勤労者財産形成促進法
法令番号: 法律第92号
公布年月日: 昭和46年6月1日
法令の形式: 法律

審議経過

第65回国会

衆議院
(昭和46年2月23日)
(昭和46年3月10日)
参議院
(昭和46年3月10日)
衆議院
(昭和46年3月16日)
(昭和46年3月23日)
(昭和46年3月25日)
参議院
(昭和46年3月25日)
(昭和46年4月22日)
(昭和46年5月6日)
(昭和46年5月12日)
勤労者財産形成促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十六年六月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第九十二号
勤労者財産形成促進法
目次
第一章
総則(第一条―第五条)
第二章
勤労者財産形成貯蓄(第六条―第八条)
第三章
勤労者の持家建設の推進(第九条―第十三条)
第四章
雑則(第十四条―第十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、勤労者の財産形成を促進することにより、勤労者の生活の安定を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 勤労者 職業の種類を問わず、事業主に雇用される者をいう。
二 賃金 賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、勤労の対償として事業主が勤労者に支払うすべてのものをいう。
三 持家 みずから居住するため所有する住宅をいう。
四 財産形成 預貯金の預入、金銭の信託及び有価証券の購入をすること並びに持家の取得をすることをいう。
(国及び地方公共団体の施策)
第三条 国及び地方公共団体は、この法律の目的の達成に資するため、勤労者について、貯蓄の奨励及び持家の取得を促進するための施策を講ずるように配慮しなければならない。
(勤労者財産形成施策基本方針)
第四条 労働大臣、大蔵大臣及び建設大臣(大蔵大臣にあつては勤労者(国家公務員及び地方公務員を除く。第六条から第九条までの規定を除き、以下同じ。)の貯蓄に係る部分に、建設大臣にあつては勤労者の持家の取得に係る部分に限るものとする。)は、勤労者の財産形成に関する施策の基本となるべき方針(以下「勤労者財産形成政策基本方針」という。)を定めるものとする。
2 勤労者財産形成施策基本方針に定める事項は、勤労者の財産形成の動向に関する事項及び勤労者の財産形成を促進するために講じようとする施策の基本となるべき事項とする。
3 労働大臣は、勤労者財産形成政策基本方針を定めるにあたつては、あらかじめ、関係行政機関の長と協議し、かつ、その概要について勤労者財産形成審議会の意見をきかなければならない。
4 労働大臣は、勤労者財産形成政策基本方針を定めたときは、その概要を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、勤労者財産形成政策基本方針の変更について準用する。
(関係機関への要請)
第五条 労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勤労者財産形成政策基本方針を定めるための資料の提出又は勤労者財産形成政策基本方針において定められた施策で、当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。
第二章 勤労者財産形成貯蓄
(勤労者財産形成貯蓄契約)
第六条 この法律において「勤労者財産形成貯蓄契約」とは、勤労者が銀行、信託会社、信用金庫、労働金庫、信用協同組合その他の金融機関又は証券会社で、政令で定めるもの(以下「金融機関等」という。)と締結した預貯金、合同運用信託又は有価証券で、政令で定めるもの(以下「預貯金等」という。)の預入、信託又は購入(以下「預入等」という。)に関する契約のうち、次の要件を満たすものをいう。
一 三年以上の期間にわたつて定期に、当該契約に基づく預入等(一定の期限到来後に当該契約に基づき預入等が行なわれた預貯金等又はそれに係る利子若しくは収益の分配に係る金銭により引き続き同一の金融機関等に預貯金等の預入等を行なう場合における当該預入等(以下「継続預入等」という。)を除くものとし、当該契約が証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第六十六条の承認を受けた証券会社と締結した有価証券の購入に関する契約で、当該購入のために金銭の預託をする旨を定めたものである場合にあつては、当該購入のための金銭の預託とする。第三号において同じ。)に係る金銭の払込みをするものであること。
二 当該契約に基づく預貯金等については、その預入等が行なわれた日から一年間(当該契約が預貯金の預入に関する契約で、一定の積立期間及びすえ置期間を定め、かつ、最初の預入の日からすえ置期間の満了の日までの間はその払出しをしない旨を定めたものである場合にあつては、当該最初の預入の日から三年間)は、その払出し又は譲渡(継続預入等で、政令で定める要件を満たすものをするための払出し又は譲渡を除く。)をしないこと。
三 当該契約に基づく預入等に係る金銭の払込みは、当該勤労者と事業主で当該勤労者が当該契約を締結する際にその者を雇用しているものとの契約に基づき、当該事業主が、当該預入等に係る金額を当該勤労者に支払う賃金から控除し、その者に代わつて行なうものであること。
(勤労者財産形成貯蓄契約についての事業主の協力等)
第七条 事業主は、その雇用する勤労者が勤労者財産形成貯蓄契約を締結しようとする場合及びこれに基づいて預入等をする場合には、当該勤労者に対し、必要な協力をするとともに、当該契約の要件が遵守されるよう指導等に努めなければならない。
(課税の特例)
第八条 勤労者が勤労者財産形成貯蓄契約に基づく預入等をした場合には、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、当該勤労者に対する所得税の課税について特別の措置を講ずる。
第三章 勤労者の持家建設の推進
(雇用促進事業団の業務)
第九条 雇用促進事業団(以下「事業団」という。)は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号)第十九条に規定する業務のほか、この法律の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 事業主又は事業主で組織された法人で政令で定めるもの(以下「事業主団体」という。)に対し、事業主にあつてはその雇用する勤労者(国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員以外の勤労者のうち、勤労者財産形成貯蓄契約を締結し、又は締結していた者で、政令で定めるものに限る。以下この条において同じ。)に、事業主団体にあつてはその構成員である事業主の雇用する勤労者にその持家として分譲する住宅の建設(新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないものの購入を含む。以下同じ。)のための資金(当該住宅の用に供する宅地の取得のための資金を含む。以下同じ。)の貸付けを行なうこと。
二 日本勤労者住宅協会に対し、勤労者の持家として分譲する住宅の建設のための資金の貸付けを行なうこと。
2 前項第一号の貸付けは、次の要件に該当する場合でなければ行なわないものとする。
一 貸付けを受けようとする者(その者が事業主団体である場合には、その構成員であるすべての事業主)が、その雇用する勤労者に代わつて勤労者財産形成貯蓄契約に基づく預入等に係る金銭の払込みを行なつていること。
二 貸付けを受けようとする者(その者が事業主団体である場合には、当該事業主団体又は当該住宅の分譲を受けようとする勤労者を雇用する事業主)が、当該貸付けに係る資金により建設し、又は購入する住宅の分譲にあたつて、労働省令で定めるその分譲を受ける勤労者の負担を軽減するために必要な措置を講ずること。
(金融機関等への協力の要請)
第十条 事業団は、前条第一項の貸付けに必要な資金を調達するため、勤労者財産形成貯蓄契約を締結した金融機関等に対し、協力を求めることができる。
(監督)
第十一条 労働大臣は、この法律を施行するために必要があると認めるときは、事業団に対し、第九条第一項の業務(以下「財産形成業務」という。)に関し監督上必要な命令をすることができる。
(雇用促進事業団法の準用等)
第十二条 雇用促進事業団法第十九条の二、第二十条並びに第三十七条第一項(同法第十九条の二第一項並びに第二十条第一項及び第二項に係る部分に限る。)及び第二項の規定は、財産形成業務について準用する。
2 雇用促進事業団法第二十二条第二項及び第二十四条第三項の規定は、財産形成業務については、適用しない。
3 第一項において準用する雇用促進事業団法第十九条の二第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関は、同法第三十三条及び第三十九条の規定の適用については同法第十九条の二第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関と、第一項において準用する同法第十九条の二第一項又は第二十条第一項の規定は、同法第四十条第一号の規定の適用については同法の規定と、財産形成業務は、同法第四十条第三号の規定の適用については同法第十九条に規定する業務と、前条の規定による労働大臣の命令は、同法第四十条第五号の規定の適用については同法第三十二条第二項の規定による労働大臣の命令とみなす。
(事業主の協力等)
第十三条 事業主は、勤労者の持家の取得を効果的に推進するため、互いに協力するように努めるものとする。
2 前項の場合において、国及び地方公共団体は、事業主に対し、必要な助言、指導その他の援助を与えるものとする。
第四章 雑則
(勤労者財産形成審議会)
第十四条 労働省に、勤労者財産形成審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、労働大臣の諮問に応じて、この法律の規定によりその権限に属させられた事項その他の勤労者の財産形成に関する重要事項を調査審議するほか、これらに関し必要と認める事項を関係行政機関に建議することができる。
3 審議会は、勤労者を代表する者、事業主を代表する者及び学識経験を有する者のうちから、労働大臣が任命する二十人以内の委員で組織する。
4 この法律に規定するもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
(公務員等に関する特例等)
第十五条 国又は地方公共団体は、国家公務員又は地方公務員で、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第二十四条第一項又は船員法(昭和二十二年法律第百号)第五十三条第一項の規定の適用を受けないものに代わつて勤労者財産形成貯蓄契約に基づく預入等に係る金銭の払込みを行なう場合には、これらの者に支払う賃金から当該預入等に係る金額を控除することができる。
2 国家公務員、地方公務員又は公共企業体の職員(勤労者財産形成貯蓄契約を締結し、又は締結していた者で、政令で定めるものに限る。)にその持家として分譲する住宅の建設及び分譲の業務その他これに附帯する業務は、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第三条に規定する国家公務員共済組合若しくは同法第二十一条に規定する国家公務員共済組合連合会、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)第三条に規定する地方公務員共済組合若しくは同法第二十七条に規定する市町村職員共済組合連合会若しくは都市職員共済組合連合会又は公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)第三条に規定する共済組合(以下「共済組合等」という。)が、これらの法律で定めるところにより行なうことができる。
3 第十条の規定は、共済組合等が前項の規定による住宅の建設のための資金を調達する場合について準用する。
4 内閣総理大臣又は自治大臣は、国家公務員又は地方公務員の財産形成について、第四条の規定に基づき定められる勤労者財産形成政策基本方針の趣旨が生かされるように配慮しなければならないものとする。
(船員に関する特例)
第十六条 船員法の適用を受ける船員に関しては、第四条第一項並びに第三項及び第四項(同条第五項において準用する場合を含む。)、第五条並びに次条第一項中「労働大臣」とあるのは「運輸大臣」と、第四条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)中「勤労者財産形成審議会」とあるのは「船員中央労働委員会」とする。
(調査等)
第十七条 労働大臣は、勤労者財産形成政策基本方針を定めるについて必要な調査を実施するものとする。
2 労働大臣は、労働省令で定めるところにより、勤労者財産形成貯蓄契約に基づき預入等をしている勤労者を雇用する事業主に対し、当該契約の締結及びこれに基づく預入等の状況その他必要な事項について報告を求めることができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第八条の規定は、昭和四十七年一月一日から施行する。
(建設省設置法の一部改正)
第二条 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十三号の八の次に次の一号を加える。
二十三の九 勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)に基づいて、勤労者財産形成政策基本方針(勤労者の持家の取得に係る部分に限る。)を定めること。
第四条第七項中「及び第二十四号」を「から第二十四号まで」に改める。
(大蔵省設置法の一部改正)
第三条 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十一号の次に次の一号を加える。
四十一の二 勤労者の貯蓄に係る勤労者財産形成政策基本方針を定めること。
第十二条第一項中第十五号を第十六号とし、第十四号の次に次の一号を加える。
十五 勤労者の貯蓄に係る勤労者財産形成政策基本方針を定めること。
(運輸省設置法の一部改正)
第四条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第二十四号の五を第二十四号の六とし、第二十四号の四を第二十四号の五とし、第二十四号の三を第二十四号の四とし、第二十四号の二の次に次の一号を加える。
二十四の三 船員に係る勤労者財産形成政策基本方針を定めること。
第五十七条中「及び勤労青少年福祉法」を「、勤労青少年福祉法」に改め、「(昭和四十五年法律第九十八号)」の下に「及び勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)」を加える。
(労働省設置法の一部改正)
第五条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第十三号の三中「又は港湾労働法」を「、港湾労働法」に改め、「(昭和四十年法律第百二十号)」の下に「又は勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)」を加え、同条中第三十二号の十一を第三十二号の十二とし、第三十二号の五から第三十二号の十までを一号ずつ繰り下げ、第三十二号の四の次に次の一号を加える。
三十二の五 勤労者財産形成促進法に基づいて、勤労者財産形成政策基本方針を定めること。
第六条第一項第十一号の四中「及び港湾労働法」を「、港湾労働法」に、「の施行」を「及び勤労者財産形成促進法(第九条から第十二条までの規定に限る。)の施行」に改める。
第八条第一項第九号の次に次の一号を加える。
九の二 勤労者財産形成政策基本方針を定めること。
第八条第一項第十四号中「家内労働法」の下に「、勤労者財産形成促進法」を加え、同条第三項中「第九号」の下に「及び第九号の二」を加え、「及び家内労働法」を「、家内労働法」に、「の施行」を「及び勤労者財産形成促進法の施行」に改める。
第十三条第一項の表中中央最低賃金審議会の項の次に次のように加える。
勤労者財産形成審議会
労働大臣の諮問に応じ、勤労者の財産形成に関する重要事項を調査審議すること。
(雇用促進事業団法の一部改正)
第六条 雇用促進事業団法の一部を次のように改正する。
第八条中「六人」を「七人」に改める。
(住宅金融公庫法の一部改正)
第七条 住宅金融公庫法(昭和二十五年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
第二十三条第七項中「第十九条の二」の下に「(勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)第十二条第一項において準用する場合を含む。)」を加える。
(社会保険労務士法の一部改正)
第八条 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
別表第一第二十号の二の次に次の一号を加える。
二十の三 勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)
(失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第九条 失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(昭和四十四年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。
第四十二条のうち社会保険労務士法別表第一の改正規定中「別表第一中」の下に「第二十号の三を第二十号の四とし、」を加える。
内閣総理大臣 佐藤栄作
大蔵大臣 福田赳夫
運輸大臣 橋本登美三郎
郵政大臣臨時代理 国務大臣 橋本登美三郎
労働大臣 野原正勝
建設大臣 根本龍太郎
自治大臣 秋田大助