前條の規定を準用する。
(相続によつて取得した定置漁業権又は区画漁業権)
第二十八條 相続によつて定置漁業権又は区画漁業権を取得した者は、取得の日から二箇月以内に都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきき、前項の者が第十四條第一項に規定する適格性を有する者でないと認めるときは、一定期間内に讓渡しなければその漁業権を取り消すべき旨をその者に通知しなければならない。
(水面使用の権利義務)
第二十九條 漁業権者の有する水面使用に関する権利義務(当該漁業権者が当該漁業に関し行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)は、漁業権の処分に従う。
(貸付の禁止)
第三十條 漁業権は、貸付の目的となることができない。
(登録した権利者の同意)
第三十一條 漁業権は、第五十條の規定により登録した権利者の同意を得なければ、分割し、変更し、又は放棄することができない。
2 第十三條第二項から第四項まで(同意が得られない場合等)の規定は、前項の同意に準用する。
(漁業権の共有)
第三十二條 漁業権の各共有者は、他の共有者の三分の二以上の同意を得なければ、その持分を処分することができない。
2 第十三條第二項から第四項まで(同意が得られない場合等)の規定は、前項の同意に準用する。
第三十三條 漁業権の各共有者がその共有に属する漁業権を変更するために他の共有者の同意を得ようとする場合においては、第十三條第二項から第四項まで(同意が得られない場合等)の規定を準用する。
(漁業権の制限又は條件)
第三十四條 都道府県知事は、漁業調整その他公益上必要があると認めるときは、免許をするにあたり、漁業権に制限又は條件を付けることができる。
2 前項の制限又は條件を付けようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
3 都道府県知事は、免許後、海区漁業調整委員会が漁業調整その他公益上必要があると認めて申請したときは、漁業権に制限又は條件を付けることができる。
4 海区漁業調整委員会は、前項の申請をしようとするときは、あらかじめ、当該漁業権者に制限又は條件を付ける理由を文書をもつて通知し、当該漁業権者又はその代理人が公開の聽聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を與えなければならない。
(休業の届出)
第三十五條 漁業権者が一漁業時期以上にわたつて休業しようとするときは、休業期間を定め、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
(休業中の漁業許可)
第三十六條 前條の休業期間中は、第十四條第一項に規定する適格性を有する者は、第九條の規定にかかわらず、都道府県知事の許可を受けて当該漁業権の内容たる漁業を営むことができる。
2 前項の許可の申請があつたときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の許可を受けた者に対して、当該漁業権の免許料の全部又は一部を負担すべきことを命ずることができる。
4 第一項の許可については、第十三條第一項第四号、第五号(免許をしない場合)、第三十四條(漁業権の制限又は條件)、第三十五條(休業の届出)、第三十七條、第三十八條第一項、第二項、第五項、第三十九條(漁業権の取消)及び第四十條(錯誤によつてした免許の取消)の規定を準用する。この場合において、第三十八條第一項中「第十四條」とあるのは「第十四條第一項」と読み替えるものとする。
5 前四項の規定は、第三十九條第二項の規定に基く処分により漁業権の行使を停止された期間中他の者が当該漁業を営もうとする場合に準用する。
(休業による漁業権の取消)
第三十七條 免許を受けた日から一年間、又は引き続き二年間休業したときは、都道府県知事は、その漁業権を取り消すことができる。
2 漁業権者の責に帰すべき事由による場合を除き、第三十九條第一項の規定に基く処分、第六十五條第一項の規定に基く命令、第六十七條第一項の規定に基く指示又は同條第七項の規定に基く命令により漁業権の行使を停止された期間は、前項の期間に算入しない。
3 第一項の規定により漁業権を取り消そうとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
4 前項の場合には、第三十四條第四項(聽聞)の規定を準用する。
(適格性の喪失等による漁業権の取消)
第三十八條 漁業の免許を受けた後に漁業権者が第十四條に規定する適格性を有する者でなくなつたときは、都道府県知事は、漁業権を取り消さなければならない。
2 前項の規定により漁業権を取り消そうとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
3 漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配しており、且つ、その者には第十五條から第二十條まで(優先順位)の規定によれば当該漁業の免許をしないことが明らかであると認めて、海区漁業調整委員会が漁業権を取り消すべきことを申請したときは、都道府県知事は、漁業権を取り消すことができる。
4 前項の規定の適用については、漁業権者たる漁業協同組合が他の者の出資を受けて当該漁業権の内容たる漁業を営む場合において、当該出資額が出資総額の過半を占めていることをもつてその他の者が実質上当該漁業の経営を支配していると解釈してはならない。
5 第二項及び第三項の場合には、第三十四條第四項(聽聞)の規定を準用する。
(公益上の必要による漁業権の変更、取消又は行使の停止)
第三十九條 漁業調整、船舶の航行、てい泊、けい留、水底電線の敷設その他公益上必要があると認めるときは、都道府県知事は、漁業権を変更し、取り消し、又はその行使の停止を命ずることができる。
2 漁業権者が漁業に関する法令の規定に違反したときもまた前項に同じである。
3 前二項の規定による処分をしようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
4 前項の場合には、第三十四條第四項(聽聞)の規定を準用する。
5 政府は、第一項の規定による漁業権の変更若しくは取消又はその行使の停止によつて生じた損失を当該漁業権者に対し補償しなければならない。
6 前項の規定により補償すべき損失は、同項の処分によつて通常生ずべき損失とする。
7 第五項の補償金額は、都道府県知事が海区漁業調整委員会の意見をきき、且つ、主務大臣の認可を受けて決定する。
8 前項の補償金額に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から九十日以内に、訴をもつてその増額を請求することができる。
10 第一項の規定により取り消された漁業権の上に先取特権又は抵当権があるときは、当該先取特権者又は抵当権者から供託をしなくてもよい旨の申出がある場合を除き、政府は、その補償金を供託しなければならない。
11 前項の先取特権者又は抵当権者は、同項の規定により供託した補償金に対してその権利を行うことができる。
12 第一項の規定による漁業権の変更若しくは取消又はその行使の停止によつて利益を受ける者があるときは、都道府県知事は、その者に対し、第五項の補償金額の全部又は一部を負担させることができる。
13 前項の場合には、第八項、第九項、第三十四條第二項、第四項(漁業権の制限又は條件)及び第七十七條から第八十一條まで(免許料又は許可料の徴收)の規定を準用する。この場合において、第八項中「増額」とあるのは「減額」と読み替えるものとする。
(錯誤によつてした免許の取消)
第四十條 錯誤により免許をした場合においてこれを取り消そうとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見をきかなければならない。
(抵当権者の保護)
第四十一條 漁業権を取り消したときは、都道府県知事は、直ちに、先取特権者又は抵当権者にその旨を通知しなければならない。
2 前項の権利者は、通知を受けた日から三十日以内に漁業権の競売を請求することができる。但し、第三十九條第一項の規定による取消又は錯誤によつてした免許の取消の場合は、この限りでない。
3 漁業権は、前項の期間内又は競売の手続完結の日まで、競売の目的の範囲内においては、なお存続するものとみなす。
4 競売による売得金は、競売の費用及び第一項の権利者に対する債務の弁済に充て、その残金は国庫に帰属する。
5 競落を許す決定が確定したときは、漁業権の取消はその効力を生じなかつたものとみなす。
(漁場に定着した工作物の買取)
第四十二條 漁場に定着する工作物を設置して漁業権の価値を増大せしめた漁業権者は、その漁業権が消滅したときは、当該工作物の利用によつて利益を受ける漁業の免許を受けた者に対し、時価をもつて当該工作物を買い取るべきことを請求することができる。
(入漁権の性質)
2 入漁権は、相続及び讓渡の目的となる外、権利の目的となることができない。
3 入漁権は、漁業権者の同意を得なければ、讓渡することができない。
(入漁権の内容の書面化)
第四十四條 入漁権については、書面により左に掲げる事項を明らかにしなければならない。
二 入漁すべき漁業の種類、漁獲物の種類及び漁業時期
六 漁船、漁具又は漁業者の数について定があるときはその事項
(裁定による入漁権の設定、変更及び消滅)
第四十五條 入漁権の設定を求めた場合において漁業権者が不当にその設定を拒み、又は入漁権の内容が適正でないと認めてその変更若しくは消滅を求めた場合において相手方が不当にその変更若しくは消滅を拒んだときは、入漁権の設定、変更又は消滅を拒まれた者は、海区漁業調整委員会に対して、入漁権の設定、変更又は消滅に関する裁定を申請することができる。
2 前項の規定による裁定の申請があつたときは、海区漁業調整委員会は、相手方にその旨を通知し、且つ、命令の定めるところにより、これを公示しなければならない。
3 第一項の規定による裁定の申請の相手方は、前項の公示の日から二週間以内に海区漁業調整委員会に意見書を差し出すことができる。
4 海区漁業調整委員会は、前項の期間を経過した後に審議を開始しなければならない。
5 裁定は、その申請の範囲をこえることができない。
6 裁定においては、左の事項を定めなければならない。
一 入漁権の設定に関する裁定の申請の場合にあつては、設定するかどうか、設定する場合はその内容及び設定の時期
二 入漁権の変更に関する裁定の申請の場合にあつては、変更するかどうか、変更する場合はその内容及び変更の時期
三 入漁権の消滅に関する裁定の申請の場合にあつては、消滅させるかどうか、消滅させる場合は消滅の時期
7 海区漁業調整委員会は、裁定をしたときは、遅滯なくその旨を裁定の申請の相手方に通知し、且つ、命令の定めるところにより、これを公示しなければならない。
8 前項の公示があつたときは、その時に、裁定の定めるところにより当事者間に協議がととのつたものとみなす。
(入漁権の存続期間)
第四十六條 存続期間について別段の定がない入漁権は、その目的たる漁業権の存続期間中存続するものとみなす。但し、入漁権者は、何時でもその権利を放棄することができる。
(入漁権の共有)
第四十七條 第三十二條及び第三十三條(漁業権の共有)の規定は、入漁権を共有する場合に準用する。
(入漁料の不拂等)
第四十八條 入漁権者が入漁料の支拂を怠つたときは、漁業権者は、その入漁を拒むことができる。
2 入漁権者が引き続き二年以上入漁料の支拂を怠り、又は破産の宣告を受けたときは、漁業権者は、入漁権の消滅を請求することができる。
第四十九條 入漁料は、入漁しないときは、支拂わなくてもよい。
(登録)
第五十條 漁業権、これを目的とする先取特権、抵当権及び入漁権の設定、保存、移転、変更、消滅及び処分の制限並びに第三十九條第一項又は第二項の規定による漁業権の行使の停止及びその解除は、免許漁業原簿に登録する。
3 前二項に規定するものの外、登録に関して必要な規定は、命令で定める。
(裁判所の管轄)
第五十一條 裁判所の土地の管轄が不動産所在地によつて定まる場合には、漁場に最も近い沿岸の属する市町村を不動産所在地とみなす。