朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル漁業法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年四月二十日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
內務大臣 法學博士 男爵 平田東助
農商務大臣 小松原英太郞
法律第五十八號
漁業法
第一條 本法ニ於テ漁業ト稱スルハ營利ノ目的ヲ以テ水產動植物ノ採捕又ハ養殖ヲ業トスルヲ謂フ
本法ニ於テ漁業者ト稱スルハ漁業ヲ爲ス者及漁業權又ハ入漁權ヲ有スル者ヲ謂フ
第二條 公共ノ用ニ供セサル水面ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ノ規定ヲ適用セス
第三條 公共ノ用ニ供スル水面ト連接シ一體ヲ成ス公共ノ用ニ供セサル水面ニハ本法ヲ適用ス
前項ノ水面ノ占有者又ハ其ノ敷地ノ所有者ハ行政官廳ノ許可ヲ得テ漁業ニ關シ之カ利用ヲ制限シ又ハ廢止スルコトヲ得
第四條 漁具ヲ定置シ又ハ水面ヲ區劃シテ漁業ヲ爲スノ權利ヲ得ムトスル者ハ行政官廳ノ免許ヲ受クヘシ其ノ免許スヘキ漁業ノ種類ハ主務大臣之ヲ指定ス
第五條 水面ヲ專用シテ漁業ヲ爲スノ權利ヲ得ムトスル者ハ行政官廳ノ免許ヲ受クヘシ
前項ノ免許ハ漁業組合カ其ノ地先水面ノ專用ヲ出願シタル場合ノ外之ヲ與ヘス
第六條 前二條ノ外主務大臣ニ於テ免許ヲ受ケシムル必要アリト認ムル漁業ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 漁業權ハ物權ト看做シ土地ニ關スル規定ヲ準用ス
民法第二編第九章ノ規定ハ漁業權ニ之ヲ適用セス
第八條 漁業權ヲ抵當ト爲シタル場合ニ於テ其ノ漁場ニ定著シタル工作物ハ民法第三百七十條ノ準用ニ關シテハ漁業權ニ附加シテ之ト一體ヲ成シタル物ト看做ス
第九條 裁判所ノ土地ノ管轄カ不動產所在地ニ依リテ定マル場合ニ於テハ漁場ニ最近キ沿岸ノ屬スル市町村又ハ之ニ相當スル行政區劃ヲ以テ不動產所在地ト看做ス
第十條 漁業權ハ行政官廳ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ分割シ其ノ他變更スルコトヲ得ス
地先水面專用ノ漁業權ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ處分スルコトヲ得ス
第十一條 漁業權者ノ有スル水面使用ニ關スル權利義務ハ漁業權ノ處分ニ從フ
第十二條 入漁權者ハ設定行爲又ハ舊法施行前ノ慣行ニ從ヒ他人ノ專用漁業權ニ屬スル漁場內ニ入會ヒ其ノ專用漁業權ノ全部又ハ一部ノ漁業ヲ爲スノ權利ヲ有ス
第十三條 入漁權ハ物權ト看做ス
入漁權ハ相續及讓渡ノ目的タル外權利ノ目的タルコトヲ得ス
第十四條 入漁權ハ漁業權者ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ讓渡スルコトヲ得ス但シ別段ノ慣行アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 漁業權又ハ入漁權ノ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ處分スルコトヲ得ス
第十六條 漁業權ノ存續期間ハ二十年以內ニ於テ行政官廳ノ定ムル所ニ依ル但シ第二十四條第一項ノ規定ニ依リ又ハ第三十四條ノ規定ニ基ク命令ニ依リ漁業ヲ停止セラレタル期間ハ之ヲ算入セス
前項ノ期間ハ漁業權者ノ申請ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得
第十七條 設定行爲ニ於テ存續期間ニ付別段ノ定ナキ入漁權ハ目的タル漁業權ノ存續中存續スルモノト看做ス但シ入漁權者ハ何時ニテモ其ノ權利ヲ抛棄スルコトヲ得
第十八條 入漁權者カ入漁料ノ支拂ヲ怠リタルトキハ漁業權者ハ其ノ入漁ヲ拒ムコトヲ得
入漁權者カ引續キ二年以上入漁料ノ支拂ヲ怠リ又ハ破產若ハ家資分散ノ宣吿ヲ受ケタルトキハ漁業權者ハ入漁權ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得
第十九條 入漁料ハ入漁ヲ爲ササルトキハ之ヲ支拂フコトヲ要セス
第二十條 入漁權ニ關シ前三條ノ規定ニ異リタル慣行アルトキハ其ノ慣行ニ從フ
第二十一條 行政官廳ニ於テ必要アリト認ムルトキハ漁業ノ免許ヲ與フルニ當リ之ニ制限又ハ條件ヲ附スルコトヲ得
第二十二條 漁業ノ免許ヲ受ケタル日ヨリ一年間其ノ漁業ニ從事スル者ナキトキ又ハ引續キ二年間休業シタルトキハ行政官廳ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十三條 行政官廳ノ認可ヲ得テ漁業ヲ爲ササル期間及第二十四條第一項ノ規定ニ依リ又ハ第三十四條ノ規定ニ基ク命令ニ依リ漁業ヲ停止セラレタル期間ハ前條ノ期間ニ之ヲ算入セス
第二十四條 水產動植物ノ蕃殖保護、船舶ノ航行碇泊繫留、水底電線ノ敷設若ハ國防其ノ他ノ軍事上必要アルトキ又ハ公益上害アルトキハ主務大臣ハ免許シタル漁業ヲ制限シ、停止シ又ハ免許ヲ取消スコトヲ得
漁業權者ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ漁業ヲ制限シ又ハ停止スルコトヲ得
第二十五條 錯誤ニ依リ漁業ノ免許ヲ與ヘタルトキハ行政官廳ハ之ヲ取消スコトヲ得
第二十六條 免許漁業原簿ノ登錄ハ登記ニ代ハルモノトス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條 漁業免許ノ取消アリタルトキハ行政官廳ハ直ニ之ヲ登錄シタル抵當權者及先取特權者ニ通知スヘシ
前項ノ權利者ハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ漁業權ノ競賣ヲ請求スルコトヲ得但シ第二十四條第一項又ハ第二十五條ノ規定ニ依ル取消ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
漁業權ハ前項ノ期間內又ハ競賣ノ手續完結ノ日迄競賣ノ目的ノ範圍內ニ於テ仍存續スルモノト看做ス
競賣ニ依ル賣得金ハ競賣ノ費用及第一項ノ權利者ニ對スル債務ノ辨濟ニ充テ其ノ殘金ハ國庫ニ歸屬ス
競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ漁業免許ノ取消ハ其ノ效力ヲ生セサリシモノト看做ス
第二十八條 漁業權ハ登錄シタル權利者ノ同意アルニ非サレハ之ヲ分割、變更又ハ抛棄スルコトヲ得ス
第二十九條 漁業者ハ左ニ揭クル目的ノ爲必要アルトキハ行政官廳ノ許可ヲ得テ他人ノ土地ヲ使用シ又ハ立木竹若ハ土石ノ除去ヲ制限スルコトヲ得
一 漁場ノ標識ノ建設
二 魚見若ハ漁業ニ關スル信號又ハ之ニ必要ナル設備
三 漁業ニ必要ナル目標ノ保存又ハ建設
第三十條 漁業者ハ必要アルトキハ行政官廳ノ許可ヲ得テ特別ノ用途ナキ他人ノ土地ニ立入リ漁業ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 漁業ニ關スル測量、實地調査又ハ前二條ノ目的ノ爲必要アルトキハ行政官廳ノ許可ヲ得テ他人ノ土地ニ立入リ支障木竹ヲ伐採シ又ハ障碍物ヲ除去スルコトヲ得
第三十二條 前三條ノ行爲ヲ爲ス者ハ豫メ其ノ旨ヲ土地ノ所有者又ハ占有者ニ通知シ爲ニ生シタル損害ハ之ヲ賠償スヘシ
第三十三條 行政官廳ハ漁業者ニ漁場ノ標識ノ建設ヲ命スルコトヲ得
第三十四條 地方長官ハ水產動植物ノ蕃殖保護又ハ漁業取締ノ爲主務大臣ノ認可ヲ得テ左ノ命令ヲ發スルコトヲ得
一 水產動植物ノ採捕ニ關スル制限又ハ禁止
二 水產動植物若ハ其ノ製品ノ販賣又ハ所持ニ關スル制限若ハ禁止
三 漁具又ハ漁船ニ關スル制限若ハ禁止
四 漁業者ノ數又ハ資格ニ關スル制限
五 水產動植物ニ有害ナル物ノ遺棄ニ關スル制限又ハ禁止
六 水產動植物ノ蕃殖保護ニ必要ナル物ノ採取又ハ除去ニ關スル制限若ハ禁止
主務大臣ニ於テ前項ノ制限又ハ禁止ヲ爲スノ必要アリト認ムルトキハ命令ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
前二項ノ命令ニハ犯人ノ所有シ又ハ所持スル漁獲物、製品及漁具ノ沒收竝犯人ノ所有シタル前記物件ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ價額ノ追徵ニ關スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三十五條 汽船「トロール」漁業又ハ汽船捕鯨業ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ營ムコトヲ得ス
前項ノ漁業ニ關スル制限又ハ禁止ハ主務大臣之ヲ定ム
第三十六條 爆發物ヲ使用シテ水產動植物ヲ採捕スルコトヲ得ス但シ海獸捕獲ノ爲ニスル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三十七條 主務大臣ハ遡河魚類ノ通路ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ水面ノ一定區域內ニ於ケル工作物ノ設置ニ付制限又ハ禁止ニ關スル命令ヲ發スルコトヲ得
工作物ニシテ遡河魚類ノ通路ヲ害スルモノト認ムルトキハ主務大臣ハ其ノ所有者又ハ占有者ニ除害工事ヲ命スルコトヲ得
第三十八條 前條第二項ノ規定ニ依リ除害工事ヲ命シタルトキハ主務大臣ハ工作物ニ付權利ヲ有スル者ニ對シ相當ノ補償ヲ爲スヘシ但シ利害關係人ノ申請ニ依リ除害工事ヲ命シタルトキハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ申請者之ヲ補償スヘシ
前項ノ補償金額ニ付不服アル者ハ補償金額決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ九十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十九條 公共ノ用ニ供セサル水面ニシテ公共ノ用ニ供スル水面又ハ第三條ノ水面ニ通スルモノニハ命令ヲ以テ第三十四條、第三十六條乃至第三十八條、第五十五條及第五十九條ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第四十條 漁業ニ從事スル者ノ雇傭竝雇人及遺族ノ扶助ニ關シテハ勅令ヲ以テ規程ヲ設クルコトヲ得
第四十一條 海軍艦艇乘組將校、警察官吏、港務官吏、稅關官吏又ハ漁業監督吏員ハ漁業ヲ監督シ必要アリト認ムルトキハ船舶、店舖其ノ他ノ場所ニ臨檢シ帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
前項ノ臨檢ニ際シ漁業ニ關スル犯罪アリト認ムルトキハ搜索ヲ爲シ又ハ犯罪ノ事實ヲ證明スヘキ物件ノ差押ヲ爲スコトヲ得
臨檢、搜索及差押ニ關シテハ間接國稅犯則者處分法ヲ準用ス但シ同法第四條ノ規定ハ漁業監督吏員以外ノ者ニ之ヲ準用セス
第四十二條 一定ノ地區內ニ住所ヲ有スル漁業者ハ行政官廳ノ許可ヲ得テ漁業組合ヲ設クルコトヲ得
漁業組合ノ地區ハ市町村ノ區域又ハ市町村內ノ漁業者ノ部落ノ區域ニ依リ之ヲ定ムヘシ但シ特別ノ事情アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
市制町村制ヲ施行セサル地方ニ在リテハ市町村ニ準スヘキモノヲ以テ前項ノ市町村ト看做ス
北海道ニ於テハ郡ヲ以テ漁業組合ノ地區ト爲スコトヲ得
第四十三條 漁業組合ハ法人トス
漁業組合ハ漁業權若ハ入漁權ヲ取得シ又ハ漁業權ノ貸付ヲ受ケ組合員ノ漁業ニ關スル共同ノ施設ヲ爲スヲ以テ目的トス
漁業組合ハ自ラ漁業ヲ營ムコトヲ得ス
組合員ハ漁業組合ノ取得シ若ハ貸付ヲ受ケタル專用漁業權又ハ入漁權ノ範圍內ニ於テ各自漁業ヲ爲スノ權利ヲ有ス但シ組合規約ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第四十四條 漁業組合ハ相互ニ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲行政官廳ノ許可ヲ得テ漁業組合聯合會ヲ設クルコトヲ得
漁業組合聯合會ハ法人トス
第四十五條 漁業組合及漁業組合聯合會ニハ所得稅及營業稅ヲ課セス
第四十六條 漁業組合又ハ漁業組合聯合會ノ設立ハ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ於テ登記ヲ爲スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
登記シタル事項ノ變更ハ其ノ登記ヲ爲スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四十七條 行政官廳ハ何時ニテモ漁業組合又ハ漁業組合聯合會ノ事業ニ關スル報吿ヲ徵シ、事業ニ付認可ヲ受ケシメ、事業及財產ノ狀況ヲ檢査シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十八條 漁業組合又ハ漁業組合聯合會ノ決議若ハ役員ノ行爲ニシテ法令、行政官廳ノ命令若ハ規約ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ行政官廳ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 決議ノ取消
二 役員ノ解職
三 組合又ハ聯合會ノ解散
第四十九條 本法ニ規定スルモノノ外漁業組合又ハ漁業組合聯合會ノ設立、登記、管理、分合、解散、淸算其ノ他ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十條 漁業組合又ハ漁業組合聯合會ニ於テ本法中特ニ組合又ハ聯合會ニ關スル規定ニ違反シタル場合ニ於テハ其ノ役員ヲ三百圓以下ノ過料ニ處ス
本法ニ基キテ發スル組合又ハ聯合會ニ關スル命令ニ於テハ組合又ハ聯合會カ之ニ違反シタル場合ニ於テ其ノ役員ヲ三百圓以下ノ過料ニ處スル規定ヲ設クルコトヲ得
前二項ノ過料ニ付テハ非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ヲ準用ス
第五十一條 漁業者又ハ水產動植物ノ製造若ハ販賣ヲ業トスル者ハ水產業ノ改良發達及水產動植物ノ蕃殖保護其ノ他水產業ニ關シ共同ノ利益ヲ圖ル爲水產組合ヲ設クルコトヲ得
第五十二條 水產組合成立シタルトキハ其ノ地區內ニ於テ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員タル資格ヲ有スル者ハ總テ其ノ組合ニ加入シタルモノト看做ス但シ主務大臣ニ於テ加入ノ義務ナシト認メタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第五十三條 水產組合ハ相互ニ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲水產組合聯合會ヲ設クルコトヲ得
第五十四條 水產組合及水產組合聯合會ハ法人トシ重要物產同業組合法ヲ準用ス
第五十五條 漁業ノ免許若ハ許可ノ出願又ハ期間更新ノ申請ニ對スル許否ニ不服アル者及第三條第二項、第二十二條、第二十四條、第二十五條若ハ第三十七條第二項ノ規定ニ依ル處分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ權利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第五十六條 漁場ノ區域、漁業權若ハ入漁權ノ範圍又ハ漁業ノ方法ニ付漁業者ノ間ニ爭アルトキハ關係者ヨリ行政官廳ニ之ニ關スル裁決ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ權利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第五十七條 民事又ハ刑事ノ訴訟ニ付前條ノ規定ニ依ル裁決又ハ判決ヲ待ツノ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ訴訟手續ヲ中止スルコトヲ得
第五十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 免許ニ依ラス若ハ漁業ノ停止中第四條又ハ第六條ノ漁業ヲ爲シタル者
二 免許漁業ノ制限又ハ免許ノ條件若ハ制限ニ違反シテ漁業ヲ爲シタル者
三 專用漁業ノ停止中其ノ漁場ニ於テ停止シタル漁業ヲ爲シタル者
前項ノ場合ニ於テハ犯人ノ所有シ又ハ所持スル漁獲物及漁具ハ之ヲ沒收ス但シ犯人ノ所有シタル前記物件ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第五十九條 汽船「トロール」漁業ニ關シ第三十五條第一項ノ規定、同條第二項ノ制限若ハ禁止ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金、汽船捕鯨業ニ關シ同條第一項ノ規定、同條第二項ノ制限若ハ禁止又ハ第三十六條ノ規定ニ違反シタル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處シ犯人ノ所有シ又ハ所持スル漁獲物及漁具ハ之ヲ沒收ス但シ犯人ノ所有シタル前記物件ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第六十條 漁業權又ハ漁業組合員ノ漁業ヲ爲スノ權利ヲ侵害シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第六十一條 漁場ノ標識ヲ移轉シ、汚損シ又ハ毀壞シタル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第六十二條 第四十一條ノ規定ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ若ハ妨ケタル者及臨檢搜索ノ際當該吏員ノ訊問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第六十三條 營業者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第六十四條 營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第六十五條 明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附 則
第六十六條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十七條 本法ハ臘虎及膃肭獸ノ漁獵ニ之ヲ適用セス
第六十八條 本法施行前ノ漁業ニ關スル出願ニシテ未タ處分ヲ終ラサルモノニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
第六十九條 舊法ニ依リ發生シタル漁業權ハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ定メタル效力ヲ有ス但シ其ノ存續期間ハ發生ノ時ヨリ起算ス
本法施行前ニ發生シタル入漁權ニ關シ亦前項ニ同シ
第七十條 本法施行前免許漁業原簿ニ登錄シタル事項ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ登錄スルコトヲ得ヘキモノニ限リ之ニ依リ登錄シタルモノト看做ス
第七十一條 舊法施行前ノ契約又ハ慣行ニ依リテ入漁スルノ權利ハ專用漁業免許後一年間ニ限リ登錄ナキモ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得
第七十二條 本法施行前ニ爲シタル處分又ハ第六十八條ノ規定ニ依リ爲シタル處分ニ對スル裁決ノ申請、訴願又ハ行政訴訟ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
第七十三條 舊法ニ依リ設ケタル漁業組合ハ本法施行後一年間ニ限リ登記ナキモ其ノ設立ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル漁業法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年四月二十日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
内務大臣 法学博士 男爵 平田東助
農商務大臣 小松原英太郎
法律第五十八号
漁業法
第一条 本法ニ於テ漁業ト称スルハ営利ノ目的ヲ以テ水産動植物ノ採捕又ハ養殖ヲ業トスルヲ謂フ
本法ニ於テ漁業者ト称スルハ漁業ヲ為ス者及漁業権又ハ入漁権ヲ有スル者ヲ謂フ
第二条 公共ノ用ニ供セサル水面ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ノ規定ヲ適用セス
第三条 公共ノ用ニ供スル水面ト連接シ一体ヲ成ス公共ノ用ニ供セサル水面ニハ本法ヲ適用ス
前項ノ水面ノ占有者又ハ其ノ敷地ノ所有者ハ行政官庁ノ許可ヲ得テ漁業ニ関シ之カ利用ヲ制限シ又ハ廃止スルコトヲ得
第四条 漁具ヲ定置シ又ハ水面ヲ区画シテ漁業ヲ為スノ権利ヲ得ムトスル者ハ行政官庁ノ免許ヲ受クヘシ其ノ免許スヘキ漁業ノ種類ハ主務大臣之ヲ指定ス
第五条 水面ヲ専用シテ漁業ヲ為スノ権利ヲ得ムトスル者ハ行政官庁ノ免許ヲ受クヘシ
前項ノ免許ハ漁業組合カ其ノ地先水面ノ専用ヲ出願シタル場合ノ外之ヲ与ヘス
第六条 前二条ノ外主務大臣ニ於テ免許ヲ受ケシムル必要アリト認ムル漁業ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 漁業権ハ物権ト看做シ土地ニ関スル規定ヲ準用ス
民法第二編第九章ノ規定ハ漁業権ニ之ヲ適用セス
第八条 漁業権ヲ抵当ト為シタル場合ニ於テ其ノ漁場ニ定著シタル工作物ハ民法第三百七十条ノ準用ニ関シテハ漁業権ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物ト看做ス
第九条 裁判所ノ土地ノ管轄カ不動産所在地ニ依リテ定マル場合ニ於テハ漁場ニ最近キ沿岸ノ属スル市町村又ハ之ニ相当スル行政区画ヲ以テ不動産所在地ト看做ス
第十条 漁業権ハ行政官庁ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ分割シ其ノ他変更スルコトヲ得ス
地先水面専用ノ漁業権ハ行政官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ処分スルコトヲ得ス
第十一条 漁業権者ノ有スル水面使用ニ関スル権利義務ハ漁業権ノ処分ニ従フ
第十二条 入漁権者ハ設定行為又ハ旧法施行前ノ慣行ニ従ヒ他人ノ専用漁業権ニ属スル漁場内ニ入会ヒ其ノ専用漁業権ノ全部又ハ一部ノ漁業ヲ為スノ権利ヲ有ス
第十三条 入漁権ハ物権ト看做ス
入漁権ハ相続及譲渡ノ目的タル外権利ノ目的タルコトヲ得ス
第十四条 入漁権ハ漁業権者ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ譲渡スルコトヲ得ス但シ別段ノ慣行アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十五条 漁業権又ハ入漁権ノ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ処分スルコトヲ得ス
第十六条 漁業権ノ存続期間ハ二十年以内ニ於テ行政官庁ノ定ムル所ニ依ル但シ第二十四条第一項ノ規定ニ依リ又ハ第三十四条ノ規定ニ基ク命令ニ依リ漁業ヲ停止セラレタル期間ハ之ヲ算入セス
前項ノ期間ハ漁業権者ノ申請ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得
第十七条 設定行為ニ於テ存続期間ニ付別段ノ定ナキ入漁権ハ目的タル漁業権ノ存続中存続スルモノト看做ス但シ入漁権者ハ何時ニテモ其ノ権利ヲ抛棄スルコトヲ得
第十八条 入漁権者カ入漁料ノ支払ヲ怠リタルトキハ漁業権者ハ其ノ入漁ヲ拒ムコトヲ得
入漁権者カ引続キ二年以上入漁料ノ支払ヲ怠リ又ハ破産若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケタルトキハ漁業権者ハ入漁権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得
第十九条 入漁料ハ入漁ヲ為ササルトキハ之ヲ支払フコトヲ要セス
第二十条 入漁権ニ関シ前三条ノ規定ニ異リタル慣行アルトキハ其ノ慣行ニ従フ
第二十一条 行政官庁ニ於テ必要アリト認ムルトキハ漁業ノ免許ヲ与フルニ当リ之ニ制限又ハ条件ヲ附スルコトヲ得
第二十二条 漁業ノ免許ヲ受ケタル日ヨリ一年間其ノ漁業ニ従事スル者ナキトキ又ハ引続キ二年間休業シタルトキハ行政官庁ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十三条 行政官庁ノ認可ヲ得テ漁業ヲ為ササル期間及第二十四条第一項ノ規定ニ依リ又ハ第三十四条ノ規定ニ基ク命令ニ依リ漁業ヲ停止セラレタル期間ハ前条ノ期間ニ之ヲ算入セス
第二十四条 水産動植物ノ蕃殖保護、船舶ノ航行碇泊繋留、水底電線ノ敷設若ハ国防其ノ他ノ軍事上必要アルトキ又ハ公益上害アルトキハ主務大臣ハ免許シタル漁業ヲ制限シ、停止シ又ハ免許ヲ取消スコトヲ得
漁業権者ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ漁業ヲ制限シ又ハ停止スルコトヲ得
第二十五条 錯誤ニ依リ漁業ノ免許ヲ与ヘタルトキハ行政官庁ハ之ヲ取消スコトヲ得
第二十六条 免許漁業原簿ノ登録ハ登記ニ代ハルモノトス
登録ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七条 漁業免許ノ取消アリタルトキハ行政官庁ハ直ニ之ヲ登録シタル抵当権者及先取特権者ニ通知スヘシ
前項ノ権利者ハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ漁業権ノ競売ヲ請求スルコトヲ得但シ第二十四条第一項又ハ第二十五条ノ規定ニ依ル取消ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
漁業権ハ前項ノ期間内又ハ競売ノ手続完結ノ日迄競売ノ目的ノ範囲内ニ於テ仍存続スルモノト看做ス
競売ニ依ル売得金ハ競売ノ費用及第一項ノ権利者ニ対スル債務ノ弁済ニ充テ其ノ残金ハ国庫ニ帰属ス
競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ漁業免許ノ取消ハ其ノ効力ヲ生セサリシモノト看做ス
第二十八条 漁業権ハ登録シタル権利者ノ同意アルニ非サレハ之ヲ分割、変更又ハ抛棄スルコトヲ得ス
第二十九条 漁業者ハ左ニ掲クル目的ノ為必要アルトキハ行政官庁ノ許可ヲ得テ他人ノ土地ヲ使用シ又ハ立木竹若ハ土石ノ除去ヲ制限スルコトヲ得
一 漁場ノ標識ノ建設
二 魚見若ハ漁業ニ関スル信号又ハ之ニ必要ナル設備
三 漁業ニ必要ナル目標ノ保存又ハ建設
第三十条 漁業者ハ必要アルトキハ行政官庁ノ許可ヲ得テ特別ノ用途ナキ他人ノ土地ニ立入リ漁業ヲ為スコトヲ得
第三十一条 漁業ニ関スル測量、実地調査又ハ前二条ノ目的ノ為必要アルトキハ行政官庁ノ許可ヲ得テ他人ノ土地ニ立入リ支障木竹ヲ伐採シ又ハ障碍物ヲ除去スルコトヲ得
第三十二条 前三条ノ行為ヲ為ス者ハ予メ其ノ旨ヲ土地ノ所有者又ハ占有者ニ通知シ為ニ生シタル損害ハ之ヲ賠償スヘシ
第三十三条 行政官庁ハ漁業者ニ漁場ノ標識ノ建設ヲ命スルコトヲ得
第三十四条 地方長官ハ水産動植物ノ蕃殖保護又ハ漁業取締ノ為主務大臣ノ認可ヲ得テ左ノ命令ヲ発スルコトヲ得
一 水産動植物ノ採捕ニ関スル制限又ハ禁止
二 水産動植物若ハ其ノ製品ノ販売又ハ所持ニ関スル制限若ハ禁止
三 漁具又ハ漁船ニ関スル制限若ハ禁止
四 漁業者ノ数又ハ資格ニ関スル制限
五 水産動植物ニ有害ナル物ノ遺棄ニ関スル制限又ハ禁止
六 水産動植物ノ蕃殖保護ニ必要ナル物ノ採取又ハ除去ニ関スル制限若ハ禁止
主務大臣ニ於テ前項ノ制限又ハ禁止ヲ為スノ必要アリト認ムルトキハ命令ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
前二項ノ命令ニハ犯人ノ所有シ又ハ所持スル漁獲物、製品及漁具ノ没収並犯人ノ所有シタル前記物件ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ価額ノ追徴ニ関スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三十五条 汽船「トロール」漁業又ハ汽船捕鯨業ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ営ムコトヲ得ス
前項ノ漁業ニ関スル制限又ハ禁止ハ主務大臣之ヲ定ム
第三十六条 爆発物ヲ使用シテ水産動植物ヲ採捕スルコトヲ得ス但シ海獣捕獲ノ為ニスル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三十七条 主務大臣ハ遡河魚類ノ通路ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ水面ノ一定区域内ニ於ケル工作物ノ設置ニ付制限又ハ禁止ニ関スル命令ヲ発スルコトヲ得
工作物ニシテ遡河魚類ノ通路ヲ害スルモノト認ムルトキハ主務大臣ハ其ノ所有者又ハ占有者ニ除害工事ヲ命スルコトヲ得
第三十八条 前条第二項ノ規定ニ依リ除害工事ヲ命シタルトキハ主務大臣ハ工作物ニ付権利ヲ有スル者ニ対シ相当ノ補償ヲ為スヘシ但シ利害関係人ノ申請ニ依リ除害工事ヲ命シタルトキハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ申請者之ヲ補償スヘシ
前項ノ補償金額ニ付不服アル者ハ補償金額決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ九十日以内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十九条 公共ノ用ニ供セサル水面ニシテ公共ノ用ニ供スル水面又ハ第三条ノ水面ニ通スルモノニハ命令ヲ以テ第三十四条、第三十六条乃至第三十八条、第五十五条及第五十九条ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第四十条 漁業ニ従事スル者ノ雇傭並雇人及遺族ノ扶助ニ関シテハ勅令ヲ以テ規程ヲ設クルコトヲ得
第四十一条 海軍艦艇乗組将校、警察官吏、港務官吏、税関官吏又ハ漁業監督吏員ハ漁業ヲ監督シ必要アリト認ムルトキハ船舶、店舗其ノ他ノ場所ニ臨検シ帳簿物件ヲ検査スルコトヲ得
前項ノ臨検ニ際シ漁業ニ関スル犯罪アリト認ムルトキハ捜索ヲ為シ又ハ犯罪ノ事実ヲ証明スヘキ物件ノ差押ヲ為スコトヲ得
臨検、捜索及差押ニ関シテハ間接国税犯則者処分法ヲ準用ス但シ同法第四条ノ規定ハ漁業監督吏員以外ノ者ニ之ヲ準用セス
第四十二条 一定ノ地区内ニ住所ヲ有スル漁業者ハ行政官庁ノ許可ヲ得テ漁業組合ヲ設クルコトヲ得
漁業組合ノ地区ハ市町村ノ区域又ハ市町村内ノ漁業者ノ部落ノ区域ニ依リ之ヲ定ムヘシ但シ特別ノ事情アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
市制町村制ヲ施行セサル地方ニ在リテハ市町村ニ準スヘキモノヲ以テ前項ノ市町村ト看做ス
北海道ニ於テハ郡ヲ以テ漁業組合ノ地区ト為スコトヲ得
第四十三条 漁業組合ハ法人トス
漁業組合ハ漁業権若ハ入漁権ヲ取得シ又ハ漁業権ノ貸付ヲ受ケ組合員ノ漁業ニ関スル共同ノ施設ヲ為スヲ以テ目的トス
漁業組合ハ自ラ漁業ヲ営ムコトヲ得ス
組合員ハ漁業組合ノ取得シ若ハ貸付ヲ受ケタル専用漁業権又ハ入漁権ノ範囲内ニ於テ各自漁業ヲ為スノ権利ヲ有ス但シ組合規約ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第四十四条 漁業組合ハ相互ニ共同シテ其ノ目的ヲ達スル為行政官庁ノ許可ヲ得テ漁業組合連合会ヲ設クルコトヲ得
漁業組合連合会ハ法人トス
第四十五条 漁業組合及漁業組合連合会ニハ所得税及営業税ヲ課セス
第四十六条 漁業組合又ハ漁業組合連合会ノ設立ハ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
登記シタル事項ノ変更ハ其ノ登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第四十七条 行政官庁ハ何時ニテモ漁業組合又ハ漁業組合連合会ノ事業ニ関スル報告ヲ徴シ、事業ニ付認可ヲ受ケシメ、事業及財産ノ状況ヲ検査シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第四十八条 漁業組合又ハ漁業組合連合会ノ決議若ハ役員ノ行為ニシテ法令、行政官庁ノ命令若ハ規約ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ行政官庁ハ左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 決議ノ取消
二 役員ノ解職
三 組合又ハ連合会ノ解散
第四十九条 本法ニ規定スルモノノ外漁業組合又ハ漁業組合連合会ノ設立、登記、管理、分合、解散、清算其ノ他ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十条 漁業組合又ハ漁業組合連合会ニ於テ本法中特ニ組合又ハ連合会ニ関スル規定ニ違反シタル場合ニ於テハ其ノ役員ヲ三百円以下ノ過料ニ処ス
本法ニ基キテ発スル組合又ハ連合会ニ関スル命令ニ於テハ組合又ハ連合会カ之ニ違反シタル場合ニ於テ其ノ役員ヲ三百円以下ノ過料ニ処スル規定ヲ設クルコトヲ得
前二項ノ過料ニ付テハ非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ヲ準用ス
第五十一条 漁業者又ハ水産動植物ノ製造若ハ販売ヲ業トスル者ハ水産業ノ改良発達及水産動植物ノ蕃殖保護其ノ他水産業ニ関シ共同ノ利益ヲ図ル為水産組合ヲ設クルコトヲ得
第五十二条 水産組合成立シタルトキハ其ノ地区内ニ於テ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員タル資格ヲ有スル者ハ総テ其ノ組合ニ加入シタルモノト看做ス但シ主務大臣ニ於テ加入ノ義務ナシト認メタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第五十三条 水産組合ハ相互ニ共同シテ其ノ目的ヲ達スル為水産組合連合会ヲ設クルコトヲ得
第五十四条 水産組合及水産組合連合会ハ法人トシ重要物産同業組合法ヲ準用ス
第五十五条 漁業ノ免許若ハ許可ノ出願又ハ期間更新ノ申請ニ対スル許否ニ不服アル者及第三条第二項、第二十二条、第二十四条、第二十五条若ハ第三十七条第二項ノ規定ニ依ル処分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ権利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第五十六条 漁場ノ区域、漁業権若ハ入漁権ノ範囲又ハ漁業ノ方法ニ付漁業者ノ間ニ争アルトキハ関係者ヨリ行政官庁ニ之ニ関スル裁決ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ権利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第五十七条 民事又ハ刑事ノ訴訟ニ付前条ノ規定ニ依ル裁決又ハ判決ヲ待ツノ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ訴訟手続ヲ中止スルコトヲ得
第五十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 免許ニ依ラス若ハ漁業ノ停止中第四条又ハ第六条ノ漁業ヲ為シタル者
二 免許漁業ノ制限又ハ免許ノ条件若ハ制限ニ違反シテ漁業ヲ為シタル者
三 専用漁業ノ停止中其ノ漁場ニ於テ停止シタル漁業ヲ為シタル者
前項ノ場合ニ於テハ犯人ノ所有シ又ハ所持スル漁獲物及漁具ハ之ヲ没収ス但シ犯人ノ所有シタル前記物件ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第五十九条 汽船「トロール」漁業ニ関シ第三十五条第一項ノ規定、同条第二項ノ制限若ハ禁止ニ違反シタル者ハ五千円以下ノ罰金、汽船捕鯨業ニ関シ同条第一項ノ規定、同条第二項ノ制限若ハ禁止又ハ第三十六条ノ規定ニ違反シタル者ハ二千円以下ノ罰金ニ処シ犯人ノ所有シ又ハ所持スル漁獲物及漁具ハ之ヲ没収ス但シ犯人ノ所有シタル前記物件ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第六十条 漁業権又ハ漁業組合員ノ漁業ヲ為スノ権利ヲ侵害シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第六十一条 漁場ノ標識ヲ移転シ、汚損シ又ハ毀壊シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第六十二条 第四十一条ノ規定ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ若ハ妨ケタル者及臨検捜索ノ際当該吏員ノ訊問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第六十三条 営業者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第六十四条 営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第六十五条 明治三十三年法律第五十二号ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附 則
第六十六条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十七条 本法ハ臘虎及膃肭獣ノ漁猟ニ之ヲ適用セス
第六十八条 本法施行前ノ漁業ニ関スル出願ニシテ未タ処分ヲ終ラサルモノニ関シテハ仍従前ノ例ニ依ル
第六十九条 旧法ニ依リ発生シタル漁業権ハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ定メタル効力ヲ有ス但シ其ノ存続期間ハ発生ノ時ヨリ起算ス
本法施行前ニ発生シタル入漁権ニ関シ亦前項ニ同シ
第七十条 本法施行前免許漁業原簿ニ登録シタル事項ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ登録スルコトヲ得ヘキモノニ限リ之ニ依リ登録シタルモノト看做ス
第七十一条 旧法施行前ノ契約又ハ慣行ニ依リテ入漁スルノ権利ハ専用漁業免許後一年間ニ限リ登録ナキモ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得
第七十二条 本法施行前ニ為シタル処分又ハ第六十八条ノ規定ニ依リ為シタル処分ニ対スル裁決ノ申請、訴願又ハ行政訴訟ニ関シテハ仍従前ノ例ニ依ル
第七十三条 旧法ニ依リ設ケタル漁業組合ハ本法施行後一年間ニ限リ登記ナキモ其ノ設立ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得