(目的)
第一條 この法律は、将来にわたつて最高の漁獲率を維持するため、水産資源の枯渇を防止することを目的とする。
(許可漁船の定数)
第二條 農林大臣は、水産資源が枯渇するおそれがあると認めるときは、漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第五十二條の指定遠洋漁業又は同法第六十五條第一項の規定に基く命令の規定によりその営業につき農林大臣の許可を要する漁業につき、漁業の種類及び海域別に、省令で当該漁業に従事しうる漁船の隻数の最高限度(以下「定数」という。)を定めなければならない。
2 農林大臣は、定数を定める場合には、科学的調査に現れた水産資源の発展性、現に当該漁業を営む者の数その他自然的及び社会経済的條件を総合的に勘案しなければならない。
3 農林大臣は、定数を定める場合には、あらかじめ、期日及び場所を公示して公聽会を開き、利害関係人の意見をきき、且つ、中央漁業調整審議会(以下「審議会」という。)の意見をきかなければならない。
(定数超過による許可の取消及び変更)
第三條 前條の規定により定数が定められた時に当該漁業の種類及び海域につき現に漁業の許可(漁業に関する起業の認可を含む。以下同じ。)を受けている漁船の隻数が定数をこえるときは、農林大臣は、左に掲げる事項を勘案して省令で定める基準に従い、そのこえる数の漁船につき、当該漁業に係る許可の取消の期日又は変更すべき当該漁業の操業区域及び変更の期日を指定しなければならない。
一 各漁業者が当該漁業の種類及び海域につき許可を受けている漁船の隻数
二 当該漁業に従事する漁船の航海度数、主たる操業の場所、操業日数、網入数、漁獲数量その他の操業状況
2 農林大臣は、前項の基準を定める場合には、あらかじめ、期日及び場所を公示して公聽会を開き、利害関係人の意見をきかなければならない。
3 第一項の規定による指定をする場合において必要があると認めるときは、農林大臣は、当該漁業の種類及び海域につき漁業の許可を受けている漁船であつて同項の指定を受けなかつたものにつき、変更すべき当該漁船の操業区域及び変更の期日を指定することができる。
4 農林大臣は、第一項又は前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、当該漁業者に指定をする理由を文書をもつて通知し、当該漁業者又はその代理人に対し、公開による聽聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を與えなければならない。
5 第一項又は第三項の規定による指定は、告示をもつてする。
6 前項の告示をしたときは、当該漁業に係る許可は、その有効期間にかかわらず、その指定された期日に取り消され、又は操業区域の変更があつたものとする。
(損失補償)
第四條 政府は、前條第六項の規定により許可の取消又は操業区域の変更を受けた者が当該処分によつて損失を被つたときは、これによつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 前項の規定による補償金の額は、農林大臣が審議会の意見をきいて定め、これを告示する。
4 第二項の規定により告示された補償金の額に不服がある者は、告示の日から九十日以内に、訴をもつてその増額を請求することができる。
(漁業従事者に対する措置)
第五條 第三條第六項の規定により許可の取消を受けた者は、同條第五項の告示の日現在において許可の取消を受けた漁船に乘り組んでいる者及び当該漁船のために陸上作業をしている者に対し、交付を受けた補償金のうち、省令で定める金額を支給しなければならない。
(水産資源調査)
第六條 農林大臣は、この法律の目的を達成するため、水産資源が枯渇するおそれがあると認められる漁業の種類について、左に掲げる事項の科学的調査を実施しなければならない。
二 前号の漁獲物の体長、体重、年齡等の組成及び産卵、成長、回遊等の状態
三 漁場別及び漁期別の操業日数、操業回数、操業時間その他の操業状態
四 漁場別及び漁期別の水温、塩分、プランクトン、栄養塩類等の海況
2 農林大臣は、政令で定めるところにより、前項の事務の一部を都道府県知事に委任することができる。
(報告徴收)
第七條 農林大臣又は都道府県知事は、前條の調査を行うため必要があると認めるときは、漁業を営み、又はこれに従事する者に、漁獲の数量、時期、方法その他必要な事項を報告させることができる。
(罰則)
第八條 前條の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。