第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し、及び犯罪による収益がこの種の犯罪を助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えることにかんがみ、組織的に行われた殺人等の行為に対する処罰を強化し、犯罪による収益の隠匿及び収受並びにこれを用いた法人等の事業経営の支配を目的とする行為を処罰するとともに、犯罪による収益に係る没収及び追徴の特例並びに疑わしい取引の届出等について定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。
2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
二 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金
イ 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第四十一条の十(覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪
ロ 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第十三条(資金等の提供)の罪
ハ 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第三十一条の十三(資金等の提供)の罪
ニ サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第七条(資金等の提供)の罪
三 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十条の二第一項の違反行為に係る同法第十三条第三号(外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば、当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産
3 この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
5 この法律において「薬物犯罪収益」とは、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)第二条第三項に規定する薬物犯罪収益をいう。
6 この法律において「薬物犯罪収益に由来する財産」とは、麻薬特例法第二条第四項に規定する薬物犯罪収益に由来する財産をいう。
7 この法律において「薬物犯罪収益等」とは、麻薬特例法第二条第五項に規定する薬物犯罪収益等をいう。
第二章 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等
(組織的な殺人等)
第三条 次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
一 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十六条第一項(常習賭博)の罪 五年以下の懲役
二 刑法第百八十六条第二項(賭博場開張等図利)の罪 三月以上七年以下の懲役
三 刑法第百九十九条(殺人)の罪 死刑又は無期若しくは五年以上の懲役
四 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪 三月以上七年以下の懲役
五 刑法第二百二十三条第一項又は第二項(強要)の罪 五年以下の懲役
六 刑法第二百二十五条の二(身の代金目的略取等)の罪 無期又は五年以上の懲役
七 刑法第二百三十三条(信用毀損及び業務妨害)の罪 五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
八 刑法第二百三十四条(威力業務妨害)の罪 五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
九 刑法第二百四十六条(詐欺)の罪 一年以上の有期懲役
十 刑法第二百四十九条(恐喝)の罪 一年以上の有期懲役
十一 刑法第二百六十条前段(建造物等損壊)の罪 七年以下の懲役
2 団体に不正権益(団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。以下この項において同じ。)を得させ、又は団体の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で、前項各号(第一号、第二号及び第九号を除く。)に掲げる罪を犯した者も、同項と同様とする。
(未遂罪)
第四条 前条第一項第三号、第五号、第六号(刑法第二百二十五条の二第一項に係る部分に限る。)、第九号及び第十号に掲げる罪に係る前条の罪の未遂は、罰する。
(組織的な身の代金目的略取等における解放による刑の減軽)
第五条 第三条第一項第六号に掲げる罪に係る同条の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
(組織的な殺人等の予備)
第六条 次の各号に掲げる罪で、これに当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものを犯す目的で、その予備をした者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
二 刑法第二百二十五条(営利目的等略取及び誘拐)の罪(営利の目的によるものに限る。) 二年以下の懲役
2 第三条第二項に規定する目的で、前項各号に掲げる罪の予備をした者も、同項と同様とする。
(組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等)
第七条 禁錮以上の刑が定められている罪に当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合において、次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
二 その罪に係る他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者
三 その罪に係る自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者
2 禁錮以上の刑が定められている罪が第三条第二項に規定する目的で犯された場合において、前項各号のいずれかに該当する者も、同項と同様とする。
(団体に属する犯罪行為組成物件等の没収)
第八条 団体の構成員が罪(これに当たる行為が、当該団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われたもの、又は第三条第二項に規定する目的で行われたものに限る。)を犯した場合、又は当該罪を犯す目的でその予備罪(これに当たる行為が、当該団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われたもの、及び同項に規定する目的で行われたものを除く。)を犯した場合において、当該犯罪行為を組成し、又は当該犯罪行為の用に供し、若しくは供しようとした物が、当該団体に属し、かつ、当該構成員が管理するものであるときは、刑法第十九条第二項本文の規定にかかわらず、その物が当該団体及び犯人以外の者に属しない場合に限り、これを没収することができる。ただし、当該団体において、当該物が当該犯罪行為を組成し、又は当該犯罪行為の用に供され、若しくは供されようとすることの防止に必要な措置を講じていたときは、この限りでない。
(不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為)
第九条 第二条第二項第一号若しくは第三号の犯罪収益若しくは薬物犯罪収益(麻薬特例法第二条第二項各号に掲げる罪の犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産に限る。第十三条第一項第三号及び同条第三項において同じ。)、これらの保有若しくは処分に基づき得た財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産(以下「不法収益等」という。)を用いることにより、法人等(法人又は法人でない社団若しくは財団をいう。以下この条において同じ。)の株主等(株主若しくは社員又は発起人その他の法人等の設立者をいう。以下同じ。)の地位を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、その株主等の権限又は当該権限に基づく影響力を行使し、又は当該第三者に行使させて、次の各号のいずれかに該当する行為をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 当該法人等又はその子法人の役員等(取締役、理事、管理人その他いかなる名称を有するものであるかを問わず、法人等の経営を行う役職にある者をいう。以下この条において同じ。)を選任し、若しくは選任させ、解任し、若しくは解任させ、又は辞任させること。
二 当該法人等又はその子法人を代表すべき役員等の地位を変更させること(前号に該当するものを除く。)。
2 不法収益等を用いることにより、法人等に対する債権を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、次の各号のいずれかに該当する行為をしたときも、前項と同様とする。不法収益等を用いることにより、法人等に対する債権を取得しようとし、又は第三者に取得させようとする者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、これらの各号のいずれかに該当する行為をした場合において、当該債権を取得し、又は第三者に取得させたときも、同様とする。
一 当該法人等又はその子法人の役員等を選任させ、若しくは解任させ、又は辞任させること。
二 当該法人等又はその子法人を代表すべき役員等の地位を変更させること(前号に該当するものを除く。)。
3 不法収益等を用いることにより、法人等の株主等に対する債権を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、当該株主等にその権限又は当該権限に基づく影響力を行使させて、前項各号のいずれかに該当する行為をしたときも、第一項と同様とする。不法収益等を用いることにより、法人等の株主等に対する債権を取得しようとし、又は第三者に取得させようとする者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、当該株主等にその権限又は当該権限に基づく影響力を行使させて、これらの各号のいずれかに該当する行為をした場合において、当該債権を取得し、又は第三者に取得させたときも、同様とする。
4 この条において「子法人」とは、一の法人等が発行済株式(議決権のあるものに限る。以下この項において同じ。)の総数又は出資の総額の百分の五十を超える数又は額の株式(議決権のあるものに限る。以下この項において同じ。)又は持分を所有する法人をいい、一の法人等及びその子法人又は一の法人等の子法人が発行済株式の総数又は出資の総額の百分の五十を超える数又は額の株式又は持分を所有する法人は、当該法人等の子法人とみなす。
(犯罪収益等隠匿)
第十条 犯罪収益等の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
3 第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(犯罪収益等収受)
第十一条 情を知って、犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。
(国外犯)
第十二条 第九条第一項から第三項まで及び前二条の罪は、刑法第三条の例に従う。
(犯罪収益等の没収等)
第十三条 次に掲げる財産は、不動産若しくは動産又は金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)であるときは、これを没収することができる。
一 犯罪収益(第六号に掲げる財産に該当するものを除く。)
二 犯罪収益に由来する財産(第六号に掲げる財産に該当する犯罪収益の保有又は処分に基づき得たものを除く。)
三 第九条第一項の罪に係る株主等の地位に係る株式又は持分であって、不法収益等(薬物犯罪収益、その保有若しくは処分に基づき得た財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産であるもの(第三項において「薬物不法収益等」という。)を除く。以下この項において同じ。)を用いることにより取得されたもの
四 第九条第二項又は第三項の罪に係る債権であって、不法収益等を用いることにより取得されたもの(当該債権がその取得に用いられた不法収益等である財産の返還を目的とするものであるときは、当該不法収益等)
六 不法収益等を用いた第九条第一項から第三項までの犯罪行為又は第十条若しくは第十一条の犯罪行為により生じ、若しくはこれらの犯罪行為により得た財産又はこれらの犯罪行為の報酬として得た財産
七 第三号から前号までの財産の果実として得た財産、これらの各号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他これらの各号の財産の保有又は処分に基づき得た財産
2 前項各号に掲げる財産が犯罪被害財産(財産に対する罪、刑法第二百二十五条の二第二項の罪に係る第三条の罪、同法第二百二十五条の二第二項若しくは第二百二十七条第四項後段の罪若しくは別表第七号、第二十七号、第三十一号、第三十三号若しくは第四十四号に掲げる罪の犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産又は当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産をいう。以下同じ。)であるときは、これを没収することができない。前項各号に掲げる財産の一部が犯罪被害財産である場合において、当該部分についても、同様とする。
3 次に掲げる財産は、これを没収する。ただし、第九条第一項から第三項までの罪が薬物犯罪収益又はその保有若しくは処分に基づき得た財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産に係る場合において、これらの罪につき次に掲げる財産の全部を没収することが相当でないと認められるときは、その一部を没収することができる。
一 第九条第一項の罪に係る株主等の地位に係る株式又は持分であって、薬物不法収益等を用いることにより取得されたもの
二 第九条第二項又は第三項の罪に係る債権であって、薬物不法収益等を用いることにより取得されたもの(当該債権がその取得に用いられた薬物不法収益等である財産の返還を目的とするものであるときは、当該薬物不法収益等)
三 薬物不法収益等を用いた第九条第一項から第三項までの犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
四 前三号の財産の果実として得た財産、前三号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他前三号の財産の保有又は処分に基づき得た財産
4 前項の規定により没収すべき財産について、当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、同項の規定にかかわらず、これを没収しないことができる。
(犯罪収益等が混和した財産の没収等)
第十四条 前条第一項各号又は第三項各号に掲げる財産(以下「不法財産」という。)が不法財産以外の財産と混和した場合において、当該不法財産を没収すべきときは、当該混和により生じた財産(次条第一項において「混和財産」という。)のうち当該不法財産(当該混和に係る部分に限る。)の額又は数量に相当する部分を没収することができる。
(没収の要件等)
第十五条 第十三条の規定による没収は、不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属しない場合に限る。ただし、犯人以外の者が、犯罪の後情を知って当該不法財産又は混和財産を取得した場合(法令上の義務の履行として提供されたものを収受した場合又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が不法財産若しくは混和財産によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した場合を除く。)は、当該不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属する場合であっても、これを没収することができる。
2 地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産を第十三条の規定により没収する場合において、犯人以外の者が犯罪の前に当該権利を取得したとき、又は犯人以外の者が犯罪の後情を知らないで当該権利を取得したときは、これを存続させるものとする。
(追徴)
第十六条 第十三条第一項各号に掲げる財産が不動産若しくは動産若しくは金銭債権でないときその他これを没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。ただし、当該財産が犯罪被害財産であるときは、この限りでない。
2 第十三条第三項の規定により没収すべき財産を没収することができないとき、又は同条第四項の規定によりこれを没収しないときは、その価額を犯人から追徴する。
(両罰規定)
第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第九条第一項から第三項まで、第十条又は第十一条の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第三章 没収に関する手続等の特例
(第三者の財産の没収手続等)
第十八条 不法財産である債権等(不動産及び動産以外の財産をいう。次条第一項及び第二十一条において同じ。)が被告人以外の者(以下この条において「第三者」という。)に帰属する場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。
2 第十三条の規定により、地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収しようとする場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときも、前項と同様とする。
3 地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収する場合において、第十五条第二項の規定により当該権利を存続させるときは、裁判所は、没収の言渡しと同時に、その旨を宣告しなければならない。
4 第十五条第二項の規定により存続させるべき権利について前項の宣告がない没収の裁判が確定したときは、当該権利を有する者で自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかったものは、当該権利について、これを存続させるべき場合に該当する旨の裁判を請求することができる。
5 前項の裁判があったときは、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)に定める処分された没収物に係る補償の例により、補償を行う。
6 第一項及び第二項に規定する財産の没収に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)の規定を準用する。
(没収された債権等の処分等)
第十九条 没収された債権等は、検察官がこれを処分しなければならない。
2 債権の没収の裁判が確定したときは、検察官は、当該債権の債務者に対し没収の裁判の裁判書の抄本を送付してその旨を通知するものとする。
(没収の裁判に基づく登記等)
第二十条 権利の移転について登記又は登録(以下「登記等」という。)を要する財産を没収する裁判に基づき権利の移転の登記等を関係機関に嘱託する場合において、没収により効力を失った処分の制限に係る登記等若しくは没収により消滅した権利の取得に係る登記等があり、又は当該没収に関して次章第一節の規定による没収保全命令若しくは附帯保全命令に係る登記等があるときは、併せてその抹消を嘱託するものとする。
(刑事補償の特例)
第二十一条 債権等の没収の執行に対する刑事補償法による補償の内容については、同法第四条第六項の規定を準用する。
第四章 保全手続
第一節 没収保全
(没収保全命令)
第二十二条 裁判所は、別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号に規定する罪又は第九条第一項から第三項まで、第十条若しくは第十一条の罪に係る被告事件に関し、不法財産であってこの法律その他の法令の規定により没収することができるもの(以下「没収対象財産」という。)に当たると思料するに足りる相当な理由があり、かつ、これを没収するため必要があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、没収保全命令を発して、当該没収対象財産につき、この節の定めるところにより、その処分を禁止することができる。
2 裁判所は、地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、当該権利が没収により消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であって当該財産を没収するため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。
3 没収保全命令又は附帯保全命令には、被告人の氏名、罪名、公訴事実の要旨、没収の根拠となるべき法令の条項、処分を禁止すべき財産又は権利の表示、これらの財産又は権利を有する者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)の氏名、発付の年月日その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
4 裁判長は、急速を要する場合には、第一項若しくは第二項に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
5 没収保全(没収保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)に関する処分は、第一回公判期日までは、裁判官が行う。この場合において、裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
6 没収保全がされた不動産又は動産については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定により押収することを妨げない。
(起訴前の没収保全命令)
第二十三条 裁判官は、前条第一項又は第二項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項において同じ。)の請求により、同条第一項又は第二項に規定する処分をすることができる。
2 司法警察員は、その請求により没収保全命令又は附帯保全命令が発せられたときは、速やかに、関係書類を検察官に送付しなければならない。
3 第一項の規定による没収保全は、没収保全命令が発せられた日から三十日以内に当該保全がされた事件につき公訴が提起されないときは、その効力を失う。ただし、共犯に対して公訴が提起された場合において、その共犯に関し、当該財産につき前条第一項に規定する理由があるときは、この限りでない。
4 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、三十日ごとに、前項の期間を更新することができる。この場合において、更新の裁判は、検察官に告知された時にその効力を生ずる。
5 第一項又は前項の規定による請求は、請求する者の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所の裁判官にしなければならない。
6 第一項又は第四項の規定による請求を受けた裁判官は、没収保全に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
7 検察官は、第一項の規定による没収保全が、公訴の提起があったためその効力を失うことがなくなるに至ったときは、その旨を没収保全命令を受けた者(被告人を除く。)に通知しなければならない。この場合において、その者の所在が分からないため、又はその他の理由によって、通知をすることができないときは、通知に代えて、その旨を検察庁の掲示場に七日間掲示して公告しなければならない。
(没収保全に関する裁判の執行)
第二十四条 没収保全に関する裁判で執行を要するものは、検察官の指揮によって、これを執行する。
2 没収保全命令の執行は、当該命令により処分を禁止すべき財産を有する者にその謄本が送達される前であっても、することができる。
(没収保全の効力)
第二十五条 没収保全がされた財産(以下「没収保全財産」という。)について当該保全がされた後にされた処分は、没収に関しては、その効力を生じない。ただし、第三十七条第一項の規定により没収の裁判をすることができない場合における同項に規定する手続(第四十条第三項の規定により第三十七条第一項の規定を準用する手続を含む。)及び没収保全財産に対して実行することができる担保権の実行としての競売の手続による処分については、この限りでない。
(代替金の納付)
第二十六条 裁判所は、没収保全財産を有する者の請求により、適当と認めるときは、決定をもって、当該没収保全財産に代わるものとして、その財産の価額に相当する金銭(以下「代替金」という。)の額を定め、その納付を許すことができる。
2 裁判所は、前項の請求について決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
3 第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 代替金の納付があったときは、没収保全は、代替金についてされたものとみなす。
(不動産の没収保全)
第二十七条 不動産(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第四十三条第一項に規定する不動産及び同条第二項の規定により不動産とみなされるものをいう。以下この条(第七項本文を除く。)、次条、第二十九条第一項及び第三十五条第一項において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。
2 前項の没収保全命令の謄本及び第二十三条第四項の規定による更新の裁判の裁判書の謄本(以下「更新の裁判の謄本」という。)は、不動産の所有者(民事執行法第四十三条第二項の規定により不動産とみなされる権利についてはその権利者とし、当該不動産又は権利に係る名義人が異なる場合は名義人を含む。)に送達しなければならない。
3 不動産の没収保全命令の執行は、没収保全の登記をする方法により行う。
4 前項の登記は、検察事務官が嘱託する。この場合において、嘱託は、検察官が没収保全命令の執行を指揮する書面に基づいて、これを行う。
5 不動産の没収保全の効力は、没収保全の登記がされた時に生ずる。
6 不動産の没収保全の効力が生じたときは、検察官は、当該不動産の所在する場所に公示書を掲示する方法その他相当の方法により、その旨を公示する措置を執らなければならない。
7 不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記の後に没収保全の登記がされた場合において、その仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするときは、没収保全の登記に係る処分の制限は、仮処分の登記に係る権利の取得又は消滅と抵触しないものとみなす。ただし、その権利の取得を当該債権者に対抗することができない者を不動産を有する者として当該没収保全の登記がされたときは、この限りでない。
8 民事執行法第四十六条第二項及び第四十八条第二項の規定は、不動産の没収保全について準用する。この場合において、同法第四十六条第二項中「債務者」とあるのは「没収保全財産を有する者」と、同法第四十八条第二項中「前項」とあるのは「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第二十七条第四項」と、「執行裁判所」とあるのは「登記の嘱託をした検察事務官の所属する検察庁の検察官」と読み替えるものとする。
(船舶等の没収保全)
第二十八条 登記される船舶、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の規定により登録を受けた飛行機若しくは回転翼航空機(第三十五条第一項において単に「航空機」という。)、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定により登録を受けた自動車(同項において単に「自動車」という。)又は建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)の規定により登記を受けた建設機械(同項において単に「建設機械」という。)の没収保全については、不動産の没収保全の例による。
(動産の没収保全)
第二十九条 動産(不動産及び前条に規定する物以外の物をいう。以下この条において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。
2 前項の没収保全命令の謄本及び更新の裁判の謄本は、動産の所有者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)に送達しなければならない。
3 動産の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が所有者に送達された時に生ずる。
4 刑事訴訟法の規定による押収がされていない動産又は同法第百二十一条第一項の規定により、看守者を置き、若しくは所有者その他の者に保管させている動産について、没収保全の効力が生じたときは、検察官は、公示書をはり付ける方法その他相当の方法により、その旨を公示する措置を執らなければならない。
(債権の没収保全)
第三十条 債権の没収保全は、債権者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。以下この条において同じ。)に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、及び債務者に対し債権者への弁済を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。
2 前項の没収保全命令の謄本及び更新の裁判の謄本は、債権者及び債務者に送達しなければならない。
3 債権の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が債務者に送達された時に生ずる。
4 民事執行法第百五十条、第百五十六条第一項及び第三項並びに第百六十四条第四項の規定は、債権の没収保全について準用する。この場合において、同法第百五十条及び第百五十六条第一項中「差押え」とあり、及び同法第百五十条中「差押命令」とあるのは「没収保全」と、同条中「裁判所書記官は、申立てにより」とあるのは「検察事務官は、検察官が没収保全命令の執行を指揮する書面に基づいて」と、同法第百五十六条第一項及び第三項中「第三債務者」とあるのは「債務者」と、同項中「執行裁判所」とあるのは「没収保全命令を発した裁判所」と、同法第百六十四条第四項中「差し押さえられた債権」とあるのは「没収保全がされた債権」と、「支払又は供託」とあるのは「供託」と、「裁判所書記官は、申立てにより」とあるのは「検察事務官は、検察官が登記等の抹消の嘱託を指揮する書面に基づいて」と、「債権執行の申立てが取り下げられたとき、又は差押命令の取消決定が確定したときも」とあるのは「没収保全が効力を失つたとき、又は代替金が納付されたときも」と読み替えるものとする。
(その他の財産権の没収保全)
第三十一条 第二十七条から前条までに規定する財産以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)の没収保全については、この条に特別の定めがあるもののほか、債権の没収保全の例による。
2 その他の財産権で債務者又はこれに準ずる者がないもの(次項に規定するものを除く。)の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が権利者に送達された時に生ずる。
3 第二十七条第三項から第五項まで及び第七項並びに民事執行法第四十八条第二項の規定は、その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて準用する。この場合において、同項中「前項」とあるのは「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三十一条第三項において準用する同法第二十七条第四項」と、「執行裁判所」とあるのは「登記等の嘱託をした検察事務官の所属する検察庁の検察官」と読み替えるものとする。
(没収保全命令の取消し)
第三十二条 没収保全の理由若しくは必要がなくなったとき、又は没収保全の期間が不当に長くなったときは、裁判所は、検察官若しくは没収保全財産を有する者(その者が被告人であるときは、その弁護人を含む。)の請求により、又は職権で、決定をもって、没収保全命令を取り消さなければならない。
2 裁判所は、検察官の請求による場合を除き、前項の決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。
(没収保全命令の失効)
第三十三条 没収保全命令は、無罪、免訴若しくは公訴棄却(刑事訴訟法第三百三十八条第四号及び第三百三十九条第一項第一号の規定による場合を除く。)の裁判の告知があったとき、又は有罪の裁判の告知があった場合において没収の言渡しがなかったときは、その効力を失う。
2 刑事訴訟法第三百三十八条第四号又は第三百三十九条第一項第一号の規定による公訴棄却の裁判があった場合における没収保全の効力については、第二十三条第三項及び第四項の規定を準用する。この場合において、同条第三項中「没収保全命令が発せられた日」とあるのは、「公訴棄却の裁判が確定した日」と読み替えるものとする。
(失効等の場合の措置)
第三十四条 没収保全が効力を失ったとき、又は代替金が納付されたときは、検察官は、速やかに、検察事務官に当該没収保全の登記等の抹消の嘱託をさせ、及び公示書の除去その他の必要な措置を執らなければならない。この場合において、没収保全の登記等の抹消の嘱託は、検察官がその嘱託を指揮する書面に基づいて、これを行う。
(没収保全財産に対する強制執行の手続の制限)
第三十五条 没収保全がされた後に、当該保全に係る不動産、船舶(民事執行法第百十二条に規定する船舶をいう。)、航空機、自動車若しくは建設機械に対し強制競売の開始決定がされたとき又は当該保全に係る動産(同法第百二十二条第一項に規定する動産をいう。第四十二条第二項において同じ。)に対し強制執行による差押えがされたときは、強制執行による売却のための手続は、没収保全が効力を失った後又は代替金が納付された後でなければ、することができない。
2 没収保全がされている債権(民事執行法第百四十三条に規定する債権をいう。以下同じ。)に対し強制執行による差押命令が発せられたときは、当該差押えをした債権者は、差押えに係る債権のうち没収保全がされた部分については、没収保全が効力を失った後又は代替金が納付された後でなければ、取立て又は同法第百六十三条第一項の規定による請求をすることができない。
3 第一項の規定は、没収保全がされた後に強制執行による差押命令が発せられた債権で、条件付若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるものについて準用する。
4 没収保全がされているその他の財産権(民事執行法第百六十七条第一項に規定するその他の財産権をいう。)に対する強制執行については、没収保全がされている債権に対する強制執行の例による。
(第三債務者の供託)
第三十六条 金銭債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、没収保全がされた後に当該保全に係る債権について強制執行による差押命令の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
2 第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を没収保全命令を発した裁判所に届け出なければならない。
3 第一項の規定による供託がされた場合においては、執行裁判所は、供託された金銭のうち、没収保全がされた金銭債権の額に相当する部分については没収保全が効力を失ったとき又は代替金が納付されたときに、その余の部分については供託されたときに、配当又は弁済金の交付を実施しなければならない。
4 第一項及び第二項の規定は、強制執行による差押えがされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について準用する。この場合において、同項中「没収保全命令を発した裁判所」とあるのは、「執行裁判所」と読み替えるものとする。
5 第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定による供託がされた場合における民事執行法第百六十五条の規定の適用については、同条第一号中「第百五十六条第一項又は第二項」とあるのは、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三十六条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)」とする。
(強制執行に係る財産の没収の制限)
第三十七条 没収保全がされる前に強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされている財産については、没収の裁判をすることができない。ただし、差押債権者の債権が仮装のものであるとき、差押債権者が没収対象財産であることの情を知りながら強制執行の申立てをしたものであるとき、又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。
2 没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて、当該処分の禁止がされる前に強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされていた場合において、当該財産を没収するときは、その権利を存続させるものとし、没収の言渡しと同時に、その旨の宣告をしなければならない。ただし、差押債権者の債権が仮装のものであるとき、差押債権者が没収により当該権利が消滅することの情を知りながら強制執行の申立てをしたものであるとき、又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。
3 強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされている財産について没収保全命令が発せられた場合における当該財産については、差押債権者(被告人である差押債権者を除く。)が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。前項に規定する場合における財産の没収についても、同様とする。
4 第十八条第四項及び第五項の規定は第二項の規定により存続させるべき権利について同項の宣告がない没収の裁判が確定した場合について、同条第六項の規定は前項の没収に関する手続について準用する。
(強制執行の停止)
第三十八条 裁判所は、強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされている財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、前条第一項ただし書に規定する事由があると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、決定をもって、強制執行の停止を命ずることができる。
2 検察官が前項の決定の裁判書の謄本を執行裁判所に提出したときは、執行裁判所は、強制執行を停止しなければならない。この場合における民事執行法の規定の適用については、同法第三十九条第一項第七号の文書の提出があったものとみなす。
3 裁判所は、没収保全が効力を失ったとき、代替金が納付されたとき、第一項の理由がなくなったとき、又は強制執行の停止の期間が不当に長くなったときは、検察官若しくは差押債権者の請求により、又は職権で、決定をもって、同項の決定を取り消さなければならない。第三十二条第二項の規定は、この場合に準用する。
(担保権の実行としての競売の手続との調整)
第三十九条 没収保全財産の上に存在する担保権で、当該保全がされた後に生じたもの又は附帯保全命令による処分の禁止がされたものの実行(差押えを除く。)は、没収保全若しくは附帯保全命令による処分の禁止が効力を失った後又は代替金が納付された後でなければ、することができない。
2 担保権の実行としての競売の手続が開始された後に当該担保権について附帯保全命令が発せられた場合において、検察官が当該命令の謄本を提出したときは、執行裁判所は、その手続を停止しなければならない。この場合における民事執行法の規定の適用については、同法第百八十三条第一項第七号(同法第百八十九条、第百九十二条又は第百九十三条第二項において準用する場合を含む。)の文書の提出があったものとみなす。
(その他の手続との調整)
第四十条 第三十五条の規定は、没収保全がされている財産に対し滞納処分(国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。以下同じ。)による差押えがされた場合又は没収保全がされている財産を有する者について破産宣告若しくは和議の開始決定(第三項において「破産宣告等」という。)がされた場合若しくは没収保全がされている財産を有する会社その他の法人について更生手続開始の決定、整理開始の命令若しくは特別清算開始の命令(同項において「更生手続開始決定等」という。)がされた場合におけるこれらの手続の制限について準用する。
2 第三十六条の規定は没収保全がされている金銭債権に対し滞納処分による差押えがされた場合又は滞納処分による差押えがされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について、同条第一項、第二項及び第四項の規定は没収保全がされている金銭債権に対し仮差押えの執行がされた場合又は仮差押えの執行がされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について準用する。
3 第三十七条の規定は没収保全がされる前に当該保全に係る財産に対し仮差押えの執行がされていた場合又は没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて当該処分の禁止がされる前に仮差押えの執行がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について、同条第一項本文の規定は没収保全がされる前に当該保全に係る財産に対し滞納処分による差押えがされていた場合又は没収保全がされる前に当該保全に係る財産を有する者について破産宣告等がされていた場合若しくは没収保全がされる前に当該保全に係る財産を有する会社その他の法人について更生手続開始決定等がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について、同条第二項本文の規定は没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて当該処分の禁止がされる前に滞納処分による差押えがされていた場合又は没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものを有する者について当該処分の禁止がされる前に破産宣告等がされていた場合若しくは没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものを有する会社その他の法人について当該処分の禁止がされる前に更生手続開始決定等がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について準用する。
4 第三十八条の規定は、仮差押えの執行がされている財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合における強制執行の停止について準用する。
(附帯保全命令の効力等)
第四十一条 附帯保全命令は、当該命令に係る没収保全が効力を有する間、その効力を有する。ただし、代替金が納付されたときは、この限りでない。
2 附帯保全命令による処分の禁止については、特別の定めがあるもののほか、没収保全に関する規定を準用する。
第二節 追徴保全
(追徴保全命令)
第四十二条 裁判所は、別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号に規定する罪又は第九条第一項から第三項まで、第十条若しくは第十一条の罪に係る被告事件に関し、この法律その他の法令の規定により不法財産の価額を追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、追徴の裁判の執行をすることができなくなるおそれがあり、又はその執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、追徴保全命令を発して、被告人に対し、その財産の処分を禁止することができる。
2 追徴保全命令は、追徴の裁判の執行のため保全することを相当と認める金額(第四項において「追徴保全額」という。)を定め、特定の財産について発しなければならない。ただし、動産については、目的物を特定しないで発することができる。
3 追徴保全命令においては、処分を禁止すべき財産について、追徴保全命令の執行の停止を得るため、又は追徴保全命令の執行としてされた処分の取消しを得るために被告人が納付すべき金銭(以下「追徴保全解放金」という。)の額を定めなければならない。
4 追徴保全命令には、被告人の氏名、罪名、公訴事実の要旨、追徴の根拠となるべき法令の条項、追徴保全額、処分を禁止すべき財産の表示、追徴保全解放金の額、発付の年月日その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
5 第二十二条第四項及び第五項の規定は、追徴保全(追徴保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)について準用する。
(起訴前の追徴保全命令)
第四十三条 裁判官は、第十六条第二項の規定により追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、前条第一項に規定する必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官の請求により、同項に規定する処分をすることができる。
2 第二十三条第三項本文及び第四項から第六項までの規定は、前項の規定による追徴保全について準用する。
(追徴保全命令の執行)
第四十四条 追徴保全命令は、検察官の命令によってこれを執行する。この命令は、民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による仮差押命令と同一の効力を有する。
2 追徴保全命令の執行は、追徴保全命令の謄本が被告人又は被疑者に送達される前であっても、これをすることができる。
3 追徴保全命令の執行は、この法律に特別の定めがあるもののほか、民事保全法その他仮差押えの執行の手続に関する法令の規定に従ってする。この場合において、これらの法令の規定において仮差押命令を発した裁判所が保全執行裁判所として管轄することとされる仮差押えの執行については、第一項の規定による命令を発した検察官の所属する検察庁の対応する裁判所が管轄する。
(金銭債権の債務者の供託)
第四十五条 追徴保全命令に基づく仮差押えの執行がされた金銭債権の債務者が、当該債権の額に相当する額の金銭を供託したときは、債権者の供託金の還付請求権につき、当該仮差押えの執行がされたものとみなす。
2 前項の規定は、追徴保全解放金の額を超える部分に係る供託金については、これを適用しない。
(追徴保全解放金の納付と追徴等の裁判の執行)
第四十六条 追徴保全解放金が納付された後に、追徴の裁判が確定したとき、又は仮納付の裁判の言渡しがあったときは、納付された金額の限度において追徴又は仮納付の裁判の執行があったものとみなす。
2 追徴の言渡しがあった場合において、納付された追徴保全解放金が追徴の金額を超えるときは、その超過額は、被告人に還付しなければならない。
(追徴保全命令の取消し)
第四十七条 裁判所は、追徴保全の理由若しくは必要がなくなったとき、又は追徴保全の期間が不当に長くなったときは、検察官、被告人若しくはその弁護人の請求により、又は職権で、決定をもって、追徴保全命令を取り消さなければならない。第三十二条第二項の規定は、この場合に準用する。
(追徴保全命令の失効)
第四十八条 追徴保全命令は、無罪、免訴若しくは公訴棄却(刑事訴訟法第三百三十八条第四号及び第三百三十九条第一項第一号の規定による場合を除く。)の裁判の告知があったとき、又は有罪の裁判の告知があった場合において追徴の言渡しがなかったときは、その効力を失う。
2 刑事訴訟法第三百三十八条第四号又は第三百三十九条第一項第一号の規定による公訴棄却の裁判があった場合における追徴保全命令の効力については、第三十三条第二項の規定を準用する。
(失効等の場合の措置)
第四十九条 追徴保全命令が効力を失ったとき、又は追徴保全解放金が納付されたときは、検察官は、速やかに、第四十四条第一項の規定によりした命令を取り消し、かつ、追徴保全命令に基づく仮差押えの執行の停止又は既にした仮差押えの執行の取消しのため、必要な措置を執らなければならない。
第三節 雑則
(送達)
第五十条 没収保全又は追徴保全(追徴保全命令に基づく仮差押えの執行を除く。以下この節において同じ。)に関する書類の送達については、最高裁判所規則に特別の定めがある場合を除き、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。この場合において、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百十条第三項に規定する公示送達以外の公示送達については、その経過により送達の効力が生ずる期間は、同法第百十二条第一項本文及び第二項の規定にかかわらず、七日間とする。
(上訴提起期間中の処分等)
第五十一条 上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないもの又は上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて、没収保全又は追徴保全に関する処分をすべき場合には、原裁判所がこれをしなければならない。
(不服申立て)
第五十二条 没収保全又は追徴保全に関して裁判所のした決定に対しては、抗告をすることができる。ただし、没収又は追徴すべき場合に該当すると思料するに足りる相当な理由がないこと(第二十二条第二項の規定による決定に関しては同項に規定する理由がないことを、第三十八条第一項(第四十一条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に関しては第三十八条第一項に規定する理由がないことを含む。)を理由としてすることはできない。
2 没収保全又は追徴保全に関して裁判官のした裁判に不服がある者は、その裁判官の所属する裁判所(簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては、当該簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)にその裁判の取消し又は変更を請求することができる。前項ただし書の規定は、この場合に準用する。
3 前項の規定による不服申立てに関する手続については、刑事訴訟法第四百二十九条第一項に規定する裁判官の裁判の取消し又は変更の請求に係る手続の例による。
(準用)
第五十三条 没収保全及び追徴保全に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事訴訟法の規定を準用する。
第五章 疑わしい取引の届出
(金融機関等による疑わしい取引の届出等)
第五十四条 銀行その他の政令で定める金融機関及びその他政令で定める者(以下この条において「金融機関等」という。)は、政令で定める業務において収受した財産が犯罪収益等若しくは薬物犯罪収益等である疑いがあり、又は当該業務に係る取引の相手方が当該業務に関し第十条の罪若しくは麻薬特例法第六条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定めるところにより、政令で定める事項を主務大臣(主務大臣が金融再生委員会である場合にあっては金融監督庁長官とし、政令で定める金融機関等にあっては都道府県知事とする。)に届け出なければならない。
2 金融機関等(その役員及び使用人を含む。)は、前項の規定による届出を行おうとすること又は行ったことを当該届出に係る取引の相手方又はその者の関係者に漏らしてはならない。
3 都道府県知事は、第一項の届出を受けたときは、速やかに、当該届出に係る事項を主務大臣(主務大臣が金融再生委員会である場合にあっては、金融監督庁長官)に通知するものとする。
4 主務大臣は、第一項の届出又は前項の通知を受けたときは、主務大臣が金融再生委員会である場合を除き、速やかに、当該届出又は通知に係る事項を金融監督庁長官に通知するものとする。
(郵政大臣による疑わしい取引の通知)
第五十五条 郵政大臣は、郵便貯金の業務その他の政令で定める業務において収受した財産が犯罪収益等若しくは薬物犯罪収益等である疑いがあり、又は当該業務に係る取引の相手方が当該業務に関し第十条の罪若しくは麻薬特例法第六条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定める事項を金融監督庁長官に通知するものとする。
(捜査機関等への情報提供等)
第五十六条 金融監督庁長官は、前二条の規定により金融監督庁長官に届け出られ又は通知された事項、この章に規定する金融監督庁長官の職務に相当する職務を行う外国の機関から提供された情報及びこれらを整理し又は分析した結果(以下「疑わしい取引に関する情報」という。)が検察官、検察事務官若しくは司法警察職員又は税関職員若しくは証券取引等監視委員会の職員(以下この条において「検察官等」という。)による別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号に規定する罪、第九条第一項から第三項まで、第十条若しくは第十一条の罪、麻薬特例法第二条第二項各号に掲げる罪又は麻薬特例法第六条若しくは第七条の罪に係る刑事事件の捜査又は犯則事件の調査に資すると認めるときは、これを検察官等に提供するものとする。
2 検察官等は、前項に規定する罪に係る刑事事件の捜査又は犯則事件の調査のため必要があると認めるときは、金融監督庁長官に対し、疑わしい取引に関する情報の記録の閲覧若しくは謄写又はその写しの送付を求めることができる。
(外国の機関への情報提供)
第五十七条 金融監督庁長官は、前条第一項に規定する外国の機関に対し、その職務(この章に規定する金融監督庁長官の職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める疑わしい取引に関する情報を提供することができる。
2 前項の規定による疑わしい取引に関する情報の提供については、当該疑わしい取引に関する情報が前条第一項に規定する外国の機関の職務の遂行以外に使用されず、かつ、次項の規定による同意がなければ外国の刑事事件の捜査(その対象たる犯罪事実が特定された後のものに限る。)又は審判(以下この条において「捜査等」という。)に使用されないよう適切な措置がとられなければならない。
3 金融監督庁長官は、外国からの要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、第一項の規定により提供した疑わしい取引に関する情報を当該要請に係る刑事事件の捜査等に使用することについて同意をすることができる。
一 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪が政治犯罪であるとき、又は当該要請が政治犯罪について捜査等を行う目的で行われたものと認められるとき。
二 国際約束(第一項の規定による疑わしい取引に関する情報の提供に関する国際約束をいう。第五項において同じ。)に別段の定めがある場合を除き、当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。
三 日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。
4 金融監督庁長官は、前項の同意をする場合においては、あらかじめ、同項第一号及び第二号に該当しないことについて法務大臣の確認を、同項第三号に該当しないことについて外務大臣の確認を、それぞれ受けなければならない。
5 第一項の規定による疑わしい取引に関する情報の提供が、疑わしい取引に関する情報を使用することができる外国の刑事事件の捜査等(政治犯罪についての捜査等以外の捜査等に限る。)の範囲を定めた国際約束に基づいて行われたときは、その範囲内における当該疑わしい取引に関する情報の使用については、第三項の同意があるものとみなす。
(関係行政機関の協力)
第五十八条 関係行政機関は、この章の規定の実施について、相互に協力するものとする。
第六章 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続等
(共助の実施)
第五十九条 外国の刑事事件(麻薬特例法第十六条第二項に規定する薬物犯罪等に当たる行為に係るものを除く。)に関して、当該外国から、没収若しくは追徴の確定裁判の執行又は没収若しくは追徴のための財産の保全の共助の要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該要請に係る共助をすることができる。
一 共助犯罪(共助の要請において犯されたとされている犯罪をいう。以下この項において同じ。)に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号に規定する罪又は第九条第一項から第三項まで、第十条若しくは第十一条の罪に当たるものでないとき。
二 共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によればこれについて刑罰を科すことができないと認められるとき。
三 共助犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
四 没収の確定裁判の執行の共助又は没収のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、要請に係る財産が日本国の法令によれば共助犯罪について没収の裁判をし、又は没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき。
五 追徴の確定裁判の執行の共助又は追徴のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によれば共助犯罪について追徴の裁判をし、又は追徴保全をすることができる場合に当たるものでないとき。
六 没収の確定裁判の執行の共助については要請に係る財産を有し又はその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、追徴の確定裁判の執行の共助については当該裁判を受けた者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認められるとき。
七 没収又は追徴のための保全の共助については、要請国の裁判所若しくは裁判官のした没収若しくは追徴のための保全の裁判に基づく要請である場合又は没収若しくは追徴の裁判の確定後の要請である場合を除き、共助犯罪に係る行為が行われたと疑うに足りる相当な理由がないとき、又は当該行為が日本国内で行われたとした場合において第二十二条第一項若しくは第四十二条第一項に規定する理由がないと認められるとき。
八 日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。
2 麻薬特例法第十六条第二項に規定する薬物犯罪等に当たる行為に係る外国の刑事事件に関して、当該外国から、条約に基づかないで、前項の共助の要請があったときは、同項第八号又は麻薬特例法第二十一条各号のいずれかに該当する場合を除き、その要請に係る共助をすることができる。
3 地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産に係る没収の確定裁判の執行の共助をするに際し、日本国の法令により当該財産を没収するとすれば当該権利を存続させるべき場合に当たるときは、これを存続させるものとする。
(追徴とみなす没収)
第六十条 不法財産又は麻薬特例法第十一条第一項各号若しくは第三項各号に掲げる財産(以下この条において「不法財産等」という。)に代えて、その価額が不法財産等の価額に相当する財産であって当該裁判を受けた者が有するものを没収する確定裁判の執行に係る共助の要請にあっては、当該確定裁判は、この法律による共助の実施については、その者から当該財産の価額を追徴する確定裁判とみなす。不動産若しくは動産又は金銭債権以外の第十三条第一項各号に掲げる財産であって当該裁判を受けた者が有するものを没収する確定裁判の執行に係る共助の要請についても、同様とする。
2 前項の規定は、不法財産等に代えてその価額が不法財産等の価額に相当する財産を没収するための保全及び不動産若しくは動産又は金銭債権以外の第十三条第一項各号に掲げる財産を没収するための保全に係る共助の要請について準用する。
(要請の受理)
第六十一条 共助の要請の受理は、外務大臣が行う。ただし、緊急その他特別の事情がある場合において、外務大臣が同意したときは、法務大臣が行うものとする。
(裁判所の審査)
第六十二条 共助の要請が没収又は追徴の確定裁判の執行に係るものであるときは、検察官は、裁判所に対し、共助をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
2 裁判所は、審査の結果、審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定をし、共助の要請に係る確定裁判の全部若しくは一部について共助をすることができる場合に該当するとき、又はその全部について共助をすることができない場合に該当するときは、それぞれその旨の決定をしなければならない。
3 裁判所は、没収の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定をする場合において、第五十九条第三項の規定により存続させなければならない権利があるときは、当該権利を存続させる旨の決定を同時にしなければならない。
4 裁判所は、追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき、共助をすることができる場合に該当する旨の決定をするときは、追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
5 第一項の規定による審査においては、共助の要請に係る確定裁判の当否を審査することができない。
6 第一項の規定による審査に関しては、次に掲げる者(以下「利害関係人」という。)が当該審査請求事件の手続への参加を許されていないときは、共助をすることができる場合に該当する旨の決定をすることができない。
一 没収の確定裁判の執行の共助については、要請に係る財産を有し、若しくはその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者又はこれらの財産若しくは権利について没収保全がされる前に強制競売の開始決定、強制執行による差押え若しくは仮差押えの執行がされている場合における差押債権者若しくは仮差押債権者
二 追徴の確定裁判の執行の共助については、当該裁判を受けた者
7 裁判所は、審査の請求について決定をするときは、検察官及び審査請求事件の手続への参加を許された者(以下「参加人」という。)の意見を聴かなければならない。
8 裁判所は、参加人が口頭で意見を述べたい旨を申し出たとき、又は裁判所において証人若しくは鑑定人を尋問するときは、公開の法廷において審問期日を開き、参加人に当該期日に出頭する機会を与えなければならない。この場合において、参加人が出頭することができないときは、審問期日に代理人を出頭させ、又は書面により意見を述べる機会を与えたことをもって、参加人に出頭する機会を与えたものとみなす。
9 検察官は、前項の審問期日の手続に立ち会うことができる。
(抗告)
第六十三条 検察官及び参加人は、審査の請求に係る決定に対し、抗告をすることができる。
2 抗告裁判所の決定に対しては、刑事訴訟法第四百五条各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
(決定の効力)
第六十四条 没収又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定が確定したときは、当該没収又は追徴の確定裁判は、共助の実施に関しては、日本国の裁判所が言い渡した没収又は追徴の確定裁判とみなす。
(決定の取消し)
第六十五条 没収又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定が確定した場合において、当該要請に係る確定裁判が取り消されたときその他その効力がなくなったときは、裁判所は、検察官又は利害関係人の請求により、決定をもって、共助をすることができる場合に該当する旨の決定を取り消さなければならない。
2 前項の取消しの決定が確定したときは、刑事補償法に定める没収又は追徴の執行による補償の例により、補償を行う。
3 第六十三条の規定は、第一項の請求に係る決定について準用する。
(没収保全の請求)
第六十六条 共助の要請が没収のための保全に係るものであるときは、検察官は、裁判官に、没収保全命令を発して要請に係る財産につきその処分を禁止することを請求しなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、附帯保全命令を発して当該財産の上に存在する地上権、抵当権その他の権利の処分を禁止することを請求することができる。
2 第六十二条第一項の審査の請求があった後は、没収保全に関する処分は、審査の請求を受けた裁判所が行う。
(追徴保全の請求)
第六十七条 共助の要請が追徴のための保全に係るものであるときは、検察官は、裁判官に、追徴保全命令を発して、追徴の裁判を受けるべき者に対しその財産の処分を禁止することを請求しなければならない。
2 前条第二項の規定は、追徴保全に関する処分について準用する。
(公訴提起前の保全の期間)
第六十八条 没収又は追徴のための保全の共助の要請が公訴の提起されていない事件に関してされた場合において、没収保全命令又は追徴保全命令が発せられた日から四十五日以内に要請国から当該事件につき公訴が提起された旨の通知がないときは、当該没収保全又は追徴保全命令は、その効力を失う。
2 要請国から、前項の期間内に公訴を提起できないことについてやむを得ない事由がある旨理由を付して通知があったときは、裁判官は、検察官の請求により、三十日間を限り、保全の期間を更新することができる。更新された期間内に公訴を提起できないことについてやむを得ない事由がある旨理由を付して通知があったときも、同様とする。
(手続の取消し)
第六十九条 共助の要請を撤回する旨の通知があったときは、検察官は、速やかに、審査、没収保全若しくは追徴保全の請求を取り消し、又は没収保全命令若しくは追徴保全命令の取消しを請求しなければならない。
2 前項の請求があったときは、裁判所又は裁判官は、速やかに、没収保全命令又は追徴保全命令を取り消さなければならない。
(事実の取調べ)
第七十条 裁判所又は裁判官は、この章の規定による審査をし、又は没収保全若しくは追徴保全に関する処分をするため必要があるときは、事実の取調べをすることができる。この場合においては、証人を尋問し、検証を行い、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。
(検察官の処分)
第七十一条 検察官は、この章の規定による没収保全若しくは追徴保全の請求又は没収保全命令若しくは追徴保全命令の執行に関して必要があると認めるときは、関係人の出頭を求めてこれを取り調べ、鑑定を嘱託し、実況見分をし、書類その他の物の所有者、所持者若しくは保管者にその物の提出を求め、公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求め、又は裁判官の発する令状により、差押え、捜索若しくは検証をすることができる。
2 検察官は、検察事務官に前項の処分をさせることができる。
(管轄裁判所)
第七十二条 この章の規定による審査、没収保全若しくは追徴保全又は令状の発付の請求は、請求する検察官の所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所又はその裁判官にしなければならない。
(準用)
第七十三条 この章に特別の定めがあるもののほか、裁判所若しくは裁判官のする審査、処分若しくは令状の発付、検察官若しくは検察事務官のする処分又は裁判所の審査への利害関係人の参加については第三章及び第四章、刑事訴訟法(第一編第二章及び第五章から第十三章まで、第二編第一章、第三編第一章及び第四章並びに第七編に限る。)、刑事訴訟費用に関する法令並びに刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の規定を、共助の要請を受理した場合における措置については国際捜査共助法(昭和五十五年法律第六十九号)第四条、第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)及び第七条第一項並びに逃亡犯罪人引渡法(昭和二十八年法律第六十八号)第三条、第八条第二項並びに第十一条第一項及び第二項の規定を、それぞれその性質に反しない限り、準用する。
(逃亡犯罪人の引渡しに関する特例)
第七十四条 逃亡犯罪人引渡法第一条第三項に規定する引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われたとしたならば第十条第三項の罪に当たるものである場合における同法第二条の規定の適用については、同条第三号及び第四号中「三年」とあるのは、「二年」とする。
第七章 雑則
(政令等への委任)
第七十五条 この法律に定めるもののほか、没収保全と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。
2 この法律に定めるもののほか、第十八条の規定による第三者の参加及び裁判に関する手続、第四章に規定する没収保全及び追徴保全に関する手続並びに前章に規定する国際共助手続について必要な事項(前項に規定する事項を除く。)は、最高裁判所規則で定める。
(経過措置)
第七十六条 この法律の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。
別表(第二条、第十三条、第二十二条、第四十二条、第五十六条、第五十九条関係)
一 第三条(組織的な殺人等)、第四条(未遂罪)若しくは第六条第一項第一号(組織的な殺人の予備)の罪、同号に掲げる罪に係る同条第二項(団体の不正権益に係る殺人の予備)の罪又は第十条第一項(犯罪収益等隠匿)若しくは第二項(未遂罪)の罪
二
イ 刑法第百八条(現住建造物等放火)、第百九条第一項(非現住建造物等放火)若しくは第百十条第一項(建造物等以外放火)の罪、同法第百十五条の規定により同法第百九条第一項若しくは第百十条第一項の例により処断すべき罪又はこれらの罪(同法第百十条第一項の罪及び同項の例により処断すべき罪を除く。)の未遂罪
ロ 刑法第百三十七条(あへん煙吸食器具輸入等)若しくは第百三十九条第二項(あへん煙吸食のための場所提供)の罪又はこれらの罪の未遂罪
ハ 刑法第百四十八条(通貨偽造及び行使等)若しくは第百四十九条(外国通貨偽造及び行使等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は同法第百五十三条(通貨偽造等準備)の罪
ニ 刑法第百五十五条第一項(有印公文書偽造)若しくは第二項(有印公文書変造)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪、同法第百五十七条第一項(公正証書原本不実記載)の罪若しくはその未遂罪若しくはこれらの罪(同法第百五十七条第一項の罪の未遂罪を除く。)に係る同法第百五十八条(偽造公文書行使等)の罪、同法第百五十九条第一項(有印私文書偽造)若しくは第二項(有印私文書変造)の罪若しくはこれらの罪に係る同法第百六十一条(偽造私文書等行使)の罪又は同法第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
ホ 刑法第百六十二条(有価証券偽造等)又は第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪
ト 刑法第百八十六条(常習賭博及び賭博場開張等図利)の罪
チ 刑法第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪
ヌ 刑法第二百四条(傷害)又は第二百五条(傷害致死)の罪
ル 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)又は第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
ヲ 刑法第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、国外移送目的略取等、被略取者収受等、未遂罪)の罪
ワ 刑法第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏睡強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)又は第二百四十三条(未遂罪)の罪
カ 刑法第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
タ 刑法第二百五十六条第二項(盗品有償譲受け等)の罪
レ 刑法第二百六十条(建造物等損壊及び同致死傷)の罪又は同条の例により処断すべき罪
三 爆発物取締罰則(明治十七年太政官布告第三十二号)第一条から第六条まで(爆発物の使用、製造等)の罪
四 商法(明治三十二年法律第四十八号)第四百八十六条から第四百八十八条まで(特別背任、未遂罪)、第四百九十条(不実文書行使)、第四百九十四条第一項(会社荒らし等に関する収賄)又は第四百九十七条第二項(株主の権利の行使に関する利益の受供与)若しくは第四項(株主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪
五 外国において流通する貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及び模造に関する法律(明治三十八年法律第六十六号)第一条(偽造等)、第二条(偽造外国流通貨幣等の輸入)、第三条第一項(偽造外国流通貨幣等の行使等)若しくは第四条(偽造等準備)の罪又はこれらの罪の未遂罪
六 印紙犯罪処罰法(明治四十二年法律第三十九号)第一条(偽造等)又は第二条(偽造印紙等の使用等)の罪
七 破産法(大正十一年法律第七十一号)第三百七十四条(詐欺破産)の罪、同条の例により処断すべき罪又は同法第三百七十八条(第三者の詐欺破産)の罪
八 暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第一項(加重傷害)若しくは第二項(未遂罪)又は第一条ノ三(常習傷害等)の罪
九 盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第二条から第四条まで(常習特殊強窃盗、常習累犯強窃盗、常習強盗致傷等)の罪
十 有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)第七十七条(特別背任)の罪
十一 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第六十三条(暴行等による職業紹介等)の罪
十二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第一項(児童淫行)の罪
十三 郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第八十四条第一項(切手類の偽造等)の罪又はその未遂罪
十四 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百九十七条(虚偽有価証券届出書等の提出等)、第百九十八条第十五号(内部者取引)又は第二百条第十三号(損失補てんに係る利益の収受等)の罪
十五 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)第二十四条の三(使用等)の罪
十六 船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六十四条(暴行等による職業紹介等)の罪
十七 競馬法(昭和二十三年法律第百五十八号)第三十条(無資格競馬等)又は第三十二条の二後段(加重収賄)の罪
十八 自転車競技法(昭和二十三年法律第二百九号)第十八条(無資格自転車競走等)又は第二十三条後段(加重収賄)の罪
十九 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条又は第七十三条の違反行為に係る同法第七十七条(非弁護士の法律事務の取扱い等)の罪
二十 外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第六十九条の六(国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等)の罪
二十一 小型自動車競走法(昭和二十五年法律第二百八号)第二十四条(無資格小型自動車競走等)又は第二十八条後段(加重収賄)の罪
二十二 毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第三条の違反行為に係る同法第二十四条第一号(無登録販売等)の罪又は同法第二十四条の二第一号(興奮等の作用を有する毒物等の販売等)の罪
二十三 証券投資信託及び証券投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二百二十八条(特別背任)、第二百三十条(不実文書行使)、第二百三十五条第一項(証券投資法人荒らし等に関する収賄)又は第二百三十六条第二項(投資主の権利の行使に関する利益の受供与)若しくは第四項(投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪
二十四 モーターボート競走法(昭和二十六年法律第二百四十二号)第二十七条(無資格モーターボート競走等)又は第三十四条後段(加重収賄)の罪
二十五 覚せい剤取締法第四十一条の三(覚せい剤の使用、覚せい剤原料の輸入等)、第四十一条の四(管理外覚せい剤の施用等)、第四十一条の七(覚せい剤原料の輸入等の予備)、第四十一条の十(覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)又は第四十一条の十三(覚せい剤原料の譲渡しと譲受けとの周旋)の罪
二十六 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第七十三条の二第一項(不法就労助長)、第七十四条(集団密航者を不法入国させる行為等)、第七十四条の二(集団密航者の輸送)、第七十四条の四(集団密航者の収受等)若しくは第七十四条の六(不法入国等援助等)の罪又は同法第七十四条の八第二項(営利目的の不法入国者等の蔵匿等)の罪若しくはその未遂罪
二十七 会社更生法(昭和二十七年法律第百七十二号)第二百九十条第一項(詐欺更生)又は第二百九十一条第一項(第三者の詐欺更生)の罪
二十八 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第六十四条の三(ジアセチルモルヒネ等の施用等)又は第六十六条の二(麻薬の施用等)の罪
二十九 武器等製造法(昭和二十八年法律第百四十五号)第三十一条(銃砲の無許可製造)若しくは第三十一条の二第一号(銃砲以外の武器の無許可製造)の罪又は猟銃の製造に係る同条第四号(猟銃の無許可製造)の罪
三十 関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第百九条(輸入禁制品の輸入)の罪
三十一 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第一項(高金利)若しくは第二項(業として行う高金利)の罪、同法第一条若しくは第二条第一項の違反行為に係る同法第八条第一項第一号(元本を保証して行う出資金の受入れ等)の罪又は同法第一条、第二条第一項若しくは第五条第一項若しくは第二項の違反行為に係る同法第八条第一項第二号(元本を保証して行う出資金の受入れ等の脱法行為)の罪
三十二 日本中央競馬会法(昭和二十九年法律第二百五号)第三十七条第一項後段(加重収賄)の罪
三十三 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二十九条(不正の手段による補助金等の受交付等)の罪
三十四 売春防止法第六条第一項(周旋)、第七条(困惑等による売春)、第八条第一項(対償の収受等)、第十条(売春をさせる契約)、第十一条第二項(業として行う場所の提供)、第十二条(売春をさせる業)又は第十三条(資金等の提供)の罪
三十五 銃砲刀剣類所持等取締法第三十一条から第三十一条の四まで(けん銃等の発射、輸入、所持、譲渡し等)、第三十一条の七から第三十一条の九まで(けん銃実包の輸入、所持、譲渡し等)、第三十一条の十一から第三十一条の十三まで(猟銃の所持等、けん銃等の輸入の予備、けん銃等の輸入に係る資金等の提供)、第三十一条の十五(けん銃等の譲渡しと譲受けの周旋等)、第三十一条の十六第一項第一号(けん銃等及び猟銃以外の銃砲等の所持)、第二号(けん銃部品の所持)若しくは第三号(けん銃部品の譲渡し等)若しくは第二項(未遂罪)、第三十一条の十七(けん銃等としての物品の輸入等)、第三十一条の十八第一号(けん銃実包の譲渡しと譲受けの周旋)又は第三十二条第一号(けん銃部品の譲渡しと譲受けの周旋等)の罪
三十六 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百九十六条(特許権等の侵害)の罪
三十七 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第七十八条(商標権等の侵害)の罪
三十八 薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第八十四条第五号(業として行う医薬品の販売等)の罪
三十九 金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和四十三年法律第八十六号)第三十二条(特別背任)の罪
四十 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第百十九条(著作権等の侵害等)の罪
四十一 航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)第一条(航空機の強取等)、第二条(航空機強取等致死)又は第四条(航空機の運航阻害)の罪
四十二 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第十四条第一項若しくは第四項若しくは第十四条の四第一項若しくは第四項の違反行為に係る同法第二十五条第一号(無許可産業廃棄物処理業)の罪又は同法第二十六条第二号の二(産業廃棄物の処理の受託)の罪
四十三 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和四十九年法律第八十七号)第一条から第五条まで(航空危険、航行中の航空機を墜落させる行為等、業務中の航空機の破壊等、業務中の航空機内への爆発物等の持込み、未遂罪)の罪
四十四 人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)第一条から第四条まで(人質による強要等、加重人質強要、人質殺害)の罪
四十五 無限連鎖講の防止に関する法律(昭和五十三年法律第百一号)第五条(開設等)の罪
四十六 細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律(昭和五十七年法律第六十一号)第九条(製造等)の罪
四十七 貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号)第四十七条第二号(無登録営業)の罪
四十八 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第五十八条(有害業務目的労働者派遣)の罪又は同法第四条第三項に係る同法第五十九条第一号(適用対象業務以外の業務についての労働者派遣事業)の罪
四十九 金融先物取引法(昭和六十三年法律第七十七号)第九十四条(仮装取引等)の罪
五十 麻薬特例法第六条第一項(薬物犯罪収益等隠匿)又は第二項(未遂罪)の罪
五十一 協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)第四十九条(不実文書行使)の罪
五十二 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成七年法律第六十五号)第三十八条から第四十条まで(化学兵器の使用、製造等)の罪
五十三 サリン等による人身被害の防止に関する法律第五条(発散させる行為)又は第六条第一項から第三項まで(製造等)の罪
五十四 保険業法(平成七年法律第百五号)第三百二十二条(保険管理人等の特別背任)、第三百二十三条(社債権者集会の代表者等の特別背任)又は第三百二十五条(不実文書行使)の罪
五十五 金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号)第百九十五条第一項(詐欺更生)又は第百九十六条第一項(第三者の詐欺更生)の罪
五十六 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)第二十条第一項(臓器売買等)の罪
五十七 スポーツ振興投票の実施等に関する法律(平成十年法律第六十三号)第三十二条(無資格スポーツ振興投票)又は第三十七条後段(加重収賄)の罪
五十八 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第百七十一条(発起人、取締役等の特別背任)、第百七十二条(特定社債権者集会の代表者等の特別背任)、第百七十四条(不実文書行使)、第百七十九条第一項(特定目的会社荒らし等に関する収賄)又は第百八十二条第二項(社員の権利の行使に関する利益の受供与)若しくは第四項(社員の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪
五十九 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第五条(児童買春周旋)、第六条第二項(業として行う児童買春勧誘)、第七条(児童ポルノ頒布等)又は第八条(児童買春等目的人身売買等)の罪